(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の植物解繊維が束状もしくは網状に拘束されまたは結合材により接合されることにより形成される植物解繊維複合体と、前記植物解繊維複合体を内部に保持しかつ開口部を有する外郭とを含み、前記外郭内に前記植物解繊維複合体に占有されていない隙間部を有し、前記植物解繊維複合体には、キトサン金属複合体が担持されている水処理材。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態1:水処理材]
{実施形態1−1:外郭、植物解繊維および隙間部を含む水処理材}
図1〜
図5を参照して、本発明のある実施形態である水処理材10は、複数の植物解繊維が束状もしくは網状に拘束されまたは結合材により接合されることにより形成される植物解繊維複合体12と、植物解繊維複合体12を内部に保持しかつ開口部を有する外郭11とを含み、外郭11内に植物解繊維複合体12に占有されていない隙間部13を有する。
【0023】
本実施形態の水処理材10は、それに含まれる植物解繊維複合体12が、エマルションとなった有機物(特に親油性有機物)を含む水をその有機物と水とを分離するとともに、微生物および/または化学物質を保持および活性化することから、当該水に含まれる有機物を効率的に分解するため、有機物を含む水の処理能力が高い。また、本実施形態の水処理材10は、植物解繊維複合体12が、複数の植物解繊維が束状もしくは網状に拘束されまたは結合材により接合されることから、水中に分散しないため、有機物を含む水処理能力が安定している。
【0024】
また、本実施形態の水処理材10は、それに含まれる外郭11が、その内部に植物解繊維複合体12を保持しかつ開口部を有していることから、植物解繊維複合体12が一定の形態で保持されるとともに、有機物を含む水が植物解繊維複合体12に十分に接触するため、有機物を含む水の処理能力が安定している。
【0025】
また、本実施形態の水処理材10は、外郭11内に植物解繊維複合体12に占有されていない隙間部13を有することから、かかる隙間部13に有機物を含む水が侵入して当該水に含まれる有機物が効率的に分解するため、有機物を含む水の処理能力が高い。
【0026】
(外郭)
外郭11は、その内部に植物解繊維複合体12を保持するとともに開口部を有するものであれば材料および構造に特に制限はないが、耐久性に優れる観点から、材料としては、ステンレス、アルミニウム合金などの金属材料、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂材料などが好適に用いられ、構造としては、網状構造、格子状構造などが好適に用いられる。
【0027】
外郭11は、その内部に植物解繊維複合体12を保持するとともに開口部を有することにより、植物解繊維複合体12の水処理能力を安定化することができる。
【0028】
(植物解繊維複合体)
植物解繊維複合体12は、複数の植物解繊維が束状もしくは網状に拘束されることにより形成されるもの、または、複数の植物解繊維が結合材により結合されることにより形成されるものをいう。
【0029】
複数の植物解繊維を束状もしくは網状に拘束する方法は、特に制限はなく、複数の植物解繊維同士を互いに絡ませたり結束材を用いて物理的に拘束する方法、結合材を用いて化学的に拘束する方法などが挙げられる。また、複数の植物解繊維が結合材により結合される方法は、特に制限はなく、複数の植物解繊維と結合材を混合した後結合材を反応させることにより複数の植物解繊維を結合させる方法などが挙げられる。ここで、結合材は、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの無定形状接着材、PET(芯)−PE(鞘)、PP(芯)−PE(鞘)などの芯−鞘構造を有する繊維状接着材であってもよい。たとえば、特許第4203317号公報(特表2004−508967号公報)に開示される天然繊維からなる成形要素からマットを製造する方法と同様の方法によって、植物解繊維複合体を得ることができる。
【0030】
植物解繊維とは、木材チップなどの植物原料を解繊して得られる繊維をいう。ここで、植物原料を解繊する方法には、植物原料を亜硫酸塩、硫酸塩などの化学薬品を用いて化学的に処理する方法と、植物原料を水蒸気蒸煮した後リファイナーなどにより機械的に処理する方法とがある。
【0031】
植物解繊維の原料として用いられる植物原料種は、特に制限はないが、効率の高い安定した水処理をする観点から、壁孔が多くかつ機械的強度が高い細胞壁を有する植物原料であることが好ましい。たとえば、植物原料種は、細胞壁の機械的強度が高い観点から、木、竹などが好ましく、木の表皮(バーク)などがより好ましい。また、植物原料種は、細胞壁の壁孔が多い観点から、稲藁、麦わらなどが好ましい。植物原料として、上記の木、木の表皮、竹などの機械的強度が高い細胞壁を有する植物原料種に、稲藁、麦藁などの壁孔が多い植物原料種を混合しても用いることも好ましい。
【0032】
植物解繊維は、細胞壁に壁孔を多く有しており、壁孔は水分を通すためのものであり油分は通すことができないため、壁孔により有機物を含む水のエマルションの表面の水分を吸収することにより、植物解繊維の表面に油分(有機成分)を付着させることができる。
【0033】
