(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る合成樹脂レザーAは、
図1〜
図3に示すように、皮膜1の表面側に表面処理層1aが形成されている。
皮膜1は、軟質ポリ塩化ビニル(PVC)などの塩化ビニル樹脂を主成分とする薄膜層である。
皮膜1となる層は、混合樹脂成分の場合には塩化ビニル樹脂の成分が50%以上含まれているか、或いは、複数種類の樹脂成分を含む場合に、その中で最も占有率が高い成分が塩化ビニル樹脂になっている。基本的には、この皮膜1は、前述した従来技術と同様に、塩化ビニル樹脂と他の樹脂成分との混合樹脂によって、高い屈曲性や柔軟性などの可撓性と良好な強度を備えているものである。
皮膜1は、内部に気泡が無い非発泡層11となるように形成されるか、又は発泡剤の混入により内部に気泡が生成された発泡層12を有するように形成される。
さらに、皮膜1の裏面側には、後述する基材2が設けられる。皮膜1と基材2は、これら両者間に後述する接着層3を設け間接的に接着して一体化させるか、又は、皮膜1と基材2をこれら両者が直接接触するように接着して一体化させる。
【0008】
基材2としては、編地、織物、不織布などの布やそれ類似した材料が用いられる。その中でも、レザーライク性を付与する面から編地、例えば天竺編み、スムース編みなどのメリヤス編を用いることが好ましい。
特に、例えば捲縮加工などにより伸縮性が付与された糸を用いた編布が好ましい。さらにポリエステルは硬いため、ポリエステルのみからなる編布の場合、捲縮加工により伸縮性を増した編布が好適に用いられる。
また、織物や不織布の場合には、織物を構成する糸を及び不織布を構成する短繊維(ステープル)として、例えば捲縮加工などにより伸縮特性が付与されたものを用いたり、短繊維から糸を作る際に弾性が付与される加工をした糸を使用するなどして、基材2となる布に柔軟性を持たせることが大切である。
【0009】
本発明の実施形態に係る合成樹脂レザーAの具体例として
図1に示される合成樹脂レザーA1の場合には、皮膜1が非発泡層11からなり、非発泡層11の表面に表面処理層1aを積層形成し、非発泡層11の裏面には、接着層3を介して基材2が接着されている。
図2に示される合成樹脂レザーA2の場合には、皮膜1が非発泡層11と、非発泡層11の裏面側に積層形成された発泡層12とからなり、非発泡層11の表面に表面処理層1aを積層形成し、発泡層12の裏面には、接着層3を介して基材2が接着されている。
なお、接着層3を形成する接着剤としては、ホットメルト接着剤、アクリル系接着剤、二液型ポリウレタン接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、ポリ塩化ビニルペーストなどが用いられる。合成樹脂レザーの柔軟性を阻害しない二液型ポリウレタン接着剤が好ましい。接着層3は、基材2側に塗布しても、皮膜1側に塗布してもよい。
図3に示される合成樹脂レザーA3の場合には、皮膜1が非発泡層11と、非発泡層11の裏面側に積層形成された発泡層12とからなり、非発泡層11の表面に表面処理層1aを積層形成し、発泡層12の裏面には、接着層3を用いずに皮膜1と基材2を直接的に接着して一体化させている。
【0010】
図3に示される合成樹脂レザーA3のように、基材2と直接接触して固定される発泡層12を構成する材料は、軟質ポリ塩化ビニルであり、特に発泡ポリ塩化ビニルを用いることが好ましい。
軟質ポリ塩化ビニルに用いる塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独、又は塩化ビニルと他のモノマー、若しくは例えば酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、マレイン酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、高級ビニルエーテル等との共重合体、その他に通常の塩ビレザーに一般に使用されている塩化ビニル系の重合体や共重合体などをそれぞれ単独でまたは2種以上併用することができる。
さらに、皮膜1となる軟質ポリ塩化ビニルには、可塑剤、熱安定剤、充填剤や必要に応じて発泡剤などが添加され、その他に、顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤などの通常の塩ビレザーに一般に使用されている各種の添加剤を配合することも可能である。
【0011】
塩化ビニル系樹脂を軟質化するために使用する可塑剤としては、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジウンデシルフタレート(DUP)等に代表される一般のフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、アゼライン酸ジオクチル(DOZ)等に代表される一般の脂肪酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)等に代表されるトリメリット酸エステル系可塑剤、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシリルホスフェート(TXP)等に代表されるトリアリールリン酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油等に代表されるエポキシ系可塑剤、ポリプロピレンアジペート等に代表されるポリエステル系可塑剤等の高分子可塑剤、塩素化パラフィン等の一般の可塑剤、が挙げられ、これらはそれぞれ1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
