(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の昇降装置には、次のような解決すべき課題があった。車椅子用の段差解消機においては、停電時の異常時に昇降台を下降端位置まで強制下降させる必要がある。電動モータを駆動源とする電動昇降装置では、通常時には、電動モータに付属している電磁ブレーキにより電動モータを停止して昇降台が停止される。このため、停電時等の緊急時には、電磁ブレーキを開放して昇降台を下降端まで下降させる必要がある。
従来、電磁ブレーキを開放する手段としては、(1)レバーやワイヤ等を用いて機械的に電磁ブレーキを開放する方法、(2)バッテリやUPS(無停電電源装置)等の予備電源を用いて電磁ブレーキを開放する方法、(3)乾電池を用いて昇圧した電圧を電磁ブレーキに印加して開放する方法等が公知になっている。
(1)の方法によれば、モータ本体部に設けた開放レバーを操作する必要があり、またワイヤにより遠隔操作する方法では構成が複雑になってコストアップを招く問題があった。(2)の方法によれば、装置が大型化してコストアップを招く問題があった。(3)の方法によれば、数回操作を行うと乾電池が消耗して交換が必要になり、メンテナンス性がよくない問題があった。
しかも、上記の各方法により電磁ブレーキを強制的に開放する場合には、昇降台の下降速度制御を行い、あるいはタイマによる間歇起動(電磁ブレーキの間歇的開放)等の対策により昇降台の下降速度を抑制する必要がある。ところが、停電時等の緊急時に電気制御を行うことはバッテリの消耗を一層早めることとなって現実には困難であった。
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、操作性及びメンテナンス性を確保しつつ、停電時等の緊急時に電磁ブレーキを強制的に開放するとともに、昇降台の下降速度を効率よく抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、以下の各発明により解決される。
第1の発明は、車椅子を搭載して昇降可能な昇降台と、昇降台を電動モータを駆動源として昇降させる昇降駆動装置を備え、電動モータは、通電により開放側に作動して昇降台の下降動作を許容する電磁ブレーキを備えた電動昇降装置であって、緊急時に電磁ブレーキに通電するための予備電源として充電可能な二次電池を備え、かつ昇降台の下降速度が一定速度に達したときにのみ作動して昇降台の下降速度を抑制する遠心ブレーキを備えた電動昇降装置である。
第1の発明によれば、通常時には、例えば商用の交流100V電源(主電源)から電源供給されて電動モータが作動し、かつ電磁ブレーキが開放側に作動する。これに対して、停電時等の緊急時には、予備電源から電源供給されて電磁ブレーキが開放側に作動する。このため、緊急時に、電磁ブレーキにより昇降台が昇降途中に停止することなく、昇降台は下降端位置まで戻される。しかも、緊急時において昇降台の下降速度が一定速度に達すると遠心ブレーキにより当該昇降台の下降速度が抑制されるため、昇降台は適切な速度で下降端位置まで戻される。電源を必要としない遠心ブレーキにより速度制御する構成であるので、電気制御あるいはタイマによる間歇起動による速度制御に比して予備電源の消耗を招くといった問題がない。
このように第1の発明によれば、従来のレバー操作若しくはワイヤによる遠隔操作によるのではなく、予備電源により電磁ブレーキを開放する構成であるので、緊急時における電磁ブレーキの開放のための操作性を確保し、かつ充電可能な二次電池を予備電源に用いる構成であるので従来の交換等する構成に比してメンテナンス性を確保しつつ、緊急時に電磁ブレーキを迅速に開放することができ、また電磁ブレーキ開放時における昇降台の下降速度を適切な速度に抑制することができる。
緊急時において、主電源と予備電源の切り換えは手動操作により行うことができる他、自動切換えとすることもできる。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、予備電源としての二次電池の電圧を昇圧して電磁ブレーキに印加する構成とした電動昇降装置である。
第2の発明によれば、小電力の予備電源で電磁ブレーキを開放することができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、二次電池として、DC9Vタイプのニッケル水素電池を用い、この二次電池をDC90Vに昇圧して電磁ブレーキに印加する構成とした電動昇降装置である。
