【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、重量平均分子量/数平均分子量で示される分子量分布が、1.5以下のポリマーからなる親水性樹脂粒子を製造する方法であって、
炭化水素系アレンモノマーを用いてリビング重合を行うことで疎水性樹脂コア粒子を作製する工程1を行った後、得られた疎水性樹脂コア粒子及びSP値が10以上の水酸基含有アレンモノマーを用いてリビング重合を行
い、前記疎水性樹脂コア粒子の表面に親水性ポリマー層を形成する工程2を行うものであり、上記リビング重合は、分散安定剤の存在下、貧溶媒中での分散重合系で行う親水性樹脂粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、SP値が10以上の水酸基含有アレンモノマーを用いてリビング重合を行うことで親水性樹脂粒子を作製することにより、樹脂の分子量及び粒子径を均一に制御することができ、かつ、親水性官能基が粒子表面に均一に分布する親水性樹脂粒子が作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の親水性樹脂粒子の製造方法は、SP値が10以上の水酸基含有アレンモノマーを用いてリビング重合を行う工程を有する。
【0011】
上記リビング重合とは、開始剤を起点とする重合反応が停止反応や連鎖移動反応などの副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合のことをいう。
特に、本発明では、上記リビング重合を析出重合で行う方法が好ましい。
本発明では、このようなリビング重合を用いることで、重合反応が同時に開始すれば分子量が均一な重合体を得ることができ、例えば析出重合を用いた場合、粒子核が発生するタイミングを揃えることができるので、分子量や一次構造の規制された高分子鎖からなる粒子径が揃った親水性樹脂粒子を得ることができる。
【0012】
上記リビング重合としては、特に限定されず、例えば、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビング配位重合等を採用することができる。
なかでも、リビング配位重合が好ましい。
上記リビング配位重合を用いることで、水系媒体中での重合反応が可能となり、種々の置換基を有するポリマーを得ることが可能となる。
【0013】
上記リビング重合において使用する開始剤としては、例えば、π−アリルニッケル触媒をはじめとする各種遷移金属触媒が使用できる。
上記π−アリルニッケル触媒は、ハロゲン化アリル、アリルアセテート等のアリル化合物に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(以下Ni(COD)
2とする)等の有機ニッケル、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリフェノキシフォスフィン、トリエトキシフォスフィン等のフォスフィンを添加して得られる。
【0014】
上記アリル化合物としては、例えば、アリルトリフルオロアセテート、アリルメチルアセテート、アリルシアノメチルアセテート等が挙げられる。なかでも、アリルトリフルオロアセテートが特に好ましい。
また、アリル化合物は、アレンモノマー100重量部に対して、1〜30重量部とすることが好ましい。上記アリル化合物が1重量部未満であると、重合が進行しないことがあり、30重量部を超えると、重合速度が速すぎて、安定な微粒子形状を得られなくなる可能性がある。より好ましくは2〜10重量部である。
【0015】
上記アリル化合物に有機ニッケルを添加する場合、有機ニッケルはアリル化合物100重量部に対して100〜5000重量部とすることが好ましい。より好ましくは400〜1000重量部である。
また、上記アリル化合物にフォスフィンを添加する場合、フォスフィンはアリル化合物100重量部に対して25〜200重量部とすることが好ましい。より好ましくは50〜150重量部である。
【0016】
上記リビング重合は、微粒子形状を安定的に合成するために、アレンモノマーは溶解するが、アレンモノマーを重合して成るポリマーは溶解しない溶媒中で重合する、いわゆる分散重合系で行うことが好ましい。このような溶媒を貧溶媒という。アレンモノマーを溶解しない溶媒を用いると、アレンモノマーが開始剤との反応性が極端に遅くなり、重合が進行しなくなる可能性がある。また、アレンモノマーを重合して成るポリマーを溶解する溶媒を用いると、重合は進行するものの、微粒子形状を得ることが困難になる可能性がある。このような溶媒としては、特に限定されず、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、塩化メチレン等の非極性溶媒のほか、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒を用いることができる。これらの溶媒は、1種類又は2種類以上用いてもよい。これらの中では、水およびメタノール、エタノールを適宜混合して使用するか、トルエン、塩化メチレンを使用することが好ましい。
