(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伸縮手段が筒状の蛇腹部材を備え、前記グローブ取付部材のフランジ状基部と前記ポート部の間の前記筒状部およびグローブの周囲空間の気密が、前記蛇腹部材により維持されることを特徴とする請求項1に記載の無菌操作用グローブ。
前記伸縮手段が伸縮自在に複数の円筒が入れ子状に連結された多段円筒部材を備え、前記グローブ取付部材のフランジ状基部と前記ポート部の間の前記筒状部およびグローブの周囲空間の気密が、前記多段円筒部材により維持されることを特徴とする請求項1に記載の無菌操作用グローブ。
前記伸縮手段が、二重円筒構造の収容部材と、二重円筒の間に嵌装される円筒状の延出部材とを備え、前記グローブ取付部材のフランジ状基部と前記ポート部の間の前記筒状部およびグローブの周囲空間の気密が、前記収容部材と前記延出部材とにより維持されることを特徴とする請求項1に記載の無菌操作用グローブ。
前記伸縮手段が流体の注入により膨らむ膨張部材を備え、前記グローブ取付部材のフランジ状基部と前記ポート部の間の前記筒状部およびグローブの周囲空間の気密が、前記膨張部材により維持されることを特徴とする請求項1に記載の無菌操作用グローブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、グローブは、操作性を考慮してアイソレータ内部において、機械設備に近い場所に配置される。そのため特許文献1の構成では、除染時、グローブホルダに保持されるグローブは、往々にして機械設備に接触する状態となり、接触部が除染できない場合がある。また除染効果を高めるために内部機器を動作させると、機器との接触によりグローブが破損する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、無菌対応のアイソレータにおいて、グローブの操作性を維持しつつも効果的な除染を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、内部が無菌状態に維持されるアイソレータの開口部に設けられ、作業者が外部から装着する無菌操作用グローブにおいて、アイソレータの開口部に設けられたリング状のポート部と、作業者の腕を挿通可能でリング状のポート部の内径よりも小さな外周径を有する筒状部と、筒状部から径方向外側に延出しリング状のポート部の内径よりも大きな外形寸法を有するフランジ状基部からなるグローブ取付部材と、グローブ取付部材の筒状部に取り付けたグローブと、アイソレータの外部に位置させたグローブ取付部材のフランジ状基部とポート部の間に設けられ、筒状部およびグローブの周囲空間の気密を維持した状態で、ポート部に対してグローブ取付部材を接近位置と離隔位置に進退可能とした伸縮手段を備え、アイソレータの内部を除染する場合は、グローブ取付部材を離隔位置として前記グローブをアイソレータの外側に引き出した状態とし、グローブ取付部材を接近位置とした状態では、筒状部がポート部の内側に位置して、筒状部に取り付けたグローブによってアイソレータ内での作業を可能と
し、筒状部の内側に設けられて、グローブをアイソレータの外側に引き出した状態で、グローブをアイソレータ内に向けて支持するグローブホルダを備えたことを特徴としたアイソレータの無菌操作用グローブである。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、筒状部の内側に設けられて、グローブをアイソレータ内に向けて支持するグローブホルダを備えたことを特徴としている。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において、伸縮手段が筒状の蛇腹部材を備え、グローブ取付部材のフランジ状基部とポート部の間の筒状部およびグローブの周囲空間の気密が、蛇腹部材により維持されたことを特徴としている。
【0010】
第4の発明は、第1の発明において、伸縮手段が伸縮自在に複数の円筒が入れ子状に連結された多段円筒部材を備え、グローブ取付部材のフランジ状基部とポート部の間の筒状部およびグローブの周囲空間の気密が、多段円筒部材により維持されたことを特徴としている。
【0011】
第5の発明は、第1の発明において、伸縮手段が、二重円筒構造の収容部材と、二重円筒の間に嵌装される円筒状の延出部材とを備え、グローブ取付部材のフランジ状基部とポート部の間の筒状部およびグローブの周囲空間の気密が、収容部材と延出部材とにより維持されたことを特徴としている。
