【実施例】
【0014】
以下に、本発明に係わる測量機の実施例を図面を参照しつつ説明する。
(測量機の構成)
図1において、1は三脚台、2は測量機である。測量機2は、
図2に示す基盤部3と、この基盤部3に対して水平方向に回転される回転台座4とからなる測量機本体部5と、
図1に示すカバー部材6とから構成されている。
【0015】
基盤部3は三脚台1に固定される固定座3aと、整準ネジ(図示を略す)を有する整準台3bと、回転台座4を水平方向(
図2に示す矢印方向A)に回転駆動する平方向駆動モータM1(
図4参照)等の駆動機構を内蔵するケース部3cとから概略構成されている。
【0016】
回転台座4には、
図2、
図3に示すように、支持部材7が立設されている。この支持部材7には測距光学系と追尾光学系の鏡筒部8を垂直方向に回転可能に支持する水平軸8A、8Aが
図3に示すように設けられている。
【0017】
その水平軸8Aの一方の端部には、鏡筒部8を垂直方向に回転駆動する垂直方向駆動モータM2が固定され、その水平軸の他方の端部には、その鏡筒部8の回転角度を検出するためのエンコーダ10が設けられている。
【0018】
その支持部材7の上端部には回転台座4の水平方向の回転と鏡筒部8の垂直方向の回転とを制御する制御回路基板11とガイド光照射部12とが固定されている。水平方向駆動モータM1、垂直方向駆動モータM2、エンコーダ10等はフレキシブルプリント配線板11´により接続されている。
【0019】
その制御回路基板11には、後述するCPUが設けられている。このガイド光照射部12は、測量作業員に測量機本体部5の視準方向を示すのに用いられる。
ここでは、ガイド光照射部12は、支持部材7の上端部から切り起こされた起立板部7’、7”に支持されている。制御回路基板11には起立板部7”が貫通する貫通穴が形成されている。
【0020】
カバー部材6は、
図3に示すように、回転台座4の外周部4aに嵌合される嵌合開口6aとガイド光照射部12を被覆する被覆部6bと取っ手部6cと、上下方向に延びる窓部6dとを有する。なお、その回転台座4の外周部4aには、雨水等が浸入するのを防止するシール部材(図示を略す)が設けられている。
そのカバー部材6とガイド光照射部12、制御回路基板11との間には隙間が設けられている。これにより、カバー部材6の取付け、取り外しの際にカバー部材6がガイド光照射部12に接触するのを防止できる。
【0021】
鏡筒部8には、
図4に示すように、測距光学系13と追尾光学系14とが設けられている。鏡筒部8の光学系の傾きは、エンコーダ10を用いて角度を測定することにより求められる。この測距光学系13と追尾光学系14とについては後述することにし、先にガイド光照射部12の光学系について説明する。
【0022】
(ガイド光照射部12の光学系の構成)
ガイド光照射部12は、
図4に示すように、例えば、レーザ光源15、コリメートレンズ16、
図5に示すシリンドリカルレンズ17を有する。レーザ光源15は、例えば、可視白色レーザ光を発生する。
【0023】
コリメートレンズ16は、可視白色レーザ光を平行光束PB1に変換する役割を有する。シリンドリカルレンズ17は、その平行光束PB1を鉛直上下方向に長く延びる扇状のガイド光PB2に変換する役割を有する。
【0024】
このシリンドリカルレンズ17には、例えば、
図5に示すように、パワーを有する方向に長く延びて緑色光を透過させるスリット状フィルタ17aと同じくパワーを有する方向に長く延びて赤色光を透過させるスリット状フィルタ17bとが形成されている。17cはスリット状マスク部である。
【0025】
そのレーザ光源15は、
図4に示すCPUによって制御され、図示を略す電源スイッチがオンされると発光を開始する。
【0026】
(測距光学系13の構成)
測距光学系13は、
図4に概略示すように投光部13Aと受光部13Bとを有する。投光部13Aは、