また、溶媒の添加量は、上記アレンモノマー100重量部に対し、400〜100000重量部とすることが好ましい。400重量部未満であると、重合過程で凝集や粗大粒子が発生する可能性がある。また、100000重量部を超えると、重合によって得られるポリマーが溶媒に溶けたまま微粒子形状を形成しなくなったり、微粒子形状が得られても、溶媒に対して非常に少量であるために溶媒からの単離が困難となったりする可能性がある。より好ましくは900〜9900重量部である。更に好ましくは1150〜4900重量部である。
【0017】
上記リビング重合において、微粒子形状を安定的に合成するために、分散安定剤を用いることが好ましい。分散安定剤を用いると、重合により形成された微粒子同士が合一して凝集体を形成したり、粗大な粒子を形成したりすることを防ぐことができる。このような分散安定剤としては、例えば、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。特にポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリメチルメタクリレート等が好ましい。
上記分散安定剤は、アレンモノマー100重量部に対して、1〜100重量部とすることが好ましい。1重量部未満であると、重合により形成された微粒子同士が合一して凝集体を形成したり、粗大な粒子を形成したりする可能性がある。100重量部を超えると、溶媒の粘度が高くなり、攪拌が均一に行われなくなり、これまた凝集体を形成する可能性がある。より好ましくは5〜50重量部である。更に好ましくは10〜40重量部である。
【0018】
上記水酸基含有アレンモノマーは、SP値が10以上である。このようにSP値が高い水酸基含有アレンモノマーを用いることにより、得られる親水性樹脂粒子は、高い親水性を有するとともに、リビング重合を経て重合したときに、分子量が均一な重合体を得ることができる。また、リビング重合を経て重合することで、水酸基を均一に粒子表面に導入することが可能となる。
【0019】
上記水酸基含有アレンモノマーのSP値の下限は10である。10未満であると、親水性が低く、クロマトグラフィー用充填剤等に用いた場合、分離物質との相互作用が小さく効果的な分離ができない。好ましい下限は12、好ましい上限は20である。
なお、本明細書においてSP値とは、Fedorsの式δ
2=ΣE/ΣV(δはSP値、Eは蒸発エネルギー、Vはモル体積を意味する。)により算出される計算値を意味する。なお、SP値の単位は(cal/cm
3)
0.5である。Fedorsの方法については、日本接着協会誌、1986年22巻566ページに記載されている。
【0020】
上記SP値が10以上の水酸基含有アレンモノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチルアレン、ヒドロキシエチルアレン、ヒドロキシプロピルアレン、ヒドロキシブチルアレン、ジヒドロキシメチルアレン、ビス(ヒドロキシメチル)アレン、ビス(ヒドロキシエチル)アレン、ジヒドロキシエチルアレン、ジヒドロキシプロピルアレン、ジヒドロキシブチルアレン、ヒドロキシフェニルアレン、ヒドロキシフェノキシアレン、ヒドロキシメトキシアレン、ヒドロキシエトキシアレン、ヒドロキシプロピオキシアレン、ジヒドロキシエトキシアレン、ジヒドロキシプロピオキシアレン等が挙げられる。
【0021】
上記水酸基含有アレンモノマーは、1分子あたり2個以上の水酸基を有することが好ましい。このように水酸基を複数有することで、少ない水酸基含有アレンユニットの導入量で粒子表面の水酸基密度を上げ、効果的に親水性を付与することができる。
上記1分子あたり2個以上の水酸基を有する水酸基含有アレンモノマーとしては、例えば、ジヒドロキシメチルアレン、ジヒドロキシエチルアレン、ジヒドロキシプロピルアレン、ジヒドロキシブチルアレン、ジヒドロキシエトキシアレン、ジヒドロキシプロピオキシアレン等が挙げられる。
【0022】
上記水酸基含有アレンモノマーは、炭素数が3以上のヒドロキシアルキル基を側鎖に有することが好ましい。このようなヒドロキシアルキル基を有することで、水酸基がポリマー主鎖に対して自由に立体配座することができ、その結果、水酸基と相互作用を及ぼす物質に対し、より強固な相互作用を及ぼすことができる。よって本発明で得られる親水性樹脂粒子をクロマトグラフィー充填剤として用いた場合、標的物質の捕捉性を向上することができる。