第3の発明によれば、緊急時において、DC9Vの予備電源で電磁ブレーキが開放される。
第4の発明は、第1〜第3の何れか一つの発明において、昇降駆動装置として、電動モータにより回転するねじ軸を有するねじ軸機構を備えており、遠心ブレーキは、ねじ軸と一体で回転する円板上にブレーキシューをばね付勢して配置し、このブレーキシューの外周側にブレーキドラムを配置した構成とされている。停電等の緊急時等において、電磁ブレーキが予備電源で開放されることにより、自由回転状態となったねじ軸の回転速度が一定速度に達したときに、遠心ブレーキが作動して昇降台の下降速度が抑制される。遠心ブレーキは、ブレーキシューが遠心力によりばね付勢に抗して外周側へ変位してブレーキドラムに押し付けられることにより発生する摩擦力によりねじ軸の回転速度を抑制する構成を備えている。
第4の発明によれば、予備電源により電磁ブレーキが開放された後、昇降台の下降速度が一定速度に達すると遠心ブレーキが作動して当該昇降台の下降速度が抑制され、これにより昇降台が適切な速度でゆっくりと下降端位置まで戻され、その後車椅子の着座者は昇降台上から退出することができる。遠心ブレーキは、ねじ軸の回転動作を利用して発生する摩擦によりねじ軸の回転速度を抑制する構成であり、電源を必要としない機械的な構成であって摩擦により昇降台の下降速度を抑制することができるので、予備電源の消耗を早めてしまうといった問題はない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態を
図1〜
図7に基づいて説明する。
図1〜3に示すように本実施形態の電動昇降装置1は、主として車椅子(図示省略)を段差(下段D1と上段D2)間で昇降させるための段差解消機として利用される。以下の説明において、
図1に示す当該電動昇降装置1の正面側を前側とし、左右方向については正面に向かって見た場合を基準として用いる。
この電動昇降装置1は、車椅子を搭載する昇降台10と、設置用のベースフレーム20と、ベースフレーム20から上方へ延びる固定フレーム22と、昇降台10を上下に昇降させる昇降駆動装置50を備えている。
昇降台10は、少なくとも一台の車椅子を搭載可能な面積の平板形状を有するもので、下段D1と上段D2との間を平行に昇降動する。ベースフレーム20は、下段D1側にアンカーボルト21〜21により強固に設置される。ベースフレーム20の後部側に固定フレーム22が設けられている。固定フレーム22は、ベースフレーム20の左右方向中央から上方へ延びる状態に設けられている。この固定フレーム22に沿って中間フレーム23が上下に昇降可能に支持され、また昇降駆動装置50が取り付けられている。固定フレーム22、中間フレーム23及び昇降駆動装置50は、昇降台10上に設置したマストカバー5により覆われる。
【0009】
昇降駆動装置50は、同時に作動する第1の昇降機構51と第2の昇降機構52を備えている。第1の昇降機構51はボールねじ機構であり、ねじ軸53とナット54を備えている。ねじ軸53をその軸線回りに回転させる駆動源としての電動モータ55が中間フレーム23の上部に設置されている。電動モータ55は、電磁ブレーキ55bを内装し、減速用のギヤヘッド55aを備えたギヤードモータで、ねじ軸53の上端部がギヤヘッド55aの出力軸に同軸に結合されている。電動モータ55には、内装した電磁ブレーキ55bとは別に、緊急用のブレーキ装置60が付設されている。このブレーキ装置60については後述する。
ねじ軸53に噛み合わされたナット54は、ねじ軸サポート56の上端部に結合されている。ねじ軸サポート56は、その内周側にねじ軸53を挿通可能な長尺のパイプ材で、その下端部がベースフレーム20の上面に結合されている。電動モータ55によりねじ軸53がその軸線回りに回転するとナット54との噛み合いを経て当該ねじ軸53ひいては中間フレーム23が固定フレーム22に対して上下に昇降動する。
ねじ軸サポート56は、中間フレーム23に取り付けた円環形状の保持部材57によりその直立状態が保持される。保持部材57は、ねじ軸サポート56を保持しつつ中間フレーム23の昇降動に伴って当該ねじ軸サポート56に沿って上下に移動する。
【0010】
第2の昇降機構52は動滑車機構であり、動滑車58とローラチェーン59を備えている。本実施形態では、3組の動滑車機構を並列に配置した構成を備えている。
図3及び
