特許第6227344号(P6227344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小野田ケミコ株式会社の特許一覧

特許6227344流体の供給の切替装置および切替方法、並びに、高圧噴射撹拌装置
<>
  • 特許6227344-流体の供給の切替装置および切替方法、並びに、高圧噴射撹拌装置 図000002
  • 特許6227344-流体の供給の切替装置および切替方法、並びに、高圧噴射撹拌装置 図000003
  • 特許6227344-流体の供給の切替装置および切替方法、並びに、高圧噴射撹拌装置 図000004
  • 特許6227344-流体の供給の切替装置および切替方法、並びに、高圧噴射撹拌装置 図000005
  • 特許6227344-流体の供給の切替装置および切替方法、並びに、高圧噴射撹拌装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227344
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】流体の供給の切替装置および切替方法、並びに、高圧噴射撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   E02D3/12 102
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-194941(P2013-194941)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-59377(P2015-59377A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185972
【氏名又は名称】小野田ケミコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】竹山 幸生
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−133663(JP,A)
【文献】 米国特許第05727595(US,A)
【文献】 実開昭60−005461(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
F16K 11/00〜 11/24
F16K 5/00〜 5/22
F16K 31/00〜 31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧噴射撹拌工法に用いるための、流体の供給の切替装置であって、
上記切替装置が、
流体の流入のための入口側の開口部と、流体の流出のための出口側の開口部と、上記入口側の開口部と上記出口側の開口部の間に設けられた、流体切替用開口部を有する管路と、
上記管路をその軸線周りに回転可能に支持するとともに、上記管路内を流通する流体の一部を分岐して流出させるための支持部であって、上記管路を回転させて、上記管路の上記流体切替用開口部と位置を合わせることによって、上記管路内を流通する流体の一部を分岐して流出させることのできる貫通孔を有する支持部
含むものであり、
上記支持部が、上記貫通孔を有しかつ上記管路の一端を含む部分を支持するための第一の支持部分と、上記貫通孔を有さずかつ上記管路の他端を含む部分を支持するための第二の支持部分を有し、
上記管路が、上記支持部の第一の支持部分と第二の支持部分の間に、上記管路を回転させるための工具を差し入れることのできる回転操作部を有することを特徴とする流体の供給の切替装置。
【請求項2】
請求項に記載の切替装置を用いた流体の流量の制御方法であって、上記管路の回転操作部を回転させ、この回転角度の調節によって、上記管路の流体切替用開口部と上記支持部の貫通孔とが重なる面積の大きさを変化させて、上記管路から上記支持部に分岐して流入する流体の流量を制御することを特徴とする流体の流量の制御方法。
【請求項3】
請求項に記載の切替装置と、地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を有する高圧噴射撹拌装置であって、
