(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態のゴルフクラブ1を示す。
図1は、ゴルフクラブ1のヘッド近傍のみを示している。
図2は、ゴルフクラブ1の分解図である。
【0016】
ゴルフクラブ1は、ヘッド3、シャフト5、スリーブ7及びネジ9を有する。ゴルフクラブ1は、更に、ワッシャー11を有する。シャフト5の先端部に、スリーブ7が固定されている。この固定は、接着剤による接着である。シャフト5の後端部には、図示されないグリップが取り付けられている。
【0017】
ヘッド3は、本体M3を有する。
図1及び
図2が示すように、本体M3は、クラウンc3、ソールs3、フェースf3及びホーゼルh3を有する。
【0018】
本実施形態のヘッド3は、ウッド型ゴルフクラブである。ただし、ヘッド3のタイプは限定されない。ヘッド3として、ウッド型、ユーティリティ型、ハイブリッド型、アイアン型及びパターヘッドが例示される。また、シャフト5として、カーボンシャフト及びスチールシャフトが例示される。
【0019】
ネジ9を締めることにより、スリーブ7がヘッド3に固定される。よって、スリーブ7に固定されているシャフト5が、ヘッド3に取り付けられる。ネジ9を緩めることにより、スリーブ7がヘッド3から外されうる。よって、スリーブ7に固定されているシャフト5が、ヘッド3から取り外されうる。このように、シャフト5は、ヘッド3に、取り外し可能に取り付けられている。
【0020】
図3は、スリーブ7の断面図である。
図4は、ヘッド3の平面図である。
図5は、ヘッド3の側面図である。
図6は、ヘッド3の底面図である。
図7は、
図6のA−A線に沿った断面図である。
図7が示すように、ヘッド3は中空である。
【0021】
ホーゼルh3は、スリーブ7を挿入するためのホーゼル孔hz1(
図4参照)と、ネジ9を挿通するための通孔th1(
図6参照)とを有する。通孔th1は、ホーゼル孔hz1の底部を貫通している。
【0022】
スリーブ7は、上部7aと、中間部7bと、下部7cとを有する。上部7aと中間部7bとの境界には、段差面ds1が形成されている。
図3が示すように、スリーブ7は、シャフト孔7dとネジ孔7eとを有する。シャフト孔7dは、上部7aを貫通し、中間部7bに至っている。シャフト孔7dは、上側(シャフト側)に開口している。ネジ孔7eは、下部7cに設けられている。ネジ孔7eは、下側(ソール側)に開口している。
【0023】
図1が示すように、使用可能な組立状態において、上部7aは外部に露出している。この組立状態では、段差面ds1が、ヘッド3のホーゼル端面13に当接している。
図1が示すように、上部7aの下端の外径は、上部7aは、ホーゼル端面13の外径に略等しい。上記組立状態において、上部7aは、フェラルのような外観を呈する。上記組立状態において、中間部7b及び下部7cは、ホーゼル孔hz1に挿入されている。中間部7bの外面は円周面を有しており、この円周面が、ホーゼル孔hz1の内面に面接触している。この面接触により、ホーゼル孔hz1は、中間部7bを支持している。
【0024】
スリーブ7の下部7cは、回転防止部rp1を有する。回転防止部rp1の断面形状は、非円形である。本実施形態では、回転防止部rp1は、複数の凸部t1を有する。凸部t1は、半径方向外側に向かって突出している。複数の凸部t1は、周方向において等間隔で配置されている(
図2参照)。
【0025】
回転防止部rp1は、ヘッド3に設けられた回転防止部(図示されず)と係合している。図示しないが、ヘッド3の回転防止部には、複数の凹部が設けられている。これら複数の凹部が、周方向において等間隔で配置されている。各凹部の形状は、前述した凸部t1の形状に対応している。凸部t1のそれぞれが、上記凹部のそれぞれに係合している。これらの係合により、ヘッド3とスリーブ7との相対回転が防止されている。
【0026】
図3が示すように、シャフト孔7dの中心軸線h1は、スリーブ7の中心軸線z1に対して傾斜している。
図3に示される角度θ1は、軸線h1と軸線z1との成す角度である。この傾斜に起因して、シャフト5の軸線s1は、ホーゼル孔の軸線e1に対して傾斜している。この傾斜角度も、θ1である。
【0027】
