(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオール化合物、界面活性剤、及び水を含む第1組成物(L)、イソシアネート化合物を含む第2組成物(M)、並びにセメントを含む第3組成物(N)を含む硬化性組成物であって、
前記第2組成物(M)は、前記イソシアネート化合物に加え、さらにイソシアネート化合物に対し不活性かつ低比重である液状物質を含み、
前記液状物質が、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、流動パラフィンから選ばれる1種または2種以上の炭化水素化合物であり、前記イソシアネート化合物と前記液状物質の重量比率が100:0.1〜100:10であることを特徴とする硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の硬化性組成物は、第1組成物(L)、第2組成物(M)、及び第3組成物(N)を含むものである。このうち、第1組成物(L)は、ポリオール化合物(a)、界面活性剤(b)、及び水(c)を含むものである。
【0012】
第1組成物(L)におけるポリオール化合物(a)(以下「(a)成分」ともいう)は、結合材として作用するものである。(a)成分としては、イソシアネート化合物と反応可能な各種ポリオール化合物が使用できる。具体的には、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリジエンポリオール、植物油系ポリオール、セルロース化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上で使用できる。このような(a)成分は通常、常温で液状の化合物である。
【0013】
本発明において、ポリオール化合物(a)としては植物油系ポリオール(a1)を含む態様が好適である。植物油系ポリオール(a1)(以下「(a1)成分」ともいう)としては、例えば、大豆油系ポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。このうち、特にひまし油系ポリオールが好適である。ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、及び/または、ひまし油を出発原料として合成されたポリオールが使用できる。このうち、ひまし油を出発原料として合成されたポリオールとしては、例えば、ひまし油のアルキレンオキシド付加物、ひまし油のエポキシ化物、ひまし油のハロゲン化物、ひまし油と多価アルコールとのエステル交換物、及びこれらの水素化物等が挙げられる。
【0014】
(a1)成分の水酸基価は、好ましくは50〜500mgKOH/g、より好ましくは100〜400mgKOH/g、さらに好ましくは130〜350mgKOH/gである。(a1)成分の水酸基価がこのような範囲内であれば、硬化性、仕上り性等の点で好適である。
【0015】
また、(a1)成分の一分子中における水酸基の官能基数は、好ましくは2.0〜5.0、より好ましくは2.5〜4.0である。(a1)成分の官能基数がこのような範囲内であれば、仕上り性等の点で好適である。
【0016】
本発明における第1組成物(L)は、界面活性剤(b)(以下「(b)成分」ともいう)を含む。本発明では、このような(b)成分が含まれることにより、第1組成物(L)における分散安定性が高まり、仕上り性、耐熱性、耐薬品性、強度等の被膜物性向上の点でも好適である。
【0017】
(b)成分としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。この中でも、本発明では、ノニオン性界面活性剤(b1)(以下「(b1)成分」ともいう)を含む態様が好適である。このような態様により、本発明では、仕上り性、硬化性等の性能向上を図ることができる。
【0018】
ノニオン性界面活性剤(b1)としては、その種類は特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;その他、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0019】
(b)成分の比率は、固形分換算で(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。このような比率であれば、安定性、仕上り性、硬化性等において十分な効果を得ることができる。
【0020】
第1組成物(L)における水(c)(以下「(c)成分」ともいう)は、第1組成物(L)、第2組成物(M)、及び第3組成物(N)を混合した際の硬化反応に寄与するものである。 (c)成分の比率は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは30〜150重量部である。
【0021】
本発明における第1組成物(L)は、顔料(d)(以下「(d)成分」ともいう)を含むことができる。(d)成分を含むことにより、硬化性組成物を所望の色に調製することが可能となる。
【0022】
(d)成分としては、各種の着色顔料が使用でき、着色顔料と体質顔料を併せて用いることもできる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒色酸化鉄、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、珪藻土、タルク、硫酸バリウム等が挙げられる。(d)成分の粒子径は、好ましくは50μm未満(より好ましくは0.1〜30μm)である。
【0023】
