【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年5月15日に、日置電機株式会社が、本件出願の発明者が発明したデータ生成装置および基板検査装置(フライングプローブテスタ)を記載したカタログを発行した。また、平成25年6月5日に、日置電機株式会社が、JPCAショー2013において、本件出願の発明者が発明したデータ生成装置および基板検査装置(フライングプローブテスタ)を公開した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の電子部品が基板本体上に実装された検査対象基板の検査時にプロービング装置によって検査用プローブをプロービングさせる当該検査対象基板上のプロービング位置を特定可能なプロービング位置データを生成するデータ生成装置であって、
前記各電子部品の外形をそれぞれ特定可能な部品データ、前記基板本体上における前記各電子部品の実装位置および実装姿勢をそれぞれ特定可能な実装データ、前記基板本体に形成された各ランドの平面視形状および形成位置をそれぞれ特定可能なランドデータ、並びに、前記検査用プローブの外形、当該検査用プローブの前記プロービング装置に対する取付け姿勢および当該プロービング装置によるプロービング動作時における当該検査用プローブの移動方向を特定可能なプローブデータを記憶する記憶部と、
前記部品データ、前記実装データおよび前記プローブデータに基づき、前記プロービング動作時に前記検査用プローブが前記電子部品に接触する前記プロービング位置の範囲を接触範囲として特定する第1処理、前記部品データ、前記実装データおよび前記ランドデータに基づき、予め規定された手順に従ってプロービングの候補位置を規定する第2処理、並びに前記候補位置が前記接触範囲に含まれるか否かを判別する第3処理を実行し、当該第3処理において前記候補位置が前記接触範囲に含まれないと判別したときに当該候補位置を検査時の前記プロービング位置として前記プロービング位置データを生成する処理部と、
前記検査対象基板を撮像して撮像データを出力可能なカメラとを備え、
前記処理部は、前記第3処理において前記候補位置が前記接触範囲に含まれると判別したときに、当該候補位置に対するプロービングができない旨を利用者に対して報知すると共に、前記カメラを制御して前記検査対象基板を撮像させて当該カメラから出力される前記撮像データの画像に当該候補位置を示すマークおよび当該接触範囲を示す表示を重ねて表示させて当該候補位置に代わる新たな前記候補位置の指定を当該利用者に対して要求する第4処理を実行し、当該新たな候補位置が指定されたときに、当該指定された候補位置を対象として前記第3処理を再び実行するデータ生成装置。
【背景技術】
【0002】
この種のデータ生成装置および基板検査装置として、出願人は、複数の部品が実装された被検査基板にプローブを接触させて電気的に検査する基板検査装置を特開平8−262114号公報に開示している。この基板検査装置は、被検査基板を保持する保持部と、一対のプローブを任意のX−Y方向に移動させる移動機構とを備えて構成されている。また、移動機構は、ガイドレール部に配設された一対の可動アーム部に可動部がそれぞれ配設されると共に、両可動部にプローブがそれぞれ配設されて構成されている。さらに、出願人が開示している基板検査装置では、移動機構における上記の両可動部の一方に位置補正用カメラが配設されている。
【0003】
この場合、この種の基板検査装置では、検査処理に先立ち、両プローブをプロービングさせる(接触させる)被検査基板上の位置(プロービング位置)を規定してプロービング位置データを生成する作業を実施する必要がある。具体的には、一例として、まず、被検査基板の設計データに基づき、プロービング位置として規定すべき位置の候補(プロービングの候補位置)を規定する。次いで、良品の被検査基板を保持部にセットした後に、位置補正用カメラによる撮像データの画像をモニタリングしつつ、上記の候補位置へのプロービングを試みる。
【0004】
この際に、規定した候補位置へのプロービングによってプローブが所望の導体部(実装部品のリード(接続端子)や、接続端子が接続されている回路パターン(ランド)など)に接触しないことが判明したときや、プローブの先端部が所望の導体部に接触する前にプローブが実装部品に接触してしまうことが判明したときには、そのような不都合が生じない新たな候補位置をオペレータに指定させ、指定された候補位置に対するプロービングを試みる。
【0005】
