(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227223
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】半導体装置、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20171030BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20171030BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
H01L21/60 301A
H01L21/52 B
H01L23/12 301L
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-82736(P2012-82736)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-214546(P2013-214546A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年2月12日
【審判番号】不服2016-10645(P2016-10645/J1)
【審判請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】富士通テン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 弘道
(72)【発明者】
【氏名】岡 謙治
【合議体】
【審判長】
矢頭 尚之
【審判官】
鈴木 匡明
【審判官】
加藤 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0227226(US,A1)
【文献】
特開2007−184385(JP,A)
【文献】
特開2010−073747(JP,A)
【文献】
特開2011−035302(JP,A)
【文献】
特開2011−134956(JP,A)
【文献】
特開昭61−113243(JP,A)
【文献】
特開2009−302180(JP,A)
【文献】
特開2006−332680(JP,A)
【文献】
特開2007−136720(JP,A)
【文献】
特開2007−157940(JP,A)
【文献】
特表2013−508974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のチップと、
前記基板上に形成され、前記チップに接続された伝送線路と、
前記チップの複数の端子のうち、ワイヤ長が伝送速度または伝送損失への影響が比較的小さい端子への一端のボンディング後に、前記伝送線路の端子に他端をボンディングされた第1のワイヤと、
前記伝送線路の端子への一端のボンディング後に、前記チップの複数の端子のうち、ワイヤ長が伝送速度または伝送損失への影響が比較的大きい端子上にBSOB(Bond Stitch On Ball)によって形成されたバンプに他端をボンディングされ、前記第1のワイヤよりも長さが短い第2のワイヤと
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記チップは、
上面における周縁部に沿って前記複数の端子が一列に設けられ、
一列に設けられる前記複数の端子には、
ワイヤ長が伝送速度または伝送損失への影響が比較的小さい端子と、ワイヤ長が伝送速度または伝送損失への影響が比較的大きい端子とが含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2のワイヤがボンディングされる前記伝送線路の端子は、
前記第1のワイヤがボンディングされる前記伝送線路の端子よりも前記チップに近い位置に設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2のワイヤが接続される端子は、アンテナ導波管に接続される端子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つ記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板と前記チップとの間に、前記チップを前記基板に固定するための導電接着剤を更に有し、
該導電接着剤が、前記チップの面積からはみ出さない様に接着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体製造装置が、
チップを接続するための伝送線路を基板上に形成する工程と、
