特許第6227405号(P6227405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227405充填状況探査方法および充填状況探査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227405
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】充填状況探査方法および充填状況探査装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/08 20060101AFI20171030BHJP
   G01N 25/72 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   E04G21/08
   G01N25/72 K
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-272902(P2013-272902)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-127475(P2015-127475A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】横澤 祐希
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−057369(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/030327(WO,A1)
【文献】 特開昭63−042457(JP,A)
【文献】 特開平05−203596(JP,A)
【文献】 特公平07−068765(JP,B2)
【文献】 特開2013−053492(JP,A)
【文献】 特開2005−098855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/08
G01N 25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠内のコンクリートに対して振動を付与するとともに、前記型枠内のコンクリートの充填状況を確認する充填状況探査方法であって、
前記型枠の外面の温度をサーモカメラにより測定する作業と、
前記型枠の外面の振動をレーザドップラ振動計により測定する作業と、
前記温度および前記振動に含まれる振動数を画像化する作業と、
画像化処理された温度および振動数の画像を表示手段に表示する作業と、
表示された前記画像に基づいて前記型枠内のコンクリートの充填状況を評価する作業と、を行うことを特徴とする充填状況探査方法。
【請求項2】
型枠内のコンクリートの充填状況を確認する充填状況探査装置であって、
前記型枠の外面の温度を測定するサーモカメラと、
前記型枠の外面の振動を測定するレーザドップラ振動計と、
前記温度および前記振動に含まれる振動数を画像化処理する処理手段と、
画像化処理された前記温度および前記振動数の画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする、充填状況探査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの充填状況を確認するための充填状況探査方法および充填状況探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物では、硬化後のコンクリートの品質を確保するために、型枠内での打設不良が生じることのないように高品質に施工を行う必要がある。
【0003】
一方、打設したフレッシュコンクリートの充填状況は目視では確認することはできない。
そのため、従来は、木槌等により型枠を打撃することで、感覚的に充填不良部を探査していた。
【0004】
ところが、人力による探査は、叩き漏れ等によるミスが生じることがないように慎重に行う必要がある。また、作業員が感覚的に行うため品質にばらつきが生じるおそれがある。さらに、大規模な構造物の施工の場合には、作業員を多く確保する必要があるため、施工費が高価になる。
【0005】
そのため、特許文献1には、コンクリートの充填状況を確認する際の人為的ミスの削減と省力化を図ることを目的として、型枠の外面温度をサーモグラフィにより撮影し、撮影された温度分布画像に基づいて、コンクリートの未充填箇所を検出する充填状況探査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−57369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
