特許第6227079号(P6227079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227079
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20171030BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 21/8242 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 27/108 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H01L29/78 618C
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 617K
   H01L27/06 102A
   H01L27/088 331E
   H01L27/088 E
   H01L27/088 H
   H01L29/78 371
   H01L29/58 G
   H01L29/50 M
   H01L27/105 441
   H01L21/28 301B
   H01L27/108 321
   H01L27/108 671C
   H01L27/108 671Z
   H01L27/108 671B
   H01L27/108 621Z
   H01L27/108 625
【請求項の数】1
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2016-183823(P2016-183823)
(22)【出願日】2016年9月21日
(62)【分割の表示】特願2012-105551(P2012-105551)の分割
【原出願日】2012年5月4日
(65)【公開番号】特開2017-17332(P2017-17332A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-106877(P2011-106877)
(32)【優先日】2011年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 敦生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】 脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−277665(JP,A)
【文献】 特開2001−085699(JP,A)
【文献】 特開2008−034760(JP,A)
【文献】 特開2008−060524(JP,A)
【文献】 特開2002−100780(JP,A)
【文献】 特開2006−278358(JP,A)
【文献】 特開平06−334185(JP,A)
【文献】 特開平06−302825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
H01L 21/28
H01L 21/8234
H01L 21/8239
H01L 21/8242
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 27/105
H01L 27/108
H01L 29/417
H01L 29/423
H01L 29/49
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチを有する絶縁層と、
前記絶縁層上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極層及びドレイン電極層と、
前記酸化物半導体層と重なるゲート電極層と、を有し、
前記酸化物半導体層は、第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域及び前記第2の領域の間に位置するチャネル形成領域とを有し、
前記ソース電極層は、前記第1の領域において、前記酸化物半導体層と接し、
前記ドレイン電極層は、前記第2の領域において、前記酸化物半導体層と接し、
前記第1の領域及び前記第2の領域は、前記チャネル形成領域よりも不純物濃度が高く、
前記チャネル形成領域は、前記トレンチの側面と接する領域と、前記トレンチの底面と接する領域とを有し、
前記第1の領域は、前記トレンチの側面と接する領域を有し、
前記第2の領域は、前記トレンチの側面と接する領域を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、半導体素子を利用した半導体装置およびその作製方法に関
する。
【背景技術】
【0002】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術
が注目されている。該トランジスタは、集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)の
ような電子デバイスに広く応用されている。また、トランジスタに適用可能な半導体薄膜
として、酸化物半導体を用いる技術が注目されている。
【0003】
例えば、In−Ga−Zn系酸化物で構成される酸化物半導体が、薄膜トランジスタの
チャネル形成領域に適用可能であることが確認されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−103957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トランジスタの動作の高速化、トランジスタの低消費電力化、高集積化、低
価格化、などを達成するためには、トランジスタの微細化は必須である。
【0006】
トランジスタを微細化する場合には、短チャネル効果の問題が生じる。短チャネル効果
とは、トランジスタの微細化(チャネル長の縮小)に伴って顕在化する電気特性の劣化で
ある。短チャネル効果は、ドレインの電界の効果がソースにまで及ぶことに起因するもの
である。短チャネル効果の具体例としては、しきい値電圧の低下、S値の増大、漏れ電流
の増大などがある。
【0007】
また、ソース電極層およびドレイン電極層と、チャネル形成領域に用いる酸化物半導体
膜とが直接接するトランジスタ構造とすると、コンタクト抵抗が高くなり、オン電流が抑
制されてしまう恐れがある。コンタクト抵抗が高くなる原因は、ソース電極層およびドレ
イン電極層と、酸化物半導体膜との接触面でショットキー接合が形成されることが要因の
一つと考えられる。
【0008】
そこで、開示する本発明の一態様は、短チャネル効果を抑制しつつ微細化を達成した半
導体装置およびその作製方法を提供することを目的の一とする。また、開示する本発明の
一態様は、ソース電極層およびドレイン電極層と、酸化物半導体膜との間の抵抗を低くし
て良好なオーミックコンタクトがとれる半導体装置およびその作製方法を提供することを
目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
酸化物半導体膜を含むトランジスタ(半導体装置)において、酸化物半導体膜を、絶縁
層に設けられたトレンチ(溝)に設ける。酸化物半導体膜は、少なくともトレンチの底面
、下端コーナー部および側面の一部と接する領域において、酸化物半導体膜の表面に、概
略垂直なc軸を有している結晶を含み、当該領域をチャネル形成領域として用いる。また
、酸化物半導体膜には、トレンチの上端コーナー部と接する領域において、当該チャネル
形成領域より不純物濃度が高い領域を形成し、当該領域をソース領域またはドレイン領域
として用いるものとする。
【0010】
本発明の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚
を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、
が設けられた絶縁層と、トレンチの底面および側面、第1の領域の上面に接して設けられ
た、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル形成領域を含む酸化物半導体膜と、ソース
領域およびドレイン領域と電気的に接続して設けられたソース電極層およびドレイン電極
層と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上に設けられたゲート絶縁層
と、ゲート絶縁層上に設けられ、トレンチ内を充填するゲート電極層と、を有し、チャネ
ル形成領域は、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含み、トレンチ
の側面および底面と接して設けられ、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領
域よりも不純物濃度が高く、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナー部
および第1の領域の上面と接して設けられている半導体装置である。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、ソース電極層、ドレイン電極層およびゲート電極層と重
畳しない酸化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域よりも不純物濃度が高い領域
を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の一態様は、底面と側面が交わる下端コーナー部に曲面が形成されて
おり、下端コーナー部の曲面は、20nm以上60nm以下の曲率半径を有することが好
ましい。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、ソース領域およびドレイン領域の一部は、ゲート電極層
と重畳している半導体装置である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い
第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成された
トレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、加熱しながらトレンチの底面および側
面、第1の領域の上面に接して酸化物半導体膜を形成し、少なくともトレンチの側面およ
び底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸
化物半導体膜を形成する工程と、不純物を第1の領域の上面の法線方向に対して斜めから
添加して、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナー部および第1の領域
の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面および底面に接してチ
ャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、ソース領域およびドレイン領域と電気的に接
続するソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電
極層およびドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレン
チ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域
は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い
第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成された
トレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、トレンチの底面および側面、第1の領
域の上面に接して非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程と、非晶質である酸化物半
導体膜を加熱して、少なくともトレンチの側面および底面に接する領域に、酸化物半導体
膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、不純
物を第1の領域の上面の法線方向に対して斜めから添加して、第1の領域の上面とトレン
チの側面が交わる上端コーナー部および第1の領域の上面に接してソース領域およびドレ
イン領域を、トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工
程と、ソース領域およびドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電
極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上にゲート
絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチ内を充填するゲート電極層を形成す
る工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃
度が高い半導体装置の作製方法である。
【0016】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い
第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成された
トレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、加熱しながらトレンチの底面および側
面、第1の領域の上面に接して酸化物半導体膜を形成し、少なくともトレンチの側面およ
び底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸
化物半導体膜を形成する工程と、ソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、
酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と
、ゲート絶縁層上にトレンチと重畳するようにトレンチ内を充填するゲート電極層を形成
する工程と、ゲート電極層の形成後に、ゲート電極層を通過するように不純物を添加し、
第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナー部および第1の領域の上面に接
してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面および底面に接してチャネル形成
領域をそれぞれ形成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形
成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い
第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成された
トレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、トレンチの底面および側面、第1の領
域の上面に接して非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程と、ソース電極層およびド
レイン電極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上
にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチと重畳するようにトレンチ
内を充填するゲート電極層を形成する工程と、ゲート電極層の形成後に、ゲート電極層を
通過するように不純物を添加し、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナ
ー部および第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面
および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、非晶質である酸化物半
導体膜を形成する工程乃至前記ゲート電極層を形成する工程のいずれか一の工程後に、非
晶質である酸化物半導体膜を加熱して、少なくともトレンチの側面および底面に接する領
域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形
成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純
物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0018】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い
第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成された
トレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、加熱しながらトレンチの底面および側
面、第1の領域の上面に接して酸化物半導体膜を形成し、少なくともトレンチの側面およ
び底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸
化物半導体膜を形成する工程と、トレンチの側面および底面を覆うレジストマスクを形成
する工程と、酸化物半導体膜に対して不純物を添加する工程と、上端コーナー部および第
1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面および底面に
接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、レジストマスクを除去する工程と、
ソース領域およびドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電極層を
形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上にゲート絶縁層
を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程
と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高
い半導体装置の作製方法である。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い
第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成された
トレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、トレンチの底面および側面、第1の領
域の上面に接して非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程と、酸化物半導体膜上に接
してトレンチの側面および底面を覆うレジストマスクを形成する工程と、酸化物半導体膜
に対して不純物を添加する工程と、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コー
ナー部および第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側
面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、レジストマスクを除
去する工程と、ソース領域およびドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびド
レイン電極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上
にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチ内を充填するゲート電極層
を形成する工程と、非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程後またはレジストマスク
を形成する工程後に、非晶質である酸化物半導体膜を加熱して、少なくともトレンチの側
面および底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を
含む酸化物半導体膜を形成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャ
ネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、レジストマスクを用いてソース領域およびドレイン領域
を形成する際、不純物の添加方法がプラズマ源改質イオンインプランテーション法または
プラズマベースイオンインプランテーション法であると好ましい。
【0021】
なお、本明細書等において「上」や「下」という用語は、構成要素の位置関係が「直上
」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「絶縁層上のゲート電極
層」の表現であれば、絶縁層とゲート電極層との間に他の構成要素を含むものを除外しな
い。
【0022】
また、本明細書等において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能
的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることが
あり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電
極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0023】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合
や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このた
め、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いるこ
とができるものとする。
【0024】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するも
の」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するも
の」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない
【0025】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線などが含まれる。
【0026】
また、本明細書等において、平均面粗さ(Ra)とは、JISB0601:2001(
ISO4287:1997)で定義されている中心線平均粗さ(Ra)を、測定面に対し
て適用できるよう三次元に拡張したものであり、基準面から指定面までの偏差の絶対値を
平均した値で表現される。
【0027】
