(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の開示技術は、複数のワイヤを多段に架設することで、あくまで津波や洪水等に伴う水流は透過させる構成とされている。このため、これら水流による波力をまともに受けることなく漂流物を捕捉することが可能となり、漂流物が石油タンクへ衝突することによる損傷を防ぐことが可能となる。しかしながら、この特許文献1の開示技術では、あくまで石油タンクの周囲を、杭とワイヤ状の防護索条材で囲む配置としている。このため石油タンクの補修等の目的で重機を当該タンクに近づけて作業を行う場合には、かかる杭と防護索条材とが障壁となってしまうという問題点があった。このように、石油タンクの周囲を防護柵で囲む構成では、石油タンクの補修等のような通常の使用形態において必須の作業が妨げられないよう考慮する必要があるが、この特許文献1の開示技術では、かかる点については特段記載されていない。
【0008】
また、津波は押し波のみならず引き波による破壊力も相当大きい。このため、津波襲来想定側にのみ捕捉柵を設ける構成としている特許文献1の開示技術では、津波襲来想定側と反対側からの津波の引き波には対してはあくまで無防備で対抗することができない。その結果、石油タンクは、津波襲来想定側と反対側から、津波の引き波や、その引き波により流されてくる漂流物により被害を受け、損傷してしまう虞がある。
【0009】
また特許文献2の開示技術によれば、支柱101間にワイヤ107を多段に亘り架設するために副柱102を用いる構成が開示され、またこの副柱102に対して緊張器103が取り付けられ、その副柱102の上下端は止め金具109が固定されている。しかしながら、この特許文献2の開示技術は、そもそも牧柵の技術であることから、上述のように石油タンクの補修等を行う場合には何ら想定されておらず、ワイヤ107を頻繁に着脱可能としたものではない。このため、このような牧柵を剛性を向上させてタンクの周囲に配設した場合においても、石油タンクの補修等の目的で重機を当該タンクに近づけて作業を行うことができないという問題点があった。
【0010】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、津波や洪水等に伴い流出する流木や瓦礫等の漂流物を捕捉することで、当該漂流物によるタンク等の建造物の破壊や人的被害を防止できる漂流物捕捉柵及びその組立方法において、当該建造物に対して重機等を近づけて作業も可能なように、柵の着脱を容易に行うことが可能な漂流物捕捉柵及びその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の漂流物捕捉柵は、間隔を空けて立設される支柱間に複数のワイヤを上下に並列させたワイヤパネルが取り付けられた漂流物捕捉柵であって、上記支柱は、隣接する他の支柱との間で相対するように設けられた支柱嵌合部を有し、上記ワイヤパネルは、ワイヤの両端に金具嵌合部が設けられ、上記金具嵌合部を上記相対する支柱嵌合部にそれぞれ
回転自在な遊嵌状態で嵌合させることで上記支柱に取り付けられてなることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の漂流物捕捉柵は、請求項1記載の発明において、上記ワイヤパネルは、1本又は複数段からなるワイヤの両端に設けられた金具嵌合部を有するワイヤパネルユニットを上下に連接して構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の漂流物捕捉柵は、請求項1記載の発明において、上記ワイヤパネルは、互いに間隔を開けた複数段からなる全てのワイヤが取り付けられた一の金具嵌合部を両端に設けてなることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の漂流物捕捉柵は、請求項1〜3のうち何れか1項記載の発明において、上記金具嵌合部は、上記支柱嵌合部の上端から下方向へスライドさせて嵌合可能とされていることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