(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サーミスタの先端部分が上記したように接着剤を用いて接着固定されてあると、電池セルに対してのサーミスタの接触には接着剤が介在されることとなる。このようにサーミスタの接触が間接的な接触となってしまうと、サーミスタによる電池セルの温度検出の精確さが損なわれてしまうものとなりかねない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、電動工具の電源として該電動工具の工具本体に着脱可能にされる電動工具用電池パックにおいて、電池セルに対するサーミスタの接触をより直接的な接触とさせるようにして、サーミスタによる温度検出の精確さをより高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するにあたって、本発明に係る電動工具用電池パックは次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明に係る電動工具用電池パックは、電動工具の電源として該電動工具の工具本体に着脱可能にされる電動工具用電池パックであって、ケースと、該ケース内に装置される電池本体とを有し、前記電池本体は、充放電可能な複数の電池セルを収容するセルホルダを備え、前記セルホルダと前記電池セルとの間には、前記セルホルダ側から順に、シート状の介在部材と、温度に依存して電気抵抗が変わる温度検出素子と、が配置されており、前記温度検出素子は、前記セルホルダと前記介在部材とによる支持を受けて、前記電池セルに対して弾性を有して当接されている、ことを特徴とする。なお、本発明に係る『電池セルに対して弾性を有して当接されている』とする『弾性』の性質とは、ほんの僅かでも弾性復元する性質を意味する。つまり、このような『弾性』の性質には、経年の性質劣化や圧縮固定の状況などにより、電池セルを組み付けた組付け当初には有していた弾性の性質が損なわれていたり失われていたりする場合を含む。このような弾性の性質が損なわれていたり失われていたりする性質の成形部材には、時間経過後で見るとあたかも塑性変形されたような形状硬化の性質を有するものもある。しかしながら、本発明に係る『弾性』の性質には、電池セルが組み付けられる組付け当初の性質が、ほんの僅かでも弾性復元可能な性質を有していれば足りるものとされる。
【0008】
この第1の発明に係る電動工具用電池パックによれば、温度検出素子はセルホルダと介在部材とによる支持を受けて電池セルに対して弾性を有して当接されているので、この温度検出素子を弾性を有して接触対象に当接可能な部位に設定することができる。これによって、温度検出素子を電池セルに直接接触させておくことができて、温度検出素子による温度検出の精確さをより高めることができる。なお、この介在部材としては、適宜のシート状の部材を選択することができる。例えば、介在部材自身は、母材に弾性を有する樹脂が選択されて形成されるものであってよい。また、セルホルダ自身が、弾性を有する材料で成形されるものであってもよい。ちなみに、介在部材の母材が弾性を有する樹脂からなる場合には、セルホルダを成形する際の成形形状の簡素化を図ることができ、電動工具用電池パックの製造において有利となる。なお、この介在部材としては、僅かでも弾性を有する合成樹脂製のシート状部材であることが好ましく、例えば両面に接着機能が設けられるように両面粘着性を有するシール部材にて構成されるものであってもよい。また、この介在部材の母材としては、ウレタン樹脂やスポンジ樹脂によりシート状に成形されるものであってもよく、シリコンボンドなどによりシート状に成形されるものであってもよい。
【0009】
また、第2の発明に係る電動工具用電池パックは、前記第1の発明に係る電動工具用電池パックにおいて、前記セルホルダは、前記電池セルの外周面に対面されるセル収容部を有しており、前記介在部材は、前記セル収容部に対して配置されている、ことを特徴とする。この第2の発明に係る電動工具用電池パックによれば、介在部材はセルホルダのセル収容部に対して配置されているので、電池セルの外周面に面接触させるように温度検出素子を電池セルに直接接触させることができる。これによって、温度検出素子による温度検出の精確さを高めることができる。