本発明では、このような(d)成分の1種または2種以上を適宜選択・混合して用いることにより、様々な色調を表出することが可能となる。(d)成分の比率は、固形分換算で(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
【0024】
第1組成物(L)は、上記(a)〜(c)成分、必要に応じさらに(d)成分等を常法により、均一に混合することによって製造することができる。この際、第1組成物(L)には、例えば、消泡剤、反応調整剤、減水剤、繊維類、防腐剤、防藻剤、防カビ剤、分散剤、溶剤、可塑剤、粘性調整剤、pH調整剤等の添加剤を混合することも可能である。
【0025】
本発明における第2組成物は、イソシアネート化合物(p)(以下「(p)成分」ともいう)、及び当該(p)成分に対し不活性かつ低比重である液状物質(q)(以下「(q)成分」ともいう)を含むものである。
【0026】
このうち(p)成分としては、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物が使用できる。具体的には、例えば、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(pure−MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等、あるいはこれらをアロファネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン化)、3量化(イソシアヌレート化)、アダクト化、カルボジイミド化反応等により誘導体化したものが挙げられる。また、イソシアネートとポリオールの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーも使用可能である。イソシアネート化合物としては、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
(p)成分の比重は、好ましくは0.95以上、より好ましくは1.00〜1.50である。なお、比重は25℃における測定値である。
【0028】
(p)成分は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは50〜800重量部、より好ましくは100〜500重量部となる範囲内で混合すればよい。
【0029】
本発明では、第2組成物が上記(p)成分に加え、さらに当該(p)成分に対し不活性かつ低比重である液状物質(q)を含むことによって、硬化性組成物の形成被膜における仕上り性を高めることができる。特に被膜表面における外観の均一性等の点において安定した性能を得ることができる。このような効果が奏される理由は明らかではないが、本発明組成物では、製造時乃至被膜形成時において、温度、湿度等の環境条件が変化しても、第2組成物におけるイソシアネート化合物の活性度合が一定に保たれること、さらには第1〜3組成物を混合した後の被膜形成段階における硬化反応が安定化すること等が寄与しているものと推測される。
【0030】
このような(q)成分は、(p)成分に対し不活性であることが必要である。ここで、(p)成分に対し不活性とは、(p)成分に対する反応性を有さないことを意味するものである。すなわち、(q)成分としては、活性水素を有さない物質が好適であり、具体的には水酸基、アミノ基等の活性水素含有基を有さない物質が好ましい。
【0031】
さらに本発明において、(q)成分は(p)成分に対し低比重であることが必要である。すなわち、(q)成分としては、その比重が(p)成分の比重よりも小さいものを使用する。(q)成分の比重は、(q)成分と併せて使用する(p)成分の比重よりも相対的に小さければよいが、好ましくは1.00未満、より好ましくは0.60〜0.99、さらに好ましくは0.65〜0.94である。なお、比重は25℃における測定値である。
【0032】
本発明における(q)成分としては、上記条件を満たす液状物質が使用できる。このような液状物質は、常温(5〜35℃)において液状であればよい。また、(q)成分の沸点は100℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。
【0033】
(q)成分としては、例えば炭化水素化合物等が挙げられ、具体的には、ノナン(比重0.72、沸点150℃)、デカン(比重0.73、沸点174℃)、ウンデカン(比重0.74、沸点196℃)、ドデカン(比重0.75、沸点216℃)、トリデカン(比重0.76、沸点234℃)、テトラデカン(比重0.76、沸点253℃)、ペンタデカン(比重0.77、沸点268℃)、流動パラフィン(比重0.88、沸点300℃以上)等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0034】
このような(q)成分は、第2組成物中において、(p)成分の上部に浮上した状態をとることができる。このような状態であれば、本発明の効果発現の点で好適である。
【0035】
(p)成分と(q)成分の重量比率{(p):(q)}は、好ましくは100:0.05〜100:20、より好ましくは100:0.1〜100:10である。このような重量比率であれば、本発明の効果を安定的に発揮することができる。
【0036】
