特許第6227342号(P6227342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227342
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】脱ぎ履きし易いリハビリ靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20171030BHJP
   A43B 11/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   A43B23/02 105Z
   A43B11/00
   A61H3/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-190495(P2013-190495)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-54187(P2015-54187A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】595019474
【氏名又は名称】徳武産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】十河 孝男
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−212134(JP,A)
【文献】 特開2001−104012(JP,A)
【文献】 実開昭56−070802(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3043087(JP,U)
【文献】 特開2006−109953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00−23/30
A43C 1/00−19/00
A43D 1/00−999/00
A44B 13/00−18/00
A61H 1/00−5/00
A61H 99/00
B29D 35/00−35/14
B65D 61/00−63/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲皮、底部材、舌片および締結ベルトが設置されたリハビリ靴であって、舌片の先端部分および締結ベルトの先端部分には面ファスナーが設置され、舌片を上方に折り曲げて舌片の先端部分に設置された面ファスナーと締結ベルト先端部の面ファスナーを係止することにより舌片を上方に保持し靴のつま先方向の開口部分を広く維持することを特徴とするリハビリ靴。
【請求項2】
舌片の先端に設置された面ファスナーが、甲皮に結合されている締結ベルト端部側にある請求項1に記載のリハビリ靴。
【請求項3】
舌片の先端に設置された面ファスナーが、舌片の締結ベルト側に突出している請求項1または2に記載のリハビリ靴。
【請求項4】
締結ベルトが接合されている甲皮の側に、舌片の先端部の面ファスナーに対応する面ファスナーが設置され両者が係合されることを可能となした請求項1から3のいずれかに記載のリハビリ靴。
【請求項5】
下記の(1)から(5)の要件を具備する請求項1から4のいずれかに記載のリハビリ靴。
(1)一端が甲皮に固定され、他の自由端には面ファスナーが配設されているベルトが設置されていること、
(2)面ファスナーが表裏に配置された締結小片が設置されていること、
(3)ベルトと締結小片を面ファスナーにより係止することにより締結ベルトを形成し、相互の係止位置を調整することにより締結ベルトとしての実質的な長さを調整することができること、
(4)締結ベルトが係止される位置の甲皮には面ファスナーが設置されていること、
(5)締結小片を介して締結ベルトが甲皮に係止されること、
【請求項6】
甲皮の舌片を形成する部分の中央には適宜幅の伸縮地を介在させることにより舌片幅を伸縮自在とした請求項1から5のいずれかに記載の締結ベルト付きリハビリ靴。
【請求項7】
装着具との摩擦により傷みやすい箇所である(1)足幅が一番広い部分であってアッパーに圧がかかりやすい部分、および(2)装具により擦れる踵周りの部分、に補強材が設置されている請求項1から6のいずれかに記載の締結ベルト付きリハビリ靴。
