(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227360
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】シール素子を備える電気コネクタ及び電気コネクタの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-208371(P2013-208371)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-82207(P2014-82207A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2016年9月29日
(31)【優先権主張番号】T02012A000905
(32)【優先日】2012年10月16日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513250385
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス アンプ イタリア エス アール エル
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics AMP Italia S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】アレサンドロ ジェンタ
(72)【発明者】
【氏名】ラウル ザンニーニ
【審査官】
楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−044046(JP,U)
【文献】
特開平11−283694(JP,A)
【文献】
特開2001−266998(JP,A)
【文献】
特開2003−068392(JP,A)
【文献】
実開平03−002570(JP,U)
【文献】
特表2012−520541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40〜13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する導線(5)に割り当てられた複数個の端子接点(4)用の複数のシート(3)を含むコネクタ本体(2)と、
弾性的に変形可能な電気的絶縁材料で構成し、かつ層状とした少なくとも1個のシール素子(16)と、
を備える電気コネクタ(1)であって、
前記シール素子(16)は、前記コネクタ本体(2)内において、前記端子接点(4)に割り当てられた前記導線(5)に直交する平面内に収容されることにより、前記導線(5)周りにおけるシールをもたらし、
前記コネクタ本体(2)には、前記シール層(16)を該コネクタ本体(2)の平面に対して平行に移動させることにより、前記シール層(16)を前記コネクタ本体(2)内に摺動的に取り付けるための、ガイド通路(20)が設けられ、
前記端子接点(4)が対応する前記導線(5)と共に前記コネクタ本体(2)に収容された後、前記シール層(16)を、前記コネクタ本体(2)内に挿入することができ、
前記シール層(16)は、最終取り付け位置に到達するまで前記導線(5)周りに摺動的に係合することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気コネクタであって、
前記シール層(16)には、該シール層(16)の端面(18a)から形成された1つ以上の連続的なスリット(17)が規定する複数のスルーホール(6a)が設けられ、
前記シール層(16)の前記端面(18a)を摺動運動時における前面として利用することで、該シール層(16)を、前記コネクタ本体(2)内に挿入でき、
前記シール層(16)が前記最終取り付け位置に到達するまで、前記シール層(16)における前記スリット(17)が前記導線(5)周りに摺動的に係合することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載の電気コネクタであって、
前記シール層(16)には、該シール層(16)における少なくとも1つの端面(18a)から形成され、かつ厚さを縮小した1つ以上の長手方向部分が設けられ、
少なくとも1つの前記端面(18a)を摺動運動時における前面として利用することで、前記シール層(16)を、前記コネクタ本体(2)内に挿入でき、
前記シール層(16)における前記長手方向部分が前記導線(5)によって切除され、かつ前記最終取り付け位置に到達するまで前記導線(5)周りに摺動的に係合することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項4】