前記熱安定剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛などの金属セッケン、フェノールやナフトールのナトリウム、亜鉛、バリウムなどの金属塩、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレートなどの有機スズ化合物、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイトなどの亜リン酸エステル類などが挙げられる。
前記充填剤としては、無機充填剤を用いることが好ましい。
無機充填剤の具体例としては、例えば沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、極微細炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、あるいはシリカ、タルク、ケイソウ土、クレー、マイカなどのケイ酸塩、水酸化アルミニウム、アルミナなどが挙げられる。
前記発泡剤としては、有機系発泡剤を用いることが好ましい。
有機系発泡剤の具体例としては、例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、N,N'−ジニトロソ−N,N'−ジメチルテレフタルアミド、トリヒドラジノトリアミンなどが挙げられる。これらの有機発泡剤は1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
発泡倍率は好ましくは、1.5〜7倍、好ましくは2〜5倍程度である。発泡をあまり大きくすると安定なセルができず、レザーとしての風合いを悪くするし、強度も低下するので好ましくない。
【0013】
また、皮膜1は、塩化ビニル樹脂と化学式1に示すシリコーン・アクリル共重合物との混合樹脂層であることが好ましい。
【化1】
このシリコーン・アクリル共重合物とは、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させた共重合体の粒子(パウダー)であり、ポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合割合は、60〜90:10〜40が好ましい。重合は、エマルジョン重合などで行なう。分子量は100000〜500000、好ましくは150000〜400000である。
前記粒子の大きさ5〜400μmであり、粒子の形状は不定形や球形である。特に適するのは、平均粒径5〜20μmの球形の粒子である。
このシリコーン・アクリル共重合物の混合比は、塩化ビニル樹脂(軟質ポリ塩化ビニル)が100重量部に対して2〜14重量部、好ましくは2.5〜10重量部とする。
シリコーン・アクリル共重合物の含有量が1.5重量部未満の場合は、耐摩耗性を改善できない。また含有量が15重量部を超えると、皮膜1の屈曲性が悪化する。
【0014】
皮膜1の表面側に形成される表面処理層1aは、ポリカーボネートウレタンとエステルウレタンを混合し、カルボジイミドで架橋させた表面処理剤の塗布によって形成される耐久水性処理層である。
すなわち、皮膜1の表面に塗布される表面処理剤は、ポリカーボネートウレタンとエステルウレタンの混合物をカルボジイミド基含有の架橋剤で架橋したものである。
架橋剤としては、カルボジイミド基含有の水性架橋剤のみを用いるか、又はカルボジイミド基含有の水性架橋剤とイソシアネート系架橋剤を併用することが好ましい。
ポリカーボネートウレタンとしては、化学式2に示す水性ポリカーボネート系ポリウレタンを用いることが好ましい。分子量は70000以上、好ましくは70000〜140000である。
【化2】
特に、水性ポリカーボネート系ポリウレタンとしては、アニオン性水系ポリウレタン樹脂の樹脂骨格がポリカーボネートを有するものなどが用いられる。
この水性ポリカーボネート系ポリウレタンの具体例としては、スタール社製のWD78−143などが挙げられる。
【0015】
エステルウレタンとしては、化学式3に示す水性ポリエステル系ポリウレタンを用いることが好ましい。分子量は70000以上、好ましくは70000〜140000である。
【化3】
この水性ポリエステル系ポリウレタンの具体例としては、スタール社製のWD78−253/PESなどが挙げられる。
【0016】
カルボジイミド基含有の水性架橋剤としては、化学式4に示す脂肪族系カルボジイミド基含有水性架橋剤を用いることが好ましい。
【化4】
この脂肪族系カルボジイミド基含有水性架橋剤の具体例としては、スタール社製のXR13−621などが挙げられる。
イソシアネート系架橋剤としては、化学式5に示す脂肪族系架橋剤や脂環族系架橋剤などを用いることが好ましい。
【化5】
このイソシアネート系架橋剤の具体例としては、スタール社製のXR28−404などが挙げられる。
【0017】