図4に示すように3つの動滑車58〜58は、中間フレーム23の上部に設けた支軸を介して相互に同軸で回転自在に支持されている。3つの動滑車58〜58のそれぞれに掛け渡されたローラチェーン59の一端側59aは、固定フレーム22の上部に結合されている。動滑車58を経て下方へ折り返されたローラチェーン59の他端側59bは、昇降台10の昇降フレーム9に結合されている。
電動モータ55が起動してねじ軸53がその軸回りに回転することにより、中間フレーム23が昇降動する。中間フレーム23が昇降動することにより3つの動滑車58〜58が一体で上下に変位する。動滑車58〜58が上下に変位することにより、昇降台10が中間フレーム23に対して昇降動する。従って、昇降台10は、固定フレーム22に対する中間フレーム23の昇降速度と、固定フレーム22に対する動滑車の昇降速度を合計した速度(2倍速)で固定フレーム22に対して昇降動する。また、昇降台10の昇降距離は中間フレーム23の昇降距離の2倍となる。
マストカバー5の前面には、当該電動昇降装置1の主として昇降操作をするためのリモコン3が設置されている。昇降台10に搭乗した車椅子の着座者若しくはその介護者がこのリモコン3を操作することにより、当該電動昇降装置1の昇降操作を行うことができる。
昇降台10の周囲(前後左右の4面)には、上下に伸縮自在なジャバラ型のガード4が装着されている。ガード4の下端部はベースフレーム20の周囲に結合されている。昇降台10の下方であって固定フレーム22及び昇降駆動装置50の周囲が、当該昇降台10の昇降位置に関わらず常時このガード4によって覆われることにより、これらの防塵対策、防水対策がなされ、また昇降台10の下方への異物の侵入が防止されるようになっている。
昇降台10の前後両側には、手すりフレーム13,14が設けられている。手すりフレーム13,14は、それぞれ昇降台10の左側と右側との間を跨るアーチ状に設けられている。昇降台10の左側搭乗口と右側搭乗口にはそれぞれゲートバー15,16が設けられている。左右のゲートバー15,16は、主として車椅子2に着座した人が操作レバー15a,16aを上下に操作することにより上下に回動させて開閉することができる。
【0011】
電動モータ55のギヤヘッド55aの上部には、ブレーキ装置60が付設されている。このブレーキ装置60は遠心ブレーキで、昇降台10の一定速度以上の高速での下降動作を規制する機能を有している。このブレーキ装置60の詳細が、
図4〜
図6に示されている。
このブレーキ装置60は、円筒形のブレーキドラム61内に、円板62と、それぞれブレーキライニング65を有する3つのブレーキシュー63〜63を組み込んだ構成を備えている。ブレーキドラム61は、ギヤヘッド55aの上面に固定されている。ブレーキドラム61の中心には、第1の昇降機構51のねじ軸53の上部53aが進入している。ねじ軸53の上部53aは、ギヤヘッド55aの中空出力軸の内周孔を経て上方へ突き出されている。この突き出し部分がブレーキドラム61内に進入している。ブレーキドラム61内において、ねじ軸53の上部53aに円板62が結合されている。ねじ軸53の上部53aは、円板62の上面中心に設けたボス部62aに挿入されている。ギヤヘッド55aの出力軸とねじ軸53と円板62は、回転について一体化されている。このため、電動モータ55が起動すれば、ねじ軸53がその軸線回りに回転し、従ってブレーキ装置60の円板62が一体で回転する。
円板62の上面には、3つのブレーキシュー63〜63が取り付けられている。3つのブレーキシュー63〜63は、それぞれ支軸63aを介して当該円板62の面方向に沿って回動可能に支持されている。3つの支軸63a〜63aは周方向三等分位置に配置されており、従って3つのブレーキシュー63〜63は当該円板62の回転中心(ねじ軸53の回転軸線)について点対称となる3位置に配置されている。
【0012】
3つのブレーキシュー63〜63の外面であって、ブレーキドラム61の内面に対向する側面には、それぞれブレーキライニング65が取り付けられている。また、3つのブレーキシュー63〜63は、ボス部62aとの間に介装した引っ張りばね64によりブレーキライニング65をブレーキドラム61の内面から離間させる方向に付勢されている。
昇降台10の下降速度であってねじ軸53の回転速度(円板62の回転速度)が一定速度以下である状態では、3つのブレーキシュー63〜63に作用する遠心力が小さいため、3つのブレーキシュー63〜63は引っ張りばね64〜64の付勢力によりそれぞれブレーキライニング65をブレーキドラム61の内面から離間させた位置に保持される。この状態では、ねじ軸53の回転が当該ブレーキ装置60によって規制されない状態となる。
