特許第6227424号(P6227424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227424石定盤、石定盤の加工方法、石定盤の製造方法および基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227424
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】石定盤、石定盤の加工方法、石定盤の製造方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20171030BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20171030BHJP
   B23K 26/10 20060101ALN20171030BHJP
   B05C 13/00 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   B23K26/00 G
   !B23K26/10
   !B05C13/00
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-6691(P2014-6691)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-209553(P2014-209553A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-66081(P2013-66081)
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100163175
【弁理士】
【氏名又は名称】村口 佐智子
(72)【発明者】
【氏名】池田 文彦
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−093002(JP,A)
【文献】 特開2004−088077(JP,A)
【文献】 特表2011−519338(JP,A)
【文献】 特開2006−140230(JP,A)
【文献】 米国特許第06068891(US,A)
【文献】 特開2011−168422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23K 26/00
B05C 13/00
B23K 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されることにより膨張する材料を含む材質から構成された石定盤であって、レーザ光を照射することで膨張した材料により形成された凸部を有することを特徴とする石定盤。
【請求項2】
請求項1に記載の石定盤において、
当該石定盤は、加熱されることにより膨張する石英を含む花崗岩から構成される石定盤。
【請求項3】
請求項2に記載の石定盤において、
レーザ光を、波長を10600nm、出力を20Wから25W、石定盤の表面に対する走査速度を1000mm/secから1250mm/secの条件で石定盤に照射することで膨張した石英により凸部が形成される石定盤。
【請求項4】
請求項2記載の石定盤において、
レーザ光を照射して石定盤の表面を摂氏400度乃至摂氏700度の温度まで上昇させることで膨張した石英により凸部が形成される石定盤。
【請求項5】
加熱されることにより膨張する材料を含む材質から構成された石定盤の加工方法であって、
レーザ光を照射することで膨張した材料により凸部を形成することを特徴とする石定盤の加工方法。
【請求項6】
請求項5に記載の石定盤の加工方法において、
当該石定盤は、加熱されることにより膨張する石英を含む花崗岩から構成される石定盤の加工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の石定盤の加工方法において、
レーザ光を、波長を10600nm、出力を20Wから25W、石定盤の表面に対する走査速度を1000mm/secから1250mm/secの条件で石定盤に照射することで膨張した石英により凸部を形成する石定盤の加工方法。
【請求項8】
請求項6に記載の石定盤の加工方法において、
レーザ光を照射して石定盤の表面温度を摂氏400度乃至摂氏700度の温度まで上昇させることにより、石英を膨張させて凸部を形成する石定盤の加工方法。
【請求項9】
石英を含む花崗岩を平面部を有する定盤状に加工する加工工程と、
前記花崗岩の平面部にレーザ光を照射することにより、石英を膨張させて凸部を形成するレーザ照射工程と、
を備えたことを特徴とする石定盤の製造方法。
【請求項10】
基板を石定盤上に載置して処理する基板処理装置であって、
