(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6227069
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20171030BHJP
G02F 1/035 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
G02F1/03 505
G02F1/035
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-147853(P2016-147853)
(22)【出願日】2016年7月27日
【審査請求日】2016年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100131521
【弁理士】
【氏名又は名称】堀口 忍
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100133570
【弁理士】
【氏名又は名称】▲徳▼永 民雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛彦
(72)【発明者】
【氏名】土居 正治
(72)【発明者】
【氏名】久保田 嘉伸
【審査官】
野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−345554(JP,A)
【文献】
特開2007−079225(JP,A)
【文献】
特開昭60−095410(JP,A)
【文献】
米国特許第6480633(US,B1)
【文献】
株式会社 住田光学ガラス,”OPTICAL GLASS DATA BOOK”,[online],株式会社 住田光学ガラス,2016年 2月 1日,Ver. 10.00,第24頁,[平成29年5月12日検索], インターネット<URL:http://sumita-opt.co.jp/ja/download>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14
G02F 1/00−1/125
1/21−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光導波路と、前記入力光導波路に光学的に結合される1組の分岐光導波路と、前記1組の分岐光導波路に光学的に結合される出力光導波路とが形成される強誘電体基板と、
前記1組の分岐光導波路の少なくとも一方の近傍に形成される信号電極と、
前記入力光導波路が形成される前記強誘電体基板の端部に取り付けられる第1の保護部材と、
前記出力光導波路が形成される前記強誘電体基板の端部に取り付けられる第2の保護部材と、を備え、
前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、モース硬度が前記強誘電体基板のモース硬度以下であり、且つ、焦電効果のないガラス材料で形成され、
前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、それぞれ接着剤で前記強誘電体基板に固定されており、
前記接着剤により前記強誘電体基板に接着される前記第1の保護部材および前記第2の保護部材の接着面、または、前記接着面の反対側の前記第1の保護部材および前記第2の保護部材の表面の少なくとも一方に紫外線カット膜が形成される
ことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記第1の保護部材および前記第2の保護部材を形成するガラス材料の磨耗度は、600以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記第1の保護部材および前記第2の保護部材を形成するガラス材料の磨耗度は、200以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、それぞれエポキシ系接着剤で前記強誘電体基板に固定され、
前記紫外線カット膜は、前記エポキシ系接着剤により前記強誘電体基板に接着される、前記第1の保護部材および前記第2の保護部材の接着面にそれぞれ蒸着される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光変調器。
【請求項5】
前記入力光導波路に光学的に結合されるように、紫外線硬化接着剤により第1の光ファイバが前記強誘電体基板の端部に固定され、
前記出力光導波路に光学的に結合されるように、紫外線硬化接着剤により第2の光ファイバが前記強誘電体基板の端部に固定され、
前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、それぞれ、前記第1の光ファイバおよび前記第2の光ファイバ保持する