また、植物解繊維は、細胞壁に壁孔を多く有しており、微生物および/または化学物質を、活性化させることができ、また微生物および/または化学物質を多く担持することがでる。このため、植物解繊維複合体12は、微生物および/または化学物質を、活性化させることができ、また微生物および/または化学物質を多く担持することがでる。
【0034】
外郭11の内容積に対する植物解繊維複合体12の体積の百分率は、水処理能力を高める観点から、5%以上95%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。
【0035】
(隙間部)
隙間部13は、外郭11内の植物解繊維複合体12に占有されていない部分をいう。かかる隙間部13には、大部分が植物解繊維複合体12に囲まれている内側の隙間部および大部分が外郭11に囲まれている外側の隙間部の両方が含まれる。
【0036】
{実施形態1−2:外郭、植物解繊維、隙間部および補助多孔質体を含む水処理材}
図2および
図5を参照して、本実施形態の水処理材10は、外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含み、隙間部13に配置される補助多孔質体14をさらに含むことができる。かかる水処理材10は、補助多孔質体14により微生物および/または化学物質が活性化されるため、水処理能力が高くなる。
【0037】
外郭11の内容積に対する隙間部13の容積の百分率は、水処理能力を高める観点から、5%以上95%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。
【0038】
(補助多孔質体)
補助多孔質体14は、微生物および/または化学物質を活性化し、好ましくは微生物および/または化学物質を担持できるものであれば、特に制限はない。微生物および/または化学物質の活性化および担持量を高める観点から、補助多孔質体14は、活性炭、墨、天然ゼオライト、人工ゼオライト、スポンジなどが好ましく挙げられる。
【0039】
隙間部13の容積に対する補助多孔質体14の体積の百分率は、水処理能力を高める観点から、0%より大きく100%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。
【0040】
本実施形態の水処理材においては、
図1、
図3および
図4に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含む水処理材10の植物解繊維複合体12あるいは
図2および
図5に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13と補助多孔質体14とを含む水処理材10の植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつに微生物が担持されていてもいなくてもよい。植物解繊維複合体12および補助多孔質体14は、当初微生物が担持されていなくても、水処理の際に、環境中の微生物が取り込まれて担持されて活性化されるため、効果的な水処理が可能である。
【0041】
{実施形態1−3:微生物が担持されている水処理材}
図1、
図3および
図4を参照して、本実施形態の水処理材10は、外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含み、植物解繊維複合体12に、微生物が担持されていることが好ましい。また、
図2および
図5に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13と補助多孔質体14とを含む水処理材10は、植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつに、微生物が担持されていることが好ましい。植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつに微生物が担持されることにより、水処理の初期から、微生物の存在量が多く活性化が高くなるため、水処理能力が高くなる。
【0042】
(微生物)
植物解繊維複合体12および/または補助多孔質体14に担持される微生物は、有機物を含む水について水処理能力を有するものであれば特に制限はなく、好気性菌であっても、嫌気性菌であってもよい。具体的には、活性汚泥などが担持される。
【0043】
植物解繊維複合体12および/または補助多孔質体14に微生物を担持する方法は、植物解繊維複合体12および/または補助多孔質体14ならび微生物の種類に適した方法であれば特に制限はなく、スプレー法、ディッピング法、注入法などが好適に用いられる。
【0044】
{実施形態1−4:キトサン金属複合体が担持されている水処理材}
図1、
図3および
図4を参照して、本実施形態の水処理材10は、外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含み、植物解繊維複合体12に、化学物質としてキトサン金属複合体が担持されていることが好ましい。また、
図2および
図5に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13と補助多孔質体14とを含む水処理材10は、植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつに、化学物質としてキトサン金属複合体が担持されていることが好ましい。植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつに担持されたキトサン金属複合体により、水中の微生物を殺菌することができる。すなわち、キトサン金属複合体が担持されている水処理材は、実施形態1−1、1−2および1−3のいずれかの水処理材を用いて水処理をした後に、その処理水に存在する微生物を殺菌するために好適に用いることができる。