上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段が、上記切替装置の上記支持部の貫通孔から流出した流体を流通させるための第一の流路と、上記切替装置の上記管路の出口側の開口部から流出した流体を流通させるための第二の流路と、上記第一の流路によって導かれた流体を吐出または噴射するための流体吐出口と、上記第二の流路によって導かれた流体を噴射または吐出するための流体噴射口を有する、高圧噴射撹拌装置。
【請求項4】
請求項に記載の高圧噴射撹拌装置を用いた、流体の供給の切替方法であって、
上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を地盤に貫入させる時に、上記切替装置の支持部の上記貫通孔と、上記切替装置の管路の上記流体切替用開口部とが少なくとも部分的に重なるように、上記切替装置の管路の位置を調節して、上記第一の流路に流体を流通させ、上記流体吐出口から流体を吐出させる工程と、
上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を引き上げる時に、上記切替装置の支持部の上記貫通孔と、上記切替装置の管路の上記流体切替用開口部とが重ならないように、上記切替装置の管路の位置を調節して、上記第二の流路に流体を流通させ、上記流体噴射口から流体を噴射させる工程
を含むことを特徴とする流体の供給の切替方法。
【請求項5】
請求項に記載の高圧噴射撹拌装置を用いた、流体の供給方法であって、
上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を地盤に貫入させる時に、上記切替装置の支持部の上記貫通孔と、上記切替装置の管路の上記流体切替用開口部とが少なくとも部分的に重なるように、上記切替装置の管路の位置を調節して、上記第一の流路に流体を流通させ、上記流体吐出口から流体を吐出させる工程と、
上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を引き上げる時に、上記切替装置の支持部の上記貫通孔と、上記切替装置の管路の上記流体切替用開口部とが部分的に重なるように、上記切替装置の管路の位置を調節して、上記第一の流路および第二の流路の各々に流体を流通させ、上記流体吐出口および上記流体噴射口から流体を噴射させる工程
を含むことを特徴とする流体の供給の切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体(例えば、固化材スラリーと削孔水)の供給の切替装置および切替方法、並びに、該切替装置を含む高圧噴射撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤等を高強度に改良するための地盤改良工法として、高圧噴射撹拌工法が知られている。
本発明で対象とする高圧噴射撹拌工法とは、高圧噴射撹拌装置の地盤貫入部分である地盤注入管の下端から、削孔水を噴射しつつ、地盤注入管の下端の掘削ビットによって、目標とする深さまで地盤を削孔し、次いで、地盤注入管の下端付近から側方に固化材スラリーを噴射しつつ、地盤注入管をその軸周りに回転させながら上昇させて、柱状の地盤改良体を造成する工法である。
【0003】
この工法において、固化材スラリーと削孔水の供給を切り替えるための種々の方法が知られている。
例えば、特許文献1の段落0026及び図3に、削孔水Wの供給に際しては、ボール17Bを投入せず、削孔水WOを、弁座17Aを通る流路18を通して削孔水吐出孔に送り、改良液Mの供給に際しては、ボール17Bを投入することにより流路18を封止し、改良液Mをセメントミルク噴射ノズル16に送ることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2の請求項1、図2図6及び図7に、外管1および内管2からなり、外管1と内管2との間隙部分にA流路が形成されるとともに、内管2の内通路をB流路とする二重管構造の地盤改良用噴射管であって、前記噴射管の先方部分に噴射管軸と直交する方向に突出する張出管30を備えるとともに、張出管30内に管外方に出没自在とされ、かつ先端に第1噴射ノズル32を備える張出噴射内管31を収容し、さらにこの張出管取付位置から先端側の外管部分に第2噴射ノズル36を備え、内管2は噴射管頭部に設けられた内管移動手段により管軸方向に移動自在とされ、この内管移動操作の下、A流路から第1噴射ノズル32へ至る流路の開閉制御がなされるとともに、このA流路からの供給液を作動液として張出噴射内管31の出没動作が制御され、張出噴射内管31を張出管30内に収容した状態で第2噴射ノズル36のみから供給液を噴射する噴射態様(図6)と、張出噴射内管31が張出管外方に突出させた状態で第1噴射ノズル32および第2噴射ノズル36から共に供給液を噴射する噴射態様(図7)との切換えが任意に選択可能とされたことを特徴とする地盤改良用噴射管が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−54492号公報
