特許第6227228号(P6227228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227228
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】スポーツ用手袋
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/14 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   A63B71/14 F
   A63B71/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-134987(P2012-134987)
(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-255748(P2013-255748A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年3月25日
【審判番号】不服2017-685(P2017-685/J1)
【審判請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄二
(72)【発明者】
【氏名】西川 範浩
【合議体】
【審判長】 吉村 尚
【審判官】 黒瀬 雅一
【審判官】 畑井 順一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−121615(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0244092(US,A1)
【文献】 実開昭50−65572(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/14
A41D 19/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレッチ素材を部分的に配置した伸びの少ない柔軟な素材である天然皮革、人工皮革又は合成皮革からなるスポーツ用手袋において、前記ストレッチ素材を、小指、薬指でバットまたはクラブを把持した際に、大きく膨らむ甲側面部分の小指外転筋を覆う領域に配置したことを特徴とするスポーツ用手袋。
【請求項2】
前記手の甲側面部分の小指外転筋を覆う領域以外に、手の甲部の第一中手骨と第二中手骨間の背側骨間筋を覆う領域にも、ストレッチ素材を配置した請求項1記載のスポーツ用手袋。
【請求項3】
前記手の甲側面部分の小指外転筋を覆う領域以外に、手の第二中手骨〜第五中手骨の骨頭関節部を覆う領域にも、ストレッチ素材を配置したことを特徴とする請求項1記載のスポーツ用手袋。
【請求項4】
前記手の甲側面部分の小指外転筋を覆う領域と、手の甲部の第一中手骨と第二中手骨間の背側骨間筋を覆う領域以外に、手の第二中手骨〜第五中手骨の骨頭関節部を覆う領域にも、ストレッチ素材を配置した請求項2記載のスポーツ用手袋。
【請求項5】
前記手の第二中手骨〜第五中手骨の骨頭関節部を覆う領域に配置したストレッチ素材が、各指の中節骨まで達する長さに形成されている請求項4記載のスポーツ用手袋。
【請求項6】
手の甲部の親指側にスリット形状の履き口を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスポーツ用手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野球やゴルフなど、バットやクラブを握る際に使用するスポーツ用手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バットを握る際に使用するバッティング用手袋は、スイング時に、手とバットが滑らないようにするためのものであり、天然皮革、人工皮革や合成皮革によって形成されている。
【0003】
このようなスポーツ用手袋は、手とのフィット感や把持時におけるグリップ感の良好なものが当然ながら好まれる。
【0004】
スポーツ用手袋におけるフィット感やグリップ感は、プロ選手といった上級者ほど要求性能が高い。
【0005】
ところで、天然皮革、人工皮革や合成皮革といった素材は、柔軟性に富むが、伸びの少ない材料であるから、バットやクラブを握った際に、手袋の生地が手の伸びに追随せず、フィット感やグリップ感に違和感が生じやすい。
【0006】
従来、天然皮革、人工皮革や合成皮革といった素材の伸びを補助するために、指関節部分などの曲げが大きい部分に、ストレッチ素材を部分的に配置して手とのフィット感を向上させた手袋がある(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−325873号公報
【特許文献2】特開2007−143831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、野球に限らず打具やそれに類似する棒状のものを把持するスポーツの場合、小指、薬指でしっかりと握るということが重要とされている。
【0009】
しかしながら、従来のスポーツ用手袋を着用して小指、薬指でしっかりとバット等を把持した場合、小指側の手の甲の側面部分が大きく膨らみ、この膨らみに手袋が追随できず、素手で握ったようなフィット感を得ることができなかった。
【0010】
また、従来のスポーツ用手袋は、伸びの少ない天然皮革、人工皮革や合成皮革といった素材によって形成されているため、着脱を容易にするために、スリット形状の履き口を手の甲の小指側に設けている場合が多い。
【0011】
このように、スリット形状の履き口を手の甲の小指側に設けた場合には、履き口の縫い目が手とのフィット性をさらに低下させるという問題があった。
【0012】
そこで、この発明は、小指、薬指でしっかりとバット等を把持した際に、小指側の手の甲の側面部分が大きく膨らんでも、この膨らみに手袋の甲部分が追随し、素手で握った場合と同様のフィット感、グリップ感が得られるスポーツ用手袋を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の発明者らは、小指、薬指でしっかりとバット等を把持した際における手の歪み状態を非接触型歪み分布測定器を用いて調査したところ、小指側の手の甲の側面部分に大きな歪みが生じ、この歪みによって手袋のフィット感、グリップ感が阻害されるという知見を得た。
【0014】
