【実施例】
【0042】
本発明の非接触電力伝送システムに係る実施例を図面に基づいて説明する。
【0043】
(非接触電力伝送システムの構成)
図1において、非接触電力伝送システム1は、電源部10に電気的に接続された地上側設備100と、例えばハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載され、該車両の車両バッテリ20に電気的に接続された車両側設備200と、を備えて構成されている。尚、
図1では、電源部10は地上側設備100とは別個の部材として描かれているが、電源部10が地上側設備100の一構成要素であってよい。
【0044】
地上側設備100は、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなるホストマイコン部110と、通信モジュール部120と、アンテナ部121と、電力送信部130と、送電コイル140と、を備えて構成されている。
【0045】
ここで、電力送信部130及び送電コイル140を含む送電に係る電気回路については、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。
【0046】
尚、
図1では、地上側設備100を示す破線の外側に、アンテナ部121及び送電コイル140が描かれているが、アンテナ部121及び送電コイル140が、地上側設備100の筺体の外側に配置される実際の装置を想定してのことである。後述する車両側設備についても同様。
【0047】
車両側設備200は、ホストマイコン部210と、通信モジュール220と、アンテナ部221と、電力受信部230と、受電コイル240とを備えて構成されている。電力受信部230は、受電部本体231及び電圧・電流監視部232を備えて構成されている。
【0048】
ここで、電力受信部230及び受電コイル240を含む受電に係る電気回路については、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。尚、電圧・電流監視部232は、例えば公知の電圧計及び電流計を用いて構成すればよい。
【0049】
(バッテリの充電方法)
次に、上述の如く構成された非接触電力伝送システム1における車両バッテリ20の充電方法について、
図2を参照して説明する。
図2は、実施例に係るバッテリ充電方法の概念図である。
【0050】
図2(a)下段に示すように、車両バッテリ20の電圧が、例えば該車両バッテリ20の製造者等により予め設定された規定電圧に達するまでは、一定の電流値を保って、車両バッテリ20に電力が供給される定電流充電が行われる。他方、車両バッテリ20の電圧が規定電圧に達した後は、一定の電圧値を保って、車両バッテリ20に電力が供給される定電圧充電が行われる。つまり、本実施例では、所謂定電圧定電流充電方式により、車両バッテリ20の充電が行われる。
【0051】
ここで、定電圧充電期間における、非接触電力伝送システム1の動作について、
図2(b)を参照して説明を加える。
図2(b)は、
図2(a)において円Cで囲われた部分を拡大して示したものである。
【0052】
図2(b)において、時刻t1〜時刻t2の期間は、送電コイル140から受電コイル240に電力が伝送されることに起因して、車両バッテリ20の電圧値が上昇する。時刻t2〜時刻t3の期間は、送電コイル140から受電コイル240への電力伝送が停止されることに起因して、車両バッテリ20の電圧値が自然に低下する。時刻t3〜時刻t4の期間は、送電コイル140から受電コイル240に再び電力が伝送されることに起因して、車両バッテリ20の電圧値が上昇する。
【0053】
(地上側設備及び車両側設備間の通信)
次に、地上側設備100と車両側設備200との間で行われる無線通信の通信間隔(即ち、通信頻度)について、
図2(a)上段を参照して説明する。
【0054】
定電流充電期間は、車両バッテリ20へ供給される電流値を細かく調整する必要が無く、車両バッテリ20の電圧値も、一定の勾配で上昇するので、変動の予測がしやすい。従って、通信間隔を比較的長く(例えば1秒等)設定しても、非接触電力伝送システム1の安定性に影響がでる可能性は低いと考察される。加えて、通信途切れも、例えば数分程度であれば許容可能であると考察される。
【0055】
他方、定電圧充電期間は、車両バッテリ20の電圧値が規定電圧となるように、比較的頻繁に電流値を調整する必要がある。従って、通信間隔は、定電流充電時に比べて短くする必要がある。言い換えれば、定電圧充電期間では、定電流充電期間に比べ、通信頻度を高くする必要がある。特に、電流値の調整が必要な場合に通信が行われる必要がある。
【0056】
上記のような観点から、
図2(a)上段に示すように、定電流充電期間では、例えば1秒等の比較的長い通信間隔に固定して地上側設備100及び車両側設備200間において通信が行われる。他方、定電圧充電期間では、例えば10ミリ秒等の比較的短い通信間隔に固定して、或いは、
