(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陽極リードを導出する多孔質層を設けた弁作用金属からなる陽極体と、誘電体層と、酸化皮膜を形成する能力を有する酸化皮膜修復層と、固体電解質層と、グラファイトペースト層と、銀ペースト層とを順次備え、前記酸化皮膜修復層は、導電性高分子と、水を保持したゲル化剤からなり、前記固体電解質層は前記導電性高分子からなることを特徴とする固体電解コンデンサ。
前記酸化皮膜修復層は、前記導電性高分子と前記水を保持したゲル化剤が、固溶した状態もしくは分散した状態であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
前記酸化皮膜修復層が前記誘電体層の上に設けられ、前記酸化皮膜修復層の上に少なくとも1層の前記固体電解質層が設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
前記導電性高分子は、ピロール、アニリン、チオフェン、あるいはそれらの誘導体の重合体から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【背景技術】
【0002】
従来から弁作用金属として、タンタル、ニオブ、アルミニウム等を用いた固体電解コンデンサは、小型で静電容量が大きく、周波数特性に優れることから、CPUの電源回路などに広く使用されている。
【0003】
近年、携帯型電子機器の発展に伴い、固体電解コンデンサの小型化及び薄型化が進んでいる。また、低コスト化や生産性の向上に対する要求も高まり、製造工程での歩留まりの改善もさらに必要となってきている。
【0004】
固体電解コンデンサに用いるコンデンサ素子は、通常、弁作用金属からなる多孔質体に誘電体層、固体電解質層、グラファイトペースト層、銀ペースト層を順次設けて形成される。多孔質体は、弁作用金属の箔をエッチングして微細な孔を形成したものや、弁作用金属の粉末の成形体を焼結したものからなり、どちらも、静電容量を大きくするために拡面化したものである。誘電体層は、コンデンサの電荷を蓄えるためのものであり、多孔質体の表面に形成した酸化被膜からなる。
【0005】
固体電解コンデンサの製造工程において、歩留まり改善に貢献する項目のひとつとして漏れ電流(LC)不良率の低減が挙げられる。LCの発生は、多孔質体の表面に形成された誘電体層に発生する微小なヒビ等からなる欠損部が原因となる場合が多い。欠損部は、誘電体層を形成する酸化皮膜が壊れ、下地の弁作用金属の基材が露出した部分であり、例えば、タンタルの酸化被膜である5酸化タンタルよりも電気抵抗が小さく、電圧を印加した場合に、LCが流れ易くなっている。
【0006】
コンデンサ素子における誘電体層を形成する方法としては、一般的に陽極酸化法が用いられる。陽極酸化法はタンタル等の弁作用金属からなる多孔質体をリン酸などの水溶液に浸漬して電圧を印加し、多孔質体の表面に酸化被膜を形成し誘電体層を設けるものである。この酸化被膜は非常に脆く壊れ易いため、従来の固体電解コンデンサにおいて、LCの発生を抑制するため、誘電体層の欠損部を酸化被膜により修復する方法が特許文献1に開示されている。
【0007】
特許文献1には、陽極体の誘電体酸化被膜の上に、所定の水分を保持させた吸水性ポリマー層を形成し、さらにその上に導電性高分子よりなる固体電解質層を形成した固体電解コンデンサが記載されている。この構成ではエージング(例えば、135℃の環境下で定格電圧の1.3倍程度の電圧を印加する処理)を行うことで、吸水性ポリマーによって保持された水から発生した酸素が誘電体酸化皮膜の欠陥部に供給され、欠陥部の修復が速やかに行われるため、エージング時間の短縮をはかることが可能になることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示された技術は、水分を保持させた吸水性ポリマー層が絶縁物であるため、誘電体層が見かけ上厚くなったことになりコンデンサの静電容量の低下を招くという課題がある。また、上述したように、水だけを保持させた吸水性ポリマー層は絶縁物であり、誘電体層の酸化被膜の欠損部に発生したLCが流れ難いため、酸素の発生が不十分となり酸化被膜修復が進みにくいという課題がある。
【0010】