また、第3の発明に係る電動工具用電池パックは、前記第1または前記第2の発明に係る電動工具用電池パックにおいて、前記セルホルダには、該セルホルダに対しての前記介在部材の位置を決めておくための位置決め部が設けられている、ことを特徴とする。この第3の発明に係る電動工具用電池パックによれば、セルホルダにはセルホルダに対しての介在部材の位置を決めておくための位置決め部が設けられているので、位置決め部により介在部材を的確に配置させておくことができる。これによって、温度検出素子の位置も的確な位置とすることができて、温度検出の精確さを高めることができる。
また、第4の発明に係る電動工具用電池パックは、前記第3の発明に係る電動工具用電池パックにおいて、前記位置決め部は、前記介在部材の少なくとも一部を嵌め込むことが可能な凹み部を有している、ことを特徴とする。この第4の発明に係る電動工具用電池パックによれば、位置決め部は介在部材の少なくとも一部を嵌め込むことが可能な凹み部を有しているので、介在部材を凹み部に嵌め込むように取り付けることができる。これによって、介在部材の取付け作業が行い易くなる。
【0010】
また、第5の発明に係る電動工具用電池パックは、前記第4の発明に係る電動工具用電池パックにおいて、前記凹み部の凹み量は、前記介在部材と前記温度検出素子とが重ねられた厚み量よりも小さく設定されており、前記介在部材と前記温度検出素子とが重ねられた厚み量は、前記セルホルダに対して前記電池セルを収容させた場合に、前記介在部材を圧縮して前記凹み部の前記凹み量に近づけられる、ことを特徴とする。この第5の発明に係る電動工具用電池パックによれば、凹み部の凹み量は介在部材と温度検出素子とが重ねられた厚み量よりも小さく設定されているので、介在部材からの当接により温度検出素子を電池セルに向けて押さえさせておくことができる。また、この第5の発明に係る電動工具用電池パックによれば、介在部材と温度検出素子とが重ねられた厚み量は、セルホルダに対して電池セルを収容させた場合に介在部材を圧縮して凹み部の凹み量に近づけられるので、電池セルへの温度検出素子の接触を好ましく押し当てられる接触としながら、この押し当てられる力を大きくし過ぎないようにすることができる。これによって、電池セルに対する温度検出素子の接触を温度検出素子にとって好適な接触とすることができる。
また、第6の発明に係る電動工具用電池パックは、前記第1から前記第5のいずれかの発明に係る電動工具用電池パックにおいて、前記介在部材は、粘着性を有している、ことを特徴とする。この第6の発明に係る電動工具用電池パックによれば、介在部材は粘着性を有しているので、セルホルダに保持され易いものとなる。また、介在部材は温度検出素子も保持し易いものとなる。これによって、セルホルダに対する温度検出素子の相対的な保持がより確実なものとなる。例えば、電動工具用電池パックが振動している場合において、セルホルダに対する温度検出素子の位置ズレを抑制する効果を見込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る電動工具用電池パックを実施するための実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示す符号10は、本発明に係る電動工具に相当するインパクトドライバである。このインパクトドライバ10は、工具本体11に電池パック20が装着されて駆動可能となっている。この電池パック20は、本発明に係る電動工具用電池パックに相当し、インパクトドライバ10の電源としてインパクトドライバ10の工具本体11に着脱可能にされる。つまり、この電池パック20は、充電量が少なくなると工具本体11から取り外されて専用充電器に装着されて充電される。また、専用充電器にて充電が完了した電池パック20は、インパクトドライバ10のような電動工具の電源として再び工具本体11に装着される。なお、工具本体11には、駆動部13とグリップ部14とを有すると共に、次に詳述するバッテリ装着部15を備える。
図2の斜視図は、この工具本体11から電池パック20が取り外された工具本体11の裏側を示している。この工具本体11の下部裏側には、バッテリ装着部15が設けられている。バッテリ装着部15は、スライド装着タイプの電池パック20に対応して構成されている。つまり、バッテリ装着部15は、電池パック20をスライドさせて装着あるいは取外し可能とする構造を有する。具体的には、バッテリ装着部15には、電池パック20のスライドをガイドするレール17と、スライドにより接続される接続端子181と、フック部92を嵌合させる嵌合雌部19と、が設けられている。次に、バッテリ装着部15に装着される電池パック20について説明する。
