特許第6227170号(P6227170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227170
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】耐故障性送受信機
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20171030BHJP
   H04B 3/46 20150101ALI20171030BHJP
【FI】
   H04L25/02 V
   H04L25/02 301C
   H04B3/46
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-567977(P2016-567977)
(86)(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公表番号】特表2017-515427(P2017-515427A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】IL2015000014
(87)【国際公開番号】WO2015145414
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年11月15日
(31)【優先権主張番号】61/969,271
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/102,800
(32)【優先日】2015年1月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516286176
【氏名又は名称】シタル テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、 オフェル
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0158781(US,A1)
【文献】 米国特許第06535028(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0151289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動2線式通信リンクにおける通信のための送受信機であって、
差動2線式通信リンクにおける電圧信号を送信するべく構成された送信機と、
前記差動2線式通信リンクにおいて送信された電圧差を検出するべく構成された受信機と、
前記送受信機に接続された電子装置と
を含み、
前記電子装置は、前記送受信機及び前記差動2線式通信リンクを介して他の電子装置と通信し、
前記受信機は、前記差動2線式通信リンクにおいて故障ゆえに歪んだ信号を受信し、
前記送信機は、前記差動2線式通信リンクにおいて歪んでいない信号を送信し、
前記受信機は、それぞれが異なる電圧差レベルを検出するべく構成された少なくとも3つの受信機を含み、
前記受信機は論理回路に接続され、
前記論理回路は、一つの受信機が信号を検出し、かつ、2つの受信機が信号を検出しない場合に前記差動2線式通信リンクに故障が存在することを決定する送受信機。
【請求項2】
前記送信機は、前記論理回路に接続され、前記論理回路が前記差動2線式通信リンクに故障が存在することを決定する場合に、接続された前記電子装置の状態にかかわらず、前記差動2線式通信リンクにおいて信号を送信する請求項に記載の送受信機。
【請求項3】
前記送信機による送信電圧信号の持続時間が、前記少なくとも3つの受信機の少なくとも一つによる受信電圧差の持続時間と比較される請求項1に記載の送受信機。
【請求項4】
前記送信電圧信号の持続時間が、前記受信電圧差の持続時間と異なる場合に故障状態が決定され、
前記送信機は、前記差動2線式通信リンクにおいて前記故障状態が決定された場合に、接続された前記電子装置の状態にかかわらず前記差動2線式通信リンクにおいて信号を送信する請求項に記載の送受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本装置及び方法は2線式差動信号通信システムの分野に関し、詳しくは、ラインにおける故障状態中に通信を維持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一の電子装置から他の電子装置へ情報を送信するいくつかのアーキテクチャが存在する。図1には、一般に使用されるアーキテクチャが示される。このアーキテクチャにおいて、複数の装置が、しばしばデータバス又は通信バスと称される共通通信構造物を共有する。バスに接続された各装置が、当該バス上で情報を送信することができ、又は当該バス上で送信された情報を受信することができる。