ここで、中心線平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さL
部分を抜き取り、この抜き取り部の中心線の方向をx軸、縦倍率の方向(x軸に垂直な方
向)をy軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で表すとき、次の式(1)で与えられる。
【0028】
【数1】
【0029】
そして、平均面粗さ(Ra)は、測定データの示す面である測定面をz=f(x,y)
で表すとき、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で表現され、次の式(2
)で与えられる。
【0030】
【数2】
【0031】
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(x,y)(x,y
)(x,y)(x,y)の4点で表される四角形の領域とし、指定面が理想的
にフラットであるとしたときの面積をSとする。
【0032】
また、基準面とは、指定面の平均の高さにおける、xy平面と平行な面のことである。
つまり、指定面の高さの平均値をZとするとき、基準面の高さもZで表される。
【発明の効果】
【0033】
開示する発明の一態様によって、短チャネル効果を抑制しつつ、微細化を達成した半導
体装置およびその作製方法を提供することができる。また、ソース電極層およびドレイン
電極層と、酸化物半導体膜との間の抵抗を低くして良好なオーミックコンタクトがとれる
半導体装置およびその作製方法を提供することができる。
【0034】
また、開示する発明の一態様によって、トランジスタサイズを十分に小さくすることが
可能になる。トランジスタサイズを十分に小さくすることで、半導体装置の占める面積が
小さくなり、半導体装置の取り数が増大する。これにより、半導体装置あたりの製造コス
トは抑制される。また、半導体装置が小型化されるため、同程度の大きさでさらに機能が
高められた半導体装置を実現することができる。または、半導体装置の高集積化が可能と
なる。また、チャネル長の縮小による、動作の高速化、低消費電力化などの効果を得るこ
ともできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一態様の半導体装置を示す断面図および平面図。
図2】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
図3】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
図4】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
図5】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
図6】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
図7】本発明の一態様の半導体装置を示す断面図、平面図および回路図。
図8】本発明の一態様の半導体装置を示す回路図および斜視図。
図9】本発明の一態様の半導体装置を示す断面図および平面図。
図10】本発明の一態様の半導体装置を示す回路図。
図11】本発明の一態様の半導体装置を示すブロック図。
図12】本発明の一態様の半導体装置を示すブロック図。
図13】本発明の一態様の半導体装置を示すブロック図。
図14】実施例における実施例試料1のTEM像を示す図。
図15】実施例における実施例試料2のTEM像を示す図。
図16】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
図17】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
図18】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
図19】計算によって得られた移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
図20】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
図21】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
図22】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
図23】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以
下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態およ
び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以
下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明す
る実施の形態および実施例において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の
符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0037】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解を容易にするた
め、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明
は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0038】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の
混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0039】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置およびその作製工程の例に
ついて、図1乃至図3を用いて説明する。
【0040】
図1(A)に本実施の形態のトランジスタ162の平面図の一例を示す。また、図1
B)に図1(A)中の鎖線A1−A2における断面図を示す。
【0041】
本実施の形態に示すトランジスタ162は、トレンチ131が設けられた絶縁層130
と、ソース領域144a、ドレイン領域144bおよびチャネル形成領域144cを含む
酸化物半導体膜144と、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと、ゲー
ト絶縁層146と、ゲート電極層148と、を有する。
【0042】
ここで、上記構成の位置関係、接続関係について説明する。
【0043】
絶縁層130は、第1の膜厚を有する第1の領域130aと、第1の膜厚よりも薄い膜
厚を有する第2の領域130bと、を有しており、第2の領域130bが、第1の領域1
30aの一と、第1の領域130aの他の一と、の間に配置され、トレンチ131の底面
が第2の領域130bによって、トレンチ131の側面が第1の領域130aの一と、第
1の領域130aの他の一によってそれぞれ形成されている。
【0044】
なお、本明細書等において、第1の領域130aの上面とトレンチ131の側面が交わ
る部分を「上端コーナー部」、トレンチ131の底面と側面が交わる部分を「下端コーナ
ー部」と定義する。上端コーナー部および下端コーナー部は、その周辺の部分も含むもの
とする。
【0045】
酸化物半導体膜144は、トレンチ131の底面および側面、第1の領域130aの上
面に接して設けられている。酸化物半導体膜144中のソース領域144aおよびドレイ
ン領域144bは、第1の領域130aの上面とトレンチ131の側面が交わる上端コー
ナー部131aと接して設けられ、酸化物半導体膜144中のチャネル形成領域144c
は、上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面と接して設けられて
いる。チャネル形成領域144cは、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を
有する結晶を含み、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領
域144cよりも不純物濃度が高くなっている。
【0046】
ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bは、ソース領域144aおよびド
レイン領域144bと電気的に接続して設けられ、ゲート絶縁層146は、酸化物半導体
膜144、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b上に設けられ、ゲート電
極層148は、ゲート絶縁層146上に設けられ、トレンチ131内を充填している。
【0047】
次いで、各構成の詳細について説明する。
【0048】
絶縁層130にトレンチ131が設けられ、当該トレンチ131と接して酸化物半導体
膜144が設けられている。これにより、酸化物半導体膜144のチャネル長方向(キャ
リアが流れる方向)の断面形状は、トレンチ131の断面形状に沿って湾曲した形状とな
っており、トレンチ131の深さdが深くなるほどトランジスタ162の実効的なチャネ
ル長を長くすることができる。ここで、トレンチ131のチャネル長方向の長さLに対し
て実効的なチャネル長の長さが2L以上になるように、トレンチ131を設けることが好
ましい。
【0049】
トレンチ131の深さdを適宜決定することにより、酸化物半導体膜144のチャネル
形成領域を3次元方向(基板垂直方向)に延長させることができる。よって、トランジス
タ162の微細化を図り、ソース電極層142aとドレイン電極層142bの距離を短く
しても、実効的なチャネル長を維持または延長させることができる。故に、トランジスタ
162の微細化を達成しつつ、トランジスタ162の短チャネル効果を抑制することがで
きる。
【0050】
これにより、トランジスタ162のサイズを十分に小さくすることが可能になるので、
半導体装置の占める面積が小さくなり、半導体装置の取り数を増大させることができる。
これにより、半導体装置あたりの製造コストを抑制することができる。また、半導体装置
が小型化されるため、同程度の大きさでさらに機能が高められた半導体装置を実現するこ
とができる。または、半導体装置の高集積化が可能となる。また、チャネル長の縮小によ
る、動作の高速化、低消費電力化などの効果を得ることもできる。
【0051】
絶縁層130に設けられたトレンチ131は、下端コーナー部に曲面が形成されている
。下端コーナー部の曲面は20nm以上60nm以下の曲率半径を有することが好ましい
。また、下端コーナー部の表面は平坦性が高いことが好ましく、例えば、平均面粗さが好
ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.3nm以下、さらに好ましくは0.1nm
以下である。なお、平均面粗さが0に近いほど好ましい。このような下端コーナー部を有
するトレンチ131に接して後述する酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を
有する結晶を含む酸化物半導体膜を設けることにより、酸化物半導体膜の可視光や紫外光
の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。
【0052】
ここで、トランジスタ162に含まれる酸化物半導体膜144の少なくともチャネル形
成領域144cは、結晶性を有するものとし、CAAC−OS(C Axis Alig
ned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする
ことが好ましい。
【0053】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS
膜は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜
である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであるこ
とが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electr
on Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部
と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グ
レインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界
に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0054】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベク
トルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三
角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状また
は金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸
およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、
85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−
5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0055】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CA
AC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被
形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、C
AAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非
晶質化することもある。
【0056】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベク
トルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形
成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。
なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベク
トルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、ま
たは成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0057】
ここで、CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例について図16乃至図18を用い
て詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図16乃至図18は上方向をc軸方向と
し、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab
面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図16において、丸で囲まれたOは4
配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0058】
図16(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下
4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素
原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図16(A)の構造は、八面体構造をとるが、
理解を容易にするため平面構造で示している。なお、図16(A)の上半分および下半分
にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図16(A)に示す小グループは電荷が0であ
る。
【0059】
図16(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下
3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは
、いずれもab面に存在する。図16(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ
4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図16(B)に示す構造をとりうる
図16(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0060】
図16(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する
構造を示す。図16(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配
位のOがある。または、図16(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個
の4配位のOがあってもよい。図16(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0061】
図16(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する
構造を示す。図16(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配
位のOがある。図16(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0062】
図16(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図16(E)の上半分には1個
の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図16(E)に示す小グルー
プは電荷が−1となる。
【0063】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体
を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0064】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図16(A)に示
す6配位のInの上半分の3個のOは下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の
3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図16(B)に示す5配位のGa
の上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個
の近接Gaを有する。図16(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは下方向に1
個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。こ
の様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数
は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属
原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある
近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、
別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のときに、金属原子を有する二
種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはS
n)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位
の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合するこ
とになる。
【0065】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する
。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように小グループ同士が結合して
中グループを構成する。
【0066】
図17(A)に、In−Ga−Zn系酸化物の層構造を構成する中グループのモデル図
を示す。図17(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図1
7(C)は、図17(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0067】
図17(A)においては、理解を容易にするため、3配位のOは省略し、4配位のOは
個数のみ示し、例えば、Inの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあ
ることを丸枠の3として示している。同様に、図17(A)において、Gaの上半分およ
び下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同
様に、図17(A)において、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4
配位のOがあるZnを示している。
【0068】
図17(A)においてIn−Ga−Zn系酸化物の層構造を構成する中グループは、上
から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半
分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1
個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを
介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である
。この中グループを複数結合して大グループを構成する。
【0069】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.