図6に示すように、光源13A´を有する。受光部13Bは受光素子14B´を有する。
【0027】
光源13A´は赤外レーザ光束を出射する。その赤外レーザ光束はビームスプリッタ18のダイクロイックミラー面18aにより対物レンズ19に向けて反射され、カバーガラス20を介して鏡筒部8から平行光束PB3として出射される。
【0028】
その平行光束PB3は、
図4に示すコーナキューブ(ターゲット)30Aにより反射され、反射光束PB3’としてカバーガラス20を介して対物レンズ19に戻り、ビームスプリッタ18のダイクロイックミラー面18bにより反射され、受光素子13B´に収束される。
【0029】
その受光素子13B´の受光出力(測距結果)は、制御回路基板11に設けられているCPUの演算部に入力される。CPUはその受光素子13B´の受光出力に基づきコーナキューブ30Aまでの距離を演算する。なお、このコーナキューブ30Aは、測量作業員が持ち運ぶ測量用ポール30Bに固定されている。
【0030】
(追尾光学系14の光学系の構成)
追尾光学系14はコーナキューブ30Aをロックするのに用いられる。この追尾光学系14は、
図7に示すようにレーザダイオード23、コリメーターレンズ24、反射ミラー25、26、対物レンズ30、カバーガラス20、ノイズ光除去用フィルタ33、受光素子34を有する。
【0031】
レーザダイオード23、コリメーターレンズ24、反射ミラー25、26は投光部14Aを大略構成している。
対物レンズ30、ノイズ光除去用フィルタ33、受光素子34は受光部14Bを大略構成する。
【0032】
レーザダイオード23は、測距光学系13の測距光の波長とは異なる波長の赤外レーザ光PB4を追尾光として出射する。その赤外レーザ光PB4はコリメーターレンズ24によって略平行光束とされる。
【0033】
その反射ミラー25、26により反射された赤外レーザ光PB4は測量機2の外部に出射され、この赤外レーザ光PB4によってコーナキューブ30Aの探索走査が行われる。探索範囲内にコーナキューブ30Aがあると、赤外レーザ光PB4がコーナキューブ30Aにより反射されて対物レンズ30に戻る。
【0034】
その赤外レーザ光PB4の反射光PB4’はその対物レンズ30により収束され、ノイズ光除去用フィルタ33を通過して受光素子34に結像される。ノイズ光除去用フィルタ33は赤外レーザビームの波長と同一波長の光を透過させる機能を有する。
【0035】
(駆動部の構成)
測量機2は、
図4に示す駆動回路部35を有している。この駆動回路部35には、水平方向駆動モータM1と垂直方向駆動モータM2とが接続されている。
【0036】
その駆動回路部35はCPUによって制御され、CPUは無線送受信部37が鏡筒部回動許可信号を受信すると、水平方向駆動モータM1の回動許可信号を駆動回路部35に向かって出力する機能を有する。
【0037】
CPUは、基準とする方位信号と鏡筒部回動許可信号とにより測量機2の鏡筒部8が向いている水平方向の現在角度から次の測設点P2までの水平方向の回転角度を演算する。
【0038】
すなわち、現在、測量機2がガイド光PB2を照射している方向(測設点P1が存在する方向)から次にガイド光PB2を照射すべき方向を測設点データを用いて演算により求める。これにより、後述する次の測設点P2が存在する方向に向けて鏡筒部8を水平方向に回動させ、この位置で回動停止させることが可能となる。
【0039】
(CPUの機能の一例)
そのCPUは、その鏡筒部8が次に測定しようとする測設点P2の方向で回動停止すると、垂直方向駆動モータM2の回動許可信号を駆動回路部35に向かって出力する機能を有する。
【0040】
駆動回路部35は垂直方向駆動モータM2を交互に正逆回転させる機能を有し、これにより、次の測設点P2において、赤外レーザ光PB4が上下方向に往復走査される。
【0041】
測量作業員が、
図8に示すようにガイド光PB2を目標にして測設点P1の位置する方向に向かって行くと、測量作業員には赤色光と緑色光とによりガイド光PB4が見える。