これに対して、昇降台10の下降速度であってねじ軸53の回転速度(円板62の回転速度)が一定速度以上に達すると、3つのブレーキシュー63〜63に作用する遠心力が大きくなる結果、当該3つのブレーキシュー63〜63が引っ張りばね64〜64に抗して放射方向外側に変位し、これにより各ブレーキライニング65がブレーキドラム61の内周面に押し付けられる。3つのブレーキシュー63〜63のブレーキライニング65〜65が遠心力によりブレーキドラム61の内周面に押し付けられることにより発生する摩擦抵抗によりねじ軸53に大きな回転抵抗(制動力)が付加され、これにより昇降台10の下降動作が規制される。
このように昇降台10の下降速度はブレーキ装置60により一定速度以上にはならないようになっている。これによれば、停電等により電動モータ55への通電が遮断され、かつ後述するように電磁ブレーキ55bが開放された場合であっても昇降台10の下降速度がブレーキ装置60により規制されることにより当該昇降台10の自由落下が防止される。
【0013】
図7には、電磁ブレーキ55bを開放するための電源回路30が示されている。この電磁ブレーキ55b用の電源回路30は、図示省略したモータ電源回路とは切り離されている。モータ電源回路では、AC100V(単相)電源からインバータを介してAC200V(3相)を電動モータ55に供給している。
電磁ブレーキ55b用の電源回路30は、商用のAC100V(単相)を主電源31とし、予備電源32として充電可能なバッテリ(予備電池)を備えている。
図7中、主電源31からの電力の流れが実線で示され、予備電源32からの電力の流れが破線で示されている。
電磁ブレーキ55bはDC90Vが印加されることにより開放側に作動する。電磁ブレーキ55bは、DC90Vが印加されなくなると、制動側に作動して電動モータ55の回転出力をロックする。
電磁ブレーキ55bに印加されるDC90Vは、主電源31のAC100Vを整流器33で全波整流して得られる。整流器33から得られたDC90Vの電力は電源切替器34を経て電磁ブレーキ55bに供給される。以上、
図7中実線で示される電力供給により電磁ブレーキ55bが開放される。電磁ブレーキ55bが開放された状態で電動モータ55の回転出力によりねじ軸53が回転して昇降台10が昇降動される。
【0014】
電磁ブレーキ55bの電源回路30には、上記通常使用時用の主電源31に加えて緊急時用の予備電源32が設けられている。予備電源32には、充電可能なDC9Vタイプ(DC8.4V)のニッケル水素電池が用いられている。この予備電源32は、通常使用時には主電源31の電力により充電器35で充電される。
例えば停電時等の緊急時であって主電源31からの電力供給が遮断された場合に、非常下降用の押しボタンスイッチ37を押し操作すると、充電切替器36を経て予備電源32からDC9Vが供給される。供給されたDC9Vは、昇圧基板38によりDC90Vに昇圧される。昇圧されたDC90Vは、電源切替器34を経て電磁ブレーキ55bに印加され、これにより電磁ブレーキ55bが開放される。
図7中破線で示した緊急時用の電力の流れにより、主電源31に代わって予備電源32からDC90Vが供給されることにより電磁ブレーキ55bが開放される。
停電時等の緊急時に、予備電源32で電磁ブレーキ55bが開放されることにより、昇降途中の昇降台10が下降端位置まで戻される。停電時等の緊急時であって、電動モータ55にAC200V(三相)の電力が供給されない状態では、昇降台10が電動モータ55の回転動力に依らない自由落下に近い状態で下降し始めるため、昇降台10の下降速度が過大になる。ところが、昇降台10の下降速度が一定速度に達した時点で、前記したブレーキ装置60が作動してねじ軸53の回転速度が抑制され、これにより昇降台10の下降速度が一定速度以下に抑制される。このため、昇降台10はゆっくりと下降端位置まで戻され、これにより昇降台10上の車椅子の着座者は安心して下段D1まで戻ることができる。
【0015】