の漂流物捕捉柵は、請求項1〜4のうち何れか1項記載の発明において、上下に並列させた複数のワイヤ間の間隔を一定に保持するための間隔保持材を備え、上記間隔保持材は、その下端を地上から支持するための支持部を有することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の漂流物捕捉柵は、請求項1〜5のうち何れか1項記載の発明において、上記支柱間で相対する支柱嵌合部は、上端の高さを互いに異ならせてなることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の漂流物捕捉柵は、請求項1〜6のうち何れか1項記載の発明において、上記支柱の下端が挿入される基礎鞘管材をさらに備え、上記基礎鞘管材は、その内側壁面に突設された上記支柱の直立姿勢を保持する水平部材と、上記水平部材の下面に設けられた位置決めストッパとを有し、上記支柱は、外周面に鉛直部材が突設され、上記基礎鞘管材への挿入時には、回動操作により当該鉛直部材を上記位置決めストッパに当接させることで位置決めすることを特徴とする。
【0018】
請求項
9記載の漂流物捕捉柵の組立方法は、請求項3記載の漂流物捕捉柵を組み立てる方法であって、上記支柱を設置し、上記各ワイヤを張設された状態となるように両端の金具嵌合部に架設された吊り金具が設けられたワイヤパネルを上記支柱に取り付け、上記吊り金具を取り外すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上述した構成からなる本発明によれば、津波や洪水による水流についてワイヤパネルにおけるワイヤ間を通過させるため、ワイヤパネルは、津波や洪水による波力により漂流物捕捉柵全体に衝撃やダメージが加わるのを防止することができる。
【0020】
これに加えて本発明によれば、津波や洪水等が発生した場合に、漂流物が襲来してきた場合においても、ワイヤパネルにおけるワイヤにより、これを堰き止めることが可能となる。その結果、漂流物は、この漂流物捕捉柵におけるワイヤパネルを乗り越えることなく捕捉することが可能となる。そして、周囲をこの漂流物捕捉柵により囲まれた建造物に対して漂流物が衝突するのを防止することができ、ひいては建造物の損傷及び破壊や、これに伴う人的被害を防止することが可能となる。
【0021】
これに加えて本発明では、ワイヤパネルの着脱作業が容易である。即ち、本発明によれば、ワイヤパネルの両端に取り付けられた金具嵌合部を、支柱における支柱嵌合部に嵌合させてこれらに案内させつつ降下させるのみで取り付けを完了できる。このため、溶接作業等の特段の作業も必要なくなり、取り付けに伴う現場での作業時間の短縮化、作業コストの低減を図ることが可能となる。
【0022】
また本発明によれば、ワイヤパネルを支柱から取り外す場合には、当該ワイヤパネルを持ち上げる動作を行う。かかる動作のみで、ワイヤパネルは、支柱における支柱嵌合部に嵌合されている金具嵌合部により案内させつつ、これを支柱から取り外すことが可能となる。このため、ワイヤパネルの取り外しに伴う現場での作業時間の短縮化、作業コストの低減を図ることが可能となる。
【0023】
特に本発明では、ワイヤパネルの着脱を極めて容易に行う構成とすることで以下の効果が期待される。即ち、建造物が例えば石油タンク等のような重機を近づけて定期的にメンテナンスを行う必要がある場合には、ワイヤパネルを支柱から取り外すことで建造物に対して重機を近づけることが可能となる。その結果、漂流物捕捉柵の存在が重機による作業の障壁になるのを防止することが可能となる。また、重機による作業が完了した後はワイヤパネルを支柱に取り付けて元に戻す必要があるが、上述したようにワイヤパネルの着脱が容易な本発明によればこれらの作業を極めて簡略化させることも可能となる。
【0024】
また、本発明では、支柱の下端が挿入される基礎鞘管材につき、その内側壁面に水平部材を突設させ、位置決めストッパを水平部材の下面に設けて構成し、支柱の外周面には鉛直部材を突設させ、基礎鞘管材への挿入時には、回動操作により当該鉛直部材を位置決めストッパに当接させることで位置決めする。
【0025】