さらに、バス上で送信された情報は、歪みのないまま各装置を通過することができる。通信バスの、一の装置を他の装置に接続するセクションは、通信バスライン又はリンクと称することができる。信号が搬送される物理媒体は、電線又は光ファイバであり得る。一の装置から他の装置へと通信バス上で送信される信号は、基礎にあるRF(無線周波数)変調又は同様の実装により電圧、光パルス、電気パルスが変化し得る。かかるバスは例えば、Mil−Std−1553、CAN、FlexRay、RS485、RS42等である。送信信号は複数の装置を通過するので、各装置との接続部が当該信号に変化をもたらしてはならないことは明らかである。すべての装置が、当該装置を他の装置に接続するバスリンクを最大でも2つ有する場合、当該バスは1次元バスと称する。少なくとも一つの装置が、他の装置とのバスリンクを3つ以上有する場合、当該バスは2次元バスと称する。
【0003】
一般に使用される通信バスは2線式の差動信号通信バスである。このバスには、各装置を接続する2つの並列通信バスが存在する。このバスにおける信号は、一方のバスにおける信号と並列バスにおける信号との差分である。一例として、各バスが複数の装置を接続する電線であり、かつ、信号が当該電線における電圧変化である場合、当該信号は差動バスにおいて、2線の電圧間の電圧差となる。差動バスは、所定の不利な物理条件を克服するべく使用される。例えば、著しい電気的干渉をバスが受ける場合、一方の線における電圧が予測不能となり、当該バスは機能しなくなる。しかしながら、2線式バスであれば、双方の線が同じ電圧干渉を受けるので、得られる差分は当該電気的干渉に影響されなくなる。したがって、2線式差動バスによって、良好なノイズ耐性が得られる。バス境界における又は装置・バス間接続部における信号反射を防止するべく、バスは特性インピーダンスを有するように設計され、バスの終端点又は接続点は、バスインピーダンスに整合する終端インピーダンスを有する。
【0004】
終端を有する最先端技術の差動バスは、当該バスの配線の一方に切断又は開回路のような故障が存在する場合、送信信号を検出することができない。故障の場合、一つのラインでの電圧は、終端抵抗器(抵抗)ゆえに第2のラインでの電圧に追従し、当該配線間には、送信が行われたことを示すのに要求される電圧差が存在しない。望ましいのは、差動通信バスに故障が存在したとしても、機能し続けることができる送受信機構造物を有することである。故障の例は、データバス配線の一つにおける機械的切断又は他の形態の切断である。かかる故障が生じている間、データバスにおいて送信されたデータは、データバスの利用性を、その当初容量の10%まで低減し得る多数のエラーを有して受信される。また、かかる故障の間、当該故障の一つの側において送信されたデータは、当該故障を通り越して当該故障の他の側にあるユニットに到達するということがない。加えて、CANバスのような自己噴出(self−erupting)プロトコルの場合、2線の一方が依然として無傷であれば、バス故障の両側において同時に送信を行うユニットは、互いの送信を妨害し合う。したがって、差動データバスにおける故障事象において送信エラーの数を低減し得るデータバスアーキテクチャが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0158781(A1)号明細書
【発明の概要】
【0006】
用語集
【0007】
「通信バス」とは、本開示において使用されるように、一以上の信号源から、当該バスがホストとなる一以上の装置又はモジュールへと信号を受信及び送信するべく構成された異なる装置又はモジュールを接続する構造物を意味する。
【0008】
「2進数データバス」とは、本開示において使用されるように、2つの電圧レベルのセットを備えるデータバスを意味する。
【0009】
「バスリンク又はライン」とは、本開示において使用されるように、2以上の装置又はモジュールを通って延びる連続的な電気又は光ラインを意味する。
【0010】
「データバス」とは、本開示において使用されるように、一以上の信号源から、当該バスがホストとなる一以上の装置又はモジュールへとデータを受信及び送信するべく構成された異なる電子装置又はモジュール同士を接続する構造物を意味する。構造物は、一以上の電線又は光ファイバのバスのようなものであり得る。
【0011】
「2線式差動信号通信バス」とは、本開示において使用されるように、2つの並列通信バスからなる通信バスであって、送信信号が、当該並列バスのそれぞれの信号同士で異なるものを意味する。
【0012】
「電気干渉」とは、本開示において使用されるように、通信ラインにおける電圧が、外部電界ゆえに信頼できない状況を意味する。
【0013】
「ノイズ耐性」とは、本開示において使用されるように、不利な物理的条件下でもバスが機能し得る能力を意味する。