また、候補位置へのプロービング時に上記のような不都合が生じないときには、候補位置を正式なプロービング位置として確定する。このような作業をすべての候補位置に対して順次実行し、すべての候補位置がプロービング位置として確定されたときに、各プロービング位置を特定可能にプロービング位置データを生成する。この場合、プロービング位置データには、被検査基板に規定された基準位置(基準位置を示すマークの位置)を特定可能な情報が各プロービング位置と共に記録される。これにより、被検査基板の検査処理を実行する準備作業が整う。
【0006】
一方、出願人が開示している基板検査装置では、位置ずれが生じた状態で保持された被検査基板について、その位置ずれに応じてプロービング位置を補正してプロービングすることができるように構成されている。具体的には、被検査基板に規定された基準位置(マーク)を位置補正用カメラによって撮像して得た実測位置座標データと、上記のプロービング位置データとを比較することにより、保持部によって保持されている被検査基板における基準位置(マーク)の位置ずれ量、および位置ずれの方向を基板位置変換パラメータとして取得する。次いで、基板位置変換パラメータに基づいてプロービング位置データの各プロービング位置を補正する。これにより、位置ずれが生じた状態の被検査基板における所望の導体部(プロービング位置)に各プローブを正確にプロービングさせることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、出願人が開示している基板検査装置と同種の基板検査装置には、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、この種の基板検査装置では、被検査基板の検査処理に先立ってプロービング位置データを生成する際に、被検査基板の設計データに基づいてプロービングの候補位置を規定してプロービングを試み、不都合が生じなかったときには、候補位置をプロービング位置として確定し、不都合が生じるときには、新たな候補位置を規定して再びプロービングを試みるといった作業が必要となっている。このため、1枚につき数千カ所以上のプロービング位置が存在する今日の被検査基板の検査時には、プロービング位置データを生成する上記の作業が煩雑となっており、基板検査装置の利用者にかかる負担が大きいという現状がある。このため、この点を改善するのが好ましい。
【0009】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、プロービング位置データを容易に生成し得るデータ生成装置および基板検査装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく請求項1記載のデータ生成装置は、複数の電子部品が基板本体上に実装された検査対象基板の検査時にプロービング装置によって検査用プローブをプロービングさせる当該検査対象基板上のプロービング位置を特定可能なプロービング位置データを生成するデータ生成装置であって、前記各電子部品の外形をそれぞれ特定可能な部品データ、前記基板本体上における前記各電子部品の実装位置および実装姿勢をそれぞれ特定可能な実装データ、前記基板本体に形成された各ランドの平面視形状および形成位置をそれぞれ特定可能なランドデータ、並びに、前記検査用プローブの外形、当該検査用プローブの前記プロービング装置に対する取付け姿勢および当該プロービング装置によるプロービング動作時における当該検査用プローブの移動方向を特定可能なプローブデータを記憶する記憶部と、前記部品データ、前記実装データおよび前記プローブデータに基づき、前記プロービング動作時に前記検査用プローブが前記電子部品に接触する前記プロービング位置の範囲を接触範囲として特定する第1処理、前記部品データ、前記実装データおよび前記ランドデータに基づき、予め規定された手順に従ってプロービングの候補位置を規定する第2処理、並びに前記候補位置が前記接触範囲に含まれるか否かを判別する第3処理を実行し、当該第3処理において前記候補位置が前記接触範囲に含まれないと判別したときに当該候補位置を検査時の前記プロービング位置として前記プロービング位置データを生成する処理部と
、前記検査対象基板を撮像して撮像データを出力可能なカメラとを備え
、前記処理部は、前記第3処理において前記候補位置が前記接触範囲に含まれると判別したときに、当該候補位置に対するプロービングができない旨を利用者に対して報知すると共に、前記カメラを制御して前記検査対象基板を撮像させて当該カメラから出力される前記撮像データの画像に当該候補位置を示すマークおよび当該接触範囲を示す表示を重ねて表示させて当該候補位置に代わる新たな前記候補位置の指定を当該利用者に対して要求する第4処理を実行し、当該新たな候補位置が指定されたときに、当該指定された候補位置を対象として前記第3処理を再び実行する。
【0012】
また、請求項
2記載の基板検査装置は、請求項