【請求項8】
装着具を装着した足にリハビリ靴を履く際に必要なスペースを横幅でとるのではなく、縦に深さをつけることにより外観が改善された請求項1から7のいずれかに記載の締結ベルト付きリハビリ靴。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴履着が容易な締結ベルト付きリハビリ靴に関し、特に、下肢装具などを装着した場合に適したリハビリ靴を提供するものである。本発明のリハビリ靴は、脱着する際に舌片を上方に固定することにより靴の開口を拡大し着脱を容易するものであり、さらに、締結ベルトの長さを簡便に調整することを可能とし、しかも、靴の履き心地、外観にまで気を配ったリハビリ靴を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、足に装具などの器具類を装着した時でも靴が足にフィットし、また、歩行に支障をきたすことなく、簡単に着脱の動作ができ、しかも外観デザインに優れたリハビリテーション用の靴を提供することが試みられてきた。そうしたなかで、開口部に舌弁と開口部を横断する締結ベルト配したリハビリ靴が数多く提案されてきた。
例えば、甲材が底部から上方へ立ち上がり、この立ち上がった前記甲材に舌片をかぶせて接合したモカシン型の靴において、甲材に着脱自在になるように取り付けられ、前記舌片を横断して跨ぐように設けられたベルトと、このベルトの一端の裏面側には、第1の面状ファスナーが備えられ、この第1の面状ファスナーに係止する第2の面状ファスナーを前記甲材の外側に設けているモカシン型の靴(特許文献1)が提案されている。
【0003】
また、締結ベルトの取付け位置を、片麻痺患者にあっても操作が可能な左右自在の取付けとする締結ベルト付きリハビリ靴並びにその締結ベルトを提供する舌革部位置に締結ベルトを掛けるリハビリ靴として、靴本体の舌革部の中央部分に適宜幅の伸縮地を介在し舌革幅を伸縮自在とし、該伸縮地の上下位置に甲締兼反転用面ファスナーと折返し受け用面ファスナーを配すと共に、靴本体両側の腰革位置に夫々ベルト用面ファスナーを配し、この両側面ファスナーの左右どちらかに、裏面域に前記両側面ファスナーに対応の面ファスナーを配し左右共通ベルト構成としてなる締結ベルトを、そのベルト先端部を麻痺等のない利き手側に向かせた基端部を係合の固定端とし、この先端部を残る腰革位置の面ファスナーに係合自在の開閉端とし、且つ舌革部の前方折返し時に該舌革部上下位置にある前記両面ファスナー同志を係合し折返し仮保持とする締結ベルト付きリハビリ靴。(特許文献2)が提案されている。
【0004】
さらに、着脱容易な靴を提供するにあたり、形状保持のために金属類を使用せず、デザインが自由に採用でき、着脱時には、履き口を構成する甲被、舌片、緊締具等を広げても、逆戻りしない、広い履き口の確保が可能な着脱容易な靴を提供することを目的として、甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、合成樹脂製の形状保持材を使用し、着脱を容易にする為に、履き口を希望する形状にするのに必要な個所、例えば緊締用ベルトや舌片や前記切欠き部の縁に形状保持材を取り付けて、形状保持材の形状保持性を利用して履き口を希望する形状にし得るようにした提案がなされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−313701号公報
【特許文献2】特開2006-212134号公報
【特許文献3】特開2006−204407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歩行のリハビリを必要とする疾患には、リュウマチ、糖尿病、変形性関節症、脳血管障害などによることが多いが、筋力トレーニング、片麻痺状態からの歩行訓練などによりその症状は大きく改善される。こうした患者は脳血管障害を原因とすることが半数以上であるため、脳血管障害者の層を主たるターゲットとしたリハビリ靴を提供することが急務とされている。
