特許第6227426号(P6227426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227426
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】自動車用推進軸
(51)【国際特許分類】
   F16C 3/03 20060101AFI20171030BHJP
   B60K 17/22 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F16C3/03
   B60K17/22 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-7384(P2014-7384)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-135167(P2015-135167A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】古口 和秀
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−207575(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0009354(US,A1)
【文献】 特開2006−132628(JP,A)
【文献】 特開2010−247774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 3/03
B60K 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管と、一端が前記外管の内側に収容される内管と、前記外管と内管との間に介在する弾性体とを備え、衝突により短縮する自動車用推進軸であって、
前記弾性体は、
前記外管の内周面に固着される環状の外側弾性体と、
前記内管の外周面に固着されるとともに、前記外側弾性体内に嵌合される環状の内側弾性体と、
を有し、
前記外側弾性体の内周面には、径方向内側に突出する複数の第1突出部が形成され、
前記内側弾性体の外周面には、径方向外側に突出する複数の第2突出部が形成され、
前記嵌合により、前記第1突出部と前記第2突出部とが周方向に交互に並ぶとともに、前記第1突出部と前記第2突出部とが径方向又は/及び周方向に押し潰された状態となっており、
前記内側弾性体の端部に、径方向外側に延在して前記外側弾性体の端面及び前記外管の
端面に当接する当接部が設けられていることを特徴とする自動車用推進軸。
【請求項2】
外管と、一端が前記外管の内側に収容される内管と、前記外管と内管との間に介在する弾性体とを備え、衝突により短縮する自動車用推進軸であって、
前記弾性体は、
前記外管の内周面に固着される環状の外側弾性体と、
前記内管の外周面に固着されるとともに、前記外側弾性体内に嵌合される環状の内側弾性体と、
を有し、
前記外側弾性体の内周面には、径方向内側に突出する複数の第1突出部が形成され、
前記内側弾性体の外周面には、径方向外側に突出する複数の第2突出部が形成され、
前記嵌合により、前記第1突出部と前記第2突出部とが周方向に交互に並ぶとともに、前記第1突出部と前記第2突出部とが径方向又は/及び周方向に押し潰された状態となっており、
前記外側弾性体の端部に、径方向内側に延在して前記内側弾性体の端面及び前記内管の
端面に当接する当接部が設けられていることを特徴とする自動車用推進軸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用推進軸に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されて前後方向に延在する自動車用推進軸は、自動車前部に搭載された変速機と自動車後部に搭載された終減速装置とを連結し、変速機の動力により回転することで動力を終減速装置に伝達する。
【0003】
ところで、自動車では、前方からの衝突エネルギーを吸収するため、原動機及び変速機を後退させてエンジンルームを含む車両前部のボディパネルが変形可能となることが求められている。
そして、原動機及び変速機の後退を図るため、自動車用推進軸では、前方からの衝突による荷重を受けた場合に短縮することが求められている。
このような短縮可能な自動車用推進軸の一つに、直径の異なる2つの管体(以下、径の大きい方を「外管」、径の小さい方を「内管」という場合がある。)と、その外管と内管との間に介在して外管と内管とを連結する弾性体と、を備えたものがある。そして、前方からの衝突による荷重を受けて前側に配置された管体が後方に移動し、自動車用推進軸が短縮するように構成されている。
