(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明被膜(C)は、平均一次粒子径1〜200nmのシリカ、及び樹脂成分を含み、当該シリカと当該樹脂成分との固形分重量比が0.5:1〜5:1であることを特徴とする請求項1記載の化粧壁面。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の化粧壁面は、下地に対し、化粧被膜が設けられたものであり、この下地は、隣接した板状壁材間の目地部にシーリング材及び/またはパテ材が充填されたものである。
【0012】
板状壁材としては、特に限定されないが、例えば、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、プラスチックボード、硬質木片セメント板、塩ビ押出サイディングボード、合板、パーライト板等が挙げられる。これらの板状壁材の表面は、何らかの表面処理(例えば、シーラー、サーフェーサー、フィラー等)が施されたものでもよい。
【0013】
本発明において、複数の板状壁材は、目地部を介して併設される。すなわち、板状壁材どうしの間には、目地部が設けられる。目地部の幅は、好ましくは3〜20mm(より好ましくは5〜15mm)程度である。この目地部には、シーリング材及び/またはパテ材が充填される。
【0014】
板状壁材間の目地部に充填されるシーリング材としては、例えば、シリコーン系シーリング材、変性シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、変性ポリサルファイド系シーリング材、アクリルウレタン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、SBR系シーリング材、ブチルゴム系シーリング材等が挙げられる。パテ材としては、シリコーン系パテ材、変性シリコーン系パテ材、ポリサルファイド系パテ材、変性ポリサルファイド系パテ材、アクリルウレタン系パテ材、ポリウレタン系パテ材、アクリル系パテ材、SBR系パテ材、ブチルゴム系パテ材等が挙げられる。
【0015】
このようなシーリング材、パテ材は、板状壁材端部の形状、形成される目地部の幅や深さ等に応じて適宜選択して使用すればよく、いずれか一方のみを使用してもよいし、両方組み合わせて使用してもよい。
シーリング材やパテ材の充填方法としては、特に限定されず、例えば、ガンやへら等による公知の方法を採用することができる。
また、シーリング材及び/またはパテ材の充填前には、予めバックアップ材の充填やプライマー塗付等の処理を行ってもよいし、充填前ないし充填後には適宜、研磨、補強材積層等の処理を行ってもよい。
【0016】
本発明では、上述の下地の表面に、化粧被膜として、それぞれ特定の処理被膜(A)と模様被膜(B)と透明被膜(C)を設ける。具体的に、処理被膜(A)は、その伸び率が30〜500%である。模様被膜(B)は、着色樹脂粒子(b1)が、ピペリジン化合物を有する透明被膜(b2)に固定されたものである。透明被膜(C)は、平均一次粒子径1〜200nmのシリカ、及び樹脂成分を含むものである。
【0017】
本発明では、このような処理被膜(A)、模様被膜(B)及び透明被膜(C)を積層することにより、複数色の模様による美観性を付与すると共に、化粧被膜の汚染進行や、追従性の低下を抑制し、初期の美観性を長期にわたり保持することができる。特に本発明では、着色樹脂粒子による複数色の模様のコントラストを長期間保持することができる。
本発明では、模様被膜(B)におけるピペリジン化合物の作用によって、模様被膜(B)と透明被膜(C)との密着性が長期にわたり保持される。さらに、模様被膜(B)におけるピペリジン化合物は、透明被膜(C)の保護効果によって、その性能を長期間発揮することができる。このピペリジン化合物は、追従性の保持にも寄与する。また、汚染物質は蓄熱しやすく、その熱によって化粧被膜の劣化を助長するおそれがあるが、本発明では、このような汚染物質による悪影響を抑えることもできる。本発明では、これら相乗作用によって、美観性保持の効果が十分に発揮されるものと推測される。
【0018】
[処理被膜(A)]
処理被膜(A)は、下地の変位に追従しつつ、その変位を緩和する性能を有するものである。本発明では、このような処理被膜の作用によって、化粧被膜の割れ、剥れ等を十分に抑制することができる。
【0019】
