(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スプロケットに巻回される無端状のチェーンと、前記チェーンが前記スプロケットに噛み合ってキャリア側からリターン側へと反転する反転部と、上下方向に揺動自在に支持されたアームと、前記アームに設けられ前記チェーンが前記反転部を離脱した地点で前記リターン側のチェーンの下面に接触する接触部と、前記アームの揺動を規制するために固定のフレームと前記アームとを結ぶ連結部材と、前記接触部材に前記チェーンの下面が当接することにより前記連結部材が切断された際に前記アームが揺動したことを検知する感知部とを備え、前記感知部は、前記リターン側のチェーンよりも上方に備えられていることを特徴とするチェーンの弛み検知装置。
【背景技術】
【0002】
エプロンフィーダ等の各種搬送装置には、コンベヤチェーンが用いられている場合が多い。コンベヤチェーンは、無端状のチェーンが駆動側、従動側の各スプロケット間に巻回され、スプロケットの回転とともにチェーンが移動することにより、搬送物を載置可能な搬送部が移動する。
【0003】
チェーンは、両端にピン穴を設けた対のチェーンプレートが、ピンを介して順次長手状に連結されて無端状に構成されている。このため、ピンとピン穴との摺動部等が磨り減ること等により、次第にチェーンが弛んでくる傾向がある。チェーンが弛むと、チェーンとコンベヤ各部の部材が接触して不具合の原因となるので好ましくない。また、チェーンの弛みを放置すると、寿命が短くなるだけでなく、チェーンや搬送部の蛇行の原因ともなるので好ましくない。
【0004】
このため、チェーンの弛みを検知するための各種の弛み検知装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チェーンの弛みの測定は、最も弛みが生じやすいリターン側のチェーン、特に、駆動側のヘッドスプロケットの下方付近で行うのが通常である。しかし、この場所は、多くの場合、カバー類の死角になって外部から容易に視認できないので、弛みの測定、確認が困難である。
【0007】
また、リターン側のチェーンのスプロケット近傍には、チェーンの位置を検知する近接センサ等の各種センサを設けるスペースがないという問題もある。この位置には、スプロケットを支えるフレームや、あるいは、コンベヤチェーンの案内板や保護板が近接している場合が多いからである。
【0008】
さらに、この位置に、仮にセンサを設けたとしても、そのセンサは、搬送物から発生する粉塵や泥の堆積等により正常に動作できない事態も生じ得る。さらに、このような設置位置では、センサの調整や交換等のメンテナンスも困難である。
【0009】
そこで、この発明は、チェーンのリターン側において、チェーンの弛みを適切に検知し、容易にメンテナンスできるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、スプロケットに巻回される無端状のチェーンと、前記チェーンが前記スプロケットに噛み合ってキャリア側からリターン側へと反転する反転部と、上下方向に揺動自在に支持されたアームと、前記アームに設けられ前記チェーンが前記反転部を離脱した地点で前記リターン側のチェーンの下面に接触する接触部と、前記アームの揺動を規制するために固定のフレームと前記アームとを結ぶ連結部材と、前記接触部材に前記チェーンの下面が当接することにより前記連結部材が切断された際に前記アームが揺動したことを検知する感知部とを備え、前記感知部は、前記リターン側のチェーンよりも上方に備えられていることを特徴とするチェーンの弛み検知装置を採用した。
【0011】
上下方向に揺動自在のアームに接触部を設け、チェーンが弛むことによりその下面が接触部に触れれば、連結部材が切断されてアームが揺動するようにしたので、そのアームの揺動を検知すれば、チェーンが許容量を超えて弛んでいることを検知することができる。
また、そのアームの揺動を検知する感知部を、リターン側のチェーンよりも上方に設けたので、感知部を外部から容易に確認でき、スペース上の問題も生じない。また、搬送物から発生する粉塵や泥の堆積等により動作が支障する事態も生じにくく、感知部の調整や部品の交換も容易である。
【0012】