請求項2に記載の電気コネクタであって、
前記シール層(16)における前記連続的なスリット(17)は、前記スルーホール(6a)を規定する等間隔に並んだ円形アパーチャ(16a)を有し、
該円形アパーチャ(16a)は、前記シール層(16)における前記連続的なスリット(17)に沿って形成されており、前記シール層(16)が前記最終取り付け位置にあるときに、前記コネクタ本体(2)に形成されたシート(3)に対応するよう位置決めされることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項5】
請求項2又は4に記載の電気コネクタであって、前記連続的なスリット(17)は、前記前端面(18a)から延在し、前記シール層(16)の後端面(18b)に到達する前に終端していることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の電気コネクタであって、前記シール素子(16)に剛性を付与し、かつ前記コネクタ本体(2)に形成された前記ガイド通路(20)への前記シール素子(16)の挿入を容易にするのに適した、プラスチック材料製の支持体(19)が、前記シール素子(16)に割り当てられていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項7】
請求項6に記載の電気コネクタであって、
前記支持体(19)は、グリップ部(19a)から突出している3本の長手方向アーム(19b)を有するとともに、フォーク状に形成されており、
該アーム(19b)は、前記コネクタ本体(2)に形成された前記ガイド通路(20)への前記シール素子(16)の挿入に際して、前記コネクタ(1)に予め取り付けられた前記導線(5)と干渉しないよう配置されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項8】
請求項7に記載の電気コネクタであって、前記支持体(19)は、その前記長手方向アーム(19b)上に設けられた固定素子(19c)を有し、該固定素子(19c)は、前記シール層(16)を前記支持体(19)上の所定位置で固定かつ保持するのに適していることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電気コネクタであって、
前記支持体(19)における2本の前記端部アーム(19b)は、半径方向外向きに突出している複数個の歯部(19d)を有し、
該歯部(19d)は、前記コネクタ本体(2)に形成された前記ガイド通路(20)に、該歯部(19d)に対応するよう設けられた長手方向ガイド溝に係合するのに適しており、これにより、前記支持体(19)上に組み付けられる前記シール素子(16)の摺動的な取り付けが容易になることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の電気コネクタであって、
該電気コネクタには、前記導線(5)が挿入される複数の前記スルーホール(7a)を有するカバー素子(7)が更に設けられ、
該カバー素子(7)は、前記スルーホール(7a)が前記コネクタ本体(2)に形成された前記シート(3)に対応するよう、前記端子接点(4)の差し込み前に前記コネクタ本体(2)の上に配置され、
前記シール素子(16)が摺動的に挿入された後に、シール性を高めるため、前記カバー素子は、上方の休止位置から下方の作動位置に変位され、該作動位置で前記シール素子(16)を圧縮することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の電気コネクタであって、前記シール素子(16)は、ゲル又はシリコーンより成ることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項12】
請求項11に記載の電気コネクタであって、
前記ゲルは、自己粘着性及び自己修復性を有し、
前記シール素子(16)が前記コネクタ本体(2)内に挿入された後、コネクタ(1)内に予め取り付けられた前記導線(5)周りにおける摺動行程で変形した、スリット(17)及び円形アパーチャ(16a)又は厚さを縮小した長手方向部分が、前記自己粘着性及び自己修復性により、縮まって閉じることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項13】
電気コネクタ(1)の組み立て方法であって、
前記電気コネクタは、
対応する導線(5)に割り当てられた複数個の端子接点(4)用の複数のシート(3)を含むコネクタ本体(2)と、