【0045】
(キトサン金属複合体)
植物解繊維複合体12および/または補助多孔質体14に担持されるキトサン金属複合体は、水中の微生物を殺菌することができるものであれば特に制限はないが、水中の微生物を殺菌する力が強い観点から、キトサン金属複合体は、キトサンと銅、亜鉛および銀からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属との錯塩を含むことが好ましい。
【0046】
キトサン金属複合体の調製方法は、特に制限はないが、調製が容易な観点から、キトサンとその金属の水溶性金属塩を反応させる方法が好ましい。水溶性金属塩は、特に制限はなく、金属が銅の場合は塩化第二銅、硫酸銅などが挙げられ、金属が亜鉛の場合は塩化亜鉛、硫酸亜鉛などが挙げられ、金属が銀の場合は硝酸銀などが挙げられる。
【0047】
植物解繊維複合体12および/または補助多孔質体14にキトサン金属複合体を担持する方法は、植物解繊維複合体12および/または補助多孔質体14ならびキトサン金属複合体の種類に適した方法であれば特に制限はなく、スプレー法、ディッピング法、注入法などが好適に用いられる。
【0048】
上記の実施形態1−1〜実施形態1−4の水処理材は、水処理の固定床または流動床として用いることができる。ここで、固定床とは水処理材を水処理装置の水槽内に固定して水処理をする形態をいい、流動床とは水処理材を水処理装置の水槽内で流動させて水処理する形態粒水処理をする形態をいう。
【0049】
{実施形態1−5:撹拌通水路を有する水処理材}
図3を参照して、本実施形態の水処理材10は、外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含み、撹拌通水路15をさらに含むことが好ましい。撹拌通水路15は、エアレータなどによるエアレーションによって撹拌された水およびエアが流れる部分であり、これにより水処理能力を高めることができる。植物解繊維複合体12には、微生物またはキトサン金属複合体が担持されていてもよい。
【0050】
{実施形態1A:固定床として用いられる水処理材}
図1〜
図3を参照して、本実施形態の水処理材10は、水処理装置の水槽内に固定されて固定床として用いられる。本実施形態の固定床として用いられる水処理材10には、
図1に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含む実施形態1−1の水処理材10と、
図2に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13と、隙間部13に配置される補助多孔質体14をさらに含む実施形態1−2の水処理材と、
図1または
図2に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含み植物解繊維複合体12に微生物が担持されている水処理材10あるいは外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13と補助多孔質体14とを含み植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつに微生物が担持されている実施形態1−3の水処理材10と、
図1または
図2に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含み植物解繊維複合体12にキトサン金属複合体が担持されている水処理材10あるいは外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13と補助多孔質体14とを含み植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつにキトサン金属複合体が担持されている実施形態1−4の水処理材10と、
図3に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含み、撹拌通水路15をさらに含む実施形態1−5の水処理材10と、を含む。ここで、固定床として用いられる実施形態1−1から実施形態1−5までの水処理材をそれぞれ実施形態1A−1から実施形態1A−5までの水処理材と呼ぶ。
【0051】
図1を参照して、実施形態1A−1の水処理材10は、外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含む。ここで、固定床として好適に用いる観点から、外郭11は、水中で腐食、溶解、分解、または崩壊しない材料、たとえばステンレス、アルミニウム合金などの金属材料、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂材料など、で形成されていることが好ましく、網状構造、格子状構造などの構造を有することが好ましい。水処理材10の外郭11の大きさは、長さL、幅Wおよび高さTをそれぞれ水槽の長さ、幅および水深以下とすることができる。外郭11の高さTは、水を適正に循環させる観点から、水槽の水深の50%以下とすることが好ましい。
【0052】