【0014】
「差動受信機」又は「受信機」とは、本開示において使用されるように、通信バスに接続されて当該バスの2線間電圧差を検出する要素である。
【0015】
「差動送信機」又は「送信機」とは、本開示において使用されるように、通信バスに接続されて当該バスの2線間電圧差をもたらす要素である。
【0016】
「送受信機」とは、本開示において使用されるように、送信機及び受信機からなる要素である。
【0017】
「電圧レベル」とは、本開示において使用されるように、データバスラインの所定電圧を意味する。
【0018】
「ラインインピーダンス」とは、本開示において使用されるように、2つの通信バスライン間の特性インピーダンスである。
【0019】
「リピータ」とは、本開示において使用されるように、障害のある可能性がある電子信号を受信して当該信号の修復済みバージョンを送信する要素である。
【0020】
「低電圧レベル」とは、本開示において使用されるように、2進数データバスで使用される2つの電圧の組のうち低い方の電圧レベルを意味する。
【0021】
「高電圧レベル」とは、本開示において使用されるように、2進数データバスで使用される2つの電圧の組のうち高い方の電圧レベルを意味する。
【0022】
「基準電圧」とは、本開示において使用されるように、差動データバスの電圧レベルの組のうち共通電圧に対応する電圧を意味する。
【0023】
「電圧信号」とは、本開示において使用されるように、データバスラインにおける時間変動電圧レベルを意味する。
【0024】
「データ信号」とは、本開示において使用されるように、差動データバスの2つのデータバスラインにおける電圧レベル間の差を意味する。
【0025】
「故障状態」とは、本開示において使用されるように、電流がデータバスラインを流れるのを妨げる故障、電気的切断、開回路、故障コネクタ又は他のメカニズムを意味する。
【0026】
「電圧制御ユニット」とは、本開示において使用されるように、データバスに接続されて基準電圧をデータバスに与えるユニットを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】複数の装置を接続するための、既存の通信バスアーキテクチャの一例である。
図1B】電子装置を接続する差動データバスの一例である。
図2】最先端技術の送受信機の一例である。
図3】通信バスにおける故障の一例である。
図4A】データバスにおける受信信号の一例である。
図4B】データバスにおける故障発生中の、データバスにおける受信信号の一例である。
図4C】バスにおける故障による差動信号の一例である。
図5】耐故障性送受信機の一例である。
図6】3つの標準受信機及び論理回路に基づく耐故障性送受信機の実装の一例である。
図7】耐故障性データバスの一例である。
図8】電子装置を接続する耐故障性データバスにおける受信信号の一例である。
図9A】耐故障性データバスをサポートする終端ユニットの一例である。
図9B】耐故障性データバスをサポートする終端ユニットの他例である。
図10A】データバスに接続された電子装置の一例である。
図10B】データバスに接続された電子装置の追加例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
典型的な周知の通信バスが図1に示される。このバスは、一定数の装置(101、104、106、108、130、132及び134)を含む。これらは通信バス(120)に接続される。通信バス(120)は、バス(120)に接続された装置同士の通信をサポートする。通常の通信バス120の動作の過程において、信号は当該バスに沿って、かつ、各装置(101、104、106、108、130、132及び134)を介して、通信バス(120)の画定された限界を満たす信号における変化若しくは歪みなしで、又は潜在的に小さな変化ありで、送信される。
【0029】
本方法はまた、バス故障状態の正確な診断もサポートし、送信パルスの持続時間を受信パルスと比較することにより故障箇所を特定する。パルス持続時間は、単純かつ低コストのタイマー・カウンターを使用して測定することができる。これは、一回目のしきい値交差でカウントを開始するトリガを受け、2回目のしきい値交差でカウントを停止するトリガを受ける。合計カウントが、信号における重大事象の持続時間を与える。このようにして、この方法は、低コストかつ単純な時間カウンターを使用して時間長を特定することにより、複雑なアナログ信号の分析を与える。差動式2ライン通信バスに沿った電圧送信の場合、送信電圧信号の持続時間が、受信電圧差の持続時間と比較される。
【0030】