処理被膜(A)の伸び率は、通常30〜500%、好ましくは50〜300%である。伸び率がこのような範囲であることにより、下地に対する追従性が発揮され、化粧被膜の割れも防止される。伸び率が30%より小さい場合は、下地に対する追従性が確保できず、処理被膜(A)に割れが生じる場合がある。伸び率が500%より大きい場合は、模様被膜(B)に割れが生じやすくなる。
【0020】
なお、処理被膜(A)の伸び率は、JIS A6909「7.29伸び試験」の「20℃時の伸び試験」の方法によって測定した値(20℃時の伸び率)である。ただし、試験片としては、乾燥膜厚0.3mmのものを使用する。
【0021】
処理被膜(A)では、上記物性を満たす限り、種々の樹脂成分が使用できる。使用可能な樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。この中でも、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂等が好適である。
このような樹脂成分のガラス転移温度は、好ましくは−50℃〜30℃、より好ましくは−40℃〜25℃である。なお、ガラス転移温度は、FOXの式により求められる値である。
【0022】
処理被膜(A)は、上記樹脂成分を含む被覆材(以下「被覆材A」ともいう)を塗付・乾燥させることにより形成できる。この被覆材Aは、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、上記成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、艶消し剤、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0023】
処理被膜(A)の伸び率は、例えば、樹脂成分の種類やガラス転移温度、顔料を混合した場合の顔料比率等によって適宜設定することができる。
処理被膜(A)の顔料比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは0〜500重量部、より好ましくは10〜300重量部、さらに好ましくは20〜200重量部である。
【0024】
下地に対し、被覆材Aを塗付する際には、例えば、刷毛、ローラー、スプレー等の公知の塗装器具を用いることができる。被覆材Aは、目地部にシーリング材やパテ材を充填した後、概ね2〜10日後に塗付すればよい。被覆材Aの塗付け量は、固形分換算で、好ましくは10〜300g/m
2程度である。
【0025】
[模様被膜(B)]
模様被膜(B)における着色樹脂粒子(b1)としては、樹脂成分及び着色顔料を含むものが使用できる。着色樹脂粒子(b1)の粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜20mm、より好ましくは0.5〜10mmである。
【0026】
着色樹脂粒子(b1)における樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。このような樹脂成分としては、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適である。
【0027】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、カーボンブラック、酸化第二鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、酸化鉄、群青、コバルトグリーン等の無機着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機着色顔料、パール顔料、アルミニウム顔料、蛍光顔料等が挙げられる。このような着色顔料の1種または2種以上を組み合わせることにより、着色樹脂粒子(b1)を所望の色調に調製することができる。着色樹脂粒子(b1)においては、このような着色顔料に加え、体質顔料を使用することもできる。
着色樹脂粒子(b1)としては、樹脂成分の固形分100重量部に対し、着色顔料を0.01〜200重量部含むものが好ましく、0.1〜100重量部含むものがより好ましい。
【0028】
上述の着色樹脂粒子(b1)は、透明被膜(b2)に固定される。この透明被膜(b2)は、上述の着色樹脂粒子(b1)を固定するため、樹脂成分を含むことが望ましい。このような樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。このような樹脂成分としては、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適である。
【0029】
透明被膜(b2)におけるピペリジン化合物としては、ピペリジル基を有する化合物が使用できる。このピペリジン化合物の形態としては、
