(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パラメータは、前記移動速度が高速である場合に選択される第1パラメータと、前記移動速度が中速である場合に選択される第2パラメータと、前記移動速度が通常である場合に選択される第3パラメータを含む、
請求項1に記載の移動通信端末。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら実施例を説明する。図中、同様な要素には同じ参照番号又は参照符号が付されている。
【0014】
1.無線通信システムの概要
2.ハードウェア構成
3.第1実施形態における移動機の機能
4.第1実施形態における移動機の動作例
5.第2実施形態
機能
動作例
6.第3実施形態
機能
動作例
【0015】
≪ 1.無線通信システムの概略 ≫
図1は、本実施形態に係る無線通信システム1の概略図である。
図1に示されるように、無線通信システム1は、移動機100と、コアネットワーク200と、E-UTRAN300と、セクタ410、420を有する。
【0016】
コアネットワーク200は、E-UTRAN向けのパケット交換機210と、回線交換機220と、UTRAN(図示しない)向けのパケット交換機230を有する。E-UTRAN向けのパケット交換機210は、E-UTRAN300、いわゆるLTEのネットワークから送信されたパケットを蓄積し、パケットの示す宛先情報を元に、送信先を振り分けて送出する。回線交換機220は、主に音声通話を行うため、移動機の間の物理的な通信経路を選択し、移動機同士を接続する。UTRAN向けのパケット交換機230は、UTRAN、いわゆる従来の3Gネットワークから送出されたパケットを蓄積し、パケットの示す宛先情報を元に、パケットを送出する。
【0017】
E-UTRAN300は、3GPPによって標準化されたLTEの規格に対応したネットワークであり、
図1では、二つの基地局310、320(E-UTRAN NodeBとも呼ばれる)が例示されている。基地局310、320は、移動機100との通信信号を送受信可能なエリアとして、それぞれ、セクタ410、420をカバーする。基地局310は、所定のキャリア周波数により、セクタ410内のセル415をカバーし、基地局420は、セクタ420内のセル425をカバーする。
【0018】
移動機100は、携帯電話、スマートフォン、あるいはPC等に接続されて用いられるデータ通信端末のような、移動通信端末であり、3GPPの定めた無線アクセス技術であるE-UTRAを用いて、基地局と通信する。
図1において、移動機100は、セル415に属し、セル415をカバーする基地局310と通信を行うことができる。移動機100は、一のセルに在圏している間にも、よりよい条件のセル(基地局)を再選択するために、現在通信中のセル及び隣接するセルを、無線品質に基づいてランク付けしている。以下は、3GPPにおいて既定されている、ランク付けのための式である。
【0019】
R
s=Q
meas,s+Q
Hyst ・・・式(1)
R
n=Q
MEAS,N+Q
offset ・・・式(2)
R
s :現在通信中のセルのランキング基準値(「Cell-ranking Criterion」)
R
n :隣接するセルのランキング基準値
Q
meas :RSRP(Reference Signal Received Power)測定量、又は、
RSRQ(Reference Signal Received Quality)測定量
Q
hyst :ヒステリシス値
Q
offset:オフセット値
移動機100は、隣接するセルのランキング基準値が、現在通信中のセルのランキング基準値を、予め定められた時間(「T
reselectionEUTRA」値によって表される)上回っている場合に、その隣接するセルを再選択する。ここで、「Q
hyst」、「T
reselectionEUTRA」の値が小さいほど、隣接するセルが再選択されやすくなる。
【0020】
また、移動機100は、データ通信中に、例えば、基地局310のカバーするセル415を離れ、基地局320のカバーするセル425に移動すると(
図1の矢印)、通信の状態を維持したまま、接続する基地局を基地局320に切り替えることができる。このような処理は、一般に、ハンドオーバと呼ばれる。ハンドオーバの条件及び方法は、3GPPにおいて規定されている。以下、移動機100で生じたイベントに基づいて、基地局がハンドオーバの実行を決定する方法を説明する。
【0021】
移動機300は、通信中の基地局310からの制御により、通信中の基地局310及び隣接する基地局(例えば、基地局320)から送信される無線信号の品質を、随時測定する。そして、その品質が、所定の条件を満たす場合に、その結果を、レポートとして、基地局310に送信する。所定の条件は、3GPPで定義されたイベント(Event)の種類ごとに定められている。例えば、3GPPでは、在圏する基地局から、隣接する基地局へとハンドオーバするための条件の一つとして、以下の式によって発生する「Event 3A」を規定している。
【0022】
Mn+Ofn+Ocn−Hys>Mp+Ofp+Ocp+Off ・・・式(3)
Mn :隣接セルの無線品質(RSRP測定量又はRSRQ測定量)
Ofn:隣接セルの周波数固有のオフセット値
Ocn:隣接セルのセル固有のオフセット値
Hys:ヒステリシスパラメータ
Mp :現在通信中のセルの無線品質(RSRP測定量又はRSRQ測定量)
Ofp:現在通信中のセルの周波数固有のオフセット値
Ocp:現在通信中のセル固有のオフセット値
Off:当該イベント用のオフセット値(a3-Offset)
なお、3GPPは、上述した「Event 3A」の他に、「Event A1」〜「Event A5」、「Event B1」〜「Event B2」等のイベントを定義している。以下、上述した「Event 3A」の例を用いて説明する。
【0023】
