(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一層がクリーム層であり、少なくとも一層が酸性食品の層である多層食品の、前記クリーム層に用いられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐酸性クリーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
少なくとも一層にクリーム層を有する多層食品は、クリーム層と接触する層(食品)のpHを5を超える範囲に調整する、又は層間に油脂層などの他層を設ける場合が大半である。これは、クリーム層と酸性食品の層を接触した状態で長期保存した場合に、クリームが凝集又は固化し、食感が悪化することに由来する。本発明ではかかる課題に鑑み、例えばフルーツゼリー、マンゴープリン等の酸性食品と接触した状態で長期保存した場合であっても、クリームが凝集、固化することなく滑らかな食感を有するクリームを提供することを目的とする。
【0006】
また、多層食品においてクリーム層の粘性が少な過ぎると、クリーム層の充填時には液跳ねが生じやすく、製造時にはシール不良を生じやすい。最終食品の輸送時には、クリーム層が流れて外観が悪化する、喫食時に垂れ落ちやすい等の問題が生じ、一方で粘性を付与するとクリームの凝集、固化が進行しやすいといった場合が生じる。
本発明では、かかる課題に鑑み、クリームが充填時に液跳ねしない程度の粘性を有しつつも、クリームが凝集、固化することなくクリームが酸性食品によく絡み、滑らかな食感を有する多層食品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記のごとき課題を解決すべく鋭意研究した結果、(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル、(B)ガラクトマンナン及び/又は寒天、並びに(C)酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することで、酸性食品と接触した状態で長期保存した場合であっても、クリームが凝集、固化することなく滑らかな食感を有する耐酸性クリームを提供できること、及び充填時に液跳ねしない程度の粘性を有しつつも、凝集、固化することなくクリームが酸性食品によく絡み、滑らかな食感を有する耐酸性クリームを提供できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明は以下の態様を有する耐酸性クリーム及び多層食品に関する;
項1.
(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル、
(B)ガラクトマンナン及び/又は寒天、並びに
(C)酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル、
を含有する耐酸性クリーム。
項2.前記(A)を0.05〜0.6質量%、(B)を0.01〜0.6質量%、及び(C)を0.01〜1質量%含有する、項1に記載の耐酸性クリーム。
項3.少なくとも一層がクリーム層であり、少なくとも一層が酸性食品の層である多層食品の、前記クリーム層に用いられることを特徴とする、項1又は2に記載の耐酸性クリーム。
項4.少なくとも一層がクリーム層であり、少なくとも一層が酸性食品の層である多層食品であり、前記クリーム層が下記(A)〜(C)を含有することを特徴とする多層食品;
(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル、
(B)ガラクトマンナン及び/又は寒天、並びに
(C)酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、フルーツゼリー、マンゴープリン等の酸性食品と接触した状態で長期保存した場合であっても、クリームが凝集、固化することなく滑らかな食感を有する耐酸性クリームを提供することができる。これにより、少なくとも一層がクリーム層であり、少なくとも一層がpH5以下の酸性食品の層である多層食品を提供することができる。また、本発明の耐酸性クリームは適度な粘性を有するため、多層食品を製造する際に生じる液跳ねやシール不良を有意に抑制することができ、輸送時の振動で生じるクリーム層の移動、喫食時のクリーム層の垂れ落ち等も抑制することができる。本発明の耐酸性クリームは適度な粘性を有しつつも、クリームの凝集、固化が抑制されており、クリームが酸性食品によく絡み、非常に滑らかな食感を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の耐酸性クリームは、(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル、(B)ガラクトマンナン及び/又は寒天、並びに(C)酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。
