(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の通流管のうち、前記通流状態変更機構による前記閉塞対象の通流管の総流路断面積は、他の通流管の総流路断面積よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の注出装置。
前記複数の通流管のうち、前記通流状態変更機構による前記閉塞対象の通流管は、前記可搬容器が前記注出姿勢であるときに、前記他の通流管よりも相対的に下方となる位置に配設されていることを特徴とする請求項2または3に記載の注出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ピッチャーは業務用として樹脂製で収容量が1〜2L程度のものが広く使用されており、このピッチャーにビール等を満杯に収容したときには、ビール等の重さとピッチャー自体の重さで2kgを超える重さになってしまうことがある。ビール等の注出に不慣れな顧客自身が、このように重いピッチャーを扱って、ピッチャーからジョッキ等に雑に注ぐと、注がれたビール等がジョッキ等の内部のビール等の液面をたたき、泡だらけのビール等になってしまったり、逆にピッチャーからジョッキ等に注ぐ勢いが弱すぎると、泡が充分に立たないビール等になってしまったりする。このように、ジョッキ等の中にクリーミーな泡を適量に発生させることが非常に難しいという問題があった。
【0008】
また、ビアホール等以外の野外の行楽地や家庭内において、ピッチャーに限らず缶やビンのような可搬容器から個別のジョッキ等にビール等を注ぐ際にも、上述と同様にクリーミーな泡を適量に発生させることが難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、上述したような問題点を解決するためのものであり、可搬容器からジョッキ等に注がれた発泡性飲料に対して、熟練を要することなくクリーミーな泡を適量に付加することができる注出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による注出装置
の特徴構成は、可搬容器に取り付けられ、前記可搬容器に収容されている発泡性飲料を注出する注出装置であって、前記可搬容器に収容されている発泡性飲料を取り込む取込口と、前記取込口から取り込まれた発泡性飲料を注出する注出口と、前記取込口と前記注出口とを連通する通流経路と、前記通流経路を通流する発泡性飲料の通流状態を少なくとも第一注出状態または第二注出状態に変更する通流状態変更機構と、前記通流経路を通流する発泡性飲料に対して振動を付与する加振機構を備え
前記可搬容器を傾けた注出姿勢とすることによって、前記注出口から発泡性飲料が注出されるように構成されるとともに、前記通流状態変更機構は、前記注出口から注出される発泡性飲料の注出量を定量または少量に変更可能に構成され、前記第一注出状態は、前記注出量が定量であるときの状態であり、前記第二注出状態は、前記注出量が少量であるときの状態であり、前記加振機構は、前記第二注出状態であるときに起動する点にある。
【0011】
加振機構によって発泡性飲料に振動を付与すると溶存している炭酸ガスによって泡が発生する。通流状態変更機構によって発泡性飲料の通流状態が第一注出状態であるときには、加振機構によって振動を付与せず泡の発生を抑え、第二注出状態であるときに加振機構によって通流経路を通流する発泡性飲料に振動を付与することでキメ細かい泡を生じさせることができる。従って、熟練を要することなくクリーミーな泡を適量に付加することができる。
ジョッキ等に発泡性飲料を注出したいときには、通流状態変更機構によって注出口から注出される発泡性飲料の注出量を定量として所定の流量を確保することで、素早い注出が可能となる。一方、ジョッキ等に泡を注出したいときには、通流状態変更機構によって前記注出量を少量として、さらにその状態で泡を発生させることができる。つまり注出量が少量であるので、泡を発生させすぎる虞がなくなる。従って、ジョッキ等に対して、熟練を要することなく容易に適量の泡を注ぐことができる。
【0014】
本発明においては、前記通流経路は、少なくとも一つずつ備えられた前記取込口と前記注出口とを連通する複数の通流管で構成され、前記通流状態変更機構は、前記複数の通流管のうち少なくとも一つの通流管を閉塞することで、前記注出量を定量から少量に変更するように構成され、前記加振機構は、前記複数の通流管のうち閉塞されていない他の通流管を通流する発泡性飲料に対して振動を付与する
と好適である。
【0015】
複数の通流管を用意しておき、少なくともその一つを閉塞するという簡単な構成で、容易に注出量の変更が可能となる。
【0016】
本発明においては、前記複数の通流管のうち、前記通流状態変更機構による前記閉塞対象の通流管の総流路断面積は、他の通流管の総流路断面積よりも大きく設定されている
と好適である。
【0017】