歩行のリハビリでは、車いす、長下肢装具、短下肢装具を使用する過程を経て順次回復する。この過程では下肢装具を身に着けた状態で靴を履きリハビリに励むことが必要となることが多い。リハビリ用の靴として利用されるための要件としては、(1)脱ぎ履きしやすいこと、(2)踵が安定していること、(3)つま先が保護されていること、を基本とし、さらに、(4)不格好でないこと、(5)長持ちすること、(6)足にサイズがあっていること、が必要とされる。しかしながら、これらの要件については十分満たされているとは言えないのが現状である。
本発明は、特に上記の要件(1)および(6)を満足するリハビリ用の靴を提供するものであり、靴を脱ぎ履きする際に開口部を安定して保持することができ、しかも装具を装着した足にも、装具を必要としなくなった足にも大きさに合わせて調整することができるリハビリ靴を提供するものである。リハビリ生活を始めるにあたって最初に履いた靴の存在は大きく、履きなれた靴はそれに不満があっても他の靴に変更することなく履き続けることが多い。したがって、リハビリを長期にわたって継続して回復するには優れたリハビリ靴を最初から提供することが肝要である。
【0007】
靴の着脱時に開口を大きくなし履き易くするための舌片は便利な要素ではあるが、特に靴を履く際には舌弁が足の下に入る、舌片がねじれてしまうなどにより靴がうまく履けないことにしばしば遭遇する。特に、片手での脱ぎ履きが困難となることが多い。本発明は、靴の舌弁を上方に固定することができるようにすることにより片手による靴の着脱を容易となすものである。
また、本発明は、入手後ただちにリハビリに使用できるようさらに工夫をしたものである。すなわち、リハビリ用の靴では、補装具などの器具を装着している足用の靴と装着していない足用の靴では、締結ベルトの長さが異なることがしばしば発生する。そうすると、左右の靴の締結ベルトの長さを各足に合わせて調整することが必要となり、こうした締結ベルトの長さの調整には、一度加工注文に出さなければならないことが多い。そうすると、リハビリの開始が締結ベルトの入手のために延期されることになりかねない。本発明は、リハビリ用の靴を入手したら直ちにリハビリを開始できるように、延長ベルトを左右両方の靴に装着してあることと、面ファスナーを利用することにより締結ベルトあるいは緊締片の延長を簡便になすことができるようにしたものであり、上記の開口部を安定して保持する機構とともに採用することにより非常に優れたリハビリ靴となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)甲皮、底部材、舌片および締結ベルトが設置されたリハビリ靴であって、舌片の先端部分および締結ベルトの先端部分には面ファスナーが設置され、舌片を上方に折り曲げて舌片の先端部分に設置された面ファスナーと締結ベルト先端部の面ファスナーを係止することにより舌片を上方に保持し靴のつま先方向の開口部分を広く維持することを特徴とするリハビリ靴。
(2)舌片の先端に設置された面ファスナーが、甲皮に結合されている締結ベルト端部側にある上記(1)に記載のリハビリ靴。
(3)舌片の先端に設置された面ファスナーが、舌片の締結ベルト側に突出している上記(1)または(2)に記載のリハビリ靴。
(4)締結ベルトが接合されている甲皮の側に、舌片の先端部の面ファスナーに対応する面ファスナーが設置され両者が係合されることを可能となした上記(1)から(3)のいずれかに記載のリハビリ靴。
【0009】
(5)下記の(a)から(e)の要件を具備する上記(1)から(4)のいずれかに記載のリハビリ靴。
(a)一端が甲皮に固定され、他の自由端には面ファスナーが配設されているベルトが設置されていること、
(b)面ファスナーが表裏に配置された締結小片が設置されていること、
(c)ベルトと締結小片を面ファスナーにより係止することにより締結ベルトを形成し、相互の係止位置を調整することにより締結ベルトとしての実質的な長さを調整することができること、
(d)締結ベルトが係止される位置の甲皮には面ファスナーが設置されていること、
(e)締結小片を介して締結ベルトが甲皮に係止されること、
(6)甲皮の舌片を形成する部分の中央には適宜幅の伸縮地を介在させることにより舌片幅を伸縮自在とした上記(1)から(5)のいずれかに記載の締結ベルト付きリハビリ靴。
(7)装着具との摩擦により傷みやすい箇所である(f)足幅が一番広い部分であってアッパーに圧がかかりやすい部分、および(g)装具により擦れる踵周りの部分、に補強材が設置されている上記(1)から(6)のいずれかに記載の締結ベルト付きリハビリ靴。