ア)樹脂成分とは別異の成分として存在する形態、及び/または、
イ)樹脂成分中に化学的に結合した形態、
が挙げられる。本発明では、上記ア)及びイ)を兼備することもできる。
【0030】
上記ア)の形態では、非重合性のピペリジン化合物が使用できる。具体的に、このような化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N′,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン等、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0031】
上記ア)の形態では、樹脂成分の固形分100重量部に対し、ピペリジン化合物を0.01〜50重量部含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部である。このような比率であれば、本発明の効果発現の点で好適である。
【0032】
上記イ)の形態では、ピペリジン化合物が樹脂成分中に化学的に結合した状態とするため、重合性のピペリジン化合物を用いることができる。このような化合物としては、ピペリジル基と重合性不飽和二重結合を有する化合物が使用でき、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0033】
このような重合性のピペリジン化合物は、公知の方法によって、樹脂成分の製造時(重合時)に他の単量体と共重合することにより、樹脂成分中に化学的に結合させることができる。樹脂成分中のピペリジン化合物の比率は、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜15重量%である。このような比率であれば、本発明の効果発現の点で好適である。
【0034】
模様被膜(B)は、着色樹脂粒子(b1)が透明被膜(b2)中に散在した形態であればよいが、2色以上(より好ましくは3〜8色)の着色樹脂粒子(b1)が透明被膜(b2)中に散在した形態が好適である。模様被膜(B)における着色樹脂粒子(b1)と透明被膜(b2)との固形分重量比は、好ましくは0.1:1〜5:1、より好ましくは0.3:1〜3:1である。このような形態であれば、美観性を一層高めることができる。
【0035】
模様被膜(B)は、樹脂成分を含み、ピペリジン化合物を有する分散媒中に、液状またはゲル状の着色樹脂粒子が分散した被覆材(以下「被覆材B」ともいう)を塗付・乾燥することで形成できる。このような被覆材Bでは、分散媒中の成分が透明被膜(b2)を形成し、液状またはゲル状の着色樹脂粒子は乾燥して、この透明被膜(b2)に固定される。本発明では、被覆材Bを用いることで、1回の塗装で効率的に模様被膜(B)が形成できる。被覆材Bの塗装は、例えば、刷毛、ローラー、スプレー等の公知の塗装器具を用いて行えばよい。被覆材Bの塗付け量は、固形分換算で、好ましくは20〜500g/m
2程度である。
【0036】
この被覆材Bは、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、分散媒及び/または着色樹脂粒子の中に、その他の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、艶消し剤、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。また、着色樹脂粒子はピペリジン化合物を含むものであってもよい。
【0037】
模様被膜(B)において、着色樹脂粒子(b1)の形状は扁平状であることが望ましい。このような態様では、模様被膜(B)が比較的薄く、軽量でありながら、大柄の模様が形成できる。扁平状の着色樹脂粒子を有する模様被膜(B)を得るには、例えば、
・予め扁平状の着色樹脂粒子を分散させた被覆材Bを塗装する方法。
・塗装時の圧力等により、着色樹脂粒子を扁平状にする方法。
・塗装後、押圧等によって、着色樹脂粒子を扁平状にする方法。
等の方法を採用すればよい。
【0038】
なお、ここに言う扁平状とは、厚さに対する短径の比が2より大きい状態を意味するものである。扁平状着色樹脂粒子の短径及び長径は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜20mm(より好ましくは0.5〜10mm)程度であればよい。本発明では、粒子径が異なる扁平状着色樹脂粒子を種々組み合せることによって、意匠性の幅を広げることもできる。
【0039】
[透明被膜(C)]