温度分布画像による未充填箇所の検出は、打設コンクリートの温度と、未充填箇所(気温)との温度差を確認することにより行うが、打設コンクリートの温度と、外気の温度との温度差が小さい場合には、コンクリートの充填状況を正確に把握することができなかった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、気象条件等の影響を受けることなく、安定して高精度に打設コンクリートの充填性の確認を行うことが可能な充填状況探査方法および充填状況探査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の充填状況探査方法は、型枠内のコンクリートに対して振動を付与するとともに、前記型枠内のコンクリートの充填状況を確認するものであって、前記型枠の外面の温度をサーモカメラにより測定する作業と、前記型枠の外面の振動をレーザドップラ振動計により測定する作業と、前記温度および前記振動に含まれる振動数を画像化する作業と、画像化処理された温度および振動数の画像を表示手段に表示する作業と、表示された前記画像に基づいて前記型枠内のコンクリートの充填状況を評価する作業とを行うことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の充填状況探査装置は、型枠内のコンクリートの充填状況を確認するものであって、前記型枠の外面の温度を測定するサーモカメラと、前記型枠の外面の振動を測定するレーザドップラ振動計と、前記温度および前記振動に含まれる振動数を画像化処理する処理手段と、画像化処理された前記温度および前記振動数の画像を表示する表示手段とを備えることを特徴としている。
【0011】
かかる充填状況探査方法および充填状況探査装置では、型枠の温度に加えて、型枠の振動数により打設コンクリートの充填状況を確認するため、周囲の気温等に影響を受けることなく、高精度にコンクリートの充填状況を把握することができる。
また、画像化処理された型枠の温度と振動数により、型枠内の打設コンクリートの充填状況を可視化することが可能となるため、人為的なミスを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の充填状況探査方法および充填状況探査装置によれば、気象条件等の影響を受けることなく、安定して高精度にコンクリートの充填性の確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る充填状況探査装置を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る充填状況探査方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態では、型枠2内に打設されたコンクリート3の充填状況を確認するための充填状況探査装置1および充填状況探査方法について説明する(図1および図2参照)。
【0015】
本実施形態の充填状況探査装置1は、図1に示すように、サーモカメラ11と、振動測定器12と、処理手段13と、表示手段14とを備えている。
【0016】
サーモカメラ11は、型枠2の外面の温度を非接触により測定する。
サーモカメラ11は処理手段13に接続されており、サーモカメラ11から出力された画像データは、処理手段13に送信される。
【0017】
振動測定器12は、型枠2の外面の振動を時刻暦で測定する。振動測定器12は、非接触式である。
振動測定器12は処理手段13に接続されており、振動測定器12により測定された振動に関するデータは処理手段13に送信される。
【0018】
本実施形態の振動測定器12は、型枠を撮影するカメラ15と、カメラ15により撮影された振動に関するデータから振動数の検出や振幅の測定を行う測定器本体16とを有している。
なお、振動測定器12は、型枠2の振動を非接触により測定することが可能であれば前記のものに限定されるものではなく、例えば、レーザドップラ振動計を使用してもよい。
【0019】
処理手段13は、サーモカメラ11から送信された温度の測定結果および振動測定器12から送信された振動に含まれる振動数の測定結果を画像化処理する。
処理手段13は、図示しない記憶部と演算部とを有している。
【0020】
サーモカメラ11から送信された温度データおよび、振動測定器12から送信された振動データは、記憶部に記憶される。また、演算部は、これらの温度データおよび振動データを画像化処理する。
【0021】
また、処理手段13は表示手段14に接続されている。そして、処理手段13により画像化された温度および振動数は、表示手段14に送信される。
【0022】
表示手段14は、処理手段13により画像化処理された温度および振動数の画像を表示する。
作業員は、型枠2内のコンクリート3の充填状況を、表示手段14に表示された温度および振動数(型枠2の外面における温度および振動数の変化)の画像により視認することができる。
【0023】
以下、充填状況探査装置1を利用した充填状況探査方法について説明する。
本実施形態の充填状況探査方法は、型枠2内に打設されたコンクリート3に対して、バイブレータ4により振動を与えながら型枠2内のコンクリート3の充填状況を確認するものである。
【0024】
充填状況探査方法は、図2に示すように、温度測定作業S1と、振動数測定作業S2と、画像化処理作業S3と、充填状況評価作業S4とを備えている。