1記載のデータ生成装置と、前記プロービング装置および前記検査用プローブとを備え、前記プロービング位置データに従って前記プロービング装置によって前記検査用プローブを前記プロービング位置にプロービングさせて前記検査対象基板を電気的に検査可能に構成されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のデータ生成装置では、処理部が、各電子部品の部品データ、各電子部品の実装データ、並びに、検査用プローブのプローブデータに基づき、プロービング動作時に検査用プローブが電子部品に接触するプロービング位置の範囲を接触範囲として特定する第1処理と、部品データ、実装データ、並びに、各ランドのランドデータに基づき、予め規定された手順に従ってプロービングの候補位置を規定する第2処理と、候補位置が接触範囲に含まれるか否かを判別する第3処理とを実行し、第3処理において候補位置が接触範囲に含まれないと判別したときに候補位置を検査時のプロービング位置としプロービング位置データを生成する。また、請求項
2記載の基板検査装置は、上記のデータ生成装置を備えて構成されている。
【0014】
したがって、請求項1記載のデータ生成装置、および請求項
2記載の基板検査装置によれば、プロ−ビングを試みるまでもなくプロービング可能と判別できる候補位置については、その候補位置をプロービング位置として規定し、プロ−ビングを試みるまでもなくプロービングができないと判別される候補位置についてのみ、プロ−ビングが可能な位置を別途規定すれば済むため、利用者にかかる負担を十分に軽減してプロービング位置データを容易に生成することができる。
【0015】
請求項
1記載のデータ生成装置、
および請求項2記載の基板検査装置によれば、処理部が、第3処理において候補位置が接触範囲に含まれると判別したときに、候補位置に対するプロービングができない旨を報知して候補位置に代わる新たな候補位置の指定を要求する第4処理を実行し、新たな候補位置が指定されたときに、指定された候補位置を対象として第3処理を再び実行することにより、プロービングができないと判別された候補位置に代えて新たに指定された候補位置に関して、プロ−ビングを試みるまでもなくプロービング可能な場合には、その候補位置をプロービング位置として規定し、プロ−ビングを試みるまでもなくプロービングができない場合についてのみ、プロ−ビングが可能な位置を別途規定すれば済むため、利用者にかかる負担を一層軽減してプロービング位置データを一層容易に生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るデータ生成装置および基板検査装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示す基板検査装置1は、「基板検査装置」の一例であって、基板保持部2、測定部3、移動機構4a〜4d、検査用プローブ5a〜5d、カメラ6、操作部7、表示部8、処理部9および記憶部10を備え、検査対象基板20の良否を電気的に検査可能に構成されている。この場合、検査対象基板20は、「検査対象基板」の一例であって、
図2,3に示すように、複数のランド22a,22b・・(以下、区別しないときには「ランド22」ともいう)が形成された基板本体21上に複数の電子部品23a,23b・・(以下、区別しないときには「電子部品23」ともいう)が実装されて構成されている。
【0019】
この場合、
図1に示すように、本例の基板検査装置1では、基板本体21に形成された各ランド22の平面視形状および形成位置(基板本体21の部品実装面上におけるX−Y方向の座標)をそれぞれ特定可能なガーバーデータDa(「ランドデータ」の一例)、各電子部品23の外形(平面視における形状、各部の長さ、および各部の高さ等)をそれぞれ特定可能な部品データDb(「部品データ」の一例)、並びに、基板本体21上における各電子部品23の実装位置(基板本体21の部品実装面上におけるX−Y方向の座標)および実装姿勢(基板本体21の部品実装面上における各電子部品23の回転角度等)をそれぞれ特定可能なマウンタデータDc(「実装データ」の一例)が、検査対象基板20の設計データ(基板本体21や電子部品23の設計データ)に基づいて生成されて記憶部10に記憶されている。
【0020】
基板保持部2は、検査対象基板20を保持可能に構成されている。測定部3は、処理部9の制御に従い、一例として、四端子法によって検査対象基板20に規定された検査ポイントの抵抗値を測定して測定値データD3を生成し、生成した測定値データD3を処理部9に出力する。具体的には、測定部3は、例えば、検査用プローブ5a〜5dのうちの2本を介して図示しない定電流源から任意の検査ポイント間に測定用定電流を供給すると共に、検査用プローブ5a〜5dのうちの他の2本を介して上記の検査ポイント間の電圧値を測定し、測定した電圧値と供給した測定用定電流の電流値とに基づいて検査ポイントの抵抗値を測定して測定値データD3を生成する。