前記アニオン性水系ポリウレタン樹脂は、具体的には有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、分子中にカルボキシル基又はスルホン酸基を有するポリオール(C)、また必要に応じて3官能の鎖延長剤を反応させてプレポリマーとし、さらに中和剤、必要に応じて乳化剤の配合された水の中に加えて水分散させ、鎖延長する方法等の周知の方法によって製造される。
前記アニオン性基と反応し得る化合物は、前記水系ポリウレタン樹脂組成物が製造されるどの段階でも配合することができる。例えばポリウレタンプレポリマーの段階で配合しても、アニオン性水系ポリウレタン樹脂に配合してもよい。
前記アニオン性水系ポリウレタン樹脂を製造するために使用される前記有機ポリイソシアネート(A)としては、脂肪族、脂環式及び芳香族ポリイソシアネートが挙げられ、具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートエステル、1,3−シクロへキシレンジイソシアネート、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、4,4' −ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、3,3' −ジメトキシ−4,4' −ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0018】
前記有機ポリイソシアネート(A)は、前記ポリオール(B)、カルボキシル基又はスルホン酸基を有するポリオール(C)、及び鎖延長剤の活性水素の合計に対し、好ましくは0.5〜2倍当量、より好ましくは0.8〜1.5倍当量となるように使用される。該イソシアネートの使用量が0.5倍当量未満の場合には分子量が小さくなり過ぎ、また2倍当量より多い場合には水を加えたときに尿素結合を多量に生成することとなり、その特性を低下させる恐れがある。
前記アニオン性水系ポリウレタン樹脂に使用される前記ポリオール化合物(B)としては、慣用のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられ、これらは単独又は数種類を併用して用いることができる。加水分解性、耐薬品性、摩耗性、屈曲性、老化性等の性能バランスよりポリカーボーネートポリオールが望ましい。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、アジピン酸、フタル酸等の二塩基酸とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコールとの縮合反応物であるポリエステル系ポリオール;エチレンカーボネート等のカーボネートとグリコールとの反応物であるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサメチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、水添ビスフェノールA等又はこれらの活性水素を2個以上有する低分子量ポリオールとアルキレンオキサイドの付加物からなるポリオールとコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸あるいは炭酸との縮合物であるポリエステルポリオールが挙げられる。
前記高分子量ポリオールの平均分子量は、7万以上、好ましくは7万〜14万であり、分子量が5万未満のものを用いると伸びが小さくなるため好ましくない。また分子量が15万を超えるものを用いると得られるアニオン性水系ポリウレタン樹脂の粘度が高くなり作業上問題が生じる。
【0019】
また、前記カルボキシル基又はスルホン酸基を有するポリオール(C)としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基又はスルホン酸基を有するポリオール(C)の使用量は、用いるポリオール及びポリイソシアネートの種類にもよるが、通常は、アニオン性水系ポリウレタン樹脂を構成する全ての反応成分に対して、0.5〜50質量%、好ましくは1〜30質量%が用いられる。ポリオール(C)の使用量が0.5質量%未満では保存安定性が劣り、また、50質量%を超えて使用すると特性に悪影響を及ぼすことがある。
また、前記プレポリマーを中和する中和剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基が挙げられ、これらはカルボキシ基又はスルホン酸基を中和するのに十分な量が用いられる。
また、前記乳化剤としては、水分散性ポリウレタン樹脂に使用される周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系面活性剤、反応性界面活性剤等を使用することができる。これらの中でも、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤がコストも低く、良好な乳化が得られるので好ましい。
また、前記アニオン性水系ポリウレタン樹脂を製造するために、鎖延長剤を用いることができる。該鎖延長剤としては、通常用いられる鎖延長剤が用いられ、例えば、平均分子量200未満の低分子量ポリオール化合物及び低分子ポリアミン化合物が挙げられる。
【0020】
