特許第6227281号(P6227281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227281
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】壁コーナ部の下地材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/06 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   E04F13/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-110375(P2013-110375)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-227782(P2014-227782A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390035253
【氏名又は名称】キョーセー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】南谷 英臣
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−063830(JP,A)
【文献】 特開平08−035311(JP,A)
【文献】 実開平02−103448(JP,U)
【文献】 特開2006−083655(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3100004(JP,U)
【文献】 特開平10−169148(JP,A)
【文献】 実開平06−010465(JP,U)
【文献】 実開平06−035475(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂から成る一対の板状部の一側部が略直角に連なってL字状断面を成す長尺の基材であって、各板状部複数の透孔が形成される基材と、壁コーナ部に配設された状態で、前記複数の透孔内に充填された接着剤であって、該接着剤が硬化することによって、前記基材が前記壁コーナ部に接合される接着剤と、を含む壁コーナ部の下地材であって、
前記複数の透孔は、
前記一側部に対して幅方向に関して反対側の他側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第1透孔と、
前記第1透孔に対して幅方向に関して前記一側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第2透孔と、
前記第2透孔に対して幅方向に関して前記一側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第3透孔とを備え、
前記第2透孔は、長手方向において、隣接する2つの前記第1透孔の間でかつ隣接する2つの前記第3透孔の間に形成されており、
前記第1透孔と前記第2透孔と前記第3透孔とは、正面視したときの形状が閉曲線であり、
前記基材の長手方向一端部を固定端とし、前記基材の長手方向他端部を自由端としたとき、予め定める最大曲げ荷重に対して自立可能な曲げ剛性を有するように、各板状部に形成されていることを特徴とする壁コーナ部の下地材。
【請求項2】
前記第2透孔の前記閉曲線は、円形であることを特徴とする請求項1に記載の壁コーナー部の下地材。
【請求項3】
前記第1透孔の前記閉曲線および前記第3透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる楕円であることを特徴とする請求項1または2に記載の壁コーナー部の下地材。
【請求項4】
前記第1透孔の前記閉曲線および前記第3透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる長円であることを特徴とする請求項1または2に記載の壁コーナー部の下地材。
【請求項5】
合成樹脂から成る一対の板状部の一側部が略直角に連なってL字状断面を成す長尺の基材であって、各板状部に複数の透孔が形成される基材と、壁コーナ部に配設された状態で、前記複数の透孔内に充填された接着剤であって、該接着剤が硬化することによって、前記基材が前記壁コーナ部に接合される接着剤と、を含む壁コーナ部の下地材であって、
前記複数の透孔は、
前記一側部に対して幅方向に関して反対側の他側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第1透孔と、
前記第1透孔に対して幅方向に関して前記一側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第2透孔と、を備え、