【0021】
移動機構4a〜4d(以下、区別しないときには「移動機構4」ともいう)は、それぞれが処理部9と相俟って「プロービング装置」を構成し、処理部9の制御に従って検査用プローブ5a〜5d(以下、区別しないときには「検査用プローブ5」ともいう)を任意のX−Y−Z方向に移動させることにより、基板保持部2によって保持されている検査対象基板20上の任意のプロービング位置に各検査用プローブ5をそれぞれプロービングさせる。この場合、本例の基板検査装置1では、一例として、移動機構4aに検査用プローブ5aおよびカメラ6が取り付けられ、移動機構4bに検査用プローブ5bが取り付けられ、移動機構4cに検査用プローブ5cが取り付けられ、かつ移動機構4dに検査用プローブ5dが取り付けられている。
【0022】
検査用プローブ5は、一例として、伸縮型のピンプローブで構成されて各移動機構4に取り付けられている。この場合、本例の基板検査装置1では、各検査用プローブ5の外形(非プロービング状態の外形、およびプロービング状態(縮長状態)の外形)と、各検査用プローブ5の移動機構4に対する取付け姿勢(傾きの方向、およびその角度)と、各移動機構4によるプロービング動作時における検査用プローブ5の移動方向(上記のX−Y−Z方向のうちのZ方向)とを特定可能なプローブデータDd(「プローブデータ」の一例)が基板検査装置1(検査用プローブ5)の設計データに基づいて生成されて記憶部10に記憶されている。
【0023】
カメラ6は、移動機構4aによって任意のX−Z方向に移動させられて、基板保持部2によって保持されている検査対象基板20の各部を撮像して撮像データD1を生成し、生成した撮像データD1を処理部9に出力する。操作部7は、基板検査装置1の動作条件(検査対象基板20の検査条件)を設定する設定操作用の各種操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部9に出力する。表示部8は、処理部9の制御に従い、基板検査装置1の動作条件(検査条件)を設定するための動作条件設定画面や、検査対象基板20についての検査結果を表示する検査結果表示画面(共に図示せず)などの各種表示画面を表示する。
【0024】
処理部9は、基板検査装置1を総括的に制御する。この処理部9は、「処理部」の一例であって、移動機構4a、カメラ6、操作部7、表示部8および記憶部10と相俟って「データ生成装置」を構成する。具体的には、処理部9は、部品データDb、マウンタデータDcおよびプローブデータDdに基づき、各移動機構4によるプロービング動作時に検査用プローブ5が電子部品23に接触するプロービング位置の範囲(後述する接触範囲Aa,Ab・・等:
図5,7参照:「接触範囲」の一例)を特定する「第1処理」を実行する。また、処理部9は、ガーバーデータDa、部品データDbおよびマウンタデータDcに基づき、後述するように予め規定された手順に従ってプロービングの候補位置を規定する「第2処理」を実行する。
【0025】
さらに、処理部9は、規定した候補位置が上記の接触範囲Aa,Ab・・(以下、区別しないときには「接触範囲A」ともいう)に含まれるか否かを判別する「第3処理」を実行し、この「第3処理」において候補位置が接触範囲Aに含まれないと判別したとき(候補位置を、移動機構4によって検査用プローブ5をプロービングさせる基板本体21上のプロービング位置として規定したときに、検査用プローブ5が電子部品23等に接触するおそれがなく、かつ、いずれかのランド22等に検査用プローブ5の先端部を確実に接触させることができると判別したとき)に、その候補位置を検査時のプロービング位置としてプロービング位置データDpを生成する。
【0026】
また、処理部9は、上記の「第3処理」においてプロービングの候補位置が接触範囲Aに含まれると判別したときに、その候補位置に対するプロービングができない旨を報知して、その候補位置に代わる新たな候補位置の指定を要求する「第4処理」を実行する。具体的には、本例の基板検査装置1では、「報知」の一例として、プロービングができないと判別した候補位置をリスト表示させ、新たな候補位置の指定を要求するメッセージを表示部8に表示させる(「第4処理」の一例)。さらに、処理部9は、上記の「第4処理」の後に新たな候補位置が指定されたときに、指定された候補位置を対象として上記の「第3処理」を再び実行する。
【0027】