また、固定床において水処理能力を高める観点から、外郭11の内容積に対する植物解繊維複合体12の体積の百分率は、5%以上95%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。また、同様の観点から、外郭11の内容積に対する隙間部13の容積の百分率は、水処理能力を高める観点から、5%以上95%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。
【0053】
図2を参照して、実施形態1A−2の水処理材10は、実施形態1A−1と同様の外郭11、植物解繊維複合体12および隙間部13に加えて、隙間部13に配置される補助多孔質体14を含む。ここで、固定床として好適に用いる観点から、補助多孔質体14は、活性炭、墨、天然ゼオライト、人工ゼオライト、スポンジなどが好ましく挙げられる。
【0054】
また、固定床において水処理能力を高める観点から、隙間部13の容積に対する補助多孔質体14の体積の百分率は、0%より大きく100%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。
【0055】
図1および
図2を参照して、実施形態1A−3の水処理材10は、実施形態1A−1の水処理材において植物解繊維複合体12に微生物が担持されている水処理材10、または実施形態1A−2の水処理材において植物解繊維複合体12および/または補助多孔質体14に微生物が担持されている水処理材10である。担持されている微生物の種類および微生物の担持方法は、実施形態1−3と同様である。
【0056】
図1および
図2を参照して、実施形態1A−4の水処理材10は、実施形態1A−1の水処理材において植物解繊維複合体12にキトサン金属複合体が担持されている水処理材10、または実施形態1A−2の水処理材において植物解繊維複合体12および/または補助多孔質体14にキトサン金属複合体が担持されている水処理材10である。担持されているキトサン金属複合体、キトサン金属複合体の調製方法およびキトサン金属複合体の担持方法は、実施形態1−4と同様である。
【0057】
図3を参照して、実施形態1A−5の水処理材10は、実施形態1A−1の水処理材において撹拌通水路15をさらに含む水処理材10である。実施形態1A−5の水処理材10は、実施形態1−5の水処理材と同様に、植物解繊維複合体12には、微生物またはキトサン金属複合体が担持されていてもよい。
【0058】
{実施形態1B:流動床として用いられる水処理材}
図4および
図5を参照して、本実施形態の水処理材10は、水処理装置の水槽内を流動する流動床として用いられる。本実施形態の流動床として用いられる水処理材10には、
図4に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含む実施形態1−1の水処理材10と、
図5に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13と、隙間部13に配置される補助多孔質体14をさらに含む実施形態1−2の水処理材と、
図4または
図5に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含み植物解繊維複合体12に微生物が担持されている水処理材10あるいは外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13と補助多孔質体14とを含み植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつに微生物が担持されている実施形態1−3の水処理材10と、
図4または
図5に示すような外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含み植物解繊維複合体12にキトサン金属複合体が担持されている水処理材10あるいは外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13と補助多孔質体14とを含み植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつにキトサン金属複合体が担持されている実施形態1−4の水処理材10と、を含む。ここで、流動床として用いられる実施形態1−1から実施形態1−4までの水処理材をそれぞれ実施形態1B−1から実施形態1B−4までの水処理材と呼ぶ。
【0059】
図4を参照して、実施形態1B−1の水処理材10は、外郭11と植物解繊維複合体12と隙間部13とを含む。ここで、流動床として好適に用いる観点から、外郭11は、水中で腐食、溶解、分解、または崩壊しない材料、たとえばステンレス、アルミニウム合金などの金属材料、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂材料など、で形成されていることが好ましく、網状構造、格子状構造などの構造を有することが好ましい。水処理材10の外郭11の形状は、特に制限はないが、水中での流動を容易にする観点から、球状、楕円体状、多面体形状、円盤状、楕円盤状、および多角形盤状からなる群から選ばれる少なくともひとつの形状であることが好ましい。また、水処理材10の外郭11の大きさは、形状が球状または円盤状の場合はその直径で、形状が楕円体状、多面体形状、楕円盤状または多角形盤状の場合はその長径および短径(ここで、長径および短径とは、それぞれ、楕円体および多面体において、最も長い径および最も短い径をいう。以下同じ。)で、1mm以上2.5m以下が好ましく、10cm以上50cm以下がより好ましい。
【0060】