図3の斜視図は、電池パック20の斜視外観を示している。
図4の平面図は、電池パック20の上面を示している。
図5の分解斜視図は、電池パック20の内部構造を示している。
図6の断面図は、
図4における(VI)-(VI)断面矢視を示している。
図7の断面図は、
図4における(VII)-(VII)断面矢視を示している。なお、電池パック20を説明するにあたり、バッテリ装着部15に装着された際にバッテリ装着部15に対面する方向を上側と規定し、バッテリ装着部15にスライド装着させる際のスライド方向を前側と規定する。
図3〜
図5に示すように、電池パック20は、概略、ケース21と、ケース21内に装置される電池本体30と、スライド装着のための雄フック機構90と、を有する。ケース21は、電池パック20の外装をなしつつ電池本体30を内装する筐体として機能する。このケース21は、上下の2つ割り構造を有して構成される。ケース21は、下側ケース23と上側ケース25とを上下方向に合体して構成される。合体された下側ケース23と上側ケース25とは、
図3に示す螺子部材22を介して合体状態が保持される。このように合体されてなるケース21は、内部に電池本体30を装置可能な箱形空間を形成する。
【0013】
下側ケース23は、
図5〜
図7に示すように、上面が開口された略箱形にて形成される。下側ケース23は、後に説明する電池本体30の電池部31を主として収容する略箱形をなしている。具体的には、下側ケース23は、上下2段で前後5本並列された合計10本の電池セル33を収容可能な前後左右上下方向の寸法を有して形成される。なお、電池本体30の回路基板42については、下側ケース23のから上側に食み出されて上側ケース25の内部に収容可能にされる。上側ケース25は、電池パック20を機器本体(インパクトドライバ10の工具本体11や専用充電器)にスライド装着させる際の接続側の外装をなす。上側ケース25の中間部分には、レール17にガイドされるスライドガイド部26が設けられている。電池パック20の工具本体11のバッテリ装着部15に対してのスライド装着は、レール17にガイドされるスライドガイド部26によりガイドされる。また、上側ケース25には、後に説明するグランド端子441および放電端子442とに、バッテリ装着部15側の接続端子181とを電気的接続を可能とするためのスリット27が設けられている。また、上側ケース25には、後に説明する通信コネクタ45や充電端子461および通信端子462を、不図示の専用充電器側の通信端子および充電端子や工具本体11の通信端子182に対して電気的接続を可能とするための開口部281およびスリット282が設けられている。また、上側ケース25には、雄フック機構90のためのフック用開口部291および操作用開口部292が設けられている。また、上側ケース25には、不図示の専用充電器に装着して充電する際に、ケース21の内部の電池セル33を冷却するための通風口293,294が設けられている。なお、この下側ケース23と上側ケース25とは、螺子部材22により一体に螺子締結されてケース21をなす。
また、雄フック機構90は、電池パック20をバッテリ装着部15に対してスライド装着させた場合に、このバッテリ装着部15に対して取外し可能に嵌合する構造を有している。すなわち、雄フック機構90は、
図5および
図6に示すように、フック形構造体91と、このフック形構造体91を係止方向に付勢する圧縮ばね95とを備える。このフック形構造体91は、嵌合雌部19に嵌合されるフック形状のフック部92と、操作可能な指掛かり形状の操作部93とを備える。このように構成される雄フック機構90は、圧縮ばね95の付勢力により自動的にフック部92をバッテリ装着部15の嵌合雌部19に嵌合させるようになっている。また、圧縮ばね95の付勢力に抗して操作部93を引下げ操作をすると、バッテリ装着部15の嵌合雌部19に対してのフック部92の嵌合を解除することができ、電池パック20をスライドさせて機器本体から取り外すことができる。なお、この圧縮ばね95は、セルホルダ50の上面に突出して設けられる凸柱部561に嵌められて保持されている。
【0014】
次に、上記したケース21の内部に装置される電池本体30について説明する。電池本体30は、上記したケース21の内部に装置される。この電池本体30は、
図5に示すように、電池部31と制御部41とを備える。電池部31は、上下2段で前後5本並列された合計10本の電池セル33を有する。この電池セル33は、広く利用される充放電可能な電池セルであり、具体的にはリチウムイオン電池として形成されている。この電池セル33の外形は円柱形状にて形成されている。