【特許文献2】特開平7−102549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、高圧噴射撹拌工法において、固化材スラリーと削孔水の供給を切り替えるためには、上述のとおり、ボール17B(特許文献1)や、二重管構造を有する特殊な噴射管(特許文献2)を必要としていた。
このうち、ボール17Bを用いる方法(特許文献1)は、地盤改良体の造成毎に、ボール17Bの取り出し及び投入を行わなければならない点で、作業が煩雑であるなどの問題がある。
また、二重管構造を有する特殊な噴射管を用いる方法(特許文献2)は、噴射管の構造が複雑であるため、噴射管の製造コストが大きく、また、既存の噴射管(地盤貫入用高圧噴射撹拌手段)を利用することができないなどの問題がある。
【0007】
本発明の目的は、流体(例えば、固化材スラリーと削孔水)の供給の切替を、容易に行うことができ、また、2つの流路を有する任意の地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を利用することのできる、流体の供給の切替装置及び切替方法、並びに、該切替装置を含む高圧噴射撹拌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、入口側の開口部と出口側の開口部の間に、流体の供給の切替用の開口部(以下、「流体切替用開口部」ともいう。)を有する管路(第一の部材)と、該管路を回転させて該管路の流体切替用開口部と位置を合わせた場合に該管路内の流体の一部を分岐して流出させることのできる貫通孔を有する、該管路を支持するための支持部(第二の部材)を組み合わせてなる、流体の供給の切替装置によれば、流体(例えば、固化材スラリーと削孔水)の供給の切替を、容易に行うことができ、また、2つの流通路を有する任意の地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を、改造等を行わずにそのまま利用することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] 高圧噴射撹拌工法に用いるための、流体の供給の切替装置であって、流体の流入のための入口側の開口部と、流体(例えば、固化材スラリー)の流出のための出口側の開口部と、上記入口側の開口部と上記出口側の開口部の間に設けられた、流体切替用開口部を有する管路と、上記管路をその軸線周りに回転可能に支持するとともに、上記管路内を流通する流体(例えば、削孔水)の一部を分岐して流出させるための支持部であって、上記管路を回転させて、上記管路の上記流体切替用開口部と位置を合わせることによって、上記管路内を流通する流体(例えば、削孔水)の一部を分岐して流出させることのできる貫通孔を有する支持部を含むことを特徴とする流体の供給の切替装置。
[2] 上記支持部が、上記貫通孔を有しかつ上記管路の一端を含む部分を支持するための第一の支持部分と、上記貫通孔を有さずかつ上記管路の他端を含む部分を支持するための第二の支持部分を有し、上記管路が、上記支持部の第一の支持部分と第二の支持部分の間に、上記管路を回転させるための工具(例えば、スパナ)を差し入れることのできる回転操作部を有する、上記[1]に記載の切替装置。
【0010】
[3] 上記[1]又は[2]に記載の切替装置を用いた流体の流量の制御方法であって、上記管路の回転操作部を回転させ、この回転角度の調節によって、上記管路の流体切替用開口部と上記支持部の貫通孔とが重なる面積の大きさを変化させて、上記管路から上記支持部に分岐して流入する流体の流量を制御することを特徴とする流体の流量の制御方法。