移動機100は、上記の式(3)が、一定時間(「timeToTrigger」値によって表される)、満たされ続けたことを検出すると、その結果を基地局310に送信する。これを受けた基地局310は、ハンドオーバを実行することを決定し、移動機100及び隣接する基地局320に対して、ハンドオーバを行うよう指示する。その後、移動機100は、基地局310から隣接する基地局320へと接続を切り替え、同期処理等を行った後、基地局320を通じたデータ通信が可能となる。ここで、上記の式で定義される値のうち、Hys、Off、timeToTriggerの値が小さければ小さいほど、ハンドオーバが実行されやすくなる。
【0024】
ここで、移動機100は、自らの移動速度に応じて、上述したセルの再選択又はハンドオーバに関するパラメータを変更し、セルの再選択又はハンドオーバを実行しやすいよう制御を行うことができる。このような処理は、3GPPにおいて、「Speed dependent scaling」として規定されている。具体的には、移動機100は、一定の時間(「T
CRmax」値によって表される)内に、セル遷移(ハンドオーバ又はセル選択)の回数が、所定の回数(「N
CR_H」値によって表される」)を上回った場合に、移動速度が高速(Hign-mobility)であるとみなす。また、移動機100は、一定の時間T
CRmax内に、セル遷移の回数が、所定の回数(「N
CR_M」値によって表される)を上回った場合に、移動速度が中速(Medium-mobility)であるとみなす。そして、移動機100は、それぞれの移動速度に応じて、上述したパラメータQ
hyst、T
reselectionEUTRA、timeToTriggerの値を変更し、より俊敏に隣接するセルに遷移できるようにする。
【0025】
ここで、移動機100は、RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)を備え、鉄道駅や通路等に設置された改札機500からの通信に応じて、上述した、「Speed dependent scaling」に係る処理を制御することができる。
図2は、移動機100が、鉄道の改札機500を通過した様子を表している。移動機100と改札機500は、例えば、非接触型ICカード向けの通信方式であるFelica(登録商標)や、その上位規格であるNFC(Near Field Communication)等の規格に従って、通信することができる。このように、移動機100のRFICは、改札機500と通信することにより、鉄道駅の構内への入退場情報を受信する。移動機100は、この通信内容に応じて、上述した、「Speed dependent scaling」に係る処理を制御する。
【0026】
詳しくは後述するが、本発明の一実施形態において、移動機100は、改札機500を通過して入場情報(以後、「入場情報」とする)が受信すると、上述した「Speed dependent scaling」に係る処理を有効にする。これは、鉄道で移動中には、高速又は中速の移動速度である可能性が高いため、俊敏なセル遷移が要求されるためである。一方で、移動機100は、改札機500を通過して退場情報(以後、「退場情報」とする)が受信すると、上述した「Speed dependent scaling」に係る処理を無効にする。これにより、移動機100が、高速又は中速で移動していないにも関わらず、セル遷移がなされてしまう可能性を低減することができる。このように、本発明の一実施形態では、入場情報及び退場情報が、移動機100の移動速度の変化を表す情報として、利用される。
【0027】
なお、以下では、移動機100が、鉄道駅に設置された改札機500から、RFICを介して,情報を受信する例を用いて説明する。しかしながら、移動機100は、例えば、高速道路のインターチェンジに設置されたETC(Electronic Tool Collection System)のゲートや、他の外部のシステムから、電波を介して、情報を受信しても良い。
【0028】
≪ 2.ハードウェア構成 ≫
図3は、本発明の一実施形態における移動機100のハードウェア構成の一例を表す。
図3には、移動機100がスマートフォンである場合の、ハードウェア構成例を表している。移動機100は、CPU11と、RAM12と、ROM13と、通信モジュール14及びアンテナ15と、RFICモジュール16及びアンテナ17と、GPS受信モジュール18及びアンテナ19と、加速度センサ20と、ディスプレイ21と、タッチパネル22と、マイク23と、スピーカ24と、電池25を有する。
【0029】
CPU11は、移動機100の動作制御を行うプログラムを実行する。RAM12は、CPU11のワークエリア等を構成する。ROM13は、CPU11が実行するプログラムや、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。通信モジュール14は、E−UTRANに接続するための通信装置である。アンテナ15は、通信モジュール14に対応した一以上のアンテナである。
【0030】
RFICモジュール16及びそのアンテナ17は、Felica(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はその他のICカードの通信規格に従って、改札機500に備えられたICカードリーダライタと通信するための装置である。RFICモジュール16には、さらにユーザデータを記憶可能な領域が含まれる。GPS受信モジュール18及びそのアンテナ19は、GPS衛星から送信された測位信号を受信し、移動機100の現在位置を測定するための装置である。加速度センサ20は、移動機100の、x、y、z軸方向の加速度の変化を検出する装置である。
【0031】
ディスプレイ21は、ユーザに対して画面を提示するための装置である。タッチパネル22は、ユーザからの入力を受け付ける装置である。マイク23は、ユーザの音声を電気信号に変換する。スピーカ24は、電気信号を音声として出力する。電池25は、移動機100を駆動するための電力を供給する装置である。バス26は、電池25を除く、上述した各装置を相互に接続する。
【0032】