したがって、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は静電容量の低下を招かず、LC不良率を低減し、製造歩留まりを改善させ、生産性向上に対応可能な固体電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、固体電解コンデンサにおいて、導電性高分子と、水分を保持したゲル化層からなる酸化皮膜を形成する能力を有する酸化皮膜修復層を備えるものである。この酸化皮膜修復層を備えることにより、誘電体層の欠損部にLCが流れた場合に、LCが酸化皮膜修復層に達して酸化皮膜修復層に保持される水を電気分解し、酸素を発生させる。この酸素が欠損部の弁作用金属に供給され、安定な酸化被膜を形成することが出来る。つまり、本発明の酸化皮膜修復のメカニズムは、導電性高分子層に、陽極酸化を可能にする構成を取り入れたものである。
【0012】
さらに、本発明では、酸化皮膜修復層に導電性高分子を含んでいるため酸化皮膜修復層が導電性を有するため静電容量の低下を抑制することができる。
【0013】
すなわち、本発明の固体電解コンデンサは、陽極リードを導出する多孔質層を設けた弁作用金属からなる陽極体と、誘電体層と、酸化皮膜を形成する能力を有する酸化皮膜修復層と、固体電解質層と、グラファイトペースト層と、銀ペースト層とを順次備え
、前記酸化皮膜修復層は、導電性高分子と、水を保持したゲル化剤からなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記酸化皮膜修復層が、前記導電性高分子と前記水を保持したゲル化剤が、固溶した状態もしくは分散した状態であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の酸化皮膜修復層は、前記酸化皮膜修復層の水の含有率が、1mass%以上90mass%以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の前記酸化皮膜修復層は、少なくとも1層の前記固体電解質層を介して前記誘電体層の上に設けられることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記導電性高分子が、ピロール、アニリン、チオフェン、あるいはそれらの誘導体の重合体から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。
【0019】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記ゲル化剤がポリアクリル酸ナトリウム、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンクロライドおよびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、固体電解コンデンサにおいて、酸化皮膜を形成する能力を有する酸化皮膜修復層を備えることにより、誘電体層の欠損部にLCが流れた場合に、欠損部における弁作用金属で陽極酸化が生じ酸化被膜が再度形成される。これによりLC不良率を低減し、製造歩留まりを改善させ、生産性向上に対応可能な固体電解コンデンサを供給することが可能となる。
【0021】
さらに、本発明では、酸化皮膜修復層に導電性高分子を含んでいるため、静電容量の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
(実施の形態)
図1は、本発明の固体電解コンデンサの構成を説明する図であり、
図1(a)は、固体電解コンデンサの概略断面図、
図1(b)は、A部の拡大図である。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施の形態の固体電解コンデンサ30は、多孔質層を有する弁作用金属の焼結体からなる多孔質体1を有し、弁作用金属のワイヤー等からなる陽極リード7を導出する導出面を備える。その多孔質体1の表面には誘電体層2が形成され、陽極体15が構成される。
【0026】
多孔質体1に用いる弁作用金属は、タンタル、アルミニウム、チタン、ニオブ、ジルコニウム、またはこれらの合金等から適宜選定できる。
【0027】
