特許第6227402号(P6227402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227402
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】アルミニウム箔製包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20171030BHJP
   B65D 83/04 20060101ALI20171030BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20171030BHJP
   B65D 75/34 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B32B15/08 F
   B65D83/04 D
   B65D65/40 D
   B65D75/34
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-270859(P2013-270859)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-123706(P2015-123706A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231626
【氏名又は名称】株式会社UACJ製箔
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西尾 宏
(72)【発明者】
【氏名】馬場 茂
(72)【発明者】
【氏名】山本 兼滋
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−058515(JP,A)
【文献】 特開2012−158383(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/084248(WO,A1)
【文献】 特開2008−044209(JP,A)
【文献】 特開2011−255931(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/183511(WO,A1)
【文献】 特開2005−203294(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0515786(US,A1)
【文献】 特開2005−216707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 65/40
B65D 75/34
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系フィルム,第一接着剤,アルミニウム箔,第二接着剤及びポリ塩化ビニル系フィルムの順に積層された積層体で構成されたアルミニウム箔製包装材料において、
前記積層体は、縦方向、横方向、45°方向及び135°方向のいずれの方向においても、その伸び(L)が100〜140%の範囲内であり、かつ、下記で定義するΔEが0.50〜0.65の範囲内であることを特徴とするアルミニウム箔製包装材料。

ΔE=(S−P)/(L−0.2)
[ここで、Sは破断時の応力(N/mm2)であり、Pは0.2%耐力(N/mm2)であり、Lは伸び(%)を表す。]
【請求項2】
ポリアミド系フィルムがナイロンフィルムであり、第一接着剤及び第二接着剤がポリウレタン系接着剤である請求項1記載のアルミニウム箔製包装材料。
【請求項3】
ナイロンフィルムが二軸延伸フィルムである請求項1記載のアルミニウム箔製包装材料。
【請求項4】
請求項1記載のアルミニウム箔製包装材料を用いてなるプレススルーパック。
【請求項5】
請求項1記載のアルミニウム箔製包装材料を成形し容器本体として用いてなるプレススルーパック。
【請求項6】
凹部を成形した請求項1記載のアルミニウム箔製包装材料の二枚を、凹部同士を合致させ接着してなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性に優れたアルミニウム箔製包装材料に関し、特に、プレススルーパック包装の容器本体として使用するのに適したアルミニウム箔製包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬剤や食品等の錠剤又は電子材料等の包装体として、プレススルーパック包装が用いられている。プレススルーパック包装の容器本体としては合成樹脂製フィルムが用いられ、蓋材としてはアルミニウム箔が用いられている。容器本体には錠剤等を個別に収納するための複数のポケットが成形されている。合成樹脂製フィルムは可塑性が良好であり、成形性に優れているため、容器本体の材料として、合成樹脂製フィルムが汎用されている。
【0003】
しかしながら、容器本体が合成樹脂製フィルムで構成されていると、湿気が錠剤に侵入しやすく、錠剤が劣化しやすいということがあった。また、合成樹脂製フィルムは透明なものが多く、紫外線の照射によって、錠剤が劣化しやすいということもあった。このため、容器本体の材料として、アルミニウム箔と合成樹脂製フィルムとの積層体を用いることも行われている。
【0004】
かかる積層体を用いると、湿気が侵入しにくく且つ紫外線も照射されにくいため、錠剤の劣化を防止でき、好ましいものである。しかるに、かかる積層体は、合成樹脂製フィルム単独のものに比べて、成形性に劣るものであった。このため、アルミニウム箔に積層一体化される合成樹脂製フィルムとして、縦方向(MD方向)と横方向(CD方向)の熱水収縮率が一定の範囲にあるポリアミド系フィルムを用いることが提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特許第3983131号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、アルミニウム箔に積層一体化される合成樹脂製フィルムを特定しただけであるので、積層体としての成形性が良好であるとは言えなかった。また、ポリアミド系フィルムの熱水収縮率と、成形性には相関関係がないので、積層体としての成形性が良好であるとは言えなかった。すなわち、積層体としての常温下での伸びや応力は全く考慮されていないため、常温での成形時において、容器本体を構成する積層体に割れが生じたり、成形後のポケットが変形しやすいということがあった。
