(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外壁のうち、前記内部空間の上部を外部空間と隔てる天井外壁と、前記目的空間の上部を隔てる内部天井とを備えて、前記天井外壁と前記内部天井との間に天井空間を形成し、前記内部天井に面した前記天井空間の一部に前記吹出しチャンバーを設け、前記内部天井に面した前記天井空間の一部に前記還気チャンバーを設けた請求項2に記載の空気調和システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係る空気調和システム100の概略を示す斜視図、
図2は、目的空間の上方に設けた吹出チャンバー部分の平面図、
図3は、目的空間を示す平面図、
図4は、
図2の空気調和システム100の縦断面を示すA−A矢示断面図、
図5は、
図2の空気調和システム100の縦断面を示すB−B矢示断面図である。
【0016】
本実施形態の空気調和システム100は、目的空間(被調和室)1の空気調和を行うものであり、例えば、室内の空気の温度、湿度、清浄度を所定の値に保つ。なお、本実施形態の空気調和システム100は、特に室内の温度変動を抑えるように温度制御可能な構成を採用したため、以下では、この温度制御に係る構成を主に説明する。
【0017】
空気調和システム100は、床スラブ11上に床パネル12が設けられ、この床スラブ11上に側壁パネル13が四方に立設され、側壁パネル13の上端に天井面パネル14が設けられて、これらのパネル12−14が当該システムの外壁(システム外壁)を構成する。これらシステム外壁12−14は、ポリイソシアヌレートフォームやロックウール等の断熱材を鋼板等の金属板で挟み込んだ所謂金属断熱サンドイッチパネルである。これに限らず、システム外壁は、周囲環境からの外乱を抑えるために所望の断熱性を有した平板状の断熱材であれば良い。本実施形態では、この外壁となるパネル12−14に75mm厚の金属断熱サンドイッチパネルを用いた。
【0018】
これらシステム外壁12−14が囲む空間内に、仕切パネル15が垂直に設けられて当該空間を二つに仕切り、一方を機械室(MR)とした。また、他方の空間の上部に水平の仕切パネルが内部天井16として設けられ、二重天井構造としている。この内部天井16、側壁パネル13、仕切パネル15、床パネル12に囲まれた空間が、本実施形態の空気調和システム100における被調和室1である。なお、仕切パネル15−17は、外壁と同様の構成の金属断熱サンドイッチパネルで40mm厚のものを用いた。空気調和システム100内は、運転中、常に温調された空気で満たされているので、空気調和システム100内を仕切る仕切パネルは、システム外壁と比較して断熱効果の少ない構成(例えば薄いパネル)を採用することができる。
【0019】
図4に示すように、内部天井16のほぼ中央には、被調和室1への給気が吹き出す吹出口161が設けられ、この吹出口161の上面側には、フィルター162が設けられている。フィルター162は、給気中の浮遊粒子等を捕集し、被調和室1内を所定の清浄度に保つものであり、本例では、中性能フィルター(MEPAフィルター)を採用している。なお、フィルター162の仕様は、これに限らず、HEPAフィルターやULPAフィルター等、目的の清浄度に応じて任意に選択できる。内部天井16の下方に被調和室1内の温度を検知する後述の室温センサー271が設置されている。
【0020】
天井面パネル14と内部天井16との間の天井空間の内部天井16に面した少なくとも一部に吹出しチャンバー21が設けられ、内部天井16に面した天井空間の少なくとも一部にレタンチャンバー(還気チャンバー)22が設けられる。本実施形態では、天井空間は後述する仕切パネル17により吹出しチャンバー21と後述するレタンチャンバー22に区画されている。
【0021】
この内部天井16の目的空間1と吹出チャンバー21を隔てる箇所に吹出口161が設けられ、吹出チャンバー21から吹出口161を介して目的空間1に温度制御された空気(給気)が供給されると共に、内部天井16の目的空間1とレタンチャンバー22を隔てる箇所に吸込口163が設けられ、目的空間1から吸込口163を介してレタンチャンバー22へ目的空間内の空気(還気)が還流される。また、