667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(
4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、Zn
およびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グル
ープの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0070】
また、In−Ga−Zn系酸化物の層構造を構成する中グループは、図17(A)に示
した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせ
た大グループも取りうる。
【0071】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物や、
三元系金属の酸化物であるIn−Sn−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、Sn
−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物や、In
−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−
Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−E
u−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy
−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−
Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物や、二元系金属の
酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−M
g系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物や、In−Ga系酸化物、などを
用いた場合も同様である。
【0072】
例えば、図18(A)に、In−Sn−Zn系酸化物の層構造を構成する中グループの
モデル図を示す。
【0073】
図18(A)において、In−Sn−Zn系酸化物の層構造を構成するグループは、上
から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ
上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがある
Znと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半
分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn
2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して
4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中
グループを複数結合して大グループを構成する。
【0074】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)
の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+
1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−
1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図18(A)に示すように、2個のZnを
含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZn
を含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とす
ることができる。
【0075】
具体的には、図18(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Z
n系酸化物の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−
Sn−Zn系酸化物の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然
数。)とする組成式で表すことができる。
【0076】
ここで、チャネル形成領域144cには、CAAC−OS膜を用いることにより、可視
光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。
【0077】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コー
ナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、当該上端コーナー部131
aが急峻な角部であるために上記の酸化物半導体膜144中のCAAC−OS膜の表面に
、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、本実施の形
態のように、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース
領域144aおよびドレイン領域144bとすることで、チャネル形成領域144c全体
として、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続し
ている。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0078】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144c
よりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによって、不純物、例え
ばPが酸化物半導体の酸素の格子位置に入り、酸化物半導体中の金属Mと結合するととも
に酸素とも結合し、M−POx結合を形成する。そのことにより、酸化物半導体中で酸素
欠損が誘起され、キャリアが生成されコンタクト抵抗が低減するため、ソース電極層14
2aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコン
タクトをとることができる。
【0079】
よって、このような構成にすることにより安定した電気的特性が付与された、信頼性の
高い半導体装置を提供することができる。
【0080】
以下に、トランジスタ162の作製工程の一例を示す。
【0081】
まず、基板(図示しない)上に、絶縁層130を形成する(図2(A)参照)。
【0082】
半導体材料を含む基板としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多
結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用
することができ、当該基板上に半導体素子が形成されていてもよい。また、ガラス基板で
もよい。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体膜が設けられた構
成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半
導体膜が設けられた構成の基板も含むものとする。つまり、「SOI基板」が有する半導
体膜は、シリコン半導体膜に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶
縁基板上に絶縁層を介して半導体膜が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0083】
絶縁層130としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化
窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜等を形成することができる。また、絶縁層13
0が過剰に酸素を含んでいてもよい。
【0084】
次いで、絶縁層130にトレンチ131(溝とも呼ぶ)を形成する(図2(B)参照)
。トレンチ131は、例えば、絶縁層130上にフォトリソグラフィ工程によりレジスト
マスクを形成し、レジストマスクを用いた絶縁層130のエッチングによって形成するこ
とができる。
【0085】
トレンチ131の形成方法はフォトリソグラフィ法を用いたドライエッチング法を好適
に用いることができ、一回のエッチングまたは複数回のエッチングによって形成すること
ができる。複数回のエッチング工程を行う場合、ドライエッチング工程とウェットエッチ
ング工程を組み合わせてもよい。
【0086】
例えば、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etchin
g)法、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング
法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング
法、平行平板型(容量結合型)エッチング法、マグネトロンプラズマエッチング法、2周
波プラズマエッチング法またはヘリコン波プラズマエッチング法等のドライエッチング法
を用いることができる。また、エッチングガスとしては、三フッ化メタン(CHF)、
四フッ化炭素(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)などのフロロカーボン
系ガス、メタン(CH)、水素、ヘリウム、またはアルゴンなどの希ガスを、適宜混合
して用いることができる。
【0087】
次いで、トレンチ131の底面および側面、第1の領域130aの上面に接するように
、酸化物半導体膜144を形成する(図2(C)参照)。なお、少なくとも酸化物半導体
膜144において、後にチャネル形成領域となる領域は、CAAC−OS膜を用いている
【0088】
CAAC−OS膜を設けることにより、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化
を抑制することができる。よって、このようなCAAC−OS膜を設けることにより安定
した電気的特性が付与された、信頼性の高いトランジスタを提供することができる。
【0089】
酸化物半導体膜144をCAAC−OS膜とする際には、基板を加熱しながら酸化物半
導体膜144を形成すればよく、基板を加熱する温度としては、200℃を超えて700
℃以下、好ましくは300℃を超えて500℃以下、より好ましくは400℃以上450
℃以下とする。なお、酸化物半導体膜の形成時に、基板を加熱する温度を高くすることで
、非晶質な部分に対して結晶部分の占める割合の多いCAAC−OS膜とすることができ
る。
【0090】
また、酸化物半導体膜144をCAAC−OS膜とする他の方法としては、酸化物半導
体膜の成膜時の基板を加熱する温度を、好ましくは200℃未満、より好ましくは180
℃未満とすることによって酸化物半導体膜144を非晶質構造とし、非晶質状の酸化物半
導体膜に350℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃
以上、さらに好ましくは550℃以上の加熱処理を行って当該酸化物半導体膜の少なくと
も一部を結晶化させ、c軸配向を有する結晶を含む酸化物半導体膜144を形成すること
ができる。なお、非晶質状の酸化物半導体膜を加熱処理するタイミングは、後に形成され
るソース領域144a、ドレイン領域144bおよびチャネル形成領域144cの形成前
であったら、いつ行ってもよい。
【0091】
少なくとも上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面に接する酸
化物半導体膜144がCAAC−OS膜となっており、その領域を後述するチャネル形成
領域として用いる。
【0092】
酸化物半導体膜144の膜厚は、1nm以上100nm以下とし、スパッタリング法、
MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザー堆積法、
ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることがで
きる。また、酸化物半導体膜144は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直
に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置、所謂CPスパッタ装置
(Columnar Plasma Sputtering system)を用いて成
膜してもよい。なお、本実施の形態では、酸化物半導体膜144を島状に加工する。
【0093】
なお、酸化物半導体の成膜を行う前に、成膜室の加熱および排気を行って、成膜室中の
水素、水、水酸基、水素化物などの不純物を除去しておくことが好ましい。特に成膜室の
内壁に吸着して存在するこれらの不純物を除去することが重要である。ここで、加熱処理
は、例えば、100℃以上450℃以下で行えばよい。また、処理室の排気は、ドライポ
ンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプおよびクライオポ
ンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサ
イズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、水の排気能力の高
いクライオポンプおよび水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせること
が有効となる。また、このとき、不活性ガスを導入しながら不純物の除去を行うと、排気
するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。このよう
な処理を行って酸化物半導体の成膜前に成膜室の不純物を除去することにより、酸化物半
導体膜144への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐことができる。
【0094】
用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を
含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用
いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに
加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(S
n)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有する
ことが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ま
しい。
【0095】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム
(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウ
ム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホ
ルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、
ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0096】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸
化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg
系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属
の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn
系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系
酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸
化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化
物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物
、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、
In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、I
n−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、
In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al
−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を
用いることができる。
【0097】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分と
して有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、Inと
GaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0098】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、かつ、mは整数でない
)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ば
れた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSn
(ZnO)(n>0、かつ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0099】
例えば、原子数比で、In:Ga:Zn=1:1:1あるいはIn:Ga:Zn=2:
2:1のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あ
るいは、原子数比で、In:Sn:Zn=1:1:1、In:Sn:Zn=2:1:3あ
るいはIn:Sn:Zn=2:1:5のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸
化物を用いるとよい。
【0100】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)
に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、
キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密
度等を適切なものとすることが好ましい。
【0101】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしな
がら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を
上げることができる。また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減
することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度
を得ることができる。
【0102】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b
+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+
C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)+(b−B)
+(c−C)≦rを満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の
酸化物でも同様である。
【0103】
酸化物半導体としてIn−Ga−Zn系の酸化物半導体の材料を用いる場合、用いるタ
ーゲットの組成比はIn:Ga:ZnO=1:x:y[mol比](xは0
以上、yは0.5以上5以下)を用いるのが好適である。例えば、In:Ga
:ZnO=1:1:2[mol比]の組成比を有するターゲットなどを用いることがで
きる。また、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol比]の組成比を有す
るターゲットや、In:Ga:ZnO=1:1:4[mol比]の組成比を
有するターゲットの組成比を有するターゲットを用いることもできる。
【0104】
また、酸化物半導体としてIn−Sn−Zn系の酸化物半導体の材料を用いる場合、用