(8)装着具を装着した足にリハビリ靴を履く際に必要なスペースを横幅でとるのではなく、縦に深さをつけることにより外観が改善された上記(1)から(7)のいずれかに記載の締結ベルト付きリハビリ靴。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、下肢装具などを装着した場合に適したリハビリ靴を提供するものであり、リハビリ靴を脱着する際に舌片を上方に固定することにより靴の開口を拡大し容易するものであり、さらに、締結ベルトの長さを簡便に調整することを可能とし、しかも、靴の履き心地、外観にまで気を配ったリハビリ靴を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のリハビリ靴の外観を示す。
図2】舌片を上方に保持するための構造を示す。
図3】舌片を上方に保持した状態を示す。
図4】面ファスナーが突出した舌片を示す。
図5】締結ベルトの延長機構を備えたリハビリ靴を示す。
図6】締結ベルトの延長機構を示す。
図7】締結ベルトを延長した本発明のリハビリ靴の外観を示す。
図8】下肢装着具および靴の傷んだ箇所を示す写真である。
図9】本発明のリハビリ靴のヒールカウンターの先端部を土踏まずのアーチ部分にまで延長していることを説明する図面。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、甲皮、底部材、舌片および締結ベルトが設置されたリハビリ靴であって、舌片の先端部分、締結ベルトの先端部分には面ファスナーが設置され、舌片を上方に折り曲げて舌片の先端部分に設置された面ファスナーと締結ベルト先端部の面ファスナーを係止することにより舌片を上方に保持することにより靴のつま先方向の開口部分を広く維持することができるリハビリ靴に関する。本発明は、特に、靴を履くときに舌片が下がって足の裏が舌片上に乗り、スムースに靴を履くことができない状態になることを防止するものである。リハビリ用の靴においては片手での脱ぎ履きが困難になることが多いが本発明の靴はリハビリ用の靴としてこれらの難点を回避している。
また、本発明のリハビリ靴は、さらに締結ベルトを簡便に調整することが可能であることから、靴を入手後ただちに締結ベルトの長さを調整して使用することができる。そのため、調整用の部品の注文や待機期間による使用できない期間が大きく短縮される。
【0013】
本発明のリハビリ靴の構造を図面に沿って説明する。本発明の靴の外観は図1に示す。本発明のリハビリ靴の素材は特に限定されないが、表素材:合成皮革、内素材:ポリエステル100%(メッシュ)、底材:合成底(EVA、ゴム)あるいは表素材:合成皮革、ポリエステル100%、内素材:ポリエステル100%、カップインソール:EVA、底材:合成底(EVA、ゴム)が例示される。
その構造は、例えば、図2に示すように、甲皮1、底部材2、締結ベルト5、舌片6からなり、舌片6は甲皮1から両側端が切断されて一端は甲皮と一体化し、他端は自由端となり靴の開口部の前方を覆っている。締結ベルト5の一端は甲皮1に接続され舌片6を覆って他端は開口部を挟んだ甲皮1に係止されることにより、靴を足に固定することができる。図1の甲皮は合成皮革で形成されている。マヒしている側の足趾は緊張で屈曲しクロウトゥになりやすく、圧迫しないスペースを確保する必要が有り、ゆったりとしたトゥボックスになっている。一方、図2の甲皮は合成皮革とポリエステルのメッシュ地で形成されており、つま先部は合成皮革でできている。特に、マヒしている側は感覚が鈍いために外部からの保護が必要であり、また、爪先部はさまざまな場面で擦りやすい部分であり耐久性が必要であるため、耐久性のある合成皮革で爪先をカバーしている。
舌片6の先端部には、すなわち舌片を前方上方に保持したときに現れる面(内面)の先端部には、面ファスナー61が、締結ベルト5が甲皮1に接続されている側に設置されている。締結ベルト5の先端部には、舌片6の面ファスナー61と係合する面ファスナー51が設置されている。舌片6の面ファスナー61と締結ベルト5の面ファスナー51を係止することにより舌片6は前方上方に保持されて足を挿入する開口が前方に大きく開く。すなわち、舌片6は締結ベルト5に支えられて下方に落下することはない。舌片6を上方に保持した状態の外観を図3に示す。