これにより、支柱の取り外しが容易な構成なので、ワイヤパネルを支柱から取り外して、更に支柱も取り外すことでタンクなどの建造物に重機を近づけてメンテナンスする際の作業スペースをより広くすることができる。また、ワイヤパネルだけでなく支柱も漂流物による損傷を受けた際に、支柱の交換も容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明を適用した漂流物捕捉柵を実際に配設する例を示す斜視図である。
【
図2】本発明を適用した漂流物捕捉柵を実際に配設する例を示す平面図である。
【
図3】本発明を適用した漂流物捕捉柵の斜視図である。
【
図4】(a)は本発明を適用した漂流物捕捉柵の正面図であり、(b)は、本発明を適用した漂流物捕捉柵の平面図である。
【
図5】(a)は、この支柱に対して支柱嵌合部を取り付ける形態を示す拡大平面図であり、(b)はその拡大正面図である。
【
図6】金具嵌合部と支柱嵌合部を互いに前後方向から取り付ける例を示す図である。
【
図7】金具嵌合部と支柱嵌合部を互いに前後方向から取り付ける例を示す他の図である。
【
図8】金具嵌合部における継手アーム部に孔を穿設し、この孔にワイヤを締結する例について説明するための図である。
【
図9】本発明を適用した漂流物捕捉柵の組立方法について説明するための図である。
【
図10】両端に配設される金具嵌合部の上端に吊り金具を架設する例を示す図である。
【
図11】支柱間で相対する支柱嵌合部について、上端の高さを互いに異ならせて構成する例について説明するための図である。
【
図12】本発明を適用した漂流物捕捉柵の効果について説明するための図である。
【
図13】金具嵌合部の支柱嵌合部に対する角度を漂流物の流れ方向に追従させる例を示す図である。
【
図14】金具嵌合部と、支柱嵌合部における継手の組合せ例について説明するための図である。
【
図15】ワイヤパネルユニットを上下に連設することでワイヤパネルを構成する例を示す図である。
【
図16】上下に並列させた複数のワイヤ間隔を一定に保持するための間隔保持材を備える例を示す図である。
【
図17】間隔保持材の詳細について説明するための図である。
【
図18】支柱の取り付け方法の詳細について説明するための図である。
【
図19】特許文献2の開示技術について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した漂流物捕捉柵の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明を適用した漂流物捕捉柵1を実際に配設する例を示す斜視図であり、
図2はその平面図である。漂流物捕捉柵1は、例えばタンクや工場、住宅等を初めとした建造物2の周囲に設けられ、間隔を空けて立設される支柱3と、この支柱3間に複数のワイヤ41を上下に並列させたワイヤパネル4が取り付けられている。
【0029】
漂流物捕捉柵1は、津波や洪水等に伴い流出する流木や瓦礫等の漂流物を捕捉することで建造物2を漂流物の襲来から守るために設けられている。このため漂流物捕捉柵1は、いかなる方向からの津波や洪水に対しても対応可能とするため、建造物2の周囲に隙間無く設けられている。
【0030】
図3は、漂流物捕捉柵1の斜視図であり、
図4(a)はその正面図であり、
図4(b)その平面図を示している。
【0031】
支柱3は、基部31が地盤33に建て込まれ、当該基部31から上方に延伸された金属管として構成される。以下、この支柱3は、断面略円形状の管体で構成されている場合を例に挙げて説明をするが、これに限定されるものではなく、その断面形状は矩形状等、いかななる形状で構成されていてもよい。またこの支柱3は、管体で構成される場合のみならず、例えばH形鋼や溝形鋼等の形鋼で具現化されるものであってもよい。支柱3は、隣接する他の支柱3との間で相対するように金属製の支柱嵌合部32が取り付けられる。
【0032】
図5(a)は、この支柱3に対して支柱嵌合部32を取り付ける形態を示す拡大平面図であり、