ことを特徴とする請求項4に記載の光変調器。
【請求項6】
前記強誘電体基板の材料は、LiNbO3、LiTaO3、またはPLZTである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電体基板上に形成される光変調器に係わる。
【背景技術】
【0002】
強い電気光学効果を有する強誘電体は、電気信号を光信号に変換する光デバイスとして使用される。例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)基板を利用して構成される光変調器が広く実用化されている。LiNbO3基板を利用して構成される光変調器は、LN変調器と呼ばれることがある。LN変調器は、チャープが小さく、高速変調を実現できる。
【0003】
図1は、光変調器の構成の一例を示す。
図1(a)は、光変調器を上方から見た上面図である。
図1(b)は、
図1(a)に示す光変調器を側方から見た図である。
【0004】
基板1は、LiNbO3結晶のZ軸方向に形成されたZカットLiNbO3基板である。光導波路2は、基板1の表面の近傍に形成される。一例としては、光導波路2は、基板1の表面の近傍にTi等の金属不純物を導入し、その金属不純物を熱で拡散することにより形成される。光導波路2は、入力光導波路2a、1組の直線光導波路2b、2c、出力光導波路2dを含む。直線光導波路2b、2cは、入力光導波路2aに光学的に結合されている。また、直線光導波路2b、2cは、出力光導波路2dにも光学的に結合されている。すなわち、光導波路2は、マッハツェンダ干渉計を構成する。なお、直線光導波路2b、2cは、互いにほぼ平行に形成されている。以下の記載では、基板1の2つの面のうち、光導波路2が形成されている面を「上面」または「実装面」と呼ぶことがある。また、基板1の他方の面を「底面」と呼ぶことがある。
【0005】
基板1の上面には、信号電極3および接地電極4が形成されている。信号電極3および接地電極4の材料は、たとえば、金である。
図1に示す例では、信号電極3は、1組の直線光導波路2b、2cのうちの一方(この例では、直線光導波路2b)の近傍に形成されている。信号電極3の一方の端部は、不図示の電気信号源に電気的に接続され、信号電極3の他方の端部は、抵抗を利用して終端される。なお、電気信号源は、送信データを表す電気信号を生成する。基板1の上面の他の領域には、接地電極4が形成されている。この実施例では、直線光導波路2cの上方領域にまで接地電極4が形成されている。バッファ層5は、基板1の上面と各電極(信号電極3および接地電極4)との間に形成される。バッファ層5を設けることにより、光導波路(2a〜2d)から電極(3、4)への光の伝達が抑制される。なお、バッファ層5は、SiO2などの絶縁膜により実現される。
【0006】
基板1は、ダイシングにより強誘電体ウエハから切り出される。このとき、基板1の端部に形成されている光導波路(
図1では、入力光導波路2a、出力光導波路2d)が破損するおそれがある。このため、基板1に形成される光導波路パターンを保護するために、基板1の端部にダミーブロック(保護部材)が設けられる。
図1に示す例では、ダミーブロック6は、基板1の入力端および出力端に設けられる。入力端は、入力光導波路2aが形成されている側の基板1の端部を意味する。出力端は、出力光導波路2dが形成されている側の基板1の端部を意味する。なお、ダミーブロック6は、例えば、基板1と同じ材料で形成される。また、ダミーブロック6は、光変調器の光導波路に光学的に結合される光ファイバを保持する役割も有する。
【0007】
ただし、基板1は強誘電体基板なので、温度変化に起因して焦電効果が生じる。焦電効果は、電荷の偏在を引き起こす。基板1がZカット基板である場合、基板1の上面近傍領域および底面近傍領域において電荷が偏在する。また、ダミーブロック6が基板1と同様に強誘電体で形成される場合には、ダミーブロック内でも電荷が偏在し得る。
【0008】
さらに、急激な温度変化が生じたときは、電荷の偏在が大きくなり、基板1とダミーブロック6との間で放電が起ることがある。そして、基板1とダミーブロック6との間で放電が起ると、基板1内の電界が乱れるので、光変調器により生成される変調光信号の品質が劣化してしまう。
【0009】
なお、電荷の偏在を緩和するための技術が提案されている(例えば、特許文献1)。動作点を調整する機能を備えた光変調器が知られている(例えば、特許文献2)。光導波路が形成される基板の端部に補強ブロックを設ける構成が知られている(例えば、特許文献3)。補強ブロックの表面を還元処理することにより、導電性を高めて電荷の偏在を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭62−73207号公報