開口に足を挿入した後、舌片6と締結ベルト5の係止を解除して舌片6は足の甲を覆うように下方に戻され、締結ベルト5は舌片6の上方を通り甲皮1に形成されている面ファスナー11と係止されて足と靴が固定される。
舌片6の面ファスナー61に対応する面ファスナー12を甲皮1の締結ベルト3が固定される側に設けることにより、舌片6を甲皮1に係止することができる。舌片6と甲皮1の係止により足と靴は更にしっかりと固定される。この時、舌片6の面ファスナー61を設置する箇所を図4に示すように外側(締結ベルト5が甲皮1に接続されている側)に突出させることにより舌片6と甲皮1との係止がさらに強固となる。
【0014】
また本発明のリハビリ靴は上記要件に加え以下の要件をも備えることができる。
(1)一端が甲皮に固定され、他の自由端には面ファスナーが配設されているベルトが設置されていること、
(2)面ファスナーが表裏に配置された締結小片が設置されていること、
(3)ベルトと締結小片を面ファスナーにより係止することにより締結ベルトを形成し、相互の係止位置を調整することにより締結ベルトとしての実質的な長さを調整することができること、
(4)締結ベルトが係止される位置の甲皮には面ファスナーが設置されていること、
(5)締結小片を介して締結ベルトが甲皮に係止されること、
この締結ベルト付きリハビリ靴は、歩行の訓練を必要とする人々、例えば、短下肢装着具類を装着したリハビリの回復過程で特に有用に使用される。
【0015】
舌片を上方に保持する機構および締結ベルトの調整機構を備えた本発明の詳細を以下に図面を参照しながら説明する。
図5は本発明のリハビリ靴の外観を示すものであり、本リハビリ靴は甲皮1、底部材2、ベルト3および締結小片4からなる締結ベルト5において、締結ベルト5の長さを簡便に調整することが可能となり、下肢装具の装着が短時間で容易に行うことができるとともに、装具の形態、あるいは装具の有無に関係なく優れた履き心地を提供することができる。
【0016】
ベルト3と締結小片4からなる締結ベルト5は舌片6の上方を通り甲皮の一方から他方の甲皮を連結して、足をしっかりと固定し安定した歩行を可能とする。舌片6の中央部には適宜幅の伸縮地62を長手方向に介在させている。62の伸縮地は甲皮のポリエステルのメッシュ地とすることができる。舌片6は中央部分の伸縮地62で左右伸びが自在なため、装具装着において甲縁部が両側に押し広げられても伸縮地62が適宜伸び無理のない履着ができると共に、足が甲高であっても、この無理のない履着ができる。
図6には、締結ベルト5により固定化する部材の構造を示す。ベルト3の一端は甲皮1にしっかりと固定され、他は自由端となりその先端部には面ファスナー31が設けられている。ベルト3の先端部には面ファスナー31を設けていない箇所があり指による着脱を容易にしている。着脱小片4の表には面ファスナー41が設けられてベルト3の面ファスナー31と係合することができ強固な結合を可能としている。面ファスナー31と41の係合位置を適宜調整することによりベルト3を締結小片4により実質的に延長することができるため、締結ベルト5の長さを変化させることができる。締結小片4の裏面にも面ファスナー42が設けられて甲皮1に配設された面ファスナー11と係合することにより足を靴に無理なく止めることができる。甲皮1の面ファスナー11と締結小片4の面ファスナー42の係合位置を変えることにより靴の装着状態を微調整することもできる。締結小片4の面ファスナー42を舌片6に設けられた面ファスナー61(図6には記載していない)に係止して舌片6を上方に保持することができる。
図7はベルト3と締結小片4の位置をずらせて係合したリハビリ靴の外観を示すものであり、締結小片4の表面に設置された面ファスナー41が部分的に見えている長さだけ締結ベルト5が延長されていることになる。
【0017】
ベルト3の解放先端部分の形状と締結小片4の先端部分の形状を類似または一致させることにより装着時の外観を好ましいものとすることができる。。締結ベルト5は柔軟性および強度が高くしかも形状を保持することができる材質で作成されることが好ましいが、靴を強固に装着するために、またベルトの止め損ないを防止するために、面ファスナーを広くすることが好ましく、比較的幅広く作成した場合や、締結ベルト5の材質が柔軟性を欠く場合にはその中央付近に切欠部32を設けるとよい。ベルト3の先端部分の形状と締結小片4の先端部分の形状を類似または一致させることにより装着時の外観を好ましいものとすることができる。