なお、移動機100が、PCに接続されるデータ端末等である場合には、
図3に示されるGPS受信モジュール18及びそのアンテナ19、加速度センサ20、ディスプレイ21、タッチパネル22、マイク23、スピーカ24及び電池25は、備えられていなくても良い。
【0033】
≪ 3.第1実施形態における移動機の機能 ≫
図4は、本発明の第1実施形態に係る移動機100の機能ブロック図である。なお、以下、本発明と関連する部分について主に説明する。したがって、移動機100は、移動機100としての機能を実現する上で必須な、図示しない或いは説明を省略したブロック(電源部など)を備えることに留意されたい。
【0034】
図4に示すように、移動機100は、無線受信部101と、無線送信部102と、接続制御部103と、パラメータ選択部104と、非接触通信部105と、検出部106と、切替部107と、第1格納部150と、第2格納部170とを有する。以下では、まず、第1格納部150及び第2格納部170に格納される情報を説明した後に、各機能部の詳細を説明する。
【0035】
第1格納部150は、
図3のROM13によって実現され、セル遷移情報151と調整パラメータ情報152を格納する。
【0036】
セル遷移情報151は、セル遷移の履歴を表す情報を含み、セル遷移がなされるごとに更新される。セル遷移情報151は、主に、移動機100の移動速度を決定するために用いられる。
【0037】
調整パラメータ情報152は、セルの再選択のなされやすさを決定するQ
hyst又はT
reselectionEUTRAに対し、移動速度に応じて加算又は乗算される、調整パラメータの情報を含む。調整パラメータは、3GPP規格において、「sf-High」及び「sf-Medium」として定義され、Q
hystとT
reselectionEUTRA の両方に対し、それぞれ用意される。すなわち、移動状態が「高速」、「中速」、又は、それ以外の速度(以下、「通常」と表す)で表される場合に、Q
hystとT
reselectionEUTRA の値は、以下のように更新される。
−高速
Q
hyst=Q
hyst+sf-High(Q
hyst向け) ・・・式(4)
T
reselectionEUTRA=T
reselectionEUTRA×sf-High(T
reselectionEUTRA向け) ・・・式(5)
−中速
Q
hyst=Q
hyst+sf-Medium(Q
hyst向け) ・・・式(6)
T
reselectionEUTRA=T
reselectionEUTRA×sf-Medium(T
reselectionEUTRA向け)・・・式(7)
−通常
Q
hyst(そのままの値が使用される) ・・・式(8)
T
reselectionEUTRA(そのままの値が使用される) ・・・式(9)
また、調整パラメータ情報152は、移動速度(高速、中速、通常)に応じて選択される、timeToTrigger(単位:ミリ秒)の情報を含み得る。timeToTriggerの値は、より高速な移動速度に対して、より小さな値が選択される。
【0038】
なお、一実施形態において、timeToTriggerと共に、あるいはtimeToTriggerに代えて、以下の調整パラメータが、任意の組み合わせで用いられても良い。
【0039】
<セル再選択に用いられる調整パラメータ>
−Qoffset :より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
−Thresh
Serving,LowP:優先度のより低いネットワークのセルを再選択する際のSrxlev(セル選択用受信レベル値)閾値。より高い移動速度に対して、より大きな値が選択される
−Thresh
Serving,LowQ:優先度のより低いネットワークのセルを再選択をする際のSqual(セル選択用品質値)閾値。より高い移動速度に対して、より大きな値が選択される
−Thresh
X,HighP :優先度のより高いネットワークのセルを再選択する際のSrxlev閾値。より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
−Thresh
X,HighQ :優先度のより高いネットワークのセルを再選択する際のSqual閾値。より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
−Thresh
X,LowP :優先度のより低いネットワークのセルを再選択する際のSrxlev閾値。より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
−Thresh
X,LowQ :優先度のより低いネットワークのセルを再選択する際のSqual閾値。より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
【0040】
<ハンドオーバに用いられる調整パラメータ>
−Hys :より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
−Off(a3-Offset):より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
【0041】
<セル再選択に用いられる調整パラメータ(UTRAN→E-UTRAN)>
−Thresh
Serving,LowP 、Thresh
Serving,LowQ:優先度のより低いネットワークのセルを再選択する際のSrxlev閾値とSqual閾値。より高い移動速度に対して、より大きな値が選択される
−Thresh
X,high、Thresh
X,high2、Thresh
X,low、Thresh
X,low2:優先度のより高い、あるいは、より低いネットワークのセルを再選択する際のSrxlev閾値とSqual閾値。より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
【0042】
<ハンドオーバに用いられる調整パラメータ(UTRAN→E-UTRAN、Event3a)>