誘電体層2は、弁作用金属の表面を陽極酸化法により酸化させた酸化被膜であり、陽極体15の導出面、側面、底面および内部の多孔質層の表面に形成される。誘電体層2の厚みは、陽極酸化法の印加電圧によって適宜調整できる。
【0028】
誘電体層2の表面には酸化皮膜を形成する能力を有する酸化皮膜修復層3が形成され、酸化皮膜修復層3の表面には固体電解質層4が形成され、固体電解質層4の表面には、グラファイトペースト層5、銀ペースト層6が順次形成され、コンデンサ素子20が構成される。
【0029】
固体電解質層4は、導電性高分子層からなり、複数の層で構成されていてもよい。例えば、第一層を化学酸化重合法や電解重合法により形成し、第二層を予め重合した導電性高分子懸濁溶液に浸漬し加熱乾燥して形成してもよい。また、固体電解質層を成す複数の導電性高分子層は前述の化学酸化重合法、電解重合法、導電性高分子懸濁液による方法の任意の組み合わせで形成することができる。
【0030】
陽極リード7と銀ペースト層6は、外部電極端子であるリードフレーム9に溶接や、導電性接着剤8で電気的に接続される。その後、絶縁材料であるエポキシ樹脂等からなる外装10を設けて固体電解コンデンサ30が完成する。
【0031】
ここで本発明の酸化皮膜修復層3は、導電性高分子に水を保持したゲル化剤により構成されている。本発明の酸化皮膜修復層3は、誘電体層2に存在する欠損部から流れ出たLCが酸化皮膜修復層3に保持されている水を電気分解し、発生した酸素により弁作用金属の表面に酸化被膜を形成するものである。
【0032】
本発明では、酸化皮膜修復層3に導電性高分子を含有させることにより、酸化皮膜修復層3の導電率を向上させることが出来るため、固体電解コンデンサの静電容量の低下を抑制することが可能となる。同様に、本発明では、酸化皮膜修復層3が導電性高分子を含有しているので、誘電体層2の酸化被膜の欠損部に発生したLCが酸化皮膜修復層3に流れ込み易くなり、酸化被膜修復に必要な酸素を十分に発生させることが出来る。
【0033】
また、酸化皮膜修復層3にゲル化剤を用いる理由は、コンデンサ素子を形成する工程で安定して水を保持できるようにするため、さらに所望の水の含有率を得やすくするためである。
【0034】
なお、酸化皮膜修復層3における、導電性高分子と、水を保持したゲル化剤の存在する状態は異なる物質が互いに溶け合った、いわゆる固溶した状態と、微細な粒子が液体または固体中に浮遊懸濁している、いわゆる分散した状態を示す場合の2つに分けられる。これは導電性高分子に導電性を付与するために添加されるドーパントや、ドーパントの役目を兼ねる酸化剤の親水性や添加量等の度合いにより決定されるものと考えられる。
【0035】
酸化皮膜修復層3の厚みは、製品の定格電圧などを考慮し、適宜決定してよいが、等価直列抵抗(ESR)の増加およびリフロー時の水分揮散量を勘案し決定されると尚良い。
【0036】
なお、酸化皮膜修復層3を構成する導電性高分子は、導電性を有する高分子材料であれば特に限定されないが、製造工程の効率化、高い導電性を発現する観点から、ピロール、アニリン、チオフェン、あるいはそれらの誘導体の重合体からなる導電性高分子の少なくとも1種からなることが好ましい。
【0037】
酸化皮膜修復層3の水の含有率は、誘電体層2の欠損部に酸化皮膜修復層3から酸素の供給を十分行うために、1mass%以上90mass%以下であることが好ましい。
【0038】
酸化皮膜修復層3を構成するゲル化剤は、安定して水を保持できる観点から、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸化合物、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンクロライド、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。また、その他自重の数十倍から数百倍の水を保持できる樹脂から選ばれる少なくとも1種を使用することも可能である。
【0039】
酸化皮膜修復層3の形成に用いる酸化剤は、化学酸化重合が良好に行われる酸化剤であれば特に限定されないが、無機酸としてペルオキソ二硫酸などの過硫酸塩、無機酸、有機酸の鉄(III)塩が用いられる。また、特に高い重合度が得られドーパントも兼ねる芳香族スルホン酸金属塩としてベンゼンスルフォン酸第二鉄、p−トルエンスルホン酸鉄(III)などが好ましい。