図2に示すフィルター162の他、後述するブランクパネルは、例えば同じ寸法で格子状に形成されたTバー等に載置されている。
【0022】
フィルター162の周囲の機械室側を除く三方に、内部天井16上面から天井面パネル14内壁にかけて垂直に仕切る仕切パネル17が備えられ、機械室側の開口部分に空調機18の吹出口181が設けられている。このフィルター162(吹出口161)上方で、仕切パネル17及び天井面パネル14によって仕切られ、吹出口181からの給気が流れ
込む空間が吹出チャンバー21となっている。これにより吹出口181から吹き出された給気が吹出チャンバー21によって均一に混合されると共に、吹出口181から吹き出された給気が吹出チャンバー21内で拡散し、吹出口161における圧力が吹出口161全域にわたって略均一になることで、吹出口161から被調和室1内へ吹き出される給気の風量が均一になる。
【0023】
更に、本実施形態では、吹出チャンバー21の機械室側開口から所定距離内側で吹出口181の吹出方向下流側にバッフル板40が設けられ、吹出口181から吹き出された給気が、このバッフル板40に当たり、給気の流れが部分的に阻止されて給気の向きや速度が変わることで、給気が充分に混合され、風量や温度が均一になるようにしている。
【0024】
図6は、バッフル板40の取り付け例を示す図、
図7は、
図6のA−A矢示図である。
図6に示すように、バッフル板40は、仕切パネル17間に張りわたされた支持部材41,42に上下端部が保持される。
【0025】
バッフル板40は、給気を通す開口と給気の流れを部分的に抑える部分を有した部材であり、給気の流れの方向を変えることや流速を変えることで、吹出チャンバー内での給気の混合を促進させる。本実施形態のバッフル板40は、金属板に多数の開口を設けた所謂パンチングメタルである。なお、これに限らず、バッフル板40は、メッシュやガラリ、ルーバ、或いはこれらの組み合わせ等、給気の流れを変更できるものであれば良い。
【0026】
バッフル板40は、吹出口181からの給気の吹出方向(以下給気方向とも称す)49における上流側と下流側に2枚重ねて設けられ、
図6の例では、この2枚のバッフル板40が支持部材41,42の長手方向に2組設けられた。
【0027】
支持部材41,42は、断面がL字型の所謂L字アングルであり、一方の支持部材41が吹出チャンバー21上部の天井面パネル14内壁に接した状態で、その長手方向が給気方向49と直交する方向に設けられ、両端部がネジ等で仕切パネル17に固定されている。また、他方の支持部材42が吹出チャンバー21下部の内部天井16上面に接した状態或いは近接した状態で、前記支持部材41と平行に設けられ、両端部がネジ等で仕切パネル17に固定されている。
【0028】
なお、本実施形態の支持部材41は、天井裏空間に持ち込み易いように、長手方向中央部で2分割され、天井裏空間へ導入された後に2つのパーツが平板状の接合部材50で連結される。
【0029】
図7に示すように、バッフル板40上部の給気方向49上流側の平面を支持部材41の鉛直面411で押さえ、給気方向49下流側の平面をL字アングル43の鉛直面431で押さえるようにL字アングル43をボルト等で支持部材41に固定する。
【0030】
同様にバッフル板40下部の給気方向49上流側の平面を支持部材42の鉛直面421で押さえ、給気方向49下流側の平面をL字アングル44の鉛直面441で押さえるようにL字アングル43をボルト等で支持部材41に固定する。即ち、バッフル板40は鉛直面411,421,431,441に沿って支持部材41−44の長手方向への移動(スライド)が可能に保持される。
【0031】
これにより例えば、設置作業者は、バッフル板40を支持部材41−44の長手方向へスライドさせる、即ちバッフル板40の左右にできる開口の幅を変えることで、給気の流れを規制する位置が変えられ、また、給気方向49に重なる2枚のバッフル板40をずらすようにスライドさせることで、当該2枚のバッフル板40の開口の重なり具合を変えて
開口率を変えることができる。従って、設置作業者は、給気が充分に混合され、吹出口161から吹き出す空気の風量が均一になるようにバッフル板40をスライドさせて調整する。
【0032】
バッフル板40の下方に位置する内部天井16の一部は、取り外し可能なブランクパネル165となっており、このブランクパネル165をTバーなどから取り外し、またはずらすことで下方からバッフル板40の位置を調整できる。