図5(b)はその拡大正面図である。この支柱嵌合部32は、鋼矢板の継手部分のみを切除することで構成されるものであり、継手アーム部32aと、その先端に形成された継手32bとを有している。継手アーム部32aはその根元部分が支柱3に対して取り付けられる。このとき継手アーム部32aの根元部分が支柱の周面に対して隅肉溶接35を介して溶着されていてもよい。この隅肉溶接35が継手アーム部32aの根元部分を構成する鋼板の表裏にそれぞれ施されることで、支柱嵌合部32は安定して支柱3に固着されることになる。この隅肉溶接35は上下方向において
図5(b)に示すように連続されている場合に限定されるものではなく、断続的に溶接されていてもよい。
【0033】
ワイヤパネル4は、金属製のワイヤ41と、ワイヤ41の両端に設けられた金具嵌合部42を有している。
【0034】
金具嵌合部42は、鋼矢板の継手部分のみを切除することで構成されるものであり、継手アーム部42aと、その先端に形成された継手42bとを有している。継手42bは、支柱嵌合部32における継手32bとの間で互いに嵌合可能とされている。これら継手32bと継手42bとは、互いに嵌合可能であればいかなる形状、構成とされていてもよい。この継手42bと継手32b間の嵌合は、一般的な鋼矢板と同様に何れか一方の継手を他方の継手の上端から下方向へスライドさせて嵌合可能とされている。しかし、これに限定されるものではない。金具嵌合部42と支柱嵌合部32を上下方向ではなく、前後方向から嵌合可能な構成を採用してもよい。
【0035】
図6は、金具嵌合部42と支柱嵌合部32を互いに前後方向から取り付ける例を示している。
【0036】
図6(a)に示すように、金具嵌合部42、支柱嵌合部32は、それぞれ平板状に構成されており、その先端には、継手が特に設けられていない。支柱嵌合部32は、支柱3に対して取り付けられているが、平板状のプレート75により支柱嵌合部32を狭持し、当該プレート75を支柱3に固着させることで安定性を向上させている。金具嵌合部42にはワイヤ41が取り付けられている。
【0037】
これら支柱嵌合部32と金具嵌合部42とを前後方向から嵌合する際には、
図6(b)に示すように、前後方向から支柱嵌合部32と金具嵌合部42とを当接させる。そして、これらに予め開削されている図示しない孔にボルト88を挿入し、これをナット89で螺着することで固定する。これにより、支柱嵌合部32と金具嵌合部42と互いにボルト88とナット89を介して嵌合された状態となる。
【0038】
図7は、金具嵌合部42と支柱嵌合部32を互いに前後方向から取り付ける他の例を示している。
【0039】
図7(a)に示すように、金具嵌合部42、支柱嵌合部32は、それぞれ平板状に構成されており、その先端には、継手が特に設けられていない点は、上述した
図6の構成と同一である。支柱嵌合部32は、支柱3に対して取り付けられているが、平板状のプレート75により支柱嵌合部32を狭持し、当該プレート75を支柱3に固着させることで安定性を向上させている。また支柱嵌合部32には、Uボルト76が金具嵌合部42を取り付ける側において突出させるようにして設けられている。金具嵌合部42には、ワイヤ41が取り付けられている。また金具嵌合部42には
図7(b)に示すように切り込み77がUボルト76の配設箇所に対応させて設けられている。
【0040】
これら支柱嵌合部32と金具嵌合部42とを前後方向から嵌合する際には、
図7(c)に示すように、前後方向から支柱嵌合部32と金具嵌合部42とを当接させる。このとき、切れ込み77にUボルト76を挿通させ、そのUボルト76の先端を金具嵌合部42から突出させるようにして固定し、これらを嵌合する。このときUボルト76内に棒状体79を挿通させて固定するようにしてもよい。
【0041】
このように金具嵌合部42と支柱嵌合部32を互いに前後方向からも嵌合することが可能となる。
【0042】
また金具嵌合部42における継手アーム部42aには、ワイヤ41が溶接等により固着される。ワイヤ41が上述したように金属製で構成されていることから、平板状で構成される継手アーム部42aの表面に対して例えば隅肉溶接43により固着させることが可能となる。ちなみに金具嵌合部42は、縦長に構成することで、ワイヤパネル4を構成する全ての段に亘るワイヤ41を互いに間隔を開けて一枚の金具嵌合部42に固着させることが可能となる。