スリーブ7は、複数の周方向位置において、ヘッド3に固定されうる。これら複数の周方向位置及び上記角度θ1に起因して、ヘッド3に対するシャフト5の軸線s1の方向は変化しうる。スリーブ7の周方向位置によって、フェース角、ライ角及びリアルロフト角が変化しうる。スリーブ7の周方向位置を選択することにより、フェース角、ライ角及びリアルロフト角が調整されうる。この調整では、フェース角、ライ角及びリアルロフト角が、互いに連動する。
【0028】
スリーブ7の抜け止めは、スリーブ7とネジ9とのネジ結合により達成される。組立状態において、ネジ9は、上記通孔th1に挿通され、且つ、スリーブ7のネジ孔7eにネジ結合している。組立状態において、ネジ9の頭部は、上記通孔th1を通過することができない。ネジ9の頭部は、ワッシャー11を介して、ヘッド3の下面f1(
図6参照)に当接している。この当接により、ネジ9は、軸力を生ずる。この軸力により、段差面ds1は、ホーゼル端面13に押しつけられている。この軸力により、スリーブ7の軸方向上方への移動が規制されている。ネジ9により、スリーブ7の軸方向における固定が維持されている。
【0029】
図6が示すように、ヘッド3は、接地部材Y1と、移動規制部材Y2とを有する。本実施形態では、移動規制部材Y2は、ネジ体15である。ネジ体15の中心軸線は、直線である。
【0030】
図7が示すように、このネジ体15は、第1非ネジ部15aと、第2非ネジ部15bと、雄ネジ部15cと、抜け止め部15dとを有する。第1非ネジ部15aは、ネジ体15の一端部である。第1非ネジ部15aは、円柱である。第2非ネジ部15bは、ネジ体15の他端部である。第2非ネジ部15bは、円柱である。雄ネジ部15cは、第1非ネジ部15aと第2非ネジ部15bとの間に形成されている。抜け止め部15dは、フランジである。抜け止め部15dは、第1非ネジ部15aと雄ネジ部15cとの間に形成されている。
【0031】
図8は、ヘッド本体M3の底面図である。
図9は、
図8のB−B線に沿った断面図である。
図8の円内に示されるのは、
図8のC−C線に沿った拡大断面図である。
【0032】
図8が示すように、本体M3は、スライド部S1を有している。スライド部S1は、スライド溝を形成している。スライド部S1は、スライド底面17と、スライド側面19と、スライド端面21とを有する。スライド側面19は、トウ側及びヒール側のそれぞれに設けられている。
【0033】
図6が示すように、本体M3は、支持部材23を有する。支持部材23は、本体M3に固定されている。この固定の方法として、溶接、接着、圧入及びネジ止めが例示される。
【0034】
図9が示すように、本体M3は、段差面25を有する。
図7が示すように、支持部材23の端面(後述の前面23e)が、段差面25に当接している。段差面25により、支持部材23の位置決めが達成されている。
【0035】
図9が示すように、本体M3は、支持凹部27を有する。支持凹部27は、スライド端面21に形成されている。支持凹部27は、第2非ネジ部15bを、回転可能に保持している。
【0036】
本実施形態では、接地部材Y1は、ネジ体15の回転に伴いスライド移動しうるスライド体29である。
【0037】
図10(a)は、スライド体29(接地部材Y1)の底面図である。
図10(b)は、スライド体29の側面図である。
図10(c)は、スライド体29の正面図である。
【0038】
スライド体29は、ネジ孔29aと、側面29bと、接地面29cと、上面29dとを有する。側面29bは、トウ側及びヒール側のそれぞれに設けられている。ネジ孔29aは、雌ネジである。ネジ体15は、ネジ孔29aを貫通している。ネジ孔29aは、ネジ体15にネジ結合している。側面29bのそれぞれは、スライド側面19のそれぞれに接触している。上面29dは、スライド底面17に接触している。スライド体29は、ネジ体15によって、位置決めされつつ、保持されている。
【0039】
スライド体29は、スライド部S1に、スライド可能に挿入されている。
図8の拡大断面図が示すように、両側のスライド側面19は傾斜を有する。この傾斜は、アンダーカットを形成している。この傾斜に対応して、スライド体29の側面29bも傾斜を有する。スライド体29は、ヘッド3の後方から、スライド部S1に挿入される。スライド体29がスライドするとき、側面29bとスライド側面19とが摺動する。両側のスライド側面19の上記アンダーカットは、スライド体29の脱落を防止している。なお、このようなアンダーカットは無くても良い。スライド体29は、ネジ体15によっても保持されている。
【0040】
図11(a)は支持部材23の底面図である。