いるターゲット中の金属元素の原子数比は、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn
:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=1:1:1あるいはIn:Sn:Zn=20:
45:35などとすればよい。
【0105】
また、酸化物半導体としてIn−Zn系の酸化物半導体の材料を用いる場合、用いるタ
ーゲット中の金属元素の原子数比は、In:Zn=50:1〜1:2(モル比に換算する
とIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1
(モル比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn
:Zn=15:1〜1.5:1(モル比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3
:4)とする。例えば、In−Zn系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数
比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0106】
なお、酸化物半導体膜144は、成膜時に酸素が多く含まれるような条件(例えば、酸
素100%の雰囲気下でスパッタリング法により成膜を行うなど)で成膜して、酸素を多
く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含
有量が過剰な領域が含まれている)膜とすることが好ましい。
【0107】
成膜の雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または、希
ガスと酸素の混合雰囲気下などとすればよい。ここで、成膜時に希ガスより酸素の体積比
を大きくすることにより、酸化物半導体膜144に酸素を容易に供給することができ、酸
化物半導体膜144中の酸素欠損を低減することができる。また、酸化物半導体膜144
への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐために、水素、水、水酸基、水素化物
などの不純物が十分に除去された高純度ガスを用いた雰囲気とすることが望ましい。
【0108】
酸化物半導体膜144成膜後、酸化物半導体膜144に対して、過剰な水素(水や水酸
基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための熱処理を行ってもよい。熱処理を
行うことによって、酸化物半導体膜144中に含まれる水素原子、または水素原子を含む
物質をさらに除去することができる。熱処理の温度は、不活性ガス雰囲気下、250℃以
上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする
。不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を
主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい
。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度
を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すな
わち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0109】
当該熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に基板を導入し、窒素雰囲気下
、450℃、1時間の条件で行うことができる。
【0110】
また、熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、また
は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、LRTA(Lam
p Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid
Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal An
neal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライ
ドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧
水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置
である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、
アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活
性気体が用いられる。なお、加熱処理装置としてGRTA装置を用いる場合には、その熱
処理時間が短いため、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中で基板を加熱し
てもよい。
【0111】
なお、上述の熱処理には水素や水などを除去する効果があるため、当該熱処理を、脱水
化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該熱処理は、例えば、酸化物半導体
膜を島状に加工した後などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このよう
な脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0112】
また、上記の熱処理で酸化物半導体膜144を加熱した後、同じ炉にて加酸素化(酸化
物半導体膜に酸素を加えることをいう。以降、同様である。)のための熱処理を行っても
よい。該熱処理は、熱処理装置に高純度の酸素ガス、高純度のNOガス、または超乾燥
エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定し
た場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好
ましくは10ppb以下の空気)を導入し、200℃以上基板の歪み点未満で熱処理を行
えばよい。好ましくは、250℃以上450℃以下で熱処理を行えばよい。特にこれらの
ガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。また、同じ炉に導入する酸素ガス
またはNOガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち不純物濃度を1ppm以
下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガスまたはNOガスの
作用によって、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程で低減してしまった酸
化物半導体を構成する主成分材料の一つである酸素を供給することができる。この工程に
より、脱水化または脱水素化処理により生じた酸素欠損を補填することができる。
【0113】
なお、上述の熱処理には脱水化処理または脱水素化処理により酸化物半導体中に生じた
酸素欠損を補填する効果があるため、当該熱処理を、加酸素化処理などと呼ぶこともでき
る。当該熱処理は、例えば、酸化物半導体膜を島状に加工した後などのタイミングにおい
て行うことも可能である。また、このような加酸素化処理は、一回に限らず複数回行って
も良い。
【0114】
次いで、第1の領域130aの上面とトレンチ131の側面が交わる上端コーナー部1
31aおよび第1の領域130aの上面に接する酸化物半導体膜144に不純物141を
添加する処理を行って、ソース領域144aおよびドレイン領域144bを形成する。同
時に酸化物半導体膜144に不純物141が添加されなかった領域(CAAC−OS膜と
なっている、上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面に接する酸
化物半導体膜144)がチャネル形成領域144cとして機能する(図3(A)参照)。
【0115】
添加する不純物141は、リン、ホウ素、窒素、ヒ素、アルゴン、アルミニウム、また
はこれらを含む分子イオンなどがある。また、上端コーナー部131aおよび第1の領域
130aの上面に接する酸化物半導体膜144に不純物141を添加する方法として、イ
オンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。本実施の
形態では、チャネル形成領域として機能する上端コーナー部131aを除くトレンチ13
1の側面および底面と接する酸化物半導体膜144に不純物141を添加させないように
第1の領域130aの上面(半導体材料を含む基板面)を第1の領域130aの上面に対
して傾けながら回転させて不純物141を添加する。
【0116】
基板表面(第1の領域130aの上面)の法線方向を基準にして不純物が射出される射
出方向との間でなす角度をθ(0°<θ<90°)とする。設定の加速電圧をVac、ド
ーズ量をDとすると、第1の領域130aの上面に接する酸化物半導体膜144に添加
される不純物141の第1の領域130aの上面に垂直な実効加速電圧はVac×cos
θ、ドーズ量はD×cosθとなり、トレンチ131の側面と接する酸化物半導体膜1
44に添加される不純物141のトレンチ131の側面に垂直な実効加速電圧はVac×
sinθ、ドーズ量はD×sinθとなる。θが小さいとθが大きいときと比較してト
レンチ131の側面の深くまで不純物を添加することができるが、sinθが小さくなる
ため、ドーズ量は少なくなる。
【0117】
例えば、θ=60°、加速電圧を40kV、ドーズ量を2×1015ions/cm
で添加すると、第1の領域130aの上面に接する酸化物半導体膜144には、第1の領
域130aの上面に垂直な実効加速電圧を20kV、ドーズ量を1×1015ions/
cmで、トレンチ131の側面と接する酸化物半導体膜144には、トレンチ131の
側面に垂直な実効加速電圧を35kV、ドーズ量を1.7×1015ions/cm
添加される。
【0118】
また、θの最大値は、次の式(3)を満たすθ(0°<θ<90°)である。Lはトレ
ンチ131のチャネル長方向の長さを、tは酸化物半導体膜の膜厚をそれぞれ表す。
【0119】
【数3】
【0120】
例えば、トレンチ131のチャネル長方向の長さを350nm、酸化物半導体膜144
の膜厚を20nmとすると、θの最大値は約84°となる。
【0121】
なお、上記の「イオンドーピング法」とは、原料ガスから生成されるイオン化したガス
を質量分離せず、そのまま電界で加速して対象物に照射し、イオン化したガスの元素を対
象物に含ませる方式を指す。また、上記の「イオンインプランテーション法」とは、「イ
オン注入法」とも呼ばれ、原料ガスをプラズマ化し、このプラズマに含まれるイオン種を
引き出し、質量分離をして、所定の質量を有するイオン種を加速して、イオンビームとし
て、対象物に注入する方法である。
【0122】
なお、酸化物半導体膜144に不純物141を添加する処理は、複数回行っても良い。
酸化物半導体膜144に不純物141を添加する処理を複数回行う場合、不純物141は
複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0123】
なお、不純物141のドーズ量は、1×1014〜2×1016ions/cmとす
るのが好ましい。また、不純物としてリンを添加する場合、加速電圧を10〜50kVと
するのが好ましい。また、酸化物半導体膜の膜厚がさらに薄い場合には、加速電圧やドー
ズ量を適宜調整すればよい。本実施の形態では、不純物141としてリンを、イオンイン
プランテーション法を用いて酸化物半導体膜144に加速電圧を40kV、ドーズ量を2
×1015ions/cm、θ=60°の条件で添加する。
【0124】
ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部
131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な
角部であるために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶
の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、本実施の形態のように、上端コーナー部1
31aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領
域144bとすることにより上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜
144をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸
化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よ
って、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0125】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144c
よりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗
が低くなるため、後に形成されるソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと
酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0126】
また、不純物を添加する領域を、上端コーナー部131aよりトレンチ131の底面方
向側のトレンチ131の側面に接する酸化物半導体膜144にまで延伸し、ソース領域1
44aおよびドレイン領域144bを上端コーナー部131aよりもトレンチ131の底
面方向側に延伸してもよい。また、ソース領域144aとドレイン領域144bのトレン
チ131の底面方向側に延伸させる長さは異なっていてもよい。
【0127】
次いで、ソース領域144aおよびドレイン領域144b上に、導電層を形成し、該導
電層を加工してソース領域144aおよびドレイン領域144bと電気的に接続するよう
にソース電極層142aおよびドレイン電極層142bを形成する。また、ソース領域1
44aとソース電極層142aとの間、ドレイン領域144bおよびドレイン電極層14
2bとの間には、電極や配線などを介していても良い。また、ソース領域144aおよび
ドレイン領域144bの下にソース電極層142aおよびドレイン電極層142bを形成
する構成としてもよい。
【0128】
ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bは、モリブデン、チタン、タンタ
ル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料ま
たはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。
【0129】
次いで、酸化物半導体膜144、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b
上にゲート絶縁層146を形成する(図3(B)参照)。
【0130】
ゲート絶縁層146の膜厚は、1nm以上100nm以下とし、スパッタリング法、M
BE法、CVD法、パルスレーザー堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。なお
、酸化物半導体膜144と接することを考慮すれば、水素等の不純物が十分に除去されて
いることが好ましいため、ゲート絶縁層146は、水素等の不純物が含まれにくいスパッ
タリング法を用いて形成することが好ましい。
【0131】
ゲート絶縁層146の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニ
ウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸
化シリコン膜等を用いて形成することができる。さらに、ゲート絶縁層146は、作製す
るトランジスタのサイズやゲート絶縁層146の段差被覆性を考慮して形成することが好
ましい。
【0132】
本実施の形態では、ゲート絶縁層146として、SiO2+α(ただし、α>0)であ
る酸化シリコン膜を用いる。この酸化シリコン膜をゲート絶縁層146として用いること
で、In−Ga−Zn系の酸化物半導体に酸素を供給することができ、特性を良好にする
ことができる。
【0133】
また、ゲート絶縁層146の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ラン
タン、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、ハフニウムアルミ
ネート(HfAl(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート
、窒素が添加されたハフニウムアルミネートなどのhigh−k材料を用いることでゲー
トリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁層146は、単層構造としても良いし、
積層構造としても良い。
【0134】
ゲート絶縁層146の成膜後に、加酸素化のための熱処理を行ってもよい。熱処理の温
度は、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で200℃以上450℃以下とするのが
好ましく、250℃以上350℃以下とするのがより好ましい。当該熱処理を行うことに
よって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、酸化物半
導体膜144と接するゲート絶縁層146が酸素を含む場合、酸化物半導体膜144に酸
素を供給し、該酸化物半導体膜144の酸素欠損を補填することができる。
【0135】
上記の脱水化または脱水素化のための熱処理および加酸素化のための熱処理を行うこと
により、i型(真性)またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜を形成することもできる
【0136】
酸化物半導体膜144に接している絶縁層130においてもゲート絶縁層146と同様
のことがいえる。
【0137】
なお、本実施の形態では、ゲート絶縁層146の形成後に加酸素化のため熱処理を行っ
ているが、当該熱処理のタイミングはこれに限定されない。例えば、ソース電極層142
aおよびドレイン電極層142bを形成した後に当該熱処理を行っても良い。また、加酸
素化のための熱処理に脱水化または脱水素化のための熱処理を兼ねさせても良い。
【0138】
次いで、ゲート絶縁層146を介して酸化物半導体膜144上にゲート電極層148を
形成する(図3(C)参照)。本実施の形態において、ゲート電極層148は、ソース領
域144aおよびドレイン領域144bの一部と重畳し、トレンチ131内を充填するよ
うに設けられる。
【0139】
ゲート電極層148の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミ
ニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする
合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層148としてリン等の不純
物元素を添加した多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシ
リサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層148は、単層構造としてもよいし、積層構造
としてもよい。
【0140】
ゲート絶縁層146と接するゲート電極層148の一層として、窒素を含む金属酸化物
、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜、窒素を含むIn−Sn−O膜、窒素
を含むIn−Ga−O膜、窒素を含むIn−Zn−O膜、窒素を含むSn−O膜、窒素を
含むIn−O膜、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いるのが好ましい。これらの膜
は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、ゲート電極層148として用い
た場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマ
リーオフのスイッチング素子を実現できるためである。
【0141】
また、ゲート電極層148を形成後、さらに不純物171を酸化物半導体膜144に対
して添加してトランジスタ172を作製してもよい(図4参照)。添加する不純物171