本発明における第3組成物(N)は、セメントを含むものである。セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメントのほか、アルミナセメント、超速硬セメント、膨張セメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、キーンスセメント等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、ポルトランドセメントが好ましい。セメントは、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは100〜1000重量部、より好ましくは200〜800重量部となる範囲内で混合すればよい。
【0037】
本発明組成物では、上記成分に加え、さらに細骨材を混合することができる。このような細骨材を混合することにより、被膜の強度向上、厚膜化等を図ることができる。細骨材としては、例えば、天然石粉砕物、陶磁器粉、珪砂、セラミック粉、ゴム粒、金属粒等、あるいはこれらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。細骨材の粒子径は、通常0.05〜1mm程度である。細骨材は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは200〜2000重量部、より好ましくは500〜1500重量部となる範囲内で混合すればよい。
【0038】
また、本発明では、上記細骨材よりも粒子径の大きな粗骨材をさらに混合することで、被膜表面に微細な凹凸を形成させ、防滑性を付与することもできる。この他、炭酸ガス吸収剤等を混合することもできる。炭酸ガス吸収剤としては、例えば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げられ、これらは1種または2種以上で使用できる。
【0039】
本発明の硬化性組成物は、流通時には第1組成物(L)、第2組成物(M)、及び第3組成物(N)を、それぞれ別のパッケージに保存した状態とし、使用時にこれらを混合すればよい。細骨材、粗骨材、炭酸ガス吸収剤等は、上記第3組成物(N)のパッケージ内に混合しておけばよい。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、上記第1〜3組成物を使用時に混合し、その混合物を基材に塗付することにより、被膜を形成することができる。本発明組成物は、仕上り性、耐熱性、耐薬品性、強度等において優れた物性を発揮することができるため、とりわけコンクリート等の床面に適用する材料として好ましいものである。
【0041】
塗付時においては、コテ塗り、流し込み、吹き付け等種々の方法を採用することができる。また、乾燥前の塗面に骨材等を散布することもできる。硬化後の厚みは、好ましくは0.5〜12mm、より好ましくは1〜10mm程度である。このような厚みとなる範囲内で、複数回に分けて塗分けることも可能である。塗装及びその後の乾燥は、通常、常温で行えばよい。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0043】
(第1組成物の製造)
表1に示す配合に従い、各成分を均一に混合して第1組成物を製造した。なお、第1組成物においては、以下の原料を使用した。
【0044】
・樹脂1:ひまし油系ポリオール(水酸基価160KOHmg/g、官能基数2.7、固形分100重量%)
・樹脂2:ひまし油系ポリオール(水酸基価320KOHmg/g、官能基数3、固形分100重量%)
・界面活性剤1:ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB9.7、固形分100重量%)
・界面活性剤2:ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB13.4、固形分100重量%)
・顔料1:黄色酸化鉄
・顔料2:フタロシアニンブルー
・可塑剤:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)
・液状物質1:流動パラフィン(比重0.88、沸点300℃以上)
・添加剤:消泡剤
【0045】
【表1】
【0046】
(第2組成物の製造)
表2に示す配合に従い、各成分を均一に混合して第2組成物を製造した。なお、第2組成物においては、以下の原料を使用した。
【0047】
・イソシアネート化合物:ポリメリックMDI(比重1.23)
・液状物質1:流動パラフィン(比重0.88、沸点300℃以上)
・液状物質2:オルト酢酸トリメチル(比重0.94、沸点108℃)
【0048】
【表2】
【0049】
(1)仕上り性1
表3に示す組合せに従い、第1組成物と、第2組成物と、第3組成物(ポルトランドセメントと珪砂(重量比率1:2)の混合物、表では「3−1」と表示)とを15:15:70の重量比率で均一に混合して、硬化性組成物を得た。
【0050】
硬化後の厚みが4mmとなるように、各硬化組成物をスレート板にコテ塗りし、72時間養生した後、その被膜の光沢度(60°)を測定した。その結果を表3に示す。表中、「A」は光沢度3未満、「B」は光沢度3以上6未満、「C」は光沢度6以上10未満、「D」は光沢度10以上であることを示す。なお、塗装及び養生は、いずれも標準状態で行った。
【0051】
(2)仕上り性2
各組成物を気温23℃・相対湿度90%の環境下に3日間保管した後、表3に示す配合に従って均一に混合し、硬化性組成物を得た。
【0052】
硬化後の厚みが4mmとなるように、各硬化組成物をスレート板にコテ塗りし、72時間養生した後、その被膜の光沢度(60°)を測定した。その結果を表3に示す。表中の記号は上述の通りである。なお、塗装及び養生は、いずれも標準状態で行った。
【0053】
実施例1〜6では、仕上り性1、2に変化はなく、良好な結果が得られた。
【0054】
【表3】