【0033】
なお、
図6,
図7の支持部材41,42は、L字アングルで構成したが、これに限らず、バッフル板40をスライド可能に支持する構成であれば良い。例えば、支持部材41,42は、MバーやCチャンネル(リップ溝形鋼)等の形鋼であっても良い。
図8は、支持部材としてCチャンネルを用いた例を示す図である。
図8の例では、
図6,
図7の例と比べて、L字アングルの支持部材41,42に替えてCチャンネルの支持部材45,46を用いた構成が異なり、その他の構成は同じである。
【0034】
図8に示すように、バッフル板40上部の給気方向49上流側の平面を支持部材45のリップ451で押さえ、給気方向49下流側の平面をL字アングル47の水平面の端部471で押さえるようにL字アングル47をボルト等で支持部材45に固定する。同様にバッフル板40下部の給気方向49上流側の平面を支持部材46のリップ461で押さえ、給気方向49下流側の平面をL字アングル48の水平面端部481で押さえるようにL字アングル48をボルト等で支持部材46に固定する。このように
図8の構成であっても、
図6,
図7と同様に、バッフル板40は鉛直面411,421,431,441に沿って支持部材41−44の長手方向への移動(スライド)が可能に保持される。
【0035】
また、
図2に示すように、内部天井16と天井面パネル14の間の天井裏空間のうち、仕切パネル17で仕切られた吹出チャンバー21以外の部分がレタンチャンバー(還気チャンバー)22となっており、機械室MRと連通している。このレタンチャンバー22を構成する内部天井16の一部、
図2の例では内部天井16の四隅に吸込口163が設けられ、被調和室1と機械室MRとの間の仕切りパネル15に、スリットやドアガラリなどの吸込口164が設けられている。
【0036】
そして、機械室MR内に設置された空調機18が吸込口182から機械室MR内の空気を吸い込むことで、被調和室1内の空気が吸込口164から機械室MRへ還気として吸い出されると共に、被調和室1内の空気が吸込口163からレタンチャンバー22へ吸い出され、レタンチャンバー22を経て機械室MRへ還気として戻される。
【0037】
空調機18に内蔵された送風機186(ファンセクションとコイルセクションが独立している場合は前者の送風機)の吸引力で被調和室1から横向きと内部天井16の四隅での上向きの両気流が形成される。吸込み口を内部天井16のみに設けた場合、被調和室1内に吹出しされた空気が被調和室1の下部まで到達せずに吸い込まれるショートサーキットが起こるが、上記構成によりこれを防止し、被調和室1内に設置される装置などの恒温で温調される対象物品が垂直層流の給気を受けて四周から吸引流を受けることとなり、前記対象装置から発生される熱を効率よく除去することができる。
【0038】
図9,
図10は内部天井16面に設けた吹出口161と吸込口163の位置関係の説明図である。
図9に示すように、吹出口161は、被調和室1のほぼ中央に配置され、その対角線の延長方向、即ち
図11では矢印69方向に吸込口163が配置されている。このように、吹出口161と吸込口163は、互いに隅を対向させている。
【0039】
一方、
図10に示すように、吹出口161の辺61Aと吸込口163の辺63Aとを対
向させ、吹出口161と吸込口163を並べて配置すると、空気を吹出す箇所と、吸い出す箇所が近接し、ショートサーキットが起き易くなってしまう。
【0040】
これに対し、
図9に示すように、吹出口161の対角線の延長方向に吸込口163を配置した構成であると、空気を吹出す箇所と吸い出す箇所の距離が
図10の場合と比べて長く取れるので、ショートサーキットを防止できる。
【0041】
更に、ショートサーキットの防止のため、吹出口161と吸込口163の間、例えば吹出口161の周囲に、内部天井16下面から床面側にアイリッド或は垂れ壁を垂下させても良い。
【0042】
レタンチャンバー22と機械室MRは還気経路の一部であり、特に本実施形態では、機械室MRがレタンチャンバーとしても機能する。
【0043】