【0012】
第6の発明は、第1の発明において、伸縮手段が流体の注入により膨らむ膨張部材を備え、グローブ取付部材のフランジ状基部とポート部の間の筒状部およびグローブの周囲空間の気密が、膨張部材により維持されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無菌対応のアイソレータにおいて、無菌操作用グローブの操作性を維持しつつも効果的な除染を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1、
図2は、本発明の第1実施形態の無菌操作用グローブの側断面図であり、
図1にはアイソレータを除染する際の状態が示され、
図2にはグローブを使用し作業を行う際の状態が示される。
【0016】
第1実施形態の無菌操作用グローブ10は、アイソレータ11の壁面12に設けられるリング状のポート部13と、グローブ14が装着されるグローブ取付部材15と、ポート部13とグローブ取付部材15の間を気密的に連結する伸縮自在な蛇腹部材(伸縮手段)16とを備える。また、第1実施形態では、グローブ取付部材15の姿勢を保持するために支持部材17が用いられる。
【0017】
グローブ取付部材15は、作業者が腕を挿入する略円筒形の筒状部15Aと、筒状部15Aの挿入口側の端部に当たる基端部から径方向外側に延出するフランジ状基部15Bとを備え、両者は一体的に形成される。また、筒状部15Aの基端部の反対側に当たる先端部周縁の外周には、グローブ14がOリング18等の締結手段を用いて気密的に取り付けられる。
【0018】
ポート部13は、アイソレータ11の壁面12に設けられた開口部に気密的に装着される。ポート部13の中央には、グローブ14および筒状部15Aを挿通するための略円形の挿入口13Aが設けられる。また、グローブ取付部材15の筒状部15Aの外周径は、ポート部13の挿通口13Aの内径よりも小さく、グローブ取付部材15のフランジ状基部15Bの外径は、ポート部13の挿通口13Aの内径よりも大きい。
【0019】
第1実施形態では伸縮手段として、筒状の蛇腹部材16が用いられ、その一端はポート部13の外側の面に、挿通口13Aを取り囲むように気密的に連結される。また、蛇腹部材16の他端はグローブ取付部材15のフランジ状基部15Bに、筒状部15Aを取り囲むように気密的に連結される。これによりグローブ取付部材15とポート部13の間は、この間に設けた蛇腹部材16により気密的に連結され、筒状部15Aおよびグローブ14の周囲空間の気密が維持される。
【0020】
また、フランジ状基部15Bにおいて、蛇腹部材16が連結された位置よりも更に径方向外側には、支持部材17を係合するための支持部材取付孔15Cが設けられる。本実施形態において、支持部材17は例えば複数のロッド状の部材であり、支持部材取付孔15Cに挿通され、円筒部15Aの軸方向に沿って配置される。そして、支持部材17の先端はポート部13の外側の面に当接される。
【0021】
本実施形態において、支持部材17は、アイソレータ11の内側11Aを除染する
図1の状態のときに用いられ、上述のようにフランジ状基部15Bに装着される。除染時、グローブ14内には、グローブ14の姿勢を維持するためのグローブホルダ19が装着され、グローブホルダ19は例えば筒状部15Aの内側に係合されて保持される。フランジ状基部15Bは、支持部材17をガイドとしてポート部13から離れる方向に移動され、グローブ取付部材15は、
図1に示されるポート部13に対する離隔位置に配置される。
【0022】
このとき蛇腹部材16はアイソレータ11の外側11Bへ引き伸ばされ、グローブホルダ19により姿勢が維持されるグローブ14は、ポート部13の挿入口13Aを通して、蛇腹部材16の内側に引き込まれる。すなわち、グローブ14は、蛇腹部材16の内側の気密的に維持された空間において除染ガスにより除染される。なお
図1では、グローブ14の腕部のみが蛇腹部材16の内側に引き込まれ、手首よりも先の部分の位置はアイソレータ11の内側11Aに維持されているが、グローブ14の全てを蛇腹部材16の内側に引き込む構成であってもよい。
【0023】
一方、アイソレータ11内で作業を行う際には、フランジ状基部15Bは、支持部材17に沿ってポート部13へ向けて移動され、グローブ取付部材15は、
図2に示されるポート部13に対する接近位置に配置される。このとき蛇腹部材16は押し縮められ、グローブ取付部材15の筒状部15Aはポート部13の挿入口13Aに挿入される。なお、