【0042】
その位置で、測量用ポール30Bを立てると、CPUによりコーナキューブ30Aがロックされる。また、測設点P1に位置すると、コーナキューブ30Aまでの測距又は測距と測角が実行される。
【0043】
ついで、CPUは、コーナキューブ30Aまでの距離又は距離と角度(三次元座標)を演算により求める。その測設点P1におけるコーナキューブ30Aから測量機2までの距離データ又は距離データと角度データ(三次元座標)は、測定データとして一旦記憶部36に記憶される。
【0044】
その測量機2は、
図4に示すように、その記憶部36と共に無線送受信部37を有している。その記憶部36、無線送受信部37はCPUに接続されている。
【0045】
その無線送受信部37は、測量作業員の現在位置(測量機2からコーナキューブ30Aまでの距離データ又は距離データと角度データ(三次元座標))等の測量データを携帯型無線送受信装置30Cに送信する機能とを有する。
回転台座4は、測量データの送信後、次の測設点P2に向かって回動される。
【0046】
(測量作業システムの詳細説明)
以下に、本発明に係る測量機を用いた測量作業システムの詳細を
図8ないし
図10を参照しつつ説明する。
【0047】
図8に示すように、測量機2は既知の点POに設置されているものとする。測量作業員はその携帯型無線送受信装置30C(
図4参照)により測設作業に関する測設点データを送信する(送信ステップ)。
【0048】
CPUは、既知の点POに対する位置関係と基準とする方位信号とにより測設点P1、測設点P2、…の位置関係を演算し、例えば、測設点P1の方向に光軸が向くように回転台座4を回動させ、その位置で回動停止させる(回転ステップ)。
【0049】
ついで、CPUはガイド光照射部12のレーザ光源15を点灯させるように制御する(点灯ステップ)。これにより、
図8に示すように、垂直方向に長く延びる扇状のガイド光BP2が光軸の向いている方向に照射される。
【0050】
また、CPUは、
図9に示すように、追尾光による探索走査を行う。すなわち、その鏡筒部8は、水平軸8Aの回りに往復回動され、これにより、ターゲットの探索走査が実行される。
【0051】
測量作業員がそのガイド光BP2の照射されている方向に向かって移動する。ガイド光BP2は赤色光と緑色光とからなり、境界位置では、左目に赤色光が入射し、右目に緑色光が入射し、測量作業員はこれらの色の混じった光を感じるため、測量機の光軸Oの向いている方向を見つけ易い。
【0052】
測量作業員がその測設点P1の近傍の位置に測量用ポール30Aを立てると、追尾光による探索走査によりターゲットがロックされ、回転台座4が回転されてそのターゲットの中心に光軸Oが向けられる。その測量作業員側のターゲットがロックされると、レーザ光源15が消灯される(消灯ステップ)。
【0053】
また、そのターゲットがロックされると同時に、携帯型無線受信装置30Cが振動する構成とされている。これにより、測量作業員は、携帯型無線受信装置30Cの画面を見なくとも、ターゲットがロックされたことを確認できる。
【0054】
なお、ターゲットがロックされなくとも、ターゲットをロック可能な位置の近傍内にターゲットが位置すると、携帯型無線受信装置30Cを振動させる構成とすることもできる。
【0055】
これにより、ターゲットが自動追尾されると共に、測距が開始される。測量作業員が測量用ポール30Aを持って測設点P1の位置に向かって移動する。すると、CPUは既知の点POからターゲットまでの測距データと、測設点データとにより、測設点P1とターゲットとの差分距離を演算する。
【0056】
この差分距離のデータは無線送受信部37から携帯型無線送受信装置30Cに送信され、その携帯型無線送受信装置30Cの表示部(図示を略す)に既知の点POに対するターゲットの位置が表示される。
【0057】