前記基板上に前記チップを設置する工程と、
第1のワイヤの一端を前記チップの複数の端子のうち、ワイヤ長が伝送速度または伝送損失への影響が比較的小さい端子にボンディングした後に、前記第1のワイヤの他端を前記伝送線路の端子にボンディングする第1のボンディングと、前記第1のワイヤよりも長さが短い第2のワイヤの一端を前記伝送線路の端子にボンディングした後に、前記第2のワイヤの他端を前記チップの複数の端子のうち、ワイヤ長が伝送速度または伝送損失への影響が比較的大きい端子上にBSOB(Bond Stitch On Ball)によって形成したバンプにボンディングする第2のボンディングとの内、何れかのボンディングを、前記第1のワイヤまたは前記第2のワイヤの接続される端子に応じて、選択する工程と、
選択されたボンディングを前記端子毎に実行する工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミリ波レーダ等を製造する際、電子部品として、高周波モジュールが利用されている。高周波モジュールは、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)等のチップと、これを配置及び接続するための回路基板とを有する。
図7は、従来技術において、回路基板101とMMICチップ102とがワイヤリングされた半導体装置100の断面図である。
図7に示す様に、従来の高周波モジュールでは、回路基板101の平面部にキャビティ(凹部)が形成され、その内部に、MMICチップ(斜線部)102が配置されている。キャビティの深さは、MMICのチップ高と略同一であるため、基板101のボンディング面とチップ102のボンディング面とは、略同一の高さに揃う。これにより、基板101とチップ102との間に、ワイヤW101、W102を短く配線することができる。ワイヤの長さは、信号の伝送速度や伝送損失に影響を及ぼすことから、伝送性能を向上するためには、電子部品のワイヤ長を短くすることが重要である。
【0003】
しかしながら、キャビティの形成には、チップの表面積大の開口部を基板表面に設けると共に、チップの高さと同等の掘り込みを行う工程が必要となる。また、キャビティを形成可能な回路基板の製造には、セラミックが用いられることが多く、この場合、製造コストが上昇する。特に、樹脂基板の場合、高い加工精度が必要であるため、基板の加工に多くの時間を費やしてしまうこととなり、その時間が、製造コストに反映される結果、高周波モジュール、ひいてはミリ波レーダの競争力を低下させる要因となる。上述の様に、ワイヤ長を短くするためにMMICチップをキャビティ内に配置することには、多大なコストが伴うこととなる。
【0004】
上記の様なコストの増加を回避するため、基板にキャビティを形成することなく、基板上にMMICチップを接着し、該チップと基板上の伝送線路とをワイヤにより接続する手法もある。かかる手法では、加工コストが低減する反面、ワイヤ長が増大し、その結果、高性能化が阻害される可能性がある。そこで、ワイヤ長を短くするため、通常は、チップ側から基板上の伝送線路側に配線するワイヤボンディングの工程において、逆方向(線路側からチップ側に向かう方向)の配線を行う。この様なボンディングの手法は、リバースボンディングと呼ばれ、従来では、主にパッケージの高さを薄化するために用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−184385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したボンディング技術には、例えば、以下に示す様な問題があった。すなわち、リバースボンディングでは、基板上の線路側ではなくチップ側が2ndボンドとなることから、ワイヤ長を短くすることで伝送性能が向上する反面、ボンディングによるチップへのダメージや、プローブ痕による接合性の低下が発生することがある。かかる懸念を解消するための技術として、BSOB(Bond Stitch On Ball)が有効であるが、BSOBの実行工程に、新たな加工時間を要することとなる。また、加工時間の増加に伴い、製造タクト(製品1個当たりの製造時間)が上昇するという問題点があった。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、コストを抑制しつつ、伝送性能を向上することのできる半導体装置、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願の開示する半導体装置は、一つの態様において、基板とチップと伝送線路と第1のワイヤと第2のワイヤとを有する。