【0043】
ちなみに、このワイヤ41は、金属製である場合に限定されるものではない。このワイヤ41を金属製以外で構成する場合には、例えば
図8に示すように、金具嵌合部42における継手アーム部42aに孔44を穿設し、この孔44にワイヤ41を締結するようにしてもよい。
【0044】
またワイヤ41は、ワイヤパネル4として支柱3間に配設される上で弛ませた状態で架設されていてもよいし、引っ張られた状態で張設されていてもよい。
【0045】
次に本発明を適用した漂流物捕捉柵1の組立方法について説明をする。
【0046】
先ず
図9(a)に示すように支柱3の基部31を地盤中に建て込む。このとき、支柱3に予め支柱嵌合部32が固着されているのであれば、当該支柱嵌合部32も支柱3とともに立設されることになる。一方、支柱3を建て込んだ後に、この支柱嵌合部32を現場にて溶接により固着させるようにしてもよい。
【0047】
次に
図9(b)に示すようにワイヤ41の両端に金具嵌合部42をそれぞれ取り付けたワイヤパネル4を支柱3間に取り付ける。かかる場合には、先ずワイヤパネル4両端にある金具嵌合部42における継手42bを、支柱嵌合部32における継手32bとの間で嵌合させる。通常は、支柱嵌合部32における継手32bの上端と、金具嵌合部42における継手42bの下端とを嵌合させ、その後にワイヤパネル4全体を下方向(
図9(b)中矢印方向)に降下させる。この段階においては、支柱嵌合部32における継手32bと、金具嵌合部42における継手42bとは互いに嵌合されているため、ワイヤパネル4自体が、これら継手42b、継手32bを介して案内される。その結果、安定させた状態で容易にワイヤパネル4を降下させることができる。
【0048】
最終的に、両端に設けられた金具嵌合部42が地盤上に載置される状態までワイヤパネル4の自重を利用して降下させた段階で組立作業が終了することとなる。
【0049】
ちなみに、この組立作業においては以下に説明する方法を採用するようにしてもよい。
【0050】
図10の例では、両端に配設される金具嵌合部42の上端に吊り金具5を架設する例である。この吊り金具5は、例えば溝形鋼で構成されてなり、両端に開削された図示しない孔部を介して金具嵌合部42にボルト52により接合される。これにより、両端の金具嵌合部42の間隔は、この吊り金具5を介して一定に保持される。
【0051】
即ち、この金具嵌合部42は、あくまでワイヤ41を介して連結されているに過ぎない。このため、特に支柱3への取り付け時において、ワイヤパネル4全体の形状を一定に保持することができない。しかし、このような吊り金具5をワイヤ41の両端にある金具嵌合部42の上端に架設することにより、ワイヤパネル4全体の形状が一定に保持され、支柱3への取り付けをより容易に行うことが可能となる。特に取り付け時には、金具嵌合部42における継手42bを支柱嵌合部32の継手32bに上手く嵌合させる作業が発生するが、金具嵌合部42の間隔がこの吊り金具5を介して一定に保持されていることにより、これらの作業性をより向上させることができる。
【0052】
特にこの金具嵌合部42の間隔が広い場合には、これに応じて吊り金具5の長さを長く構成せざるを得なくなる。かかる場合においても、吊り金具5を溝形鋼で構成することで、吊り金具5の長さを長くする場合においても撓みを防止することが可能となる。但し、この金具嵌合部42の形状は溝形鋼で構成される場合に限定されるものではなく、いかなる形状、材質で構成されていてもよい。
【0053】
また、吊り金具5の上端に吊り部材51を形成するようにしてもよい。
図10では、溝形鋼からなる吊り金具5の上フランジ上面に吊り部材51を設けた例を示している。この吊り部材51には、孔部51bが穿設されている。そして、この孔部51bにロープ等を締結し、クレーン等でワイヤパネル4を吊下げつつ嵌合作業を行うようにしてもよい。
【0054】
ちなみに、これらの嵌合作業を終了させた後、この吊り金具5を金具嵌合部42から取り外して撤去するようにしてもよい。これにより、吊り金具5を他の箇所におけるワイヤパネル4の嵌合作業において使い回しをすることが可能となり、施工コストの低減を図ることが可能となる。