は、不純物141と同様のものを用いることができる。このようにすることにより、酸化
物半導体膜144中の、ソース電極層142a、ドレイン電極層142bおよびゲート電
極層148と重畳しない領域にソース領域144aおよびドレイン領域144bよりも不
純物濃度が高い領域144d、領域144eを形成することができる。このように領域1
44dおよび領域144eの不純物濃度を高めるとトランジスタ172の寄生抵抗を下げ
ることができ、トランジスタ172のオン電流や移動度を向上させることができる。
【0142】
以上によって、本実施の形態のトランジスタ162、トランジスタ172を作製するこ
とができる。本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172は、酸化物半
導体膜144がトレンチ131の底面および側面に接して設けられていることで、ソース
電極層142aおよびドレイン電極層142b間の距離(トランジスタ162、トランジ
スタ172の見かけ上のチャネル長)よりも、トランジスタ162、トランジスタ172
の実効的なチャネル長を長くすることが可能である。例えば、トランジスタ162、トラ
ンジスタ172において、トレンチ131の側面、底面に接して酸化物半導体膜144を
形成することで、チャネル長はトレンチ131の底面の長さ(第2の領域130bのチャ
ネル長方向の長さ)の2倍以上とすることができる。よって、トランジスタサイズの縮小
を図りつつ、短チャネル効果を抑制することが可能である。
【0143】
また、本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172において、ソース
領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131a
と接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な角部であ
るために先述した酸化物半導体膜144の表面に概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の
連続性が低い恐れがある。しかし、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半
導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることにより上端コ
ーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をチャネル形成領域として用
いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に概略垂
直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気
的特性を付与することが可能となる。
【0144】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144c
よりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗
が低くなるため、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜
144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0145】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0146】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で示したトランジスタ162の他の作製方法を、図
2および図5を用いて説明する。
【0147】
まず、半導体材料を含む基板(図示しない)上に、絶縁層130を形成する(図2(A
)参照)。
【0148】
次いで、絶縁層130にトレンチ131を形成する(図2(B)参照)。
【0149】
次いで、トレンチ131の底面および側面、第1の領域130aの上面に接するように
、酸化物半導体膜144を形成する(図5(A)参照)。
【0150】
絶縁層130、トレンチ131、酸化物半導体膜144の形成方法、材料などは先の実
施の形態を参酌することができる。
【0151】
次いで、酸化物半導体膜144上に、導電層を形成し、該導電層を加工してソース電極
層142aおよびドレイン電極層142bを形成する(図5(B)参照)。
【0152】
ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bの形成方法、材料などは先の実施
形態を参酌することができる。
【0153】
次いで、酸化物半導体膜144、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b
上にゲート絶縁層146を形成する(図5(B)参照)。
【0154】
ゲート絶縁層146の形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0155】
本実施の形態では、ゲート絶縁層146として、膜厚20nmのSiO2+α(ただし
、α>0)である酸化シリコン膜を用いる。
【0156】
次いで、ゲート絶縁層146を介して酸化物半導体膜144上にゲート電極層148を
形成する(図5(C)参照)。
【0157】
ゲート電極層148の形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0158】
本実施の形態では、ゲート電極層148として、窒化タンタルを用いる。ゲート電極層
148は、トレンチ131内を充填し、かつ、該充填されたトレンチ131、および上端
コーナー部131aに接するゲート絶縁層146、上に100nm積層されている。
【0159】
次いで、少なくとも、第1の領域130aの上面とトレンチ131の側面が交わる上端
コーナー部131aおよび第1の領域130a、の上面に接する酸化物半導体膜144に
不純物151を添加する処理を行って、ソース領域144aおよびドレイン領域144b
を形成する。なお、ゲート電極層148と重なる酸化物半導体膜144中には、ゲート電
極層148を通過させて不純物イオンを添加する。同時に酸化物半導体膜144に不純物
151が添加されなかった領域(CAAC−OS膜となっている、上端コーナー部131
aを除くトレンチ131の側面および底面に接する酸化物半導体膜144)がチャネル形
成領域144cとして機能する。
【0160】
添加する不純物151は、リン、ホウ素、窒素、ヒ素、アルゴン、アルミニウム、また
はこれらを含む分子イオンなどがある。また、上端コーナー部131aおよび第1の領域
130aの上面に接する酸化物半導体膜144に不純物151を添加する方法として、イ
オンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。
【0161】
なお、酸化物半導体膜144に不純物151を添加する処理は、複数回行っても良い。
酸化物半導体膜144に不純物151を添加する処理を複数回行う場合、不純物151は
複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0162】
なお、不純物151のドーズ量は、1×1014〜2×1016ions/cmとす
るのが好ましい。また、不純物としてリンを添加する場合、加速電圧を180〜200k
Vとするのが好ましく、不純物としてホウ素を添加する場合、加速電圧を60〜70kV
とするのが好ましい。本実施の形態では、先の実施の形態に示す基板表面(第1の領域1
30aの上面)の法線方向を基準にして不純物が射出される射出方向との間でなす角度を
θ=0°、不純物151としてリンを、イオンインプランテーション法を用いて酸化物半
導体膜144に加速電圧を190kV、ドーズ量を5×1015ions/cmの条件
で添加する。
【0163】
ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部
131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な
角部であるために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶
の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、本実施の形態のように、上端コーナー部1
31aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領
域144bとすることにより上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜
144をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸
化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よ
って、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0164】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144c
よりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗
が低くなるため、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜
144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0165】
また、不純物を添加する領域を、上端コーナー部131aよりトレンチ131の底面方
向側のトレンチ131の側面に接する酸化物半導体膜144にまで延伸し、ソース領域1
44aおよびドレイン領域144bを上端コーナー部131aよりもトレンチ131の底
面方向側に延伸してもよい。また、ソース領域144aとドレイン領域144bのトレン
チ131の底面方向側に延伸させる長さは異なっていてもよい。
【0166】
また、先の実施の形態の図4に示すように、酸化物半導体膜144中のソース電極層1
42a、ドレイン電極層142bおよびゲート電極層148と重畳しない領域にソース領
域144aおよびドレイン領域144bよりも不純物濃度が高い領域144d、領域14
4eを形成するトランジスタ172を作製してもよい。このように領域144dおよび領
域144eの不純物濃度を高めるとトランジスタ172の寄生抵抗を下げることができ、
トランジスタ172のオン電流や移動度を向上させることができる。
【0167】
以上によって、本実施の形態のトランジスタ162、トランジスタ172を作製するこ
とができる。本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172は、酸化物半
導体膜144がトレンチ131の底面および側面に接して設けられていることで、ソース
電極層142aおよびドレイン電極層142b間の距離(トランジスタ162、トランジ
スタ172の見かけ上のチャネル長)よりも、トランジスタ162、トランジスタ172
の実効的なチャネル長を長くすることが可能である。例えば、トランジスタ162、トラ
ンジスタ172において、トレンチ131の側面、底面に接して酸化物半導体膜144を
形成することで、チャネル長はトレンチ131の底面の長さ(第2の領域130bのチャ
ネル長方向の長さ)の2倍以上とすることができる。よって、トランジスタサイズの縮小
を図りつつ、短チャネル効果を抑制することが可能である。
【0168】
また、本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172において、ソース
領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131a
と接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な角部であ
るために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面
の連続性が低い恐れがある。しかし、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物
半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることで、チャネ
ル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有す
る結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与す
ることが可能となる。
【0169】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144c
よりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗
が低くなるため、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜
144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0170】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0171】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で示したトランジスタ162の他の作製方法を、図
2および図6を用いて説明する。
【0172】
まず、半導体材料を含む基板(図示しない)上に、絶縁層130を形成する(図2(A
)参照)。
【0173】
次いで、絶縁層130にトレンチ131を形成する(図2(B)参照)。
【0174】
次いで、トレンチ131の底面および側面、第1の領域130aの上面に接するように
、酸化物半導体膜144を形成する(図6(A)参照)。
【0175】
上記の絶縁層130、トレンチ131、酸化物半導体膜144の形成方法、材料などは
先の実施の形態を参酌することができる。
【0176】
次いで、酸化物半導体膜144上に接して上端コーナー部131aを除くトレンチ13
1の側面および底面を覆うレジストマスク140を形成し、少なくとも、第1の領域13
0aの上面とトレンチ131の側面が交わる上端コーナー部131aおよび第1の領域1
30a、の上面に接する酸化物半導体膜144に不純物161を添加する処理を行って、
ソース領域144aおよびドレイン領域144bを形成する。同時に酸化物半導体膜14
4に不純物161が添加されなかった領域(CAAC−OS膜となっている、上端コーナ
ー部131aを除くトレンチ131の側面および底面に接する酸化物半導体膜144)が
チャネル形成領域144cとして機能する(図6(B)参照)。
【0177】
添加する不純物161は、リン、ホウ素、窒素、ヒ素、アルゴン、アルミニウム、また
はこれらを含む分子イオンなどがある。また、上端コーナー部131aおよび第1の領域
130aの上面に接する酸化物半導体膜144に不純物161を添加する方法として、プ
ラズマ源改質イオンインプランテーション(PIII:Plasma Immersio
n Ion Implantation)法またはプラズマベースイオンインプランテー
ション(PBII:Plasma Based Ion Implantation)法
を用いることができる。
【0178】
なお、上記の「PIII法」、「PBII法」とは、プラズマをベースにした三次元の
イオン注入法であり、プラズマ中に試料を入れ、試料に電圧を印加すると、その電圧によ
りイオンが加速されて試料に注入される方法である。上記方法を用いることで、凹凸面が
ある試料であっても三次元方向からイオンが均等に注入される。
【0179】
なお、酸化物半導体膜144に不純物161を添加する処理は、複数回行っても良い。
酸化物半導体膜144に不純物161を添加する処理を複数回行う場合、不純物161は
複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0180】
なお、不純物161のドーズ量は、1×1014〜2×1016ions/cmとす
るのが好ましい。また、不純物としてリンを添加する場合、加速電圧を10〜50kVと
するのが好ましい。また、酸化物半導体膜の膜厚がさらに薄い場合には、加速電圧やドー
ズ量を適宜調整すればよい。本実施の形態では、不純物161としてリンを、PIII法
を用いて酸化物半導体膜144に加速電圧を20kV、ドーズ量を1×1015ions
/cm、の条件で添加する。
【0181】
ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部
131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な
角部であるために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶
の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、本実施の形態のように、上端コーナー部1
31aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領
域144bとすることにより上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜
144をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸
化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よ
って、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0182】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144c
よりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗
が低くなるため、後に形成されるソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと
酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0183】
また、不純物を添加する領域を、上端コーナー部131aよりトレンチ131の底面方
向側のトレンチ131の側面に接する酸化物半導体膜144にまで延伸し、ソース領域1
44aおよびドレイン領域144bを上端コーナー部131aよりもトレンチ131の底
面方向側に延伸してもよい。また、ソース領域144aとドレイン領域144bのトレン
チ131の底面方向側に延伸させる長さは異なっていてもよい。
【0184】
次いで、レジストマスク140を除去し、ソース領域144aおよびドレイン領域14
4b上に、導電層を形成し、該導電層を加工してソース領域144aおよびドレイン領域
144bと電気的に接続するようにソース電極層142aおよびドレイン電極層142b
を形成する(図6(C)参照)。また、ソース領域144aとソース電極層142aとの
間、ドレイン領域144bおよびドレイン電極層142bとの間には、電極や配線などを
介していても良い。
【0185】
ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bの形成方法、材料などは先の実施
形態を参酌することができる。
【0186】
次いで、酸化物半導体膜144、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b
上にゲート絶縁層146を形成する。
【0187】
ゲート絶縁層146の形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0188】
次いで、ゲート絶縁層146を介して酸化物半導体膜144上にゲート電極層148を
形成する(図6(D)参照)。本実施の形態において、ゲート電極層148は、ソース領
域144aおよびドレイン領域144bの一部と重畳し、トレンチ131内を充填するよ
うに設けられる。
【0189】
ゲート電極層148の形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0190】
また、先の実施の形態の図4に示すように、ゲート電極層148を形成後、さらに不純
物171を酸化物半導体膜144に対して添加してトランジスタ172を作製してもよい
。添加する不純物171は、不純物161と同様のものを用いることができる。このよう
にすることにより、酸化物半導体膜144中の、ソース電極層142a、ドレイン電極層
142bおよびゲート電極層148と重畳しない領域にソース領域144aおよびドレイ
ン領域144bよりも不純物濃度が高い領域144d、領域144eを形成することがで
きる。このように領域144dおよび領域144eの不純物濃度を高めるとトランジスタ
172の寄生抵抗を下げることができ、トランジスタ172のオン電流や移動度を向上さ
せることができる。
【0191】
以上によって、本実施の形態のトランジスタ162、トランジスタ172を作製するこ