この知見に基づき、この発明者らは、天然皮革、人工皮革や合成皮革といった伸びの少ない素材によって手袋を形成する場合に、少なくとも手甲部の小指外転筋を覆う領域に、ストレッチ素材を配置することにより、小指、薬指でしっかりとバット等を把持した際に、小指側の手の甲の側面部分が大きく膨らんでも、この膨らみに追随して小指外転筋を覆う領域に配置したストレッチ素材が伸び、素手で握った場合と同様のフィット感、グリップ感が得られるということを見出した
のである。
【0015】
前記ストレッチ素材は、小指外転筋を覆う領域以外にも、手甲部の第一中手骨と第二中手骨間の背側骨間筋を覆う領域、手の第二〜第五中手骨の骨頭関節部を覆う領域などに配置してもよい。
【0016】
スリット形状の履き口は、甲部の小指側ではなく親指側に設けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るスポーツ用手袋は、少なくとも手甲部の小指外転筋を覆う領域に、ストレッチ素材を配置することにより、小指、薬指でしっかりとバット等を把持した際に、小指側の手の甲の側面部分が大きく膨らんでも、この膨らみに追随して小指外転筋を覆う領域に配置したストレッチ素材が伸びるので、素手で握った場合と同様のフィット感、グリップ感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】手の骨格図である。
図2】この発明に係るスポーツ用手袋の第一の実施形態を甲側から見た平面図である。
図3】この発明に係るスポーツ用手袋の第二の実施形態を甲側から見た平面図である。
図4】この発明に係るスポーツ用手袋の第三の実施形態を甲側から見た平面図である。
図5】この発明に係るスポーツ用手袋の第四の実施形態を甲側から見た平面図である。
図6】この発明に係るスポーツ用手袋の第五の実施形態を甲側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、手の骨格図であり、図2図6の実施形態には、図1の骨格図を破線で示している。図1の骨格図において、符号1は第一中手骨、2は第二中手骨、3は第三中手骨、4は第四中手骨、5は第五中手骨、6は各指の基節骨、7は各指の中節骨、8は各指の末節骨、9は小指外転筋、10は背側骨間筋である。
【0020】
図2に示すスポーツ用手袋は、手の甲を覆う甲部11、手の掌を覆う掌部12、指袋部13(親指袋部13a、人指し指袋部13b、中指袋部13c、薬指袋部13d、小指袋部13e)を備える。
【0021】
甲部11には、親指側にスリット形状の履き口14が形成され、この履き口14の両側から手首を囲うようにリストバンド部15が設けられている。
【0022】
また、リストバンド部15の親指側の端部には、係止ベルト16が設けられ、この係止ベルト16の裏面と、リストバンド部15の甲側に、雌雄の面ファスナーを設け、係止ベルト16によってリストバンド部15を手首にしっかりと固定できるようにしている。
【0023】
小指外転筋9を覆う領域を除く甲部11、掌部12、指袋部13は、天然皮革、人工皮革又は合成皮革といった伸びの少ない柔軟な素材によって形成され、甲部11の小指外転筋9を覆う領域は、天然皮革、人工皮革又は合成皮革よりも伸びやすい、スパンデックス素材や編物等のストレッチ素材17によって形成されている。
【0024】
図2において、天然皮革、人工皮革又は合成皮革は、薄墨で表し、ストレッチ素材17は網目模様で表している。
【0025】
また、リストバンド部15は、ゴム糸あるいはスパンデックス等の弾性糸を織り込んだ弾性布地によって形成している。
【0026】
図2の実施形態のスポーツ用手袋は、手甲部の小指外転筋9を覆う領域をストレッチ素材17によって形成しているので、それ以外の部分が天然皮革、人工皮革又は合成皮革といった伸びの少ない柔軟な素材によって形成されていても、小指、薬指でしっかりとバット等を把持した際に、小指側の手の甲の側面部分が大きく膨らんでも、この膨らみに追随して小指外転筋9を覆う領域に配置したストレッチ素材17が伸びるので、素手で握った場合と同様のフィット感、グリップ感が得られる。
【0027】
次に、図3の実施形態のスポーツ用手袋は、手甲部の小指外転筋9を覆う領域以外に、手甲部の第一中手骨1と第二中手骨2間の背側骨間筋10を覆う領域にも、ストレッチ素材17を配置してあるので、バット等を把持した際に生じる手の甲の親指側部分の膨らみにも手袋の甲部分が追随するので、より優れたフィット感、グリップ感が得られる。
【0028】
次に、図4の実施形態のスポーツ用手袋は、手甲部の小指外転筋9を覆う領域以外に、手の第二中手骨2〜第五中手骨5の骨頭関節部を覆う領域にも、ストレッチ素材17を配置してあるので、手の第二中手骨2〜第五中手骨5の骨頭関節部が曲げ易い。
【0029】
次に、図5に示す実施形態のスポーツ用手袋は、手甲部の小指外転筋9を覆う領域と、手甲部の第一中手骨1と第二中手骨2間の背側骨間筋10を覆う領域、さらに、手の第二中手骨2〜第五中手骨5の骨頭関節部を覆う領域にも、ストレッチ素材17を配置している。
【0030】
したがって、この図5に示す実施形態のスポーツ用手袋は、手の第二中手骨2〜第五中手骨5の骨頭関節部が曲げ易く、しかもバット等を把持した際に生じる小指側の手の甲の側面部分の膨らみと手の甲の親指側部分の膨らみに、手袋の甲部分が追随するので、より優れたフィット感、グリップ感が得られる。
【0031】
次に、図6に示す実施形態のスポーツ用手袋は、図5に示す実施形態のスポーツ用手袋における手の第二中手骨2〜第五中手骨5の骨頭関節部を覆う領域に配置したストレッチ素材17をさらに、各指の中節骨7まで達する長さに形成しているので、各指の中節骨7の骨頭関節部もより曲げ易くなっている。
【0032】
なお、図2図6の実施形態では、甲部11の親指側にスリット形状の履き口14を形成しているので、手袋を着用して小指、薬指でしっかりとバット等を把持しても、履き口14の縫い目によって小指側のフィット性を低下させるということがない。また、図2図6の実施形態では、ストレッチ素材17は、少なくとも手の甲部の小指外転筋を覆う領域に配置されていればよく、分断されていてもよいが、連続して配置されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0033】
1 第一中手骨
2 第二中手骨
3 第三中手骨
4 第四中手骨
5 第五中手骨
6 基節骨
7 中節骨
8 末節骨
9 小指外転筋
10 背側骨間筋
11 甲部
12 掌部
13 指袋部
14 履き口
15 リストバンド部
16 係止ベルト
17 ストレッチ素材
図1
図2
図3
図4
図5
図6