【0011】
(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル
本発明では、HLB値が14以上、好ましくは15以上、更に好ましくは16以上のショ糖脂肪酸エステルを用いることを特徴とする。HLB値が14未満のショ糖脂肪酸エステルを用いた場合、酸性食品と接触した場合に生じるクリームの凝集、固化を抑制することができないばかりか、クリーム自体の安定性を十分に保持することができない。HLB値の上限は特に制限されないが、20、好ましくは18、更に好ましくは17を例示できる。ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、例えば炭素数12〜24、好ましくは16〜22の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられ、ステアリン酸、パルミチン酸等を例示できる。本発明のショ糖脂肪酸エステルは、モノエステル含量が50%を超え、ジエステル、トリエステル及びポリエステル含量の合計が50%未満の配合比であることが好ましい。
【0012】
クリームにおける(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステルの含量は、通常0.05〜0.6質量%、好ましくは0.075〜0.5質量%、更に好ましくは0.1〜0.4質量%である。本範囲内でHLB14以上のショ糖脂肪酸エステルを用いることで、クリームの風味を悪化させることなく安定性の高いクリームを調製でき、更に酸性食品と接触した場合に生じるクリームの凝集、固化を有意に抑制することができる。
【0013】
(B)ガラクトマンナン及び/又は寒天
本発明では、ガラクトマンナン及び/寒天を用いる。ガラクトマンナンは、β−D−マンノースの主鎖がβ−1,4結合,α−D−ガラクトースの側鎖がα−1,6結合した多糖類である。本発明で使用するガラクトマンナンとして、グァーガム、タラガム及びローカストビーンガムを例示できる。グァーガムはマンノース:ガラクトースの比率が約2:1、タラガムは約3:1、ローカストビーンガムは約4:1であることが一般的である。
【0014】
本発明で用いる寒天は、紅藻(テングサ科、オゴノリ科等)から得られる多糖類である。本発明では寒天として、低強度寒天を用いることが望ましい。低強度寒天とは、1.5%濃度のゼリー強度が10〜150g/cm
2である寒天をいう。好ましくは1.5%濃度のゼリー強度が20〜120g/cm
2である。なお、ここで、ゼリー強度とは日寒水式測定法、すなわち寒天の1.5%溶液を調製し20℃で15時間放置凝固せしめたゲルについてその表面1cm
2当たり20秒間耐えるうる最大荷重〔g〕をいう。
【0015】
クリームにおける(B)ガラクトマンナン及び/又は寒天の含量は、特に制限されない。好ましくは、0.01〜0.6質量%である。
中でも、ガラクトマンナンを使用する場合の含量は通常、0.05〜0.6質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%、更に好ましくは0.1〜0.4質量%である。寒天を用いる場合は、通常、0.01〜0.2質量%、好ましくは0.03〜0.17質量%、更に好ましくは0.05〜0.15質量%である。ガラクトマンナン及び寒天を併用する場合は、上記添加量の範囲内で両者を併用することができる。上記範囲内でガラクトマンナン及び/又は寒天を用いることで、シール不良を生じることなく、また、クリームの食感及び風味を損なうことなく、クリームの凝集、固化防止に優れた安定性の高いクリームを調製できる。かかるクリームは酸性食品によく絡み、喫食時のクリームの垂れ落ちも有意に抑制できる。
【0016】
また、本発明では、(B)ガラクトマンナンを(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル100質量部に対し、20〜200質量部、好ましくは30〜150質量部の範囲で使用することが好ましく、(B)寒天を(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル100質量部に対し、3〜70質量部、好ましくは10〜60質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0017】
(C)酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル
酵素分解レシチンは、レシチンにホスホリパーゼA2を作用させ、2−位の脂肪酸のエステル結合を加水分解したものである。原料となるレシチンは種類を問わない。例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン等である。本発明では、酵素分解レシチンを使用することを特徴とし、酵素分解レシチン以外の通常のレシチンを用いた場合には本発明の効果を得ることができない。