−H
3a :イベント3a用のヒステリシスパラメータ。より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
−Q
Used :使用されたUTRAN周波数の品質推定値。より高い移動速度に対して、より大きな値が選択される
−M
OtherRAT:他のシステムのセルの測定量。より高い移動速度に対して、より小さな値が選択される
【0043】
また、「Event A1」〜「Event A5」、「Event B1」、「Event B2」等のイベントにおいて、より高い移動速度に対し、より小さなtimeToTrigger、Hys(ヒステリシス値)、ReportInterval(レポート間隔)が選択されてもよい。
【0044】
さらに、「Event A1」〜「Event A5」、「Event B1」、「Event B2」等のイベントにおいて、閾値パラメータが、それぞれ、以下のように選択されてもよい。
−Event A1:より高い移動速度に対して、より低いThreshが選択される
−Event A2:より高い移動速度に対して、より高いThreshが選択される
−Event A4:より高い移動速度に対して、より低いThreshが選択される
−Event A5:より高い移動速度に対して、より高いThresh1と、より低いThresh2が選択される
−Event B1:より高い移動速度に対して、より低いThreshが選択される
−Event B2:より高い移動速度に対して、より高いThresh1と、より低いThresh2が選択される
以下の実施例では、「Event 3A」のtimeToTrigger値が選択される例を用いて説明する。
【0045】
第2格納部170は、
図3のRFICモジュール16内のROM(図示しない)によって実現され、入退場情報171を格納する。入退場情報171は、改札機500によって書き込まれる、改札の入退場情報を含み、
図2に例示するように、入場又は退場した駅の駅名(識別子)、入場又は退場した時刻、運賃などの情報を含む。なお、第2格納部170は、入退場情報171のほか、RFICモジュール16に固有の識別子や、電子マネーの残高情報を含み得る。
【0046】
無線受信部101及び無線送信部102は、主に通信モジュール14、アンテナ15及びCPU11の処理によって実現され、基地局と通信するための通信インターフェースを提供する。
【0047】
接続制御部103は、主にCPU11の処理によって実現される。接続制御部103は、無線受信部101により受信した電波の無線品質の情報と、パラメータ選択部104によって選択された調整パラメータの情報を用いて、セルの選択・再選択、ハンドオーバに係るイベント(例えば、上述した「Event 3A」)の検出を行う。
【0048】
接続制御部103は、セルのランク付けを行うことにより、セルの再選択を行う。セルのランク付けは、上述の式(1)(2)に従ってなされる。ここで、ランク付けのために式(1)(2)で用いられるQ
hyst及びT
reselectionEUTRAの値は、パラメータ選択部104の選択した調整パラメータにより、更新された値が用いられる(式(4)−式(9)参照)。
【0049】
また、接続制御部103は、上述の式(3)が、パラメータ選択部104の選択したtimeToTrigger時間満たされると、「Event 3A」が発生したことを基地局にレポートする。
【0050】
このように、接続制御部103は、接続すべきセル(基地局)を決定する決定部としての役割と、イベントの検出に応じてレポートを作成して基地局に送信する、レポート作成部(レポート送信部)としての役割を有する。
【0051】
また、接続制御部103は、基地局からの指示に応じて、ハンドオーバに必要な同期処理や再接続処理を行うことができる。
【0052】
なお、セルの選択・再選択、ハンドオーバに係るイベントの検出、該イベントに係るレポートの送信等に係る手順の詳細は、3GPPに規定されているため、ここでの説明は省略する。
【0053】
また、接続制御部103は、後述するパラメータ選択部104により、移動速度が「高速」又は「中速」であると決定されると、現在通信中のセルと隣接するセルの両方に対して用意されている、イベント発生のための条件を規定する閾値の一方を無視しても良い。このような閾値を有するイベントの例として、「Event A5」、「Event B2」、「Evernt 3A」がある。接続制御部103は、移動速度が「高速」又は「中速」である場合に、これらのイベント発生の条件となる一方の閾値を無視することで、遷移のしやすさを向上させることができる。
【0054】
パラメータ選択部104は、主にCPU11の処理によって実現され、第1格納部150に格納されたセル遷移情報151を用いて、現在の移動機100の移動速度を決定し、対応する調整パラメータを選択する。移動速度と、選択される調整パラメータとの関係は、以下の通りである。
−高速:sf-High(Q
hyst向け)、sf-High(T
reselectionEUTRA向け)、timeToTrigger(高速)
−中速:sf-Medium(Q
hyst向け)、sf-Medium(T
reselectionEUTRA向け)、timeToTrigger(中速)
−通常:timeToTrigger(通常)(Q
hyst及びT
reselectionEUTRAに対する修正は行われない)
ここで、パラメータ選択部104は、移動機100の移動速度を、一定の時間T
CRmax内のセル遷移回数により決定する。具体的には、パラメータ選択部104は、セル遷移回数が、所定の回数N
CR_Hを上回った場合に、移動速度が「高速」であると決定する。また、パラメータ選択部104は、セル遷移回数が、所定の回数N
CR_Mを上回った場合に、移動速度が「中速」であると決定する。
【0055】
パラメータ選択部104は、移動速度を決定すると、第1格納部150の調整パラメータ情報152を参照し、各移動速度に対応した調整パラメータを選択する。そして、パラメータ選択部104は、選択した調整パラメータを、接続制御部103に渡す。