図2に示すように本実施形態では、水平面内において吹出チャンバー21の周囲にレタンチャンバー22を配置したことにより、本空気調和システム100の外部で温度変動が生じ、システム外壁13を超えて外乱の影響が及んだとしても、影響を受けるのはレタンチャンバー22内の還気(RA)であり、影響を受けた還気は機械室MRに戻されて温調されるので、給気への外乱の影響が小さい。
【0044】
また、
図3に示すように、空気調和システム100の機械室MRと反対側の側壁パネル13には、被調和室1に出入りするための被調和室扉32が設けられ、被調和室1と機械室MRとの間の仕切パネル15には、機械室MRに出入りする機械室扉31が設けられている。なお、
図3,4の例では、機械室扉31の下部に吸込口164が設けられている。また、被調和室扉32や、機械室扉31、側壁パネル13には、のぞき窓を設けても良い。のぞき窓を設ける場合には、断熱性を確保するため、ペアガラスを採用するのが望ましい。
【0045】
図11は空調機18の構成及び空調機により調和される空気の流れを示す図である。
図11に示すように、空調機18は、吹出口181から還気を吸い込み給気として吹き出す空気の流れの方向において、吹出口181側から順にフィルター183、熱交換器184、再熱ヒータ185、送風機186、電源部187を配設している。また、本実施形態では、消音のため吸込口182近傍にバッフル板188を設けている。
【0046】
吸込口182から吸い込まれた還気は、フィルター183を通過することで浮遊微粒子等が除かれ、熱交換器184で熱交換され、再熱ヒータ185により再度加熱(再熱)されることで温度が調整される。温度調整された空気は、送風機186によって送風され、吹出ダクト189を介して吹出口181から吹出チャンバー21へ給気として吹き出される。電源部187は、送風機186に電力を供給して送風機186を駆動させるものであり、インバータ回路等によって供給電力を変更することで、送風機186の送風量を変更することもできる。
【0047】
吹出口181から吹き出された給気SAは、フィルター162を通過して吹出口161から被調和室1内に供給される。被調和室1内に供給された後の空気TAは、被調和室1内で照明や設備等の発する熱の影響を受ける。そして、この被調和室1内の空気TAは、吸込口163,164へ吸い込まれ、還気RAとして機械室MRに戻され、空調機18の吸込口182から吸い込まれて再び温度調整される。
【0048】
このように空気調和システム100は、空調機18で温度調節した空気を巡回させることで、被調和室1内の温度を一定に保っている。なお、室外の給気ダクト232と接続さ
れたバルブ231を開けることにより、機械室MRに室外の空気を導入することができる。また、室外の排気ダクト234と接続されたバルブ233を開けることにより、被調和室1内の空気を室外に排出することができる。
【0049】
図12は空調機18の温度制御に係る概略構成を示す図である。
図12に示すように、空調機18は、熱媒体循環部24を介して熱源25からの熱媒体を熱交換器184に供給し、熱交換後の熱媒体を熱源25へ戻すように循環させることで熱交換器184を通る空気と熱媒体との熱交換を行う。第一制御部(温度指示調節計)26は、熱媒体の温度や熱交換後の空気の温度に応じて循環する熱媒体の量等を制御し、熱交換された空気が所要の温度となるように制御する。なお、以下では熱媒体として冷水を用いた例を示すが、熱媒体は冷水に限定されるものではない。
【0050】
熱源25には管路251,252が接続され、温度変動の幅が略一定の冷水が管路251を介して熱交換器184側に供給される。そして、熱交換器184を通過した冷水は、管路252を介して熱源25に戻される。なお、熱源25は、例えば被調和室1の空調を行うために設けられた専用熱源であってもよいし、ビルディング単位で設けられ被調和室1以外の空調にも利用される汎用熱源であってもよい。
【0051】
管路251の途中には流量制御弁253が配設されている。流量制御弁253には、図示しない減速機構を介してステッピングモータ等の駆動部254が連結されており、駆動部254の駆動により流量制御弁253の開度が変更される。駆動部254は第一制御部26に接続されており、第一制御部26によって駆動が制御される。
【0052】
流量制御弁253の流水方向下流側の管路251には管路261の一端が接続され、管路261の他端が管路252に接続され、管路252側の冷水の一部が管路261を介して管路251へ流れる。