【0055】
また、本発明によれば、例えば
図11に示すように、支柱3間で相対する支柱嵌合部32−1、32−2について、上端の高さを互いに異ならせて構成するようにしてもよい。この
図11の例では、支柱嵌合部32−1の高さを、支柱嵌合部32−2よりも高く構成している。これにより、ワイヤパネル4における金具嵌合部42の一端側を、高さの高い支柱嵌合部32−1の上端に合わせ、嵌合操作を行う。但し、このワイヤパネルにおける既に一方の金具嵌合部42の下端を支柱嵌合部32−1に嵌合させた状態であっても、他方の金具嵌合部42は、支柱嵌合部32−2の高さが低い分においてまだ嵌合されていない。かかる状態では、支柱嵌合部32−1に嵌合されている一方の金具嵌合部42を支点とし、他方の金具嵌合部42を自由に回動させることが可能となる。この回動操作を通じて他方の金具嵌合部42を支柱嵌合部32−2に対して位置合わせを行い、嵌合を実現することが可能となる。他方の金具嵌合部42を支柱嵌合部32−2に嵌合後は、上述と同様にワイヤパネル4を継手42b、継手32bを介して案内させつつ安定させた状態で容易に降下させることができる。
【0056】
このようにして組み立てられた漂流物捕捉柵1は、津波や洪水等が発生した場合において以下に説明する作用を発揮しえる。
【0057】
津波や洪水による水流は、
図12(a)に示すようにワイヤパネル4におけるワイヤ41間を通過していく。このためワイヤパネル4は、津波や洪水による波力をまともに受けることなく、あくまでも透過させることで大きな力を受けることは無くなる。このため、かかる波力により漂流物捕捉柵1に衝撃やダメージが加わるのを防止することができる。
【0058】
これに加えて、漂流物捕捉柵1は、津波や洪水等が発生した場合には、これらに伴い流出する流木、家屋等の瓦礫、車両、船舶の漂流物が漂流する場合にも効果を発揮しえる。例えば、
図12(b)に示すように、津波等にのって漂流物61が襲来してきた場合には、ワイヤパネル4におけるワイヤにより、これを堰き止めることが可能となる。
【0059】
その結果、漂流物61は、この漂流物捕捉柵1におけるワイヤパネル4を乗り越えることなく捕捉することが可能となる。そして、周囲をこの漂流物捕捉柵1により囲まれた建造物2に対して漂流物61が衝突するのを防止することができ、ひいては建造物2の損傷及び破壊や、これに伴う人的被害を防止することが可能となる。
【0060】
特に本発明によれば、継手32b、42bを介して互いに強固に嵌合されているため、ワイヤパネル4は、支柱3に対して強固に取り付けられることとなる。このため、このような漂流物61が衝突してもワイヤパネル4は支柱3から外れることなくこれを捕捉することが可能となる。
【0061】
これに加えて本発明では、ワイヤパネル4の着脱作業が容易である。即ち、本発明によれば、ワイヤパネル4の両端に取り付けられた金具嵌合部42を、支柱3における支柱嵌合部32に嵌合させてこれらに案内させつつ降下させるのみで取り付けを完了できる。このため、溶接作業等の特段の作業も必要なくなり、取り付けに伴う現場での作業時間の短縮化、作業コストの低減を図ることが可能となる。
【0062】
また本発明によれば、ワイヤパネル4を支柱3から取り外す場合には、当該ワイヤパネル4を持ち上げる動作を行う。かかる動作のみで、ワイヤパネル4は、支柱3における支柱嵌合部32に嵌合されている金具嵌合部42により案内させつつ、これを支柱3から取り外すことが可能となる。このため、ワイヤパネル4の取り外しに伴う現場での作業時間の短縮化、作業コストの低減を図ることが可能となる。
【0063】
特に本発明では、ワイヤパネル4の着脱を極めて容易に行う構成とすることで以下の効果が期待される。即ち、建造物2が例えば石油タンク等のような重機を近づけて定期的にメンテナンスを行う必要がある場合には、ワイヤパネル4を支柱3から取り外すことで建造物2に対して重機を近づけることが可能となり、漂流物捕捉柵1の存在が重機による作業の障壁になるのを防止することが可能となる。また、重機による作業が完了した後はワイヤパネル4を支柱3に取り付けて元に戻す必要があるが、上述したようにワイヤパネル4の着脱が容易な本発明によればこれらの作業を極めて簡略化させることも可能となる。