【0025】
温度測定作業S1は、型枠2の外面の温度をサーモカメラ11により測定する作業である。
サーモカメラ11による測定結果は、処理手段13に送信されて、処理手段13の記憶手段にコンクリート打設後の経過時間とともに記憶される。
【0026】
サーモカメラ11がコンクリート3の温度と周囲の温度との温度差を検知することで型枠2内のコンクリート3の空隙の有無を確認する。
【0027】
サーモカメラ11による温度測定は、型枠2の外面全体に対して行うのが望ましいが、打設したコンクリート3が回り込みにくい部分(型枠2の角部等)のみに対して行ってもよい。
【0028】
振動数測定作業S2は、型枠2の外面の振動を非接触式の振動測定器12により測定する作業である。
振動測定器12による測定結果は、処理手段13に送信されて、処理手段13の記憶手段にコンクリート打設後の経過時間とともに記憶される。
【0029】
振動測定器12は、コンクリート3を介して型枠2の表面に伝達されたバイブレータ4の振動を測定する。
振動測定器12による振動数の測定は、サーモカメラ11による温度の測定点(測定範囲)と同じ測定点(温度の測定範囲内に設定した複数の測定点)に対して行う。
【0030】
バイブレータ4の振動はコンクリート3により伝達されるため、型枠2のコンクリート3が接している部分と接していない部分とでは、型枠2の外面における振動数が変化する。
そのため、振動測定器12による型枠2の外面の振動数を測定することにより、コンクリート3の空隙の有無を確認することができる。
【0031】
画像化処理作業S3は、型枠2の外面の温度および振動数を処理手段13により画像化する作業である。
処理手段13を起動させると、記憶手段に記憶されている型枠2の外面の温度および振動の測定結果を読み出し、当該温度の測定結果および振動に含まれる振動数を画像化する。
【0032】
画像化された温度および振動数の画像データは、記憶手段に測定日時毎に記憶するとともに、表示手段14に送信する。
【0033】
充填状況評価作業S4は、型枠2内のコンクリート3の充填状況を評価する作業である。
充填状況の評価は、表示手段14に表示された温度および振動数の画像(いわゆるサーモグラフィック等)に基づいて、型枠2内のコンクリート3の空隙の有無を確認することにより行う。つまり、コンクリート打設後からの経過時間に伴って変化する温度および振動数により、コンクリート3の充填状況を確認する。
【0034】
画像によりコンクリート3の充填完了が確認された場合は、バイブレータ4を移動させるとともに、サーモカメラ11および振動測定器12による測定点(範囲)を変化させて、他の部分に対して温度測定作業S1〜充填状況評価作業S4を実施する。そして、コンクリート3の全体に対して、充填完了を確認したら、バイブレータ4を撤去して、コンクリート3を養生する。
一方、画像によりコンクリート3の空隙が確認された場合は、引き続きバイブレータ4による振動を与え、温度測定作業S1〜充填状況評価作業S4を繰り返し実施する。
【0035】
以上、本実施形態の充填状況探査装置1およびこれを利用した充填状況探査方法によれば、型枠2内のコンクリート3の充填状況を、画像により把握することができるため、作業員の違いによる誤差を抑制することができる。また、評価を行う作業人には、特殊な技能が要求されない。
【0036】
また、型枠2外面の温度に加えて、型枠2外面の振動により評価を行うため、外気の温度とコンクリートの温度との差が小さい場合であっても、安定した測定結果を得ることができる。
【0037】
サーモカメラ11や非接触式の振動測定器12により充填不良部の測定を非接触により行うため、人力により測定を行う従来の方法に比べて、大幅な省力化(人員の削減および測定時間の短縮)を図ることができる。
【0038】
また、振動測定器12による振動数の測定は、バイブレータ4の振動を利用して行うため、ハンマー等により別途振動を加える手間を必要としないため、作業性に優れている。
【0039】
また、型枠2の外面の温度および振動の測定結果を画像化する型枠2内のコンクリート3の充填状況を可視化することが可能となり、人為的なミスを抑制することができる。
そのため、大規模なコンクリート構造物の施工についても、簡易かつ安価に高品質施工を行うことができる。
【0040】
そして、型枠2内のコンクリート3の充填状況を適切に把握することで、高品質施工が可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0042】
本発明の充填状況探査装置および充填状況探査方法が利用可能なコンクリート構造物は限定されない。
また、コンクリートの配合や強度等にも限定されることなく、本発明の充填状況探査装置および充填状況探査方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 充填状況探査装置
11 サーモカメラ
12 振動測定器
13 処理手段
14 表示手段
15 カメラ(振動測定器)
16 測定機本体(振動測定器)
2 型枠
3 コンクリート
4 バイブレータ
図1
図2