また、処理部9は、移動機構4aを制御して基板保持部2によって保持されている検査対象基板20における基準位置(基準位置特定用のマークが記されている部位:図示せず)の上方にカメラ6を移動させると共にカメラ6を制御して検査対象基板20(基準位置)を撮像させる。また、処理部9は、カメラ6から出力される撮像データD1を画像解析することにより、基板保持部2によって保持されている検査対象基板20における基準位置特定用のマークの位置を特定すると共に、特定した位置と、基板保持部2に対する位置ずれが生じていない検査対象基板20における基準位置との位置ずれ量および位置ずれの方向を特定し、特定した情報をプロービング位置補正用データ(以下、「補正用データ」ともいう)D2として記憶部10に記憶させる。
【0028】
さらに、処理部9は、補正用データD2に基づいてプロービング位置データDpを補正すると共に、補正したプロービング位置データDpに基づいて各移動機構4を制御して、基板保持部2によって保持されている検査対象基板20における任意のプロービング位置に各検査用プローブ5をそれぞれプロービングさせる。また、処理部9は、測定部3を制御して各検査用プローブ5がプロービングさせられている部位(検査ポイント)の抵抗値を測定させ、測定部3から出力される測定値データD3と、記憶部10に記憶されている検査用基準データD0とを比較することにより、検査ポイントの良否を検査する。さらに、処理部9は、検査結果に基づいて検査結果データD4を生成して記憶部10に記憶させると共に、検査結果表示画面(図示せず)に各検査ポイント毎の検査結果を表示させる。
【0029】
記憶部10は、「記憶部」の一例であって、前述したように、ガーバーデータDa、部品データDb、マウンタデータDcおよびプローブデータDdや、良品の基板から取得された検査用基準データD0を記憶する。また、記憶部10は、カメラ6から出力された撮像データD1、処理部9によって生成されるプロービング位置補正用データD2、測定部3から出力された測定値データD3、処理部9によって生成される検査結果データD4、およびプロービング位置データDpを記憶する。
【0030】
この基板検査装置1を用いた検査対象基板20の検査処理に際しては、まず、良品の検査対象基板20を用意してプロービング位置データDpおよび検査用基準データD0を生成する処理を実行する。なお、ガーバーデータDa、部品データDb、マウンタデータDcおよびプローブデータDdを生成する処理、および生成した各データDa〜Ddを記憶部10に記憶させる処理については、既に完了しているものとする。また、検査用基準データD0の生成処理については、この種の基板検査装置において実施される通常の処理のため、説明を省略する。
【0031】
一方、プロービング位置データDpの生成に際しては、一例として、良品の検査対象基板20を基板保持部2にセットした後に、操作部7を操作して処理開始を指示する。この際に、処理部9は、上記した「第1処理」を実行する。具体的には、処理部9は、まず、部品データDb、マウンタデータDc、およびプローブデータDdを記憶部10から読み出す。次いで、処理部9は、部品データDbにおける各電子部品23の外形に関する情報、およびマウンタデータDcにおける各電子部品23の実装位置や実装姿勢に関する情報に基づき、検査対象基板20における電子部品23等の実装面の外形(基板本体21の表面(実装面)における各部位や、各電子部品23の表面における各部位の三次元空間座標)を演算する。
【0032】
続いて、処理部9は、プローブデータDdにおける各検査用プローブ5の外形に関する情報、各検査用プローブ5の移動機構4に対する取付け姿勢に関する情報、および移動機構4によるプロービング動作時における各検査用プローブ5の移動方向に関する情報に基づき、各検査用プローブ5が非プロービング状態およびプロービング状態の両状態において占有する空間の形状および大きさを演算する。次いで、処理部9は、演算した検査対象基板20の外形、並びに、プロービング動作時に検査用プローブ5によって占有される空間の形状および大きさに基づき、プロービング動作時に検査用プローブ5が電子部品23に接触するプロービング位置の範囲を、各検査用プローブ5毎に個別的に演算する。
【0033】
具体的には、
図4に示すように、例えば、検査用プローブ5aを同図に示すプロービングの候補位置Pxにプロービングさせようとしたときには、検査用プローブ5aが電子部品23aに接触する。また、図示を省略するが、基板本体21上には、その位置をプロービング位置とするプロ−ビングを行ったときに検査用プローブ5aが電子部品23a〜23cに接触する位置が上記のプロービング位置Pxの他にも多数存在する。したがって、処理部9は、上記の演算結果に基づき、
図5に破線で示す2つの接触範囲Aa内の候補位置に対するプロービング動作時に検査用プローブ5aが電子部品23a〜23cに接触すると演算する。また、検査用プローブ5bについては、