【0056】
なお、詳しくは後述するが、パラメータ選択部104は、切替部107より指示を受けている場合にのみ、移動速度が高速又は中速であると判定し、移動速度に応じて異なる調整パラメータを選択できる。一方で、切替部107より指示を受けていない場合には、移動速度によらず、移動速度が「通常」であるものとして、調整パラメータを選択する。すなわち、移動速度が「通常」である場合には、対応するtimeToTrigger値が選択され、Q
hyst及びT
reselectionEUTRAに対する修正値は選択されない(あるいは、Q
hystに対する修正パラメータとして0を、T
reselectionEUTRAに対する修正パラメータとして1を選択するようにしても良い)。
【0057】
なお、上述したように、timeToTrigger以外の、任意の調整パラメータが、パラメータ選択部104によって選択されてもよい。
【0058】
非接触通信部105は、主にRFICモジュール16及びアンテナ17によって実現され、改札機500から送信された信号を読み取り、入退場情報を第2格納部170の入退場情報171として書き込む。非接触通信部105は、駅の改札の内側に入るとき、入場情報(入場した駅の名称、時刻等)を受信し、その情報を入退場情報171として書き込む。また、非接触通信部105は、駅の改札の外側に出るとき、退場情報(退場した駅の名称、時刻等)を受信し、その情報を入退場情報171として書き込む。
【0059】
検出部106は、主にCPU11の処理によって実現され、非接触通信部105による改札機500との通信を検出する。検出部106は、非接触通信部105が、入場情報、又は、退場情報を受信したことを検出し、その旨を、切替部107に通知する。
【0060】
切替部107は、主にCPU11の処理によって実現され、検出部106から、入場情報を受信した旨の通知を受けると、パラメータ選択部104に、移動速度が高速又は中速であると判定し、その結果に応じて異なる調整パラメータを選択するよう指示する。言い換えると、切替部107は、調整パラメータ選択によるSpeed dependent scalingを有効にするよう、パラメータ選択部104のモードを切り替える。従って、接続制御部103は、移動速度に応じて異なるパラメータを使用して、セル再選択やハンドオーバーを行う。
【0061】
一方、切替部107は、検出部106から、退場情報を受信した旨の通知を受けると、パラメータ選択部104に、移動速度によらず、移動速度が「通常」の場合の調整パラメータを選択するよう指示する。言い換えると、切替部107は、調整パラメータ選択によるSpeed dependent scalingを無効にするよう、パラメータ選択部104のモードを切り替える。従って、接続制御部103は、移動速度によらず、同一のパラメータを基準に、セル再選択やハンドオーバーを行う。
【0062】
以上の機能により、本発明の一実施形態における移動機100は、鉄道駅の改札の内側に入場した場合に、移動状態が「高速」又は「中速」であると決定し、これに応じたセル遷移を行うことが可能になる。一方で、鉄道駅の改札の外側に退場した場合には、移動状態が「高速」又は「中速」と決定されず、不用意なセル遷移がなされる可能性が低減される。
【0063】
≪ 4.第1実施形態における移動機の動作例 ≫
次に、
図5、
図6を用いて、本発明の第1実施形態における移動機100及び無線通信システム1の動作例を説明する。
【0064】
図5は、本発明の第1実施形態における移動機100の処理フローを表す図である。
【0065】
まず、検出部106が、改札機500から入場情報を受信したことを検出すると(ステップS101のYes)、切替部107は、パラメータ選択部104に対して、移動速度に応じて異なる調整パラメータを選択するよう指示する(すなわち、Speed dependent scalingを有効にする)(ステップS102)。そうでない場合には、再びステップS101に戻る。
【0066】
次に、パラメータ選択部104は、第1格納部150のセル遷移情報151を参照し、一定時間T
CRmax内のセル遷移の回数が、一定値N
CR_Hを上回っている場合に(ステップS103のYes)、調整パラメータ(高速)を選択し、その調整パラメータを接続制御部103に渡す(ステップS104)。そうでない場合には、ステップS105に進む。
【0067】
次に、パラメータ選択部104は、第1格納部150のセル遷移情報151を参照し、一定時間T
CRmax内のセル遷移の回数が、一定値N
CR_Mを上回っている場合に(ステップS105のYes)、調整パラメータ(中速)を選択し、その調整パラメータを接続制御部103に渡す(ステップS106)。そうでない場合には、パラメータ選択部104は、調整パラメータ(通常)を選択し、その調整パラメータを接続制御部103に渡す。
【0068】
次に、検出部106が、改札機500から退場情報を受信したことを検出すると(ステップS108のYes)、切替部107は、パラメータ選択部104に対して、移動速度によらず、移動速度が「通常」の場合の調整パラメータを選択するよう指示する(すなわち、Speed dependent scalingを無効にする)(ステップS109)。そうでない場合には、ステップS103に戻る。
【0069】
以上の処理により、改札機500の入退場に合わせて、Speed dependent scalingの有効/無効を切り替え、特に高速での移動が見込まれない、改札の外側の領域では、セル選択やハンドオーバが頻繁に行われにくくすることができる。結果として、不必要なセル遷移による、移動機100のスループット低下や、バッテリの消耗を抑えることができる。
【0070】
図6は、本発明の第1実施形態における無線通信システム1の動作例を表すシーケンス図である。
図6では、移動機100と基地局又はコアネットワークとの間でなされる、接続の確立や切断シーケンス、ハンドオーバを実行する際のシーケンス等の記載は、省略している。