図11(b)は支持部材23の正面図である。支持部材23は、貫通孔23aと、側面23bと、下面23cと、上面23dと、前面23eとを有する。
【0041】
両側の側面23bのそれぞれは、本体M3の段差面31(
図8参照)に当接している。前面23eは、段差面25に当接している。側面23bは、本体M3の底面33(
図8参照)に当接している。これらの当接により、支持部材23は、精度良く位置決めされている。
【0042】
図7が示すように、ネジ体15の第1非ネジ部15aは、支持部材23によって回転可能に支持されている。第1非ネジ部15aは、貫通孔23aに挿入されている。第1非ネジ部15aは、貫通孔23aによって回転可能に支持されている。一方、第2非ネジ部15bは、支持凹部27によって回転可能に支持されている。
【0043】
ヘッド3の典型的な組立方法は以下の通りである。先ず、ネジ体15が、スライド体29のネジ孔29aにネジ込まれる。次に、第2非ネジ部15bが支持凹部27に挿入される。次に、第1非ネジ部15aが貫通孔23aに挿入される。最後に、支持部材23が本体M3に固定される。
【0044】
図7が示すように、抜け止め部15dは、支持部材23の前面23eに当接している。この抜け止め部15dは、ネジ体15の軸方向後方への移動を規制している。なお抜け止め部15dは無くても良い。雄ネジ部15cのネジ山が、抜け止め部として機能してもよい。
【0045】
ネジ体15を軸回転させることにより、スライド体29は移動する。ネジ体15の軸回転は、例えば、専用の工具によって達成されうる。第1非ネジ部15aの端部は、ネジ体15の軸回転を容易としうる形態を有するのが好ましい。この軸回転を容易としうる形態として、非円形の外形、非円形の凹部、溝等が挙げられる。本実施形態では、第1非ネジ部15aの端部は、非円形の外形(断面が六角形の外形)である。
【0046】
後述されるフェース角測定状態において、スライド体29(接地部材Y1)は水平面HPに接する。スライド体29の位置に起因して、フェース角が変化する。
【0047】
スライド移動が可能な範囲において、スライド体29の位置は無段階で調整されうる。よって、微妙なフェース角の調整が可能である。
【0048】
図12(a)、
図12(b)及び
図12(c)は、フェース角の調整について説明するための断面図である。上述の通り、本実施形態では、フェース角の調整は、無段階である。
図12(a)、
図12(b)及び
図12(c)で示される3つの状態は、例示である。
【0049】
図12(a)では、スライド体29が最もバック側に位置している。
図12(c)では、スライド体29が最もフェース側に位置している。
図12(b)では、スライド体29が中間に位置している。
【0050】
図12(a)では、
図12(b)に比較して、フェース角が開いている。ソールs3を接地させてアドレスすると、
図12(a)のヘッドは、
図12(b)のヘッドに比較して、フェースが右を向きやすい。
図12(c)では、
図12(b)に比較して、フェース角が閉じている。ソールs3を接地させてアドレスすると、
図12(c)のヘッドは、
図12(b)のヘッドに比較して、フェースが左を向きやすい。
【0051】
このように、スライド体29(接地部材Y1)の位置に起因して、フェース角が変化しうる。本実施形態では、スライド体29(接地部材Y1)がバック側に位置するほど、フェース角は開く。換言すれば、スライド体29(接地部材Y1)がフェース側に移動するほど、フェース角は閉じる。
【0052】
スライド体29は質量を有している。スライド体29の移動に伴い、ヘッド3の重心が移動する。本実施形態では、次の関係Aが達成されうる。
・[関係A]:フェース角が開くほど、ヘッド重心がバック側に位置する。
【0053】
インパクトでフェースが開いた場合、スライスが生じやすい。一方、ヘッド重心がバック側であるほど、重心アングルが大きくなりやすい。公知の通り、重心アングルが大きい場合、インパクトでフェースが返りやすい。上記関係Aが成立している場合、フェース角と重心アングルとの相殺により、過度なスライスが抑制されうる。
【0054】
ソールs3に設けられたスライド体29(接地部材Y1)及びネジ体15(移動規制部材Y2)は、ヘッドの重心を低くしうる。低重心のヘッドは、高い打ち出し角度及び少ないバックスピンを実現しうる。低重心のヘッドは、飛距離の増大に寄与しうる。
【0055】