前記チップは、基板上に設けられる。前記伝送線路は、前記基板上に形成され、前記チップに電気接続される。前記第1のワイヤは、前記チップの端子への一端のボンディング後に、前記伝送線路の端子に他端をボンディングされたワイヤである。前記第2のワイヤは、前記伝送線路の端子への一端のボンディング後に、前記チップの端子に他端をボンディングされたワイヤである。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する半導体装置の一つの態様によれば、コストを抑制しつつ、伝送性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、通常ボンディングとリバースボンディングとが混在する受信用MMICチップが設けられた基板表面の部分拡大図である。
【
図2】
図2は、通常ボンディングとリバースボンディングとが混在する送信用MMICチップが設けられた基板表面の部分拡大図である。
【
図3】
図3は、通常ボンディングによりワイヤリングされた半導体装置の部分断面図である。
【
図4】
図4は、リバースボンディングによりワイヤリングされた半導体装置の部分断面図である。
【
図5】
図5は、基板上にレジストを有する半導体装置が通常ボンディングによりワイヤリングされる様子を示す図である。
【
図6】
図6は、基板上にレジストを有さない半導体装置がリバースボンディングによりワイヤリングされる様子を示す図である。
【
図7】
図7は、従来技術において、MMICチップと回路基板とがワイヤリングされた半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する半導体装置、及び半導体装置の製造方法の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する半導体装置、及び半導体装置の製造方法が限定されるものではない。
【0012】
図1は、通常ボンディングとリバースボンディングとが混在する受信用MMICチップ121が設けられた基板表面の部分拡大図である。
図1に示す様に、回路基板11の表面には、受信用MMICチップ121が配置されている。また、回路基板11の表面には、伝送線路13a〜13oが形成されており、これらの線路の内、伝送線路13a〜13lは、パッド上の端子を介して、受信用MMICチップ121にワイヤリングされている。一方、伝送線路13a〜13oの内、伝送線路13m〜13oは、パッド上の端子を介して、受信用MMICチップ121にワイヤリングされている。
【0013】
回路基板11は、同一基板上に、通常ボンディング領域G1〜G4とリバースボンディング領域R1とを有する。通常ボンディング領域G1〜G4内のワイヤW1〜W12は、通常のボンディングにより、受信用MMICチップ121と伝送線路13a〜13lとをそれぞれ電気接続し、リバースボンディング領域R1内のワイヤW13〜W15は、リバースボンディングにより、受信用MMICチップ121と伝送線路13m〜13oとをそれぞれ電気接続する。すなわち、受信用MMICチップ121には、通常のボンディングによりワイヤリングされた端子と、リバースボンディングによりワイヤリングされた端子とが混在する。
【0014】
送信用MMICチップ122についても、受信用MMICチップ121と同様の構成を採る。
図2は、通常ボンディングとリバースボンディングとが混在する送信用MMICチップ122が設けられた基板表面の部分拡大図である。
図2に示す様に、回路基板11上には、通常のボンディングが施された領域G5、G6と、リバースボンディングが施された領域R2とが混在する。通常ボンディング領域G5、G6では、送信用MMICチップ122と伝送線路13p〜13uとの間は、ワイヤW21〜W26により電気接続され、リバースボンディング領域R2では、送信用MMICチップ122と伝送線路13v〜13xとの間は、ワイヤW27〜W29により電気接続される。
【0015】
受信側、送信側の何れのMMICチップにおいても、リバースボンディングされるか否かは、ワイヤリングされる端子の種別に応じて決定される。例えば、リバースボンディング領域R1、R2は何れも、送信時と受信時の同期をとるための端子がワイヤリングされる領域である。この様に、信号伝送に係る端子を接続するためのワイヤボンディングには、多少コストや時間が掛かっても、伝送性能を向上する観点から、低損失の高速伝送が容易なリバースボンディングを採用することが好ましい。これに対して、他の領域G1〜G6内のワイヤボンディングには、リバースボンディングを行うことによるメリットが少ないことから、加工に掛かるコストや時間を抑制するため、通常のボンディングを行うことが好ましい。