【特許文献2】特開2003−233042号公報
【特許文献3】特開2009−258766号公報
【特許文献4】特開2013−186200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、焦電効果(すなわち、温度変化に起因する電荷の偏在)を抑制する技術が提案されている。しかしながら、従来技術では、ダミーブロック6の内部の焦電効果は抑制されない。例えば、ダミーブロック6の表面に対して還元処理を行えば、表面領域の導電性が高くなるので、焦電効果は抑制されるかも知れない。ただし、表面の還元処理だけでは、ダミーブロック6の内部の焦電効果が抑制されるわけではない。また、ダミーブロック6の表面が還元されたとしても、時間が経過すると、酸化により導電性が低くなってしまう。
【0012】
したがって、従来技術では、急激な温度変化が生じたときには、基板1とダミーブロック6との間で放電が起り得る。すなわち、焦電効果に起因して変調光信号の品質が劣化する問題は依然として残っている。
【0013】
本発明の1つの側面に係わる目的は、光変調器の基板とその基板の端部に設けられる保護部材との間の放電を回避または抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの態様の光変調器は、入力光導波路と、前記入力光導波路に光学的に結合される1組の分岐光導波路と、前記1組の分岐光導波路に光学的に結合される出力光導波路とが形成される強誘電体基板と、前記1組の分岐光導波路の少なくとも一方の近傍に形成される信号電極と、前記入力光導波路が形成される前記強誘電体基板の端部に取り付けられる第1の保護部材と、前記出力光導波路が形成される前記強誘電体基板の端部に取り付けられる第2の保護部材と、を備える。前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、モース硬度が前記強誘電体基板のモース硬度以下であり、且つ、焦電効果のないガラス材料で形成される。
【発明の効果】
【0015】
上述の態様によれば、光変調器の基板とその基板の端部に設けられる保護部材との間の放電が回避または抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】強誘電体基板の焦電効果を説明する図である。
【
図4】光変調器の温度ドリフトを説明する図である。
【
図6】モース硬度とダイシングブレードの磨耗量との関係の一例を示す図である。
【
図7】ガラス材料の磨耗度とダミーブロックの欠損率との関係の一例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係わる光変調器の一例を示す。
【
図9】第2の実施形態に係わる光変調器の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係わる光変調器の動作を説明する図である。なお、
図2に示す光変調器の構成は、
図1に示す光変調器と実質的に同じである。すなわち、光変調器は、基板1、入力光導波路2a、1組の直線光導波路2b、2c、出力光導波路2d、信号電極3、接地電極4、バッファ層5、ダミーブロック(保護部材)6を備える。なお、
図2(a)に示すように、信号電極3の一方の端部は電気信号源11に電気的に接続される。また、信号電極3の他方の端部は、抵抗を利用して終端される。
【0018】
基板1は、この実施例では、ZカットLiNbO3基板である。ただし、基板1の材料は、他の強誘電体材料であってもよい。たとえば、基板1の材料は、LiTaO3(タンタル酸リチウム)またはPLZT((Pb,La,Zr,Ti)O3)であってもよい。
【0019】
上記構成の光変調器において、不図示のレーザ光源により生成される連続光が入力光導波路2aに入力される。入力光は、分岐されて直線光導波路2b、2cに導かれる。直線光導波路2b、2cを介して伝搬される光は、合波され、出力光導波路2dを介して出力される。
【0020】
ここで、信号電極3に電気信号が与えられると、
図2(b)に示すように、信号電極3と接地電極4との間に電界が発生する。そして、この電界に起因するLiNbO3の電気光学効果により、直線光導波路2b、2cの屈折率が変化する。すなわち、直線光導波路2bを介して伝搬される光と直線光導波路2cを介して伝搬される光との間に、電気信号に対応する位相差が発生する。この結果、与えられる電気信号に対応する変調光信号が生成される。
【0021】
ただし、基板1は強誘電体基板なので、温度変化に対して焦電効果が生じる。ここで、基板1がZカット基板である場合、
図3(a)に示すように、基板1の上面近傍領域および底面近傍領域において電荷が偏在する。