測設点P1とターゲットとの差分距離が所定範囲(例えば、5m以内)に入ると、測設点P1に対するターゲットの差分距離の縮尺倍率が小さくなるように変更されて、表示部に表示される。
【0058】
これにより、測量作業員は測設点P1に対する位置関係を精密に把握でき、許容範囲に入ると、CPUは測距データ、測角データ等の測量データを演算し、その測量結果が携帯型無線送受信装置30Cに送信される。また、測量作業員は、測設点P1に対してターゲットが許容範囲に入ると、例えば、杭打ち作業を実施する。
【0059】
測設点P1の近傍において、何らかの原因でターゲットのロックが阻害されると、追尾光を一旦消灯し、回転台座4を測設点データにより指定された測設点P1の方向に戻って再度レーザ光源15が再点灯され、かつ、追尾光による探索走査を再開する。
【0060】
測設点P1において測量データが取得されると、回転台座4は、
図10に示すように測設点データにより指定された次の測設点P2の方向に向けて回動された後停止され、レーザ光源15が再点灯される(再点灯ステップ)。
【0061】
ついで、ターゲットが次の測設点P2の方向の近傍においてロックされると、レーザ光源15が再消灯される(再消灯ステップ)。
その再消灯ステップにおいてターゲットのロックが何らかの原因で阻害されると、追尾光を一旦消灯し、回転台座4を測設点データにより指定された測設点P2の方向に再度向けてレーザ光源15を再点灯させ、かつ、追尾光による探索走査を再開する。
【0062】
この実施例によれば、追尾光学系14によりコーナキューブ30Aがロックされると、ガイド光照射部12のレーザ光源15が消灯されるので省エネルギー化を図ることができる。
【0063】
また、コーナキューブ30Aのロックが何らかの原因で阻害されると、追尾光を一旦消灯し、測設点データに基づいて指定された測設点P1(又は測設点P2)の方向に光軸Oが向くように回転台座4が回動された後に停止され、レーザ光源15が再点灯され、かつ、追尾光による探索走査を再開する。
【0064】
コーナキューブ30Aのロックが何らかの原因で外れたときに鏡筒部8の光軸が向いている方向に向けてレーザ光源15を再点灯させてガイド光BP2を照射しかつ追尾光による探索走査をしたとしても、測量作業員はロックが外れたことを知らずに測設点P1(又は測設点P2)の方向に向かって移動していることが多い。このため、ガイド光BP2を認識する確率が低い。また、コーナキューブ30Aが再度ロックされる確率も低い。
【0065】
これに対して、この実施例によれば、測設点データにより指定された方向に光軸を向けて待ち受けている。このため、測量作業員がガイド光BP2を認識する確率が高まる。また、コーナキューブ30Aをロックする確率も高まる。その結果、測量作業効率の向上を図ることができる。
【0066】
(変形例)
図11A、
図11Bはガイド光照射部12の変形例を示す説明図である。この変形例では、ガイド光照射部12は、
図11Aに示すように、緑色光PGを発生する発光ダイオードLEDGと赤色光PRを発生する発光ダイオードLEDRとを備えている。
【0067】
発光ダイオードLEDGと発光ダイオードLEDRとの直前方には、絞り部材40a、40bとが設けられている。この絞り部材40a、40bは各光を半分カットする役割を果たす。
【0068】
その緑色光PGと赤色光RGとはミラープリズム41により反射され、レンチキュラーレンズ42に導かれる。
その緑色光PGと赤色光RGとは扇状のガイド光PB2として、ガイド光照射部12から射出される。
【0069】
なお、この実施例では、追尾光学系14の対物レンズ30と測距光学系13の対物レンズ19とを別体の構成としたが、これらを一体の構成としてしても良い。
【0070】
(その他の変形例)
ガイド光を完全に消灯しなくとも、ガイド光の点滅パターンを変更することにより、省エネルギー化を図ると共に、測量作業者に対してロックが外れたことを知らせる構成とすることもできる。