以上のように構成した本実施形態の電動昇降装置1によれば、昇降駆動装置50に電磁ブレーキ55b付きの電動モータ55が駆動源として用いられており、電磁ブレーキ55bを開放側作動させるための電源として、通常使用時の主電源31(AC100V電源)に加えて、予備電源32を備えている。停電時等の緊急時に主電源31が遮断された場合には、電磁ブレーキ55bが閉じ側に作動するため昇降台10が昇降途中あるいは上段D2側で停止するおそれがある。この場合、昇降台10に搭載された車椅子の着座者を安全に下段D1側まで戻す必要がある。これを実現するため、本実施形態の昇降駆動装置50は、電磁ブレーキ55bを開放側に作動させるための予備電源32を備えている。主電源31から予備電源32への切り替えは、押しボタンスイッチ37を押し操作することにより行うことができる。押しボタンスイッチ37を押し操作すると、充電切替器36が作動して予備電源32からDC9Vの電力が昇圧基板38に供給される。昇圧基板38では、DC9VがDC90Vに昇圧される。DC90Vの電力が電源切替器34を経て電磁ブレーキ55bに印加され、これにより電磁ブレーキ55bを開放側に作動させることができる。
【0016】
このように、従来電動モータ側に設けた開放レバーやワイヤによる遠隔操作により機械的に電磁ブレーキを開放する構成に比して、操作性を阻害することなく、構成の複雑化を招くことなく、緊急時の電磁ブレーキ55bの開放を行うことができ、これにより昇降台10ひいては車椅子の着座者を下段D1側に迅速に戻すことができる。
しかも、停電時等において、予備電源32により電磁ブレーキ55bを開放すると、昇降台10が自然落下に近い速度で下降するおそれがあるが、本実施形態の電動昇降装置1によれば、昇降台10の下降速度が通常使用状態よりも速い一定速度に達したときに作動するブレーキ装置(遠心ブレーキ)60を備えている。このため、予備電源32で電磁ブレーキ55bを開放した後、昇降台10の下降速度が一定速度に達すると、このブレーキ装置60が作動して昇降台10の下降速度が一定速度以下に抑制され、これにより昇降台10をゆっくりと適正な速度で下段D1まで下降させることができる。このため、車椅子の着座者は安心して下段D1側まで迅速に戻される。
このように、停電時等の緊急時に昇降台10の下降速度を抑制するための手段として、本実施形態では昇降台10の下降速度が一定速度に達すると作動するブレーキ装置60を備えている。このため、従来の電気的な速度制御やタイマによる間歇起動(電磁ブレーキの間歇的開放)等の対策により昇降台10の下降速度を抑制する方法に比して、本実施形態の遠心ブレーキ(ブレーキ装置60)を用いる構成の場合には予備電源32の電力消費を少なくすることができる。予備電源32の電力を効率よく電磁ブレーキ55bの開放状態維持に費やすことができるので、当該予備電源32の小型化を図ることができるとともに、昇降台10を確実に下段D1まで戻すことができる。
また、予備電源32は充電することができるので、交換する場合に比してコストを抑制しつつメンテナンス性を高めることができる。
【0017】
以上説明した実施形態には、種々変更を加えることができる。例えば、予備電源32としてニッケル水素電池を例示したが、リチウムイオン電池を用いることもできる。
また、予備電源は、DC8.4Vに限らず、これを2本直列接続してDC16.8Vの電源としてもよい。この場合、昇圧基板においてDC16.8VをDC90Vに昇圧すれば足りる。
さらに、DC90Vで開放される電磁ブレーキ55bを例示したが、これに代えてDC45VあるいはDC24Vで開放される電磁ブレーキを用いることもでき、この場合には、昇圧基板38をDC90V用からDC45VあるいはDC24V用に変更することができる。
また、電磁ブレーキ55bを開放するための主電源としてAC100V電源を用いる構成を例示したが、AC200Vを電源として開放する電磁ブレーキを用いる場合であっても、整流器33や充電器35を変更することにより例示した緊急時の予備電源対策を適用することができる。
さらに、通常使用状態(主電源31使用時)で充電可能な予備電源(二次電池)を例示したが、充電不能で使い切りタイプの電池(乾電池)を予備電源として用いることもできる。
また、主電源31から予備電源32に切り替える手段として押しボタンスイッチ37を例示したが、その他レバースイッチやダイヤルスイッチに変更してもよい。
さらに、昇降台10を昇降動させる昇降駆動装置50として、第1及び第2の昇降駆動機構51,52を備えた構成を例示したが、単一の昇降駆動機構により昇降台を昇降動させる形態の昇降装置についても同様に適用することができる。
また、車椅子を搭載して下段D1と上段D2との間の段差を昇降させる電動昇降装置1を例示したが、車椅子に限らず荷物等の物品を昇降させる昇降装置について例示した緊急時用の予備電源32及びブレーキ装置60を用いることにより同様の作用効果を得ることができる。