前記第2透孔は、長手方向において、隣接する2つの前記第1透孔の間に形成されており、
前記第1透孔と前記第2透孔とは、正面視したときの形状が閉曲線であり、
前記基材の長手方向一端部を固定端とし、前記基材の長手方向他端部を自由端としたとき、予め定める最大曲げ荷重に対して自立可能な曲げ剛性を有するように、各板状部に形成されており、
前記第1透孔から幅方向に関する前記他側部までの寸法は、前記第2透孔から幅方向に関する前記一側部までの寸法よりも大きいことを特徴とする壁コーナ部の下地材。
【請求項6】
前記第1透孔の前記閉曲線および前記第2透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる楕円であることを特徴とする請求項5に記載の壁コーナー部の下地材。
【請求項7】
前記第1透孔の前記閉曲線および前記第2透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる長円であることを特徴とする請求項5に記載の壁コーナー部の下地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い曲げ剛性および接合強度を有する壁コーナ部の下地材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁コーナ部には、一般住宅用建物の壁に壁紙(「クロス」ともいう)を貼るときに、壁コーナ部の凹凸などを覆うために、L字状断面を成す長尺の下地材が接合される。このような下地材は、合成樹脂から成り、出隅および入隅のいずれにも使用され、壁コーナ部に接着剤によって接合され、美観を低下させないために、床から天井にわたって接合され、1本の長さは、たとえば2500mm程度である。
【0003】
このような下地材は、壁紙を貼り付けた際に段差が発生することを防ぐために、肉厚が薄く、曲げ剛性が低い。そのため、施工時に作業者が把持したとき、不用意に移動させると、自己の慣性力によって容易に折れ曲ってしまい、現場での扱いを慎重に行わなければならず、作業性が悪いという問題がある。
【0004】
また、壁コーナ部と下地材との接合が不十分である場合、後に浮きが発生することがある。そのため、下地材には、接着剤を充填して壁への接合力を向上するために、複数の透孔が設けられている。このような透孔は、壁コーナ部への接合力を向上するために数を多くし過ぎると、下地材の曲げ剛性が低くなり、壁コーナ部への取付け時に、折れ曲らないように慎重に持ち運ぶ必要が生じ、取付け時の作業性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−63830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、薄くかつ高い曲げ剛性および接合強度を有し、取付け時の作業性を向上することができる壁コーナ部の下地材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、合成樹脂から成る一対の板状部の一側部が略直角に連なってL字状断面を成す長尺の基材であって、各板状部複数の透孔が形成される基材と、壁コーナ部に配設された状態で、前記複数の透孔内に充填された接着剤であって、該接着剤が硬化することによって、前記基材が前記壁コーナ部に接合される接着剤と、を含む壁コーナ部の下地材であって、
前記複数の透孔は、
前記一側部に対して幅方向に関して反対側の他側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第1透孔と、
前記第1透孔に対して幅方向に関して前記一側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第2透孔と、
前記第2透孔に対して幅方向に関して前記一側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第3透孔とを備え、
前記第2透孔は、長手方向において、隣接する2つの前記第1透孔の間でかつ隣接する2つの前記第3透孔の間に形成されており、
前記第1透孔と前記第2透孔と前記第3透孔とは、正面視したときの形状が閉曲線であり、
前記基材の長手方向一端部を固定端とし、前記基材の長手方向他端部を自由端としたとき、予め定める最大曲げ荷重に対して自立可能な曲げ剛性を有するように、各板状部に形成されていることを特徴とする壁コーナ部の下地材である。
【0008】
また本発明の前記第2透孔の前記閉曲線は、円形であることを特徴とする。
また本発明の前記第1透孔の前記閉曲線および前記第3透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる楕円であることを特徴とする