このように、本実施形態では、フェース角の調整に加えて、ヘッドの重量配分が調整されうる。よって、上述のような相乗的な効果が奏されうる。
【0056】
図13は、本発明の第2実施形態に係るヘッド43の底面図である。
図14は、
図13のA−A線に沿った断面図である。
図15は、ヘッド43の側面図である。
図16は、ヘッド43の背面図である。なお、このヘッド43には、前述した第1実施形態のシャフト5、スリーブ7及びネジ9が装着されうる。
【0057】
ヘッド43は、本体M43を有する。
図13から
図16が示すように、本体M43は、クラウンc43、ソールs43、フェースf43及びホーゼルh43を有する。
【0058】
ヘッド本体M43は、スライド部S2を有している。平面視におけるこのスライド部S2の形状は、前述したスライド部S1と同様である。
【0059】
スライド部S2は、スライド溝を形成している。スライド部S2は、スライド底面45(
図14参照)、側面47(
図13及び
図16参照)及びスライド端面49を有する。
【0060】
前述したスライド部S1のスライド側面19と同様に、側面47は傾斜している。両側の側面47により、アンダーカットが形成されている(
図16参照)。
【0061】
図13及び
図14が示すように、ヘッド43は、接地部材Y1と、移動規制部材Y2とを有する。本実施形態では、複数の移動規制部材Y2が設けられている。本実施形態では、2つの移動規制部材Y2が設けられている。
【0062】
本実施形態において、接地部材Y1は、スライド体51である。このスライド体51は、スライド部S2にスライド挿入されている。スライド体51の両側の側面には、上述した側面47に対応した傾斜が設けられている。よって、前述したスライド体29と同様に、スライド体51の脱落は防止されている。
【0063】
本実施形態において、移動規制部材Y2は、位置決め部材53である。複数の位置決め部材53が設けられている。
図13及び
図14が示すように、2つの位置決め部材53が設けられている。
【0064】
位置決め部材53は、スライド部S2にスライド挿入されている。スライド体51と同様に、位置決め部材53の両側の側面には、側面47に対応した傾斜が設けられている。よって、前述したスライド体51と同様に、位置決め部材53の脱落は防止されている。
【0065】
このように、スライド体51及び全ての位置決め部材53は、スライド部S2によって、スライド可能に保持されている。
【0066】
ヘッド43は、固定部材55を有する。この固定部材55は、ヘッド本体M43に、取り外し可能に取り付けられている。本実施形態では、ネジ止めによって、固定部材55がヘッド本体M43に取り付けられている。固定部材55は、ネジ止めのための貫通孔を有しており、この貫通孔にネジsc10が挿入されている。
【0067】
ヘッド本体M43には、ネジ穴sh10が設けられている。このネジ穴sh10は、雌ネジを形成している。ネジ穴sh10とネジsc10とのネジ結合により、固定部材55はヘッド本体M43に固定されている。
【0068】
固定部材55は、スライド部S2のスライド挿入口を塞いでいる。固定部材55が本体M43に取り付けられている場合、スライド体51及び位置決め部材53をスライド部S2から取り出すことはできない。
【0069】
スライド部S2に、スライド体51と、複数(2つ)の位置決め部材53とが、スライド挿入されている。スライド体51と複数の位置決め部材53とは互いに当接している。スライド体51と位置決め部材53との配列順序は自由に設定されうる。スライド体51及び2つの位置決め部材53のうち、最もバック側にある部材は、固定部材55に当接している。スライド体51及び位置決め部材53は、スライド端面49と固定部材55とに挟まれる。固定部材55は、スライド体51及び複数の位置決め部材53のスライド移動を防止している。
【0070】
固定部材55の固定方法は限定されない。固定の確実性の観点から、機械的結合による固定が好ましい。この機械的結合の一例は、上述のネジ結合である。
【0071】
機械的結合の他の例として、特開2012−139403号公報に記載の着脱機構が挙げられる。この着脱機構では、ヘッドにキャビティ体が取り付けられており、このキャビティ体に、ウェイトが、取り外し可能に取り付けられている。例えば、このウェイトが、スライド部S2の挿入口近傍に配置されうる。このウェイトが、スライド体51及び位置決め部材53のスライド移動を規制しうる。