【0007】
本発明は、容器本体を構成する積層体として特定のものを採用することにより、成形時に割れが生じたり、成形後に変形が生じたりするのを、防止することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、ポリアミド系フィルム,第一接着剤,アルミニウム箔,第二接着剤及びポリ塩化ビニル系フィルムの順に積層された積層体で構成されたアルミニウム箔製包装材料において、前記積層体は、縦方向、横方向、45°方向及び135°方向のいずれの方向においても、その伸び(L)が100〜140%の範囲内であり、かつ、ΔEが0.50〜0.65の範囲内であることを特徴とするアルミニウム箔製包装材料に関するものである。ここで、ΔEとは以下で定義される値である。すなわち、ΔE=(S−P)/(L−0.2)なる式で算出される値であり、Sは破断時の応力(N/mm2)、Pは0.2%耐力(N/mm2)、Lは伸び(%)を表している。
【0009】
本発明に用いるポリアミド系フィルムとしては、一般的にナイロンフィルムが用いられ、特にナイロン6フィルム又はナイロン66フィルムが用いられる。ポリアミド系フィルムの厚さは20〜30μm程度であり、特に25μmのものが用いられる。ポリアミド系フィルムは、チューブラー法又はテンター法で製造され、一般的には二軸延伸して製造される。二軸延伸は、同時二軸延伸であっても、逐次二軸延伸であってもよい。
【0010】
ポリアミド系フィルムとアルミニウム箔とを接着する第一接着剤としては、従来公知のものが用いられるが、一般的にポリウレタン系接着剤が用いられる。第一接着剤の厚さは3〜7μm程度であり、一般的に5μm程度である。
【0011】
アルミニウム箔も、従来公知のものが用いられるが、一般的に厚さが40〜50μm程度のものが用いられる。アルミニウム箔の合金組成も、従来公知のものが用いられるが、特に合金番号8079又は8021のものが用いられる。
【0012】
アルミニウム箔とポリ塩化ビニル系フィルムとを接着する第二接着剤としても、従来公知のものが用いられるが、一般的にポリウレタン系接着剤が用いられる。特に、第二接着剤は前記した第一接着剤と同一のものを用いるのが好ましい。第二接着剤の厚さも3〜7μm程度であり、一般的に5μm程度である。特に、第二接着剤の厚さは、第一接着剤の厚さと同一にするのが好ましい。
【0013】
ポリ塩化ビニル系フィルムは、熱封緘層として用いられるものであり、従来公知のものが用いられる。ポリ塩化ビニル系フィルムの厚さは、50〜70μm程度のものが用いられ、特に60μm程度のものが好ましく用いられる。
【0014】
本発明に係るアルミニウム箔製包装材料は、前記した、ポリアミド系フィルム,第一接着剤,アルミニウム箔,第二接着剤及びポリ塩化ビニル系フィルムの順に積層された積層体で構成されているものである。そして、この積層体は、その縦方向、横方向、45°方向及び135°方向のいずれの方向においても、その伸びが100〜140%の範囲内となるように設計されてなるものである。かかる積層体は、一般的に長尺状の巻物として提供されるものであり、縦方向とは長手方向のことを意味している。また、横方向とは幅方向のことであり、前記長手方向と直交する方向のことを意味している。45°方向というのは、縦方向と横方向の中間であって右斜め方向のことである。また、135°方向というのは、縦方向と横方向の中間であって左斜め方向のことである。かかる各方向の伸びを測定するには、各方向が長手方向となる短冊片を採取して、この短冊片を引張試験機にて長手方向に引っ張ればよい。なお、ここでいう伸び(%)とは、[(破断時の短冊辺の長さ−当初の短冊片の長さ)/当初の短冊片の長さ]×100で表されるものである。また、この伸びは後記するLのことでもある。
【0015】
積層体の伸びが100%未満であると、成形性が悪く、成形時に割れが生じるので、好ましくない。また、積層体の伸びが140%を超えると、成形後において、所定の形状と異なる形状に変形しやすくなるので、好ましくない。
【0016】
さらに、積層体のいずれの方向においても、ΔEの値が0.50〜0.65の範囲内となるように設計されている。ここで、ΔEとは、(S−P)/(L−0.2)で算出されるものであり、Sは破断時の応力(N/mm2)、Pは0.2%耐力(N/mm2)、Lは前記した伸び(%)を表している。Sは、前記した短冊片を引張試験機に掛けて短冊片が破断するときの荷重を読み取れば計算により、得られるものである。また、Pは、前記した短冊片を引張試験機に掛けて引張試験を行ない、短冊片が0.2%伸びたときの荷重を読み取れば計算により得られるものである。ここで、耐力を0.2%時の耐力としたのは、本発明で用いるアルミニウム箔の耐力は、一般的に0.2%伸びたときの応力に一致するからである。Lは前記した方法で得られる。なお、式中の0.2というのは、耐力に対応する伸びを表している。したがって、本発明で用いるΔEは、積層体の耐力を超えた後におけるS−S曲線の傾きに相当するのである。
【0017】
積層体のΔEの値が、0.50未満であると、成形後において、変形しやすくなるので、好ましくない。また、積層体のΔEの値が0.65を超えると、成形時に割れが生じるので、好ましくない。
【0018】