前記石定盤は、加熱されることにより膨張する材料を含む材質から構成され、
前記基板の載置面に対してレーザ光を照射することで膨張した材料により、当該載置面に形成された凸部を有することを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、石定盤、石定盤の加工方法、石定盤の製造方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基板に対して塗布液を塗布する基板処理装置においては、石定盤の載置面上に吸着保持した基板の表面に沿って、塗布液を吐出するスリットが形成されたスリットノズルを走行させることにより、基板の表面に塗布液を塗布する構成が採用されている(特許文献1参照)。この石定盤における基板の載置面は、高い平面度を有することが要求されている。このような石定盤の材質としては、一般的に、御影石とも呼称される花崗岩が使用される。花崗岩製の石定盤は、剛性、耐磨耗性、耐腐食性を有し、温度の影響も受けにくいという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−93002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような石定盤を長期にわたって使用した場合、石定盤における基板載置面の摩耗や汚れによって、基板載置面が鏡面化するという現象が生ずる。石定盤における基板載置面が鏡面化した場合には、基板をリフトピン等により載置面上から持ち上げるときに、剥離帯電が大きくなり、静電気により基板にダメージを与えるという問題が生ずる。従来は、このような問題に対応するため、石定盤における基板載置面の面粗度が粗くなるような加工を行っている。
【0005】
石定盤の表面の面粗度を粗くするためには、粒度の大きい研磨剤で石定盤の表面を研磨して微細な凹凸を形成する方法や、石定盤をマスキングしてショットブラストを行うことで石定盤の表面を粗面化する方法や、石定盤の表面に細かい溝を形成する方法等が採用されている。しかしながら、いずれの方法を採用した場合においても、石定盤の表面の粗面化した領域に異物がつまることにより、粗面化した面が、再度、鏡面化するという現象が発生している。
【0006】
また、上述したいずれの方法を採用する場合においても、石定盤における基板載置面の平面度を維持したままで面粗度を大きくすることは難しく、必要な面粗度と平面度を両立させることが困難であるという問題が生じていた。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、石定盤の平面度を保ったまま鏡面化を防止することが可能な石定盤、石定盤の加工方法、石定盤の製造方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、加熱されることにより膨張する材料を含む材質から構成された石定盤であって、レーザ光を照射することで膨張した材料により形成された凸部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、当該石定盤は、加熱されることにより膨張する石英を含む花崗岩から構成される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の発明において、レーザ光を、波長を10600nm、出力を20Wから25W、石定盤の表面に対する走査速度を1000mm/secから1250mm/secの条件で石定盤に照射することで膨張した石英により凸部が形成される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2記載の発明において、レーザ光を照射して石定盤の表面を摂氏400度乃至摂氏700度の温度まで上昇させることで膨張した石英により凸部が形成される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、加熱されることにより膨張する材料を含む材質から構成された石定盤の加工方法であって、レーザ光を照射することで膨張した材料により凸部を形成することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、当該石定盤は、加熱されることにより膨張する石英を含む花崗岩から構成される。