[4] 上記[1]又は[2]に記載の切替装置と、地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を有する高圧噴射撹拌装置であって、上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段が、上記切替装置の上記支持部の貫通孔から流出した流体を流通させるための第一の流路と、上記切替装置の上記管路の出口側の開口部から流出した流体を流通させるための第二の流路と、上記第一の流路によって導かれた流体を吐出するための流体吐出口と、上記第二の流路によって導かれた流体を噴射または吐出するための流体噴射口を有する、高圧噴射撹拌装置。
[5] 上記[4]に記載の高圧噴射撹拌装置を用いた、流体の供給の切替方法であって、上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を地盤に貫入させる時に、上記切替装置の支持部の上記貫通孔と、上記切替装置の管路の上記流体切替用開口部とが少なくとも部分的に重なるように、上記切替装置の管路の位置を調節して、上記第一の流路に流体を流通させ、上記流体吐出口から流体を吐出させる工程と、上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を引き上げる時に、上記切替装置の支持部の上記貫通孔と、上記切替装置の管路の上記流体切替用開口部とが重ならないように、上記切替装置の管路の位置を調節して、上記第二の流路に流体を流通させ、上記流体噴射口から流体を噴射させる工程を含むことを特徴とする流体の供給の切替方法。
[6] 上記[4]に記載の高圧噴射撹拌装置を用いた、流体の供給方法であって、上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を地盤に貫入させる時に、上記切替装置の支持部の上記貫通孔と、上記切替装置の管路の上記流体切替用開口部とが少なくとも部分的に重なるように、上記切替装置の管路の位置を調節して、上記第一の流路に流体を流通させ、上記流体吐出口から流体を吐出させる工程と、上記地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を引き上げる時に、上記切替装置の支持部の上記貫通孔と、上記切替装置の管路の上記流体切替用開口部とが部分的に重なるように、上記切替装置の管路の位置を調節して、上記第一の流路および第二の流路の各々に流体を流通させ、上記流体吐出口および上記流体噴射口から流体を噴射させる工程を含むことを特徴とする流体の供給の切替方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の切替装置によれば、該切替装置を地上に設置して、作業者が、該切替装置の構成部分である管路をわずかに回転させる操作を行うだけで、流体(例えば、固化材スラリーと削孔水)の供給の切替を、容易に行うことができる。
また、本発明の切替装置によれば、2つの流路を有する任意の地盤貫入用高圧噴射撹拌手段(例えば、既存のもの)を、改造等を行わずにそのまま利用することができる。
さらに、本発明の切替装置によれば、例えば、本発明の切替装置の管路の出口側の開口部のみから供給されていた固化材スラリーが、流体噴射口の付近で詰まった場合に、本発明の切替装置にて流体の切替を行って、固化材スラリーを、切替装置の支持部の貫通孔を介して、流体吐出口に導いて吐出させれば、固化材スラリーの流体圧を大きく低下させることができ、地盤貫入用高圧噴射撹拌手段を流体噴射口が地上に現れるまで引き上げて、流体噴射口の付近での固化材スラリーの詰まりを解消させるための作業を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】管路の流体切替用開口部と支持部の貫通孔とが完全に重なった状態にある本発明の切替装置を、管路の軸線を通る面で切断した状態を示す断面図である。
図2図1に示す状態から、管路を90度回転させて、管路の流体切替用開口部と支持部の貫通孔とが全く重ならない状態にある本発明の切替装置を、管路の軸線を通る面で切断した状態を示す断面図である。
図3】本発明の切替装置において、管路を回転させることによる、管路の流体切替用開口部と支持部の貫通孔とが重なる面積の大きさの変化を説明するための図である。