【0004】
他方で、上記した短縮可能な自動車用推進軸は、2つの管体の一方が回転した場合に、その管体を保持する弾性体が摺動してしまい、2つの管体の他方に回転運動が伝達されないおそれ、又は回転運動のトルクが損なわれて伝達するおそれがある。
このような問題を解決するため、下記の特許文献では次のような構成になっている。
【0005】
特許文献1では、弾性体の内周面が内管の外周面に加硫接着(溶着)され、弾性体の外周面が大径パイプの内周面に接着剤により接着されている。
特許文献2では、アルミニウム合金で製造された外管の内周面に径方向内側に押し出し成形にてリブが突設され、そのリブが弾性体の外周面に形成された凹部に嵌合している。また、弾性体の内周面が接着剤により内管に接着されている。
特許文献3では、弾性部材が外管と内管との間に径方向に圧縮された状態で介設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−213227号公報
【特許文献2】実開平01−91115号公報
【特許文献3】特開2006−64179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、自動車用推進軸の回転運動の荷重(トルク)は比較的大きいが、衝突による自動車用推進軸の短縮に要求される荷重は比較的小さい。
このため、特許文献1の技術のように、接着剤の強度が自動車用推進軸の回転運動の荷重(トルク)に耐えられるように設定されると、衝突による荷重が比較的小さい場合に接着剤が破断せずに自動車用推進軸の短縮が図れないというおそれがある。
【0008】
また、特許文献2の技術によれば、外管の材質がアルミニウム合金に限定されており、外管に接合される対象の材質も限定されるという不利益がある。
【0009】
さらに、特許文献3の技術によれば、停止部材を用いて位置ずれしないように、外管と内管との間に弾性体を圧着させる必要があり、組み立て作業が煩わしかった。
また、特許文献3の技術によれば、弾性体の劣化により圧着力が弱まり、弾性体が管体を保持できずに摺動するおそれがある。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、比較的小さい荷重であっても短縮することができ、外管及び内管がアルミ材に限定されず、組み立ての作業性が良く、弾性体が劣化しても確実に回転運動を伝達できる自動車用推進軸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る自動車用推進軸は、外管と、一端が前記外管の内側に収容される内管と、前記外管と内管との間に介在する弾性体とを備え、衝突により短縮する自動車用推進軸であって、前記弾性体は、前記外管の内周面に固着される環状の外側弾性体と、前記内管の外周面に固着されるとともに、前記外側弾性体内に嵌合される環状の内側弾性体と、を有し、前記外側弾性体の内周面には、径方向内側に突出する複数の第1突出部が形成され、前記内側弾性体の外周面には、径方向外側に突出する複数の第2突出部が形成され、前記嵌合により、前記第1突出部と前記第2突出部とが周方向に交互に並ぶとともに、前記第1突出部と前記第2突出部とが径方向又は/及び周方向に押し潰された状態となっていることを特徴とする。
【0012】
前記発明に係る自動車用推進軸によれば、外側弾性体は外管に固着され、内側弾性体は内管に固着されている。また、外側弾性体が回転すると、外側弾性体の第1突出部が周方向に移動して第2突出部を周方向に押圧し、内側弾性体が回転するようになっている。
以上から、自動車用推進軸の回転運動時に、外管、外側弾性体、内側弾性体、内管のそれぞれが互いに摺動することが抑制されており、回転運動のトルクが損なわれることなく確実に伝達される。
また、上記する構成は、従来技術で説明したような弾性体の圧着により摺動を抑制するといった構成にはなっていないため、弾性体が劣化したとしても、回転運動のトルクが損なわれるおそれがない。
【0013】
一方で、前後方向の荷重が外管に作用した場合に、外側弾性体の第1突出部が内側弾性体の第2突出部によりガイドされながら外管がスライドし、自動車用推進軸が短縮する。
また、第1突出部と第2突出部とが径方向又は/及び周方向に押し潰された状態となっているため、第1突出部と第2突出部との弾性力により外側弾性体11と内側弾性体12とが圧着している。このため、外側弾性体に対して内側弾性体が径方向又は/及び周方向にガタつくことが防止されている。
さらに、上記する構成によれば、第1突出部と第2突出部とが径方向又は/及び周方向の押し潰し量を調整することで外側弾性体と内側弾性体との圧着力を調整し、外管又は内管がスライドする場合の荷重を設定することができる。