また、流動床において水処理能力を高める観点から、外郭11の内容積に対する植物解繊維複合体12の体積の百分率は、5%以上95%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。また、同様の観点から、外郭11の内容積に対する隙間部13の容積の百分率は、流動床において水処理能力を高める観点から、5%以上95%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。
【0061】
図5を参照して、実施形態1B−2の水処理材10は、実施形態1B−1と同様の外郭11、植物解繊維複合体12および隙間部13に加えて、隙間部13に配置される補助多孔質体14を含む。ここで、流動床として好適に用いる観点から、補助多孔質体14は、活性炭、墨、天然ゼオライト、人工ゼオライト、スポンジなどが好ましく挙げられる。
【0062】
また、流動床において水処理能力を高める観点から、隙間部13の容積に対する補助多孔質体14の体積の百分率は、0%より大きく100%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。
【0063】
図4および
図5を参照して、実施形態1B−3の水処理材10は、実施形態1B−1の水処理材において植物解繊維複合体12に微生物が担持されている水処理材10、または実施形態1B−2の水処理材において植物解繊維複合体12および/または補助多孔質体14に微生物が担持されている水処理材10である。担持されている微生物の種類および微生物の担持方法は、実施形態1−3と同様である。
【0064】
図4および
図5を参照して、実施形態1B−4の水処理材10は、実施形態1B−1の水処理材において植物解繊維複合体12にキトサン金属複合体が担持されている水処理材10、または実施形態1B−2の水処理材において植物解繊維複合体12および補助多孔質体14の少なくともひとつにキトサン金属複合体が担持されている水処理材10である。担持されているキトサン金属複合体、キトサン金属複合体の調製方法およびキトサン金属複合体の担持方法は、実施形態1−4と同様である。
【0065】
[実施形態2:水処理装置]
{実施形態2A:固定床の水処理装置}
図6〜
図9を参照して、本実施形態の水処理装置1は、水槽20と、水槽20内に固定床として配置される実施形態1Aの水処理材10と、を含む。本実施形態の水処理装置は、固定床として配置される実施形態1Aの水処理材を含むことから、有機物特に親油性有機物を含みエマルションが形成されるような水を効率的に処理することができる。
【0066】
図6〜
図9を参照して、本実施形態の水処理装置1の水槽20内に固定床として配置される水処理材10(詳細には、水処理材10の外郭11)の大きさは、水処理材10の外郭11の大きさは、長さL、幅Wおよび高さTをそれぞれ水槽の長さ、幅および水深以下とすることができる。外郭11の高さTは、水を適正に循環させる観点から、水槽の水深の50%以下とすることが好ましい。
【0067】
図6〜
図8を参照して、本実施形態の水処理装置1の水槽20内に固定床として配置される水処理材10の位置は、特に制限はないが、水処理効率を高くする観点から、水処理材10の上面が水面から10mm以上の深さが好ましく、水処理材の下面が水面からの水深以下の深さが好ましい。
図9を参照して、水処理材10に嫌気性菌を保持および活性化して水処理を行なう場合には、水処理材10の上面が水面から10mm以上の深さが好ましく、水面からの水深の半分以上の深さがより好ましく、水処理材10の下面が水面からの水深以下の深さが好ましい。
【0068】
また、
図6〜
図8を参照して、本実施形態の水処理装置1は、水槽20内に配置される水処理材10に加えて、水槽20内に配置されるエアレータ33をさらに含むことが好ましい。エアレータ33により、水処理材10(詳細には、水処理材10の植物解繊維複合体および/または補助多孔質体)に保持された微生物をさらに活性化させることにより、水処理能力をさらに高めることができる。
【0069】
エアレータ33の配置は、特に制限はなく、
図6および
図7に示すような水槽20の底面の全面に配置する全面エアレーション型配置であってもよく、
図8に示すような水槽20の底面の一方側の面(片面)に配置する片面エアレーション型配置であってもよい。なお、片面エアレーション型配置の水処理装置1においては、エアレーション効率を高くする観点から、水処理材10は、水槽20の水中の中心部分、たとえば、水面から100mm以上の深さ、水槽20の側面から100mm以上の距離、水槽の底面から100mm以上の距離の部分にあることが好ましい。ここで、エアレーション効率を高くする観点から、エアレータ33の配置は、片面エアレーション型配置が好ましい。
【0070】
特に、
図6および
図7を参照して、本実施形態の水処理装置1は、上記の水処理材10およびエアレータ33を含む場合は、水処理材10に保持された微生物の活性を高く維持するため、水処理材10においてエアレータ33の上部に位置する部分には、撹拌通水路15が形成されていることが好ましい。エアレータ33から発生したバブル(気泡)が水処理材10に直接接触すると、その接触部分の水処理材10に保持されていた微生物がエアに包まれてしまい微生物の活性化が妨げられるからである。
【0071】
(エアレータ)