弾性的に変形可能な電気的絶縁材料で構成し、かつ層状とした少なくとも1個のシール素子(16)と、
を備え、
前記シール素子(16)は、前記コネクタ本体(2)内において、前記端子接点(4)に割り当てられた前記導線(5)に直交する平面内に収容されることにより、前記導線(5)周りにおけるシールをもたらし、
前記方法は、
前記シール層(16)を前記コネクタ本体(2)の平面に対して平行に移動させることにより前記シール層(16)を前記コネクタ本体(2)内に摺動的に取り付けるための、ガイド通路(20)を、前記コネクタ本体(2)に設けるステップと、
前記端子接点(4)をそれぞれ対応する前記導線(5)と共に、前記コネクタ本体(2)に形成された前記シート(3)に差し込むステップと、
前記シール層(16)を前記コネクタ本体(2)内に摺動的に取り付けるステップと、
を含み、
前記端子接点(4)がそれぞれ対応する前記導線(5)と共に前記コネクタ本体(2)に収容された後に、前記シール層(16)は前記コネクタ本体(2)内に挿入することができ、
前記シール層(16)は、最終的な取り付け位置に到達するまで、前記導線(5)周りに摺動的に係合することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記シール層(16)には、該シール層(16)の端面(18a)から形成した1つ以上の連続的なスリット(17)が規定する複数のスルーホール(6a)が設けられ、
前記シール層(16)の前記端面(18a)を摺動運動時における前面として利用することで、前記シール層(16)を、前記コネクタ本体(2)内に挿入でき、
前記シール層(16)が前記最終取り付け位置に到達するまで、該シール層(16)における前記スリット(17)が前記導線(5)周りに摺動的に係合することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、
前記シール層(16)には、該シール層(16)における少なくとも1つの端面(18a)から形成され、かつ厚さを縮小した1つ以上の長手方向部分が設けられ、
少なくとも1つの前記端面(18a)を摺動運動時における前面として利用することで、前記シール層(16)を、前記コネクタ本体(2)内に挿入でき、
前記シール層(16)における前記長手方向部分が、前記導線(5)によって切除され、かつ前記最終取り付け位置に到達するまで前記導線(5)周りに摺動的に係合することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13〜15の何れか一項に記載の方法であって、
前記導線(5)が挿入される複数の前記スルーホール(7a)を有するカバー素子(7)を設けるステップと、
前記カバー素子(7)を作動させるステップと、
を更に含み、
該カバー素子(7)は、前記スルーホール(7a)が前記コネクタ本体(2)に形成された前記シート(3)に対応するよう、前記端子接点(4)の差し込み前に前記コネクタ本体(2)の上に配置され、
前記シール素子(16)を摺動的に挿入した後に、前記作動させるステップでは、シール性を高めるため、前記カバー素子(7)を、上方の休止位置から下方の作動位置に変位させ、前記カバー素子(7)は、該作動位置で前記シール素子(16)を圧縮することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応する導線に割り当てられた複数個の端子接点用の複数のシートを含むコネクタ本体と、弾性的に変形可能な電気的絶縁材料で構成し、かつ層状とした少なくとも1個のシール素子とを備える電気コネクタに関するものである。該シール素子は、コネクタ本体内において、上記の端子接点に割り当てられた導線に直交する平面内に収容されることにより、導線周りにおけるシールをもたらす。
【背景技術】
【0002】
従来技術に関連する
図1〜
図4は、電気コネクタ全体を参照符号1で示す。この場合にコネクタ1には、コネクタ本体2内及び該コネクタ本体2のベース部2a上に複数のシート3が設けられており、導線5に割り当てられた端子接点4が収容可能とされている。
【0003】
コネクタ1は更に、弾性的に変形可能な電気的絶縁材料で構成し、かつ層状としたシール素子6(
図2参照)を備える。このシール素子6は、コネクタ1本体2に収容されると共に、上記の端子接点4に割り当てられた導線5にシール係合するための複数のスルーホール6aを有するものである。言うまでもなく、シール層6のスルーホール6aは、シール層6をコネクタ1に取り付けたときに、各シート3に対応するよう配置されている。
【0004】
これに加えて、コネクタ1は、カバー素子7(