図3(a)に示す例では、基板1の上面の近傍領域に正電荷が多く存在し、基板1の底面の近傍領域に負電荷が多く存在している。さらに、ダミーブロック6が基板1と同じ強誘電体で形成される場合は、
図3(b)に示すように、ダミーブロック6においても電荷が偏在する。なお、
図3(a)および
図3(b)は、それぞれ、
図2(a)に示す光変調器のA−A断面およびB−B断面を示す。
【0022】
基板1において電荷の偏在が発生すると、基板1内の電界が乱れる。そして、基板1内の電界が乱れると、直線光導波路2b、2cを介して伝搬される光の位相が乱れる。この結果、
図4に示すように、印加電圧に対する光出力カーブがシフトする現象が発生する。以下の記載では、この現象を「温度ドリフト」と呼ぶことがある。なお、温度ドリフトが発生すると、光変調器の動作点が最適点からずれる。この場合、光変調器により生成される変調光信号の品質が劣化してしまう。
【0023】
焦電効果により生じる電荷の量は、温度変化の速度に比例する。このため、光変調器の温度が急速に変化すると、基板1およびダミーブロック6に蓄積される電荷の量が増加する。そして、基板1およびダミーブロック6に蓄積される電荷の量が上限を超えると、その電荷が放電されることがある。例えば、基板1とダミーブロック6との間で放電が発生し得る。このような放電が発生すると、基板1の電界分布が急激に変化するので、直線光導波路2b、2cを介して伝搬される光の位相が急激に変化する。この結果、光変調器によって生成される変調光信号の品質が劣化してしまう。なお、蓄積電荷の放電に起因する光位相の変化は「位相ジャンプ」と呼ばれることがある。
【0024】
本発明の実施形態に係わる光変調器は、上述の問題を解決するために、焦電効果のない材料を用いてダミーブロックが形成される。一例として、焦電効果のないガラス材料を用いてダミーブロックが形成される。
【0025】
図5は、光変調器の製造工程の一例を示す。光変調器は、ウエハ10を利用して製造される。ウエハ10の材料は、この実施例では、LiNbO3である。そして、
図5(a)に示すように、ウエハ10の表面領域に光導波路2(入力光導波路2a、1組の直線光導波路2b、2c、出力光導波路2d)が形成される。バッファ層が形成された後、信号電極3および接地電極4が形成される。また、ウエハ10の上面にダミーブロック11が取り付けられる。ダミーブロック11は、例えば、接着剤でウエハ10に固定される。ダミーブロック11の材料は、後述するように、焦電効果のないガラス材料である。
【0026】
この後、
図5(b)に示すように、ダイシングブレード20を用いてウエハ10から光変調器チップが切り出される。このとき、ウエハ10およびダミーブロック11は、同時に切断される。なお、光変調器チップは、この例では、
図5(a)に示す光導波路2および電極3、4を含む。また、光導波路2の端部は、
図5(a)に示すように、ダミーブロック11により保護されている。
【0027】
焦電効果のないガラス材料としては、例えば、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスなどのケイ酸ガラスが考えられる。ただし、多くのケイ酸ガラスの硬度(ここでは、モース硬度)は、LiNbO3基板よりも高い。このため、LiNbO3基板を切断するために適したブレードを使用してウエハ10から光変調器チップを切り出すものとすると、ダミーブロック11によりダイシングブレード20の磨耗が大きくなる。
【0028】
図6は、モース硬度とダイシングブレードの磨耗量との関係の一例を示す。縦軸は、1枚のウエハを切断したときのダイシングブレード20の磨耗量を表す。なお、LiNbO3基板のモース硬度は5である。また、ガラス材料A〜Gは、以下の通りである。
A:ソーダ石灰ガラス
B:ランタン含有ガラス
C、D:ホウケイ酸ガラス
E:ビスマス含有ガラス
F、G:フツリン酸ガラス
【0029】
LiNbO3基板が切断されるケースと比較して、LiNbO3基板よりもモース硬度が高いガラス材料(
図6では、ガラス材料A、B)が切断されるときには、ダイシングブレード20の磨耗量が増加する。この場合、ダイシングブレード20の交換の頻度が高くなり、製造能力の低下またはコストの上昇が引き起こされる。なお、LiNbO3基板を切断するために適したブレードでモース硬度7の材料(例えば、水晶)を切断しようとすると、ブレードが破損するおそれがある。
【0030】
ホウケイ酸ガラス(
図6では、ガラス材料C、D)のモース硬度は、LiNbO3基板と同じである。ただし、LiNbO3基板が切断されるケースと比較して、ホウケイ酸ガラスが切断されるときも、ダイシングブレード20の磨耗量が増加する。
【0031】
一方、モース硬度の高いガラス材料を切断するために適したブレードを使用すると、基板1の切断面の品質が低くなるおそれがある。たとえば、光導波路(入力光導波路2a、出力光導波路2d)の端面が鏡面ではなくなるので、光変調器の挿入損失が大きくなってしまう。