このため、押し潰し量を調整し、衝突時の比較的弱い荷重で外管又は内管がスライドできるように設定するとともに、組み立て時に作用する荷重や自動車走行時に作用する荷重などの極めて弱い荷重では、外管又は内管がスライドしないように設定することができる。
【0014】
また、前記発明によれば、外管及び内管はアルミ材に限定されないため、接合される対象の材質も限定されるという不利益を回避できる。
さらに、外側弾性体と内側弾性体とのそれぞれは外管、内管に固着されているため、外側弾性体内に内側弾性体を挿入して嵌合させる際に、外側弾性体と内側弾性体とが位置ずれすることなく、組み立てることができ、組立作業の容易化を図ることができる。
【0015】
また、前記内側弾性体の端部に、径方向外側に延在して前記外側弾性体の端面及び前記外管の端面に当接する当接部が設けられていることが好ましい。
【0016】
前記構成によれば、衝突により外管が当接部を破断することで外管内に内管が進入し、自動車用推進軸が短縮するようになる。
このため、当接部の厚みを厚く又は薄くするなど、当接部の形状を変更することで、外管が当接部を破断する場合の破断荷重を変更することができ、自動車用推進軸が短縮する場合の荷重を容易に設定することができる。
また、当接部を備えていない場合、自動車用推進軸が短縮する場合の荷重は、第1突出部及び第2突出部の圧縮量と嵌合長さと摩擦力により変動するおそれがある。しかしながら、当接部を設けることで自動車用推進軸が短縮する場合の荷重を任意に設定することができ、かつ、安定させることができる。
また、組み立て時において、外側弾性体内に内側弾性体を挿入した場合、当接部が外側弾性体の端面及び外管の端面に当接するため、位置決めが容易となる。
また、当接部が外側弾性体と内側弾性体との境目を覆うため、外側弾性体と内側弾性体との間に泥水が浸入することを防止できる。
さらに、内側弾性体に当接部を設けたとしても、組み立てで要求される作業がなく、組み立ての作業性が良い。
【0017】
また、前記外側弾性体の端部に、径方向内側に延在して前記内側弾性体の端面及び前記内管の端面に当接する当接部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
前記構成によれば、衝突により内管が当接部を破断することで外管内に内管が進入し、自動車用推進軸が短縮するようになる。
このため、当接部の厚みを厚く又は薄くするなど、当接部の形状を変更することで、外管が当接部を破断する場合の破断荷重を変更することができ、自動車用推進軸が短縮する場合の荷重を容易に設定することができる。
また、当接部を備えていない場合、自動車用推進軸が短縮する場合の荷重は、第1突出部及び第2突出部の圧縮量と嵌合長さと摩擦力により変動するおそれがある。しかしながら、当接部を設けることで自動車用推進軸が短縮する場合の荷重を任意に設定することができ、かつ、安定させることができる。
また、組み立て時において、外側弾性体内に内側弾性体を挿入した場合、当接部が内側弾性体の端面及び内管の端面に当接するため、位置決めが容易となる。
ため、位置決めが容易となる。
さらに、外側弾性体に当接部を設けたとしても、組み立てで要求される作業がなく、組み立ての作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る推進軸及び軸受構造体を示す全体構成図である。
図2図1の枠線Aで囲まれた範囲を拡大した拡大図である。
図3図2のB−B線断面図である。
図4】外管が前方からの荷重を受けた場合を示す断面図である。
図5】第1変形例に係る第一推進軸の断面を示す拡大断面図である。
図6】第2変形例に係る第一推進軸の断面を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、自動車用推進軸1は、フロアパネル(不図示)の下面に固定された軸受構造体2により回転自在に支持され、フロアパネルの下方で車両前部から車両後部に亘って延在する軸部材である。
また、自動車用推進軸1の前部側が車体前部に搭載された変速装置(不図示)に連結され、自動車用推進軸1の後部側が車両後部の終減速装置(不図示)に連結されている。そして、変速装置の動力で自動車用推進軸1が回転し、変速装置からの動力を終減速装置に伝達する役割を果たしている。
【0021】
自動車用推進軸1は、前方寄りに設けられて第1ジョイント5を介して変速装置側の出力軸に連結する第一推進軸3と、後方寄りに設けられて第2ジョイント7を介して終減速装置側の入力軸に連結する第二推進軸4と、第一推進軸3と第二推進軸4とを連結する等速ジョイント6と、を備えている。
【0022】