図3参照)を備えることができる。このカバー素子7は、シール素子6のスルーホール6aにおけると同様のスルーアパーチャ7aを有し、カバー素子7をコネクタ1に取り付けたときに、やはりシート3及びスルーホール6aに対応するよう配置されている。カバー素子7には更に、アパーチャ7aの幾つかに配置されたプラグ7bが設けられており、これらプラグ7bが、シート3のうち端子接点4を収容不要としたシート3を閉じるものとされている。カバー素子7は更に、該素子7の位置決めをコネクタ1本体2内でガイドするための取り付けフット部7dを備える。このように、カバー素子7は、技術者が配線のために使用する「マップ」と見なすことができるものである。
【0005】
図4について述べると、コネクタの組み立ては、スルーホール6aが各シート3上に配置されるよう、シール素子6をベース部2a上に位置決めすることにより行うものである。次いで、カバー素子7を、シール素子6上に配置して嵌め込む。その後、端子接点4を、スルーアパーチャ7aに挿通し、シート3に到達するまでシール層6に通す配線作業を行う。これにより、導線5がコネクタ1内に差し込まれた状態になる。
【0006】
これに加えて、コネクタ1本体2は、レバー作動式のロック素子2bを有する。このロック素子2bは、固定バー2cを作動させることにより、コネクタ1を対向部品(図示せず)に係合かつ固定するものである。即ち、レバー2bをオープン位置からカバー位置に変位させることにより、コネクタが対向部品に結合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、比較的簡単かつ安価な構成とし、併せて、シール素子を通した端子の差し込みのために、僅かな(又はゼロに近い)力でシールシステムを設けることを可能にした上記タイプのシール式電気コネクタを提供することである。
【0008】
本発明の更なる課題は、既知の解決手段における利点を全て保有し、併せて、製造の容易さ及びシールの信頼性を損なうことなく、接点の差し込み及び取り外しにおけるサイクルを異ならせることを可能にした電気コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この課題は、電気コネクタであって、上述した素子を備えるだけでなく、コネクタ本体に、該コネクタ本体の平面に対する平行な移動により、シール層をコネクタ本体内に摺動的に取り付けるためのガイド通路が設けられていることにより、端子接点が対応する導線と共にコネクタ本体に収容された後、シール層を、最終取り付け位置まで導線周りに摺動的に係合するよう、コネクタ本体内に挿入できることを特徴とする電気コネクタによって解決される。
【0010】
好適な実施形態において、シール層には、該シール層の端面から形成された1つ以上の連続的なスリットが規定する複数のスルーホールが設けられているため、このシール層の端面を摺動運動時における前面として利用することで、シール層を、該シール層におけるスリットが導線周りに摺動的に係合するよう、最終取り付け位置まで挿入することができる。
【0011】
一変形において、シール層には、厚さを縮小した1つ以上の長手方向部分がシール層における少なくとも1つの端面から設けられているため、この端面を摺動運動時における前面として利用することで、シール層を、該シール層におけるスリットが導線周りに摺動的に係合するよう、最終取り付け位置まで挿入することができる。
【0012】
上述した好適な実施形態において、シール層における連続的なスリットは、スルーホールを規定する等間隔に並んだ円形アパーチャを有し、該円形アパーチャは、シール層における連続的なスリットに沿って形成されているため、シール層がその最終的な位置にあるときに、コネクタ本体に対応するよう形成されたシートに対して整列する。
【0013】
更に、この好適な実施形態において、連続的なスリットは、前端面から延在し、シール層の後端面に到達する前に終端する。
【0014】
好適には、シール素子に剛性を付与し、かつコネクタ本体に形成されたガイド通路へのシール素子の挿入を容易にするのに適したプラスチック材料製の支持体は、シール素子に割り当てられる。この場合に支持体は、フォーク状とされ、グリップ部の延長線上で突出している3本の長手方向アームを有する。これら3本のアームは、コネクタ本体に形成されたガイド通路へのシール素子の挿入に際して、コネクタに予め取り付けられた導線と干渉しないよう配置される。
【0015】
好適な実施形態において、支持体は、その長手方向アーム上に設けられた固定素子を有し、該固定素子は、シール層を支持体上の所定位置で固定かつ保持するのに適している。