図7に破線で示す接触範囲Ab内の候補位置に対するプロービング動作時に電子部品23a〜23cに接触すると演算する。同様にして、検査用プローブ5c,5dについても検査用プローブ5a,5bと同様に接触範囲Ac,Ad(図示せず)をそれぞれ演算する。以上により、「第1処理」が完了する。
【0034】
次いで、処理部9は、「第2処理」を実行する。この「第2処理」では、処理部9は、上記の「第1処理」において読み出した部品データDbおよびマウンタデータDcに加え、ガーバーデータDaを記憶部10から読み出す。続いて、処理部9は、予め規定された手順に従い、上記のガーバーデータDaにおける各ランド22の平面視形状や形成位置に関する情報
、部品データDbにおける各電子部品23の外形に関する情報、およびマウンタデータDcにおける各電子部品23の実装位置や実装姿勢に関する情報に基づき、検査対象基板20に対するプロービングの候補位置を規定する。
【0035】
この際には、
図5に示すように、電子部品23aの抵抗値を測定する(電子部品23aを検査ポイントとする)プロービング用の候補位置として、検査用プローブ5aについての候補位置P1a0、検査用プローブ5bについての候補位置P1b0、検査用プローブ5cについての候補位置P1c0、および検査用プローブ5dについての候補位置P1d0がそれぞれ規定される。また、電子部品23bの抵抗値を測定する(電子部品23bを検査ポイントとする)プロービング用の候補位置としては、検査用プローブ5aについての候補位置P2a0、検査用プローブ5bについての候補位置P2b0、検査用プローブ5cについての候補位置P2c0、および検査用プローブ5dについての候補位置P2d0がそれぞれ規定される。
【0036】
この後、他の電子部品23や、断線/短絡の有無を検査すべきランド22等についても上記の電子部品23a,23bと同様にしてプロービングの候補位置をそれぞれ規定する。これにより、「第2処理」が完了する。なお、「第1処理」に続いて「第2処理」を実行する例について説明したが、この「第1処理」および「第2処理」の実行順序はこれに限定されず、「第2処理」の後に「第1処理」を実行してもよい。
【0037】
次いで、処理部9は、上記の「第2処理」によって規定した各候補位置が、「第1処理」において演算した各接触範囲Aa,Ab・・に含まれるか否かを判別する「第3処理」を実行し、判別結果に応じて以下のような処理を実行する。例えば、
図5に示すように、電子部品23aの検査に際して検査用プローブ5aをプロービングさせる候補位置P1a0については、検査用プローブ5aについての接触範囲Aaに含まれない。したがって、処理部9は、この候補位置P1a0が接触範囲Aaに含まれないと判別し、候補位置P1a0を、電子部品23aの検査に際して検査用プローブ5aをプロービングさせるプロービング位置P1aとして確定する。
【0038】
また、
図6に示すように、電子部品23aの検査に際して検査用プローブ5bをプロービングさせる候補位置P1b0については、この候補位置P1b0をプロービング位置として同図に一点鎖線で示すようにプロ−ビング動作を行おうとしたときに、同図に破線で示すように検査用プローブ5bが電子部品23cに接触する。したがって、処理部9は、候補位置P1b0が接触範囲Abに含まれると判別する。この際に、処理部9は、「第3処理」においてプロービングができないと判別した候補位置を一覧表示するリスト画面(図示せず)に候補位置P1b0をリストアップすることにより(「プロービングの候補位置に対するプロービングができない旨の報知」の一例)、利用者に対して、この候補位置P1b0に代わる新たな候補位置の指定を要求する(「第4処理」の一例)。
【0039】
また、処理部9は、移動機構4aを制御して基板保持部2によって保持されている良品の基板における上記の候補位置P1b0に対応する部位の近傍にカメラ6を移動させると共に、カメラ6を制御して検査対象基板20を撮像させる。次いで、処理部9は、カメラ6から出力された撮像データD1に基づく画像(候補位置P1b0に対応する部位の近傍の画像)を表示部8に表示させると共に、上記の候補位置P1b0を示すマークや、接触範囲Abを示す表示を上記の画像に重ねて表示させる。
【0040】
一方、上記のリスト画面等を見た利用者は、表示部8に表示されている検査対象基板20の画像、および候補位置P1b0を示すマークや接触範囲Abを示す表示を参照しつつ、操作部7を操作して、検査用プローブ5bをプロービングさせる新たな候補位置(候補位置P1b0に代わる候補位置)を指定する。この際には、一例として、検査用プローブ5dをプロービングさせる位置として規定されている候補位置P1d0が、検査用プローブ5bをプロービングさせる新たな候補位置P1b1として指定される。
【0041】