本発明における透明被膜(C)は、化粧被膜の最表面に設けられるものである。この透明被膜(C)は、平均一次粒子径1〜200nmのシリカ、及び樹脂成分を含むものである。
【0040】
このうち、シリカは、粒子自体の硬度が高く、さらに粒子表面にシラノール基を多く有すること等によって、優れた汚染防止効果を発揮するものである。
シリカの平均一次粒子径は、通常1〜200nm、好ましくは3〜100nmである。この範囲内であれば、平均一次粒子径が異なる複数のシリカを併用することもできる。シリカの平均一次粒子径が200nmよりも大きい場合は、比表面積が小さくなり、シラノール基も減るため汚染防止性が不十分となる。平均一次粒子径が1nmよりも小さい場合は、シリカ自体が不安定化するため、実用的でない。なお、ここに言う平均一次粒子径は、光散乱法によって測定される値である。
【0041】
透明被膜(C)のシリカは、シリカゾルに由来するものが好適であり、さらにはpH5.0以上8.5未満(好ましくは6.0以上8.0以下)の水分散性シリカゾルに由来するものがより好適である。
このような中性タイプの水分散性シリカゾルは、シリケート化合物を原料として製造することができる。シリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等、あるいはこれらの縮合物等が挙げられる。この他、上記シリケート化合物以外のアルコキシシラン化合物や、アルコール類、グリコール類、グルコールエーテル類、フッ素アルコール、シランカップリング剤、ポリオキシアルキレン基含有化合物等を併せて使用することもできる。
【0042】
透明被膜(C)における樹脂成分としては、各種樹脂が使用できる。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。このような樹脂成分としては、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適である。
【0043】
透明被膜(C)におけるシリカと樹脂成分との固形分重量比(シリカ:樹脂成分)は、好ましくは0.5:1〜5:1、より好ましくは0.8:1〜4:1、さらに好ましくは1:1〜3:1である。このような比であれば、汚染防止効果、下層被膜との密着性において十分な効果が得られ、本発明の効果が安定して発揮される。
【0044】
透明被膜(C)は、上記成分を含む被覆材Cを塗付・乾燥させることにより形成できる。この被覆材Cは、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、上記成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。但し、光触媒物質の使用は、経時的な密着性の低下、模様被膜の退色等を引き起こすおそれがあることから、避けることが望ましい。
【0045】
この被覆材Cは、模様被膜(B)上の全面に塗付すればよい。塗装器具としては、例えば、刷毛、ローラー、スプレー等の公知のものを用いることができる。透明被膜(C)を形成する際の被覆材Cの塗付け量は、固形分換算で、好ましくは0.1〜50g/m
2、より好ましくは0.5〜20g/m
2である。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0047】
被覆材Aとしては、それぞれ以下に示すものを用意した。
【0048】
○被覆材A1
アクリルシリコン樹脂1(アクリル系モノマーとジメチルシロキサンの乳化重合により得られた水分散性樹脂、ガラス転移温度0℃、固形分50重量%)200重量部に対し、酸化チタン20重量部、造膜助剤4重量部、粘性調整剤2重量部、消泡剤1重量部、水20重量部を常法により均一に混合した。この被覆材A1の伸び率は250%であった。
【0049】
○被覆材A2
アクリルシリコン樹脂1(上記と同様)200重量部に対し、酸化チタン20重量部、重質炭酸カルシウム80重量部、造膜助剤4重量部、粘性調整剤3重量部、消泡剤1重量部、水50重量部を常法により均一に混合した。この被覆材A2の伸び率は170%であった。
【0050】
○被覆材A3
アクリルシリコン樹脂2(アクリル系モノマーとジメチルシロキサンの乳化重合により得られた水分散性樹脂、ガラス転移温度12℃、固形分50重量%)200重量部に対し、酸化チタン20重量部、重質炭酸カルシウム80重量部、造膜助剤4重量部、粘性調整剤3重量部、消泡剤1重量部、水50重量部を常法により均一に混合した。この被覆材A3の伸び率は90%であった。
【0051】
○被覆材A4