【0071】
まず、移動機100の接続制御部103は、3GPPで規定されるセル選択の手順を経て、基地局310と接続を確立し(ステップS201)、第1格納部150に格納されたセル遷移情報151を更新する(ステップS202)。
【0072】
次に、移動機100の非接触通信部105は、改札機500から入場情報を受信し、その情報を、第2格納部170に、入退場情報171として書き込む(ステップS203)。ここで、上述したように、Speed dependent scalingの機能が有効化され、移動機の移動速度に応じた調整パラメータが選択されるようになる。
【0073】
その後、移動機100の移動に伴い、接続制御部103は、基地局320との接続を確立したものとする(ステップS204)。接続制御部103は、遷移情報151を更新する(ステップS205)。
【0074】
ここで、移動機100のパラメータ選択部104は、セル遷移情報151を参照し、一定時間T
CRmax内のセル遷移の回数が、一定値N
CR_Hを上回っていることを検出したものとする。パラメータ選択部104は、調整パラメータ(高速)を選択し、その調整パラメータを接続制御部103に渡す(ステップS206)。この間、移動機100と基地局320との間で、データ通信がなされているものとする。
【0075】
移動機100の接続制御部103は、受け取った調整パラメータを用いて、式(3)の評価を行い、「Event 3A」を検出する(ステップS207)。そして、接続制御部103は、基地局320にレポートを送信する(ステップS208)。
【0076】
レポートを受信した基地局320は、移動機100が、基地局330へのハンドオーバを実行することを決定し、ハンドオーバに係る処理を実行するよう、移動機100に指示する(図示しない)。移動機100の接続制御部103は、基地局320からの指示に応じて、基地局330へのハンドオーバに係る処理を実行し、基地局330と接続する(ステップS209)。
【0077】
その後、移動機100の非接触通信部105は、改札機500から退場情報を受信し、その情報を、第2格納部170に、入退場情報171として書き込む(ステップS210)。ここで、上述したように、Speed dependent scalingの機能が無効化され、移動機の移動速度に応じた調整パラメータが選択されるようになる。
【0078】
以上のように、本発明の第1実施形態における無線通信システム1では、改札の入退場に合わせて、セル遷移の頻度を制御するSpeed dependent scaling機能の有効/無効を切り替える。これにより、移動機100は、鉄道を利用した高速移動中にのみ、セル遷移の頻度を高めることを可能になり、鉄道を利用しない歩行時など、通常の移動速度での移動中に、不用意なセル遷移を行わない。その結果、移動機100のスループット低下やバッテリの消耗を抑えることができるという利点が得られる。
【0079】
≪ 5.第2実施形態 ≫
次に、
図7−
図10を用いて、本発明の第2実施形態における移動機100A及び無線通信システム1Aを説明する。本実施形態では、移動機100Aは、鉄道駅に設置された二種類の改札機500A、500Bから、入退場情報を受信する。改札機500Aは、新幹線に代表される、高速鉄道向けの改札機であり、改札機500Bは、在来線に代表される、通常の鉄道向けの改札機である。以下、通常の鉄道向けの改札機のことを、高速鉄道向けの改札機と対比させるために、普通鉄道と呼ぶことにする。なお、移動機100Aのハードウェア構成は、
図3に示したように、移動機100のハードウェア構成と同様である。
【0080】
≪ 機能 ≫
まず、
図7を用いて、本発明の第2実施形態における移動機100Aの機能を説明する。
【0081】
移動機100Aの非接触通信部101は、二種類の改札機500A、500Bから、入退場情報を受信し、第2格納部170に、入退場情報171として格納する。
【0082】
移動機100Aの検出部103Aは、非接触通信部101が、二種類の改札機500A、500Bから入退場情報を受信したことを検出し、その旨を、パラメータ選択部104Aに通知する。
【0083】
移動機100Aのパラメータ選択部104Aは、検出部103Aが改札機からの入退場情報の受信を検出すると、第1格納部150の調整パラメータ情報152に格納された調整パラメータを選択し、選択した調整パラメータを接続制御部103Aに渡す。
図10は、検出部103Aが検出した入退場情報の内容に応じて選択される調整パラメータとの関係を表す。
【0084】
図10に示されるように、パラメータ選択部104Aは、改札機500A(高速鉄道向け改札)から入場情報を受信すると、調整パラメータ(高速)を選択する。また、パラメータ選択部104Aは、改札機500B(通常の鉄道向け改札)から入場情報を受信すると、調整パラメータ(中速)を選択する。
【0085】
ここで、改札機500A(高速鉄道向け改札)から退場情報を受信すると、調整パラメータ(中速)又は調整パラメータ(通常)が選択される。これは、改札機500Aから「退場」し、同時に改札機500Bから「入場」した場合には、調整パラメータ(中速)が選択され、改札機500Aから、直接外部へ「退場」した場合には、調整パラメータ(通常)が選択されることを表している。
【0086】
移動機100Aの接続制御部103Aは、Speed dependent scalingの手順によらず、パラメータ選択部104Aから受信した調整パラメータを常に用いて、セルの再選択のためのランク付け及びハンドオーバのためのイベント検出を行う。
【0087】
以上の機能により、本発明の一実施形態における移動機100Aは、鉄道による高速移動が想定されない場合には、セル遷移の頻度を落とす一方、鉄道の改札の内部では、鉄道の速度に応じて、セル遷移が行われやすいように、セル再選択又はハンドオーバを実行することができる。
【0088】
≪ 動作例 ≫
次に、
図8、
図9を用いて、本発明の第2実施形態における移動機100A及び無線通信システム1Aの動作例を説明する。