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の発明において、レーザ光を、波長を10600nm、出力を20Wから25W、石定盤の表面に対する走査速度を1000mm/secから1250mm/secの条件で石定盤に照射することで膨張した石英により凸部を形成する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、レーザ光を照射して石定盤の表面温度を摂氏400度乃至摂氏700度の温度まで上昇させることにより、石英を膨張させて凸部を形成する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、石英を含む花崗岩を平面部を有する定盤状に加工する加工工程と、前記花崗岩の平面部にレーザ光を照射することにより、石英を膨張させて凸部を形成するレーザ照射工程と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、基板を石定盤上に載置して処理する基板処理装置であって、前記石定盤は、加熱されることにより膨張する材料を含む材質から構成され、前記基板の載置面に対してレーザ光を照射することで膨張した材料により、当該載置面に形成された凸部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1から請求項10に記載の発明によれば、レーザ光を照射して加熱することにより得た膨張領域により凸部を形成することで、極めて簡易な構成でありながら、石定盤の平面度を維持したままで、その鏡面化を防止することが可能となる。
【0019】
また、請求項10に記載の発明によれば、基板を石定盤の表面から持ち上げる場合においても、剥離帯電の影響による静電気の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】塗布装置の斜視図である。
図2】塗布装置の側面概要図である。
図3】この発明に係る石定盤11の加工方法を実施するためのレーザ加工機の斜視図である。
図4】この発明に係る石定盤11の加工方法を実施するためのレーザ加工機の要部を示す斜視図である。
図5】レーザ加工機により石定盤11に加工を実行しているときの様子を示す模式図である。
図6】石定盤11においてレーザ加工を実行する単位領域Eを示す説明図である。
図7】石定盤11の上面にレーザ光を照射することにより形成された凸部101を示す説明図である。
図8】レーザ光を照射した後の石定盤11の表面状態を拡大して示す写真である。
図9図8の写真における白線部分の高さ位置を示すグラフである。
図10】石定盤11に形成される凸部のパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。最初に、この発明に係る石定盤11を適用した基板処理装置の構成について説明する。図1は、この発明に係る石定盤11を適用した基板処理装置としての塗布装置の斜視図である。また、図2は、塗布装置の側面概要図である。なお、図1においては、後述するノズル洗浄機構31およびプリディスペンス機構34の図示を省略している。また、図2においては、後述するキャリッジ14等の図示を省略している。
【0022】
この塗布装置は、基板100を吸着保持するための本体10に支持された石定盤11を備える。この石定盤11は、基板100の載置面である上面の平面度が、数マイクロメータ程度とされたものが使用される。この石定盤11の材質としては、一般的に、御影石とも呼称される花崗岩が使用される。この石定盤11の表面には、図示を省略した吸着溝が形成されている。また、石定盤11には、複数のリフトピン12が、適宜の間隔をおいて設けられている。このリフトピン12は、基板100の搬入、搬出時に、基板100をその下方より支持して、石定盤11の表面より上方に上昇させる。
【0023】
石定盤11の上方には、本体10の両側部分から略水平に掛け渡されたキャリッジ14が設けられている。このキャリッジ14は、スリットノズル13を支持するためのノズル支持部15と、このノズル支持部15の両端を支持する左右一対の昇降機構16とを備える。また、本体10の両端部には、略水平方向に平行に伸びる一対の走行レール17が配設される。これらの走行レール17は、キャリッジ14の両端部をガイドすることにより、キャリッジ14を、図1に示すX方向に往復移動させる。
【0024】
本体10およびキャリッジ14の両側部分には、本体10の両側の縁側に沿って、それぞれ固定子21と移動子22を備える一対のリニアモータ20が配設されている。また、本体10およびキャリッジ14の両側部分には、それぞれスケール部と検出子とを備えた一対のリニアエンコーダ23が固設される。このリニアエンコーダ23は、キャリッジ14の位置を検出する。
【0025】
また、図2に示すように、本体10の側方には、ノズル洗浄機構31が配設されている。このノズル洗浄機構31は、洗浄ブロック32と待機ポッド33とを備える。この塗布装置においては、塗布動作を実行する前あるいは実行した後に、スリットノズル13をこのノズル洗浄機構31で洗浄するようにしている。
【0026】