また本発明の前記第1透孔の前記閉曲線および前記第3透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる長円であることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、合成樹脂から成る一対の板状部の一側部が略直角に連なってL字状断面を成す長尺の基材であって、各板状部に複数の透孔が形成される基材と、壁コーナ部に配設された状態で、前記複数の透孔内に充填された接着剤であって、該接着剤が硬化することによって、前記基材が前記壁コーナ部に接合される接着剤と、を含む壁コーナ部の下地材であって、
前記複数の透孔は、
前記一側部に対して幅方向に関して反対側の他側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第1透孔と、
前記第1透孔に対して幅方向に関して前記一側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第2透孔と、を備え、
前記第2透孔は、長手方向において、隣接する2つの前記第1透孔の間に形成されており、
前記第1透孔と前記第2透孔とは、正面視したときの形状が閉曲線であり、
前記基材の長手方向一端部を固定端とし、前記基材の長手方向他端部を自由端としたとき、予め定める最大曲げ荷重に対して自立可能な曲げ剛性を有するように、各板状部に形成されており、
前記第1透孔から幅方向に関する前記他側部までの寸法は、前記第2透孔から幅方向に関する前記一側部までの寸法よりも大きいことを特徴とする壁コーナ部の下地材である。
また本発明の前記第1透孔の前記閉曲線および前記第2透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる楕円であることを特徴とする。
また本発明の前記第1透孔の前記閉曲線および前記第2透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる長円であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下地材が予め定める最大曲げ荷重に対して自立可能な曲げ剛性を有するように、前記一側部に対して幅方向に関して反対側の他側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第1透孔と、前記第1透孔に対して幅方向に関して前記一側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第2透孔と、前記第2透孔に対して幅方向に関して前記一側部側に長手方向に間隔をあけて複数形成される第3透孔とを備え、前記第2透孔は、長手方向において、隣接する2つの前記第1透孔の間でかつ隣接する2つの前記第3透孔の間に形成されるので、下地材を壁コーナ部に接合するために、作業者が1本の下地材の任意の場所を手で把持して持ち運ぶために、下地材を水平な状態から鉛直な状態に姿勢を変化させても、下地材は慣性力によって折れ曲ってしまうことが防がれる。また、前記複数の透孔は、基材の各板状部に形成されるので、下地材は、作業者が前述のように持ち運ぶ際に、下地材を把持して姿勢を変化させたときに、その下地材に捩れ荷重が作用しても、下地材は自己の弾性回復力によって捩れ荷重に抗することができ、捩れによって折れ曲ってしまうことを防止することができる。
【0011】
また本発明によれば、前記第1透孔と前記第2透孔と前記第3透孔とは、正面視したときの形状が閉曲線を成すので、作業者が前述のように持ち運ぶ際の曲げ荷重に対して、下地材の各透孔の周囲に応力集中によって過度に高い応力が発生することが防がれ、より一層高い曲げ強度を有する下地材を実現することができる。
【0012】
また本発明によれば、前記第2透孔の前記閉曲線が円形であるので、下地材の各透孔の周囲に応力集中によって過度に高い応力が発生することなく、基材の各透孔に臨む内周面と接着剤との接触面積を大きくすることができる。これによって、下地材と壁コーナ部との接合強度を向上することができるとともに、より一層高い曲げ強度を有する下地材を実現することができる。
【0013】
また本発明によれば、前記第1透孔の前記閉曲線および前記第3透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる楕円であるので、各板状体の幅方向により大きな有効断面積を得ることができる。これによって、下地材と壁コーナ部との接合強度を向上することができるとともに、曲げ剛性を高くして、より一層高い曲げ強度を有する下地材を実現することができる。
【0014】