【0089】
図8は、本発明の第2実施形態における移動機100Aの処理フローを表す図である。
【0090】
まず、検出部103Aが、改札機500A(高速鉄道向け改札機)から、入場情報を受信したことを検出すると(ステップS301のYes)、パラメータ選択部104Aは、調整パラメータ(高速)を選択する(ステップS302)。そうでない場合には、ステップS306に進み,調整パラメータ(中速)を選択する。
【0091】
ステップS302に続いて、改札機500B(普通鉄道の改札機)から、入場情報を受信(同時に改札機500Aから退場情報を受信)した場合(ステップS303のYes)、ステップS306に進む。そして、パラメータ選択部104Aは、調整パラメータ(中速)を選択する(ステップS306)。
【0092】
一方、ステップS302に続いて、検出部103Aが、改札機Bから、入場情報を受信せず(ステップS303のNo)、改札機500Aから退場情報を受信した場合(ステップS304のYes)、調整パラメータ(通常)を選択し(ステップS305)、処理を終了する。また、改札機500Aから退場情報を受信しなかった場合には、ステップS303に戻る。
【0093】
ステップS306において、調整パラメータ(中速)が選択された後、検出部103Aが、改札機500Aから、入場情報を受信すると(ステップS307のYes)、ステップS302に戻り、調整パラメータ(高速)を選択する。
【0094】
一方、検出部103Aが、改札機500Aから、入場情報を受信せず(ステップS307のNo)、改札機500Bから退場情報も受信した場合(ステップS304のYes)、調整パラメータ(通常)を選択し(ステップS305)、処理を終了する。また、改札機500Bから退場情報を受信しなかった場合には、ステップS307に戻る。
【0095】
以上の処理により、移動機100Aは、例えば新幹線と在来線のように、移動速度の異なる移動手段ごとに、セル遷移のしやすさを制御することができる。その結果として、移動手段の利用時には、スムーズなセル遷移が実現される一方で、高速な移動手段を使用していないときには、セル遷移を抑制することにより、不要なセル遷移に起因するスループットの低下を防ぐことができる。
【0096】
図9は、本発明の第2実施形態における無線通信システム1Aの動作例を表すシーケンス図である。
図9では、移動機100Aと基地局又はコアネットワークとの間でなされる、接続の確立や切断シーケンス、ハンドオーバを実行する際のシーケンス等の記載は、省略している。
【0097】
まず、移動機100Aの接続制御部103Aは、3GPPで規定されるセル選択の手順を経て、基地局310と接続を確立する(ステップS401)。次に、移動機100Bの非接触通信部105は、改札機500A(高速鉄道向け改札機)から入場情報を受信し、その情報を、第2格納部170に、入退場情報171として書き込む(ステップS402)。また、移動機100Aのパラメータ選択部104Aは、調整パラメータ(高速)を選択し、その調整パラメータを接続制御部103Aに渡す(ステップS403)。
【0098】
次に、移動機100Aの接続制御部103Aは、受け取った調整パラメータを用いて、式(3)の評価を行い、「Event 3A」を検出する(ステップS404)。そして、接続制御部103Aは、基地局310にレポートを送信する(ステップS405)。レポートを受信した基地局310は、移動機100Aが、基地局320へのハンドオーバを実行することを決定し、ハンドオーバに係る処理を実行するよう、移動機100Aに指示する(図示しない)。移動機100Aの接続制御部103Aは、基地局310からの指示に応じて、基地局320へのハンドオーバに係る処理を実行し、基地局320と接続する(ステップS406)。
【0099】
次に、移動機100Aの非接触通信部105は、改札機500A(高速鉄道向け改札機)から退場情報を受信し(ステップS407)、同時に、改札機500B(普通鉄道向け改札機)から入場情報を受信する(ステップS408)。そして、移動機100Aのパラメータ選択部104Aは、調整パラメータ(中速)を選択し、その調整パラメータを接続制御部103Aに渡す(ステップS409)。
【0100】
次に、移動機100Aの接続制御部103Aは、受け取った調整パラメータを用いて、式(3)の評価を行い、再び「Event 3A」を検出する(ステップS410)。そして、接続制御部103Aは、基地局320にレポートを送信する(ステップS411)。レポートを受信した基地局320は、移動機100Aが、基地局330へのハンドオーバを実行することを決定し、ハンドオーバに係る処理を実行するよう、移動機100Aに指示する(図示しない)。移動機100Aの接続制御部103Aは、基地局320からの指示に応じて、基地局330へのハンドオーバに係る処理を実行し、基地局330と接続する(ステップS412)。
【0101】
その後、移動機100Aの非接触通信部105は、改札機500Bから退場情報を受信する(ステップS413)。そして、移動機100Aのパラメータ選択部104Aは、調整パラメータ(通常)を選択し、その調整パラメータを接続制御部103Aに渡す(ステップS414)。
【0102】
以上のように、本発明の第2実施形態における無線通信システム1Aでは、新幹線や在来線のような、移動手段の速度に応じて、移動機のセル遷移の頻度を変化させることができる。一方で、移動手段を用いていない場合には、移動機のセル遷移の頻度を抑えるよう、パラメータを選択する。これにより、移動機の不用意なセル遷移が抑制され、スループットの低下やバッテリの消耗を抑制することができる。
【0103】
≪ 6.第3実施形態 ≫
次に、
図10−
図14を用いて、本発明の第3実施形態における移動機100B及び無線通信システム1Bを説明する。本実施形態では、移動機100Bの第2格納部170には、入退場情報171に加えて、乗車券情報172が格納されている。乗車券情報172は、鉄道駅に設置された券売機等を通じて書き込まれた、特急券の情報を格納する。特急券は、特急料金の必要となる列車に乗車するために必要となる。移動機100Bのハードウェア構成は、