【0016】
好適には、2本の端部アームは、半径方向外向きに突出している複数個の歯部を有する。該歯部は、コネクタ本体に形成されたガイド通路に対応するよう設けられた長手方向ガイド溝に係合するのに適しているため、支持体上に組み付けられたシール素子の摺動的な取り付けが容易になる。
【0017】
一実施形態において、コネクタは、導線を挿通する複数のスルーホールを有するカバー素子を更に備える。該カバー素子は、スルーホールがコネクタ本体に形成されたシートに対応するよう、端子接点の差し込み前にコネクタ本体に配置され、かつシール素子を摺動的に挿入した後にシール性を高めるため、上方の休止位置から下方の作動位置に変位させ、該作動位置でシール素子を圧縮する構成とする。
【0018】
好適には、シール素子は、ゲル又はシリコーンより成るものである。これら材料は、自己粘着性及び自己修復性を有するため、シール素子がコネクタ本体内に挿入された後、これら特性により、コネクタ内に予め取り付けられた導線周りにおける摺動行程で変形したスリット及び円形アパーチャが、縮まって閉じるものとされている。
【0019】
本発明は、上述したタイプの電気コネクタの組み立て方法にも関する。該方法は、
コネクタ本体の平面に対する平行な移動により、シール層をコネクタ本体内に摺動的に取り付けるためのガイド通路をコネクタ本体に設けるステップと、
端子接点を対応する導線と共に、コネクタ本体に形成されたシートに差し込むステップと、
端子接点が対応する導線と共にコネクタ本体に収容された後に、シール層が挿入可能になるよう、かつ導線周りに摺動的に係合するよう、シール層をコネクタ本体内に摺動的に取り付けることにより、シール層のスリットを最終的な取り付け位置まで導線周りに摺動的に係合させるステップと、
を含む。
【0020】
好適には、シール層には、該シール層の端面から形成した1つ以上の連続的なスリットが規定する複数のスルーホールを設けるため、このシール層の端面を摺動運動時における前面として利用することで、シール層を、該シール層におけるスリットが導線周りに摺動的に係合するよう、最終取り付け位置まで挿入することができる。
【0021】
代案として、シール層には、該シール層における少なくとも1つの端面から形成し、かつ厚さを縮小した1つ以上の長手方向部分を設けるため、この端面を摺動運動時における前面として利用することで、シール層を、該シール層における長手方向部分が導線によって切除されるよう、かつ最終取り付け位置まで導線周りに摺動的に係合するよう、コネクタ本体内に挿入することができる。
【0022】
上述の方法は、導線を挿通する複数のスルーホールを有するカバー素子を設けるステップを更に含むことが可能である。このステップにおいて、カバー素子は、スルーホールがコネクタ本体に形成されたシートに対応するよう、端子接点の差し込み前にコネクタ本体に配置し、かつシール素子を摺動的に挿入した後にシール性を高めるため、上方の休止位置から下方の作動位置に変位させ、該作動位置でシール素子を圧縮する。
【0023】
上述した特徴により、本発明に係るコネクタは、一方では構成簡単かつ安価に製造可能であり、他方では確実かつ信頼性の高いシールを保障するものである。更に、コネクタの構成により、導線の端子接点がゲルの粒子で汚染されることがない。なぜなら、ゲルより成るシール層は、端子接点が対応のシートに取り付けられた後にコネクタに取り付けられるものであるため、コネクタに接触することがないからである。
【0024】
本発明に係るコネクタにより達成可能な利点の1つは、従来技術のように、導線が差し込まれていないシートのためにカバー素子を嵌め込む必要がないことである。これは、ゲル自体の自己粘着性により、シールが保障されるからである。
【0025】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付図面に基づく以下の単なる非限定的な例示とした記載のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図5】本発明に係るシール素子及び支持素子を、分離状態及び結合状態で示す斜視図である。
【
図6】本発明に係るシール素子及び支持素子を、分離状態及び結合状態で示す斜視図である。
【
図7】本発明に係るシール素子及び支持素子を、分離状態及び結合状態で示す斜視図である。
【
図8】本発明に係るコネクタを、異なる組み立て状態で示す斜視図である。
【
図9】本発明に係るコネクタを、異なる組み立て状態で示す斜視図である。
【
図10】本発明に係るコネクタを、異なる組み立て状態で示す斜視図である。
【
図11】本発明に係るコネクタを、異なる組み立て状態で示す斜視図である。