【0016】
すなわち、半導体装置10は、端子に応じて、第1ボンドを、通常通りチップにするか、線路にするかを切り分けることで、性能及びコストの双方を考慮に入れた観点から、より効率的なボンディングを実施する。ボンディング方法の選定は、例えば、上記端子が、ワイヤ長が伝送速度または伝送損失に影響を与える端子であるか否かに基づいて行われる。特に、上記端子が、ミリ波(例えば、76GHzミリ波)の伝送路となるワイヤ(ミリ波を通すワイヤ)を接続する端子である場合には、リバースボンディングが選定される。
【0017】
図3は、通常ボンディングによりワイヤリングされた半導体装置10の部分断面図である。
図3に示す様に、回路基板11には、ワイヤボンディング用のパッド141、142が、チップ側と線路側の双方に載置される。チップ側のワイヤボンディングパッド141の表面には、導電接着剤15が塗布され、MMICチップ12が、導電接着剤15により、チップ側ワイヤボンディングパッド141に接着されている。MMICチップ12の表面には、チップパッド12aを介してボールボンドB1が形成され、該ボールボンドB1からワイヤW31が伝送線路側ワイヤボンディングパッド142に向かって延びることで、MMICチップ12が伝送線路に配線される。
【0018】
図4は、リバースボンディングによりワイヤリングされた半導体装置10の部分断面図である。
図4に示す様に、回路基板11には、ワイヤボンディング用のパッド141、142が、チップ側と線路側の双方に載置される。チップ側のワイヤボンディングパッド141の表面には、導電接着剤15が塗布され、MMICチップ12が、導電接着剤15により、ワイヤボンディングパッド141に接着されている。ワイヤボンディングパッド142の表面には、ボールボンドB1が形成され、該ボールボンドB1からワイヤW32が、チップパッド12a上のスタッドバンプB2に向かって延びることで、伝送線路がMMICチップ12に配線される。スタッドバンプB2は、通常のボールボンドB1と異なり、BSOBにより形成される。
【0019】
図4では、ワイヤW32は、ボールボンドB1からスタッドバンプB2に向かってほぼ最短距離に延びているのに対し、
図3では、ワイヤW31は、ボールボンドB1から一旦垂直方向に延びた後、伝送線路側ワイヤボンディングパッド142に向かって延びている。すなわち、通常のボンディングにより形成されたワイヤW31は、最短距離をとらない分、リバースボンディングにより形成されたワイヤW32よりも、長いワイヤ長となる。したがって、ワイヤW31は、ボンディングが容易な反面、ワイヤW32と比較して、信号の伝送距離が長くなる。その結果、ワイヤW31は、伝送ロスが生じ易く伝送速度も低い伝送路を形成することとなる。
【0020】
ボンディング装置20は、所定のプログラムに従い、MMICチップ12と伝送線路側パッド142とに対し、ワイヤボンディングを実行する。
図5は、回路基板11上にレジスト17を有する半導体装置10が通常ボンディングによりワイヤリングされる様子を示す図である。半導体装置10の製造に際し、ワイヤの両端を端子に接続するためのボンディングパッド間の直線距離を短くするためには、MMICチップ12の放熱性を向上するため、熱伝導率の高い導電性の接着剤16が用いられる。導電接着剤16は、例えば、Agエポキシにより生成される。このとき、ダイパッドとしてのチップ側ワイヤボンディングパッド141が、導電接着剤16を介して隣接パターン142に接触しない様に、チップ側パッド141と伝送線路側パッド142との間に絶縁性を確保する必要がある。一般的には、
図5に示す様に、レジスト17によりダム(段差)を形成し、導電接着剤16の伝送線路側への流れ出しを防止する。しかしながら、かかる製造方法では、レジスト17の幅や配線パターンのずれ等を考慮すると、チップ側パッド141と伝送線路側パッド142とに、少なくとも0.1〜0.3mmの間隔が必要となり、ワイヤW41の短縮が困難となる。
【0021】
図6は、回路基板11上にレジスト17を有さない半導体装置10がリバースボンディングによりワイヤリングされる様子を示す図である。
図6に示す半導体装置10では、導電接着剤16よりも希釈剤成分の少ない導電接着剤15を用い、かつ、MMICチップ12裏面の面積よりも少ない面積に導電接着剤15を塗布する。これにより、導電接着剤15の伝送線路側への流れ出しが抑制される。したがって、パッドの間隔を狭く配置しても、チップと伝送線路との間に絶縁性が確保される。その結果、回路基板11を追加工することなく容易に、ワイヤW42の長さを更に短縮することが可能となる。レジスト17を無くすことにより、例えば、回路基板にキャビティ加工を施す従来の態様と同等のワイヤ長を実現することができる。