図1Bは、装置(106、104)のような電子装置を互いに接続する手段を与える差動データバス(119、121)の実装の一例である。図1Aは、装置(10)がライン(11、113)を介してデータバス(119、121)に接続され、かつ、装置(10)がライン115及び117を介してデータバス(119、121)に接続されたデータバスの一例である。装置(106、104)は、データバス(119、121)に電圧を印加することによってデータを送信する。一例では、差動データバスにおいて、データバスライン119の初期電圧レベルは、データバスライン121の初期電圧レベルに等しい。装置(106、104)がデータを送信するとき、当該装置は、一組の電圧レベルからなる時間変動電圧信号を生成する。ビットが、最小限のデータ情報単位となる。これは、2つの値「1」又は「0」を有し得る。各ビットは、データバス(119、121)においてビット持続時間に対応する持続時間だけ装置(106、104)に印加される2つの電圧レベルの組によって定義される。終端抵抗器(130、132)が、バスの終端点において整合されたインピーダンスを与え、バスの終端点からの信号反射を防止する。
【0031】
図2は、電子装置(106)に接続された周知の送受信機要素の一例である。2線式通信バス(210、212)が、接続配線(214、224)を介して受信機(202)に接続される。送信機(204)が、接続配線(220、222)を介して通信バス配線に接続される。受信機(202)は、配線(214)及び配線(224)間の電圧差を測定する。電圧差が所定値、例えば1ボルトよりも大きい場合、受信機は電子装置(106)の入力(216)に、受信信号が「1」であることを示す。電圧差が所定値未満の場合、受信機は、装置の入力(216)に、受信信号が「0」であることを示す。受信機(202)には、差動増幅器を実装することができる。ここで、差動増幅器は、入力における電圧差が、画定されたしきい値よりも大きい場合にバイアス電圧を与えるべく構成される。電子装置(106)はまた、バス(210、212)に信号を送信することもできる。装置が「0」を送信するように要求される場合、ライン(218)は、送信機(204)に対し、何もするべきではないことと(210)及び(212)間の電圧差が不変であることとを示す。電子装置(106)が「1」を送信する場合、送信機(204)は接続部(218)を介して当該信号を受信し、接続ライン(220)及び接続ライン(222)間の電圧差をもたらす。これら2つのライン(220、222)が、通信バス(210及び212それぞれ)における対応線に接続され、電圧差はここで、ライン(210)及び(212)間に存在する。これらのラインを介して信号は、他のすべての装置に到達する。
【0032】
図3は、通信バスにおける故障の一例である。図2に関連して記載される周知の送受信機の実装は、ラインに故障(302)又は(304)が存在する場合に機能することができない。これは、故障後において当該ライン間の電圧差が、受信機(202)によって予測された電圧差に対応しなくなるからである。図4Aは、データバス(図1Bの119、121)での電圧信号(151、153)の一例である。得られるデータ信号(155)は、電圧信号(151)及び(153)間の電圧差である。電圧信号(151)は一つのデータバスライン(119)の電圧信号であり、電圧信号(153)は第2のデータバスライン(121)の電圧信号である。電圧信号(151)は2つの電圧レベルを含む。電圧レベルの一例は、3Vの高電圧レベル及び2.5Vの低電圧レベルである。他の電圧レベルの例は、CANバス仕様書2.0(ISO11898−2)のような関連する通信規格に記載されている。CANバス仕様書において、バスライン配線(119)のCAN高電圧は3.5Vであり、バスライン配線(121)のCAN低電圧は1.5Vである。当該信号は、優性及び劣性と称される。「0」とも称される優性信号は、バスライン配線(119、121)間の電圧差が2Vを超える場合に存在する。「1」とも称される劣性信号は、当該電圧差が0V(ゼロ)であり、かつ、双方の配線が、2.5Vの共通電圧にフローティングしている。電圧信号(153)は2つの電圧レベルからなる。一例では、電圧信号(153)の高電圧レベルは、電圧信号(151)の低電圧レベルと等しい。他例では、電圧信号(153)の高電圧レベルは、電圧信号(151)の低電圧レベルよりも低い。一例では、電圧信号(153)の高電圧レベルは、電圧信号(151)の低電圧レベルよりも0.5Vを超えて低い。
【0033】
図4Aに記載されるデータ信号は、複数のビットからなる。一例では、「1」ビットが楕円(145)内に示される。一例では、「1」データ信号は、電圧信号(151)における電圧レベルが高い場合であって、電圧信号(153)における電圧レベルが楕円(141)内に示されるように低い場合に得られる。他例では、「0」データ信号が楕円(147)内に示される。一例では、「0」データ信号は、電圧信号(151)における電圧レベルが低い場合であって、電圧信号(153)における電圧レベルが楕円(143)内に示されるように高い場合に得られる。