【0053】
また、管路251にはポンプ255が配設され、ポンプ255の駆動により、管路251内の冷水が熱交換器184側へ送られる。
【0054】
更に、管路251には、冷水の温度を検出する温度センサー256が配設されている。温度センサー256は、第一制御部26に接続されており、管路251内を通る冷水の温度を検出して第一制御部26に入力する。
【0055】
第一制御部26は、図示を省略するが、CPU、ROM、RAM、及び入出力ポートがバスを介して互いに接続されて構成された情報処理装置(コンピュータ)と、前記入出力ポートに接続され駆動部254の駆動を制御するドライバと、前記入出力ポートに接続され温度センサー256から入力された信号をデジタルデータに変換するA/D変換部と、を含んで構成されている。
【0056】
ポンプ255及び温度センサー256の流水方向下流側の管路251には管路262の一端が接続され、管路262の他端が管路252に接続され、管路251側の冷水の一部が管路262を介して管路252へ流れる。これにより、ポンプ255から送り出された冷水が、管路251から管路262へ分岐し、管路262から管路252へ合流した後、管路261で分岐して管路251へ戻る循環路264が形成される。
【0057】
なお、管路262の途中には流量制御弁257が設けられており、流量制御弁257は管路262を介して循環する冷水の量を制限する。
【0058】
また、管路251において、管路262との接続部よりも流水方向下流側に流量制御弁
258が配設されている。流量制御弁258には、図示しない減速機構を介してステッピングモータ等の駆動部259が連結されており、駆動部259の駆動により流量制御弁258の開度が変更される。駆動部259は第一制御部26に接続されており、第一制御部26によって駆動が制御される。
【0059】
流量制御弁258の流水方向下流側の管路251には管路263の一端が接続され、管路263の他端が管路252に接続され、管路252側の冷水の一部が管路263を介して管路251へ流れる。
【0060】
管路251において、管路262との接続部よりも流水方向下流側にポンプ260が設けられ、ポンプ255の駆動により、管路251内の冷水が熱交換器184へ送られる。熱交換器184に送られた冷水は、熱交換器184の内部配管を通る際に熱交換された後、管路252を介して熱源25側へ戻される。
【0061】
この熱交換器184から管路252へ送られた冷水が、管路252から管路263へ分岐し、管路263から管路251へ合流した後、ポンプ260で熱交換器184へ送られ、熱交換器184を通って管路252へ戻る循環路265が形成される。
【0062】
上記のように本実施形態の熱媒体循環部24は、ダブルブリードイン方式を採用し、循環路264,265を形成するため循環する冷水の総量が多く、熱源25から供給される冷水の温度が変動した場合でも熱交換器184へ供給する冷水の温度への影響が少ない。
【0063】
また、第一制御部26が、温度センサー256で検出した冷水の温度に基づいて流量制御弁253の開度を変えることで循環路264を巡回する冷水の流量を変え、冷水が所定温度となるように制御する。そして、第一制御部26は、温度センサー266で検出した熱交換後の空気の温度に基づいて、流量制御弁258の開度を変え、循環路265を巡回する冷水の流量を変えることで、熱交換器184に供給する冷水の温度を安定させる。
【0064】
また、第二制御部(温度指示調節計)27は、被調和室1内に設置した室温センサー271で検知した被調和室1内の温度に応じて、再熱ヒータ185を制御し、熱交換後の空気を再熱(加熱)して目標温度に制御する。なお、再熱ヒータ185は、熱応答性を高めるため、熱容量の小さいものを採用するのが望ましい。また、第二制御部27は、被調和室1内の温度に応じて、送風機186の風量等も制御し吸気の温度調節を行う。
【0065】