【0032】
よって、ダミーブロック11は、LiNbO3基板よりもモース硬度の低いガラス材料で形成されることが好ましい。しかしながら、LiNbO3基板よりもモース硬度の低いガラス材料の多くは、磨耗度が大きい。このため、モース硬度の低いガラス材料でダミーブロック11が形成されると、ダイシング工程および光変調器チップを加工する工程(例えば、光変調器チップに光ファイバを取り付ける工程など)においてダミーブロック11が損傷するおそれがある。
【0033】
図7は、ガラス材料の磨耗度とダミーブロックの欠損率との関係の一例を示す。グラフの縦軸は、
図7に示すガラス材料でダミーブロック11が形成されたときに、ダイシング工程または光変調器チップを加工する工程においてダミーブロック11に欠損が発生する確率を表す。磨耗度は、この実施例では、下式で定義される。
Ha=100×(W/S)/(W
0/S
0)
Haは、磨耗度(abrasion)を表す。Wは、測定対象の試料の磨耗質量(g)を表す。W
0は、標準試料(ここでは、日本光学硝子工業会により指定される標準硝子)の磨耗質量(g)を表す。Sは、測定対象の試料の比重を表す。S
0は、標準試料の比重を表す。すなわち、磨耗度は、この実施例では、一定形状の試料(30×30×10mm)を、毎分60回転する回転円板に荷重(9.8N)を加えながら押し付けて、20mリットルの水に砥粒(#800)を含むラップ液で5分間ラッピングしたときの磨耗減量と、同一形状の日本光学硝子工業会により指定される標準硝子を同一条件で試験したときの磨耗減量との比を100倍した値を表す。
【0034】
図7に示すように、ダミーブロック11の欠損率は、ガラス材料の磨耗度に依存する。具体的には、ガラス材料の磨耗度が大きいほどダミーブロック11の欠損率が高くなる傾向が見られる。ここで、光変調器チップの製造コストを削減するためには、ダミーブロック11の欠損率を所定の閾値よりも低くすることが要求される。すなわち、ダミーブロック11を形成するためのガラス材料は、ダミーブロック11の欠損率が所定の閾値よりも低くなるように決定される。例えば、欠損率の閾値が10パーセントである場合、ガラス材料Gは、ダミーブロック11を形成するために選択されることはない。
【0035】
本発明の実施形態では、ダミーブロック11の欠損率がガラス材料の磨耗度に依存することを考慮し、磨耗度に基づいて、ダミーブロック11を形成するためのガラス材料が選択される。例えば、欠損率を10パーセント以下にするためには、ガラス材料の磨耗度が600以下であることが好ましい。この場合、
図7に示すように、ダミーブロック11を形成するためのガラス材料として、材料B、E、Fが選択され得る。ただし、ガラス材料Bのモース硬度は、
図6に示すように、LiNbO3基板よりも高い。したがって、
図6〜
図7に示す実施例では、ダミーブロック11を形成するためのガラス材料として、材料E、Fが選択され得る。
【0036】
なお、ガラス材料Eは、住田光学ガラス社製のビスマス含有ガラスK−PSFn214であり、その磨耗度は305である。また、ガラス材料Eでダミーブロック11を形成した場合、この実施例では、欠損率はゼロである。ガラス材料Fは、住田光学ガラス社製のフツリン酸ガラスK−GFK68であり、その磨耗度は540である。また、ガラス材料Fでダミーブロック11を形成した場合、この実施例では、欠損率は約5パーセントである。
【0037】
このように、ダミーブロック11は、以下の3つの条件を満足する材料で形成される。
(1)焦電効果がない
(2)基板1(例えば、LiNbO3基板)よりもモース硬度が低い
(3)磨耗度が600以下
【0038】
条件1は、ガラス材料を使用することにより満たされる。条件2は、
図6に示す実施例では、ガラス材料E〜Gにより満たされる。条件3は、
図7に示す実施例では、ガラス材料B、E、Fにより満たされる。ここで、多くのケースにおいて、モース硬度が高いガラス材料は、その磨耗度が小さい。例えば、ガラス材料Bのモース硬度は6であり、その磨耗度は約100である。換言すれば、磨耗度が所定の閾値よりも小さいガラス材料は、そのモース硬度がLiNbO3基板よりも高くなる可能性が高い。ここで、モース硬度5に対応する磨耗度の推定値は、約200である。よって、条件2は、「磨耗度が200以上」で置き換えることが可能である。或いは、条件3は、「磨耗度が200以上600以下」であってもよい。なお、上述の3つの条件を満たす材料としては、
図6〜
図7に示すガラス材料E、Fの他にも、住田光学ガラス社製のビスマス含有ガラスK−PSFn202を使用することが可能である。
【0039】