【0064】
また、ワイヤパネル4の着脱が容易な本発明では、仮にワイヤパネル4の何れかが損傷した場合において、その損傷したワイヤパネル4のみを取り外して新たなワイヤパネル4を簡単に配設することでき、取り替えに伴う労力やコストを低減させることが可能となる。
【0065】
なお、ワイヤ41を金具嵌合部42間である程度弛ませて配置するとともに、金具嵌合部42の継手42bと、支柱嵌合部32の継手32bの形状を工夫することで、金具嵌合部42に対して支柱嵌合部32を回転自在に構成してもよい。かかる形態の構成例を
図13に示す。継手32bは、平面視において略円形状とされた円形パイプに少なくともその円弧の一部を切り欠いたスリットが形成されたいわゆるC字状の継手とされている。また、この継手32bに嵌合される、金具嵌合部42の継手42bは、例えば継手アーム部42aを構成する鋼板に対して略垂直に金属板を接合した、断面T字状の継手とされていてもよい。このようなT字状の継手42bを、C字状の継手32bとを互いに嵌合させる場合には、継手32bに形成されたスリットを支点として金具嵌合部42を自在に回転させることが可能となり、いわゆる遊嵌状態となる。
【0066】
このため、
図13に示すように漂流物61が流出してきた場合において、金具嵌合部42の支柱嵌合部32に対する角度を当該漂流物61の流れ方向に追従させることが可能となる。しかもワイヤ41はある程度弛ませて配置されていることから、ワイヤ41自体も漂流物61の流れ方向に対して追従するように、伸びることとなる。このようにして漂流物61の流れに対する追従性を持たせることにより、漂流物61のワイヤ41に対する衝撃力を緩和することができる。その結果、大型の漂流物61が流出してきた場合においても、漂流物捕捉柵1自体がその漂流物61による衝突力で破損してしまうのを防止することができる。なお、継手32bをT字状で構成し、継手42bをC字状で構成しても同一の効果が期待できることは勿論である。
【0067】
ちなみに、継手32bと継手42bとの組合せの例としては例えば
図14(a)に示すように、円弧の一部を切り欠いたスリットが形成されたいわゆるC字状の継手を互いに設けるようにしてもよい。かかる場合には、継手32bにおけるC字状のスリット間に相手側の継手42bの端部を挿入するとともに、継手42bにおけるC字状のスリット間に相手側の継手32bの端部を挿入することで互いを遊嵌することとなる。また
図14(b)に示すように継手32bと継手42bの端部は同一の鉤型形状とするとともに、これらの継手32bと継手42bにおける鉤部を連結継手63を介して連結するようにしてもよい。更に
図14(c)に示すように、継手32bをいわゆるC字状の継手とし、継手42bをこれよりも縮径化された断面円形状の継手を用いるようにしてもよい。因みに、この継手32b、継手42bの構成を互いに入れ替えてもよい。
【0068】
これらの
図14に示す形態においても、同様に金具嵌合部42の支柱嵌合部32に対する角度を当該漂流物61の流れ方向に追従させることができ、漂流物61のワイヤ41に対する衝撃力を緩和することができる。
【0069】
なお、本発明を適用した漂流物捕捉柵1は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば
図15(a)に示すように、ワイヤパネルユニット72を上下に連設することでワイヤパネル4を構成するようにしてもよい。
【0070】
このワイヤパネルユニット72は、1本又は複数段からなるワイヤ41の両端に金具嵌合部42を設けてなる。このワイヤパネルユニット72は、支柱3とほぼ同一の高さで構成される本来の金具嵌合部42を分割することにより構成される。そしてこのワイヤパネルユニット72を複数段に亘り積み重ねて連設することにより、ワイヤパネル4を構成する。
【0071】
このようなワイヤパネルユニット72を組み立てる場合には、下の段から順次ワイヤパネルユニット72を支柱3間に取り付ける。かかる場合も同様に、