また本発明によれば、前記第1透孔の前記閉曲線および前記第3透孔の前記閉曲線の少なくとも一方は、長手方向に延びる長円であるので、各板状体の幅方向により大きな有効断面積を得ることができる。これによって、下地材と壁コーナ部との接合強度を向上することができるとともに、曲げ剛性を高くして、より一層高い曲げ強度を有する下地材を実現することができる。
また本発明によれば、下地材が予め定める最大曲げ荷重に対して自立可能な曲げ剛性を有するように、前記一側部に対して幅方向に関して反対側の他側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第1透孔と、前記第1透孔に対して幅方向に関して前記一側部側に、長手方向に間隔をあけて複数形成される第2透孔と、を備え、前記第2透孔は、長手方向において、隣接する2つの前記第1透孔の間に形成されるので、下地材を壁コーナ部に接合するために、作業者が1本の下地材の任意の場所を手で把持して持ち運ぶために、下地材を水平な状態から鉛直な状態に姿勢を変化させても、下地材は慣性力によって折れ曲ってしまうことが防がれる。また前記複数の透孔は、基材の各板状部に形成されるので、下地材は、作業者が前述のように持ち運ぶ際に、下地材を把持して姿勢を変化させたときに、その下地材に捩れ荷重が作用しても、下地材は自己の弾性回復力によって捩れ荷重に抗することができ、捩れによって折れ曲ってしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の壁コーナ部の下地材1の一部を示す斜視図である。
図2】下地材1を一方の板状部2a側から見た正面図である。
図3】一方の板状部2a側から見た下地材1の一部を示す拡大正面図である。
図4】壁コーナ部W1に接合された下地材1を図3の切断面線IV−IVから見た拡大断面図である。
図5】壁コーナ部W1に接合された下地材1を図3の切断面線V−Vから見た拡大断面図である。
図6】粘着テープ7aの拡大断面図である。
図7】本発明の他の実施形態の下地材1Aを示す一方の板状部2a側から見た一部の正面図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態の下地材1Bに形成される第1透孔4aの形状を示す図である。
図9】本発明のさらに他の実施形態の下地材1Cに形成される第1透孔4aの形状を示す図である。
図10】本発明のさらに他の実施形態の下地材1Dに形成される第1透孔4aの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の壁コーナ部の下地材1の一部を示す斜視図であり、図2は下地材1を一方の板状部2a側から見た正面図である。本実施形態の壁コーナ部の下地材(以下、単位「下地材」と略記する)1は、建物の壁Wの出隅を成す壁コーナ部W1に接着剤によって、図1において上下方向である床から天井にわたって貼付けられて接合される。その後、壁Wには、壁コーナ部W1の下地材1を覆うようにして、壁紙が貼付けられる。ここに、壁コーナ部W1とは、2つの壁面W2,W3が交差する略鉛直な一直線状の交差線W4およびその近傍領域をいうものとする。このような下地材1は、出隅を成す壁コーナ部W1と同様に、壁Wの入隅を構成するコーナ部にも内外を反転させて用いることができる。前記壁Wは、たとえば石膏ボードによって実現される。
【0017】
前記下地材1は、合成樹脂から成り、一対の長尺の板状部2a,2bの長辺側の一側部が互いに略直角に連なってL字状断面を成す基材3に、該基材3の各板状部2a,2bに、長手方向に間隔をあけて、各板状部2a,2bをその厚み方向に貫通する複数の透孔4a,4bが形成された構成によって実現される。
【0018】
前記基材3を形成する材料として用いられる合成樹脂は、たとえば硬質ポリ塩化ビニルが用いられ、押出成形機によって押出成形されたL字状断面の基材3を、プレス加工によって、前記複数の透孔4a,4bが形成される。本発明の他の実施形態では、前記硬質ポリ塩化ビニルに代えて、ABS樹脂、ポリスチレン(略称PS)、ポリエチレンテレフタレート(略称PET)などが用いられてもよい。
【0019】
前記下地材1および各透孔4a,4bの寸法形状を一例として述べると、次のとおりである。前記下地材1の長手方向の寸法である長さLは、たとえばL=2500mmであり、各板状体2a,2bの前記長手方向に垂直な幅方向の寸法である幅Bは、たとえばB=30mmであり、各板状体2a,2bの厚み方向の寸法である厚さTは、たとえば直交部はT=0.8mm、幅方向側端部でT=0.5mmとなるように変化する構成である。
【0020】
図3は、一方の板状部2a側から見た下地材1の一部を示す拡大正面図である。前記複数の透孔4a,4bは、各板状体2a,2bの相互に垂直に連なる一側部に対して幅方向に関して反対側の他側部から前記幅方向に距離B1の位置を中心軸線とする第1列目の第1透孔4a1,4b1、第1列目の軸線から幅方向に一側部側へ距離B2の位置を中心軸線とする第2列目の第2透孔4a2,4b2、第2列目の軸線から幅方向に一側部側へ距離B3の位置を中心軸線とする第3列目の第3透孔4a3,4b3とによって構成される。