【0018】
本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンを重合させたポリグリセリンに脂肪酸をエステル化したものであれば特に制限されない。好ましくは重合度が2〜11であるものを使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとして特に好ましくはデカグリセリンステアリン酸エステル、ペンタグリセリンステアリン酸エステル又はジグリセリンパルミチン酸エステルを使用することができる。
【0019】
クリームにおける(C)酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルの含量は特に制限されない。好ましくは、0.01〜1質量%である。中でも、酵素分解レシチンを使用する場合の含量が通常、0.05〜0.6質量%、好ましくは0.075〜0.4質量%、更に好ましくは0.1〜0.3質量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの場合は、通常、0.01〜1質量%、好ましくは0.01〜0.6質量%、更に好ましくは0.02〜0.4質量%である。上記範囲内で酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで、凝集、固化防止に有意に優れ、更に風味にも優れたクリームを調製できる。
また、本発明では、(C)酵素分解レシチンを、(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル100質量部に対して20〜200質量部、好ましくは30〜100質量部の範囲で使用することが好ましい。(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル100質量部に対し、5〜300質量部、好ましくは8〜70質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0020】
本発明の耐酸性クリームはタンパク質を含有する。タンパク質の種類は特に制限されず、食品に使用可能なタンパク質を使用できる。例えば、乳タンパク質(牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、乳清タンパク質、カゼイン等)、大豆タンパク質(豆乳等)、小麦タンパク質、米タンパク質等が挙げられる。好ましくは乳タンパク質である。
本発明の耐酸性クリームにおけるタンパク質含量は特に制限されない。しかし、一般的にはタンパク質含量が0.1質量%以上であると、酸性食品と接触した場合に生じるクリームの凝集、固化が問題視されやすい。本発明では、耐酸性クリームにおけるタンパク質含量が0.2〜1.5質量%の範囲内であっても、クリームの凝集、固化が抑制され、滑らかな食感を有するクリームを提供できるという利点を有する。
【0021】
タンパク質は、少量の方が凝集性は少なくクリームの安定性が良いが、風味の観点からは乳タンパク質を多く用いることが望ましい。通常であれば、乳タンパク質含量が、0.5〜1質量%程度あれば、ミルクの風味を呈することができる。乳タンパク質含量が多いと風味はよくなるが、酸性食品と接触した場合に安定性を損ない乳タンパク質が凝集してクリームの固化を招いてしまう。かかるところ、本発明ではタンパク質含量が0.5質量%以上であっても、またタンパク質が乳タンパク質であっても、酸性食品と接触した場合のクリームの凝集、固化が有意に抑制され、クリームが酸性食品によく絡み、滑らかな食感を有するクリームを提供できる。
目安として、牛乳に含まれるタンパク質は約3質量%、脱脂粉乳は約35質量%、全粉乳は約25質量%、豆乳は約3.5質量%である。なお、本発明においてタンパク質とはペプチドも含む。
【0022】
本発明の耐酸性クリームは、本発明の効果を損なわない範囲内において、任意に油脂、糖類、香料、色素等を含有することができる。本発明の耐酸性クリームは、好ましくは油脂を含有することが望ましい。油脂は特に制限されず、植物油脂、動物油脂、これらの精製油、分別油、水素添加油脂、エステル交換油脂、混合油等を例示できる。植物油脂としては、ヤシ油、ナタネ油、コーン油、大豆油、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油、オリーブ油、サフラワー油、カカオ脂、米油等を例示できる。動物油脂としては、乳脂、ラード、魚油、鯨油等を例示できる。好ましくは精製ヤシ油、又は植物油脂の混合油である。クリーム中における油脂含量は、特に制限されない。通常、5〜45質量%、好ましくは7〜30質量%とすることが望ましい。