従って、本実施形態の空調機18は、熱交換器184へ供給する冷水の温度を安定させて、熱交換した空気の温度のばらつきを抑え、更に被調和室1内の温度に応じて再熱することで、給気の温度を精密に制御できる。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、給気の温度のばらつきを抑えると共に、吹出チャンバー21の周囲にレタンチャンバー22を設けたことにより、吹出チャンバー21への外乱の影響を抑え、目標温度に対する被調和室1内の温度のばらつきを抑制することができる。例えば、本実施形態の空気調和システム100は、被調和室1内の温度のばらつきを±0.02℃以内に抑えることができる。
【0067】
特に、本実施形態によれば、吹出チャンバーの容積を大きくとった場合、即ち給気の混合に充分な大きさの給気経路を確保するために、給気経路を長くとった場合でも、外乱の影響を抑えて、目標温度に対する被調和室1内の温度のばらつきを小さく抑制することができる。
【0068】
〈温度制御の検証〉
上記構成の空気調和システム100について、被調和室1内の温度のばらつきについて検証した結果を
図13−
図15を用いて説明する。
図13(A)は、被調和室1内における温度の測定位置を示す平面図、
図13(B)は、被調和室1内における温度の測定位置を示す断面図、
図14は、
図13に示した各測定ポイントで測定した結果を示す図、
図15は、負荷の立ち上げ時の測定結果を示す図である。
【0069】
本検証では、空気調和システム100の周囲の温度を22.5±0.5℃とし、被調和室1内に設置した装置や照明等の熱負荷を1.5kWとし、被調和室1の目標温度を22.5±0.02℃とした。なお、目標温度は、被調和室1内に設置した室温センサー271の位置において22.5±0.02℃を達成することとした。
【0070】
室温センサー271は、
図13(A)に示すように、被調和室1の平面内の中央より、やや被調和室扉32側の位置に設置し、
図13(B)に示すように、内部天井16下面から0.1mの位置の温度を測定する。また、
図13(A)に示すように、被調和室1の平面内の5箇所の測定位置P1−P5で、
図13(B)に示すように、内部天井16下面から0.1mの位置の温度を測定する。なお、測定位置P1−P5での測定は、精度±0.01℃に校正したデータロガーを設置して記録した。そして、これらの測定結果を
図14に示した。
【0071】
上記条件で本実施形態の空気調和システム100を運用したところ、室温センサー271で測定した温度が、目標の22.5℃に対して、ほぼ±0.01℃のばらつきで収まり、22.5±0.02℃を達成したことが
図13(A)より確認される。
【0072】
また、各測定点P1−P5で、吹出口161から吹き出す空気の温度(吹出温度)を測定した結果、
図14(B)−(F)に示すように、それぞれの測定点P1−P5で見ると、ばらつきが±0.02℃を超えているものの、比較的ばらつきが少なく、吹出口161の全域にわたって、ほぼ均一な吹出を達成したことを確認できた。例えば、バッフル板40を設けない場合や吹出チャンバー21の容積を充分に大きくとれない場合、
図14(B)−(F)と比べて各測定点P1−P5の測定値が、ばらつく傾向にある。
【0073】
なお、
図14の測定結果は、被調和室1内の負荷を立ち上げた後(起動させた後)、被調和室1内の温度が安定した状態で測定を行ったものである。
図15は、この被調和室1内の負荷を立ち上げてから、被調和室1内の温度が安定するまでの温度変化を示した。
【0074】
図15に示すように、被調和室1内の負荷を立ち上げると、被調和室内の温度は、負荷の発熱の影響で上昇し、これに応じて空調機18が、被調和室内の温度を目標温度にするよう給気温度を調整する。これにより被調和室内の温度が下がり、目標温度で安定する。本例では、
図15より、負荷を立ち上げた後、被調和室1内の温度が安定するまでに、約30分要することが分かる。また、
図15より、負荷の立ち上げ時の温度上昇を抑えるように温度制御した場合でも、被調和室1内の温度が大きくオーバーシュートすることなく、速やかに目標温度で安定することが分かる。
【0075】
〈変形例1〉
図16は、空気調和システム100の変形例1を示す図である。本変形例1の空気調和システム100は、前記実施形態の空気調和システム100と比べて、吹出チャンバー21の上方にレタンチャンバー22を形成した構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、前記実施形態の空気調和システム100と同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0076】