図4】本発明の切替装置を含む高圧噴射撹拌装置の一例を模式的に示す図である。
図5】本発明の切替装置を含む高圧噴射撹拌装置の他の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、切替の対象となる2種の流体が、固化材スラリー及び削孔水である場合について、本発明の切替装置の実施形態例を、図1図4を参照して説明する。ただし、本発明において、流体が1種(例えば、水)であって、この1種の流体を、分岐しない一方向のみに流通させる場合と、分岐した二方向に流通させる場合の相互間を切り替える実施形態や、切替の対象となる2種の流体が、固化材スラリー及び削孔水の組み合わせ以外のもの(例えば、固化材スラリー及びベントナイト混練水)である実施形態を採ることも可能である。
図1中、本発明の切替装置1は、高圧噴射撹拌工法において、固化材スラリーの供給と削孔水の供給を切り替えるための装置である。
ここで、高圧噴射撹拌工法とは、高圧噴射撹拌装置の地盤貫入用高圧噴射撹拌手段(地盤貫入用のロッド及びその付属物であり、以下、撹拌手段と略すことがある。)の下端から、削孔水を吐出しつつ、撹拌手段の下端の掘削ビットによって、目標とする深さまで地盤を削孔し、次いで、撹拌手段の下端付近から固化材スラリーを噴射しつつ、撹拌手段をその軸周りに回転させながら上昇させて、柱状の地盤改良体を造成する工法である。
【0014】
本発明の切替装置1は、流体である固化材スラリーまたは削孔水を流通させるための管路2と、管路2をその軸線周りに回転可能に支持すると共に管路2内の流体(通常、削孔水)を分岐して流出させるための支持部3と、支持部3を載置して固定するための台(図示せず)とからなる。
管路2は、その軸線に垂直に切断した場合の内周が円形状である、全体として筒状の周壁2eからなるものであり、流体の流入のための入口側の開口部2aと、流体の流出のための出口側の開口部2bと、上記入口側の開口部と上記出口側の開口部の間に設けられた、流体切替用開口部2cと、管路2を回転させるための工具(例えば、スパナ)を差し入れて、管路2を回転させるための回転操作部2dを有する。
【0015】
支持部3は、貫通孔3cを有しかつ管路2の一端を含む部分を支持するための第一の支持部分3aと、貫通孔3cを有さずかつ管路2の他端を含む部分を支持するための第二の支持部分3bとからなる。
支持部3の貫通孔3cは、管路2を回転させて、管路2の流体切替用開口部2cと位置を合わせることによって、管路2内を流通する流体(通常、削孔水)の一部を分岐して流出させることができる。図1は、流体切替用開口部2cの位置を、貫通孔3cに合わせた状態を示す。この状態において、管路2内の空間と貫通孔3c内の空間は、連通している。
管路2を例えば90度回転させて、流体切替用開口部2cの位置を、図2中の点線の円の位置に移動させた場合には、支持部3の貫通孔3cと、管路2の流体切替用開口部2cとの位置が合わず、支持部3の貫通孔3cが管路2の周壁2eによって塞がれてしまうため、管路2内の流体の一部を、支持部3の貫通孔3cを介して流出させることはできない。この場合、流体は、出口側の開口部2bのみから流出する。
図3に示すように、本発明においては、管路2の回転角度を調節することによって、管路2の流体切替用開口部2cと支持部3の貫通孔3cとが重なる面積の大きさを変化させて、管路2から支持部3の貫通孔3cに分岐して流入する流体の流量を制御することができる。図3中、(a)は、図1に対応するものであり、貫通孔3cと流体切替用開口部2cとが完全に重なった状態(全開の状態)を示し、(b)は、(a)の状態から管路2を回転させて、貫通孔3cの面積の20〜30%程度が管路2の周壁2eによって塞がれた状態を示し、(c)は、(b)の状態から管路2をさらに回転させて、貫通孔3cの面積の80〜90%程度が管路2の周壁2eによって塞がれた状態を示し、(d)は、(c)の状態から管路2をさらに回転させて、貫通孔3cが管路2の周壁2eによって完全に塞がれた状態を示す。
【0016】
本発明において、支持部3に対する管路2の回転を円滑に行うとともに、管路2と支持部3の間の隙間から、流体が漏れ出ることのないように、管路2と支持部3の間に、Oリングやベアリング(特に、自己潤滑性軸受)を介在させることが好ましい。特に、Oリング及び自己潤滑性軸受を併用することによって、本発明の切替装置の作業性及び安全性を向上させることができる。