【0023】
本発明の耐酸性クリームは、(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル、(B)ガラクトマンナン及び/又は寒天、並びに(C)酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する以外は常法に従って調製可能である。
例えば、水、タンパク質(乳原料、大豆原料等)、及び上記(A)〜(C)を混合した水相と、油相とを混合し、必要に応じて均質化処理を行なうことで調製することができる。水相を調製する際には、必要に応じて水相を75〜90℃程度に加温しても良い。均質化処理の条件としては、例えば、一段階目5〜15MPa、二段階目2〜5MPaの二段階の均質化工程を例示できる。好ましくは均質化による圧力(二段階で均質化工程を行なう場合には、合計圧力)が15MPa以上、更に好ましくは18MPa以上であることが好ましい。油脂を含有しない耐酸性クリームを製造する場合には、水、タンパク質(乳原料、大豆原料等)及び上記(A)〜(C)、任意でデキストリン、澱粉等を混合し、必要に応じて均質化処理を行なうことで調製することができる。
【0024】
本発明の耐酸性クリームは、必要に応じて殺菌工程を経ることが可能である。例えば、UHT殺菌処理であれば130〜140℃、2〜60秒間の殺菌条件を例示できる。
かくして得られる本発明の耐酸性クリームは、1週間経過後も一部が分離して下スキが生じることなく、安定性を有するクリームである。
【0025】
本発明の耐酸性クリームは、調製直後の乳化粒子のメジアン径が0.7〜3μmであることが好ましい。本メジアン径に乳化粒子を調製する手段としては、均質化処理を行なう、乳化剤(A)及び(C)の添加量を調整する等の各種手段が挙げられる。本発明において乳化粒子のメジアン径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した値をいう。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば島津製作所製の「SALD−2100−WJA1」がある。
【0026】
本発明の耐熱性クリームはまた、クリーム調製3日後の粘度が5〜500mPa・s、好ましくは10〜400mPa・s、更に好ましくは20〜300mPa・sの範囲に調整されていることが望ましい。当該範囲にクリームを調製することで、充填時の液跳ね、製造時のシール不良を有意に抑制することができ、輸送時にクリーム層が流れて外観が悪化する現象も抑制することができる。一方、クリームに粘性を付与することで、クリームの凝集、固化が進行しやすいといった側面もあるが、本発明の耐酸性クリームは、一定の粘性を有しつつもクリームの凝集、固化が有意に抑制されているという利点を有する。なお、本明細書中において「粘度」とは、B型回転粘度計を用いて5℃、ローターNO.2、60rpmの条件で測定した場合の値をいう。
【0027】
本発明の耐酸性クリームは、リン酸塩含量が0.15質量%未満、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくはリン酸塩を実質的に含有しないものであることが望ましい。
一般的にクリームにリン酸塩を用いることで、クリームの固化などを抑制しやすいが、一方でリン酸塩特有の呈味がクリームの呈味、風味に悪影響を与えることが多い。本発明では、リン酸塩含量を0.15質量%未満、好ましくは0.1質量%以下まで低減した場合、更に好ましくはリン酸塩を実質的に含有しない場合であっても、酸性条件下におけるクリームの凝集、固化が有意に抑制されているという利点を有する。
【0028】
本発明の耐酸性クリームは、酸性食品と接触した場合にクリームが凝集、固化することなく、クリームが酸性食品によく絡み、滑らかで良好な食感を保持できるという利点を有する。酸性食品としては、例えばpH5以下の食品が挙げられる。具体的には、pH5以下のゼリー、ヨーグルト、ババロア、杏仁豆腐、マンゴープリン、ジャム、グミ、ゲル状調味料、ドリンクゼリー、ゲル状流動食等が例示できる。特にpHが5未満、更にはpHが4以下と低pHであっても、本発明の耐酸性クリームは凝集、固化が生じることなく、且つ滑らかで良好な食感を保持できるという極めて優れた利点を有する。本発明の耐酸性クリームは、酸性食品と接触して長期保存される食品に特に好適に使用できる。pHの下限は特に制限されない。例えばpH3、好ましくは3.3、さらに好ましくは3.5である。
【0029】