閉塞対象の通流管は発泡性飲料の通流経路である。従って、当該通流経路の総流路断面積を、閉塞対象ではない通流管の総流路断面積より大きく設定することで、発泡性飲料の注出量を十分に確保することができる。閉塞対象ではない通流管は泡を発生させるための発泡性飲料の通流経路である。従って、当該通流経路の総流路断面積を、閉塞対象の通流管の総流路断面積より小さく設定することで、通流管内において確実に泡を発生させるとともに、泡の発生量を適量なものとすることができる。
【0018】
本発明においては、前記複数の通流管のうち、前記通流状態変更機構による前記閉塞対象の通流管は、前記可搬容器が前記注出姿勢であるときに、前記他の通流管よりも相対的に下方となる位置に配設されている
と好適である。
【0019】
ジョッキ等に発泡性飲料を注ぐときに、可搬容器内に発生している余分な泡が発泡性飲料とともに注出される虞が低減される。
【0020】
本発明においては、前記通流経路は、少なくとも一つずつ備えられた前記取込口と前記注出口とを連通する少なくとも一つの通流管で構成され、前記通流状態変更機構は、前記通流管の流路断面積を小さくすることで、前記注出量を定量から少量に変更するように構成され、前記加振機構は、前記通流管を通流する発泡性飲料に対して振動を付与する
と好適である。
【0021】
ジョッキ等に発泡性飲料を注出したいときには、通流状態変更機構によって注出口から注出される発泡性飲料の注出量を定量として所定の流量を確保することで、素早い注出が可能となる。一方、ジョッキ等に泡を注出したいときには、通流状態変更機構によって前記注出量を少量として、さらにその状態で泡を発生させることができる。つまり注出量が少量であるので、泡を発生させすぎる虞がなくなる。従って、ジョッキ等に対して、熟練を要することなく容易に適量の泡を注ぐことができる。
【0022】
本発明においては、前記通流状態変更機構は、操作部と、可動部と、前記通流管の少なくとも一部に配設された可撓性のチューブとを備え、前記可動部は前記操作部の操作に連動して、前記チューブを押圧変形させるとともに、前記加振機構の起動スイッチをオンする
と好適である。
【0023】
通流状態変更機構は可撓性のチューブを押圧変形させて通流管を閉塞する、または流路断面積を小さくする構成であるため、複雑で高価な機構を用いることなく簡素、軽量で安価に実現することができる。
【0024】
本発明においては、前記通流状態変更機構は、操作部と、可動部と、前記通流管の少なくとも一部に配設された流量変更弁とを備え、前記可動部は前記操作部の操作に連動して、前記流量変更弁の開度を変更させるとともに、前記加振機構の起動スイッチをオンする
と好適である。
【0025】
流量変更機構は、流量変更弁の開閉によって、通流管の閉塞または流路断面積を小さくする構成であるため、確実に流体の流量を変更することができる。
【0026】
本発明においては、前記通流状態変更機構は、前記可動部を所定の可動位置に保持する位置保持機構を備え、前記位置保持機構は、前記可動部が前記可動位置に保持されていないときに前記操作部が操作されると、前記可動部を前記可動位置に保持して前記注出量を少量に維持し、前記可動部が前記可動位置に保持されているときに前記操作部が操作されると、前記保持を解除して前記注出量を定量に維持する
と好適である。
【0027】
位置保持機構を備えることによって、操作部を操作し続けなくても、前記通流経路を通流する発泡性飲料の流量が少量に維持される。再度操作部を操作すると、前記流量が少量の状態が解除されることとなる。
【0028】
本発明においては、前記加振機構は、前記通流状態変更機構によって前記注出量が少量から定量に変更された際に停止する
と好適である。
【0029】
発泡性飲料の注出を停止する動作に伴って、加振機構も停止することができる。
【0030】
本発明による注出装置の特徴構成は、
可搬容器に取り付けられ、前記可搬容器に収容されている発泡性飲料を注出する注出装置であって、前記可搬容器に収容されている発泡性飲料を取り込む取込口と、前記取込口から取り込まれた発泡性飲料を注出する注出口と、前記取込口と前記注出口とを連通する通流経路と、前記通流経路を通流する発泡性飲料の通流状態を少なくとも第一注出状態または第二注出状態に変更する通流状態変更機構と、前記通流経路を通流する発泡性飲料に対して振動を付与する加振機構を備え、前記可搬容器の内部にガスを供給するガス供給機構を備え、前記ガス供給機構が供給したガスによって前記可搬容器の内圧を高めることによって、前記注出口から発泡性飲料が注出されるように構成されるとともに、前記注出口は、第一注出口と、第二注出口とを備え、前記通流経路は、前記取込口と前記第一注出口とを連通する第一通流経路と、前記取込口と前記第二注出口とを連通する第二通流経路を備え、前記通流状態変更機構は、前記第一通流経路または前記第二通流経路を選択可能に構成され、前記第一注出状態は、前記第一通流経路が選択されている状態であり、前記第二注出状態は、前記第二通流経路が選択されている状態であり、
前記加振機構は、前記第二注出状態であるときに起動する点にある。
【0031】