図2(a)上段に示すように、時間と共に通信間隔を徐々に短くして、或いは、電流値の調整が必要な都度、地上側設備100及び車両側設備200間において通信が行われる。
【0057】
尚、地上側設備100及び車両側設備200の少なくとも一方において異常が検知された場合には、上述の通信間隔とは関係なく直ちに通信が行われる。また、地上側設備100及び車両側設備200間における無線通信によりやりとりされる情報は、例えば車両バッテリ20の充電状態、要求電圧値、要求電流値等である。
【0058】
ここで、上述の如く通信間隔(又は通信頻度)を変更することに起因する効果について説明する。
【0059】
非接触電力伝送システム1では、車両側設備200(即ち、受電側)に係る情報(例えば、車両バッテリ20の状態や電力指令値等)が、無線通信により地上側設備100(即ち、送電側)に送信されることにより、車両側設備200に送電される電力が制御されている。
【0060】
このため、地上側設備100及び車両側設備200間における通信頻度が比較的高いほうが(即ち、通信間隔が比較的短いほうが)、電力制御精度を向上させることができる。他方で、通信頻度が比較的高くなると、通信途切れが発生した場合に、非接触電力伝送システム1の安定性が低下する可能性がある。
【0061】
しかるに本実施例では、定電流充電期間では通信間隔が比較的長く設定され、定電圧充電期間では通信間隔が比較的短く設定される。言い換えれば、定電流充電期間では通信頻度が比較的低く抑えられ、定電圧充電期間では通信頻度が比較的高くなるように設定される。
【0062】
この結果、定電流充電期間に、例えば通信途切れの発生に起因する意図しない充電停止等を好適に回避して、非接触電力伝送システム1の安定性を確保することができる。加えて、定電圧充電期間では、地上側設備100及び車両側設備間の通信頻度を高めて、電力制御精度を向上させることができ、車両バッテリ20の充電を安全に行うことができる。
【0063】
(充電制御処理)
次に、非接触電力伝送システム1の車両側設備200において実施される充電制御処理について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0064】
図3において、定電流充電期間に、車両側設備200のホストマイコン部210は、電圧・電流監視部232を介して電圧値を取得する(ステップS101)。次に、ホストマイコン部210は、取得された電圧値を示す信号を、通信モジュール部220及びアンテナ部221を介して、地上側設備100に送信する(ステップS102)。
【0065】
続いて、ホストマイコン部210は、取得された電圧値が、車両バッテリ20に係る規定電圧に達したか否かを判定する(ステップS103)。取得された電圧値が規定電圧未満であると判定された場合(ステップS103:No)、ホストマイコン部210は待機状態となり(ステップS104)、予め設定された待機時間(例えば1秒等)だけ経過した後に、ステップS101の処理を実施する。
【0066】
他方、取得された電圧値が規定電圧に達したと判定された場合(ステップS103:Yes)、ホストマイコン部210は、定電流充電から定電圧充電へ移行する旨を示す信号を、通信モジュール部220及びアンテナ部221を介して、地上側設備100に送信する(ステップS105)。
【0067】
上記ステップS105の処理と並行して又は相前後して、ホストマイコン部210は、通信間隔が定電流充電期間に比べて短くなるように、該通信間隔(即ち、待機時間)を変更する(ステップS106)。
【0068】
次に、ホストマイコン部210は、電圧・電流監視部232を介して電圧値を取得する(ステップS107)。続いて、ホストマイコン部210は、取得された電圧値に応じて電流要求値を算出する(ステップS108)。
【0069】
次に、ホストマイコン部210は、電流要求値が規定電流値以下になったか否かを判定する(ステップS109)。ここで、「規定電流値」は、車両バッテリ20の充電を終了するか否かを決定する値であり、予め固定値として、又は何らかの物理量若しくはパラメータに応じた可変値として設定されている。尚、規定電流値の設定方法には公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。
【0070】
電流要求値が規定電流値より大きいと判定された場合(ステップS109:No)、ホストマイコン部210は、取得された電圧値及び電流要求値を示す信号を、通信モジュール部220及びアンテナ部221を介して、地上側設備100に送信する(ステップS110)。その後、ホストマイコン部210は待機状態となり(ステップS111)、予め設定された待機時間(例えば10ミリ秒等)だけ経過した後に、ステップS107の処理を実施する。
【0071】
電流要求値が規定電流値以下になったと判定された場合(ステップS109:Yes)、ホストマイコン部210は、充電終了指示を示す信号を、通信モジュール部220及びアンテナ部221を介して、地上側設備100に送信する(ステップS112)。
【0072】