【0022】
なお、MMICチップ12表面のボンディングには、例えば、ワイヤボンド工法を用いることができる。この場合、チップパッド12aとワイヤW42とは、BSOBを用いて形成されたスタッドバンプB2を介して電気接続される。また、ワイヤボンド工法では、短ループ接続技術により、キャビティ形成の場合と同様なワイヤ長が実現される。一方、MMICチップ12裏面のボンディングには、例えば、ダイボンド工法を用いることができる。この場合、導電接着剤15を塗布することで、強度と放熱性とを両立することができる。また、フィレットレス接着技術を用いることで、信頼性を維持しつつ、導電接着剤15のチップ外形からのはみ出しを無くすことができる。
【0023】
以上説明した様に、本実施例に係る半導体装置10は、1つのチップ内に、2種類の方向のボンディングが混在する構成を採る。半導体装置10は、回路基板11とMMICチップ12と伝送線路13a〜13xとワイヤW1〜W15、W21〜W29、W31、W32、W41、W42とを有する。MMICチップ12は、回路基板11上に形成される。伝送線路13a〜13xは、回路基板11上に形成され、MMICチップ12に電気接続される。各ワイヤW1〜W12、W21〜W26、W31、W41は、MMICチップ12の端子への一端のボンディング後に、伝送線路13a〜13l、13p〜13uの端子に他端をボンディング(通常のボンディング)される。各ワイヤW13〜W15、W27〜W29、W32、W42は、伝送線路13m〜13o、13v〜13xの端子への一端のボンディング後に、MMICチップ12の端子に他端をボンディング(リバースボンディング)される。
【0024】
MMICチップ12と伝送線路13a〜13x間のワイヤボンディングに関し、全てのボンディングを、チップ側の端子を始点とするボンディング(通常のボンディング)とすると、BSOBが不要な分、製造タクトが短くなる。しかしながら、その一方で、ワイヤ長が長くなる分、性能面(速さや薄さ)で劣ることとなる。これに対して、全てのボンディングを、伝送線路側の端子を始点とするボンディング(リバースボンディング)とすると、性能が向上する反面、BSOBの工程や短ループ接続技術が必要となるため、製造タクトが増加することとなる。そこで、本実施例では、1つのチップ内に、通常のボンディングとリバースボンディングとを混在させ、低コストと高速伝送とを両立させる構成とした。換言すれば、リバースボンディングを選択的に用いて2種類のボンディングを行うことで、ボンディングに掛かる時間を増大させることなく、伝送性能(伝送の速度や品質)に係るワイヤ長を短くすることができる。
【0025】
半導体装置10において、各ワイヤW13〜W15、W27〜W29、W32、W42が接続される端子は、ワイヤ長が伝送速度または伝送損失に影響を与える端子であってもよい。
【0026】
半導体装置10内の全ての端子が伝送速度や伝送損失に影響を及ぼす訳ではないことから、全ての端子に対し、性能の高いリバースボンディングを施すことは、加工時間の面から非効率的である。したがって、リバースボンディングを行う端子と行わない端子との切り分けが重要になるが、リバースボンディングを行う端子の選択に当たり、ワイヤ長が半導体装置10の伝送速度や損失に影響を与える端子を選択することが好ましい。これにより、半導体装置10の性能を維持しつつ、コストを抑えた効率的なリバースボンディングが可能となる。
【0027】
半導体装置10において、各ワイヤW13〜W15、W27〜W29、W32、W42が接続される端子は、アンテナ導波管に接続される端子であってもよい。
【0028】
ワイヤ長が伝送速度や伝送損失に影響を与える端子の内、特に、アンテナ導波管に接続される端子のワイヤは、チップからアンテナへの導波路を形成することから、アンテナのゲインや伝送速度に対し、より直接的な影響を及ぼす。したがって、半導体装置10は、かかる端子のボンディングにリバースボンディングを適用することで、アンテナの利得特性を維持すると共に、高い伝送性能を確保することができる。また、その他の端子に対しては通常のボンディングを適用することで、高い伝送性能を発揮するために短いワイヤ長が要求される端子に対して、ピンポイントにリバースボンディングを適用することができる。
【0029】
半導体装置10において、回路基板11とMMICチップ12との間に、MMICチップ12を回路基板11に固定するための導電接着剤15を更に有するが、この場合、導電接着剤15単独で、流れ防止用のダムを不要として、接着剤がチップからはみ出さないように接着することができる。
