特許第6227336号(P6227336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227336
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】軟磁性コアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20171030BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20171030BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20171030BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20171030BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20171030BHJP
   H01F 1/153 20060101ALI20171030BHJP
   B22D 11/06 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H01F41/02 C
   C21D8/12 H
   C22C38/00 303V
   C21D9/00 S
   H01F27/24 C
   H01F1/153 141
   B22D11/06 360C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-187092(P2013-187092)
(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公開番号】特開2015-56424(P2015-56424A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】浦田 顕理
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 芳
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−046032(JP,A)
【文献】 特開2010−280956(JP,A)
【文献】 特開平08−085821(JP,A)
【文献】 特開2010−70852(JP,A)
【文献】 特開2012−119137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
H01F 27/25
H01F 41/02
H01F 1/153
B22D 11/06
C21D 8/12
C21D 9/00
C22C 38/00
B22D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Feを主成分として、すくなくともB、P、およびCuを含有するアモルファス合金薄帯を積層して形成される軟磁性コアの製造方法において、前記アモルファス合金薄帯のすくなくとも一方の面に、吸熱反応温度が、前記アモルファス合金薄帯のbccFeの結晶化による発熱が開始する第1結晶化温度と、Fe化合物の結晶化による発熱が開始する第2結晶化温度の間にある吸熱反応物質を配置して、熱処理を行う軟磁性コアの製造方法。
【請求項2】
前記吸熱反応物質が、メラミン樹脂、炭酸塩化合物、ZnまたはZnを含む合金から選択される一種類以上の物質であることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性コアの製造方法。
【請求項3】
前記アモルファス合金薄帯を、トロイダル状に巻いて形成される請求項1または請求項2に記載の軟磁性コアの製造方法。
【請求項4】
Feを主成分として、すくなくともB、P、およびCuを含有するアモルファス合金薄帯と、前記アモルファス合金薄帯のすくなくとも一方の面に吸熱反応後の物質を備え、前記アモルファス合金薄帯と前記吸熱反応後の物質とが積層して形成された軟磁性コア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスやインダクタ、リアクトルなどに使用されるFe基ナノ結晶合金を用いた軟磁性コアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Fe基ナノ結晶合金は、高飽和磁束密度と低磁歪の両立が可能な軟磁性材料である。このFe基ナノ結晶合金を用いた軟磁性コアの製造においては、アモルファス構造を有する合金組成物の薄帯を積層してコアを形成し、コアに熱処理を施して微細なbccFe結晶を析出させる必要がある。
【0003】
しかし、熱処理によってbccFe結晶を析出させる際、bccFe結晶の結晶化に伴う自己発熱による過剰な温度上昇が起こり、bccFe結晶の結晶粒の肥大化とFe−B、Fe−PなどのFe化合物の析出による軟磁気特性の低下が生じる問題がある。