これら10本の電池セル33は、左右方向に延びる横置きで前後方向で並列されている。また、上下2段の5本ずつの電池セル33同士の間にはセパレータ67が介装されている。このセパレータ67は、上下2段で並列される10本の電池セル33同士の間に生ずる間隙を埋めるように形成されている。このように形成されるセパレータ67は、上下2段で並列される10本の電池セル33同士の配置関係を好ましく保持することができる。このようにセルホルダ50およびセパレータ67により保持される10本の電池セル33のそれぞれはの電極34は、左右両側端に位置されるようになっている。これらの電極34のうちプラス電極には、不要な通電を避けるための絶縁シート35が取り付けられている。これらの電池セル33の電極34には、同電位の電極同士を連ねるリード板36が取り付けられている。このリード板36のうち前左側と後右側のリード板36には、回路基板42に接続するための接続端部37が設けられている。この接続端部37は、回路基板42の接続部47に接続される。また、このリード板36の外側には、不要な通電を避けるための絶縁シート39が取り付けられている。このように並列されれる10本の電池セル33は、後に説明するセルホルダ50にて保持される。
【0015】
制御部41は、上記した電池セル33(電池部31)の上側に配置される。この制御部41は、各種の制御処理を行う回路基板42を有する。回路基板42は、マイコンが搭載されてリード板36を介して電池セル33の状態を監視して充放電に関する制御を行う。このため、回路基板42には、リード線48を介してリード板36の上端部分361が電気的に接続されている。また、回路基板42の上面には、グランド端子441、放電端子442、通信コネクタ45、充電端子461および通信端子462が取り付けられている。これらグランド端子441、放電端子442、通信コネクタ45、充電端子461および通信端子462は、工具本体11(バッテリ装着部15)や専用充電器に対して電気的に接続される端子として構成される。なお、通信コネクタ45および通信端子462を介して送受信される信号は、回路基板42の制御処理に基づくものとなっている。この回路基板42による制御処理は、後に説明するサーミスタ70から送られる温度情報などに基づくものとなっている。この回路基板42は、次に説明するセルホルダ50に対して螺子部材43を介して一体に螺子締結されている。つまり、螺子部材43は、回路基板42を挟み込むようにセルホルダ50の雌螺子59に螺子留めされている。
【0016】
図5および
図7に示す符号381は、電池セル33をケース21に収容させておくために下側ケース23の内部に敷かれる緩衝シートである。この緩衝シート381は、弾性を有するスポンジ樹脂にて成形されている。この緩衝シート381は、下側ケース23の内部の底面に設けられる対面配置で対をなす保持円弧リブ231によって保持される。また、この保持円弧リブ231同士の間には、電池セル33の配置を前後で区画する区画リブ232が設けられている。保持円弧リブ231は、電池セル33の外周に対応した内周を有して形成されている。このため、保持円弧リブ231は、電池セル33の外周に追従される半円弧を有して形成される。なお、この保持円弧リブ231は、従前より比して半円弧の径が拡大して設定されている。具体的には、この保持円弧リブ231の高さを従前より比して下げるとともに、この保持円弧リブ231の収容幅(前後幅)を従前より比して長くしている。また、緩衝シート381は、上記したように収容される10本の電池セル33の外周径の長さに応じて変更可能にされている。また、保持円弧リブ231は、収容される10本の電池セル33の外周径の長さが最大になった場合でも収容可能な形状に設定されている。
【0017】
具体的には、収容される10本の電池セル33の外周径の長さが長い場合には、緩衝シート381は薄い厚みのものが選択されて保持円弧リブ231に取り付けられる。これに対して、収容される10本の電池セル33の外周径の長さが短い場合には、緩衝シート381は厚い厚みのものが選択されて保持円弧リブ231に取り付けられる。なお、この緩衝シート381は、上側のセルホルダ50に向けて収容した電池セル33を押圧する作用を有する。なお、このように緩衝シート381の交換に合わせて、セパレータ67も交換するものであってもよい。このように収容される電池セル33の外周径の長さに応じて緩衝シート381が選択可能となっていると、放電容量や製造メーカが相違することなどによる外周径の長さが相違する多様な外周径の長さの電池セル33を収容することができるようになり、電池パック20としての汎用性およびケース21の部品共用化を高めることができる。また、図示符号383は、電池セル33と後に説明するセルホルダ50との間に介装されるフロープレートである。また、図示符号55は、後に詳述する両面テープである。