前記鎖延長剤としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジメチロールプロピオン酸、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、メラミン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のアミン類及び水等が挙げられる。これらの鎖延長剤は単独で又は数種を組み合わせて使用することができ、またその使用量は、目的とするアニオン性水系ポリウレタン樹脂の分子量にもよるが、通常は、プレポリマー中のNCOのに対して反応する活性水素を0.1〜2倍当量、好ましくは0.5〜0.9倍当量用いられる。鎖延長剤の活性水素が0.1倍当量未満では分子量が小さくなりすぎ、2倍当量を超えて使用すると、未反応の鎖延長剤が残存することになり、得られる製品の物性を低下させてしまう恐れがある。また、前記鎖延長剤の中でも特に3官能以上の低分子ポリオール又は低分子ポリアミンを一部用いると、膜物性の優れたアニオン性水系ポリウレタン樹脂が得られることもある。
【0021】
また、必要に応じて前記プレポリマーを製造するために溶媒が使用される。使用される溶媒は、反応に不活性で水との親和性の大きい溶媒が好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。これらの溶媒は、通常、プレポリマーを製造するために用いられる前記原料の合計量に対して、好ましくは3〜100質量%が用いられる。これらの溶媒のなかで、沸点100℃以下の溶媒はプレポリマー合成後、減圧留去することが好ましい。
前述のように、これらの原料からアニオン性水系ポリウレタン樹脂を製造することは周知であり、これらの原料の仕込み順序を適宜変更したり、あるいは分割して仕込むことも可能である。
このようにして得られたアニオン性水系ポリウレタン樹脂は、通常、エマルジョン全体に対して、樹脂固形分が20〜80質量%、好ましくは25〜55質量%となるように調製される。樹脂固形分が20質量%未満では、得られる膜の物性が低下し、乾燥時間が長時間化し、十分な機械的強度も得られず、80質量%を超えると樹脂の粘度が高くなり、均一な膜が得られない。
【0022】
前記水系ポリウレタン樹脂組成物は、耐水性を向上させる目的で、アニオン性基(具体的にはカルボキシル基又はスルホン酸基)と反応し得る化合物によってアニオン性水系ポリウレタン樹脂のアニオン性基の少なくとも一部を封鎖する。アニオン性基と反応し得る化合物(以下、封鎖剤と称する)としては、具体的には、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物及びアジリジン系化合物等が挙げられる。これらの中でも特にアニオン性基と反応しやすい、カルボジイミド系化合物が好ましく使用される。
前記カルボジイミド系化合物とは、有機ジイソシアネートをホスホレン化合物、金属カルボニル錯体化合物、及びリン酸エステル等のように、カルボジイミド化を促進する触媒の存在下に、反応させることにより得られたものが好適に用いられる。具体的には、ジプロピルカルボジイミド、ジヘキシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジ−p−トリオイルカルボジイミド及びトリイソプロピルベンゼンポリカルボジイミド等が挙げられ、好ましくは親水性を持たせた水性カルボジイミド化合物が使用される。
【0023】
そして、皮膜1の表面に塗布される表面処理剤の混合比は、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対して、エステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)が15〜55重量部、好ましくは20〜50重量部とすることが好ましい。
エステルウレタンの含有量が10重量部未満の場合は、可塑剤の影響を受け、オレイン酸の耐薬品性を改善できない。また含有量が60重量部を超えると、摩耗性を十分に満足できない。
前記表面処理剤に添加されるカルボジイミド基含有の水性架橋剤として、カルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)の添加量は、ポリカーボネートウレタンが100重量部に対してカルボジイミドを3〜12重量部、好ましくは4〜8重量部とすることが好ましい。
カルボジイミドの含有量が2重量部未満の場合は、耐摩耗性とオレイン酸の耐薬品性を改善できない。また含有量が13重量部を超えると、屈曲時に表層の割れが発生する。
前記カルボジイミド基含有の水性架橋剤と併用されるイソシアネート系架橋剤として、イソシアネート(脂肪族系イソシアネート)の添加量は、ポリカーボネートウレタンが100重量部に対してイソシアネートを0〜8重量部とすることが好ましい。
イソシアネートの含有量が9重量部を超えると、屈曲時に表層の割れが発生する。
【0024】
本発明の実施形態に係る合成樹脂レザーAの製造方法を説明すると、塩化ビニル樹脂を主成分とする皮膜1を成形する皮膜成形工程と、皮膜1の裏面側に基材2を接着する基材接着工程と、成形された皮膜1の表面にポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)とエステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)の混合物をカルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)基含有水性架橋剤で架橋させた表面処理剤を塗布して表面処理層1aを形成する表面処理工程と、を含む。