第一推進軸3は、第一推進軸3の前方寄りに設けられる円筒形の外管8と、外管8よりも小径であって外管8の後端部の内側から後方に延びる円筒形の内管9と、外管8と内管9との間に介在して外管8と内管9とを連結する環状の弾性体10と、を備えている。
実施形態に係る外管8及び内管9の材質は、鋼であるが、本発明では外管8と内管9の材質について特に限定されない。
【0023】
図2図3に示すように、弾性体10は、弾性変形可能なゴムであり、環状の外側弾性体11と、外側弾性体11の内側に配置された環状の内側弾性体12と、を備えている。
外側弾性体11は、外径が外管8の内径と同一に形成された円筒形の部材である。
また、加硫接着(溶着)により、外側弾性体11の外周面が外管8の内周面に固着されており、外管8が回転した場合、外側弾性体11が摺動することなく、外管8と共に回転するようになっている。
内側弾性体12は、内径が内管9の外径と同一に形成された円筒形の部材である。
また、加硫接着(溶着)により、内側弾性体12の内周面が内管9の外周面に固着されており、内側弾性体12が回転した場合、内管9が摺動することなく、内側弾性体12と共に回転するようになっている。
そして、外側弾性体11の内側に内側弾性体12が嵌合され、外側弾性体11に固着された外管8と内側弾性体12に固着された内管9とを連結している。
なお、本実施形態では、外側弾性体11、内側弾性体12は、加硫接着(溶着)により外管8、内管9に固着されている。
【0024】
図3に示すように、外側弾性体11の内周面に、径方向内側に突出する第1突出部13が周方向に等間隔で6つ形成されている。
一方、内側弾性体12の内周面にも、径方向外側に突出する第2突出部14が周方向に等間隔で6つ形成されている。
そして、第1突出部13と第2突出部14とが周方向にずれて設けられ、第1突出部13と第2突出部14とが周方向に交互に並んでおり、第1突出部13と第2突出部14とが係合している。
このため、外管8が回転すると、第1突出部13が周方向へ移動して第2突出部14を押圧する。そして、第2突出部14も周方向に移動して内管9が回転し、外管8の回転運動が内管9に伝達される。
また、外管8が前方から荷重を受けた場合には、図4の矢印Cに示すように、外側弾性体11の第1突出部13が内側弾性体12の第2突出部14にガイドされながら、外管8と外側弾性体11とが後方にスライドし、第一推進軸3が短縮する。そして、外管8と外側弾性体11とがさらに後方にスライドした場合に、外側弾性体11と内側弾性体12との嵌合状態が解除される。
なお、本実施形態では、第1突出部13と第2突出部14とが6個ずつ形成されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、適宜変更してもよいものである。
【0025】
また、第1突出部13と第2突出部14とが径方向と周方向とに押し潰されて弾性変形した状態で、外側弾性体11の内側に内側弾性体12が嵌合されている。
このため、第1突出部13と第2突出部14との弾性力が作用して外側弾性体11と内側弾性体12とが圧着している。この結果、外側弾性体11に対して内側弾性体12が径方向と周方向にガタつくことが防止されるとともに、外側弾性体11が後方へスライドし難くなっている。
【0026】
そして、本実施形態では、第1突出部13と第2突出部14とにおける径方向及び周方向の押し潰し量が調節されて、外側弾性体11に対する内側弾性体12の圧着力が適切なものに設定されている。
ここで、適切な圧着力とは、外管8又は内管9に作用する前後方向に荷重が、例えば自動車の前方からの衝突など比較的弱い荷重を受けた場合に外管8が後方へスライドできる一方で、組み立て時に作用する荷重や自動車走行時に作用する荷重などの極めて弱い荷重の場合には、外管8が後方に又は内管9が前方にスライドしない程度のものをいう。
【0027】
つぎに、自動車用推進軸1における第一推進軸3の組み立て方法について説明する。
最初に、外管8の後端部の内周面に外側弾性体11を溶着させるとともに、内管9の先端部の外周面に内側弾性体12を溶着させる。
つぎに、内側弾性体12の外周面を押し潰しながら外側弾性体11内に挿入し、外側弾性体11内に内側弾性体12を嵌合させる。
ここで、内側弾性体12を外側弾性体11内に挿入する際に、第2突出部14が摺動する外側弾性体11には、前方に向かう荷重が作用する一方で、第1突出部13が摺動する
内側弾性体12には、後方に向かう荷重が作用するが、外側弾性体11と内側弾性体12とのそれぞれは、外管8、内管9に固着されているため、前後方向に位置ずれするおそれがない。このため、外側弾性体11と内側弾性体12とが位置ずれしないようにするための治具が不要となっている。
【0028】