【0040】
導電性高分子に添加されるドーパントとしては、親水基を持ち、水等の溶媒に良好な可溶性を示す、ポリスチレンスルホン酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースルホン酸等が好ましい。
【0041】
また、酸化皮膜修復層3は、誘電体層2の表面に直接形成せず、単層または複数の固体電解質層4を介して形成しても酸化皮膜修復の効果を得ることは可能である。
【0042】
なお、酸化皮膜修復層3は、導電性高分子の他に導電率を更に向上させる電解質として、リン酸、硝酸、アジピン酸アンモニウム、ホウ酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウムなどのイオン性電解質から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0043】
本発明では、酸化皮膜修復層3を備えた固体電解コンデンサ30に対して、製造工程において所定の電圧を印加し、誘電体層2の欠損部に故意にLCを流すスクリーニング工程、すなわちエージング工程を用いて、コンデンサ素子における誘電体層2の酸化被膜の欠損部を予め修復した固体電解コンデンサ30の提供が可能になる。これによりLC不良率を低減し、製造歩留まりを改善させ、生産性向上に対応可能な固体電解コンデンサを供給することが可能となる。
【0044】
また、基板実装時のリフローによる熱ストレスや電気回路に使用する際の電気、湿度、温度変化によるストレスにより本発明の固体電解コンデンサに新たな欠損部が発生しても、固体電解コンデンサを使用するために電圧を印加することで欠損部を修復しLCの増大を防ぐことも可能となる。
【0045】
(製造方法)
まず、弁作用金属であるタンタル粉末をプレス機を用いて直方体に成形し、真空または不活性ガス雰囲気中で焼結して多孔質体を形成する。この時、多孔質体の任意の面からタンタルワイヤ等からなる陽極リードが導出している。
【0046】
この多孔質体をリン酸の水溶液中に浸した後、直流電圧を印加することによって多孔質体の表面に陽極酸化法により酸化皮膜を形成させる。所定の時間で酸化皮膜を形成させた段階でリン酸溶液から陽極体を引上げ、水等で十分洗浄する。その後、加熱または自然放置して乾燥させ、誘電体層を得る。前述した通り、酸化被膜の膜の厚みは、印加する電圧によって適宜調整できる。この工程により、多孔質体に誘電体層が形成された、陽極体を得ることが可能になる。
【0047】
次にゲル化剤および酸化剤を水に混合し、液状にしたゲル化剤溶液を作製する。ゲル化剤は、事前にアセトン等の有機溶媒と混合し、加熱処理した物を用いても良い。ゲル化剤、酸化剤、水の混合比率は任意に設定することが可能であるが、リフロー工程での水の揮散によるポップコーン現象の防止と酸化皮膜修復作用、その他性能とのバランスを考慮して設定する。この時、酸化剤はドーパントを兼ねたものを用いてもよい。その後、ゲル化剤溶液に陽極体を浸漬し、引上げ、室温で乾燥する。
【0048】
続いて、導電性高分子のモノマーを含んだ溶液に、ゲル化剤溶液に浸漬し乾燥させた陽極体を浸漬する。この工程により、化学酸化重合が行われ、導電性高分子を含み、水分を保持したゲルからなる酸化皮膜を形成する能力を有する酸化皮膜修復層を形成することが出来る。
【0049】
なお、本実施の形態では、ゲル化剤を酸化剤と水に混合したゲル化剤溶液を用いたが、導電性高分子のモノマーを含んだ溶液にゲル化剤を混合したゲル化剤溶液を用いて、化学酸化重合させることも可能である。また、導電性高分子懸濁液にゲル化剤と水を混合したゲル化剤溶液を用い、このゲル化剤溶液に陽極体を浸漬し引き上げ加熱乾燥することや、陽極体にこのゲル化剤溶液を塗布し乾燥させて酸化皮膜修復層を形成することも可能である。
【0050】
酸化皮膜修復層を形成した陽極体は、従来の工法で単層もしくは複数の導電性高分子よりなる固体電解質層、グラファイトペースト層、銀ペースト層を順次形成し、本発明のコンデンサ素子を得る。
【0051】
陽極リードと銀ペースト層は、外部電極端子であるリードフレームに溶接や、導電性接着剤で電気的に接続される。その後、絶縁材料であるエポキシ樹脂等からなる外装を設けて、本発明の固体電解コンデンサが完成する。