【0004】
上記問題の対策として、特許文献1には、微細なbccFe結晶を析出させる熱処理方法として、アモルファス相を主体とする急冷体を加熱して、bccFe結晶の結晶化に伴う発熱が開始した時点で1回目の熱処理を終了し、結晶化の発熱の終了後に2回目の熱処理を行う熱処理方法が開示されている。これにより、結晶化開始温度よりも高く、かつ化合物相を実質的に形成しない温度で熱処理を行うことで、結晶化に伴う自己発熱による過剰な温度上昇を防止して結晶粒の肥大化を防止することができ、軟磁気特性に優れたFe基軟磁性合金の軟磁性コアを製造することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−213331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、bccFe結晶の結晶化による自己発熱の開始時点を検出する方法として、熱処理炉内部の雰囲気温度と、アモルファス構造を有する合金組成物を積層したコアの温度を同時に連続して計測し、コアの温度上昇率が雰囲気温度の上昇率よりも高くなった時点を検出することで検知できるとしている。
【0007】
コアの温度の計測は、実際的には熱処理炉内に収容されている全てのコアについて実施することは製造コストを考慮すると現実的ではないので、温度を計測するコアを限定する必要がある。しかし、bccFe結晶の結晶化による自己発熱の開始時点は、炉の場所による温度条件や、熱処理炉の昇温速度、あるいはコアの大きさ、コアの製造時による組成ばらつきなどによって、個々のコアによってばらつきがあるので、限定されたコアによる温度計測では検出にもずれを生じることとなり、コアによっては昇温停止のタイミングに遅れが生じて、結晶化に伴う自己発熱よる過加熱でFe化合物が析出して軟磁気特性が劣化する問題がある。
【0008】
また、bccFe結晶の結晶化に伴う自己発熱を検知して昇温を停止したとしても、炉内温度が降下するには時間遅れが有るので、自己発熱による温度上昇はしばらくの間継続することになり、bccFe結晶化温度(第1結晶化温度)とFe−Bなどの化合物の結晶化温度(第2結晶化温度)との差が小さいアモルファス合金組成物の場合には、コア内部の温度はFe化合物の結晶化温度を超え、Fe化合物が析出して軟磁気特性が劣化する問題もある。
【0009】
本発明は、上記従来技術が抱える問題点を解決し、Fe化合物の析出を抑制し、軟磁気特性に優れた軟磁性コアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明による軟磁性コアの製造方法は、Feを主成分として、すくなくともB、P、およびCuを含有するアモルファス合金薄帯を積層して形成される軟磁性コアの製造方法において、前記アモルファス合金薄帯のすくなくとも一方の面に、吸熱反応温度が、前記アモルファス合金薄帯のbccFeの結晶化による発熱が開始する第1結晶化温度と、Fe化合物の結晶化による発熱が開始する第2結晶化温度の間にある吸熱反応物質を配置して、熱処理を行うことを特徴とする。
【0011】
また本発明では、前記吸熱反応物質が、メラミン樹脂、炭酸塩化合物、ZnまたはZnを含む合金から選択される一種類以上の物質であることが望ましい。
【0012】
また本発明では、前記軟磁性コアが、前記アモルファス合金薄帯を、トロイダル状に巻いて形成されることが望ましい。
【0013】
本発明において、第1結晶化温度とは、アモルファス合金薄帯のbccFeの結晶化による発熱が開始する温度であり、第2結晶化温度とは、Fe−B、Fe−PなどのFe化合物の結晶化による発熱が開始する温度である。
【0014】
また、本発明において、吸熱反応温度とは、吸熱反応による吸熱量が最大となる温度である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による軟磁性コアの製造方法は、アモルファス合金薄帯に吸熱反応物質を配置して熱処理を行うため、アモルファス合金相から析出するbccFe結晶の、結晶化による自己発熱による熱量は、吸熱反応物質による吸熱反応によって自律的に吸収することができるので、熱処理炉などのコア外部の温度条件の特別な制御等を必要とせずにコアの過加熱を防ぐことで、結晶粒の肥大化による軟磁気特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0016】
また、吸熱反応物質の吸熱反応温度は、アモルファス合金薄帯の第1結晶化温度と第2結晶化温度の間にあるので、熱処理におけるコアの到達温度は第1結晶化温度を超え、bccFe結晶を確実に析出させることができる。一方、吸熱反応温度を超える過加熱は、吸熱反応によって抑制されるので、コアが第2結晶化温度へ到達することはなく、Fe化合物の析出が防止されるため、優れた軟磁気特性を有する軟磁性コアを得ることが可能となる。
【0017】