【0017】
本発明の切替装置を含む高圧噴射撹拌装置は、図4に示すように、本発明の切替装置1と、地盤貫入用高圧噴射撹拌手段11と、撹拌手段11をその軸線周りに回転させるためのスイベル24と、切替装置1の支持部3の貫通孔3cから流体(通常、削孔水)を、流体吐出口14に導くための第一の流路12と、切替装置1の管路2の出口側の開口部2bから流体(固化材スラリーまたは削孔水)を流体噴射口15に導くための第二の流路13と、固化材スラリー貯留槽16と、固化材スラリー供給路18と、削孔水を貯留するための水貯留槽17と、水供給路19と、水の供給と固化材スラリーの供給を切り替えるための切替ボールバルブ26と、固化材スラリーまたは水を高圧で供給するための高圧ポンプ20と、流体供給路21と、固化材スラリーを噴射するための圧縮エアを供給するためのコンプレッサー及び圧縮エア供給路(図示せず)等を備えている。
【0018】
撹拌手段11としては、従来用いられている通常の撹拌手段を用いることができる。撹拌手段11の一例としては、地盤に貫入される長尺のロッドと、該ロッドの下端に設けられた掘削ビット(図示せず)と、掘削ビットの近くに設けられた流体吐出口(削孔水吐出口)と、掘削ビットのやや上方にてロッドから水平方向に延びて形成された、流体噴射口(固化材スラリー噴射口)を有する撹拌翼(図示せず)を有するものが挙げられる。
なお、撹拌手段11としては、この例に限定されることはなく、2つの流路及び流体吐出口及び流体噴射口を有するものであれば、任意のものを用いることができる。
【0019】
次に、固化材スラリーと削孔水の供給の切替方法の一例を、図1図4を参照して説明する。
撹拌手段11を地盤25に貫入させる時には、切替装置1の支持部3の貫通孔3cの位置を、切替装置1の管路2の流体の切替用の開口部2cに合うように調整する(図1、及び図3の(a)参照)。一方、固化材スラリー貯留槽16からの固化材スラリーの供給を、切替ボールバルブ26で停止した状態で、水貯留槽17から水供給路19、高圧ポンプ20及び流体供給路21を介して、切替装置1に削孔水を供給する。削孔水は、切替装置1から第一の流路12及び第二の流路13に分かれて、撹拌手段11内を圧送される。第一の流路12内の削孔水22は、スイベル24によって回転する撹拌手段11の下端の掘削ビット付近に設けられた流体吐出口14から下方に向かって吐出される。第二の流路13内の削孔水も、流体噴射口15から側方に噴射される。流体噴射口15から噴射される削孔水の水量は、例えば、切替装置1の支持部3の貫通孔3cの面積の30〜95%程度が管路2の周壁2eによって塞がれた状態となるように、回転操作部2dの回転角度を調節することによって、制御することができる。つまり、回転操作部2dの回転角度の調節によって、流体吐出口14から下方に向かって吐出される削孔水22の水量と、流体噴射口15から噴射される削孔水の水量の比率を、調節することができる。
【0020】
撹拌手段11の下端が、目的とする深さに達したら、水貯留槽17からの削孔水の供給を停止する。次いで、切替装置1の支持部3の貫通孔3cの位置を、切替装置1の管路2の流体切替用開口部2cに合う位置から、合わない位置(換言すると、管路2内の流通路と、支持部3の貫通孔3cとが連通しない位置;図2、及び図3の(d)を参照)に調節する。そして、水貯留槽17からの削孔水の供給を停止した状態で、切替ボールバルブ26を切り替えることによって、水貯留槽17から高圧ポンプ20への流通を停止し、かつ、固化材スラリー貯留槽16から高圧ポンプ20への流通を開放して、固化材スラリー貯留槽16から固化材スラリー供給路18、高圧ポンプ20及び流体供給路21を介して、切替装置1に固化材スラリーを供給する。固化材スラリー23は、切替装置1から第二の流路13を通って、撹拌手段11内を圧送され、地盤25を切削し、地盤改良体を造成する目的に供される。なお、圧送された固化材スラリー23は、図示しない圧縮エア供給路内の圧縮エアと共に、流体噴射口15から側方(水平方向)に向かって高圧で噴射される形態としてもよい。固化材スラリーは、撹拌手段11の回転に伴って、噴射の向きを変えるので、略円柱状の地盤改良体を形成することができる。
【0021】