【0034】
図4Bは、故障状態中のデータバス(119、121)における電圧信号及びデータ信号の一例である。故障状態の一例は、データバス配線(121)の一つにおける「切断」又は接続不在である。故障状態の一例は、図1Bにおける円(125)内に示される。この例では、データバスライン(119)における電圧信号が、その通常動作値から不変のままであり、電圧信号(151)として識別される。データバスライン(121)における電圧信号は、電圧信号(図4Aの153)から電圧信号図4Bの161)へと変化する。データバスライン(121)の電圧信号(161)は、データバスライン(119)の電圧信号(151)に追従する。電圧信号間の差分は、差動データバスラインの抵抗及び容量に起因する。(163)は、得られたデータ信号であり、電圧信号(161、151)間の差分である。得られたデータ信号(163)は、「1」の参照番号(177)又は「0」の参照番号(175)の信号に対応しない曖昧なデータ信号であり、電子装置(106、104)の受信機においてエラーを引き起こす。
【0035】
図5は、修正された送受信機(501)の一例である。これは、バス内に一以上の故障が存在しても、当該バスの故障を克服して当該バスにおける通信を維持するべく設計される。修正された送受信機は、差動2線式通信リンクにおいて電圧信号を送信するべく構成された送信機と、当該差動2線式通信リンクにおいて送信された電圧差を検出するべく構成された受信機と、当該送受信機に接続された装置(106)とを含み、当該受信機は、当該通信リンクの配線間の複数の電圧差を検出するべく構成され、当該送受信機は、当該電圧差に基づいて受信信号を決定する。使用の一例では、修正された送受信機(501)は、図4Cに記載された複数の電圧差を検出する。送受信機が受信信号を特定するのは、受信信号が、図4Cに示された一組の信号差(402、404、406)の一つである場合となる。送受信機(501)は、電圧差が、図4Cに示された電圧差(402、404、406)のいずれでもない場合に、信号が受信されていないことを決定する。
【0036】
用法のいくつかの例では、送受信機(501)は、通信リンクにおけるエラー状態を装置(106)に通知するように要求される。ライン(524)は、かかる機能を、送受信機(501)及び装置(106)間の論理接続をもたらすことによって与える。エラーの場合の一例として、ライン(524)が正となると、装置(106)には、通信リンクに故障が存在することが警告される。このエラーの表示は、装置(106)内に配置されたハードディスク又は半導体記憶装置のログファイルに、通信リンク及び装置の動作中に格納することができる。ログファイルは、装置(106)を介し又は通信リンクを介してアクセスすることができる。ログファイルは、通信リンクにおけるすべてのエラー状態の表示を与える。エラー状態は、故障が、接続された装置、すなわちこの場合は装置(106)よりも前に発生したことを示す。送受信機がエラー信号を訂正するので、(106)よりも後のいずれの装置も、エラーを登録することがない。このようにして、ログファイルにエラーを有する装置は、エラー状態が、装置とのリンク接続において発生したことを示す。したがって、送受信機におけるログ記録機能、又は装置(106)に接続されて装置(106)に、通信リンクにエラー状態が存在することの表示を与えるエラー表示器(524)のいずれかを有するように提案される送受信機を、通信リンクにおける固定的かつ間欠的な故障の箇所に対して使用することができる。
【0037】
図6は、修正された送受信機(501)の実装の一例である。この例では、修正された受信機が、標準受信機(202)及び2つの付加受信機(602、604)からなる。3つの受信機(602、604、202)は、電子決定回路(606)に接続される。受信機(602)は、信号(図4Cの40)のような、ライン(214、224)間の小さな電圧差を検出するべく設計される。例えば、受信機(202)が1ボルトの差分を信号として特定すると、受信機(602)は、例えば0.5ボルトのような、ラインインピーダンスに基づいて計算可能な小さな電圧差を検出する。受信機(604)は、ライン(214、224)間の小さな負の電圧差を検出するべく設計される。これは、ライン(210)の切断(304)、及び得られた信号(図4Cの406)に対応する。したがって、受信機は、それぞれが一つの電圧差を検出するべく構成された少なくとも3つの受信機(602、604、202)を含む。電子決定回路は、3つの受信機(202、602、604)のそれぞれからの一つの信号に対応する3つの入力を受信する。受信機が、自身に割り当てられた電圧差を検出すると、電子決定回路への信号は正となる。