例えば、本発明の耐酸性クリームは多層食品に好適に使用できる。かかる点、本発明は、少なくとも一層がクリーム層であり、少なくとも一層が酸性食品の層である多層食品に関する発明でもある。例えば、下層にクリーム層、上層に酸性食品の層を有する多層食品;又は下層に酸性食品の層、上層にクリーム層を有する多層食品等が挙げられる。特には、酸性ゲル状食品の層(例.ゼリー、ヨーグルト、ババロア、杏仁豆腐、マンゴープリン、ジャム、グミ、ゲル状調味料、ドリンクゼリー、ゲル状流動食等)とクリーム層を有する多層食品は、酸性食品及びクリームが接触した状態で長期間保存される食品であるため、クリームの凝集、固化等が問題視されやすい。本発明では、かかる多層食品であっても、下記(A)〜(C)を含有する耐酸性クリームを用いることで、1週間以上、更には10日以上保存した場合であっても、クリームの凝集、固化が抑制され、クリームが酸性食品によく絡み、クリーム層が滑らかで良好な食感を保持できるという利点を有している;
(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル、
(B)ガラクトマンナン及び/又は寒天、並びに
(C)酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル。
【0030】
また、上層がクリーム層である多層食品は、充填時には液跳ね、製造時にはシール不良が生じやすい。更に、輸送時にはクリーム層が流れて外観が悪化し、商品価値を損ねることが多い。かかるところ、本発明の多層食品は当該問題が有意に抑制され、かつ滑らかで良好な食感を有するクリーム層を有する点で非常に優れている。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製であることを意味する。
【0032】
実験例1 耐酸性クリーム及び多層食品(1)
(耐酸性クリームの調製)
表1及び表2の処方に従って耐酸性クリームを調製した。具体的には、イオン交換水に予め粉体混合しておいた脱脂粉乳、ショ糖脂肪酸エステル、酵素分解レシチン、及び多糖類を添加し、80℃にて10分間撹拌溶解して水相を調製した。当該水相に、溶融した精製ヤシ油を加えて5分間撹拌した。イオン交換水を用いて全量が100質量%となるように全量補正し、UHT殺菌を行った(138℃で15秒間)。次いで、75℃にて均質化処理を行ない(第一段9MPa、第二段3MPa)、均質液を10℃以下まで冷却し、耐酸性クリームを調製した(クリームのタンパク質含量は約0.7質量%)。
【0033】
(クリームの評価)
表3の基準に従って、調製したクリームを評価した。評価結果を表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
注1)HLB16のショ糖脂肪酸エステル(モノエステル含量が約70%、ジエステル、トリエステル及びポリエステル含量の合計が約30%)を使用
【0036】
【表2】
【0037】
注2)1.5%濃度のゼリー強度が80〜110g/cm
2である寒天を使用した。
【0038】
【表3】
【0039】
(耐酸性試験)
表3中、耐酸性の評価は、下記表4の処方に従って調製したpH3.9のマンゴープリンの層にクリーム層を積層し、10日経過後の状態を評価した。
【0040】
【表4】
【0041】
(多層食品 製法)
水及び精製ヤシ油を撹拌しながら、砂糖、脱脂粉乳、ゲル化剤及び乳化剤の粉体混合物を加えて80℃で10分間撹拌溶解した。次いで、マンゴーピューレ、クエン酸、色素及び香料を加え、全量が100質量部となるようイオン交換水で全量補正した。ホモゲナイザーにて均質化処理を行ない(第一段10MPa、第二段5MPa)、容器に75g充填した。5℃の冷蔵庫にて約10分間放置して表面を固化した後、マンゴープリンの上にクリーム約10gを載せ、シールして冷蔵庫で保存した。
【0042】
(結果)
(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル、(B)グァーガム、ローカストビーンガム又は低強度寒天、並びに(C)酵素分解レシチンを併用した実施例1−1〜1−3の耐酸性クリームは、調製後10日経過後も安定であり、pH3.9の酸性食品(マンゴープリン)と接触した状態で10日間経過後もクリームが凝集、固化することなく、クリームが酸性食品によく絡み、その食感も滑らかで良好な食感であった。実施例1−1〜1−3の耐酸性クリームを上層に有する多層食品は、製造時にクリームが液跳ねすることなく、またシール不良を起こすこともなく、振動を与えてもクリーム層が流れて外観が悪化することもなかった。一方、(B)グァーガム、ローカストビーンガム又は低強度寒天の代わりに、ラムダカラギナン、ネイティブジェランガム及びキサンタンガムを用いた比較例1−1〜1−3は、pH3.9の酸性食品(マンゴープリン)と接触することによりクリームが一部固化し、商品価値が著しく低下してしまった。精製コンニャクを用いた比較例1−4は、クリーム自体が安定性を有しておらず、商品化できないものであった。
【0043】
実験例2 耐酸性クリーム及び多層食品(2)
(耐酸性クリームの調製)
