(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227322
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】多管式貫流ボイラ
(51)【国際特許分類】
F22B 21/06 20060101AFI20171030BHJP
F22B 35/00 20060101ALI20171030BHJP
F23D 14/02 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
F22B21/06 Z
F22B35/00 H
F23D14/02 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-166830(P2013-166830)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34686(P2015-34686A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】高島 博史
(72)【発明者】
【氏名】高畠 重俊
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−117403(JP,U)
【文献】
国際公開第2009/008588(WO,A1)
【文献】
特開平11−141815(JP,A)
【文献】
特開2006−183927(JP,A)
【文献】
特開2013−088107(JP,A)
【文献】
特開平08−178221(JP,A)
【文献】
特開2001−056108(JP,A)
【文献】
特開2010−060149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 21/06
F22B 35/00
F23D 14/00 − 14/18
F23D 14/26 − 14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に長い多数の伝熱管を環状に配置した構造の缶体と、環状に配置した前記伝熱管列の中央部分に設ける燃焼室を持ち、前記燃焼室内の上部に燃焼装置を設けて燃焼装置による燃焼によって前記伝熱管内の缶水を加熱するようにしている多管式貫流ボイラであって、燃焼装置は燃焼量の変更を可能とし、ボイラ缶体内の設定水位は伝熱管途中の高さ位置としている多管式貫流ボイラにおいて、
前記燃焼装置には、下部燃焼域と上部燃焼域を設けており、燃焼量が小さい場合には下部燃焼域のみで燃焼を行い、燃焼量が大きくなると下部燃焼域と上部燃焼域で燃焼を行うように切り替えが行われるようにしており、前記燃焼装置の燃焼部は、上部燃焼域では径の大きさを変更しない円筒形とし、下部燃焼域では径の大きさを下方で細くした先細り形状としておき、下部燃焼域の高さ位置は伝熱管内の設定水位より低い位置となるように配置していることを特徴とする多管式貫流ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直な伝熱管を環状に並べ、伝熱管列によって囲まれた中央部分を燃焼室としておき、燃焼室内で燃焼を行う燃焼装置によって伝熱管を加熱するようにしている多管式貫流ボイラに関するものである。より詳しくは、バーナは予混合ガスを伝熱管方向へ噴射して燃焼を行うものであって、バーナでは燃焼量を高燃焼/低燃焼のように段階的に制御するようにしている多管式貫流ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上部に環状の上部管寄せ、下部にも環状の下部管寄せを設けておき、上下の管寄せ間を多数の垂直な伝熱管で連結することで構成した缶体を持つ多管式貫流ボイラが広く普及している。このボイラでは、環状に並べた伝熱管列の中央部分が燃焼室となり、燃焼室上部に下向きのバーナを設置しておき、燃焼室内でバーナによる燃焼を行うことで、燃焼室を取り囲む伝熱管を加熱する。
【0003】