【0018】
本リハビリ靴の装着時には下肢装具を使用していることを主に想定しているが、この装具は、例えば、図8(2)にみられるような形状をしている。下肢装具を装着すると、足幅が広い部分でアッパーに圧がかかりやすくなる部分Aが傷みやすくなる(図8(3))とともに、装具についている金具や装具のかかとの部分などにより擦れる部分Bで靴の内面が痛む(図8(1))ことが避けられなくなるため、これらの部分には補強材(図8(4)のAおよびB)をつけることで靴を長持ちをさせることができる。アッパー全体を強固な材質を用いて損傷を避けることではなく、必要な部分に補強材を設けることによりアッパーのメッシュ地による通気性を損なわないで補強することができる。
【0019】
下肢装着具類を使用すると靴全体の外観は不格好になりやすく、リハビリを継続するモチベーションが低下することや、普通の靴を履けなくなって落ち込んでしまうことがあるために、リハビリ用の靴であってもその外観を重視することが大切である。靴の幅を広げることは靴の外観を損なうことになるため、リハビリ靴では、靴を履く際に必要なスペースを横幅でとるのではなく、縦に深さをつけること(ラストの幅を広げないで厚みをつけること)により解決することが好ましい。下肢装具の金具などによる靴内面の損傷は補強材により解決している。
本発明の構造を有する左右一組の靴を入手する場合には、下肢装具を装着した足に靴のサイズを合わせ、下肢装具を装着しない靴にはカップインソールやヒールを組み合わせて高さ素調整することにより左右の靴の高さを同じくする。これによって、歩きやすさに優れ、左右の外観が一致したスマートな靴を入手することができる。
【0020】
靴の踵には、踵を包み込んで全体的に保持するための芯材であるヒールカウンター7が形成されている。ヒールカウンター7を硬質の部材で構成することにより、足底板のズレを抑え、また履物のねじれを防ぐことができる。ところで、底部が屈曲性に優れた履物を高齢者等が着用すると、自重により靴の外側が沈み、足が内反してしまうおそれがある。本発明のリハビリ靴では、ヒールカウンター7が自重をきちっと受け止めしっかり支持することで内反を防ぐためにヒールカウンター7の先端部71を土踏まずのアーチ部分にまで延長している。踵の上部には手の指が充分に入るループ
が設けられており、装着時、高齢者や障害者が容易に手の指を挿入して履物の踵部を引き上げることにより装着を容易にしている(図9)。
踵の上部には手の指が充分に入るループが設けられており、装着時、高齢者や障害者が容易に手の指を挿入して履物の踵部を引き上げることにより装着を容易にしている。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のリハビリ靴は、高齢者および障害者に適したものであるが、年令や性別に関係なく全ての下肢装具の利用者に対応する履物を提供するものである。特に、靴を履くときに舌片が下方に位置することにより生ずる障害を防止すること、および靴の締結ベルトを改善することにより、片手でも靴を履くことが容易であり、しかも、汎用性のあるリハビリ靴を提供することができ、入手後ただちにリハビリ靴を履いてリハビリを実施することができること、およびスマートな外観(ラストの幅を広げないで厚みをつけることで解決した外観)の本発明のリハビリ靴を履くことによりリハビリを成し遂げるためのモチベーションが向上する。本発明のリハビリ靴を利用することによりリハビリを完了し回復率を大きく向上することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 甲皮
11 締結ベルト係止用面ファスナー
12 舌片係止用面ファスナー
2 底部材
3 バンド
32 切欠部
4 締結小片
41 締結小片の表側の面ファスナー
42 締結小片の裏側の面ファスナー
5 締結ベルト
51 締結ベルト面ファスナー
6 舌片
61 舌片の面ファスナー
62 伸縮地
7 ヒールカウンター
71 ヒールカウンター先端


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9