この構成において、前記アームを揺動自在に支持する支持軸は、前記リターン側のチェーンよりも上方に備えられていることが望ましい。すなわち、感知部に加えて支持軸も、前記リターン側のチェーンよりも上方に位置することが望ましい。
【0013】
また、前記連結部材としては、チェーンが許容量以上弛んだ際に、そのチェーンが接触部を下方に押圧することで切断される素材であればよく、例えば、金属製の細い針金や紙類等を採用することができるが、特に、繊維製の糸又は紐を採用することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、上下方向に揺動自在のアームに接触部を設け、チェーンが弛むことによりその下面が接触部に触れれば、連結部材が切断されてアームが揺動するようにしたので、そのアームの揺動を検知すれば、チェーンが許容量を超えて弛んでいることを検知することができる。
また、そのアームの揺動を検知する感知部を、リターン側のチェーンよりも上方に設けたので、感知部を外部から容易に確認でき、スペース上の問題も生じない。また、搬送物から発生する粉塵や泥の堆積等により動作が支障する事態も生じにくく、感知部の調整や部品の交換も容易である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この実施形態は、搬送装置としてのエプロンフィーダ1に用いられるコンベヤチェーン10の弛み検知装置である。
【0017】
エプロンフィーダ1は、原材料である鉱石やその処理物、各種中間製品、完成品等の各種搬送物を送り出すために用いられるコンベヤの総称である。エプロンフィーダ1は、例えば、
図1に示すように、幅数十cm〜数mの鋼板(底板)2の両側に、上下方向に立ち上がる立上がり板(エプロン)3を設け、その底板2とエプロン3とからなる搬送部が、コンベヤチェーン10の動きによって、フレーム5に回転自在に支持されたローラ4の上を走行して、搬送部上の搬送物を所定の方向へ送り出すようになっている。
【0018】
スプロケット6は駆動側と従動側とからなり、二つのスプロケット6間に無端状のチェーン10が巻回される。
図1では、モータ等の駆動源からの駆動力によって回転する駆動側のスプロケット6のみを表示し、対側の従動側のスプロケットは図示省略している。また、チェーン10は、搬送部を挟んで幅方向両側に配置してもよいし、片側にのみ配置してもよい。
【0019】
図1(b)(c)に示す駆動側のスプロケット6では、チェーン10は、そのスプロケット6に噛み合うことにより、
図1(c)の上方側に位置するキャリア側から下方側に位置するリターン側へと、図中反時計回りに反転する。この実施形態では、チェーン10は、上方側から下方側へと180度反転するようになっている。このチェーン10が反転する部分、すなわち、チェーン10がスプロケット6に噛み合っている範囲を、以下、反転部と称する。
【0020】
下方側のチェーン10、すなわち、リターン側のチェーン10は、さらにその下方に配置した保護板11によって保護されている。保護板11は、
図1(a)(c)に示すように、水平な平坦部11aと、その平坦部11aよりも反転部側に傾斜部11bを備える。傾斜部11bは、平坦部11aから離れるにつれて、徐々にチェーン10から下方へ離れる方向へ下り勾配で傾斜し、その先端11cに至る。反転部を過ぎたチェーン10は、この傾斜部11bに当接することにより、リターン側へ案内される。
【0021】
その保護板11の上方に、弛み検知装置20が配置される。この実施形態では、弛み検知装置20は、反転部とリターン部との境界付近、特に、チェーン10がスプロケット6の最下端部において反転部を離脱した直後の位置に配置されている。
【0022】
弛み検知装置20は、上下方向に揺動自在に支持されたアーム21を備える。アーム21は、フレーム5に固定された支持軸26aによって上下方向に揺動自在である。支持軸26aは、搬送部の幅方向に配設された横フレーム5aに対し、ブラケット26、調整金具26c等を介して固定されている。なお、横フレーム5aは、搬送方向に沿って配設された対の縦フレーム5b間に架け渡されるように、その縦フレーム5b上に固定されている。縦フレーム5b及び横フレーム5aは、それぞれH型鋼からなる。
【0023】