【
図12】
図11の組み立て状態に対応する本発明のコネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の記載は、種々かつ個別の細目を説明することにより、各実施形態に対する十分な理解を目的としたものである。各実施形態は、記載した細目の1つ以上なしに、又は他の方法、部品、材料などを使用して実現することができる。また場合によっては、既知の構造、構造上の細目、材料及び作動については図示しないか、又は詳細に記載しないものとする。なぜなら、これらの点は、任意かつ既知の方法で実現可能である上、個別的には本発明の趣旨に含まれるものではないからである。
【0028】
図5〜
図12において、
図1〜
図4に示す実施形態に基づいて上述した共通の部分は、以下において同一の参照符号で表すのに対して、付加又は修正した部分は、異なる参照符号で表す。
【0029】
図5〜
図7は、本発明に係る新規のシール素子16を示す。
【0030】
これら図に示す本発明のシール素子において、スルーホール6aは、シール層16における前端面18aから形成された4つの連続的なスリット17によって規定されている。
【0031】
特に、シール層16における連続的なスリット17は、等間隔に並んだ円形アパーチャ16aを有し、これらアパーチャ16aがスルーホール6aを規定している。各円形アパーチャ16aは、保持層16上及び連続的なスリット17に沿って形成されているため、シール層16がその最終的な位置にあるときに、コネクタ1本体に対応するよう形成されたシート3に対して整列するものである。図示の実施形態において、互いに隣接する連続的なスリット17の円形アパーチャ16aは、相互にずらせてある。
【0032】
図示の実施形態において、連続的なスリット17は、前端面18aから延在し、シール層16の後端面18bに到達する前に終端している。
【0033】
他の実施形態(図示せず)において、シール層16には、該シール層16における少なくとも1つの端面18aから形成され、かつ厚さを縮小した1つ以上の長手方向部分が設けられているため、この端面を摺動運動時における前面として利用することで、シール層16を、シール層16における長手方向部分が導線5によって切除されるよう、かつ最終取り付け位置まで導線5周りに摺動的に係合するよう、コネクタ本体2内に挿入することができる。
【0034】
この場合に長手方向部分の厚さは、シール層16全体の寸法に対して縮小されているため、導線5によって材料が容易に切除可能であり、従ってシール層16が導線5に対して容易に摺動することができる。
【0035】
図6は、シール素子16に剛性を付与するのに適したプラスチック材料製の支持体19を示し、
図7は、シール素子16及び支持体19の組み付け状態を示す。この支持体19は、シール素子16に剛性を付与する他に、コネクタ1本体2に形成されたガイド通路20(
図8参照)へのシール素子16の挿入を容易にするものである。
【0036】
図示の実施形態において、支持体19は、フォーク状とされ、グリップ部19aの延長線上で突出している3本の長手方向アーム19bを有する。これら3本のアーム19bは、コネクタ本体2に形成されたガイド通路20へのシール素子16の挿入に際して、コネクタ1に予め取り付けられた導線5と干渉しないよう配置されている。
【0037】
図6には、ピン状とした固定素子19cが支持体19上に示されている。これら固定素子19cは、長手方向アーム19b上に設けられると共に、シール層16を支持体19上の所定位置で固定かつ保持するのに適している。
【0038】
更に、支持体19における2本の端部アーム19bは、2個の歯部19dを有するものである。これら歯部19dは、端部アーム19bから半径方向外向きに突出し、かつコネクタ1本体2に形成されたガイド通路20に対応するよう設けられた長手方向ガイド溝に係合するのに適しているため、支持体19上に組み付けたシール素子16の摺動的な取り付けが容易になる。
【0039】
シール層16をコネクタ1本体2に摺動的に取り付けるためには、支持体19に支持された摺動層16を、コネクタ1本体2の平面に対して平行に移動する。この場合にシール層16の端面18aは、摺動運動時における前面として利用するものである。
【0040】
シール層16は、該シール層16及び支持体19の形状により、端子接点4が対応する導線5と共にコネクタ1本体2に収容された後に、シール層16のスリット17又は縮小した厚さを有する部分が最終的な取り付け位置に到達するまで導線5周りに摺動的に係合するよう、該コネクタ1本体2内に挿入することができる。