【0018】
次に、セルホルダ50に回路基板42が組み付けられた基板組付体80について説明する。すなわち、
図8の斜視図は、セルホルダ50の上側斜視を示している。
図9の斜視図は、セルホルダ50の裏側斜視を示している。示す斜視図である。
図10の斜視図は、
図4における(X)-(X)断面矢視を斜視にて示している。
図11の断面図は、
図4における(X)-(X)断面矢視を正面視にて示している。なお、
図10および
図11の丸抜きの拡大箇所は、サーミスタ70の配置箇所が分かり易くなるように示している。
図12〜
図14は、サーミスタ70を貼り付ける工程について順次に示している。すなわち、
図12の斜視図は、基板組付体80の裏側斜視の第1斜視図である。
図13の斜視図は、基板組付体80の裏側斜視の第2斜視図である。
図14の斜視図は、基板組付体80の裏側斜視の第3斜視図である。
セルホルダ50は、上側に回路基板42が螺子部材43に介して螺子締結されつつ、下側に10本の電池セル33を収容可能に構成される。すなわち、
図8および
図9に示すようにセルホルダ50は、下側および左右両側が開口されるケース形を有して形成されている。このセルホルダ50をなすケース形としては、下側に電池セル33を収容可能とする収容構造と、下側に収容された電池セル33と連絡可能とする連絡構造と、上側に回路基板42を固定保持しつつケース21に収容されるための固定構造と、が設けられている。
【0019】
具体的には、セルホルダ50は、上側の上壁部510と、前側の前壁部511と、後側の後壁部512とを連接させるようにして形成される。上壁部510は、下側に電池セル33を収容可能とするセル収容部52を有して形成される。このセル収容部52は、電池セル33の外周面331(
図10の丸抜き図参照)に対面される曲面形状を有する。具体的には、セル収容部52は、電池セル33の外周面331の円形凸曲面に対応した円形凹曲面の形状を有して形成される。逆に言えば、上壁部510は、この下側のセル収容部52と上側の回路基板42とを隔てる隔壁のように形成される。また、前壁部511は、上壁部510の前端縁から下側に延びるように形成されている。この前壁部511は、上壁部510に設けられるセル収容部52と下側ケース23とを隔てる隔壁のように形成される。また、後壁部512も、上壁部510の後端縁から下側に延びるように形成されている。この後壁部512も、上壁部510に設けられるセル収容部52と下側ケース23とを隔てる隔壁のように形成される。
電池セル33を下側に収容可能とするセルホルダ50の収容構造としては、電池セル33の外形に対応したセル収容部52を設けることにより形成されている。このセル収容部52は、電池セル33を左右方向に延ばした横置きできる収容形状を有する。このセル収容部52は、前後に5本で並列される電池セル33を収容できるように、前後に5つ並列して設けられている。言い換えれば、この前後に5つ並列されるセル収容部52同士の間には、山形をなする凸条部53が4つ設けられている。この凸条部53は、前後両側にセル収容部52が設けられるように左右方向で延ばされた凸条をなしている。
【0020】
また、このようにセル収容部52に収容された電池セル33と連絡可能とするセルホルダ50の連絡構造としては、上壁部510に上下に通じる開口形状を設けることにより形成される。具体的には、図示符号571,572は、上記したリード板36接続端部37を回路基板42の接続部47に接続するための接続用開口部である。この接続用開口部571,572は、リード板36接続端部37に対応してセルホルダ50の一部を適宜に切り欠くことにより設けられている。また、図示符号581,582は、ケース21の内部の電池セル33を冷却するための通気用開口部である。この通気用開口部581,582は、上側ケース25に設けられる通風口293,294に対応して設けられている。また、図示符号562は、回路基板42に取り付けられた通信コネクタ45を露出可能とする露出用開口部である。