【0072】
図17(a)、
図17(b)及び
図17(c)は、フェース角の調整について説明するための断面図である。本実施形態では、フェース角の調整は、3段階である。
【0073】
図17(a)では、スライド体51が最もバック側に位置している。
図17(a)の実施形態では、スライド体51のフェース側に、全て(2つ)の位置決め部材53が配置されている。
【0074】
図17(c)では、スライド体51が最もフェース側に位置している。
図17(c)の実施形態では、スライド体51のバック側に、全て(2つ)の位置決め部材53が配置されている。
【0075】
図17(b)では、スライド体51が中間に位置している。
図17(c)の実施形態では、スライド体51のバック側に第1の位置決め部材53が配置されており、スライド体51のフェース側に第2の位置決め部材53が配置されている。
【0076】
後述のフェース角測定状態では、スライド体51の位置に関わらず、スライド体51の接地面51aが水平面HPに接地する。
【0077】
図17(a)では、
図17(b)に比較して、フェース角が開いている。ソールs43を接地させてアドレスすると、
図17(a)のヘッドは、
図17(b)のヘッドに比較して、フェースが右を向きやすい。
図17(c)では、
図17(b)に比較して、フェース角が閉じている。ソールs43を接地させてアドレスすると、
図17(c)のヘッドは、
図17(b)のヘッドに比較して、フェースが左を向きやすい。
【0078】
このように、スライド体51(接地部材Y1)の位置に起因して、フェース角が変化しうる。本実施形態では、スライド体51(接地部材Y1)がバック側に位置するほど、フェース角は開く。換言すれば、スライド体51(接地部材Y1)がフェース側に移動するほど、フェース角は閉じる。
【0079】
フェース角の調整では、位置決め部材53及びスライド体51の配列順序が変更される。この変更を実施するための典型的な方法は次の通りである。先ず、固定部材55が取り外される。次に、スライド体51及び位置決め部材53がスライド部S2から引き出される。次に、所望の配列順序となるように、スライド体51及び位置決め部材53が、順次、スライド部S2にスライド挿入される。最後に、固定部材55が固定される。
【0080】
スライド体51の数がN1とされ、位置決め部材53の数がN2とされる。N1は、1以上の整数である。N2は、1以上の整数である。好ましくは、N1は1である。フェース角の調整の自由度を考慮すると、好ましくは、N2は2以上である。フェース角の調整作業の容易性の観点から、N2は、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0081】
図13において両矢印D2で示されるのは、位置決め部材53のスライド方向幅である。本実施形態では、複数の位置決め部材53において、幅D2は同一である。複数の位置決め部材53において、幅D2が相違していてもよい。この場合、位置決め部材53の数N2を増やすことなく、固定可能なスライド体51の位置を増やすことができる。よって、フェース角の調整の自由度が向上しうる。
【0082】
位置決め部材53は、スライド体51の固定を確実としている。更に、位置決め部材53により、スライド体51の位置決めが高精度に達成されている。
【0083】
位置決め部材53は質量を有している。位置決め部材53により、スライド体51の移動に伴うヘッド重心の移動が抑制されている。よって、ヘッド重心の移動を抑制しつつ、フェース角を調整することが可能とされている。
【0084】
スライド体51の重量がWaとされ、位置決め部材53の総重量がWbとされる。ヘッド重心の移動を抑制する観点から、比(Wa/Wb)は、下限としては、0.5以上、更には0.7以上、更には0.8以上、更には0.9以上が好ましく、上限としては、1.5以下、更には1.3以下、更には1.2以下、更には1.1以下が好ましい。複数の位置決め部材53が存在する場合、総重量Wbは、これら複数の位置決め部材53の合計重量である。
【0085】