電子決定回路は、当該検出器のいずれもが正の信号を与える場合に正の出力を与える。さらに、電子決定回路は、以下の状態を与えることもできる。(202)からの信号が正の場合、バスは通常に機能していて、(202)からの正の信号は装置(106)へと送信される。(202)からの信号が負であるが、2つの受信機のいずれか(602又は604)からは正の信号が存在する場合、バスには故障状態が存在する。電子回路(606)は通常動作どおりに、いずれかの受信機(602又は604)からの正の信号を、接続部(620)を介して装置106へと送信する。さらに、送受信機(501)は、後の分析を目的として故障の発生を揮発又は不揮発メモリに登録することができる。したがって、電子決定回路は、いずれかの受信機における電圧差が画定された電圧の組の一つである場合に、信号が受信されたか否かを決定する。電子ユニット(606)はまた、ライン(518)を介して送信機(204)にも接続される。この接続を使用して、電子決定ユニット(606)は、ライン(210、212)間の差動電圧信号をもたらすように送信機(204)に指令する。このようにして、ユニットはリピータとして機能し、当初信号を切断後のラインへと回復させる。リピータの後のすべての装置はここで、標準電圧差を受信する。したがって、受信機は、2線式通信リンクにおける故障ゆえの歪み信号を受信し、送信機は、2線式通信リンクにおいて非歪み信号を送信する。図5の例と同様に、ライン(524)のようなエラー表示器は、装置(106)に対し、通信バスにおけるエラー状態の表示を与えることができる。装置(106)は、後の分析のためにエラー状態を記録することができる。
【0038】
したがって、図6に記載されたシステムは、差動2線式通信リンクにおいて電圧信号を検出かつ送信する送受信機と、当該送受信機に接続された装置と、装置、受信機及び送信機に接続された論理回路とを与える。ここで、受信機部分は、3つの差動増幅器として構成され、当該差動増幅器は、配線間の異なる電圧レベルを検出するべく構成される。さらに、送信機は、2線式通信リンクに接続され、論理回路が生成した信号を送信する。
【0039】
図6において、装置(106)は、通信バスにおいて信号を送信するように要求された場合、ライン(522)に信号を与える。電子回路(606)は、信号を送信機(204)へと送信し、要求された信号を電圧差としてもたらす。他例では、装置(106)は、ライン(518)に接続されて、信号を送信機(204)に直接与え得る。
【0040】
データバス内の故障を回復させる代替的アプローチが、図7に示される。特別な送受信機によって信号が再構築される先の例とは対照的に、図7は、故障の場合であっても再生成することなしに、バスにおける信号の健全性を維持する耐故障性データバスの一例となる。故障への耐性は、電圧制御ユニット(701、703、705、707)をデータバス(119、121)に付加することによって達成される。電圧制御ユニット(701、703、705及び707)は、基準電圧をデータバス(119、121)に与える。一例では、基準電圧は、データバスライン(119、121)の電圧組のうちの共通電圧レベルである。数値的な例では、データバスライン(119)の電圧レベルがそれぞれ2.5V及び3Vであってデータバスライン(121)の電圧レベルがそれぞれ2V及び2.5Vである場合、共通電圧は2.5Vとなる。電圧制御ユニット(701、703、705、707)は、信号(図4Bの161)の発生を防止する。一例では、データバスに故障(125)が存在する場合、故障データバスライン(121)における電圧信号は、図4Bに描かれるように故障(119)がないデータバスラインの電圧信号に追従する。ライン(121)の電圧信号が(119)の電圧信号に追従する場合、データバスライン(121)及び(119)における電圧信号間の差分であるデータ信号は低減され、当該データバスを情報送信に使用することはできない。一例では、電圧制御ユニット(707)は、データバスライン(121)の電圧信号(図4Bの161)が基準電圧を上回ることを防止する。
【0041】
図8は、データバスライン(図7の119、121)における電圧信号(151、803)の一例である。電圧信号(151)は、故障を有しないデータバスライン(図7の119)の電圧信号である。電圧信号(801)は、故障の後のデータバスライン(図7の121)における電圧信号である。ラインにおける最大電圧レベルは、ユニット(図7の707)によって制御され、かつ、基準電圧によって画定される。データバスライン(図7の121)における最終電圧レベルは、ライン(図7の121)の当初の低電圧レベルである。一例では、各電圧は以下のようにまとめられる。すなわち、ラインデータバス(図7の119)の高電圧レベルが3Vとなり、データバスライン(図7の119)の低電圧レベルが2.5Vとなり、故障状態前のデータバスライン(図7の121)の高電圧レベルが2.5Vとなり、故障状態前のデータバスライン(図7の121)の低電圧レベルが2Vとなり、基準電圧が2.5Vとなり、故障状態後のデータバスライン(図7の121)の高電圧レベルが、電圧制御ユニット(図7の707)による基準電圧未満に制限される。