本発明に係るアルミニウム箔製包装材料は従来公知の包装体として成形しうるものである。特に、本発明に係るアルミニウム箔製包装材料は、プレススルーパック包装の容器本体として良好に成形しうるものである。本発明に係るアルミニウム箔製包装材料をプレススルーパック包装の容器本体のみに使用し、蓋材として従来公知の硬質アルミニウム箔を用いて、プレススルーパック包装を得ることができる。また、凹部を成形した本発明に係るアルミニウム箔製包装材料を二枚準備し、凹部を合致させて、その合致した凹部に錠剤等を収納した包装体としてもよい。なお、錠剤等を収納した後に、二枚の成形されたアルミニウム箔包装材料は、熱封緘層によって接着されることはいうまでもない。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るアルミニウム箔製包装材料は、縦方向、横方向、45°方向及び135°方向のいずれの方向においても、その伸びが100〜140%の範囲内であり、かつ、ΔEが0.50〜0.65の範囲内となっているので、成形時に割れが生じにくく、かつ、成形後において変形しにくいという効果を奏する。
【実施例】
【0020】
実施例1
45μmの厚さのアルミニウム箔(合金番号8021)を準備した。このアルミニウム箔の片面に、ポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製、品番「TM−K55」)を乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布した後、チューブラー法で得られた厚さ25μmのナイロンフィルム(出光ユニテック社製、商品名「ユニロンG−100」)を接着した。一方、前記アルミニウムの他面に、ポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製、品番「TM−K55」)を乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布した後、厚さ60μmのポリ塩化ビニルフィルム(住友ベークライト社製、品番「VSS−6701」)を接着した。以上のようにして、厚さ25μmのナイロンフィルム/厚さ5μmのポリウレタン系接着剤/厚さ45μmのアルミニウム箔/厚さ5μmのポリウレタン系接着剤/厚さ60μmのポリ塩化ビニルフィルムの順に積層された積層体を得た。
【0021】
実施例2
チューブラー法で得られた厚さ25μmのナイロンフィルム(出光ユニテック社製、商品名「ユニロンG−100」)に代えて、テンター法で得られた厚さ25μmのナイロンフィルム(ユニチカ社製、品番「A699−2」)を用いる他は、実施例1と同一の方法で積層体を得た。
【0022】
比較例1
チューブラー法で得られた厚さ25μmのナイロンフィルム(出光ユニテック社製、商品名「ユニロンG−100」)に代えて、チューブラー法で得られた厚さ25μmのナイロンフィルム(興人社製、商品名「ボニールRX」)を用いる他は、実施例1と同一の方法で積層体を得た。
【0023】
比較例2
チューブラー法で得られた厚さ25μmのナイロンフィルム(出光ユニテック社製、商品名「ユニロンG−100」)に代えて、テンター法で得られた厚さ25μmのナイロンフィルム(ユニチカ社製、商品名「EMBLEM ON」)を用いる他は、実施例1と同一の方法で積層体を得た。
【0024】
[積層体の物性評価]
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で得られた積層体につき、縦方向、横方向、45°方向及び135°方向の物性を、引張試験機を用いて測定した。この結果を表1に示した。
【0025】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
L S P ΔE
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 縦方向 124.1 81.4 19.4 0.50
横方向 102.5 80.7 17.7 0.62
45°方向 131.5 83.8 18.0 0.50
135°方向 122.8 87.3 18.2 0.56
───────────────────────────────────
実施例2 縦方向 134.7 86.6 18.9 0.50
横方向 102.4 84.1 17.5 0.65
45°方向 110.5 89.4 18.1 0.65
135°方向 120.5 87.3 17.7 0.58
───────────────────────────────────
比較例1 縦方向 145.8 79.3 17.8 0.42
横方向 125.2 77.8 16.1 0.49
45°方向 138.0 80.5 16.2 0.47
135°方向 128.3 77.8 16.2 0.48
───────────────────────────────────
比較例2 縦方向 82.2 79.9 19.7 0.73
横方向 83.0 75.9 18.7 0.69
45°方向 108.1 72.2 19.0 0.49
135°方向 94.4 84.2 18.8 0.69
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0026】
[積層体の評価]
(1)積層体の成形性:10mmφの雄型を用いてプラグアシスト成形を行い、一枚の積層体に深さ約3mmのポケットを一定間隔を置いて成形したとき、各ポケットを構成している積層体に割れが生じるか否かを目視により、評価した。
(2)成形後における変形性:上記(1)で成形した成形体を二枚準備し、各ポケットが噛み合うように重ねた。この重ねたものを、さらに5枚(合計10枚)重ねて、表裏から手で押さえつけた。この後、一枚ずつ成形体を剥がして、各ポケットの天面に変形が生じているかいなかを目視により、評価した。
【0027】
この結果、実施例1及び2に係る積層体は、ポケットにおいて割れが確認できず、また、ポケットの天面の変形も確認できないものであった。これに対して、比較例1に係る積層体は、ポケットにおいて割れは殆ど確認できなかったが、ポケットの天面に変形が確認された。比較例2に係る積層体は、ポケットの天面の変形は殆ど確認されなかったが、ポケットにおいて割れが確認された。