図2に示されるように、作業を行う際には支持部材17およびグローブホルダ19は取り外される。
【0024】
以上のように、第1実施形態によれば、除染時にはグローブ取付部材をアイソレータから離間させ、外部から密閉された蛇腹部材内にグローブを引き込んで除染を行うことができ、作業時にはグローブ取付部材をアイソレータに接近させ、グローブをアイソレータ内の機械設備に近い位置まで突き出して操作を行うことができる。そのため除染時にグローブが機械設備に接触し、接触部が除染できない状況の発生を防止でき、かつ除染効果を高めるために内部機器を動作させても機器との接触によりグローブが破損する心配がない。したがって、無菌対応のアイソレータにおいて、グローブの操作性を維持しつつも効果的に除染を行える。また、同構成によれば、交換が必要なグローブに標準品を用いることができ、専用のグローブを用いる必要がないので、ランニングコストを削減することもできる。
【0025】
次に、
図3を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
図3は、第2実施形態の無菌操作用グローブの側断面図である。
【0026】
第2実施形態の無菌操作用グローブ20は、第1実施形態の無菌操作用グローブ10とは伸縮手段の構成が異なり、第1実施形態のように支持部材17を使用しない。なおその他の構成は第1実施形態と同様であり、同様の構成については同一参照符号を用いその説明を省略する。
【0027】
第2実施形態の伸縮手段は、入れ子状の多段円筒部材21から構成される。
図3の例では、径が異なる4段の円筒21A〜21Dが入れ子状に配置される。円筒21A〜21Dは、この順で径が大きくなり、本実施形態では、円筒21Aが、ポート部13の挿入口13Aを取り囲むようにポート部13の外側の面に気密的に接続され、円筒21Dが、筒状部15Aを取り囲むようにフランジ状基部15Bに気密的に接続される。
【0028】
円筒21Aは円筒21Bの内側に嵌合し、軸方向に相対移動可能である。同様に円筒21Bは円筒21Cの内側に、円筒21Cは円筒21Dの内側に嵌合し、軸方向にそれぞれ相対移動可能である。また、円筒間の気密性を維持するため円筒21A、21Bの間にはパッキング22A、円筒21B、21Cの間にはパッキング22B、円筒21C、21Dの間にはパッキング22Cが設けられる。なお、パッキング22A〜22Cは円筒同士における抜け止めの機能も果たす。これによりポート部13とフランジ状基部15Bは、入れ子状の円筒21A〜21Dで構成される多段円筒部材21によって気密的に連結され、多段円筒部材21の内側は外部から密閉される。
【0029】
図3には、グローブ取付部材15をポート部13から引き離して離隔位置に配置した状態が示される。すなわち、多段円筒部材21を引き伸ばしてグローブ14を多段円筒部材21の内側に引き込んだ状態、すなわち除染時の状態が示される。グローブ14をアイソレータ11の内側11Aに突き出してアイソレータ11内での作業を行う場合には、多段円筒部材21の各円筒21A〜21Dは全て重ね合わされ、グローブ取付部材15はポート部13に対して接近位置に配置される。
【0030】
以上のように、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。また第2実施形態では、伸縮手段に入れ子状の多段円筒部材を用いたので、グローブ取付部材を離隔位置に配置する際、伸縮手段自体がグローブ取付部材の姿勢を支持するので、第1実施形態のように別途に支持部材を用意する必要がない。
【0031】
次に
図4を参照して本発明の第3実施形態について説明する。
図4は、第3実施形態の無菌操作用グローブの側断面図である。なお
図4には、
図1、
図3と同様に、除染時の状態、すなわちグローブがアイソレータから引き出された状態が示される。
【0032】
第3実施形態の無菌操作用グローブ30は、ダブルウォール型のアイソレータに用いられる。以下の説明において第1実施形態と同様の構成に関しては同一参照符号を用い、その説明を省略する。
【0033】
ダブルウォール型アイソレータ31は、外側の壁面12の内側に、所定距離離れて壁面12に平行する内側の壁面32が設けられる。第3実施形態では、外側壁面12と内側壁面32の間の空間を利用して、伸縮手段を構成する。第3実施形態の伸縮手段は、グローブ14およびグローブ取付部材15の筒状部15Aが挿入されるポート部33の一部として構成される。