一方、スライド体51の移動に伴い、ヘッド重心の位置を移動させてもよい。この場合、位置決め部材53はスライド体51に対して軽くされるか、又は、位置決め部材53はスライド体51に対して重くされるのが好ましい。この観点から、比(Wa/Wb)は、0.5未満が好ましい。又は、比(Wa/Wb)は、1.5より大きいのが好ましい。比(Wa/Wb)が過大又は過小である場合、重量Wa又は重量Wbが過大となることがある。過大な重量Wa又は過大な重量Wbは、ヘッド本体M43の設計自由度を減少させうる。この観点から、比(Wa/Wb)が0.5未満の場合、比(Wa/Wb)は0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。同じ観点から、比(Wa/Wb)が1.5より大きい場合、比(Wa/Wb)は5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がより好ましい。
【0086】
この実施形態でも、上述した関係Aが達成されうる。
【0087】
スライド体51(接地部材Y1)及び位置決め部材53(移動規制部材Y2)は、ヘッドの重心を低くしうる。低重心のヘッドは、高い打ち出し角度及び少ないバックスピンを実現しうる。低重心のヘッドは、飛距離の増大に寄与しうる。このように、本実施形態でも、フェース角の調整に加えて、ヘッドの重量配分が調整されうる。
【0088】
フェース角の調整可能幅は広いのが好ましい。ただし、過度に閉じたフェース角及び過度に開いたフェース角は、通常は、必要とされない。これらを考慮すると、フェース角の調整可能幅は、下限としては、2°(degree)以上、更には3°以上が好ましく、上限としては、10°以下、更には8°以下、更には6°以下が好ましい。例えば、フェース角の最大値が+1°であり、フェース角の最小値が−1°である場合、フェース角の調整可能幅は、2°である。
【0089】
[接地部材Y1(スライド体29、スライド体51)の材質]
接地部材Y1の材質は限定されない。好ましい材質として、金属、樹脂及び繊維強化樹脂が例示される。強度及び耐久性の観点から、金属が好ましい。金属として、チタン合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ステンレス鋼、タングステン−ニッケル合金及びタングステン合金が例示される。樹脂として、エンジニアリングプラスチック及びスーパーエンジニアリングプラスチックが例示される。繊維強化樹脂として、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)が例示される。ヘッド重心の移動を抑制する場合は、比重の小さい材質が好ましい。この観点からは、繊維強化樹脂、チタン合金、アルミニウム合金及びマグネシウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。ヘッド重心の移動を促進する場合、比重が大きく且つ加工が容易な材質が好ましい。この観点からは、ステンレス鋼及びタングステン−ニッケル合金が好ましい。
【0090】
[位置決め部材53の材質]
位置決め部材53の材質は限定されない。好ましい材質として、金属、樹脂及び繊維強化樹脂が例示される。強度及び耐久性の観点から、金属が好ましい。金属として、チタン合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ステンレス鋼、タングステン−ニッケル合金及びタングステン合金が例示される。樹脂として、エンジニアリングプラスチック及びスーパーエンジニアリングプラスチックが例示される。繊維強化樹脂として、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)が例示される。ヘッド重心の移動を抑制する場合は、比重の小さい材質が好ましい。この観点からは、繊維強化樹脂、チタン合金、アルミニウム合金及びマグネシウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。ヘッド重心の移動を促進する場合、比重が大きく且つ加工が容易な材質が好ましい。この観点からは、ステンレス鋼及びタングステン−ニッケル合金が好ましい。
【0091】
ヘッド本体M3の比重がG1とされ、接地部材Y1の比重がG2とされる。フェース角の調整に伴うヘッド重心の移動を抑制する観点からは、比重G2が比重G1以下であるのが好ましく、比重G2が比重G1よりも小さいのがより好ましい。
【0092】
位置決め部材53の比重がG3とされる。フェース角の調整に伴うヘッド重心の移動を抑制する観点からは、比重G3が上記比重G1以下であるのが好ましく、比重G3が比重G1より小さいのがより好ましい。
【0093】