さらに、第二の流路13内を流通する固化材スラリー23が、流体噴射口15で目詰まりを起こした場合、切替装置1の支持部3の貫通孔3cの位置を、切替装置1の管路2の流体切替用開口部2cに合わせることによって、固化材スラリーが第一の流路12に分岐して流れ、高圧状態にあった固化材スラリーの流体圧を、安全な大気圧付近に低下させることができる。この操作によって、流体噴射口15での固化材スラリーの目詰まりに起因する圧力の異常な上昇を解消することができる。この際、切替装置1の支持部3の貫通孔3cの位置と、切替装置1の管路2の流体切替用開口部2cの位置が、完全に一致した状態でなく、部分的に一致した状態(例えば、半分程度だけ連通し、残りの半分程度が閉じた状態)となるように、管路2の回転角度を調節しても、異常な圧力の上昇を解消するという目的を達成することができる。
【0022】
次に、本発明の切替装置1を用いた、固化材スラリーの供給方法の一例を、図5を参照して説明する。この例は、撹拌手段の下部に、上下二段で、長尺の撹拌翼(先端に流体噴射口40を設けたもの)および短尺の撹拌翼(先端に流体吐出口39を設けたもの)を設けて、固化材スラリーを水平に噴射して、地盤改良体を造成するものである。
図5中、符号30は撹拌手段、符号31は固化材スラリー貯留槽、符号32は固化材スラリー供給路、符号33は高圧ポンプ、符号34は本発明の切替装置、符号35は第一の流路、符号36は第二の流路、符号37はスイベル、符号38は地盤、符号39は流体吐出口、符号40は流体噴射口を示す。なお、ここでの流体吐出口および流体噴射口は、2つの流体放出用開口部を区別するために便宜的に名付けたものであり、流体圧の相違を意味するものではない。
また、図5中、削孔水の供給に関わる各部については、図示を省略している。
【0023】
撹拌手段30を地盤38に貫入させる時には、固化材スラリー貯留槽31からの固化材スラリーの供給を停止し、かつ、削孔水を削孔水供給路(図示せず)に流通させ、削孔水吐出口(図示せず)から吐出する。
撹拌手段30の下端が、目的とする深さに達したら、切替装置34の支持部の貫通孔と、切替装置34の管路の流体切替用開口部が、部分的に重なる位置になるように、切替装置34の管路の位置を調節したうえで、固化材スラリー貯留槽31から固化材スラリー供給路32等を介して切替装置34に固化材スラリーを供給する。
切替装置34に流入した固化材スラリーは、一部が第一の流路35に流出し、残部が第二の流路36に流出する。この際、切替装置34の支持部の貫通孔と、切替装置34の管路の流体切替用開口部との、部分的に重なる面積の大きさを調節することによって、第一の流路35に流出する液の量と、第二の流路36に流出する液の量の比率を、調節することができる。
【0024】
第一の流路35内を流通して撹拌手段30内を流下した固化材スラリーは、撹拌手段30の下部に設けられている短尺の撹拌翼の先端の流体吐出口39から、水平方向に噴射される。一方、第二の流路36内を流通して撹拌手段30内を流下した固化材スラリーは、撹拌手段30の下部に設けられている長尺の撹拌翼の先端の流体噴射口40から、水平方向に噴射される。このように流体吐出口39および流体噴射口40の両方から固化材スラリーを地盤中に噴射することによって、流体噴射口40のみから固化材スラリーを噴射する場合に比べて、長尺の撹拌翼の回転軌跡内における固化材スラリーの供給量が多くなり、固化材スラリーの含有率がより均一な地盤改良体を造成することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 本発明の切替装置
2 管路
2a 入口側の開口部
2b 出口側の開口部
2c 流体切替用開口部
2d 回転操作部
2e 周壁
3 支持部
3a 第一の支持部分
3b 第二の支持部分
3c 貫通孔
11 撹拌手段
12 第一の流路
13 第二の流路
14 流体吐出口
15 流体噴射口
16 固化材スラリー貯留槽
17 水貯留槽
18 固化材スラリー供給路
19 水供給路
20 高圧ポンプ
21 流体供給路
22 削孔水
23 流体(固化材スラリーまたは水)
24 スイベル
25 地盤
26 切替ボールバルブ
30 撹拌手段
31 固化材スラリー貯留槽
32 固化材スラリー供給路
33 高圧ポンプ
34 本発明の切替装置
35 第一の流路
36 第二の流路
37 スイベル
38 地盤
39 流体吐出口
40 流体噴射口
図1
図2
図3
図4
図5