【0034】
ポート部33は、外側壁面12の開口に気密的に取り付けられるリング部材33Aと、リング部材33Aから内側壁面32にまで延出される略二重円筒形状を呈する収容部材33Bと、収容部材33Bの内外の円筒の間に摺動自在に嵌設され、収容部材33Bから引き出し可能な円筒状の延出部材33Cを備える。
【0035】
延出部材33Cの一端は、グローブ取付部材15の筒状部15Aを取り囲むようにフランジ状基部15Aに気密的に連結され、他端は、収容部材33Bの二重円筒の隙間に嵌合される。収容部材33Bの外側の円筒のアイソレータ外側31Bに向けられた端部は、リング部材33Aに気密的に連結され、内側31Aに向けられた端部の外周は内側壁面32に設けられた開口に気密的に嵌合される。
【0036】
収容部材33Bにおいて、アイソレータ31の外側31Bに向けられた二重円筒の底面は解放されており、延出部材33Cは、この開口部を通して二重円筒の隙間に嵌合される。ここで収容部材33Bの内側円筒の内径は、本実施形態のポート部33の内径に対応し、グローブ14は収容部材33Bの内側円筒内を通ってアイソレータ31の内側31A(内側壁面32の内側の空間)に出し入れされる。また延出部材33Cと収容部材33Bの間には気密性を保持するためのパッキング34が介装され、抜け止め機構の役割も果たす。なお、グローブ14をアイソレータ31の内側31Aに突き出して作業を行う場合には、グローブ取付部材15の筒状部15Aが収容部材33Bの内側に挿入されるとともに、フランジ状基部15Bがポート部33に当接され、延出部材33Cは、収容部材33Bの二重円筒の間に収容される。
【0037】
以上のように、第3実施形態においても第1および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
次に
図5を参照して本発明の第4実施形態について説明する。
図5は、第4実施形態の無菌操作用グローブの側断面図であり、
図1、
図3、
図4と同様に、除染時の状態、すなわちグローブがアイソレータから引き出された状態が示される。
【0039】
第4実施形態の無菌操作用グローブ40は、第1実施形態の無菌操作用グローブ10とその伸縮手段の構成が異なる。なおその他の構成は第1実施形態と同様であり、同様の構成については同一参照符号を用いその説明を省略する。
【0040】
第4実施形態では、伸縮手段に略円筒を呈する流体を注入して膨らむ膨張部材41が用いられる。すなわち、ポート部13の外側の面とグローブ取付部材15のフランジ状基部15Bのアイソレータ側の面は、膨張部材41により気密的に連結され、膨張部材41の内側は、アイソレータ11の外部11Bからは密閉される。
【0041】
より詳しくは、膨張部材41は、円筒本体41Aと、ポート部13の外側面に、挿入口13Aを取り囲むように気密的に連結されたリング状の連結基部41Bと、フランジ状基部15Bにおいて筒状部15Aを取り囲むように気密的に連結されたリンク状の連結基部41Cとからなる。円筒本体41Aは、ゴム等の可撓素材から形成され、連結基部41B、41Cとは連通されている。
【0042】
連結基部41Bには、供給チューブ42が装着され、供給チューブ42を通してエアなどの流体が連結基部41B内に供給できる。そして連結基部41B内に供給されたエアは円筒本体41Aや連結基部41Cへと導かれる。すなわちグローブ取付部材15をポート部13に対して離間位置に配置するときには、供給チューブ42からエアを供給し、円筒本体41Aを膨らませる。エアで満たされた円筒本体41Aは、一定の強度を備え円筒形状を保持するので、グローブ取付部材15は、円筒形に膨らんだ円筒本体41Aによってその位置が保持される。なお、グローブ取付部材15を接近位置に配置する場合には、膨張部材41のエアを抜き、筒状部15Aを挿入口13Aに挿入する。
【0043】
以上のように、第4実施形態においても第1〜第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお第1〜第4実施形態に、伸縮手段を縮めた状態を検知するセンサを設け、同状態において、アイソレータ内部の機器の動作を停止する機能を付加することも可能である。
【0045】
また、本実施形態では、グローブ取付部材にグローブが直接取り付けられたが、例えば、腕を入れるスリーブと手を入れるグローブを別体として構成してもよい。この場合、グローブ取付部にはスリーブが取り付けられ、スリーブの先端に更にグローブが装着される。