接地部材Y1(スライド体29、スライド体51)の製造方法は限定されず、鍛造、焼結、鋳造、ダイカスト、NC加工、プレス成形及び射出成形が例示される。位置決め部材53の製造方法は限定されず、鍛造、焼結、鋳造、ダイカスト、NC加工、プレス成形及び射出成形が例示される。
【0094】
[フェース角の測定方法]
フェース角の測定では、ゴルフクラブ1が、規定のライ角で、水平面HP上に静置される。シャフト軸線s1は、水平面HPに対して垂直な平面VP内に配置される。シャフト5は、上記ライ角が保持され、軸線s1方向に移動可能で、且つ、軸線s1を中心に回転可能に、支持されている。このシャフト5の支持を維持しながら、ヘッド3が最も安定するように、ソールs3が水平面HPに接地される。このヘッド3が最も安定した状態が、フェース角測定状態とも称される。このフェース角測定状態において、フェース角が測定される。
図4において二点鎖線で示される直線LFは、フェースf3の中心点FCにおいてフェースf3に接する接線である。この接線LFは、上記水平面HPに対して平行である。この接線LFに基づいて、フェース角が測定される。上記水平面HPと上記平面VPとの交線がLKとされるとき、交線LKと接線LFとの成す角度θが、フェース角である。この角度θは、平面視において測定される。このフェース角は、前述した特開2004−267460号の
図14に示される測定装置によって、測定されうる。特開2004−267460号では、本願におけるフェース角が、フック角と称されている。
【0095】
なお、フェースf3の中心点FCは、平面視におけるフェースf3の図心と定義される。
【0096】
ドライバー(1番ウッド)の場合、上記規定のライ角は、通常、56度以上60度以下である。ドライバーのリアルロフト角は、通常、8度以上13度以下である。ドライバーのクラブ長さは、通常、43インチ以上48インチ以下である。このクラブ長さは、R&A(Royal and Ancient Golf Club of Saint Andrews;全英ゴルフ協会)が定めるゴルフ規則「付属規則II クラブのデザイン」の「1 クラブ」における「1c 長さ」の記載に基づいて測定される。
【0097】
本願では、上記交線LKの方向がトウ−ヒール方向と定義される。このトウ−ヒール方向に対して垂直であり且つ上記水平面HPに対して平行な方向が、フェース−バック方向と定義される。
【0098】
本願では、フェース角の値に、プラス又はマイナスの符号が付与される(
図4参照)。上記交線LKに対してフェースf3が閉じている場合、フェース角がプラスの値で表記される。上記交線LKに対してフェースf3が開いている場合、フェース角がマイナスの値で表記される。
図4に示される状態では、フェースf3は開いており、フェース角はマイナスである。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0100】
[実施例A]
前述したゴルフクラブ1と同じゴルフクラブを作製した。ヘッドは、前述したヘッド3と同じとされた。先ず、圧延材をプレス加工して得た第1部材(フェース部材)を得た。ロストワックス精密鋳造により、第2部材(ボディ)を得た。この第2部材は、ソールに、スライド部S1を有していた。上記第1部材と上記第2部材とを溶接して、ヘッド本体M3を得た。別途、スライド体29が作製された。このスライド体29の材質として、アルミニウム合金が用いられた。前述したように、本体M3、ネジ体15、支持部材23及びスライド体29を組み立てて、ヘッドを得た。支持部材23は本体M3に溶接された。本体M3及び支持部材23の材質は、チタン合金とされた。
【0101】
公知の方法により、シャフト、スリーブ、ワッシャー、ネジ及びグリップを、それぞれ作製した。スリーブの材質はアルミ合金とされた。ネジの材質はチタン合金とされた。スリーブをシャフトの先端部に接着し、シャフトスリーブ部材を得た。このシャフトスリーブ部材をヘッドにネジ止めした。シャフトの後端にグリップを装着し、ゴルフクラブを得た。このヘッドの規定のライ角は、58度であった。
【0102】
ネジ体15を軸回転させて、スライド体29をスライド移動させた。
図12(a)に示されるように、スライド体29を最もバック側に位置させたとき、フェース角は−2度であった。
図12(b)に示されるように、スライド体29を可動範囲の中央に位置させたとき、フェース角は0度であった。
図12(c)に示されるように、スライド体29を最もフェース側に位置させたとき、フェース角は+2度であった。