とができる。本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172は、酸化物半
導体膜144がトレンチ131の底面および側面に接して設けられていることで、ソース
電極層142aおよびドレイン電極層142b間の距離(トランジスタ162、トランジ
スタ172の見かけ上のチャネル長)よりも、トランジスタ162、トランジスタ172
の実効的なチャネル長を長くすることが可能である。例えば、トランジスタ162におい
て、トレンチ131の側面、底面に接して酸化物半導体膜144を形成することで、チャ
ネル長はトレンチ131の底面の長さ(第2の領域130bのチャネル長方向の長さ)の
2倍以上とすることができる。よって、トランジスタサイズの縮小を図りつつ、短チャネ
ル効果を抑制することが可能である。
【0192】
また、本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172において、ソース
領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131a
と接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な角部であ
るために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面
の連続性が低い恐れがある。しかし、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物
半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることにより上端
コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をチャネル形成領域として
用いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に、概
略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な
電気的特性を付与することが可能となる。
【0193】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144c
よりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗
が低くなるため、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜
144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0194】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0195】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1に示すトランジスタ162を使用し、電力が供給され
ない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の
一例を、図7を用いて説明する。
【0196】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、酸化物半導体以外の半導体材料(シリコ
ンなど)を用いたトランジスタよりもオフ電流が小さいため、これを用いることにより長
期にわたり、記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要と
しない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可
能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0197】
図7は、半導体装置の構成の一例である。図7(A)に、半導体装置の断面図を、図7
(B)に半導体装置の平面図を、図7(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。ここ
で、図7(A)は、図7(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。
【0198】
図7(A)および図7(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたト
ランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有する
ものである。トランジスタ162は、実施の形態1で示した構成と同一であるため、図7
(A)、図7(B)において図1と同じ箇所は、同じ符号を用いて説明する。
【0199】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすること
が望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど
)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料
を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトラン
ジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0200】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明
するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、開
示する発明の技術的な本質は、情報を保持するためにトレンチの上端コーナー部と接する
酸化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域を有するトランジスタ162を用いる
点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体
的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0201】
図7(A)におけるトランジスタ160は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含
む基板100に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むよ
うに設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と
、チャネル形成領域116上に設けられた絶縁層108と、絶縁層108上に設けられた
ゲート電極層110と、を有する。
【0202】
図7(A)には図示しないが、トランジスタ160の金属化合物領域124の一部には
、電極が接続されていてもよい。ここで、電極は、トランジスタ160のソース電極層や
ドレイン電極層として機能する。また、基板100上にはトランジスタ160を囲むよう
に素子分離絶縁層106が設けられており、トランジスタ160を覆うように絶縁層13
0が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図7(A)に示すようにトラ
ンジスタ160がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、
トランジスタ160の特性を重視する場合には、ゲート電極層110の側面にサイドウォ
ール絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120としてもよい。
【0203】
図7(A)に示すようにトランジスタ162は、トレンチの上端コーナー部と接する酸
化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域を有するトランジスタである。ここで、
酸化物半導体膜144は、脱水化処理や脱水素化処理によって高純度化されたものである
ことが望ましい。
【0204】
酸化物半導体膜144には、不純物を添加する処理が行われており、ソース領域144
a、ドレイン領域144bおよびチャネル形成領域144cが設けられている。
【0205】
ゲート絶縁層146を介して、トランジスタ162のソース電極層142aと重畳する
領域には、導電層153が設けられており、ソース電極層142aと、ゲート絶縁層14
6と、導電層153とによって、容量素子164が構成される。すなわち、トランジスタ
162のソース電極層142aは、容量素子164の一方の電極として機能し、導電層1
53は、容量素子164の他方の電極として機能する。導電層153は、ゲート電極層1
48と同じ工程で作製することができる。なお、容量が不要の場合には、容量素子164
を設けない構成とすることもできる。また、容量素子164は、別途、トランジスタ16
2の上方に設けてもよい。例えば、トレンチ型の容量素子やスタック型の容量素子を別途
、トランジスタ162の上方、或いは、トランジスタ160の下方に形成し、3次元的に
積み重ねることでより高集積化を図ってもよい。
【0206】
トランジスタ162および容量素子164の上には絶縁層152が設けられている。そ
して、絶縁層152上にはトランジスタ162と、他のトランジスタを接続するための配
線156が設けられている。なお、図7(A)には図示しないが、配線156は、ゲート
絶縁層146、および絶縁層152などに形成された開口に形成された電極を介してドレ
イン電極層142bと電気的に接続されていてもよい。ここで、電極は、少なくともトラ
ンジスタ162の酸化物半導体膜144の一部と重畳するように設けられることが好まし
い。
【0207】
図7(A)および図7(B)において、トランジスタ160と、トランジスタ162と
は、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ160のソース領域
またはドレイン領域と酸化物半導体膜144の一部が重畳するように設けられているのが
好ましい。また、トランジスタ162および容量素子164が、トランジスタ160の少
なくとも一部と重畳するように設けられている。このような平面レイアウトを採用するこ
とにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることが
できる。
【0208】
なお、金属化合物領域124とドレイン電極層142bの接続は、例えば、ドレイン電
極層142bを直接、金属化合物領域124に接触させても良い。または、配線156を
直接、ドレイン電極層142bに接触させても良い。
【0209】
次に、図7(A)および図7(B)に対応する回路構成の一例を図7(C)に示す。
【0210】
図7(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ160のソース
電極層とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ160
のドレイン電極層とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line
)とトランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層の一方とは、電気的に接続
され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ162のゲート電極層とは、電
気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極層と、トランジスタ1
62のソース電極層またはドレイン電極層の他方は、容量素子164の電極の一方と電気
的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子164の電極の他方は電気
的に接続されている。
【0211】
図7(C)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極層の電位が保持可
能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能であ
る。
【0212】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジス
タ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これによ
り、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極層、および容量素子164に
与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極層には、所定の電荷が与えられ
る(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電
荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配
線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオ
フ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極層に与えられた電荷が保持さ
れる(保持)。
【0213】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ160のゲート電極
層の電荷は長時間にわたって保持される。
【0214】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状
態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲー
ト電極層に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トラン
ジスタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極層にHighレ
ベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ160の
ゲート電極層にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_L
り低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160を「オ
ン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配
線の電位をVth_HとVth_Lの間の電位Vとすることにより、トランジスタ16
0のゲート電極層に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、High
レベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれ
ば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合
には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ160は「オ
フ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報
を読み出すことができる。
【0215】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読
み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極層の状
態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_
より小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極層の状態にかかわら
ずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい
電位を第5の配線に与えればよい。
【0216】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電
流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持す
ることが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ
動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することがで
きる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)で
あっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0217】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、
素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲー
トへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため
、絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置
では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性
が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き
込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0218】
また、トランジスタ162にトレンチ構造を採用することで、トランジスタ162の平
面面積を縮小できるため、高集積化が可能である。さらに、トランジスタ162は、酸化
物半導体膜において、ソース領域およびドレイン領域の一部が形成される、上端コーナー
部と接して設けられる酸化物半導体膜は、上端コーナー部が急峻な角部であるために先述
した酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れ
がある。しかし、上端コーナー部と接して設けられる酸化物半導体膜をソース領域および
ドレイン領域とすることにより上端コーナー部と接して設けられる酸化物半導体膜をチャ
ネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域全体として、酸化物半導体膜の表面に
、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安
定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0219】
また、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高くな
っている。不純物濃度を高くすることによって抵抗が低くなるため、ソース電極層および
ドレイン電極層と酸化物半導体膜の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる
【0220】
また、トランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現することが
でき、短チャネル効果を抑制しつつ、微細化を達成した半導体装置を提供することができ
る。
【0221】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0222】
(実施の形態5)
本実施の形態においては、実施の形態1に示すトランジスタ162を使用し、電力が供
給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体
装置について、実施の形態4に示した構成と異なる構成について、図8および図9を用い
て説明を行う。
【0223】
図8(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、図8(B)は半導体装置の一例を
示す概念図である。まず、図8(A)に示す半導体装置について説明を行い、続けて図8
(B)に示す半導体装置について、以下で説明を行う。
【0224】
図8(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ162のソース電
極層またはドレイン電極層とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ162の
ゲート電極層とは電気的に接続され、トランジスタ162のソース電極層またはドレイン
電極層と容量素子254の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0225】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有
している。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、容量素子254の第