エアレータ33の形状は、特に制限はなく、球状、板状、棒状などのいずれであってもよい。エアレータ33の構造は、特に制限はなく、多孔質構造、じゃま板構造などのいずれであってもよい。エアレータ33は、特に制限はないが、エアレーション効果が高い観点から、たとえば、所定径および長さの中空円筒を立設し、その下端入口にエアの吹出管を挿置し、中空円筒内には水流を螺旋状に案内するガイドベーンと、このガイドベーンで形成される旋回上昇流に作用してこの流れに含まれる気泡を微細化する気泡微細化手段とをこの順に設け、気泡微細化手段が中空円筒より小径の円柱体と、中空円筒と円柱体との間に設けた複数の突起とを備え、吹出管からのエアによる旋回上昇流を突起に衝突させることにより気泡を微細化するようにして成る微細化気泡水精製装置(特許第3677516号)として製造されたTMコーポレーション社製リンピオなどが好適に挙げられる。
【0072】
{実施形態2B:流動床の水処理装置}
図10および
図11を参照して、本実施形態の水処理装置1は、水槽20と、水槽20内に流動床として配置される実施形態1Bの水処理材10と、を含む。本実施形態の水処理装置は、流動床として配置される実施形態1Bの水処理材を含むことから、有機物特に親油性有機物を含みエマルションが形成されるような水を効率的に処理することができる。
【0073】
図10および
図11を参照して、本実施形態の水処理装置1の水槽20内に流動床として配置される水処理材10(詳細には、水処理材10の外郭11)の形状は、特に制限はないが、水中での流動を容易にすることにより水処理能力を高める観点から、球状、楕円体状、多面体形状、円盤状、楕円盤状、および多角形盤状からなる群から選ばれる少なくともひとつの形状であることが好ましい。また、水処理材10の大きさは、形状が球状または円盤状の場合はその直径で、形状が楕円体状、多面体形状、楕円盤状または多角形盤状の場合はその長径および短径(ここで、長径および短径とは、それぞれ、楕円体および多面体において、最も長い径および最も短い径をいう。以下同じ。)で、1mm以上2.5m以下が好ましく、10cm以上50cm以下がより好ましい。
【0074】
また、本実施形態の水処理装置1の水槽20内に流動床として配置される水処理材10の量は、特に制限はないが、水処理材10に保持され活性化される微生物および/または化学物質の量を高くするとともに水中での流動を容易にすることにより水処理能力を高める観点から、水槽20内の水の体積に対する水処理材10の全体積の百分率が1%以上80%以下が好ましく、5%以上40%以下がより好ましい。
【0075】
図10および
図11を参照して、本実施形態の水処理装置1は、水槽20内に配置される水処理材10に加えて、水槽20内に配置されるエアレータ33をさらに含むことが好ましい。エアレータ33により、水処理材10(詳細には、水処理材10の植物解繊維複合体および/または補助多孔質体)に保持された微生物をさらに活性化させることにより、水処理能力をさらに高めることができる。
【0076】
エアレータ33の配置は、特に制限はなく、
図10に示すような水槽20の底面の全面に配置する全面エアレーション型配置であってもよく、
図11に示すような水槽20の底面の一方側の面(片面)に配置する片面エアレーション型配置であってもよい。なお、片面エアレーション型配置の水処理装置1においては、エアレーション効率を高くする観点から、水処理材10は、水槽20の水中の中心部分、たとえば、水面から100mm以上の深さ、水槽20の側面から100mm以上の距離、水槽の底面から100mm以上の距離の部分にあることが好ましい。ここで、エアレーション効率を高くする観点から、エアレータ33の配置は、片面エアレーション型配置が好ましい。
【0077】
なお、エアレータ33の形状および構造については、既に説明したとおりである。
[実施形態3:水処理方法]
{実施形態3A:水処理材を固定床として用いる水処理方法}
図6〜
図9を参照して、本実施形態の水処理方法は、実施形態1Aの水処理材10を固定床として水槽20内に配置し、水槽10内に水1Wを供給して、水1Wを処理する方法である。本実施形態の水処理方法は、実施形態1Aの水処理材を水槽20内に固定床として配置し、水槽20内に水1Wを供給することにより、有機物特に親油性有機物を含みエマルションが形成されるような水を効率的に処理することができる。なお、実施形態1Aの水処理材を水槽20内に固定床として配置する形態は、実施形態2Aで説明したとおりである。
【0078】
図6〜
図8を参照して、本実施形態の水処理方法は、実施形態1Aの水処理材10を固定床として水槽20内に配置するとともに、水槽20内にエアレータ33をさらに配置し、エアレータ33により水槽20内に空気を供給して、水1Wを処理することが好ましい。エアレータ33による空気の供給により、水処理材10(詳細には、水処理材10の植物解繊維複合体および/または補助多孔質体)に保持された微生物をさらに活性化させることにより、水処理能力をさらに高めることができる。なお、エアレータ33を水槽20内に配置する形態は、実施形態2Aで説明したとおりである。
【0079】
{実施形態3B:水処理材を流動床として用いる水処理方法}
図10および
図11を参照して、本実施形態の水処理方法は、実施形態1Bの水処理材10を流動床として水槽20内に配置し、水槽10内に水1Wを供給して、水1Wを処理する方法である。本実施形態の水処理方法は、実施形態1Bの水処理材を水槽20内に固定床として配置し、水槽20内に水1Wを供給することにより、有機物特に親油性有機物を含みエマルションが形成されるような水を効率的に処理することができる。なお、実施形態1Bの水処理材を水槽20内に固定床として配置する形態は、実施形態2Bで説明したとおりである。