ブラケット26は板状部材で構成され、H型鋼からなる横フレーム5aの上フランジから反転部側に突出して設けられている。その突出した部分に、板厚方向に貫通し、エプロンフィーダ1の搬送方向に沿って伸びる長孔26bが設けられている。調整金具26cは、基部と立上部とからなるL字状であり、2箇所のブラケット26にそれぞれ1つずつ調整金具26cが固定される。支持軸26aは水平方向に設けられ、背中合わせに並列する対の調整金具26cの互いに平行な立上部と、その立上部間に挟むように配設されたアーム21の孔にそれぞれ挿通されて、そのアーム21を上下方向に揺動自在に支持する。
【0024】
調整金具26cのブラケット26への固定は、調整金具26cの基部に設けた貫通孔に挿通されたボルト26dが、ブラケット26側の長孔26bに挿通され、ナット等によって締め付けられることにより行われる。ボルト26dの長孔内での位置を、長孔26bの長さ方向に沿って移動させることで、支持軸26aの位置を搬送方向に沿って調整することができる。
【0025】
アーム21は、支持軸26aに支持された部分を挟んで、反転部側に作用部21bを、その対側に検知部21aを備える。作用部21bと検知部21aとはそれぞれ直線状の軸部材であり、支持軸26aによって支持された部分を挟んで、くの字状に屈曲した形状となっている。
【0026】
作用部21bの先端には、チェーン10が反転部を離脱した地点で、リターン側のチェーン10の下面に接触する接触部21cを備える。接触部21cは軸部材で構成され、作用部21bの先端に水平方向に突出するように取り付けられている。
【0027】
通常の状態で、作用部21bは、反転部に近づくにつれて徐々に下方に向かうに傾斜している。すなわち、支持軸26aによって支持された部分から先端に向かうにつれて下り勾配に伸びている。また、検知部21aは、通常の状態で、支持軸26aによって支持された部分から後端に向かって水平状態で伸びている。
【0028】
アーム21の後端側には、アーム21の揺動を規制するために、固定のフレーム5とアーム21の検知部21aとを結ぶ連結部材24が設けられている。
【0029】
この実施形態では、連結部材24の素材として柔軟な繊維製の紐を採用している。連結部材24は、一方の端部が縦フレーム5bの上フランジ上面に設けられた係止部25に、他方の端部がアーム21の検知部21aの後端に設けた係止部21dに括りつけられて、床に固定されたフレーム5と、揺動自在のアーム21間を結んでいる。
【0030】
また、アーム21の検知部21aの中ほど付近、すなわち、支持軸26aによって支持された部分と係止部21dとの間において、そのアーム21の揺動を感知する感知部23が設けられている。
【0031】
感知部23は、
図3に示すように、横フレーム5aの上フランジに対して立ち上がるように固定されたブラケット22に取り付けられている。
【0032】
以下、弛み検知装置20の作用を説明する。
【0033】
図4に実線から鎖線に示すようにチェーン10が伸びて、そのチェーン10の位置が、符号10aから符号10bの位置へと移動する。すなわち、チェーン10の長さが伸びることにより、リターン側においてチェーン10の位置が垂れ下がるように下方に移動する。
【0034】
そして、チェーン10の位置が低くなれば、アーム21の接触部21cに、チェーン10の下面が当接することにより、アーム21の作用部21bの先端が下がろうとする方向へ、そのアーム21が揺動しようとする。
【0035】
アーム21を揺動させようとする力が一定以上になると、連結部材24はその力に耐えられない状態となり途中で切断される。連結部材24が切れると、アーム21は、チェーン10に押圧されて、作用部21bの先端がさらに下がろうとする方向へ大きく揺動する。
【0036】
このとき、アーム21は、その自重により、作用部21bの先端が下がろうとする方向へ揺動するように、作用部21bと検知部21aの重量配分を設定しておいてもよい。すなわち、アーム21は、支持軸26aによって支持された部分を挟んで、作用部21b側の重量によりアーム21を支持軸26a周り一方向へ揺動させようとする力が、検知部21a側の重量によりアーム21を支持軸26a周り他方向へ揺動させようとする力よりも大きく設定しておくことで、連結部材24が切れた際のアーム21の揺動が円滑となる。
【0037】