特開2006−183927号公報には、燃焼室内にバーナを設置しておき、伝熱管群の内周面に向けて予混合ガスを噴射するボイラの記載がある。特開2006−183927号公報に記載のボイラは、内側伝熱管群に近接して設けたバーナから略水平に(内側伝熱管群に対しては略垂直に)予混合ガスを噴射するものである。この状態で燃焼を行うと、内側伝熱管群に直接接触するような火炎が形成されることになる。このような構造にすると、火炎を伴うガスを即座に内側伝熱管群の内周面に衝突させるため、火炎等が効果的に冷却されて(火炎等の温度上昇を抑制するため)、NOxの生成量を低減することができるとされている。
【0004】
ところで貫流ボイラは、一続きの流路を形成しておき、一方から供給した水を流しながら加熱し、他方から蒸気を取り出すものである。そして貫流ボイラでは、伝熱管内の途中に設定した高さ位置まで水を入れておき、バーナによる燃焼で伝熱管を加熱することで、伝熱管表面からの熱を伝熱管内の缶水に伝え、缶水温度を上昇させる。缶水は伝熱管内を上昇しながら加熱され、伝熱管内で沸騰温度まで上昇すると蒸気を発生する。伝熱管はバーナからの熱を受けると温度の上昇が発生するが、伝熱管内に缶水があるならば、伝熱管が吸収した熱は伝熱管内面に接触している缶水に移動するため、伝熱管温度はある程度までしか上昇しない。では、水位を伝熱管の途中に設定しておくと、水位位置より上方の伝熱管では伝熱管内面で接触してる缶水が存在しないことになる。そうなると、缶水による伝熱管の冷却が行えないということになり、上部の伝熱管では温度の上昇が継続し、伝熱管が過熱されてしまうということが考えられる。しかし実際は、伝熱管内では缶水の沸騰が発生しており、沸騰による沸き上がりによって缶水は設定水位よりも上部まで達している。そのため、水位より上方の伝熱管でも缶水に接触することになる。缶水の沸き上がりによって上部の伝熱管でも内面に缶水が存在することになれば過熱は発生しない。
【0005】
逆に水位が高すぎた場合には、持ち上げられる缶水の量が多くなる。ボイラの蒸気出口には気水分離器を設けておき、蒸気と缶水は気水分離器で分離するようにしているが、気水分離器に達する缶水量が多くなると、気水分離器で缶水を分離しきれなくなり、分離できなかった缶水が蒸気に含まれて蒸気の乾き度が低下することになる。そのため、貫流ボイラでは伝熱管途中に水位を設定しておき、適正な水位を維持することができるように、精密な水位制御を行っている。
【0006】
ただし、缶水の沸き上がりは、伝熱管に対する加熱量によって異なる。ボイラでは、高燃焼・低燃焼・停止のように、燃焼量を多位置に設定しておくことがよく行われている。
燃焼量が大きな場合、伝熱管へ供給される熱量は大きくなる。その場合、缶水の沸き上がり量も大きくなり、伝熱管の上部まで缶水が達するため、伝熱管の過熱が問題になることは発生しにくい。しかし燃焼量が小さいと、伝熱管に対する加熱量が小さくなる。そして缶水の沸き上がり量が小さくなって伝熱管の上端まで缶水が沸き上がらないことになると、伝熱管上部では缶水による冷却が行われないことが起こりうる。また、ボイラの起動時で缶水の温度が低い場合には、沸き上がりが形成されるまでの時間を要し、この時にバーナ火炎が設定水位よりも上方に接触すると、伝熱管が一時的に過熱される問題が出てくる。
【0007】
そのような要因により、ボイラの起動時もしくは低燃焼時には設定水位より上方の伝熱管において、缶水の沸き上がりが不足することで過熱が発生することがあった。伝熱管が過熱されることによって、ゆがみが発生したり、接合部で断裂が発生することになると、ボイラは早期に交換しなければならなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−183927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、燃焼量を多位置に制御するようにしている多管式貫流ボイラにおいて、燃焼量が小さい場合にも伝熱管の上部が過熱されることを防止することのできる多管式貫流ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、垂直方向に長い多数の伝熱管を環状に配置した構造の缶体と、環状に配置した前記伝熱管列の中央部分に設ける燃焼室を持ち、前記燃焼室内の上部に燃焼装置を設けて燃焼装置による燃焼によって前記伝熱管内の缶水を加熱するようにしている多管式貫流ボイラであって、燃焼装置は燃焼量の変更を可能とし、ボイラ缶体内の設定水位は伝熱管途中の高さ位置としている多管式貫流ボイラにおいて、前記燃焼装置には、下部燃焼域と上部燃焼域を設けており、燃焼量が小さい場合には下部燃焼域のみで燃焼を行い、燃焼量が大きくなると下部燃焼域と上部燃焼域で燃焼を行うように切り替えが行われるようにしており、前記燃焼装置の燃焼部は、上部燃焼域では径の大きさを変更しない円筒形とし、下部燃焼域では径の大きさを下方で細くした先細り形状としておき、下部燃焼域の高さ位置は伝熱管内の設定水位より低い位置となるように配置していることを特徴とする。