【0021】
前記距離B1は、たとえばB1=9mmであり、前記距離B2は、たとえばB2=6mmであり、前記距離B3は、たとえばB3=6mmである。
【0022】
第1透孔4a1,4b1は、長手方向に間隔L1をあけて複数形成される。第2透孔4a2,4b2は、長手方向に間隔L2をあけて複数形成される。第3透孔4a3,4b3は、前記第1透孔4a1,4b1と幅方向に並んで、すなわち長手方向の同一位置に同一の間隔(=L1)をあけて複数形成され、第1透孔4a1,4b1と第3透孔4a3,4b3との間の長手方向および幅方向の中央位置に、各第2透孔4a2,4b2が形成される。
【0023】
本実施形態では、第1および第3透孔4a1,4b1;4a3,4b3は、各板状体2a,2bを正面視したとき形状が、長手方向に延びる長円であり、各第2透孔4a2,4b2は、各板状体2a,2bを正面視したときの形状が、円形である。換言すると、第1および第3透孔4a1,4b1;4a3,4b3を規定する基材3の内周面は、正面視したとき、角のない閉曲線、すなわち長円として形成される。また、第2透孔4a2,4b2を規定する基材3の内周面は、正面視したとき、同様に角のない閉曲線、すなわち円形として形成される。
【0024】
壁コーナ部W1に臨む裏面には、帯状の粘着テープ7a,7bが長手方向に沿って貼り付けられる。各粘着テープ7a,7bは、現場で下地材1に貼り付けられてもよく、工場で下地材1の前記裏面に貼り付けられてもよい。
【0025】
図4は、壁コーナ部W1に接合された下地材1を図3の切断面線IV−IVから見た拡大断面図であり、図5は壁コーナ部W1に接合された下地材1を図3の切断面線V−Vから見た拡大断面図であり、図6は粘着テープ7aの拡大断面図である。前述の各粘着テープ7a,7bは、同一に構成されるので、一方の粘着テープ7aについて説明し、他方の粘着テープ7bの説明は省略する。前記粘着テープ7aは、基層10、基層10の一方表面上に設けられる第1粘着層11、基層10の他方表面上に設けられる第2粘着層12、および第1粘着層11の基層10とは反対側に表面に積層される剥離シート13を有する。
【0026】
前記粘着テープ7aの幅B4は、たとえばB4=5mmであり、長さL1の全長にわたって貼り付けられ、下地材1を壁コーナ部W1に取り付ける際に、剥離シート13を剥離して第1粘着層11を露出させ、壁コーナ部W1へ位置決めして押し付けることによって、下地材1が壁コーナ部W1に仮止めされる。その後、第1〜第3透孔4a1〜4a3,4b1〜4b3に接着剤が充填され、接着剤が硬化することによって、下地材1が壁コーナ部W1に接合される。
【0027】
前記粘着テープ7aにおいて、たとえば基層10は不織布から成り、第1および第2粘着層11,12はアクリル系接着剤から成り、剥離シート13は剥離剤が塗布された加工紙から成る。このような粘着テープ7aは、たとえば積水化学工業(株)社製、製品名「ダブルタックテープ」として商業的に入手可能である。
【0028】
前記第1〜第3透孔4a1〜4a3,4b1〜4b3に充填される接着剤は、たとえば乾燥硬化型接着剤としては、炭酸カルシウム系接着剤を用いることができ、反応硬化型接着剤としては、石膏系接着剤を用いることができる。
【0029】
本件発明者は、下地材1が壁コーナ部W1へ取付け作業時に折れ曲りに対する曲げ剛性を確認するため、コンピュータによる解析ソフトウェアであるアンシスジャパン社製「ANSYS8.1」によって、長さL=200mm、幅B=30mm、厚さT=0.6mmの下地材モデルの長手方向一端部を拘束し、長手方向他端部を自由端とし、この自由端に各板状部の主面に垂直に押圧力P=1Nを作用させたときの自由端の撓み量δy,δzを求めるシミュレーションを実施した。
【0030】
解析条件としては、同一の寸法、形状、材料から成る基材に、総開口面積が同一の第1〜第3透孔4a,4bを形成した下地材モデルを想定した。本発明に従う実施例および比較例について、次の表1のような結果を得た。なお、表1に記載される上記以外の符号は、図2に表記した。
【0031】
【表1】
【0032】
上記のシミュレーション結果によれば、透孔4a1,4b1;4a2,4b2;4a3,4b3が形成される下地材1の単位長さ(たとえば、100mm)あたりの全開口面積は同じであっても、第1および第3透孔4a1,4b1;4a3,4b3を長手方向に延びる長円にすることによって、基材3の幅方向の有効断面積が大きくなるため、曲げ剛性が高く、応力が分散し易い孔形状であり、基材の応力の低い場所へ孔形状を延ばして開口率を確保できるという点で有意であることが確認された。