表5及び表6の処方に従って耐酸性クリームを調製した。具体的には、イオン交換水に予め粉体混合しておいた脱脂粉乳、ショ糖脂肪酸エステル、酵素分解レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び寒天を添加し、80℃にて10分間撹拌溶解して水相を調製した。当該水相に、溶融した精製ヤシ油を加えて5分間撹拌した。イオン交換水を用いて全量が100質量%となるように全量補正し、UHT殺菌を行った(138℃で15秒間)。次いで、75℃にて均質化処理を行ない(第一段15MPa、第二段5MPa)、均質液を10℃以下まで冷却し、耐酸性クリームを調製した(クリームのタンパク質含量は約0.7質量%)。
(クリームの評価)
表3の基準に従って、調製したクリームを評価した。評価結果を表6に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
注3)重合度が10のポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンステアリン酸エステル)を使用した。
【0047】
(耐酸性試験)
表6中、耐酸性の評価は実験例1と同様、表4の処方に従って調製したpH3.9のマンゴープリンの上層にクリーム層を積層し、10日経過後の状態を評価した結果である。
【0048】
(結果)
(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル、(B)低強度寒天、並びに(C)酵素分解レシチン及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを併用した実施例2−1〜2−2の耐酸性クリームは、調製後10日経過後も安定であり、pH3.9の酸性食品(マンゴープリン)と接触した状態で10日間経過後もクリームが凝集、固化することなく、クリームが酸性食品によく絡み、その食感も滑らかで良好な食感であった。実施例2−1〜2−2の耐酸性クリームを上層に有する多層食品は、製造時にクリームが液跳ねすることなく、またシール不良を起こすこともなく、振動を与えてもクリーム層が流れて外観が悪化することもなかった。
【0049】
実験例3 耐酸性クリーム及び多層食品(3)
(耐酸性クリームの調製)
表7及び表8の処方に従って耐酸性クリームを調製した。具体的には、イオン交換水に予め粉体混合しておいた脱脂粉乳、ショ糖脂肪酸エステル、酵素分解レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びグァーガムを添加し、80℃にて10分間撹拌溶解して水相を調製した。当該水相に、溶融した精製ヤシ油を加えて5分間撹拌した。イオン交換水を用いて全量が100質量%となるように全量補正し、UHT殺菌を行った(138℃で15秒間)。次いで、75℃にて均質化処理を行ない(第一段9MPa、第二段3MPa)、均質液を10℃以下まで冷却し、耐酸性クリームを調製した(クリームのタンパク質含量は約0.7質量%)。
(クリームの評価)
表3の基準に従って、調製したクリームを評価した。評価結果を表8に示す。
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】
(耐酸性試験)
表8中、耐酸性の評価は、表4のマンゴープリン処方におけるクエン酸量を変えて調製したpH3.5のマンゴープリンの上層にクリーム層を積層し、10日経過後の状態を評価した結果である。
【0053】
(結果)
(A)HLB値14以上のショ糖脂肪酸エステル、(B)グァーガム、並びに(C)酵素分解レシチン及びポリグリセリン脂肪酸エステルを併用した実施例3−1〜3−2の耐酸性クリームは、調製後10日経過後も安定であり、pH3.5の酸性食品(マンゴープリン)と接触した状態で10日間経過後もクリームが凝集、固化することなく、クリームが酸性食品によく絡み、その食感も滑らかで良好な食感であった。実施例3−1〜3−2の耐酸性クリームを上層に有する多層食品は、製造時にクリームが液跳ねすることなく、またシール不良を起こすこともなく、振動を与えてもクリーム層が流れて外観が悪化することもなかった。
【0054】
更に、実施例3−1において使用したポリグリセリン脂肪酸エステルの種類及び添加量を下記表9に示すポリグリセリン脂肪酸エステルに変更する以外は、実施例3−1と同様にして耐酸性クリーム及び多層食品を調製した(実施例3−3及び3−4)。
【0055】
【表9】
【0056】
実施例3−3及び3−4の耐酸性クリームは、調製後10日経過後も安定であり、pH3.5の酸性食品(マンゴープリン)と接触した状態で10日間経過後もクリームが凝集、固化することなく、クリームが酸性食品によく絡み、その食感も滑らかで良好な食感であった。また、実施例3−3及び3−4の耐酸性クリームを上層に有する多層食品は、製造時にクリームが液跳ねすることなく、またシール不良を起こすこともなく、振動を与えてもクリーム層が流れて外観が悪化することもなかった。