尚、上述した実施例に限らず、例えばホストマイコン部200が、車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)30が取得するバッテリ温度(
図1参照)に基づいて、定電流充電から定電圧充電へ移行したり、電流要求値を算出したりしてもよい。バッテリ温度に基づいて車両バッテリ20の状態を推定する方法には、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。
【0073】
ホストマイコン部200は、
図1に示したように、車両ECU30を介してバッテリ温度を取得することに限らず、例えば温度センサ等を用いて直接バッテリ温度を取得してもよい。
【0074】
実施例に係る「地上側設備100」、「車両側設備200」、「通信モジュール部220」及び「ホストマイコン部220」は、夫々、本発明に係る「給電装置」、「受電装置」、「通信手段」及び「通信制御手段」の一例である。
【0075】
<第1変形例>
実施例に係る非接触電力伝送システム1の第1変形例について説明する。本変形例では、定電圧充電期間における充電制御処理の一部が異なる以外は、上述した実施例と同様である。
【0076】
(充電制御処理)
本変形例に係る充電制御処理について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0077】
図4において、上述したステップS105の処理により、定電流充電から定電圧充電へ移行した後、車両側設備200のホストマイコン部210は、電圧・電流監視部232を介して電圧値を取得する(ステップS107)。続いて、ホストマイコン部210は、取得された電圧値に応じて電流要求値を算出する(ステップS108)。
【0078】
次に、ホストマイコン部210は、今回算出された電流値と前回算出された電流値とを比較して、電流値が変更されたか否かを判定する(ステップS201)。電流値が変更されていないと判定された場合(ステップS201:No)、ホストマイコン部210は、ステップS107の処理を実施する。
【0079】
電流値が変更されたと判定された場合(ステップS201:Yes)、ホストマイコン部210は、電流要求値が規定電流値以下になったか否かを判定する(ステップS109)。電流要求値が規定電流値より大きいと判定された場合(ステップS109:No)、ホストマイコン部210は、取得された電圧値及び電流要求値を示す信号を、通信モジュール部220及びアンテナ部221を介して、地上側設備100に送信し(ステップS110)、ステップS107の処理を実施する。
【0080】
電流要求値が規定電流値以下になったと判定された場合(ステップS109:Yes)、ホストマイコン部210は、充電終了指示を示す信号を、通信モジュール部220及びアンテナ部221を介して、地上側設備100に送信する(ステップS112)。
【0081】
このように構成すれば、無用な通信を減らしつつ、定電圧充電期間における電力制御精度を向上させることができる。尚、定電圧充電期間において電流値は比較的頻繁に変動するので、定電圧充電期間における通信間隔は、定電流充電期間よりも短くなる。
【0082】
<第2変形例>
実施例に係る非接触電力伝送システム1の第2変形例について説明する。本変形例では、車両側設備200のホストマイコン部210に代えて、地上設備側100のホストマイコン部110が、定電流充電から定電圧充電への移行等を判定する。
【0083】
具体的には、地上側設備100のホストマイコン部110は、アンテナ部121及び通信モジュール部120を介して、車両側設備200の電圧・電流監視部232により測定された電圧値を取得する。
【0084】
次に、ホストマイコン部110は、取得された電圧値が規定電圧に達したか否かを判定する。取得された電圧値が規定電圧に達していないと判定された場合、ホストマイコン部110は、待機状態となり、例えば1秒等の待機時間だけ経過した後に、再び電圧値を取得する。
【0085】
他方、取得された電圧値が規定電圧に達したと判定された場合、ホストマイコン部110は、定電流充電から定電圧充電へ移行する旨を示す信号を、通信モジュール部120及びアンテナ部121を介して車両側設備200に送信する。この処理と並行して、ホストマイコン部110は、定電流充電期間における待機時間よりも短くなるように待機時間変更する。
【0086】
その後、ホストマイコン部110は、アンテナ部121及び通信モジュール部120を介して取得された電圧値に応じて、車両バッテリ20に供給される電流値を調整し、該電流値が規定電流値以下となったことを条件に充電制御処理を終了する。
【0087】
本変形例に係る「通信モジュール部120」及び「ホストマイコン部110」は、夫々、本発明に係る「通信手段」及び「通信制御手段」の他の例である。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う受電装置、通信制御方法、コンピュータプログラム及び給電装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。