図3に示したように、移動機100のハードウェア構成と同様である。
【0104】
≪ 機能 ≫
まず、
図11を用いて、本発明の第3実施形態における移動機100Bの機能を説明する。上述したように、移動機100Bの第2格納部170には、乗車券情報172が予め格納されている。
【0105】
移動機100Bの検出部103Bは、非接触通信部101が改札機500から入退場情報を受信したことを検出すると、第2格納部170の乗車券情報172として、特急券の情報が書き込まれているかどうかも検出し、その内容を、パラメータ選択部104Bに通知する。
【0106】
移動機100Bのパラメータ選択部104Bは、検出部103Bが検出した入退場情報及び特急券の情報の書き込みの有無に応じて、第1格納部150の調整パラメータ情報152に格納された調整パラメータを選択し、選択した調整パラメータを接続制御部103Bに渡す。
図14は、検出部103Bが検出した入退場情報の内容と、選択される調整パラメータとの関係を表す。
【0107】
図14に示されるように、パラメータ選択部104Bは、改札機500から入場情報を受信したとき、乗車券情報172に、特急券の情報が含まれる場合に、調整パラメータ(高速)を選択し、そうでない場合に、調整パラメータ(中速)を選択する。また、パラメータ選択部104Bは、改札機500から退場情報を受信したとき、調整パラメータ(通常)を選択する。
【0108】
移動機100Bの接続制御部103Bは、Speed dependent scalingの手順によらず、パラメータ選択部104Bから受信した調整パラメータを常に用いて、セルの再選択のためのランク付け及びハンドオーバのためのイベント検出を行う。
【0109】
以上の機能により、本発明の一実施形態における移動機100Bは、鉄道駅の改札を通過するまでは、セル遷移の頻度を低く設定し、鉄道駅の改札を通過すると、特急券の有無に応じて、セル遷移の頻度を高く設定することができる。これにより、鉄道乗車時には適切なセル遷移が行われる一方、鉄道乗車時でない場合には、不要なセル遷移が抑制される。
【0110】
≪ 動作例 ≫
次に、
図12、
図13を用いて、本発明の第3実施形態における移動機100B及び無線通信システム1Bの動作例を説明する。
【0111】
図12は、本発明の第3実施形態における移動機100Bの処理フローを表す図である。
【0112】
まず、検出部103Bが、改札機500から、入場情報を受信したことを検出すると(ステップS501のYes)、ステップS502に進む。そうでない場合には、ステップS501を再度実行する。
【0113】
次に、検出部103Bが、第2格納部170の乗車券情報172に特急券の情報が含まれていることを検出した場合には(ステップS502のYes)、パラメータ選択部104Bは、調整パラメータ(高速)を選択する(ステップS503)。そうでない場合には、ステップS306に進み,調整パラメータ(中速)を選択する(ステップS504)。
【0114】
そして、検出部103Bが、改札機500から、退場情報を受信したことを検出すると(ステップS505のYes)、パラメータ選択部104Bは、調整パラメータ(通常)を選択し(ステップS506)、処理を終了する。そうでない場合には、ステップS505を再度実行する。
【0115】
以上の処理により、特急券の有無に応じて、セル遷移の頻度を制御することができる一方、鉄道に乗車していない場合には、セル遷移の頻度を抑制することができる。
【0116】
図13は、本発明の第3実施形態における無線通信システム1Bの動作例を表すシーケンス図である。
図13では、移動機100Bと基地局又はコアネットワークとの間でなされる、接続の確立や切断シーケンス、ハンドオーバを実行する際のシーケンス等の記載は、省略している。
【0117】
まず、移動機100Bの接続制御部103Bは、3GPPで規定されるセル選択の手順を経て、基地局310と接続を確立する(ステップS601)。次に、移動機100Bの非接触通信部105は、改札機500から入場情報を受信し、その情報を、第2格納部170に、入退場情報171として書き込む(ステップS602)。ここで、検出部103Bは、第2格納部170に格納された乗車券情報に、特急券の情報が含まれることを検出する(ステップS603)。そこで、移動機100Bのパラメータ選択部104Bは、調整パラメータ(高速)を選択し、その調整パラメータを接続制御部103Bに渡す(ステップS604)。
【0118】
次に、移動機100Bの接続制御部103Bは、受け取った調整パラメータを用いて、式(3)の評価を行い、「Event 3A」を検出する(ステップS605)。そして、接続制御部103Bは、基地局310にレポートを送信する(ステップS606)。レポートを受信した基地局310は、移動機100Bが、基地局320へのハンドオーバを実行することを決定し、ハンドオーバに係る処理を実行するよう、移動機100Bに指示する(図示しない)。移動機100Bの接続制御部103Bは、基地局310からの指示に応じて、基地局320へのハンドオーバに係る処理を実行し、基地局320と接続する(ステップS607)。
【0119】
次に、移動機100Bの非接触通信部105は、改札機500から退場情報を受信する(ステップS608)。そして、移動機100Bのパラメータ選択部104Bは、調整パラメータ(通常)を選択し、その調整パラメータを接続制御部103Bに渡す(ステップS609)。
【0120】
以上のように、本発明の第3実施形態における無線通信システム1Bでは、移動機に格納された特急券の情報を用いて、セル遷移の頻度を切り替える。これによって、移動速度に応じたセル遷移のパラメータ設定が可能になる。一方で、鉄道のような移動手段を利用しないときには、セル遷移の頻度を落とすことにより、不要なセル遷移を抑制することができる。その結果、不用意なセル遷移による、スループットの低下や、バッテリの消耗を、抑制することができる。