連結部材24が切断されてアーム21が揺動したことを、感知部23が検知する。感知部23は、
図2に示すように、ブラケット22に取り付けたリミットスイッチユニット23eと、そのリミットスイッチユニット23eに対して、回転軸23cによって回動自在に支持された感知レバー23bとを備える。
【0038】
感知レバー23bの先端23aは、
図5に示すように、アーム21の検知部21aに設けられた突出片部21eの上面に当接しているので、アーム21が揺動すれば、突出片部21eが先端23aを押し上げることにより、感知レバー23bが回転軸23cの軸回りに回動する。この回動を、リミットスイッチユニット23eが電気的に検知するようになっている。
【0039】
リミットスイッチユニット23eがアーム21の揺動を検知することにより、チェーン10の伸びが所定の限度を超えている旨の警報が発信される。この警報は、例えば、リミットスイッチユニット23eから、外部に設けた報知機器や処理装置への信号の送信や、あるいは、そのリミットスイッチユニット23eに併設された各種報知装置による音や光の発信によって行われる。警報を把握した使用者は、チェーン10を取り替えるか、あるいは、チェーン10の弛みを取るための措置を、即時に又は一定の期間内に行うこととなる。
【0040】
なお、感知レバー23bは、その感知レバー23bの長さ方向に沿って伸びる長孔23dを備えている。回転軸23cは、この長孔23d内に挿通されている。回転軸23cが長孔23dの長さ方向任意の位置にある状態で、ナット等の締め付けにより、その回転軸23cと感知レバー23bとが一体に回転する状態に固定することができる。このため、回転軸23cの位置を長孔23dの長さ方向に沿ってずらすことにより、感知レバー23bの先端23aと突出片部21eとの相対位置を調整することができる。
【0041】
このように、上下方向に揺動自在のアーム21に接触部21cを設け、チェーン10が弛むことによりそのチェーン10の下面が接触部21cに触れれば、連結部材24が切断されてアーム21が揺動する。アーム21の揺動を感知部23が検知すれば、チェーン10が許容量を超えて弛んでいることを容易に検知することができる。
【0042】
ここで、アーム21の揺動を検知する感知部23を、リターン側のチェーン10よりも上方に設けたので、感知部23を外部から容易に確認でき、スペース上の問題も生じない。また、搬送物から発生する粉塵や泥の堆積等により、感知部23の動作が支障する事態も生じにくく、感知部23の調整や部品の交換も容易である。
【0043】
さらに、この実施形態では、感知部23だけでなく、アーム21を揺動自在に支持する支持軸26aも、リターン側のチェーン10よりも上方に備えているので、搬送物から発生する粉塵や泥の堆積等により、アーム21の揺動が支障する事態も生じにくくなっている。
【0044】
なお、この実施形態では、感知部23を、キャリア側のチェーン10よりも下方に設けているが、可能であれば、感知部23を、キャリア側のチェーン10よりも上方に設けてもよい。また、支持軸26aを、キャリア側のチェーン10よりも上方に設けてもよい。
【0045】
連結部材24としては、チェーン10が許容量以上弛んだ際に、そのチェーン10が接触部21cを下方に押圧することで切断される素材であればよく、例えば、金属製の細い針金や紙類等を採用することもできるが、特に、繊維製の糸又は紐を採用することが望ましい。
【0046】
この実施形態では、弛み検知装置20は、チェーン10がスプロケット6に噛み合う反転部を離脱した直後の地点、すなわち、その反転部からチェーン10の進行方向下流側に位置するリターン部との境界付近に配置されていたが、保護板11等に支障しない限り、反転部から下流側へ比較的離れた位置のリターン部に弛み検知装置20を配置してもよい。
【0047】
この実施形態は、搬送装置としてのエプロンフィーダに用いられるコンベヤ用のチェーン10の弛み検知装置20について説明したが、エプロンフィーダ以外にも、ロスチェーンフィーダ、ベルトフィーダ等の他の搬送装置のコンベヤ用のチェーン10にも、この発明の弛み検知装置20を用いることができる。また、この発明の弛み検知装置20は、搬送装置のみならず、無端状のチェーン10を用いた各種装置にも用いることができる。