エポキシ変性アクリル樹脂(アクリル系モノマーとエポキシ化合物の乳化重合により得られた水分散性樹脂、ガラス転移温度35℃、固形分50重量%)200重量部に対し、酸化チタン20重量部、重質炭酸カルシウム80重量部、造膜助剤4重量部、粘性調整剤3重量部、消泡剤1重量部、水50重量部を常法により均一に混合した。この被覆材A4の伸び率は20%であった。
【0052】
被覆材Bとしては、それぞれ以下に示すものを用意した。
【0053】
○被覆材B1
下記3種の着色樹脂粒子が、水性分散媒1(アクリル樹脂エマルション、ピペリジン化合物(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)、水を主成分とする水性分散媒。樹脂成分の固形分100重量部に対しピペリジン化合物を3重量部含む。)に分散した被覆材B1を製造した。この水性分散媒1は透明被膜を形成するものであり、着色樹脂粒子と水性分散媒1との固形分重量比は、1.5:1である。
着色樹脂粒子は、扁平状黒色粒子(アクリル樹脂エマルション、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、弁柄、酸化チタン、水を主成分とするゲル状粒子。樹脂成分:着色顔料=100:15(固形分重量比),粒子径約2mm)と、扁平状濃灰色粒子(アクリル樹脂エマルション、黒色酸化鉄、酸化チタン、水を主成分とするゲル状粒子。樹脂成分:着色顔料=100:21(固形分重量比),粒子径約1mm)と、扁平状淡灰色粒子(アクリル樹脂エマルション、黒色酸化鉄、酸化チタン、水を主成分とするゲル状粒子。樹脂成分:着色顔料=100:32(固形分重量比),粒子径約1mm)であり、扁平状黒色粒子:扁平状濃灰色粒子:扁平状淡灰色粒子=1:1:1(固形分重量比)である。
【0054】
○被覆材B2
上記3種の着色樹脂粒子(被覆材B1と同様)が、水性分散媒2(アクリル樹脂エマルション、ピペリジン化合物(デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル化合物)、水を主成分とする水性分散媒。樹脂成分の固形分100重量部に対しピペリジン化合物を3重量部含む。)に分散した被覆材B2を製造した。この水性分散媒2は透明被膜を形成するものであり、着色樹脂粒子と水性分散媒2との固形分重量比は、1.5:1である。
【0055】
○被覆材B3
上記3種の着色樹脂粒子(被覆材B1と同様)が、水性分散媒3(アクリル樹脂エマルション、ピペリジン化合物(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)、水を主成分とする水性分散媒。樹脂成分の固形分100重量部に対しピペリジン化合物を8重量部含む。)に分散した被覆材B3を製造した。この水性分散媒3は透明被膜を形成するものであり、着色樹脂粒子と水性分散媒3との固形分重量比は、1.5:1である。
【0056】
○被覆材B4
上記3種の着色樹脂粒子(被覆材B1と同様)が、水性分散媒4(アクリル樹脂エマルション、ピペリジン化合物(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)、水を主成分とする水性分散媒。樹脂成分の固形分100重量部に対しピペリジン化合物を13重量部含む。)に分散した被覆材B4を製造した。この水性分散媒4は透明被膜を形成するものであり、着色樹脂粒子と水性分散媒4との固形分重量比は、1.5:1である。
【0057】
○被覆材B5
上記3種の着色樹脂粒子(被覆材B1と同様)が、水性分散媒5(アクリル樹脂エマルション、ピペリジン化合物(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)、水を主成分とする水性分散媒。樹脂成分の固形分100重量部に対しピペリジン化合物を18重量部含む。)に分散した被覆材B5を製造した。この水性分散媒5は透明被膜を形成するものであり、着色樹脂粒子と水性分散媒5との固形分重量比は、1.5:1である。
【0058】
○被覆材B6
上記3種の着色樹脂粒子(被覆材B1と同様)が、水性分散媒6(アクリル樹脂エマルション、水を主成分とする水性分散媒。ピペリジン化合物を含まない。)に分散した被覆材B6を製造した。この水性分散媒6は透明被膜を形成するものであり、着色樹脂粒子と水性分散媒6との固形分重量比は、1.5:1である。
【0059】
被覆材Cとしては、以下に示すものを用意した。
【0060】
○被覆材C1