また、回路基板42を上側に固定保持する構造としては、位置決め突出部591と、位置決めリブ515と、掛止フック516とを備える。位置決め突出部591は、左右方向で2つ並列され、上側に突き出されるようにして設けられている。この2つの位置決め突出部591は、通信コネクタ45の両脇近くの回路基板42に嵌め込まれて、セルホルダ50に対する回路基板42の相対位置を決める。位置決めリブ515は、上壁部510の上面外周近くの適宜箇所にて上側に突き出されるようにして設けられている。このように突き出される位置決めリブ515は、セルホルダ50に対しての回路基板42の相対位置を決めるように回路基板42の外周端縁に当接する。掛止フック516は、適宜のフック形状を有して形成される。この掛止フックは、セルホルダ50に回路基板42を一体にするように回路基板42に係止する。また、この上壁部510の上面には、回路基板42を螺子留めするための雌螺子59が2箇所設けられている。この雌螺子59には、回路基板42を挟み込んで螺子部材43を螺子留めできるように形成されている。また、図示符号513は、セルホルダ50に回路基板42を螺子締結させた状態で下側ケース23にガタツキなく収容する左右ガイド支持部である。この左右ガイド支持部513は、上壁部510の左右両側端縁のそれぞれに下側に突き出されて形成され、下側ケース23の左右両側の内周面と摺接する。
【0021】
ところで、このセルホルダ50の裏側には、両面テープ65を取り付けるためのテープ取付部60が設定されている。このテープ取付部60は、円形凹曲面をなす上記したセル収容部52に対して設定されている。具体的には、このテープ取付部60が設定されるセル収容部52は、前後5つ並列されるセル収容部52のうち、後側2つ目となるセル収容部52の1つに対して設定されている。このテープ取付部60が設定されるセル収容部52箇所は、テープ取付部60が設定されていないセル収容部52箇所と比較して、一段下げられるように凹んで形成される。具体的には、テープ取付部60が設けられるセル収容部52の箇所は、テープ取付部60が設けられていないセル収容部52の箇所と比較して、一段下げられるような凹まされた形状で成形されることにより凹み部をなす段差部63が設けられて形成される。つまり、この段差部63によってセル収容部52を一部区画するように周囲と隔てさせ、このセル収容部52にテープ取付部60が設定されるものとなっている。このように区画する段差部63は、外部から目視確認できるようになっており、セルホルダ50に対して貼り付ける両面テープ65の位置を決めておくための位置決め部として機能する。つまり、この段差部63は本発明に係る位置決め部に相当し、この段差部63により設定されるテープ取付部60に対して両面テープ65の貼付けを可能とする位置決めの作用を有する。また、本発明に係る位置決め部としては、図示符号641,642も相当する。すなわち、図示符号641は、両面テープ65を貼り付ける際の位置合わせ可能な位置決め切欠き部である。この位置決め切欠き部641は、テープ取付部60に両面テープ65を貼り付ける場合の両面テープ65の端縁の位置合わせ箇所として形成されている。具体的には、目視確認が可能にセルホルダ50を一部切り欠いて形成される。また、図示符号642は、両面テープ65を貼り付ける際の位置合わせ可能な段差側面部である。この段差側面部642は、テープ取付部60に両面テープ65を貼り付ける場合の両面テープ65の端縁の位置合わせ箇所としても設定可能である。具体的には、段差側面部642は、段差部63が設けられることにより形成される段差連接部分で設定されており、テープ取付部60の箇所を斜視することによって目視確認可能となっている。また、このテープ取付部60の後端部分には、セルホルダ50を上下に貫通する端子接続孔61が設けられている。この端子接続孔61は、サーミスタ70のサーミスタ端子77が挿通される。
【0022】
この段差部63により通常のセル収容部52と区画されるテープ取付部60は、両面テープ65の全部を嵌め込むことが可能な凹み形状を有している。このテープ取付部60の凹み量は、次に説明する両面テープ65とサーミスタ70とが重ねられる厚み量(合計の厚みの長さ)に対応して設定されている。具体的には、テープ取付部60の凹み量は、段差部63の段差量(段差の高さ)と一致するが、この段差部63の段差量は、両面テープ65とサーミスタ70とが重ねられる厚み量よりも小さく設定されている。このため、次にも説明するが、このテープ取付部60に両面テープ65とサーミスタ70とを貼り付けた場合には、このサーミスタ70の部分だけが、通常のセル収容部52の周面よりも僅かながら電池セル33側に突き出されるようになっている。なお、段差部63の段差量は、両面テープ65の厚み量よりも大きく設定されている。このため、テープ取付部60に貼り付けられた両面テープ65の電池セル33の対面部分は、通常のセル収容部52の周面よりも僅かに凹まされて位置されるようになっている。