本変形例1では吹出チャンバー21の上面に仕切パネル19を設け、天井面パネル14
との間に空間を設けて、当該空間を吸込口163及び機械室MRと連通させてレタンチャンバー22とした。
【0077】
即ち、本変形例1の空気調和システム100は、平面内において
図2と同様に吹出チャンバー21の周囲にレタンチャンバー22を配置されたことに加えて、吹出チャンバー21の上部にもレタンチャンバー22が配置され、吹出チャンバー21の被調和室と隣接した面以外の面が全てレタンチャンバー22と隣接した構成である。
【0078】
このため、本変形例1の空気調和システム100では、空気調和システム100の周囲の温度が変動した場合でも、この温度変動が外乱として給気経路内の給気に影響を及ぼすことが少なく、被調和室内の温度を精度良く制御することができる。
【0079】
〈変形例2〉
図17は、空気調和システム100の変形例2を示す図である。前記実施形態の空気調和システム100では、吹出チャンバー21を被調和室1の上方に設けた例を示したが、吹出チャンバー21の位置は、これに限らず、側方や下方に設けても良い。
【0080】
本変形例2の空気調和システム100は、前記実施形態の空気調和システム100と比べて吹出チャンバー21を被調和室の側方に形成した構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、前記実施形態の空気調和システム100と同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0081】
図17に示すように、本変形例2の空気調和システム100では、空気調和システム100の外壁であるパネル12−14が囲む空間のうち、仕切パネル15が仕切る機械室(MR)以外の空間を更に仕切パネル61で垂直に仕切り、一方の空間を被調和室1とした。
【0082】
前述の実施形態および変形例1が、温調される対象物品を垂直層流で温調するものであったのに対し、本変形例2は、水平層流で温調するもので、それに伴い吹出チャンバー21と吸込口163を天井部から側壁部に設置位置を変えている。
【0083】
また、本変形例2においても前記変形例1と同様に、吹出チャンバー21の被調和室1と隣接する面以外の全ての面がレタンチャンバー22と隣接するように、吹出チャンバー21側面と外壁13との間にレタンチャンバー22を形成しても良い。
【0084】
なお、仕切パネル61は、外壁と同様の構成の金属断熱サンドイッチパネルで40mm厚のものを用いた。
【0085】
仕切パネル61のほぼ中央には、被調和室1への給気が吹き出す吹出口161が設けられ、この吹出口161の被調和室1と反対側の面には、フィルター162が設けられている。
【0086】
フィルター162の周囲の機械室側を除く三方に、仕切パネル61の被調和室1と反対の面から側壁パネル13内壁にかけて垂直に仕切る仕切パネル17が備えられ、機械室側の開口部分に空調機18の吹出口181が設けられている。このフィルター162(吹出口161)、仕切パネル17及び側壁パネル13によって仕切られ、吹出口181からの給気が流れ込む空間が吹出チャンバー21となっている。吹出チャンバー21は吹出ダクト189の接続部と吹出口161を除き囲われており、吹出口181に空調機1(または温調コイル)からの空気が吹出ダクト189を介して供給される。
【0087】
吹出チャンバー21の機械室側開口から所定距離内側で吹出口181の吹出方向下流側に、バッフル板40が設けられている。
【0088】
また、仕切パネル61と側壁パネル13の間の空間のうち、仕切パネル17で仕切られた吹出チャンバー21以外の部分がレタンチャンバー(還気チャンバー)22となっており、機械室MRと連通している。このレタンチャンバー22を構成する仕切パネル61の一部、
図17の例では仕切りパネル61の四隅に吸込口163が設けられている。
【0089】
以上のように、本変形例2においても縦断面における吹出チャンバー21の周囲にレタンチャンバー22を配設したことにより、吹出チャンバー21を大きくとった場合でも、給気への外乱の影響を抑えて、目標温度に対する被調和室1内の温度のばらつきを抑制することができる。