【0030】
従来は、上記導電接着剤15がチップ側から伝送線路側に流れ出すことを防止するためのダム(レジスト)を回路基板11上に設けていたが、本実施例では、導電接着剤15は、MMICチップ12と回路基板11との間に収まるように存在する。このため、チップと基板との間の導電接着剤15が、チップ裏面から外へ流れ出すことが無い。したがって、本実施例に係る半導体装置10は、導電接着剤15の流れ出しを防止するためのダム(レジスト)17を基板上に設ける必要が無く、その分、チップと基板の端子間の距離(ワイヤ長)を短くすることができる。すなわち、半導体装置10は、リバースボンディングの際、ワイヤを、より短く形成することができる。その結果、伝送ロスの少ない高速な信号伝送を実現することが可能となる。
【0031】
更に、半導体装置10の製造方法は、半導体製造装置が実行する以下の各工程を含む。基板形成工程では、半導体装置10は、MMICチップ12を接続するための伝送線路13a〜13xを回路基板11上に形成する。チップ設置工程では、半導体装置10は、回路基板11上にMMICチップ12を設置する。ボンディング手法選択工程では、半導体装置10は、上記通常のボンディングと上記リバースボンディングとの内、何れかのボンディングを、ワイヤの接続される端子の機能や種別に応じて、選択する。ボンディング工程では、半導体装置10は、選択されたボンディングを端子毎に実行する。
【0032】
本実施例に係る半導体装置10の更なる効果として、パターン配線を容易に行うことができる。すなわち、リバースボンディングは、パッド間の距離が長いと形成が困難であることから、リバースボンディングを行う際には、チップ側パッド141と伝送線路側パッド142との間隔を、ある程度狭める必要がある。したがって、高速伝送を実現するために、基板上の全ての端子をリバースボンディングによりワイヤリングすると、パターン配線に使用可能な、基板上のスペースが減少し、伝送線路の形成が困難となる懸念がある。しかしながら、本実施例に係る半導体装置10では、ワイヤ長を問題視すべき端子に対してのみ、リバースボンディングによるワイヤリングを行う。このため、全てのボンディング数の内、リバースボンディングの数は一部のみ(例えば、全ワイヤの20〜30%の本数)となり、半導体装置10は、パッド間隔が広い部分を多く残存させることができる。これにより、基板上に空きスペースを確保することが容易となり、そのスペースにパターン配線を行うことで、伝送線路を容易に形成することが可能となる。その結果、上記懸念は解消される。
【0033】
なお、上記実施例では、リバースボンディングにおいて、回路基板11上にダムを設けない態様を例示した(
図6参照)が、これに限らず、通常ボンディングにおいても同様に、ダムを不要とする構成を採ることもできる。
【0034】
また、半導体装置10を製造する際、製造装置は、実行するボンディングの種類に拘らず、端子が配置されている順に、ワイヤボンディングを実行することで、加工処理が効率化される。すなわち、ボンディングのためにアームを移動させる距離を短くすることができ、加工に掛かる時間やコストを低減することができる。但し、製造装置は、伝送性能に影響の無い全ての端子に対して通常のボンディングを実行し、これを完了した後に、残りの端子に対してリバースボンディングを実行するものとしてもよい。また、ボンディングの順序は、これと逆であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上の様に、本発明に係る半導体装置、及び半導体装置の製造方法は、高速かつ低廉な電子部品の製造に有用であり、特に、車両搭載用のミリ波レーダ等の製造に適する。
【符号の説明】
【0036】
10 半導体装置
11 回路基板
12 MMICチップ
12a チップパッド
13a〜13l、13p〜13u 伝送線路(通常ボンディング)
13m〜13o、13v〜13x 伝送線路(リバースボンディング)
15、16 導電接着剤
17 レジスト(ダム)
20 ボンディング装置
100 半導体装置
101 回路基板
102 MMICチップ
121 受信用MMICチップ
122 送信用MMICチップ
141 チップ側ワイヤボンディングパッド
142 伝送線路側ワイヤボンディングパッド
B1 ボールボンド
B2 スタッドバンプ(BSOB)
G1、G2、G3、G4、G5、G6 通常ボンディング領域
R1、R2 リバースボンディング領域
W1〜W15、W21〜W29、W31、W32、W41、W42 ワイヤ
W101、W102 ワイヤ