上記したように設定されるテープ取付部60には、両面テープ65とサーミスタ70とが、この順序でセルホルダ50側から電池セル33側に向けて順に貼り付けられる。
【0023】
両面テープ65は、本発明に係るシート状の介在部材に相当するものであり、僅かでも弾性を有する合成樹脂製のシート状部材である。この両面テープ65は、両面に接着機能が設けられるように両面粘着性を有するシール部材にて構成されている。すなわち、両面テープ65は、通常の両面テープと同様、シート状に形成された弾性を有する母材に対して、両面に粘着性が設けられるようにして形成される。このため、両面テープ65は、母材が有する弾性により僅かならも弾性変形可能に形成されている。具体的には、両面テープ65は、厚みの縮み方向で圧縮による弾性変形可能になっていると共に、圧縮による弾性変形後に弾性復元可能になっている。また、両面に設けられる粘着性は、両面の一面として上側面をテープ取付部60に貼り付けることができ、両面の他面として下側面にサーミスタ70を貼り付けることができる。
サーミスタ70は、このサーミスタ70は、温度に依存して電気抵抗が変わるフィルム型サーミスタセンサとして構成される。すなわち、サーミスタ70は、いわゆる薄型のフィルム状に形成されるサーミスタであり、電子機器のサーミスタとして広く利用されているものである。具体的には、
図14に示すように、導線73の一端部となる先端には素子71が配置され、導線73の他端部は回路基板42に半田付けされて電気的に接続されている。なお、サーミスタ70の素子71は、本発明に係る温度検出素子に相当する。この素子71と導線73とは、フィルム材75により被覆されている。また、
図10の丸抜き図に示すように、サーミスタ70のサーミスタ端子77は、セルホルダ50に設けられる端子接続孔61に挿通されて回路基板42と電気的に接続される。
ここで素子71は、温度に依存して電気抵抗が変化し、変化した素子71の電気抵抗は導線73を介して回路基板42にて計測される。電気抵抗を計測した回路基板42は、この計測した電気抵抗に基づいて素子71の接触箇所の温度として算出し、適宜の制御処理を行うものとなっている。なお、この適宜の制御処理としては、上記した工具本体11に対して放電を停止する旨の信号送信処理や、不図示の専用充電器に対して充電を停止する旨の信号送信処理などがある。
【0024】
このように両面テープ65に貼り付けられたサーミスタ70は、両面テープ65が有する弾性を介することによって、セルホルダ50にて弾性支持されるものとなっている。言い換えれば、サーミスタ70は、セルホルダ50のテープ取付部60に貼り付けられた両面テープ65からの支持を受けて、電池セル33に対して弾性を有して当接されるようになっている。なお、この両面テープ65とサーミスタ70とが取り付けられるテープ取付部60は、電池セル33の外周面331に沿った曲面を有している。つまり、両面テープ65とサーミスタ70とが重ねられた厚み量は、セルホルダ50に対して電池セル33を保持させた場合に、電池セル33の外周面331に当てられる。このように電池セル33の外周面331が当てられた両面テープ65とサーミスタ70とは、この両面テープ65を弾性変形させる。すなわち、この両面テープ65を厚みの縮み方向で圧縮による弾性変形をさせ、この両面テープ65とサーミスタ70とが重ねられた厚み量は、段差部63の段差量に近づけられる。つまり、サーミスタ70の素子71は、通常のセル収容部52の周面と面一に近づけられるまでの位置となり、電池セル33に外周面331に接触することとなる。なお、この際、サーミスタ70の素子71は、両面テープ65の弾性復元力により、電池セル33の外周面331に対して好ましい押圧力で押圧されて接触されるようになっている。言い換えれば、この両面テープ65は、サーミスタ70の素子71を電池セル33の外周面331に向けて好ましく弾性支持する弾性部材としての機能を有すると共に、電池セル33の外周面331からサーミスタ70の素子71が受ける押圧力を好ましく緩衝させる緩衝部材としての機能も有する。
