特許第6227393号(P6227393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6227393-パイプの止着構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227393
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】パイプの止着構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/02 20060101AFI20171030BHJP
   F16B 5/00 20060101ALI20171030BHJP
   F16B 2/24 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F16L3/02 A
   F16B5/00 F
   F16B2/24 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-257713(P2013-257713)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-113947(P2015-113947A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】谷口 陽祐
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−228833(JP,A)
【文献】 実開昭62−034690(JP,U)
【文献】 特開2008−196637(JP,A)
【文献】 特開2000−337557(JP,A)
【文献】 米国特許第04823752(US,A)
【文献】 実開昭53−052000(JP,U)
【文献】 特開2001−295961(JP,A)
【文献】 特開2004−023865(JP,A)
【文献】 特開2004−019688(JP,A)
【文献】 特開2007−255591(JP,A)
【文献】 特開2011−196404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/02
F16B 2/24
F16B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ(1)を介して、パイプ(2)を固定部材(3)に取付けるパイプの止着構造において、
そのパイプ(1)は、その外周の周方向に凸条からなるスプール(4)が形成され、そのスプール(4)の長手方向の中間に凸条のない凹部(5)が形成され、
そのクランプ(1)は、その内周が前記パイプ(2)の外周に整合する把持部(6)を有すると共に、その把持部(6)の幅方向の中間に前記スプール(4)に整合する幅のスリット(7)が形成され且つ、前記凹部(5)に整合する位置で、スリット(7)間を跨ぐ架橋部(8)が形成され、
そのクランプ(1)のスリット(7)の内縁が、パイプ(2)のスプール(4)の両側に位置されると共に、スプール(4)の凹部(5)にクランプ(1)の架橋部(8)が嵌着された状態で、そのクランプ(1)が固定部材(3)に取付けられ、
そのクランプ(1)は、板バネ材からなり、その把持部(6)の端部に取付け部(9)が延在し、その取付け部(9)にボルト孔(10)が穿設されると共に、その把持部(6)の両側に一対の舌片(11)が取付け部(9)に直交する方向に一体に延在し、
前記固定部材(3)には、前記一対の舌片(11)間の距離に略整合する幅の門形部(12)が突設され、その頂部にボルトの螺着部(13)が設けられ、
前記一対の舌片(11)が門形部(12)の両側を挟持するように構成されたパイプの止着構造 。
【請求項2】
請求項1に記載のパイプの止着構造において、
一対の舌片(11)は取付け部(9)の延在方向で、その取付け部(9)の根元(15)から異なるように千鳥に配置されたパイプの止着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプを介してパイプを固定部材に取り付けるパイプの止着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一例として、自動車用ラジエータのサージタンクには、固定パイプおよびホースを介して、ラジエータのフィラネックが接続される。その固定パイプ2は図3(A)に示す如く、その先端に抜け止め用のバルジ加工16を施し、パイプ2の中間部に環状のスプール4を膨出させる。
そして、このスプール4に整合するスリット7を有するクランプ17を介し、図3(B)のごとく、固定パイプ2にクランプ17を被嵌し、そのクランプ17の取付け部のボルト孔10にボルトを挿通してラジエータのサージタンク等に固定していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のパイプの止着構造は、クランプ17のスリット7をパイプ2のスプール4の外周に嵌着し、そのクランプがパイプの軸方向に移動しないようにしていた。
ところが、一例として、図3に示す如く、L字状のパイプ2を固定する場合、軸方向のみならず周方向の固定も必要である。そのため、パイプおよびクランプを保持しつつ、クランプのボルト孔にボルトを挿通し、ボルトの締結力によってパイプの周方向の位置決めを行う必要があった。そして、パイプの取り付け作業が面倒であり、その調整に時間を要する欠点があった。
そこで、本発明は、クランプとパイプとが相対回転しないようにして、組み付け作業が容易にできる止着構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の本発明は、クランプ(1)を介して、パイプ(2)を固定部材(3)に取付けるパイプの止着構造において、
そのパイプ(1)は、その外周の周方向に凸条からなるスプール(4)が形成され、そのスプール(4)の長手方向の中間に凸条のない凹部(5)が形成され、
そのクランプ(1)は、その内周が前記パイプ(2)の外周に整合する把持部(6)を有すると共に、その把持部(6)の幅方向の中間に前記スプール(4)に整合する幅のスリット(7)が形成され且つ、前記凹部(5)に整合する位置で、スリット(7)間を跨ぐ架橋部(8)が形成され、