上記炭素数が3以上のヒドロキシアルキル基を側鎖に有する水酸基含有アレンモノマーとしては、例えば、ヒドロキシプロピルアレン、ヒドロキシブチルアレン、ジヒドロキシプロピルアレン、ジヒドロキシブチルアレン、ヒドロキシプロピオキシアレン、ジヒドロキシプロピオキシアレン等が挙げられる。
【0023】
上記水酸基含有アレンモノマーの添加量は、使用モノマーの全量に対して好ましい下限は10重量%である。上記水酸基含有アレンモノマーの添加量が10重量%未満であると親水性樹脂粒子が生成しにくくなることがある。
上記水酸基含有アレンモノマーの添加量のより好ましい下限は30重量%である。
【0024】
本発明の親水性樹脂粒子の製造方法としては、上記SP値が10以上の水酸基含有アレンモノマーを用いてリビング重合を行う工程を有するものであれば、特に限定されないが、水酸基含有アレンモノマー単独で重合しても良いし、他のアレンモノマーと併用しても良い。
他のアレンモノマーを併用する場合、他のアレンモノマーは炭化水素系アレンモノマーのような疎水性ポリマーを形成するようなモノマーであることが好ましい。
先に他のアレンモノマーを重合を行うことで疎水性樹脂コア粒子を作成する工程1を行った後、得られた疎水性樹脂コア粒子及びSP値が10以上の水酸基含有アレンモノマーを用いてリビング重合を行い、前記疎水性樹脂コア粒子の表面に親水性ポリマー層を形成する工程2を行う方法を用いても良い。
このような方法を用いることで、粒子の凝集を招くことなく合成し、粒径制御を容易にできるという利点がある。
すなわち、比較的高極性の溶媒中で疎水性樹脂コア粒子を析出させて核材を形成し、後に水酸基含有アレンモノマーを重合して、コア粒子上に親水性の樹脂層を形成させれば、高極性溶媒中でも安定して分散状態を保つことができる。
【0025】
上記工程1では、炭化水素系アレンモノマーを用いてリビング重合を行うことで疎水性樹脂コア粒子を作製する。
【0026】
上記炭化水素系アレンモノマーとしては、例えば、フェノキシアレン、メトキシアレン、エトキシアレン、プロピオキシアレン、ブトキシアレン、アレン(1,2−プロパジエン)、メチルアレン、エチルアレン、プロピルアレン、ブチルアレン、イソプロピルアレン、ヘキシルアレン、フェニルアレン、ベンジルアレン、ジメチルアレン、ジエチルアレン、ジヘキシルアレン、ジフェニルアレン、置換アルキルブタジニエルエーテル、アレン酸エステル、ポリオキシエチレンアレニルアルキルエーテル等が挙げられる。
上記フェノキシアレンとしては、例えば、フェノキシアレン、(4−tert−ブチルフェノキシ)アレン、(4−アセチルフェノキシ)アレン等が挙げられる。
【0027】
また、上記炭化水素系アレンモノマーとしては、SP値が9以下の炭化水素系アレンモノマーを用いることが好ましい。
これにより、比較的高極性の溶媒中で、核材となる樹脂コア粒子を生成することができるという利点がある。
上記SP値が9以下の炭化水素系アレンモノマーとしては、例えば、メトキシアレン、エトキシアレン、プロピオキシアレン、ブトキシアレン、(4−tert−ブチルフェノキシ)アレン、アレン、メチルアレン、エチルアレン、プロピルアレン、ブチルアレン、イソプロピルアレン、ヘキシルアレン、フェニルアレン、ベンジルアレン、ジメチルアレン、ジエチルアレン、ジヘキシルアレン、ジフェニルアレン等が挙げられる。
【0028】
上記工程1では、必要に応じて官能基含有アレンモノマーを共重合させても良い。
官能基含有アレンモノマーとしては、例えば、カルボキシメチルアレン、2−カルボキシエチルアレン、ジカルボキシルメチルアレン、2,2−ジカルボキシエチルアレン、アミノメチルアレン、2−アミノエチルアレン、シアノメチルアレン、2−シアノエチルアレン等が挙げられる。
【0029】
上記疎水性樹脂コア粒子は、平均粒子径の好ましい下限が0.001μm、好ましい上限が1000μmである。平均粒子径が0.001μm未満であると、コア粒子表面上に水酸基含有アレンポリマーを均質に形成できないことがある。平均粒子径が1000μmを超えると、重合中に粒子が凝集することがある。上記平均粒子径のより好ましい下限は0.005μm、より好ましい上限は100μmである。
なお、上記疎水性樹脂コア粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡、又は、電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の疎水性樹脂コア粒子を観察して得られた直径の平均値を意味する。
【0030】