【0025】
皮膜成形工程は、カレンダー成形、押し出し成形などによって、塩化ビニル樹脂を主成分とする皮膜1を成形する。
基材接着工程は、
図1や
図2に示されるように、皮膜1の裏面側もしくは基材2の一面側に接着剤を塗布して、皮膜1と基材2とを接着層3で間接的に接着させるか、又は、
図3に示されるように、接着層3を用いずに皮膜1と基材2を直接的に接着して一体化させる。
表面処理工程は、水性の表面処理剤を成形された皮膜1の表面に塗布し、乾燥処理を経て表面処理層1aを形成する。表面処理剤の塗布は、グラビアダイレクト印刷法、グラビアオフセット印刷法、スクリーン印刷法等の通常の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法等のコーティング法を用いて行うことができる。
表面処理が施された基材2付きの皮膜1には、必要に応じて発泡工程や絞付け工程を行う。これにより、皮膜1の表面及び表面処理層1aには、シボ模様などの凸状部分4a及び凹状部分4bを有する凹凸模様4が形成される。
【0026】
このような本発明の実施形態に係る合成樹脂レザーA及びその製造方法によると、ポリカーボネートウレタンとエステルウレタンの混合物をカルボジイミドで架橋させた表面処理剤を、塩化ビニル樹脂を主成分とする皮膜1の表面側に塗布することで、屈曲性及び耐摩耗性と耐オレイン酸性に優れた表面処理層1aが形成される。
したがって、高い可撓性や良好な強度に加えて、繰り返し受ける擦れ現象に対しての耐摩耗性と、人体の接触に対しての耐薬品性(耐オレイン酸性)を有する合成樹脂レザーを提供することができる。
その結果、表皮層の凸状部分が繰り返しの擦れによって剥がれ且つ人体の皮脂や汗と保湿用ローションなどの付着に対して耐薬品性に劣る従来のものに比べ、使用者の皮膚や衣類などの他の部材が、長期間に亘り表面処理層に接触して繰り返し擦れても剥がれが生じることなく、十分な耐摩耗性を維持することができると同時に、皮脂や汗や保湿用ローションなどに多く含まれるオレイン酸などの高級脂肪酸類に対する耐薬品性を維持することができる。
【0027】
特に、架橋剤をカルボジイミド基含有水性架橋
剤とイソシアネート系架橋剤の併用にすることが好ましい。
この場合には、表面処理層1aの耐寒屈曲性を保ちながら表面処理層1aの耐摩耗性が向上する。
したがって、表面処理層1aを強靱することができる。
その結果、耐久性の向上が図れる。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明の実施例を説明する。
[実施例1〜12及び比較例1〜8]
表1に示す実施例1〜12と表2に示す比較例1〜8は、それらに記載された成分をそれぞれの割合で配合し、カレンダー成形によって、厚み0.3mmの非発泡層11と厚み0.6mmの発泡層12に成形した。これら非発泡層11及び発泡層12と基材2(ポリエステル100%の83T捲縮糸で編成したパイル編布に二液型ポリウレタン接着剤を塗布したもの)を重ね合わせ、加熱、発泡させた後に絞ロールとゴムロールとで加圧することにより、絞付けが行われると同時に、発泡層12と基材2が接着されて、
図3に示される凹凸模様4が付いた合成樹脂レザーA(A3)を得た。
詳しく説明すると、皮膜1の非発泡層11は、軟質ポリ塩化ビニル(重合度1100のストレートレジン)100重量部に対し、可塑剤(ジイソデシルフタレート:DIDP)と可塑剤(エポキシ化大豆油)と熱安定剤(バリウム−亜鉛系混合安定剤)と充填剤(炭酸カルシウム)と難燃剤(三酸化アンチモン)と顔料などの合計80重量部を配合して厚み0.3mmに成形されている。
皮膜1の発泡層12は、ポリ塩化ビニル(重合度1100のストレートレジン)が100重量部に対し、可塑剤(ジイソデシルフタレート:DIDP)が75重量部と、可塑剤(エポキシ化大豆油)が2重量部と、熱安定剤(バリウム−亜鉛系混合安定剤)が3重量部と、充填剤(炭酸カルシウム)が5重量部と、難燃剤(三酸化アンチモン)が15重量部と、発泡剤(アゾジカルボンアミド)が5重量部と、顔料が若干量と、を配合して発泡前は厚み0.25mm、発泡後は厚み0.6mmに成形されている。
また、皮膜1において少なくとも非発泡層11には、摩耗改良剤として前記シリコーン・アクリル共重合物が配合されている。
【0029】
さらに、実施例1〜12及び比較例1〜8では、皮膜1の表面にポリカーボネートウレタンとして、化学式2に示す水性ポリカーボネート系ポリウレタン(スタール社製WD78−143)と、
【化2】
エステルウレタンとして、化学式3に示す水性ポリエステル系ポリウレタン(スタール社製WD78−253/PES)と、
【化3】
の混合物を、カルボジイミド基含有の水性架橋剤として、化学式4に示す脂肪族系カルボジイミド基含有水性架橋剤(スタール社製XR13−621)
【化4】
で架橋してなる表面処理剤を、20μmの膜厚で塗布して表面処理層1aを形成した。
特に、実施例5,6,10,12及び比較例8では、脂肪族系カルボジイミド基含有水性架橋剤と、イソシアネート系架橋剤として化学式5に示す脂肪族系架橋剤(スタール社製XR28−404)