1の端子の電位(あるいは、容量素子254に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたっ
て保持することが可能である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタ162では、短
チャネル効果が現れにくいというメリットもある。
【0226】
次に、図8(A)に示す半導体装置(メモリセル250)に、情報の書き込みおよび保
持を行う場合について説明する。
【0227】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位として、トラ
ンジスタ162をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子254
の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ
162がオフ状態となる電位として、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、
容量素子254の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0228】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいから、容量素子254の第1の端子の電
位(あるいは容量素子に蓄積された電荷)は長時間にわたって保持することができる。
【0229】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ162がオン状態となると、浮
遊状態であるビット線BLと容量素子254とが導通し、ビット線BLと容量素子254
の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの
電位の変化量は、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子254に蓄積さ
れた電荷)によって、異なる値をとる。
【0230】
例えば、容量素子254の第1の端子の電位をV、容量素子254の容量をC、ビット
線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前
のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は
、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル250の状態と
して、容量素子254の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとると
すると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V
1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB
×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0231】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことがで
きる。
【0232】
このように、図8(A)に示す半導体装置は、トランジスタ162のオフ電流が極めて
小さいという特徴から、容量素子254に蓄積された電荷は長時間にわたって保持するこ
とができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻
度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。ま
た、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能で
ある。
【0233】
次に、図8(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0234】
図8(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図8(A)に示したメモリセル
250を複数有するメモリセルアレイ251aおよびメモリセルアレイ251bを有し、
下部に、メモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251aおよびメモリセルアレイ2
51b)を動作させるために必要な周辺回路253を有する。なお、周辺回路253は、
メモリセルアレイ251と電気的に接続されている。
【0235】
図8(B)に示した構成とすることにより、周辺回路253をメモリセルアレイ251
(メモリセルアレイ251aおよびメモリセルアレイ251b)の直下に設けることがで
きるため半導体装置の小型化を図ることができる。
【0236】
周辺回路253に設けられるトランジスタは、トランジスタ162とは異なる半導体材
料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム
、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いること
が好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いた
トランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高
速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能で
ある。
【0237】
なお、図8(B)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ251(メモリセ
ルアレイ251aおよびメモリセルアレイ251b)が積層された構成を例示したが、積
層するメモリセルの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルを積層する構成とし
ても良い。
【0238】
次に、図8(A)に示したメモリセル250の具体的な構成について図9を用いて説明
を行う。
【0239】
図9は、メモリセル250の構成の一例である。図9(A)に、メモリセル250の断
面図を、図9(B)にメモリセル250の平面図をそれぞれ示す。ここで、図9(A)は
図9(B)のF1−F2およびG1−G2における断面に相当する。
【0240】
図9(A)および図9(B)に示すトランジスタ162は、実施の形態1で示した構成
と同一であるため、図9(A)、図9(B)において図1と同じ箇所は、同じ符号を用い
て説明する。
【0241】
図9(A)に示すようにトランジスタ162は、トレンチの上端コーナー部と接する酸
化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域を有するトランジスタである。ここで、
酸化物半導体膜144は、脱水化処理や脱水素化処理により高純度化されたものであるこ
とが望ましい。
【0242】
酸化物半導体膜144には、不純物を添加する処理が行われており、ソース領域144
a、ドレイン領域144bおよびチャネル形成領域144cが設けられている。
【0243】
ゲート絶縁層146を介して、トランジスタ162のソース電極層142aと重畳する
領域には、導電層153が設けられており、ソース電極層142aと、ゲート絶縁層14
6と、導電層153とによって、容量素子254が構成される。すなわち、トランジスタ
162のソース電極層142aは、容量素子254の一方の電極として機能し、導電層1
53は、容量素子254の他方の電極として機能する。また、導電層153は、ゲート電
極層148と同じ工程で作製することができる。
【0244】
トランジスタ162および容量素子254の上には絶縁層152が設けられている。そ
して、絶縁層152上にはメモリセル250と、隣接するメモリセル250を接続するた
めの配線260が設けられている。配線260は、ゲート絶縁層146および絶縁層15
2などに形成された開口を介してトランジスタ162のドレイン電極層142bと電気的
に接続されている。但し、開口に他の導電層を設け、該他の導電層を介して、配線260
とドレイン電極層142bとを電気的に接続してもよい。なお、配線260は、図8(A
)の回路図におけるビット線BLに相当する。
【0245】
図9(A)および図9(B)において、トランジスタ162のドレイン電極層142b
は、隣接するメモリセルに含まれるトランジスタのソース電極層としても機能している。
このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図るこ
とができるため、高集積化を図ることができる。
【0246】
以上のように、上部に多層に形成された複数のメモリセルは、トレンチの上端コーナー
部と接する酸化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域を有するトランジスタによ
り形成されている。上記トランジスタは、オフ電流が小さいため、これを用いることによ
り長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度
を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0247】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速
動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(
より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備え
ることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺
回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
【0248】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0249】
(実施の形態6)
本実施の形態では、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタの電界効果移
動度について図19を参照して説明する。
【0250】
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度
は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。移動度を低下させる要因とし
ては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデ
ルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き
出せる。
【0251】
半導体本来の移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかの
ポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、次の式(4)で表現できる。
【0252】
【数4】
【0253】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kはボルツマン定数、Tは絶対温度であ
る。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルで
は、次の式(5)で表される。
【0254】
【数5】
【0255】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体
の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当た
りの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半
導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。
【0256】
線形領域におけるドレイン電流Iは、次の式(6)で表される。
【0257】
【数6】
【0258】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmで
ある。また、Vはドレイン電圧である。上式の両辺をVで割り、さらに両辺の対数を
取ると、次の式(7)となる。
【0259】
【数7】
【0260】
この右辺はVの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(I/V)、
横軸を1/Vとする直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタ
のI―V特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(I
n)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは
欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0261】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに上記式(4)および式(5)よりμ=12
0cm/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される移動度は
40cm/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体と絶縁層との界面の欠陥
が無い酸化物半導体の移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0262】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁層との界面での散乱によ
ってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁層界面からxだけ離
れた場所における移動度μは、次の式(8)で表される。
【0263】
【数8】
【0264】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、lは定数である。Bおよびlは、実際の測定結果
より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、l=1
0nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる
)と上記式(8)の第2項が増加するため、移動度μは低下することがわかる。
【0265】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動
度μを計算した結果を図19に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレ
ーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体の、バンド
ギャップを2.8eV、電子親和力を4.7eV、比誘電率を15、厚さを15nmとし
た。さらに、ゲート電極層、ソース電極層、ドレイン電極層の仕事関数をそれぞれ、5.
5eV、4.6eV、4.6eVとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘
電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧V
は0.1Vである。
【0266】
図19で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm/Vs以上のピーク
をつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱の影響が大きくなり、移動度が低
下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にするこ
と(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0267】
このような移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の
特性を計算した結果を図20乃至図22に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面
構造を図23に示す。図23に示すトランジスタは酸化物半導体膜にnの導電型を呈す
る半導体領域303aおよび半導体領域303cを有する。半導体領域303aおよび半
導体領域303cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0268】
図23(A)に示すトランジスタは、下地絶縁層301と、下地絶縁層301に埋め込
まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁層302の上に形成され
る。トランジスタは半導体領域303a、半導体領域303cと、それらに挟まれ、チャ
ネル形成領域となる真性の半導体領域303bと、ゲート電極層305を有する。ゲート
電極層305の幅を33nmとする。
【0269】
ゲート電極層305と半導体領域303bの間には、ゲート絶縁層304を有し、また
、ゲート電極層305の両側面には側壁絶縁層306aおよび側壁絶縁層306b、ゲー
ト電極層305の上部には、ゲート電極層305と他の配線との短絡を防止するための絶
縁層307を有する。側壁絶縁層の幅は5nmとする。また、半導体領域303aおよび
半導体領域303cに接して、ソース電極層308aおよびドレイン電極層308bを有
する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0270】
図23(B)に示すトランジスタは、下地絶縁層301と、酸化アルミニウムよりなる
埋め込み絶縁層302の上に形成され、半導体領域303a、半導体領域303cと、そ
れらに挟まれた真性の半導体領域303bと、幅33nmのゲート電極層305とゲート
絶縁層304と側壁絶縁層306aおよび側壁絶縁層306bと絶縁層307とソース電
極層308aおよびドレイン電極層308bを有する点で図23(A)に示すトランジス
タと同じである。
【0271】
図23(A)に示すトランジスタと図23(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁
絶縁層306aおよび側壁絶縁層306bの下の半導体領域の導電型である。図23(A
)に示すトランジスタでは、側壁絶縁層306aおよび側壁絶縁層306bの下の半導体
領域はnの導電型を呈する半導体領域303aおよび半導体領域303cであるが、図
23(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域303bである。すなわち、半導
体領域303a(半導体領域303c)とゲート電極層305がLoffだけ重ならない
領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長と
いう。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁層306a(側壁絶縁層306
b)の幅と同じである。
【0272】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバ
イスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図20
図23(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(I、実線)および移動
度(μ、点線)のゲート電圧(V、ゲート電極層とソース電極層の電位差)依存性を示
す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧(ドレイン電極層とソース電極層の電位差)を+
1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0273】
図20(A)はゲート絶縁層の厚さを15nmとしたものであり、図20(B)は10
nmとしたものであり、図20(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁層が薄くな
るほど、特にオフ状態でのドレイン電流I(オフ電流)が顕著に低下する。一方、移動
度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流I(オン電流)には目立った変化が無い。
ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えるこ
とが示された。
【0274】
図21は、図23(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5
nmとしたもののドレイン電流I(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧V