【0013】
バーナに下部燃焼域と上部燃焼域を設定し、下部燃焼域はボイラ運転時の設定水位より低い位置としておき、ボイラ起動時及び燃焼量が小さい低燃焼時には、バーナの下部燃焼域でのみ燃焼させるようにしているため、バーナ火炎により伝熱管が加熱される部分は、伝熱管の比較的低い位置とすることができる。バーナの下部燃焼域の高さ位置は、伝熱管の設定水位より低い位置であるため、蒸気負荷が小さく伝熱管内での缶水の沸き上がりが小さい場合であっても、伝熱管の過熱を防止することができる。
【0014】
そして燃焼域を先細りの形状にすると、燃焼部から噴射している予混合ガスは、傾斜している燃焼面に対して垂直方向へ噴射することになるため、バーナの燃焼部から斜め下方に向けて火炎を発生することになる。火炎の燃焼によって発生する熱は、予混合ガスの噴射方向に流れるため、その延長線上にある伝熱管を加熱する。予混合ガスの噴射方向を斜め下方としておいた場合、バーナの燃焼部から伝熱管に達するまでの間に下方へと移動していくため、火炎が伝熱管を加熱する部分はバーナの燃焼部よりも下方となる。バーナ火炎が伝熱管を加熱する部分をより低い位置となるようにしておくと、伝熱管の過熱はより発生しなくなる。
【0015】
なお、燃焼量を大きくした場合は、下部燃焼域と上部燃焼域の両方で燃焼を行うことになるため、一部の火炎は伝熱管内の水位位置より高い位置で発生することになる。しかしこの場合、燃焼量が大きければ伝熱管内での缶水の沸き上がりが大きくなるため、伝熱管が過熱されることはない。
【0016】
また、燃焼量が大きい場合には燃焼面を拡大するものであるため、燃焼面負荷の増大を抑制することができる。燃焼を行う面積を小さくすると、燃焼面負荷が大きくなって火炎がリフトするなどの影響が出る場合もあった。しかし、下部燃焼域でのみ燃焼を行うのは低燃焼時とし、高燃焼時には下部燃焼域と上部燃焼域で燃焼を行うことで、燃焼面の必要な面積を確保するようにしており、安定した燃焼を維持できる。
【発明の効果】
【0017】
蒸気負荷が小さく伝熱管内缶水の沸き上がりが小さい運転状態においても、バーナ火炎を設定水位より下方に形成するため、上部伝熱管が過熱されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例における多管式貫流ボイラの概要説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例における多管式貫流ボイラの概要説明図、
図2は
図1のA−A断面図、
図3は
図1の燃焼装置部分の概要説明図である。ボイラ1は上部に上部管寄せ2、下部に下部管寄せ3を設けている。上下の管寄せは、上部管寄せ2は下面、下部管寄せ3は上面が平らな断面半丸形であって、環状に形状している。上部管寄せ2と下部管寄せ3の間は、環状に並べた多数の垂直な伝熱管4で連結しておく。各伝熱管4は、間にわずかなすき間を開けて並べており、伝熱管4の間を燃焼ガスが抜け出ることができるようにしている。伝熱管列の外側には炉壁と断熱材層13を設け、炉壁の一部分には排ガス出口12の開口を設けており、排ガス出口12の先に排ガスを排出する煙突14を接続する。
【0020】
ボイラ内への給水は下部管寄せ3から行う。下部管寄せ3の下方に給水配管を接続し、給水配管途中に設けている給水ポンプ(図示せず)を作動することによって下部管寄せ3へ給水を行う。下部管寄せ3には伝熱管4を多数接続しているため、下部管寄せ内に入った水は多数設けている伝熱管4へ分岐して上向きに流れる。ボイラの給水制御は、ボイラの缶体部分と上下で接続している水位検出装置10にて検出したボイラ内水位に基づいて行う。ボイラの運転時には、伝熱管4の途中に設定している所定水位を保つように給水ポンプの作動を制御する。水位検出装置10では、給水を開始する高さ位置と、給水を停止する高さ位置で水の有無を検出しておく。水位検出装置10にて検出している水位が、給水開始水位未満になると、給水ポンプの作動を行ってボイラへの給水を行い、給水を行うことでボイラ内水位が上昇し、検出水位が給水停止水位以上になると給水ポンプの作動を停止する。