【0080】
本実施形態の水処理方法は、実施形態1Bの水処理材10を流動床として水槽20内に配置するとともに、水槽20内にエアレータ33をさらに配置し、エアレータ33により水槽20内に空気を供給して、水1Wを処理することが好ましい。エアレータ33による空気の供給により、水処理材10(詳細には、水処理材10の植物解繊維複合体および/または補助多孔質体)に保持された微生物をさらに活性化させることにより、水処理能力をさらに高めることができる。なお、エアレータ33を水槽20内に配置する形態は、実施形態2Bで説明したとおりである。
【0081】
水処理における水質汚染基準値としては、一般に、BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、SS(懸濁物質または浮遊物質)がある。BODとは、水中の有機物などの量を、その酸化分解のために微生物が必要とする酸素の量で表したものであり、その単位はOmg/リットルまたはmg−O
2/リットルであるが通常mg/リットルと略される。CODとは、水中の被酸化性物質を酸化するために必要とする酸素量で示したものであり、その単位はppmまたはmg/リットルである。SSとは、水中に浮遊する粒径2mm以下の不溶解性物質の総称であり、その単位はmg/リットルである。また、水中の油分は、一般的にノルマルヘキサン抽出物質濃度(mg/リットル)により汚染度が判断される。
【0082】
ここで、BODの測定は、一定時間経過後の溶存酸素の変化を測定する方法により行なう。CODの測定は、二クロム酸カリウム、または100℃における過マンガン酸カリウムなどの酸化剤による酸素要求を測定する方法により行なう。SSの測定は、ガラス繊維濾過法または遠心分離法により行なう。ノルマルヘキサン抽出物質濃度は、昭和49年環境庁(現在は環境省)告示第64号の付表4に記載のノルマルヘキサン抽出物質含有量の検定方法(試料をpH4以下の塩酸酸性にして、試料中の油分をノルマルヘキサンにより抽出し、約80℃でノルマルヘキサンを揮発させて残留する物質の質量を測定する方法)により行なう。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
図12を参照して、固定床の水処理装置1を用いて、バッチ方式で、水処理をおこなった。水処理の対象水としてホテルの排水を用いて、原水、従来の水処理材による処理水、および本発明の水処理材による処理水のBOD、SSおよびノルマルヘキサン抽出物質濃度を測定することにより処理水の水質を評価した。具体的には、以下のとおりである。
【0084】
内側寸法で長さ200mm×幅200mm×高さ650mmの水槽20の底面の中央に、エアレータ33として直径70mm×高さ130mmの微細化気泡生成装置(TMコーポレーション社製リンピオ・TM−200)を配置した。微細化気泡生成装置の直上方空間を取り囲むように、4枚の長さ250mm×幅95mm×厚さ25mmの水処理材を配置した。
【0085】
実験Aとして従来の水処理材による水処理を行なう場合には、従来の水処理材として、天然好気性微生物であるサンカイ化成株式会社製ハイクリーンΣの10質量%水溶液中に1分間ディッピングした後25℃〜40℃で乾燥させた1枚当たりの体積が201.5cm
3の板状(長さ246mm×幅91mm×厚さ9mm)の微生物展着スポンジを、4枚の水処理材10のそれぞれの外郭の中に配置することにより、4枚の水処理材の外郭の中に合計で806cm
3配置したものを用いた。
【0086】
実験Bとして本発明の水処理材による水処理を行なう場合には、本発明の水処理材として、
図14に示すように、2枚の板状の植物解繊維複合体12の間の隙間部13に補助多孔質体14を充填した3層構造を有する長さ250mm×幅95mm×厚さ25mmの水処理材10を4枚用いた。4枚の水処理材10のそれぞれの外郭の中に植物解繊維複合体として特許第4203317号の方法により製造された植物解繊維が束状に拘束されたもの268.6cm
3と補助多孔質体として上記微生物展着スポンジ201.5cm
3とを配置することにより、4枚の水処理材の外郭の中に合計で上記の植物解繊維複合体1074.4cm
3と上記の補助多孔質体806cm
3とを配置したものを用いた。
【0087】
上記実験Aおよび実験Bのいずれの水処理においても、雰囲気温度25℃〜35℃で、水槽20内に24リットルの水1Wを入れた後、エアレータにより0.05m
3/分で曝気しながら、の空気を供給しながら、4時間の水処理を行なった。
【0088】
原水、従来の水処理材による処理水(実験A)、および本発明の水処理材による処理水(実験B)のBOD、SSおよびノルマルヘキサン抽出物質濃度を測定した。ここで、BODの測定は、JIS K0102に準拠して一定期間経過後の溶存酸素の変化量を測定することにより行なった。SSの測定は、ガラス繊維濾過法により行なった。ノルマルヘキサン抽出物質濃度は、昭和49年環境庁告示第64号の付表4に記載のノルマルヘキサン抽出物質含有量の検定方法により行なった。原水は、BODが1900mg/リットル、SSが2000mg/リットル、ノルマルヘキサン抽出物質濃度が500mg/リットルであった。従来の水処理材による処理水(実験A)は、BODが250mg/リットル、SSが150mg/リットル、ノルマルヘキサン抽出物質濃度が80mg/リットルであった。本発明の水処理材による処理水(実験B)は、BODが40mg/リットル、SSが34mg/リットル、ノルマルヘキサン抽出物質濃度が10mg/リットルであった。結果を