【0042】
それゆえ、図7は、2つのデータバスラインからなる差動データバスと、基準電圧と、当該差動データバスにおける電圧信号を生成する少なくとも一つの送信機と、当該差動データバスから電圧信号を受信するべく構成された少なくとも一つの受信機と、差動データバスに接続された少なくとも一つの電圧制御ユニットとを含み、当該電圧制御ユニットが、一つのデータバスラインにおける電圧が当該基準電圧を上回るように、かつ、第2のデータバスラインにおける電圧が当該基準電圧を下回るように維持する耐故障性通信システムの一例となる。
【0043】
図9Aは、耐故障性データバスをサポートする電圧制御ユニット(図7の703、705、707、709)の一例である。電圧制御ユニット(図7の703、705、707、709)は、電圧源(401)又は電圧レギュレータとダイオード(403)とからなる。一例では、電圧制御ユニット707(図7)は、データバスライン(図7の121)に接続される。電圧制御ユニット(図7の707)は、データバスライン(121)のおける電圧がV0未満まで下降することを防止する。電圧源(401)は、Vs=V0−VDによって与えられる電圧を供給する。ここで、Vsは電圧源(401)の電圧、VDはダイオード(403)の順方向電圧である。他例では、電圧がV0を超える場合、ダイオードは、順方向端子が電圧源の方を向くように逆方向に組み付けられ、電圧源は当該電流を「シンク」できるようにする必要がある。例えば、この場合の電圧源には、グランドに接続されたツェナーダイオードを埋め込むことができる。この例では、電圧源(401)の電圧VsはVs=V0+VDによって与えられる。
【0044】
他例では、抵抗器(405)は、電圧制御ユニット(図7の703、705、707、709)の一つが機能する結果、スパイクに電気的に直列に接続することができる。したがって、一例では、ダイオードの電圧制御器及び電圧源は抵抗器に接続される。他例では、電圧制御ユニットは、データバスラインに接続された抵抗器と、ダイオードに接続された抵抗器と、抵抗器に接続された電圧源とを含む。
【0045】
他例では、接続ユニット(407)は、故障が検出された場合にアクティブにされる電子スイッチである。この例では、通常動作状態において、電圧制御ユニット(図7の703、705、707、709)は、データバスライン(図7の119、121)から切断される。データバスに接続された装置(106、104)によって故障状態が検出されると、故障を検出する装置(106、104)は接続ユニット(407)を動作させて電圧制御ユニット(図7の703、705、707、709)がデータバスライン(図7の19、121)に接続されるようにする。電圧制御ユニット(図7の703、705、707、709)がデータバスライン(図7の119、121)に接続される場合、データバス(図7の119、121)は、故障にもかかわら情報を送信し続ける。この例では、電圧制御ユニットは、故障状態の事象時に電圧制御ユニットをデータバスライン(図7の119、121)に接続するべく構成された接続ユニットを含む。接続ユニット(407)は、故障を有するラインの電圧制御ユニットにのみ接続する。一例では、故障がライン(121)に存在する場合、接続ユニットは電圧制御ユニット(図7の203及び207)に接続する。
【0046】
図9Bは、RS485のような耐故障性データバスをサポートする電圧制御ユニット(図7の703、705、707、709)の他例である。電圧制御ユニット(図7の703、705、707、709)は、電圧源(401)又は電圧レギュレータからなる。電圧源(401)は、抵抗器(411、413)を介してグランド端子(415)に接続される。バスライン(121)は、抵抗器(413)を介してグランド端子(415)に、かつ、抵抗器(411)を介して電圧源(401)に接続される。バスライン(121)の電圧は、V×R2/(R1+R2)によって与えられる。ここで、Vは電圧源の電圧、R1は抵抗器(411)の抵抗、R2は抵抗器(413)の抵抗である。抵抗器(411、413)の値は、終端抵抗器(図7の130、132)に類似するように選択される。一例では、抵抗器(411)は120オームであり、抵抗器(413)は120オームである。追加例において、抵抗器(411)は100オームから150オームの間であり、抵抗器(413)は100オームから150オームの間である。ライン(121)における切断(図7の125)のような故障状態の場合、ライン(121)の電圧は、電圧制御ユニットにおける抵抗器(411、413)及び電圧源(401)によって画定される。要するに、電圧制御ユニットは電圧源(401)及び少なくとも2つの抵抗器を含み、当該電圧源は一の抵抗器に接続され、第2の抵抗器は第1の抵抗器に接続され、第2の抵抗器はグランド端子に接続され、データバスラインは第1及び第2の抵抗器に接続される。故障の場合に電圧制御ユニット(703)を接続するべく、スイッチ(407)を使用することができる。