【実施例】
【0052】
以下に本発明の実施例を詳述する。
【0053】
(実施例1)
弁作用金属であるタンタル粉末に陽極リードを埋め込み、プレス成形により、形状が長さ4.5mm×幅3.6mm×厚さ0.9mmの成型体を形成した。その成型体を1300℃、20分間真空中で焼結し、多孔質体を得た。その後、多孔質体を濃度0.2mass%のリン酸水溶液中に浸した後、直流電圧を15V印加して多孔質体の表面に酸化皮膜からなる誘電体層を設け、陽極体を得た。
【0054】
続いて、ゲル化剤を作製した。まず、ゲル化剤としてポリフッ化ビニリデン1000gをアセトン2000gに混ぜ、十分に攪拌した後、N−メチル−2−ピロリドン8000gを加え混合液とした。その後、この混合液を75℃に加熱しながら1時間ミキサーで攪拌することにより、ゲル化剤を得た。
【0055】
次に酸化剤とドーパントとしてベンゼンスルフォン酸第二鉄を40mass%の割合で水に加え、酸化剤溶液を作製した。そして酸化剤溶液とゲル化剤を10対1の重量比率で混合し、ゲル化剤溶液を作製した。このゲル化剤溶液に陽極体を0.1cm/秒の浸漬速度で浸漬した後、引上げ、30分間乾燥した。
【0056】
更に導電性高分子重合体のモノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェンを含んだ液に、陽極体を0.1cm/秒の速度で浸漬し、20秒間保持した後、同様の速度で引き上げた。その後、60分間放置することにより、導電性高分子を含み、水分を保持したゲル化剤からなる酸化皮膜を形成する能力を有する酸化皮膜修復層を形成した。なお、酸化皮膜修復層は、導電性高分子と水分を保持したゲル化剤が固溶した状態となっていた。
【0057】
次に固体電解質層として導電性高分子層を以下のように形成した。40mass%のベンゼンスルフォン酸第二鉄の水溶液に酸化皮膜修復層を形成した陽極体を0.1cm/秒の速度で浸漬した後、引上げ、30分間乾燥した。その後、導電性高分子重合体のモノマー液である3,4−エチレンジオキシチオフェンに同様の速度で浸漬して、20秒間に渡ってモノマー中に保持した。モノマーから同様の速度で引き上げた後、60分間、室温中で放置することにより化学重合反応が起きてポリチオフェンからなる固体電解質層が形成された。
【0058】
しかる後、グラファイトペースト層及び銀ペースト層を形成後、陽極リードと銀ペースト層をそれぞれ抵抗溶接と導電性接着剤を用いて、外部電極端子である2つのリードフレームに電気的に接続した。最後にエポキシ樹脂にてトランスファーモールド成型を行い、外装を形成して、固体電解コンデンサを500個製作した。
【0059】
(実施例2)
実施例2は、酸化皮膜修復層にリン酸を含んだ構成とした以外は、実施例1と同様である。
【0060】
導電性高分子を含み、水分を保持したゲル化層からなる酸化皮膜修復層を形成した陽極体を、リン酸の水溶液に浸漬した。リン酸の水溶液の濃度は、0.05mass%とした。陽極体の浸漬速度は0.1cm/秒とし、引き上げた陽極体を30分間乾燥した。このようにして、リン酸を含んだ酸化皮膜修復層を備えた固体電解コンデンサを500個作製した。
【0061】
(比較例)
比較例として、酸化皮膜修復層に導電性高分子を含有させないで形成した以外は、実施例1と同様にして固体電解コンデンサを500個製作した。
【0062】
それぞれの実施例、比較例で作製した固体電解コンデンサの100個について、ESRおよびLC発生によるLC不良率を測定した。
【0063】
ESRは、周波数100kHzにてDCバイアス1.5Vで、実効値0.5Vの正弦波を重畳して測定した。LC不良率は、電圧電源と電流計を用いて30秒間で6.3Vの電圧を印加し、確認した。
【0064】
これらの静電容量、ESRの測定結果、LC不良率の値を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、本発明の実施例1、2では、比較例と比べて、静電容量、ESR、LC不良率が改善されていることが確認された。
【0067】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。