【化5】
との併用で架橋した。
【0030】
また、実施例2,4〜12及び比較例3〜8では、皮膜1の非発泡層11において、ポリ塩化ビニル(重合度1100のストレートレジン)が100重量部に対し、化学式1に示すシリコーン・アクリル共重合物(シリコーンの重量比率70%、分子量250000)
【化1】
を5重量部添加しており、共通の構成にしている。
【0031】
実施例1〜3,5,6,9〜12及び比較例1,2,6〜8では、表面処理層1aにおいて、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、エステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)が30重量部を添加しており、共通の構成にしている。
実施例1〜8及び比較例1〜5,8では、表面処理層1aにおいて、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、カルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)が4重量部を添加しており、共通の構成にしている。
【0032】
実施例1の皮膜1(非発泡層11)では、ポリ塩化ビニル(重合度1100のストレートレジン)が100重量部に対し、シリコーン・アクリル共重合物が2.5重量部を添加している。
実施例3の皮膜1(非発泡層11)では、ポリ塩化ビニル(重合度1100のストレートレジン)が100重量部に対し、シリコーン・アクリル共重合物が10重量部を添加している。
実施例4の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、エステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)が20重量部を添加している。
実施例7の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、エステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)が40重量部を添加している。
実施例8の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、エステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)が50重量部を添加している。
実施例9,10の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、カルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)が8重量部を添加している。
実施例11,12の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、カルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)が12重量部を添加している。
実施例5,10,12の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(脂肪族系架橋剤)が4重量部を添加している。
実施例6の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(脂肪族系架橋剤)が8重量部を添加している。
【0033】
一方、比較例1では、皮膜1(非発泡層11)において、塩化ビニル樹脂に対するシリコーン・アクリル共重合物の混合量が実施例1よりも少ないところが異なっている。
詳しく説明すると、比較例1の皮膜1(非発泡層11)では、ポリ塩化ビニル(重合度1100のストレートレジン)が100重量部に対し、シリコーン・アクリル共重合物が1.5重量部を添加している。
比較例2では、皮膜1(非発泡層11)において、塩化ビニル樹脂に対するシリコーン・アクリル共重合物の混合量が実施例3よりも多いところが異なっている。
詳しく説明すると、比較例2の皮膜1(非発泡層11)では、ポリ塩化ビニル(重合度1100のストレートレジン)が100重量部に対し、シリコーン・アクリル共重合物が15重量部を添加している。
比較例3,4では、表面処理層1aにおいて、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に対するエステルウレタンの混合量が実施例4よりも少ないところが異なっている。
詳しく説明すると、比較例3の表面処理層1aでは、エステルウレタンを添加しておらず、比較例4の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタンが100重量部に対し、エステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)が10重量部を添加している。
比較例5では、表面処理層1aにおいて、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に対するエステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)の混合量が実施例6よりも多いところが異なっている。