また、図2に示すように、本体10の側方には、プリディスペンス機構34が配設されている。このプリディスペンス機構34は、貯留槽35内に貯留された洗浄液中にその一部を浸漬したプリディスペンスローラ36と、ドクターブレード37とを備える。プリディスペンスローラ36とドクターブレード37とは、Y方向に対して、スリットノズル13と同等以上の長さを有する。また、プリディスペンスローラ36は、図示しないモータの駆動により回転する。この塗布装置においては、塗布動作を実行する前に、プリディスペンスローラ36の上方に移動したスリットノズル13から少量の塗布液を吐出することにより、ノズル洗浄機構31による洗浄時に洗浄液を含有した塗布液を、スリットノズル13内から除去する工程を実行するようにしている。
【0027】
以上のような構成を有する塗布装置においては、石定盤11が鏡面化すると、基板100をリフトピン12により石定盤11の表面から持ち上げるときに、剥離帯電が大きくなり、静電気により基板100にダメージを与えるという問題が生ずる。このため、石定盤11の表面は、この発明に係る石定盤11の加工方法により加工されている。
【0028】
以下、この石定盤11の加工方法について説明する。図3は、この発明に係る石定盤11の加工方法を実施するためのレーザ加工機の斜視図であり、図4は、その要部を示す斜視図である。また、図5は、レーザ加工機により石定盤11に加工を実行しているときの様子を示す模式図である。なお、図3においては、図4に示す接続管44の図示を省略している。
【0029】
このレーザ加工機は、レーザマーカ41から出射されるレーザ光を石定盤11に照射することにより、石定盤11における基板100の載置面を加工して凸部を形成するものであり、フレーム51と、このフレーム51上に支持されたレーザマーカ41と、コントローラ42と、排気管43とを備える。レーザマーカ41とコントローラ42とは、ケーブル45により接続されている。また、排気管43は、接続管44により図示しない排気機構と接続されている。フレーム51に囲まれた領域のうち、石定盤11に対するレーザ光の照射領域には、保護カバー52が配設されている。なお、図3においては、保護カバー52の図示を省略している。
【0030】
レーザマーカ41は、レーザ光源と、このレーザ光源から出射されたレーザビームをX方向およびY方向に偏向する一対のスキャンミラーと、集光レンズとを備え、ワーク(この実施形態においては石定盤11)に対してX,Y方向に選択的にレーザ光を走査することにより、ワークの表面全域にレーザ光の照射を可能とするものである。図5においては、X方向またはY方向に照射されるレーザ光Lを模式的に示している。このレーザマーカ41は、ワークに対してマーキングを行う目的で使用されるものであり、一般的に市販されている。
【0031】
図6は、石定盤11においてレーザ加工を実行する単位領域Eを示す説明図である。
【0032】
石定盤11に対してレーザ加工を実行するときには、石定盤11における基板100の載置面(上面)に、図3から図5に示すレーザ加工機を載置する。市販のレーザマーカ41を利用したレーザ加工機の場合には、300mm×300mm程度の領域Eに対してレーザ光を照射することができる。このため、石定盤11の全面にレーザ加工を実行するためには、石定盤11における基板100の載置面を複数の単位領域Eに分割し、各単位領域E毎にレーザ光を照射する構成を採用する。
【0033】
石定盤11に対してレーザ加工を実行するときには、石定盤11の上面における加工を行うべき単位領域Eの上部にレーザ加工機を載置する。そして、レーザマーカ41からのレーザ光Lにより石定盤11の上面(基板100の載置面)を走査して、凸部を形成すべき位置に対してレーザ光を照射する。このときのレーザ光の出力と走査速度は、レーザ光を照射された石定盤11の表面温度が、摂氏400度乃至摂氏700度の範囲となるように設定する。なお、レーザ光の照射時には、石定盤11で発生するガス等を排出するため、フレーム51および保護カバー52で囲まれた領域中の雰囲気を、排気管43および接続管44を介して吸引し、フィルター等を介して安全な場所に排出する。
【0034】
本実施形態においては、炭酸ガスレーザ(CO2レーザ)を用いる。また、石定盤11に対してレーザ加工を実行するときには、レーザ光の出力と走査速度は、波長10600nmの炭酸ガスレーザを使用し、出力20w〜25w、走査速度を1000mm/sec〜1250mm/secの範囲で設定する。これにより、上述したレーザ光を照射された石定盤11の表面温度が、摂氏400度乃至摂氏700度の範囲となる。レーザ光の出力が過度に大きくなったり走査速度が過度に遅くなれば、石定盤11に過大なエネルギーが付与されることになり、また、レーザ光の出力が過度に小さくなったり走査速度が過度に速くなれば、石定盤に付与されるエネルギーが不足し、いずれの場合にも適切な膨張状態を得ることはできない。なお、レーザ光の出力と走査速度は、より好ましくは、出力20wの時、走査速度を1000mm/secとする。または、出力25wの時、走査速度を1250mm/secとする。これにより、所望の凸部を形成することができる。