以上、実施形態に係る自動車用推進軸1によれば、外管8と外側弾性体11とが固着され、内管9と内側弾性体12も固着されている。そして、外側弾性体11が回転すると、第1突出部13が周方向に移動して第2突出部14を周方向に押圧し、内側弾性体12が回転するようになっている
このため、自動車用推進軸1の回転運動時に、外管8、外側弾性体11、内側弾性体12、内管9のそれぞれが互いに摺動することが抑制されており、回転運動のトルクが損なわれることなく確実に伝達することができる。
また、上記する実施形態に係る自動車用推進軸1は、従来技術で説明したような弾性体の圧着により摺動を抑制するといった構成にはなっていないため、外側弾性体11及び内側弾性体12が劣化したとしても、回転運動のトルクが損なわれるおそれがない。
【0029】
また、上記する実施形態に係る自動車用推進軸1によれば、前方からの衝突による荷重が小さい場合であっても、外管8が後方にスライドするようになっている。このため、エンジン及び変速装置が後方に移動し、自動車の前部で衝突エネルギーを吸収することができる。
さらに、上記する実施形態に係る自動車用推進軸1によれば、外側弾性体11の第1突出部13と内側弾性体12の第2突出部14との径方向又は/及び周方向の押し潰し量で調整すること、外管8が後方へスライドする場合の荷重を設定することができる。
【0030】
また、上記する実施形態に係る自動車用推進軸1によれば、治具を用いることなく組みたてることができ、組立作業の容易化を図ることができる。
また、上記する実施形態に係る自動車用推進軸1によれば、外管8及び内管9の材質が限定されない。このため、従来技術の説明で挙げた技術のように、外管8及び内管9に接合される対象がアルミニウム合金よりなる部材に限定されるという不利益を回避できる。
【0031】
以上、実施形態に係る自動車用推進軸1について説明したが、本発明は実施形態で説明した例に限定されるものでなく、適宜変更してもよいものである。
例えば、図5に示すように、内側弾性体12の後端部に、径方向外側に延在して外側弾性体11の端面と外管8の端面に当接する当接部15を設けてもよい。
これによれば、当接部15の厚み等を調整することで、外管8が当接部15を破断して後方に移動する場合の荷重(破断荷重)を設定することができ、自動車用推進軸1が短縮する場合の荷重の設定が容易となる。
また、実施形態の自動車用推進軸1では、外管8が後方へ移動する場合の荷重が、第1突出部13及び第2突出部14の圧縮量と嵌合長さと摩擦力により変動するおそれがあるところ、変形例のように当接部15を設けることで、その荷重を任意に設定でき、かつ、安定させることができる。
また、自動車用推進軸1を組み立てるために、外側弾性体11に内側弾性体12を挿入した場合、当接部15が外側弾性体11の後端面及び外管8の後端面に当接するため、位置決めが容易となる。
また、当接部15が外側弾性体11と内側弾性体12との境目を覆うため、外側弾性体11と内側弾性体12との間に泥水が浸入することが抑制される。
さらに、内側弾性体12が当接部15を備えたとしても、自動車用推進軸1の組み立てで要求される作業がないため、組み立ての作業性も良い。
【0032】
なお、内管9が外管8よりも前側に配置されている場合には、内側弾性体12の前端部に、径方向外側に延在して外側弾性体11の前端面と外管8の前端面に当接する当接部15を設けてもよい。
当該構成によっても、内管9が後方へ移動する場合の荷重を容易かつ任意に設定することができ、自動車用推進軸1が短縮する場合の荷重が安定する。また、位置決めの容易化を図ることがでるとともに、シール効果が得られ、組み立ての作業性も良い。
【0033】
また、内側弾性体12の後端部又は前端部に当接部15が設けられた第1変形例を説明したが、本発明は、図6に示すように、外側弾性体11の前端部に、径方向内側に延在して内側弾性体12の端面と内管9の端面に当接する当接部16を設けてもよい。
当該構成によっても、外管8が後方へ移動する場合の荷重を容易かつ任意に設定することができ、自動車用推進軸1が短縮する場合の荷重が安定する。また、位置決めの容易化を図ることがでるとともに、外側弾性体11が当接部16を備えたとしても、組み立てで要求される作業がないため、組み立ての作業性も良い。
なお、内管9が外管8よりも前側に配置されている場合には、外側弾性体11の後端部に、径方向内側に延在して内側弾性体12の端面と内管9の端面に当接する当接部16を設けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 自動車用推進軸
3 第一推進軸
4 第二推進軸
8 外管
9 内管
10 弾性体
11 外側弾性体
12 内側弾性体
13 第1突出部
14 第2突出部
15、16 当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6