図16のグラフにまとめた。
【0089】
図16を参照して、本発明の水処理材による処理水(実験B)は、従来の水処理材による水処理(実験A)に比べて、BOD、SSおよびノルマルヘキサン抽出物質濃度がいずれも低くなった。ここで、本発明の水処理材に含まれる微生物展着スポンジ量は819cm
3であり、従来の水処理材に含まれる微生物展着スポンジ量2372cm
3の約35%に過ぎない。このことから、本発明の水処理材は、従来の水処理材に比べて、微生物をより活性化していることがわかった。特に、本発明の水処理材による水処理において、ノルマルヘキサン抽出物質濃度が著しく低減していた。このことから、本発明の水処理材は、有機物を含む水の処理能力が特に高いことがわかった。
【0090】
(実施例2)
図13を参照して、流動床の水処理装置1を用いて、流水方式で、水処理を行なった。水処理の対象水としてホテルの排水を用いて、原水、従来の水処理材による処理水、および本発明の水処理材による処理水のBOD、SSおよびノルマルヘキサン抽出物質濃度を測定することにより処理水の水質を評価した。具体的には、以下のとおりである。
【0091】
容量1.5tの水槽20を3槽準備し、原水1WSが第1の水槽20aに流入し、第1の水槽20aから第2の水槽20b、第2の水槽20bから第3の水槽20cと順に通過し、第3の水槽20cから処理水1WEが流出するように配管した。3つの水槽20の底面の中央に3つのエアレータ33をそれぞれ配置した。エアレータ33は、直径120mm×高さ420mmの微細化気泡生成装置(TMコーポレーション社製リンピオ・TM−1000)を用いた。
【0092】
実験Cとして従来の水処理材による水処理を行なう場合には、従来の水処理材として、実施例1と同様に処理した1個当たりの体積が8cm
3のサイコロ状(20mm×20mm×20mm)の微生物展着スポンジを、3つの水槽20のそれぞれに0.15m
3を投入することにより、3つの水槽20の合計で0.45m
3配置したものを用いた。
【0093】
実験Dとして本発明の水処理材による水処理を行なう場合には、本発明の水処理材として、
図15に示すように、厚さが5mmで網の目状に形成した直径が120mmの球郭状のPP(ポリプロピレン)製の外郭11と、外郭11内に配置された特許第4203317号の方法により製造された植物解繊維が束状に拘束されて形成された長さ80mm×幅80mm×厚さ40mmの植物解繊維複合体12と、外郭11内の隙間部13に配置された上記性微生物展着スポンジ450cm
3の補助多孔質体14と、を含む水処理材10を270個準備した。かかる水処理材10を、3つの水槽のそれぞれに90個ずつ投入した。すなわち、3つの水槽に配置した合計270個の水処理材10中に上記の植物解繊維複合体0.06912m
3と上記の補助多孔質体0.1215m
3とを配置したものを用いた。
【0094】
上記実験Cおよび実験Dのいずれの水処理においても、15℃〜35℃の雰囲気温度で、各水槽20における流量を10t/日とし、各水槽20内のエアレータ33による曝気量を0.5m
3/分として、90日間連続して水処理を行なった。
【0095】
原水、従来の水処理材による90日後の処理水(実験C)、および本発明の水処理材による90日後の処理水(実験D)のBOD、SSおよびノルマルヘキサン抽出物質濃度を実施例1と同様にして測定した。原水は、BODが1800mg/リットル、SSが1800mg/リットル、ノルマルヘキサン抽出物質濃度が300mg/リットルであった。従来の水処理材による90日後の処理水(実験C)は、BODが180mg/リットル、SSが55mg/リットル、ノルマルヘキサン抽出物質濃度が25mg/リットルであった。本発明の水処理材による90日後の処理水(実験D)は、BODが37mg/リットル、SSが24mg/リットル、ノルマルヘキサン抽出物質濃度が3mg/リットルであった。結果を
図17のグラフにまとめた。
【0096】
図17を参照して、本発明の水処理材による90日後の処理水(実験D)は、従来の水処理材による90日後の水処理(実験C)に比べて、BOD、SSおよびノルマルヘキサン抽出物質濃度がいずれも低くなった。ここで、本発明の水処理材に含まれる天然好気性微生物を展着したスポンジ量は0.1215m
3であり、従来の水処理材に含まれる天然好気性微生物を展着したスポンジ量0.45m
3の約27%に過ぎない。このことから、本発明の水処理材は、従来の水処理材に比べて、微生物をより活性化していることがわかった。特に、本発明の水処理材による水処理において、ノルマルヘキサン抽出物質濃度が著しく低減していた。このことから、本発明の水処理材は、有機物を含む水の処理能力が特に高いことがわかった。
【0097】
実施例2の上記結果に示すように、本発明の水処理材は、長期的に使用しても油分であるノルマルヘキサン抽出物質も安定して処理できており、微生物の活性化ができるため、汚泥床の形成のための初期投入微生物の量を少なくできた。また、本発明の水処理材の構造およびその使用方法により、水処理材とエアレータとの相互作用により、植物解繊維複合体と微生物を担持した補助多孔質体を用いて、BODおよびSSも安定して低減することができた。すなわち、本発明の水処理材を用いて長期間連続的に処理水の水質が極めて高い水処理を行なうことができた。
【0098】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。