図8は、第1の実施形態に係わる光変調器の一例を示す。第1の実施形態の光変調器100は、基板1、信号電極3、接地電極4、ダミーブロック11を備える。基板1の表面領域には、光導波路2(入力光導波路2a、1組の直線光導波路2b、2c、出力光導波路2d)が形成されている。基板1、光導波路2、信号電極3、接地電極4の構成は、
図1および
図8において実質的に同じである。
【0040】
図1に示す光変調器と異なり、光変調器100においては、ダミーブロック11は、上述した3つの条件を満足する材料で形成される。具体的には、ダミーブロック11は、焦電効果がなく、且つ、モース硬度が基板1(例えば、LiNbO3基板)よりも低く、且つ、磨耗度が600以下であるガラス材料で形成される。
図6〜
図7に示す例では、ダミーブロック11を形成するための材料として、ガラス材料FまたはEが選択される。
【0041】
このように、焦電効果のないガラス材料でダミーブロック11が形成されるので、光変調器の温度が急激に変化した場合であっても、ダミーブロック11において焦電効果が発生しない。よって、ダミーブロック11と基板1との間の放電が回避または抑制される。したがって、基板1の電界分布の変化に起因する光信号の位相の変化(あるいは、位相ジャンプ)が抑制される。すなわち、光変調器により生成される変調光信号の品質が改善する。また、ダミーブロック11のモース硬度は、基板1のモース硬度よりも低いので、ウエハ10から光変調器チップを切り出すためのダイシングブレード20の磨耗量が増加することはなく、また、入力光導波路2aおよび出力光導波路2dの端面を傷つけることもない。さらに、ダミーブロック11の磨耗度が所定値よりも小さいので、ダミーブロック11の欠損率も低い。なお、ダミーブロック11は、入力光導波路2aおよび出力光導波路2dを保護すると共に、光変調器の光導波路に光学的に結合される光ファイバを保持する。
【0042】
図9は、第2の実施形態に係わる光変調器の一例を示す。第2の実施形態の光変調器200の構成は、
図8に示す第1の実施形態の光変調器100とほぼ同じである。
【0043】
ダミーブロック11は、接着剤で基板1に固定される。この例では、ダミーブロック11はガラス材料で形成されるので、ダミーブロック11は、例えば、エポキシ系接着剤で基板1に固定される。ところが、多くのケースにおいて、エポキシ系接着剤は紫外線により劣化する。
【0044】
例えば、光変調器チップに光ファイバを固定する際には、紫外線硬化接着剤が使用される。この場合、光ファイバを光変調器チップの所定位置に配置した状態で紫外線硬化接着剤が塗布される。その後、光変調器チップに紫外線を照射することにより、光変調器チップに光ファイバが固定される。このとき、紫外線によってエポキシ系接着剤が劣化するおそれがある。
【0045】
そこで、第2の実施形態では、ダミーブロック11を基板1に固定するための接着剤に紫外線が照射されないように、紫外線カット膜を設ける。具体的には、
図9(b)に示すように、ダミーブロック11の底面に紫外線カット膜12が形成される。紫外線カット膜12は、例えば、ダミーブロック11の底面に蒸着される。なお、「ダミーブロック11の底面」は、ダミーブロック11の表面のうち、基板1に接触する面を意味する。
【0046】
紫外線カット膜12は、ダミーブロック11の上面に形成してもよい。「ダミーブロック11の上面」は、ダミーブロック11の表面のうち、ダミーブロック11の底面の反対側の面を意味する。さらに、紫外線カット膜12は、ダミーブロック11の底面および上面に形成してもよい。
【0047】
なお、上述の実施例では、光変調器は1つのマッハツェンダ干渉計を備える構成であるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、本発明は、複数のマッハツェンダ干渉計を備える偏波多重光変調器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 基板
2a 入力光導波路
2b、2c 直線光導波路(分岐光導波路)
2d 出力光導波路
3 信号電極
4 接地電極
5 バッファ層
11 ダミーブロック
12 紫外線カット膜
100、200 光変調器
【要約】
【課題】光変調器の基板とその基板の端部に設けられる保護部材との間の放電を回避または抑制する。
【解決手段】光変調器は、入力光導波路と、入力光導波路に光学的に結合される1組の分岐光導波路と、1組の分岐光導波路に光学的に結合される出力光導波路とが形成される強誘電体基板と、1組の分岐光導波路の少なくとも一方の近傍に形成される信号電極と、入力光導波路が形成される強誘電体基板の端部に取り付けられる第1の保護部材と、出力光導波路が形成される強誘電体基板の端部に取り付けられる第2の保護部材と、を備える。第1の保護部材および第2の保護部材は、モース硬度が強誘電体基板のモース硬度以下であり、且つ、焦電効果のないガラス材料で形成される。
【選択図】
図8