以上のように、本発明によれば、bccFe結晶の肥大化と、Fe化合物の析出を抑制し、優れた軟磁気特性を有する軟磁性コアの製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による軟磁性コアの製造方法の一例を示す図で、図1(a)は、軟磁性コアの斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA面の部分拡大断面図を示している。
図2】本発明の実施例における、アモルファス合金薄帯と吸熱反応物質の示差走査型熱量分析計(DSC)によるDSC曲線を示す。
図3】本発明の実施例2、3における、熱処理後の薄帯表面のエックス線回折(XRD)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明による軟磁性コアの製造方法の一例を示す図で、図1(a)は、片面に吸熱反応物質の層が形成されたアモルファス合金薄帯をトロイダル状に巻いて積層した熱処理前の軟磁性コアの斜視図を示す。図1(b)は、図1(a)におけるA面の部分拡大断面図を示している。アモルファス合金薄帯2の片面に吸熱反応物質3の層が形成されており、アモルファス合金薄帯2を積層することによって、吸熱反応物質3とアモルファス合金薄帯2が交互に配置されるので、本発明における吸熱作用が効果的に発揮できる。
【0021】
吸熱反応物質としては、吸熱反応温度がアモルファス合金薄帯の第1結晶化温度と第2結晶化温度の間に有れば、特に限定されない。吸熱反応として昇華を利用する物質、融解を利用する物質、分解反応を利用する物質などを使用することができ、それぞれ昇華温度、融解温度、分解温度が吸熱反応温度として作用する。
【0022】
昇華を吸熱反応として利用する吸熱反応物質としては、メラミン樹脂が好ましく、特にメラミンシアヌレートは吸熱量が大きく好適である。
【0023】
融解を吸熱反応として利用する吸熱反応物質としては、ZnおよびZnを含む合金が好ましい。特にZnは融点が420℃であり、上述のアモルファス合金薄帯の第1結晶化温度に近く、効率的な吸熱作用を得ることができる。
【0024】
またZnを主成分とするCuやAlの合金は、融解温度が組成によって変化するので、融解温度すなわち吸熱反応温度を、アモルファス合金薄帯の第1結晶化温度および第2結晶化温度の高低に合わせて選択することができるため好都合である。
【0025】
分解反応を吸熱反応として利用する吸熱反応物質としては、炭酸マグネシウムや炭酸アルミニウムなどの炭酸塩化合物が好ましい。特に炭酸マグネシウムは吸熱量が大きく好適である。
【0026】
吸熱反応物質をアモルファス合金薄帯の表面に配置する方法としては、アモルファス合金薄帯の表面に吸熱反応物質の層を形成する方法、吸熱反応物質の薄板をアモルファス合金薄帯と重ねる方法などが有る。これらの方法は、吸熱反応物質の形状に応じて選択することができる。
【0027】
吸熱反応物質の層を形成する方法としては、吸熱反応物質を溶媒に溶解して塗布する方法、吸熱反応物質の粉末を溶媒中に分散させて塗布する方法などが適用できる。
【0028】
また、アモルファス合金薄帯を積層してコアを作成後、吸熱反応物質が溶解している溶液または吸熱反応物質が分散している分散液に浸漬して、アモルファス合金薄帯の積層面の隙間に浸透させても良い。
【0029】
吸熱反応物質が金属の場合にはメッキも適用できるが、アモルファス合金薄帯と吸熱反応物質との密着性は特に必要とはしない。アモルファス合金薄帯の表面に吸熱反応物質の層が形成できれば良く、上記の方法に限定されない。
【0030】
吸熱反応物質の吸熱量については、アモルファス合金薄帯の第1結晶化温度と吸熱反応物質の吸熱温度との差や、吸熱反応の温度特性などに依存するが、アモルファス合金薄帯のbccFe結晶化による発熱量と同じ程度か、それよりも多い吸熱量があることが望ましい。
【0031】
一方、吸熱反応物質の層を形成することによって、軟磁性コア中のFe基ナノ結晶合金の占有率は減少する。したがって吸熱反応物質の層厚としては、占有率の減少による熱処理後の軟磁性コアの軟磁気特性の低下が顕著にならない層厚を選択する必要があり、具体的には、吸熱反応物質の層厚はアモルファス合金薄帯の厚さの1/4以下とすることが望ましい。
【0032】
軟磁性コアの作製方法としては、片面に吸熱反応物質の層が形成されたアモルファス合金薄帯を、トロイダル状に巻いて積層して作製することができる。また打ち抜きなどの方法によってリング状の薄板に加工し、このリング状の薄板を積層して軟磁性コアを作成しても良い。この場合、吸熱反応物質の層の形成は、アモルファス合金薄帯をリング状に加工した後でも良く、コアを作成したときにアモルファス合金薄帯と吸熱反応物質が交互に積層されていれば良く、順序は問わない。
【0033】