【0047】
図9Bに記載された回路の動作を理解するべく、当該回路の異なる要素における電圧の考察が与えられる。グランド(415)の電圧は0Vである。ライン121にバス故障125が存在し、かつ、送信機が故障を越えている場合、データバスライン(121)の電圧は、抵抗器(図9Bの411、413、及び図7の抵抗器132)のネットワークによって画定される。例えば、3つの抵抗器すべてが同じ値の場合、データバスライン(121)の電圧は、電圧源(401)の電圧の1/3となる。一例では、電圧源(401)の電圧が3Vの場合、データバスライン(121)の電圧は1Vとなる。すなわち、電圧制御ユニット(703)及び装置(106)の入力における電圧差は1Vとなる。一例では、(図7の106)において差動しきい値が200mVである場合、装置(図7の106)は、故障にもかかわらず、装置(図7の104)の送信データを検出する。
【0048】
同様に、装置(図7の104)が反対の値、例えばライン(図7の115)の3V、及びライン(図7の117)の0Vを送信する場合、ライン(図7の113)の電圧は2Vとなり、反対の極性の1Vの差分が得られる。
【0049】
それとは対称に、装置(図7の106)が装置(図7の104)へと送信し、かつ、ライン(図7の121)に切断(図7の125)が存在する場合、電子装置(図7の104)は電圧制御回路(図7の705、707)に起因する情報を受信する。
【0050】
図10Aは、データバス(図1Bの119、121)に接続された装置(図1Bの106、104)のような電子装置の一例である。一例では、電子装置(106)は、電子機能ユニット(1001)と、差動受信機(1003)と、差動送信機(1005)と、差動送信機(1005)、差動受信機(1003)及び電子機能ユニット(1001)間の電気接続(1011、1013)と、電圧制御ユニット(1015、1017)とを含む。電圧制御ユニット(1015、1017)は、電圧制御ユニット(図7の703、705、707、709)と同じ機能を果たす。一例では、電圧制御ユニット(1015)は、ライン(111)の電圧が、画定された電圧を下回ることを防止する。電圧制御ユニット(1017)は、ライン(113)の電圧が、画定された電圧を超えることを防止する。
【0051】
図10Bは、データバス(図1Bの119、121)に接続された装置(図1Bの106及び104)のような電子装置の一例である。一例では電子装置(106)は、電子機能ユニット(1001)と、差動受信機(1003)と、差動送信機(1005)と、差動送信機(1005)、差動受信機(1003)及び電子機能ユニット(1001)間の電気接続(1011、1013)とを含む。この例では、差動受信機(1003)若しくは差動送信機又はその双方が、電圧制御ユニット(1015、1017、1019、1021)を含み得る。さらなる例では、差動送信機(1005)、差動受信機(1003)は、電圧制御ユニット(1015、1017)が埋め込まれた一つの集積回路又は一つの電子モジュールとして実現することができる。一例では、電圧制御ユニット(1015)は、ライン(111)の電圧が、画定された電圧を下回ることを防止する。電圧制御ユニット(1017)は、ライン(113)の電圧が、画定された電圧を超えることを防止する。要するに、電圧制御ユニット(1015、1017、1019、1021)は、差動送信機(1005)又は差動受信機(1003)に埋め込むことができる。
【0052】
他例では、高電圧差が1Vを超える場合、送信機の実際の高電圧差は1.9Vとなる。バスライン(例えば図7の121)における故障の場合、電圧制御ユニット(図7の703、707)の動作により、高電圧差は1Vまで低減される。低減された高電圧差は、送信信号の検出を妨げ得る。この問題を克服するべく推奨されるのは、通信システムにおける送信機が、提案の発明を使用して、プロトコル規格を最大限許容する電圧差を送信することである。例えば、CANバスシステムでは、送信電圧差は2.5Vとなる。他例では、電圧制御ユニット(1015、1017)が送信機(1005)に埋め込まれる場合、当該送信機はその送信電圧を、故障状態が発生するときに最大限許容される電圧まで増加させる。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B