シリカ1(水分散性シリカゾル、pH7.6、平均一次粒子径27nm):アクリルシリコン樹脂(メチルメタクリレート-n−ブチルアクリレート-2−エチルヘキシルアクリレート-γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合樹脂、ガラス転移温度18℃)=1.5:1(固形分重量比)の水分散液。
【0061】
○被覆材C2
シリカ2(水分散性シリカゾル、pH7.5、平均一次粒子径10nm):アクリルシリコン樹脂(メチルメタクリレート-n−ブチルアクリレート-2−エチルヘキシルアクリレート-γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合樹脂、ガラス転移温度18℃)=1.5:1(固形分重量比)の水分散液。
【0062】
○被覆材C3
シリカ3(水分散性シリカゾル、pH7.8、平均一次粒子径30nm):アクリルシリコン樹脂(メチルメタクリレート-n−ブチルアクリレート-2−エチルヘキシルアクリレート-γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合樹脂、ガラス転移温度18℃)=1.5:1(固形分重量比)の水分散液。
【0063】
○被覆材C4
シリカ1(水分散性シリカゾル、pH7.6、平均一次粒子径27nm):アクリルシリコン樹脂(メチルメタクリレート-n−ブチルアクリレート-2−エチルヘキシルアクリレート-γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合樹脂、ガラス転移温度18℃)=0.7:1(固形分重量比)の水分散液。
【0064】
○被覆材C5
シリカ1(水分散性シリカゾル、pH7.6、平均一次粒子径27nm):アクリルシリコン樹脂(メチルメタクリレート-n−ブチルアクリレート-2−エチルヘキシルアクリレート-γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合樹脂、ガラス転移温度18℃)=3.0:1(固形分重量比)の水分散液。
【0065】
○被覆材C6
アクリルシリコン樹脂(メチルメタクリレート-n−ブチルアクリレート-2−エチルヘキシルアクリレート-γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合樹脂、ガラス転移温度18℃)の水分散液。
【0066】
(試験1)
スレート板に対し、被覆材Aを塗付け量80g/m
2(固形分)でスプレー塗装し、6時間養生後、被覆材Bを塗付け量150g/m
2(固形分)でスプレー塗装して模様被膜を形成させた。次いで、1日間養生後、被覆材Cを塗付け量3g/m
2(固形分)でスプレー塗装し、7日間養生した。なお、塗装、養生はすべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った
【0067】
上記方法で得られた試験体を、汚染物質懸濁液(濃度1重量%)に2時間浸漬し、引きあげて標準状態で24時間放置した後、水洗・乾燥した。このときの汚染状態を目視にて評価した。
次に、試験体を促進耐候性試験機(「メタルウェザーメーター」、ダイプラ・ウィンテス株式会社製)にて1500時間曝露した後、前述と同様の方法で汚染物質による汚染状態を評価した。
汚染状態の評価は、汚染物質の付着が認められなかったものを「A」、汚染物質の付着が僅かに認められたものを「B」、汚染物質の付着が認められたものを「C」、とする3段階(A>B>C)で行った。
【0068】
(試験2)
板状壁材(窯業系サイディングボート)2枚を併設し、ボード間の目地部(幅10mm)に変性シリコーン系シーリング材を充填したものを試験基材とした。
この試験基材の全面に対し、被覆材Aを塗付け量80g/m
2(固形分)でスプレー塗装し、6時間養生後、被覆材Bを塗付け量150g/m
2(固形分)でスプレー塗装して模様被膜を形成させた。次いで、1日間養生後、被覆材Cを塗付け量3g/m
2(固形分)でスプレー塗装し、7日間養生した。なお、塗装、養生はすべて標準状態下で行った。
【0069】
上記方法で得られた試験体について、標準状態で引張り試験機にて水平方向に30%変位させたときの表面状態を観察し、追従性を評価した。
次に、試験体を70℃恒温器にて1000時間放置した後、前述と同様の方法で追従性を評価した。
追従性の評価は、割れが認められなかったものを「A」、割れが生じたものを「C」とする3段階(A>B>C)で行った。
【0070】
(試験結果)
上記試験で使用した被覆材と、その試験結果を表1に示す。実施例1〜11では、試験1の促進前と促進後において、いずれも汚染状態の評価が良好な結果となり、試験2においても良好な結果が得られた。
【0071】
【表1】