詳しく説明すると、比較例5の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタンが100重量部に対し、エステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)が60重量部を添加している。
比較例6では、表面処理層1aにおいて、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に対するカルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)の混合量が実施例2よりも少ないところが異なっている。
詳しく説明すると、比較例6の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタンが100重量部に対し、カルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)が2重量部を添加している。
比較例7では、表面処理層1aにおいて、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に対するカルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)の混合量が実施例11よりも多いところが異なっている。
詳しく説明すると、比較例7の表面処理層1aでは、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)が100重量部に対し、カルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)が13重量部を添加している。
比較例8では、表面処理層1aにおいて、カルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)に対するイソシアネート(脂肪族系イソシアネート)の混合量が実施例6よりも多いところが異なっている。
詳しく説明すると、比較例8の表面処理層1aでは、カルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)が4重量部に対し、イソシアネート(脂肪族系イソシアネート)が9重量部を添加している。
【0034】
表1及び表2に示される評価結果(耐寒屈曲性、耐摩耗性(1)、耐摩耗性(2)、耐薬品性、加工性)は、以下の指標に基づくものである。
「耐寒屈曲性」の評価は、デマッチャ屈曲試験機を使用し、JIS K6260に準拠した、一定のストロークで試験片(70mm×40mm)に繰り返し屈曲の負荷を与え、−10℃×30000回の繰り返し屈曲で割れの有無を三段階で評価した。
この「耐寒屈曲性」の評価結果において、○:40000回の繰り返し屈曲で皮膜1に割れが無し、△:30000回の繰り返し屈曲で皮膜1に割れが無し、×:25000回の繰り返し屈曲で皮膜1に割れが有り、のように評価した。
「耐摩耗性(1)」の評価は、JIS L0823(染色堅牢度試験用摩擦試験機)に規定する学振形摩擦試験機を用い、荷重1kgでJIS L3102の6号綿帆布による摩擦試験を実施し、30000回往復での摩耗の有無を六段階で評価した。試験片として幅10mmで長さ3mmのウレタンフォームを貼り付けたものを用いた。
この「耐摩耗性(1)」の評価結果において、◎++:40000回以上の往復でも皮膜1の処理層にケズレが無い、◎+:35000回の往復でも皮膜1の処理層にケズレが無い、◎:30000回往復で皮膜1の処理層にケズレが無い、○:30000回往復で処理層のケズレが見られる、△:20000回往復で処理層のケズレが見られる、×:20000回往復で皮膜1の破れが有り、のように評価した。
「耐摩耗性(2)」の評価は、「耐摩耗性(1)」の評価と同様に、JIS L0823(染色堅牢度試験用摩擦試験機)に規定する学振形摩擦試験機を用い、荷重1kgでJIS L3102の6号綿帆布による摩擦試験を実施し、幅25mmで長さ70mmの試験片を使用して10000回往復時の皮膜1のケズレ量により六段階で評価した。
この「耐摩擦性(2)」の評価結果において、◎++:ケズレ量が0.010g以下、◎+:0.010〜0.015g、◎:0.015〜0.02g、○:0.02〜0.025g、△:0.025〜0.03g、×:0.03g以上、のように評価した。
「耐薬品性」の評価は、任意の大きさに採取した試験片上にろ紙を4枚重ね、オレイン酸を1.2mL滴下した。これをアルミホイルで密閉し、80℃環境下で24時間放置後取り出し、表面を叩くように拭き取り、試験片の浮き、破れ、表面処理層の剥がれを目視にて観察し、四段階で評価した。
この「耐薬品性」の評価結果において、◎:表面処理層1aの剥がれが全く無い、○:表面処理層1aの剥がれがほとんど無い、△:表面処理層1aが一部剥がれる、×:ほとんどの表面処理層1aが剥がれる、のように評価した。
「加工性」の評価は、150℃ロール温度でカレンダー加工を三段階で評価した。
この「加工性」の評価結果において、○:良好にカレンダー加工が可能、△:カレンダー加工がなんとか可能、×:滑性が高過ぎるためカレンダー加工できない、のように評価した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