【0035】
石定盤11を構成する花崗岩(granite/御影石)は、主成分が石英と長石で、その他に黒雲母等の有色鉱物を含む。この花崗岩に含まれる石英は、摂氏580度近傍において急膨張する。このため、花崗岩からなる石定盤11の表面温度を摂氏400度乃至摂氏700度の範囲とすることにより、石英を膨張させて凸部を形成することが可能となる。なお、この温度が摂氏400度より低い場合には、石英が十分膨張しないことから、適正な凸部を形成することができない。一方、この温度が摂氏700度より高い場合には、石英が溶解し、あるいは、蒸発することにより、凸部ではなく凹部が形成されてしまうという問題が生ずる。
【0036】
図7は、石定盤11の上面にレーザ光を照射することにより形成された凸部101を示す説明図である。
【0037】
上述したレーザ加工機によるレーザ光の照射動作を、複数の単位領域Eに対して連続して実行することにより、石定盤11の上面にX、Y方向を向く線状の凸部101を形成することが可能となる。なお、この凸部101のピッチは、X方向、Y方向とも、例えば、5mm程度となっている。
【0038】
図8は、レーザ光を照射した後の石定盤11の表面状態を拡大して示す写真である。また、図9は、図8の写真における白線部分の高さ位置を示すグラフである。
【0039】
図8に示すように、石定盤11の表面には、石英がレーザ光の照射による熱により膨張した白色に見える凸部が形成されている。この凸部の高さH(図9参照)は、石定盤11の表面の細かい凹凸に比べて十分大きいことから、石定盤11の表面の細かい凹凸に異物がつまる現象が発生したとしても、石英により形成された凸部の作用により、石定盤11が鏡面化するという現象を生ずることはない。なお、この凸部の高さHは、3μm乃至10μm程度とすることが好ましい。
【0040】
以上のように、この発明に係る石定盤11の加工方法によれば、石定盤11の上面に対して市販のレーザマーカ41によりレーザ光を照射することにより、花崗岩に含まれる石英を膨張させて凸部を形成する構成であることから、極めて簡易な構成でありながら、石定盤11の平面度を維持したままで、その鏡面化を防止することが可能となる。
【0041】
なお、上述した実施形態においては、図7に示すように、X方向およびY方向を向く直線状の領域にレーザ光を照射することにより、X方向およびY方向を向く直線状の凸部を形成している。しかしながら、この凸部の形状はこのようなパターンに限定されるものではない。
【0042】
図10は、石定盤11に形成される凸部のパターンを示す説明図である。
【0043】
図10(a)は、上述したX方向およびY方向を向く直線状の凸部101を示している。これに対して、図10(b)は円形の凸部102を示している。また、図10(c)は点に近い小径円形の凸部103を示している。また、図10(d)はX方向およびY方向に交差する方向を向く直線状の凸部104を示している。また、図10(e)は一方向を向く破線状の凸部105を示している。さらに、図10(f)はX方向およびY方向に向けて列設された複数の十字状の凸部106を示している。
【0044】
図10(a)〜図10(f)に示すように、ある程度の規則性を有する凸部101〜106を石定盤11における基板100の載置面の全域に形成することにより、石定盤11の表面の鏡面化を防止することができ、基板100に対して静電気に起因するダメージの発生を効果的に防止することが可能となる。
【0045】
なお、上述した実施形態においては、石定盤11の材質として花崗岩を採用し、レーザ光により花崗岩に含まれる石英を膨張させて凸部を形成している。しかしながら、加熱されることにより膨張する材料として石英以外の材料を含むものを使用してもよく、また、石定盤の材質として花崗岩以外の材料を使用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 本体
11 石定盤
12 リフトピン
13 スリットノズル
14 キャリッジ
15 ノズル支持部
16 昇降機構
17 走行レール
18 開閉弁
19 開閉弁
20 リニアモータ
23 リニアエンコーダ
31 ノズル洗浄機構
34 プリディスペンス機構
41 レーザマーカ
42 コントローラ
43 排気管
44 接続管
45 ケーブル
51 フレーム
52 保護カバー
100 基板
101 凸部
102 凸部
103 凸部
104 凸部
105 凸部
106 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10