これに応じて、処理部9は、指定された候補位置P1b1が接触範囲Abに含まれるか否かを判別し(「第3処理」の実行)、この候補位置P1b1が接触範囲Abに含まれないと判別して、候補位置P1b1を、電子部品23aの検査に際して検査用プローブ5bをプロービングさせるプロービング位置P1bとして確定する。なお、上記のリスト画面の表示およびカメラ6からの撮像データD1に基づく画像(検査対象基板20の画像)等の表示など(「第4処理」)に関しては、他の候補位置に関する「第3処理」が完了した後に、該当するプロービング候補位置に関してまとめて実行してもよい。
【0042】
また、
図5,7に示すように、電子部品23aの検査に際して検査用プローブ5cをプロービングさせる候補位置P1c0については、検査用プローブ5cについての接触範囲Ac(図示せず)に含まれない。したがって、処理部9は、この候補位置P1c0が接触範囲Acに含まれないと判別し、候補位置P1c0を、電子部品23aの検査に際して検査用プローブ5cをプロービングさせるプロービング位置P1cとして確定する。
【0043】
一方、電子部品23aの検査に際して検査用プローブ5dをプロービングさせる候補位置P1d0については、前述したように、検査用プローブ5bをプロービングさせる候補位置P1b1として規定された後に、プロービング位置P1bとして確定している。したがって、処理部9は、この候補位置P1d0に検査用プローブ5dをプロービングさせることができないと判別し、前述したリスト画面(図示せず)に候補位置P1d0をリストアップすることにより、利用者に対して、この候補位置P1d0に代わる新たな候補位置の指定を要求する。
【0044】
これにより、前述した候補位置P1b0のときと同様にして、一例として、候補位置P1d1が新たな候補位置として指定される。これに応じて、処理部9は、指定された候補位置P1d1が接触範囲Ad(図示せず)に含まれるか否かを判別し(「第3処理」の実行)、この候補位置P1d1が接触範囲Adに含まれないと判別して、候補位置P1d1を、電子部品23aの検査に際して検査用プローブ5dをプロービングさせるプロービング位置P1dとして確定する。これにより、電子部品23aの検査時に各検査用プローブ5a〜5dをプロ−ビングさせるプロービング位置P1a〜P1dがそれぞれ確定される。
【0045】
また、電子部品23bの検査時に検査用プローブ5aをプロ−ビングさせるプロービング位置や、検査用プローブ5cをプロ−ビングさせるプロービング位置については、
図5に示すように、前述した「第2処理」において規定された候補位置P2a0が接触範囲Aaに含まれないと判別され、この候補位置P2a0がプロービング位置P2aとして規定されると共に、候補位置P2c0が接触範囲Acに含まれないと判別されて、この候補位置P2c0がプロービング位置P2cとして規定される。
【0046】
さらに、電子部品23bの検査時に検査用プローブ5bをプロ−ビングさせるプロービング位置については、
図7に示すように、前述した「第2処理」において規定された候補位置P2b0が接触範囲Abに含まれると判別されて前述したリスト画面にリストアップされ、このリスト画面、および前述したようにカメラ6によって撮像された撮像データD1の画像等を見た利用者が、候補位置P2b0に対するプロービングができないと判別されたと認識し、一例として、候補位置P2b1を新たな候補位置として指定する。この候補位置P2b1は、接触範囲Abに含まれないため、処理部9は、候補位置P2b1を、電子部品23bの検査に際して検査用プローブ5bをプロービングさせるプロービング位置として確定する。
【0047】
また、電子部品23bの検査時に検査用プローブ5dをプロ−ビングさせるプロービング位置については、前述した「第2処理」において規定された候補位置P2d0が接触範囲Adに含まれると判別されて前述したリスト画面にリストアップされ、このリスト画面、および前述したようにカメラ6によって撮像された撮像データD1の画像等を見た利用者が、候補位置P2d0に対するプロービングができないと判別されたと認識し、一例として、候補位置P2d1を新たな候補位置として指定する。この候補位置P2d1は、接触範囲Adに含まれないものの、電子部品23bの検査に際して候補位置P2d1に検査用プローブ5dをプロ−ビングさせたときには、検査用プローブ5dを移動させる移動機構4dと、検査用プローブ5bを移動させる移動機構4bとが検査対象基板20上において当接することとなる。
【0048】
したがって、電子部品23bの検査に際して検査用プローブ5dをプロービングさせるプロービング位置として候補位置P2d1を確定した場合には、検査用プローブ5bをプロ−ビングすべきプロービング位置(候補位置P2b1の位置)に検査用プローブ5bをプロ−ビングさせることができなくなる。このため、処理部9は、利用者が指定した候補位置P2d1、および検査用プローブ5bをプロービングさせるプロービング位置として確定している候補位置P2b1の双方を上記のリスト画面にリストアップして新たな候補位置の指定を要求する。