図15(b)に示すように、ワイヤパネルユニット72両端にある金具嵌合部42における継手42bを、支柱嵌合部32における継手32bとの間で嵌合させ、その後ワイヤパネルユニット72を下方向に降下させる。これらの動作を各ワイヤパネルユニット72毎に繰り返し実行することにより、当該ワイヤパネルユニット72を下段から順次積み上げていくこととなる。
【0072】
このような構成を採用することにより、仮にワイヤ41が1箇所に亘り損傷した場合等において、ワイヤパネル4全体を取り替えることなく、その損傷したワイヤ41を有するワイヤパネルユニット72のみをピンポイントに取り替えることが可能となり、取り替え時のコストの軽減を図ることが可能となる。
【0073】
また、
図16は、上下に並列させた複数のワイヤ41間の間隔を一定に保持するための間隔保持材81を備える例を示している。間隔保持材81は、金属管又は金属の棒体から構成され、
図17(a)の側断面図、
図17(b)の平面図に示すように、ワイヤ41間の間隔に応じて溝82が設けられている。この溝82に各ワイヤ41を挿入する。これにより、ワイヤ41を溝82を通じて支持することが可能となり、ひいてはワイヤ41間の間隔や高さを、この溝82に応じて揃えることが可能となる。また、ワイヤ41は、漂流物61を捕捉する必要があるため、より太径に構成される場合もある。係る場合にワイヤ41事体が重くなるが、これを溝82を通じて支持することで、その重量を支えることが可能となる。
【0074】
なお、この間隔保持材81の下端には支持部83を設けるようにしてもよい。この支持部83は、例えば平板状とされており、間隔保持材81の下端に固着されている。これにより、間隔保持材81は、この支持部83を介して地盤上に載置させることができ、更には、この支持部83に開削された図示しないボルト孔を介してアンカーボルト84により地盤に固定することも可能となる。
【0075】
なお、本発明によれば、支柱3を地盤へ立設する際において、以下に説明する方法を用いるようにしてもよい。
【0076】
この方法では、
図18(a)に示すように支柱3を立設する前に地盤中又は地盤上に基礎鞘管材9を設置する。基礎鞘管材9は、例えば断面矩形状の角形鋼管92と、この角形鋼管92の底部に設けられたベースプレート91とを有している。そして、この角形鋼管92の相対する内壁には、支柱3の直立姿勢を保持する水平部材95aが突設され、この水平部材95aの下面には位置決めストッパ95bが垂設されている。ちなみに、この水平部材95aは、支柱3の断面円形のサイズや曲率に対応させて凹んだ円弧形状により縁取られている。これにより、支柱3を直立姿勢で保持させることを可能とする。なお支柱3の外周面には、鉛直部材3aを突設させておく。
【0077】
次に基礎鞘管材9の内部へと支柱3を挿入する。そして、
図18(b)に示すように、この支柱3の下端をベースプレート91上に載置して起立させる。支柱3は、水平部材95aにおけるサイズや曲率に対応させて凹んだ円弧形状によって狭持され、直立姿勢を保持することが可能となる。ちなみに、この挿入作業において、支柱3における鉛直部材3aが、基礎鞘管材9の内側壁面に突設した水平部材95aに接触しないように行う。
【0078】
次に支柱3を
図18(b)に示すように図中矢印方向に回動操作を行う。その結果、支柱3に突設した鉛直部材3aが、基礎鞘管材9の位置決めストッパ95bに当接する感触を得て、回動操作を停止する。その結果、
図18(c)に示すように、支柱3の鉛直部材3aが、それぞれ水平部材95aにおける中央部下方において位置決めされることとなる。
【0079】
次に基礎鞘管材9の内側側面と支柱3の外周面とが形成する隙間に充填材を充填する。
【0080】
これらの作業を通じて支柱3を鉛直方向に確実かつ円滑に立設させることが可能となる。また、支柱3の取り外しが容易な構成なので、ワイヤパネル4を支柱3から取り外して、更に支柱3も取り外すことでタンクなどの建造物に重機を近づけてメンテナンスする際の作業スペースをより広くすることができる。また、ワイヤパネル4だけでなく支柱3も漂流物による損傷を受けた際に、支柱3の交換も容易に実現できる。