存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧
を+0.1Vとして計算したものである。図21(A)はゲート絶縁層の厚さを15nm
としたものであり、図21(B)は10nmとしたものであり、図21(C)は5nmと
したものである。
【0275】
また、図22は、図23(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Lof
fを15nmとしたもののドレイン電流I(実線)および移動度μ(点線)のゲート電
圧依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン
電圧を+0.1Vとして計算したものである。図22(A)はゲート絶縁膜の厚さを15
nmとしたものであり、図22(B)は10nmとしたものであり、図22(C)は5n
mとしたものである。
【0276】
いずれもゲート絶縁層が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、移動度μのピ
ーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0277】
なお、移動度μのピークは、図20では80cm/Vs程度であるが、図21では6
0cm/Vs程度、図22では40cm/Vsと、オフセット長Loffが増加する
ほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流にはオフセット長L
offの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである
。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる1
0μAを超えることが示された。
【0278】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0279】
(実施の形態7)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した半導体装置を携帯電話、スマートフォン、
電子書籍などの携帯機器に応用した場合の例を図10乃至図13を用いて説明する。
【0280】
携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器においては、画像データの一時記
憶などにSRAMまたはDRAMが使用されている。SRAMまたはDRAMは使用され
る理由としてはフラッシュメモリでは応答が遅く、画像処理では不向きであるためである
。一方で、SRAMまたはDRAMを画像データの一時記憶に用いた場合以下の特徴があ
る。
【0281】
通常のSRAMは、図10(A)に示すように1つのメモリセルがトランジスタ801
〜トランジスタ806の6個のトランジスタで構成されており、それをXデコーダー80
7、Yデコーダー808にて駆動している。トランジスタ803とトランジスタ805、
トランジスタ804とトランジスタ806はインバータを構成し、高速駆動を可能として
いる。しかし1つのメモリセルが6トランジスタで構成されているため、セル面積が大き
いという欠点がある。デザインルールの最小寸法をFとしたときにSRAMのメモリセル
面積は通常100〜150Fである。このため、SRAMはビットあたりの単価が各種
メモリの中で最も高い。
【0282】
それに対して、DRAMはメモリセルが図10(B)に示すようにトランジスタ811
、保持容量812によって構成され、それをXデコーダー813、Yデコーダー814に
て駆動している。1つのセルが1つのトランジスタと1つの容量の構成になっており、面
積が小さい。DRAMのメモリセル面積は通常10F以下である。ただし、DRAMは
常にリフレッシュが必要であり、書き換えを行わない場合でも電力を消費する。
【0283】
しかし、先の実施の形態で説明した半導体装置のメモリセル面積は、10F前後であ
り、かつ頻繁なリフレッシュは不要である。したがって、メモリセル面積が縮小され、か
つ消費電力が低減することができる。
【0284】
図11に携帯機器のブロック図を示す。図11に示す携帯機器はRF回路901、アナ
ログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電
源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプ
レイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919
、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表
示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。ア
プリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェイス(I
F)909を有している。一般にメモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成され
ており、この部分に先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報
の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、かつ消費電力が十分に
低減することができる。
【0285】
図12に、ディスプレイのメモリ回路950に先の実施の形態で説明した半導体装置を
使用した例を示す。図12に示すメモリ回路950は、メモリ952、メモリ953、ス
イッチ954、スイッチ955およびメモリコントローラ951により構成されている。
また、メモリ回路950は、信号線からの画像データ(入力画像データ)、メモリ952
、およびメモリ953に記憶されたデータ(記憶画像データ)を読み出し、および制御を
行うディスプレイコントローラ956と、ディスプレイコントローラ956からの信号に
より表示するディスプレイ957が接続されている。
【0286】
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成さ
れる(入力画像データA)。入力画像データAは、スイッチ954を介してメモリ952
に記憶される。そしてメモリ952に記憶された画像データ(記憶画像データA)は、ス
イッチ955、およびディスプレイコントローラ956を介してディスプレイ957に送
られ、表示される。
【0287】
入力画像データAに変更が無い場合、記憶画像データAは、通常30〜60Hz程度の
周期でメモリ952からスイッチ955を介して、ディスプレイコントローラ956によ
り読み出される。
【0288】
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データ
Aに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像デー
タB)を形成する。入力画像データBはスイッチ954を介してメモリ953に記憶され
る。この間も定期的にメモリ952からスイッチ955を介して記憶画像データAは読み
出されている。メモリ953に新たな画像データ(記憶画像データB)が記憶し終わると
、ディスプレイ957の次のフレームより、記憶画像データBは読み出され、スイッチ9
55、およびディスプレイコントローラ956を介して、ディスプレイ957に記憶画像
データBが送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データが
メモリ952に記憶されるまで継続される。
【0289】
このようにメモリ952およびメモリ953は交互に画像データの書き込みと、画像デ
ータの読み出しを行うことによって、ディスプレイ957の表示をおこなう。なお、メモ
リ952およびメモリ953はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割
して使用してもよい。先の実施の形態で説明した半導体装置をメモリ952およびメモリ
953に採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶
保持が可能で、かつ消費電力が十分に低減することができる。
【0290】
図13に電子書籍のブロック図を示す。図13はバッテリー1001、電源回路100
2、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キー
ボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、
ディスプレイコントローラ1010によって構成される。
【0291】
ここでは、図13のメモリ回路1007に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用
することができる。メモリ回路1007の役割は書籍の内容を一時的に保持する機能を持
つ。機能の例としては、ユーザーがハイライト機能を使用する場合などがある。ユーザー
が電子書籍を読んでいるときに、特定の箇所にマーキングをしたい場合がある。このマー
キング機能をハイライト機能といい、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を
太くする、文字の書体を変えるなどによって、周囲との違いを示すことである。ユーザー
が指定した箇所の情報を記憶し、保持する機能である。この情報を長期に保存する場合に
はフラッシュメモリ1004にコピーしても良い。このような場合においても、先の実施
の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが
高速で、長期間の記憶保持が可能で、かつ消費電力が十分に低減することができる。
【0292】
以上のように、本実施の形態に示す携帯機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が
搭載されている。このため、読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、かつ消費電
力を低減した携帯機器が実現される。
【0293】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組
み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0294】
本実施例では、実施の形態1に示すように絶縁層にトレンチを形成し、該トレンチに酸
化物半導体膜を形成した試料を作製し、酸化物半導体膜の結晶状態について観察を行った
【0295】
まず、試料として作製工程が異なる、実施例試料1、および実施例試料2の2種類を作
製した。
【0296】
実施例試料1、および実施例試料2において、絶縁層としてシリコン基板上にスパッタ
リング法による酸化シリコン膜を膜厚500nm形成した。
【0297】
酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO)ターゲット
を用い、シリコン基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源2k
W、アルゴンおよび酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下
、基板温度100℃とした。
【0298】
酸化シリコン膜上にフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、レジスト
マスクを用いて酸化シリコン膜をエッチングし、トレンチを形成した。エッチング工程と
しては、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型
プラズマ)エッチング法により、エッチングガスとして三フッ化メタン(CHF)、ヘ
リウム(He)、およびメタン(CH)(CHF:He:CH=22.5sccm
:127.5sccm:5sccm)を用い、電源電力475W、バイアス電力300W
、圧力3.5Paで、96秒間行った。なお、エッチング工程の後に、酸素によるアッシ
ング(電源電力200W、圧力67Pa(0.5Torr)、300秒間)を行った。ト
レンチの断面における側面(内壁)の長さ(図1(B)におけるトレンチ131の深さd
)の2倍と底部の長さ(図1(B)におけるトレンチ131のチャネル長方向の長さL)
の合計は約350nmとした。
【0299】
酸化シリコン膜上から剥離液を用いてレジストマスクを除去し、トレンチの底面、上端
コーナー部、下端コーナー部、および側面に接して酸化シリコン膜上に酸化物半導体膜を
形成した。酸化物半導体膜として、スパッタリング法によりIn−Ga−Zn−O膜を膜
厚40nm形成した。
【0300】
実施例試料1では、基板を400℃に加熱しながら酸化物半導体膜の成膜を行った。な
お、実施例試料1のIn−Ga−Zn−O膜の成膜条件は、組成比として、原子数比で、
In:Ga:Zn=1:1:1の酸化物ターゲットを用い、シリコン基板とターゲットと
の間の距離を60mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴンおよび
酸素(アルゴン流量30sccm:酸素流量15sccm)雰囲気下、基板温度400℃
とした。酸化物半導体膜の成膜に用いるアルゴンおよび酸素雰囲気下では、水、水素など
が含まれないことが好ましい。例えば、アルゴンの純度を9N、露点−121℃、水0.
1ppb、水素0.5ppb、酸素の純度を8N、露点−112℃、水1ppb、水素1
ppbが好ましい。
【0301】
一方、実施例試料2では、基板を200℃に加熱しながら酸化物半導体膜の成膜を行い
、成膜後窒素雰囲気下、600℃で1時間加熱処理を行った。なお、実施例試料2のIn
−Ga−Zn−O膜の成膜条件は、組成比として、原子数比で、In:Ga:Z=1:1
:1の酸化物ターゲットを用い、シリコン基板とターゲットとの間の距離を60mm、圧
力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴンおよび酸素(アルゴン流量30s
ccm:酸素流量15sccm)雰囲気下とした。
【0302】
以上の工程で得られた実施例試料1および実施例試料2において、断面を切り出し、高
分解能透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H9000−NAR」:TEM)で
加速電圧を300kVとし、上端コーナー部、下端コーナー部の断面観察を行った。図1
4(A)に実施例試料1の上端コーナー部の倍率200万倍のTEM像、図14(B)に
実施例試料1の上端コーナー部の倍率800万倍のTEM像、図14(C)に実施例試料
1の下端コーナー部の倍率200万倍のTEM像、図14(D)に実施例試料1の下端コ
ーナー部の倍率800万倍のTEM像、図15(A)に実施例試料2の上端コーナー部の
倍率200万倍のTEM像、図15(B)に実施例試料2の上端コーナー部の倍率800
万倍のTEM像、図15(C)に実施例試料2の下端コーナー部の倍率200万倍のTE
M像、図15(D)に実施例試料2の下端コーナー部の倍率800万倍のTEM像、をそ
れぞれ示す。
【0303】
図14(C)、図15(C)に示すように、トレンチにおける下端コーナー部は曲面状
であり、該曲率半径は20nm以上30nm以下であった。そして曲面状の下端コーナー
部には、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含むIn−Ga−Zn−O膜(CAA
C−OS膜)が確認できる。表面に概略垂直なc軸を有している結晶は高倍率の図14
D)、図15(D)でより顕著であり、In−Ga−Zn−O膜中に下端コーナー部の曲
面に沿って幾層に重なる層状のIn−Ga−Zn−Oの結晶状態が確認できた。
【0304】
しかし、図14(A)、図15(A)に示すように、トレンチにおける上端コーナー部
には急峻な角部があることが確認できる。また、高倍率の図14(B)、図15(B)に
示すように、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含むIn−Ga−Zn−O膜(C
AAC−OS膜)を下端コーナー部ほど確認することはできなかった。
【0305】
このことから、実施例試料1および実施例試料2において、トレンチの下端コーナー部
に接して成膜された酸化物半導体膜は、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結
晶性酸化物半導体膜(CAAC−OS膜)であり、そのCAAC−OS膜の成長面は曲面
状の下端コーナー部において連続性を有することが確認できた。一方、トレンチの上端コ
ーナー部に接して成膜された酸化物半導体膜は、トレンチの下端コーナー部に接して成膜
された酸化物半導体膜に比べてCAAC−OS膜の成長面の連続性はあまり確認できなか
った。
【0306】
下端コーナー部において、CAAC−OS膜がトレンチに設けられており、可視光や紫
外光の照射によるトランジスタの電気的特性変化、および短チャネル効果がより抑制でき
る。
【0307】
また、上端コーナー部において、下端コーナー部に比べてCAAC−OS膜の成長面の
連続性は確認できず、結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。
【0308】
しかし、先の実施の形態に示したように上端コーナー部と接して設けられる酸化物半導
体膜をソース領域およびドレイン領域とすることにより上端コーナー部と接して設けられ
る酸化物半導体膜をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域全体として、
酸化物半導体膜の表面に概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、
トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0309】
また、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高くな
っている。不純物濃度を高くすることによって抵抗が低くなるため、ソース電極層および
ドレイン電極層と酸化物半導体膜の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる
【0310】
よって、トランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現すること
ができ、短チャネル効果を抑制しつつ、微細化を達成した半導体装置を提供することがで
きる。
【符号の説明】
【0311】
100 基板
106 素子分離絶縁層
108 絶縁層
110 ゲート電極層
116 チャネル形成領域
120 不純物領域
124 金属化合物領域
130 絶縁層
130a 第1の領域
130b 第2の領域
131 トレンチ
131a 上端コーナー部
140 レジストマスク
142a ソース電極層
142b ドレイン電極層
144 酸化物半導体膜
144a ソース領域
144b ドレイン領域
144c チャネル形成領域
146 ゲート絶縁層
148 ゲート電極層
152 絶縁層
153 導電層
156 配線
160 トランジスタ
162 トランジスタ
164 容量素子
172 トランジスタ
250 メモリセル
251 メモリセルアレイ
251a メモリセルアレイ
251b メモリセルアレイ
253 周辺回路
254 容量素子
260 配線
301 下地絶縁層
302 埋め込み絶縁層
303a 半導体領域
303b 半導体領域
303c 半導体領域
304 ゲート絶縁層
305 ゲート電極層
306a 側壁絶縁層
306b 側壁絶縁層
307 絶縁層
308a ソース電極層
308b ドレイン電極層
801 トランジスタ
802 トランジスタ
803 トランジスタ
804 トランジスタ
805 トランジスタ
806 トランジスタ
807 Xデコーダー
808 Yデコーダー
811 トランジスタ
812 保持容量
813 Xデコーダー
814 Yデコーダー
901 RF回路
902 アナログベースバンド回路
903 デジタルベースバンド回路
904 バッテリー
905 電源回路
906 アプリケーションプロセッサ
907 CPU
908 DSP
909 インターフェイス
910 フラッシュメモリ
911 ディスプレイコントローラ
912 メモリ回路
913 ディスプレイ
914 表示部
915 ソースドライバ
916 ゲートドライバ
917 音声回路
918 キーボード
919 タッチセンサ
950 メモリ回路
951 メモリコントローラ
952 メモリ
953 メモリ
954 スイッチ
955 スイッチ
956 ディスプレイコントローラ
957 ディスプレイ
1001 バッテリー
1002 電源回路
1003 マイクロプロセッサ
1004 フラッシュメモリ
1005 音声回路
1006 キーボード
1007 メモリ回路
1008 タッチパネル
1009 ディスプレイ
1010 ディスプレイコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23