【0049】
このリスト画面を見た利用者は、一例として、検査用プローブ5bをプロ−ビングさせるべき位置として候補位置P2b2を指定する。この場合、この例では、検査用プローブ5dをプロ−ビングさせるべき位置として指定された候補位置P2d1が接触範囲Adに含まれず、検査用プローブ5bをプロ−ビングさせるべき位置として新たに指定された候補位置P2b2も接触範囲Abに含まれず、かつ、候補位置P2b2に対する検査用プローブ5bのプロ−ビング、および候補位置P2d1に対する検査用プローブ5dのプロ−ビング時に移動機構4b,4dが当接することもない。したがって、処理部9は、候補位置P2b2を、電子部品23bの検査に際して検査用プローブ5bをプロービングさせるプロービング位置P2bとして確定すると共に、候補位置P2d1を、電子部品23bの検査に際して検査用プローブ5dをプロービングさせるプロービング位置P2dとして確定する。
【0050】
この後、他の候補位置についても上記の各処理と同様の処理を行い、すべての候補位置がプロービング位置として確定したときに、処理部9は、確定した各プロービング位置を示すプロービング位置データDpを作成して記憶部10に記憶させる。これにより、検査対象基板20を検査するための準備作業が整う。
【0051】
この後、検査対象基板20を基板保持部2にセットした状態において検査処理の開始を指示することにより、検査処理に先立って実施された上記の生成処理において生成されたプロービング位置データDpに基づくプロ−ビングが実行されると共に、測定部3による測定結果と、検査用基準データD0とが比較されて各電子部品23や導体パターンの良否が検査され、検査結果データD4が生成されて記憶部10に記憶されると共に、検査結果データD4に対応する検査結果が表示部8に表示される。これにより、検査対象基板20の電気的検査が完了する。
【0052】
このように、この基板検査装置1では、処理部9が、各電子部品23の部品データDb、各電子部品23のマウンタデータDc、並びに、検査用プローブ5のプローブデータDdに基づき、プロービング動作時に検査用プローブ5が電子部品23に接触するプロービング位置の範囲を接触範囲Aとして特定する「第1処理」と、部品データDb、マウンタデータDc、並びにガーバーデータDaに基づき、予め規定された手順に従ってプロービングの候補位置を規定する「第2処理」と、候補位置が接触範囲Aに含まれるか否かを判別する「第3処理」とを実行し、「第3処理」において候補位置が接触範囲Aに含まれないと判別したときに候補位置を検査時のプロービング位置としプロービング位置データDpを生成する。
【0053】
したがって、この基板検査装置1によれば、プロ−ビングを試みるまでもなくプロービング可能と判別できる候補位置については、その候補位置をプロービング位置として規定し、プロ−ビングを試みるまでもなくプロービングができないと判別される候補位置についてのみ、プロ−ビングが可能な位置を別途規定すれば済むため、利用者にかかる負担を十分に軽減してプロービング位置データDpを容易に生成することができる。
【0054】
また、この基板検査装置1によれば、処理部9が、「第3処理」においてプロービングの候補位置が接触範囲Aに含まれると判別したときに、候補位置に対するプロービングができない旨を報知して候補位置に代わる新たな候補位置の指定を要求する「第4処理」を実行し、新たな候補位置が指定されたときに、指定された候補位置を対象として「第3処理」を再び実行することにより、プロービングができないと判別された候補位置に代えて新たに指定された候補位置に関して、プロ−ビングを試みるまでもなくプロービング可能な場合には、その候補位置をプロービング位置として規定し、プロ−ビングを試みるまでもなくプロービングができない場合についてのみ、プロ−ビングが可能な位置を別途規定すれば済むため、利用者にかかる負担を一層軽減してプロービング位置データDpを一層容易に生成することができる。
【0055】
な
お、プロービングの候補位置に対するプロ−ビングが困難と判別したときに、利用者に対して新たな候補位置を指定させて「第3処理」を再び実行する構成を例に挙げて説明したが、各データDa〜Ddに基づき、各検査用プローブ5が電子部品23に対してどのように接触するかを特定し、特定した結果に基づいて各検査用プローブ5が電子部品23に接触しない新たな候補位置を自動的に規定する構成を採用することもできる。このような構成を採用することにより、プロービング位置データDpの生成に際して利用者にかかる負担を一層軽減することができる。