【0103】
[実施例B]
スライド体29及びソールs3に表示を設けた他は実施例Aと同様にして、実施例Bのゴルフクラブを得た。
図18は、実施例Bに係るヘッドの底面図である。この実施例Bでは、スライド体29(接地部材Y1)に表示部d3が設けられている。本実施形態の表示部d3は、略三角形である。表示部d3により、スライド体29の位置が容易に判別される。
【0104】
一方、ソールs3には、ソール表示部E10が設けられた。ソール表示部E10には、目盛りと文字とが設けられている。ソール表示部E10は、例えば、文字であってもよいし、記号であってもよいし、目盛りであってもよい。実施例Bにおいて、文字は、アルファベット及び数値であった。
【0105】
ソール表示部E10は、フェース角の状態を判別しうる表示を含んでいた。ソール表示部E10において、文字「OP」は、「OPENED」の略である。ソール表示部E10において、文字「NU」は、「NEUTRAL」の略である。ソール表示部E10において、文字「CL」は、「CLOSED」の略である。これらのソール表示部E10と上記表示部d3との位置関係により、フェース角が判別された。
【0106】
ソール表示部E10は、フェース角の値を判別しうる表示を含んでいた。ソール表示部E10において、文字「+2」は、フェース角が+2°であることを示す。表示部d3が「+2」を指すとき、フェース角が+2°であった。ソール表示部E10において、文字「+1」は、フェース角が+1°であることを示す。表示部d3が「+1」を指すとき、フェース角が+1°であった。文字「0」は、フェース角が0°であることを示す。表示部d3が「0」を指すとき、フェース角が0°であった。文字「−1」は、フェース角が−1°であることを示す。表示部d3が「−1」を指すとき、フェース角が−1°であった。文字「−2」は、フェース角が−2°であることを示す。表示部d3が「−2」を指すとき、フェース角が−2°であった。
【0107】
[実施例C]
ヘッドが前述のヘッド43に変更された他は、実施例Aと同様にして、実施例Cのゴルフクラブを得た。先ず、圧延材をプレス加工して得た第1部材(フェース部材)を得た。ロストワックス精密鋳造により、第2部材(ボディ)を得た。この第2部材は、ソールに、スライド部S2を有していた。前述したように、2つの位置決め部材53及びスライド体51をスライド部S2にスライド挿入し、固定部材55がネジ止めされて、ヘッドを得た。スライド体51及び位置決め部材53の材質として、アルミニウム合金が用いられた。
【0108】
2つの位置決め部材53とスライド体51との配列順序を変更して、スライド体51を移動させた。
図17(a)に示されるように、スライド体51を最もバック側に位置させたとき、フェース角は−2度であった。
図17(b)に示されるように、スライド体51を中間に位置させたとき、フェース角は0度であった。
図17(c)に示されるように、スライド体51を最もフェース側に位置させたとき、フェース角は+2度であった。
【0109】
[実施例D]
スライド体51及びソールs43に表示を設けた他は実施例Cと同様にして、実施例Dのゴルフクラブを得た。
図19は、実施例Dに係るヘッドの底面図である。この実施例Dでは、スライド体51(接地部材Y1)に表示部d4が設けられている。本実施形態の表示部d4は、略三角形である。表示部d4により、スライド体51の位置が容易に判別される。
【0110】
一方、ソールs43には、ソール表示部E11が設けられた。ソール表示部E11には、目盛りと文字とが設けられている。ソール表示部E11は、例えば、文字であってもよいし、記号であってもよいし、目盛りであってもよい。実施例Dにおいて、文字は、アルファベットであった。
【0111】
ソール表示部E11は、フェース角の状態を判別しうる表示とされた。ソール表示部E11において、文字「OP」は、「OPENED」の略である。ソール表示部E11において、文字「NU」は、「NEUTRAL」の略である。ソール表示部E11において、文字「CL」は、「CLOSED」の略である。これらのソール表示部E11と上記表示部d4との位置関係により、フェース角が判別された。
【0112】
このように、実施例では、フェース角の調整が容易である。接地部材Y1のスライド方向は、自由に設定されうる。よって、フェース角の調整の自由度は高い。また、必要に応じて、ヘッド重心の調整も可能である。本発明の優位性は明らかである。