【0025】
上記したように構成される電池パック20によれば、次のような作用効果を奏することができる。すなわち、上記した電池パック20によれば、サーミスタ70の素子71はセルホルダ50と両面テープ65とによる支持を受けて、電池セル33に対して両面テープ65の弾性支持力を有して当接されている。これによって、このサーミスタ70の素子71を弾性を有して電池セル33に当接可能な部位に設定することができて電池セル33に直接接触させておくことができる。したがって、サーミスタ70の素子71による温度検出の精確さをより高めることができる。また、上記した電池パック20によれば、両面テープ65はセルホルダ50のセル収容部52の円形凹曲面の形状に対応して貼り付けられるものである。このため、テープ取付部60は、セル収容部52の円形凹曲面の形状に沿って形成されている。これによって、電池セル33の外周面331に面接触させるようにサーミスタ70の素子71を電池セル33に直接接触させることができる。したがって、サーミスタ70の素子71による温度検出の精確さを高めることができる。また、上記した電池パック20によれば、セルホルダ50にはセルホルダ50に対しての両面テープ65の位置を決めておくための段差部63が設けられているので、段差部63により両面テープ65を的確に配置させておくことができる。これによって、サーミスタ70の素子71の位置も的確な位置とすることができて、温度検出の精確さを高めることができる。また、上記した電池パック20によれば、段差部63は両面テープ65を嵌め込むことが可能な円形凹曲面の形状を有しているので、両面テープ65を嵌め込むように取り付けることができる。これによって、両面テープ65の取付け作業が行い易くなる。また、上記した電池パック20によれば、テープ取付部60の凹み量は両面テープ65とサーミスタ70の素子71とが重ねられた厚み量よりも小さく設定されているので、両面テープ65からの当接によりサーミスタ70の素子71を電池セル33に向けて押さえさせておくことができる。
【0026】
また、上記した電池パック20によれば、段差部63は両面テープ65の端縁を位置合わせ可能な段差側面部642を有しているので、両面テープ65を段差側面部642に位置合わせるようにして取り付けることができる。これによって、両面テープ65の取付け作業が行い易くなる。また、上記した電池パック20によれば、両面テープ65とサーミスタ70の素子71とが重ねられた厚み量は、セルホルダ50に対して電池セル33を収容させた場合に両面テープ65を圧縮してテープ取付部60の凹み量に近づけられるので、電池セル33へのサーミスタ70の素子71の接触を好ましく押し当てられる接触としながら、この押し当てられる力を大きくし過ぎないようにすることができる。これによって、電池セル33に対するサーミスタ70の素子71の接触をサーミスタ70の素子71にとって好適な接触とすることができる。また、上記した電池パック20によれば、両面テープ65は両面に粘着性を有しているので、セルホルダ50に保持され易く、さらにサーミスタ70の素子71も保持し易いものとなる。これによって、セルホルダ50に対するサーミスタ70の素子71の相対的な保持がより確実なものとなる。例えば、電池パック20が振動している場合において、セルホルダ50に対するサーミスタ70の素子71の位置ズレを抑制する効果を見込むことができる。
【0027】
なお、本発明に係る電動工具用電池パックにあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、次のように適宜個所を変更して構成するようにしてもよい。すなわち、上記した実施の形態にあっては、電池セルが上下2段で前後5本並列された合計10本に設定されるものであったが、これに限定されることなく、適宜の本数に設定されるものであってよい。また、本発明に係る『電池セルに対して弾性を有して当接されている』とは、上記した両面テープ65による弾性支持の構成に限定されるものではないことを意味する。すなわち、この弾性を有して当接される構成としては、例えばセルホルダ50自身により弾性を有して当接される構成とするものであってもよい。また、本発明に係る介在部材としては、母材に弾性を有する樹脂が選択され、適宜に変形可能な厚み量があることが望ましい。なお、この介在部材の母材としては、ウレタン樹脂、スポンジ樹脂、シリコンボンドなど、適宜の合成樹脂が選択されるものであってよい。