そのクランプ(1)のスリット(7)の内縁が、パイプ(2)のスプール(4)の両側に位置されると共に、スプール(4)の凹部(5)にクランプ(1)の架橋部(8)が嵌着された状態で、そのクランプ(1)が固定部材(3)に取付けられ、
そのクランプ(1)は、板バネ材からなり、その把持部(6)の端部に取付け部(9)が延在し、その取付け部(9)にボルト孔(10)が穿設されると共に、その把持部(6)の両側に一対の舌片(11)が取付け部(9)に直交する方向に一体に延在し、
前記固定部材(3)には、前記一対の舌片(11)間の距離に略整合する幅の門形部(12)が突設され、その頂部にボルトの螺着部(13)が設けられ、
前記一対の舌片(11)が門形部(12)の両側を挟持するように構成されたパイプの止着構造である。
【0006】
請求項に記載の本発明は、請求項に記載のパイプの止着構造において、
一対の舌片(11)は取付け部(9)の延在方向で、その取付け部(9)の根元(15)から異なるように千鳥に配置されたパイプの止着構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパイプの止着構造は、そのクランプ1のスリット7の内縁が、パイプ2のスプール4の両側に位置されると共に、スプール4の凹部5にクランプ1の架橋部8が嵌着された状態で、そのクランプ1が固定部材3に取付けられるものである。従って、パイプ2は軸方向の移動に対して、スプール4とスリット7の嵌着により阻止され、その周方向の回転に対しては、架橋部8と凹部5との嵌着により阻止される。そのため、パイプ2をクランプ1に対して、いずれの方向にも固定した状態で、固定部材3にそれらを容易に取付けることができる。
さらに、固定部材3の門形部12の頂部にボルトの螺着部13が設けられ、クランプ1の一対の舌片11が門形部12の両側を挟持するように構成したので、クランプ1を固定部材3に取り付ける際の位置決めが容易となり、その取付けを迅速に行える。
しかも、そのクランプ1は、板バネ材からなり、その把持部6の端部に一対の舌片11が取付け部9に直交する方向に一体に延在しているので、クランプ1は一部材で、回り止めと、軸線方向の移動防止と、門形部12への位置決めとを、同時に且つ一体的に行うことができる複合的効果がある。
【0009】
請求項の構成において、請求項に記載のように、一対の舌片11を取付け部9の延在方向で、その根元15から異なるように千鳥に配置した場合には、クランプ1がボルト孔10の回りに回転することを確実に阻止することができる。

【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のパイプの止着構造の要部分解斜視図。
図2】その取付け説明図。
図3】従来型のパイプの止着構造の分解斜視図(A)、その取付け構造を示す斜視図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面に基づいて、本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明のパイプの止着構造の要部分解斜視図であり、図2はその取付け説明図である。
この止着構造において、パイプ2はその軸線がL字状に形成され、その先端にバルジ加工16が膨出し、そこに図示しないホースが止着される。パイプ2の中間部には、周方向に凸条からなるスプール4が形成され、そのスプール4の長手方向の中間に凸条のない凹部5が形成されている。このような凹部5つきのスプール4は、一例として、パイプをバルジ加工することにより形成できる。
【0012】
次に、クランプ1は板バネ材からなり、パイプ2の外周より僅かに小なる直径を有する把持部6を有し、その一端に取付け部9が延在されている。取付け部9と把持部6との根元15は折り曲げられている。取付け部9の中央部には楕円形のボルト孔10が穿設されている。
【0013】
さらに、取付け部9の両側には一対の舌片11が一体的に突設されている。右側の舌片11と根元15との距離は短く、左側の舌片11と根元15との距離はそれより長い。即ち、舌片11の左右の配置は、根元15から異なるように千鳥状に配置される。各舌片11は、取付け部9に対して直角よりも内向きの「くの字」状に形成され、一対の舌片11の間隔が固定部材3のクランプ取付け部となる門形部12の幅よりも僅かに小に形成されている。また、舌片11の先端部は、外側に開かれ、門形部12への案内面を形成する。
なお、この舌片11の数は2つ以上にしてもよく、その場合も、根元15から異なるように千鳥に配置される。また、その大きさ(奥行長さ・高さ方向長さ)は、図面に記されたものに限らず、門型部12の側壁の高さ方向長さと一致させてもよい。
【0014】
(作用)
次に、本発明のパイプの止着構造の取り付け方法について説明する。
パイプ2の外周にクランプ1を被嵌する。この時、クランプ1のスリット7の両縁が、パイプ2のスプール4の両側に位置されるともに、クランプ1の架橋部8が、パイプ2の凹部5に位置する。
【0015】
このクランプ1は板バネ材からなり、その把持部6の内周はパイプ2より僅かに小に形成されているため、クランプ1をパイプ2に被嵌すると、パイプ2はクランプ1によって把持される。そして、クランプ1の架橋部8とパイプ2の凹部5とが嵌着することにより、両者は周方向に回転することなく位置決めされる。また、スリット7の両縁がスプール4の両側に位置するため、両者は軸方向にも位置決めされる。この状態で、クランプ1が固定部材3に止着される。
【0016】
この例では、固定部材3はラジエータのタンク18であり、その一側に門形部12が凸設されている。門形部12の幅は、クランプ1の一対の舌片11の幅よりも僅かに大である。門形部12の端面にはボルト孔が設けられるとともに、その内側にナットが装着されている。
そこで、クランプ1の一対の舌片11を門形部12の両側に嵌着する。このとき、一対の舌片11のばね性により、クランプ1は門形部12に保持される。そこで、ボルト14をクランプ1のボルト孔10に挿通し、門形部12内のナットにそれを締結固定する。
【符号の説明】
【0017】
1 クランプ
2 パイプ
3 固定部材
4 スプール
5 凹部
6 把持部
7 スリット
8 架橋部
9 取付け部
【0018】
10 ボルト孔
11 舌片
12 門形部
13 螺着部
14 ボルト
15 根元
16 バルジ加工
17 クランプ
18 タンク
図1
図2
図3