【0041】
更に、コネクタ1には、導線5を挿通する複数のスルーホール7a有するカバー素子7が設けられている。このカバー素子7は、スルーホール7aがコネクタ1本体2に形成されたシート3に対応するよう、端子接点4の差し込み前にコネクタ1本体2上に配置され、かつシール素子16を摺動的に挿入した後にシール性を高めるため、上方の休止位置から下方の作動位置に変位させ、該作動位置でシール素子16を圧縮する構成とする。
【0042】
図8〜
図11は、電気コネクタ1における取り付けの各ステップを示す。特に、
図8は、導線5をコネクタ1本体2内に配線するステップに関連する。このステップにおいて、各導線5は、スルーアパーチャ7aに対応するよう配置され、かつコネクタ1のベース部に対応するよう形成されたシート3に到達するまでコネクタ1本体2内に差し込むものである。
図9は、配線の終了時における状態を示すのに対して、
図10は、支持体19に支持されたシール層16の摺動的な挿入の終了時におけるコネクタ1を示す。更に、
図11は、取り付けの終了時におけるコネクタ1を示す。この場合にカバー素子7は、その下方の(矢印で示す方向における)作動位置に変位しており、該作動位置でシール素子16を圧縮するものである。
【0043】
シール素子16は、ゲル又はシリコーン(例えば、GT‐4201-T3.0‐SHEETとして市販され、ダウコーニング社が生産しているゲル)より成るものである。
【0044】
ゲルは、自己粘着性及び自己修復性を有するため、シール素子16がコネクタ1本体2内に挿入された後、上記の特性により、コネクタ1内に予め取り付けられた導線5周りにおける摺動行程で変形したスリット17及び円形アパーチャ16aが、縮まって閉じるものとされている。
【0045】
図示の実施形態において、カバー素子7には、従来技術のようにプラグ7bを設ける必要がない。これは、自己粘着性及び自己修復性により、対応する導線5に係合していない円形アパーチャ16bが確実に閉鎖するからである。更に、カバー素子7によるシール素子16への圧縮により、スリット17の閉鎖が促進される。これにより、確実にシールが可能となる。
【0046】
図12は、半径方向におけるシールガスケット21を更に示す。該シールガスケット21は、コネクタ1本体2内に設けられているため、2個の対向部品間におけるシールを保障するものである。
【0047】
本発明は、上述したタイプの電気コネクタの組み立て方法にも関する。該方法は、
コネクタ本体2の平面に対する平行な移動により、シール層16をコネクタ本体2内に摺動的に取り付けるためのガイド通路20をコネクタ本体2に設けるステップと、
端子接点4を対応する導線5と共に、コネクタ本体2に形成されたシート3に差し込むステップと、
上記端子接点4が対応する導線5と共にコネクタ本体2に収容された後に、シール層16が挿入可能になるよう、かつ導線5周りに摺動的に係合するよう、シール層16をコネクタ本体2内に摺動的に取り付けることにより、シール層16のスリット17を最終的な取り付け位置まで導線5周りに摺動的に係合させるステップと、
を含む。
【0048】
シール素子は、配線ステップの後にコネクタ内に挿入するため、縮小した直径を有する導線の場合であっても配線自体が容易になる。更に、シール層のシール性能を低下させることなく、導線の差し込み及び取り外しにおけるサイクルを異ならせることが可能である。この場合のシール層は、導線の新たな差し込み及び取り外しを行う前に除去することができる。これに加えて、本発明に係るコネクタにより、導線の端子接点は、ゲルの自由粒子で「汚染」されることがない。これは、シール層が導線における保護シースに被覆された部分にのみ接触し、接点端子に接触することがないからである。
【0049】
言うまでもなく、構造上の細部及び実施形態は、本発明の原理に影響を及ぼすことなく、即ち本発明の趣旨内で、単なる例示として上述した記載との対比において大幅に異ならせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電気コネクタ
2 コネクタ本体
2a ベース部
2b レバー作動式のロック素子
2c 固定バー
3 端子接点を収容するシート
4 端子接点
5 導線
6 シール素子
6a スルーホール
7 カバー素子
7a スルーホール(スルーアパーチャ)
7b プラグ
7d 取り付けフット
16 シール層又は素子
16a 円形アパーチャ
17 連続的なスリット
18a 前端面
18b 後端面
19 支持体
19a グリップ部
19b 長手方向アーム
19c 固定素子
19d 突出歯部
20 ガイド通路
21 半径方向におけるシールガスケット