本発明におけるアモルファス合金薄帯は、Feを主成分として、少なくともB、P、およびCuを含有し、組成式FeSiCuで表され、79.0≦a≦86.0at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、および0.06≦z/x≦1.20である組成に適用できる。例えば、組成式がFe83.3Cu0.7、Fe83.3SiCu0.7、Fe83.3SiCu0.7などのアモルファス合金に適用できるが、これらの組成に限定されることはなく、第1結晶化温度と第2結晶化温度を有するアモルファス合金であれば適用が可能である。また、耐食性の改善や電気抵抗の調整などを目的として、Feの一部をTi、Zr、Hf、Nb,Ta、Mo、W、Cr、Co、Ni、Al、Mn、Ag、Zn、S、Sn、As、Sb、Bi、Y、N、Oおよび希土類元素のうち1種類以上の元素で、組成全体の3at%以下を置換し、Feとの合計が79.0at%以上、86.0at%以下であっても良く、例えば組成式がFe82.3SiCu0.7Nbであるアモルファス合金でもよい。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
組成式がFe83.3Cu0.7となる様に工業鉄、Fe−B合金、Fe−P合金および電気銅を秤量して高周波誘導加熱炉で溶解し、単ロール液体急冷法を用いて幅30mm厚さ25μmのアモルファス合金薄帯を作製した。このアモルファス合金薄帯の結晶化温度と、炭酸マグネシウムの吸熱反応温度を示差走査型熱量分析計(DSC)を用いて分析を行った。測定結果(DSC曲線)を図2に示す。図2より、炭酸マグネシウムの吸熱反応温度は約435℃で、アモルファス合金薄帯の第1結晶化温度405℃と第2結晶化温度505℃の間にあることを確認した。
【0035】
次に炭酸マグネシウムの粉末をアルコール中に分散させて分散液とし、幅10mmにスリット加工したアモルファス合金薄帯の表面に塗布した後、室温で24時間自然乾燥させ、炭酸マグネシウムの層を形成した。層の厚さは4μmから5μmであった。
【0036】
炭酸マグネシウムの層を形成したアモルファス合金薄帯を、トロイダル状に巻いて外径22mm、内径12mm、重量が20gのコアを作製した。このトロイダル状のコアを、アルゴン雰囲気中にて380℃、20分間熱処理を行い軟磁性コアを作製した。
【0037】
熱処理後の軟磁性コアに巻き線を施し、インピーダンスアナライザを用いて1kHzにおける初透磁率を測定した。また交流BHアナライザを用いてコアロスの測定を行った。また熱処理後の薄帯を、エックス線回折(XRD)により測定を行い、析出物の同定を行った。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
(実施例2)
実施例1における炭酸マグネシウムを、メラミンシアヌレートに換えて軟磁性コアを作製した。示差走査熱量分析の結果を図2に、初透磁率、コアロスの測定および析出物の結果を表1に示す。図2より、メラミンシアヌレートの吸熱反応温度は約460℃である。
【0040】
(実施例3)
実施例1における炭酸マグネシウムを、Znに換えて軟磁性コアを作製した。示差走査熱量分析の結果を図2に、初透磁率、コアロスの測定および析出物の結果を表1に示す。図2より、Znの吸熱反応温度は、Znの融点と同じ420℃である。
【0041】
(比較例1)
実施例1と同じアモルファス合金薄帯を、幅10mmにスリット加工し、トロイダル状に巻いて外径22mm、内径12mm、重量が20gのコアを作製した。このトロイダル状のコアを、実施例と同様にアルゴン雰囲気中にて380℃、20分間熱処理を行い軟磁性コアを作製し、インピーダンスアナライザを用いて1kHzにおける初透磁率を測定した。また交流BHアナライザを用いてコアロスの測定を行った。結果を表1に示す。
【0042】
表1より、本発明による軟磁性コアは、初透磁率が大きくコアロスが小さく、軟磁気特性に優れている。比較例1ではFe−P相やFe−B相のFe化合物が薄帯中に析出して特性が大幅に低下しているが、本発明である実施例1〜3ではFe−P相やFe−B相などのFe化合物は析出しておらず、初透磁率、コアロスとも良好な特性を得た。
【0043】
図3に、実施例2、3における熱処理後の薄帯表面のエックス線回折(XRD)結果を示す。表1に示したようにbccFe相以外にはアモルファス合金に由来するFe化合物は検出されていない。一方、吸熱反応物質であるメラミンシアヌレート(実施例2)およびZn(実施例3)が表面に残存しているが、軟磁気特性への影響は、Fe化合物の析出に比べると非常に小さいものである。
【0044】
以上の通り、アモルファス合金薄帯のすくなくとも一方の面に、吸熱反応温度が前記アモルファス合金薄帯の第1結晶化温度と第2結晶化温度の間にある吸熱反応物質の層を形成して積層したコアを熱処理して軟磁性コアを製造することにより、Fe化合物の析出を抑制し、軟磁気特性の優れた軟磁性コアの製造方法が得られる。
【符号の説明】
【0045】
1 軟磁性コア
2 アモルファス合金薄帯
3 吸熱反応物質
図1
図2
図3