【0021】
ボイラ1の中心部分であって、環状に並べた伝熱管4によって囲まれる円柱状の空間が燃焼室6となり、燃焼室6の上部に燃焼装置5を設ける。燃焼装置5は、燃焼用空気を供給する送風機15、燃料ガスを供給する燃料供給部16、供給してきた燃焼用空気と燃料ガスを混合して予混合ガスとする混合室17、燃焼室内で燃焼を行う予混合バーナ7などからなる。
【0022】
予混合バーナ7は、先端部分に円筒形の燃焼部を持っている。燃焼部は、多数の小孔が開いた金属製の筒からなっており、予混合ガスを筒の小孔から外へ噴射し、筒の外表面付近で燃焼を行う。燃焼部には、先端側である下部燃焼域8と根本側である上部燃焼域9を分けて設定しておき、予混合ガスを供給する経路も、下部燃焼域8と上部燃焼域9で分けて設けている。予混合ガスの供給路には、同心であって径の異なる内筒と外筒を設けており、内筒の内側は下部燃焼域8へ予混合ガスを供給する高/低燃焼用経路19とし、内筒と外筒の間にできる空間は上部燃焼域9へ予混合ガスを供給する高燃焼用経路20としている。そして混合室17と高燃焼用経路20をつなぐ経路の途中には、上部燃焼域9への予混合ガス供給を遮断するためのガス流量調整装置18を設けている。
【0023】
下部燃焼域8は、ボイラ運転時の設定水位よりも低い位置になるように、予混合バーナ7の下端部に設けている。ボイラは、高燃焼・低燃焼・停止の3位置で燃焼を制御するものとしており、送風機15によって供給している燃焼用空気量と、燃料供給部16によって供給している燃料量は燃焼量に応じた量とする。低燃焼は高燃焼の半分の燃焼量であったとすれば、低燃焼時に供給する燃料量は高燃焼の半分となり、低燃焼時に供給する燃焼用空気量も高燃焼時の約半分となる。高燃焼の場合と低燃焼の場合のいずれでも、燃焼用空気と燃料は混合室17で混合することで予混合ガスとしておき、予混合バーナ7へ供給する。
【0024】
高燃焼の場合は、ガス流量調整装置18を開くことで、高/低燃焼用経路19と高燃焼用経路20の両方を通して予混合ガスの供給を行う。高燃焼用経路20を通して送られた予混合ガスは、上部燃焼域9から燃焼室6へ噴射し、高/低燃焼用経路19を通して送られた予混合ガスが下部燃焼域8から燃焼室6へ噴射する。この実施例では、燃焼部の径を途中から細くしている。先細となるテーパ構造とした部分を下部燃焼域8とし、燃焼部根本側の径を細くしていない部分は上部燃焼域9としている。下部燃焼域8には傾斜を設けているため、下部燃焼域8の面から垂直に噴射する予混合ガスは、水平方向よりも少し下向きに噴射することになる。燃焼部を細くすると燃焼部の表面積が小さくなり、燃焼面での単位面積当たりの燃焼負荷が大きくなると火炎がリフトするという問題が発生することがある。そのため、高燃焼時にしか燃焼しない上部燃焼域9では径を大きくしておくことで燃焼部の表面積を大きくすることとし、下部燃焼域8では径を先細にすることでバーナ火炎により伝熱管を加熱する場所を下方に移行することによる過熱防止作用を高めることを両立するようにしている。上部燃焼域9及び下部燃焼域8で予混合ガスを噴射すると、噴射している予混合ガスは、噴射部の外側表面近くで火炎を発生し、火炎の燃焼ガスは伝熱管4に向かう。
【0025】
低燃焼の場合は、ガス流量調整装置18を閉じることで、高燃焼用経路20を通じての予混合ガスの供給は行わないようにしておき、高/低燃焼用経路19を通してのみ予混合ガスの供給を行う。低燃焼時には上部燃焼域9への燃料供給は行わないため、燃焼するのは下部燃焼域8のみとなる。下部燃焼域8での燃焼も、噴射部の外側表面近くで火炎を発生し、火炎の燃焼ガスは伝熱管4に向けて流れる。
【0026】
ボイラの運転制御について説明する。ボイラで運転を開始する場合、まず水位検出装置10で検出している水位が給水停止水位よりも低い場合には、給水停止水位となるまで給水ポンプを作動し、水位を給水停止水位まで上昇させておく。ボイラでは、燃焼装置5による燃焼を開始する前に燃焼室6内を換気するプレパージを行う。燃料供給部16からの燃料供給は停止したままで、送風機15の作動を行うと、燃焼室内へは空気のみを供給することになり、燃焼室6内に未燃ガスが残っていたとしても未燃ガスは煙突14から排出される。ボイラ内水位が十分に高く、かつプレパージも終了すると、予混合バーナ7による燃焼を開始する。