また、上記疎水性樹脂コア粒子の平均粒子径は、CV値の好ましい上限が30%である。CV値が30%を超えると、疎水性樹脂コア粒子が粒子径分布の広いものとなる。CV値のより好ましい上限は20%である。なお、CV値は、標準偏差を平均粒子径で割った値の百分率(%)で示される数値である。
【0031】
上記工程1における上記炭化水素系アレンモノマーの添加量は、開始剤1重量部に対して好ましい下限は5重量部、好ましい上限は1000重量部である。上記炭化水素系アレンモノマーの添加量が5重量部未満であると疎水性樹脂コア粒子が生成しにくくなることがあり、1000重量部を超えると、疎水性樹脂コア粒子同士の凝集を招くことがある。
上記炭化水素系アレンモノマーの添加量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は200重量部である。
【0032】
上記工程2は、工程1を行った後、得られた疎水性樹脂コア粒子及びSP値が10以上の水酸基含有アレンモノマーを用いてリビング重合を行い、前記疎水性樹脂コア粒子の表面に親水性ポリマー層を形成する工程である。
【0033】
上記工程2では、リビング重合を用いることで、炭化水素系アレンポリマーに水酸基含有アレンモノマーを共重合させることができ、その結果、均一な厚みを有する水酸基含有アレンポリマー層を形成することができる。また、上記水酸基含有アレンポリマー層の厚みを所望の厚みに制御することが可能となる。
【0034】
上記工程2において使用する水酸基含有アレンモノマー、開始剤、重合溶媒、重合条件については、上記と同様とすることが好ましい。
上記工程2においても、炭素数が3以上のヒドロキシアルキル基を側鎖に有する水酸基含有アレンモノマーを用いることが好ましい。
【0035】
上記工程2における上記水酸基含有アレンモノマーの添加量としては、形成する水酸基含有アレンポリマー層の厚みに応じて決定されるが、上記疎水性樹脂コア粒子100重量部に対して0.1〜700重量部であることが好ましい。上記範囲内とすることで、適度な厚みを有する水酸基含有アレンポリマー層を形成することが可能となる。より好ましくは、疎水性樹脂コア粒子100重量部に対して1〜100重量部である。
【0036】
上記工程2において形成される水酸基含有アレンポリマー層の厚みの好ましい下限は0.0001μm、好ましい上限100μmである。厚みが0.0001μm未満であると、水酸基含有アレンポリマーに由来する親水性等の効果が十分得られないことがある。厚みが100μmを超えると、厚みの均一性が失われることがある。上記厚みのより好ましい下限は0.001μm、より好ましい上限は10μmである。
【0037】
上記リビング重合の具体的方法としては、例えば、窒素置換した重合容器に予め調製したπ−アリルニッケル触媒に溶媒、水酸基含有アレンモノマーを添加し、室温で数時間攪拌する方法が挙げられる。
なお、重合温度は、反応速度の観点から0〜90℃が好ましい。
【0038】
本発明の親水性樹脂粒子の製造方法で得られる親水性樹脂粒子は、平均粒子径の好ましい下限が0.001μm、好ましい上限が1000μmである。平均粒子径が0.001μm未満であると、重合系の粘度が上昇して粒子を溶媒と分離できないことがある。平均粒子径が1000μmを超えると、重合中に粒子が凝集することがある。上記平均粒子径のより好ましい下限は0.005μm、より好ましい上限は100μmである。
なお、上記親水性樹脂粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡、又は、電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の親水性樹脂粒子を観察して得られた直径の平均値を意味する。
【0039】
また、上記親水性樹脂粒子の平均粒子径は、CV値の好ましい上限が10%である。CV値が10%を超えると、粒子径分布が広くなり過ぎる。CV値のより好ましい上限は7%である。なお、CV値は、標準偏差を平均粒子径で割った値の百分率(%)で示される数値である。
【0040】
本発明の親水性樹脂粒子の製造方法で得られる親水性樹脂粒子を構成するポリマーの分子量分布(=重量平均分子量/数平均分子量)は1.5以下である。
上記分子量分布が1.5より大きくなると、粒子径分布が広くなるほか、2種類以上のモノマーを用いてブロックポリマーを合成する際、各ブロックの組成比のばらつきが大きくなる。
好ましくは1.0〜1.4である。
【0041】
本発明で得られる親水性樹脂粒子は、スペーサー、表面改質剤、艶消し剤、顔料、化粧品、光拡散剤等のほか、HPLC用充填剤、イオンクロマト用充填剤、金属精製用キレート樹脂、蛋白質精製用樹脂等として好適に用いることができる。