【0033】
以上のように本実施形態によれば、下地材1が予め定める最大曲げ荷重に対して自立可能な曲げ剛性を有するように、基材3の各板状部2a,2bに複数の透孔4a1,4b1;4a2,4b2;4a3,4b3が形成されるので、下地材1を壁コーナ部W1に接合するために、作業者が1本の下地材1の任意の場所を手で把持して持ち運ぶために、下地材1を水平な状態から鉛直な状態に姿勢を変化させても、下地材1は慣性力によって折れ曲ってしまうことが防がれる。また、前記複数の透孔4a1,4b1;4a2,4b2;4a3,4b3は、基材3の各板状部に軸対称に形成されるので、下地材1は、作業者が前述のように持ち運ぶ際に、下地材1を把持して姿勢を変化させたときに、その下地材1に捩れ荷重が作用しても、下地材1は自己の弾性回復力によって捩れ荷重に抗することができ、捩れによって折れ曲ってしまうことを防止することができる。
【0034】
また、各透孔4a1,4b1;4a2,4b2;4a3,4b3の正面視したときの形状が閉曲線を成すので、作業者が前述のように持ち運ぶ際の曲げ荷重に対して、下地材1の各透孔4a1,4b1;4a2,4b2;4a3,4b3の周囲に応力集中によって過度に高い応力が発生することが防がれ、より一層高い曲げ強度を有する下地材1を実現することができる。
【0035】
また、前記閉曲線が円形であるので、下地材1の各透孔4a1,4b1;4a2,4b2;4a3,4b3の周囲に応力集中によって過度に高い応力が発生することなく、基材3の各透孔4a1,4b1;4a2,4b2;4a3,4b3に臨む内周面と接着剤との接触面積を大きくすることができる。これによって、下地材1と壁コーナ部W1との接合強度を向上することができるとともに、より一層高い曲げ強度を有する下地材1を実現することができる。
【0036】
また、前記閉曲線が長手方向に延びる長円であるので、各板状体の幅方向により大きな有効断面積を得ることができる。これによって、下地材と壁コーナ部との接合強度を向上することができるとともに、曲げ剛性を高くして、より一層高い曲げ強度を有する下地材を実現することができる。このような効果は、以下の実施形態においても同様に達成することができ、概略的な構成について以下に説明する。
【0037】
図7は、本発明の他の実施形態の下地材1Aを示す一方の板状部2a側から見た一部の正面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1Aは、長円形状の第1および第3透孔4a1,4b1;4a3、4b3が長手方向に交互に位置を違えて形成される。各寸法について参考までに述べると、L1=20mm、B=26mm、B1=11.5mm、B2+B3=5.5mm、B4=8mmである。
【0038】
図8は、本発明のさらに他の実施形態の下地材1Bに形成される第1透孔4aの形状を示す図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1Bは、第1および第3透孔4a1,4b1;4a3、4b3が長手方向、すなわち図8の左右方向を下地材1Bの長手方向と平行にして、幅方向外方に互い凸に形成される。各寸法について参考までに述べると、X=7.6mm、Y=3.4mm、R1=5.988mm、R2=3.288mm、R3=1.35mmである。
【0039】
図9は、本発明のさらに他の実施形態の下地材1Cに形成される第1透孔4aの形状を示す図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1Cは、第1および第3透孔4a1,4b1;4a3、4b3が長手方向、すなわち図9の左右方向を下地材1Cの長手方向と平行にして、幅方向外方に互いに凸に形成される。各寸法について参考までに述べると、X=8.66mm、Y=3mm、R1=6mm、R2=1mmである。
【0040】
図10は、本発明のさらに他の実施形態の下地材1Dに形成される第1透孔4aの形状を示す図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1Dは、第1および第3透孔4a1,4b1;4a3、4b3が長手方向、すなわち図10の左右方向を下地材1Dの長手方向と平行に形成される。各寸法について参考までに述べると、X=6.6mm、Y=4mm、R1=4.145mm、R2=1mmである。
【符号の説明】
【0041】
1 下地材
2a,2b 板状部
3 基材
4a1,4b1 第1透孔
4a2,4b2 第2透孔
4a3,4b3 第3透孔
7a,7b 粘着テープ
10 基層
11 第1粘着層
12 第2粘着層
13 剥離シート
W 壁
W1 壁コーナ部
W2,W3 壁面
W4 交差線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10