【0027】
予混合バーナ7の着火は、下部燃焼域部分にパイロットバーナ(図示せず)を設けておき、パイロットバーナで発生させている火種に向けて予混合ガスを噴射することで行う。下部燃焼域8での燃焼は、送風機15からの燃焼用空気と燃料供給部16からの燃料を混合室17で混合して予混合ガスとしておき、高/低燃焼用経路19を通して下部燃焼域8へ予混合ガスを供給することで行う。ガス流量調整装置18を閉じておくと、混合室17からの予混合ガスは高燃焼用経路20へは送られず、高/低燃焼用経路19を通して下部燃焼域8へのみ供給することができる。
【0028】
下部燃焼域8の小孔からパイロットバーナの火炎に予混合ガスを噴射すると、パイロットバーナの火炎が下部燃焼域8の表面で燃え広がり、下部燃焼域8の全面で燃焼する。燃焼開始後も、伝熱管内で缶水が沸騰し、沸き上がり発生するまでの間は、低燃焼を行うようにしておく。低燃焼では下部燃焼域8に対して垂直な方向、つまり水平方向へ予混合ガスを噴射する。この場合の火炎の熱は、伝熱管4の下部燃焼域8と同じ高さ位置部分を最初に加熱する。その後、燃焼ガスは燃焼室6に面している伝熱管4の表面に沿って流れながらさらに伝熱管4の加熱を行い、さらに伝熱管4のすき間を通して伝熱管列の外側へ流れ、外側からも伝熱管を加熱する。火炎の熱は、予混合バーナ7の燃焼面に近い部分で最も高くなっており、燃焼ガスが伝熱管4と接触しながら熱交換を行うことで温度を低下させていくもとなる。
【0029】
燃焼開始直後の場合には伝熱管4内での缶水の沸き上がりは少ないため、もしこの時に火炎発生部が伝熱管4の水位よりも高い位置にあると、予混合バーナ7からの火炎が最初に加熱する伝熱管の部分は、内周面側で缶水に接触していない部分となる。伝熱管が火炎により加熱される部分では缶水による冷却が行われないということになると、伝熱管が過熱されることがある。本実施例では、下部燃焼域8は伝熱管4の水位よりも低い位置としており、下部燃焼域8からの火炎が最初に加熱する伝熱管の部分は、内周面側で缶水に接触している部分となるため、伝熱管の内側にある缶水によって過熱されることを防止することができる。
【0030】
その後、高燃焼で燃焼を行うことになると、送風機15による燃焼用空気供給量と、燃料供給部16からの燃料供給量を増加する。高燃焼では上部燃焼域9でも燃焼を行うため、ガス流量調整装置18は開いておき、混合室17からの予混合ガスは高/低燃焼用経路19に加えて高燃焼用経路20へも供給する。上部燃焼域9からも予混合ガスを噴射すると、下部燃焼域8の表面で燃えていた火炎が上部燃焼域9の表面にも燃え広がり、下部燃焼域8と上部燃焼域9の全体で燃焼する。
【0031】
高燃焼で燃焼する上部燃焼域9は、下部燃焼域8よりも高い位置になるが、上部燃焼域は伝熱管内の水位より低い位置にするということはしていない。これは、高燃焼の場合には燃焼量が大きいため、伝熱管4内では缶水の沸き上がりが大きくなることによる。伝熱管内で缶水が大きく沸き上がっていれば、伝熱管の上部でも缶水による冷却が行われることになるため、伝熱管4の設定水位よりも高い部分であっても、缶水によって冷却することができ、伝熱管4の過熱は問題ない。
【0032】
なお、上部燃焼域9も伝熱管内の設定水位より低い位置に取り付けようとすれば、予混合バーナ7の燃焼部は燃焼室6内に大きく入り込ませることが必要になる。予混合バーナの全長を大きくすれば燃焼域を低い位置とすることはできるが、バーナの全長が長くなるとバーナ取り外し時にはボイラの上方に大きなメンテスペースが必要になり、扱いづらいものとなる。そのため、伝熱管過熱のおそれが少ない高燃焼時にしか燃焼しない上部燃焼域9は、設定水位より高い位置に設置することとし、予混合バーナ7の長さを短くするようにした方がより好ましいものとなる。
【0037】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ボイラ
2 上部管寄せ
3 下部管寄せ
4 伝熱管
5 燃焼装置
6 燃焼室
7 予混合バーナ
8 下部燃焼域
9 上部燃焼域
10 水位検出装置
11 気水分離器
12 排ガス出口
13 断熱材層
14 煙突
15 送風機
16 燃料供給部
17 混合室
18 ガス流量調整装置
19 高/低燃焼用経路
20 高燃焼用経路