[評価結果]
実施例1〜12と比較例1〜8を比較すると、実施例1〜12は、耐寒屈曲性、耐摩耗性(1)、耐摩耗性(2)、耐薬品性、加工性の全てにおいて良好な評価結果が得られている。
この評価結果から明らかなように、実施例1〜12は、使用者の皮膚や衣類などの他の部材が、長期間に亘り皮膜1の表面処理層1aに接触して繰り返し擦れても、表面処理層1aの凸状部分4aに剥がれが生じることなく、十分な耐摩耗性を維持することが可能になる。これと同時に、皮脂や汗や保湿用ローションなどに多く含まれるオレイン酸などの高級脂肪酸類に対して耐薬品性を維持することが可能になる。
特に、実施例2,3,7は、ポリ塩化ビニル(重合度1100のストレートレジン)100重量部に対するシリコーン・アクリル共重合物の添加量が5重量部、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)100重量部に対するエステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)の添加量が30〜40重量部、ポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)100重量部に対するカルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)の添加量を4〜8重量部とすることで、耐摩耗性(1)、耐摩耗性(2)を更に向上し、最も良好な総合評価を得られた。
また、実施例5,9,10は、イソシアネート系架橋剤(脂肪族系架橋剤)の添加量を4〜8重量部とすることで、耐摩耗性(1)、耐摩耗性(2)を更に向上した。その中でも実施例10(脂肪族系カルボジイミド8重量部+脂肪族系架橋剤4重量部)が最も良好な総合評価を得られた。
【0038】
しかし、これに対して、比較例1〜8は、耐寒屈曲性、耐摩耗性(1)、耐摩耗性(2)、耐薬品性、加工性のいずれかで不良な評価結果になっている。
詳しく説明すると、比較例1は、塩化ビニル樹脂に対するシリコーン・アクリル共重合物の混合量が実施例1よりも少ないため、耐摩耗性(2)で摩耗時のケズレ量が著しくて不良な評価結果になった。
比較例2は、塩化ビニル樹脂に対するシリコーン・アクリル共重合物の混合量が実施例3よりも多いため、耐寒屈曲性の繰り返し屈曲で皮膜1に割れができて不良な評価結果になった。さらに加工性で滑性が高過ぎてカレンダー加工できず不良な評価結果になった。
比較例3は、表面処理層1aにおいてポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に対してエステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)が添加されていないため、耐摩耗性(1)で破れが発生して不良な評価結果になった。さらに耐薬品性でほとんどの表面処理層1aが剥がれてしまい不良な評価結果になった。
比較例4は、表面処理層1aにおいてポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に対するエステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)の混合量が実施例4よりも少ないため、耐薬品性でほとんどの表面処理層1aが剥がれてしまい不良な評価結果になった。
比較例5は、表面処理層1aにおいてポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に対するエステルウレタン(水性ポリエステル系ポリウレタン)の混合量が実施例6よりも多いため、耐摩耗性(1)で破れが発生して不良な評価結果になった。
比較例6は、表面処理層1aにおいてポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に対するカルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)の混合量が実施例2よりも少ないため、耐摩耗性(1)で破れが発生して不良な評価結果になった。さらに耐薬品性でほとんどの表面処理層1aが剥がれてしまい不良な評価結果になった。
比較例7は、表面処理層1aにおいてポリカーボネートウレタン(水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に対するカルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)の混合量が実施例7よりも多いため、耐寒屈曲性で割れが生じて不良な評価結果になった。
比較例8は、表面処理層1aにおいてカルボジイミド(脂肪族系カルボジイミド)に対するの混合量が実施例6よりも多いため、耐寒屈曲性で割れが生じて不良な評価結果になった。
【0039】
なお、前述した実施例1〜12と比較例1〜8では、
図3に示される発泡層12を有して基材2と直接的に接着される合成樹脂レザーA(A3)において評価を行ったが、これに限定されず、
図1に示される発泡層12を有しない合成樹脂レザーA(A1)や、発泡層12を有して接着層3で基材2と間接的に接着される合成樹脂レザーA(A2)においても、前述した評価結果と同様な評価結果が得られる。