加振機構によって発泡性飲料に振動を付与すると溶存している炭酸ガスによって泡が発生する。通流状態変更機構によって発泡性飲料の通流状態が第一注出状態であるときには、加振機構によって振動を付与せず泡の発生を抑え、第二注出状態であるときに加振機構によって通流経路を通流する発泡性飲料に振動を付与することでキメ細かい泡を生じさせることができる。従って、熟練を要することなくクリーミーな泡を適量に付加することができる。通流状態変更機構によって第一通流経路を選択しているときには、加振機構によって振動を付与せず泡の発生を抑え、第二通流経路を選択しているときには、加振機構によって通流経路を通流する発泡性飲料に振動を付与することでキメ細かい泡を生じさせることができる。発泡性飲料と泡とで、夫々に適した通流経路を用意して使い分けることで、夫々に適した注出ができる。
【0032】
本発明においては、前記第一通流経路の流路断面積は、前記第二通流経路の流路断面積よりも大きく設定されている
と好適である。
【0033】
ジョッキ等に発泡性飲料を注出したいときには、通流状態変更機構によって流路断面積が大きい第一通流経路を選択することで、注出口から注出される発泡性飲料の注出量を定量として所定の流量を確保でき、素早い注出が可能となる。一方、ジョッキ等に泡を注出したいときには、通流状態変更機構によって流路断面積が小さい第二通流経路を選択することで、前記注出量を少量として、さらにその状態で泡を発生させることができる。つまり注出量が少量であるので、泡を発生させすぎる虞がなくなる。従って、ジョッキ等に対して、熟練を要することなく容易に適量の泡を注ぐことができる。
【0034】
本発明においては、前記可搬容器に供給されたガスを放出する放出経路を備え、前記通流状態変更機構は、前記第一通流経路及び前記第二通流経路のいずれも選択していないときに、前記放出経路を開放する
と好適である。
【0035】
ジョッキ等に発泡性飲料及び泡のいずれも注出していない状態のときには、可搬容器に供給されたガスを放出して、内部の加圧状態を解除することで、不意に発泡性飲料ないし泡が第一通流経路ないし第二通流経路を介して注出口から注出される虞が防止される。
【0036】
本発明においては、前記加振機構は超音波発生手段であり、前記超音波発生手段は超音波によって前記通流経路を介して当該通流経路を通流する発泡性飲料に振動を付与する
と好適である。
【0037】
超音波発生手段が派生する超音波の振動によって発生する泡のキメを細かなものとすることができる。
【0038】
本発明においては、前記超音波発生手段の振動周波数及び振動振幅の調整部を備えている
と好適である。
【0039】
調整部によって振動周波数及び振動振幅を変更することで注出される泡の状態を自在に調整することができる。発生する泡の状態は発泡性飲料の温度等の状態や種類、銘柄によっても異なるため、可搬容器に収容される発泡性飲料毎に最適な設定を複数個メモリできるようにしてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明に係る注出装置について説明する。
まず、本発明に係る注出装置の第一の実施形態について説明する。
ここでは、発泡性飲料としてのビールを例に説明する。また、ビールを収容する可搬容器としてピッチャーを例に説明する。なお、本明細書において「ビール」とは、上面発酵、下面発酵、自然発酵のもの、発泡酒等のビール風味の発泡アルコール飲料、ノンアルコールビール等のビールテイスト飲料等を広く含む概念であって、なんらか特定の種類や銘柄を排除するものではない。また、「ピッチャー」とは、ビールをジョッキ等に注出し分けるのに用いるビールピッチャーをいう。
【0042】
図1には、ピッチャー10と、ピッチャー10の開口部全体を蓋うように取り付けられた注出装置30が示されている。
【0043】
ピッチャー10は、業務用のものとして、その容量は2L程度のものが一般的であり、通常のジョッキ等数杯分のビールが収容可能である。ビアホール等において、従業員がビールディスペンサーからピッチャー10にビールを入れて、顧客のテーブルにおいて個別のジョッキ等に注出し分けたり、従業員がビールディスペンサーからビールを入れたピッチャー10の提供を受けた顧客自身が個別のジョッキ等に注出し分けたりするのに用いる。従って、本発明における「使用者」とは、ピッチャー10からジョッキ等にビールを注ぐ者をいう。
【0044】
図1、
図2、
図5を参照しながら、ピッチャー10について説明する。ピッチャー10は、ビールの収容する内側容器部11と、内側容器部11の外周に配置されて、内側容器部11との間に断熱空間を形成する外側容器部12を有している。内側容器部11及び外側容器部12は、夫々成型性、断熱性に優れたメタクリル樹脂等の合成樹脂材料によって成型されている。
【0045】
内側容器部11は、底壁部13から上端の開口部14にかけて上広がりの略円錐形状の周壁部15と、開口部14から外周全体に亘って外側下方に一体的に延出形成されたスカート部16とを備えている。開口部14の一部には、外方斜め上方に横断面形状がV字状をなすような注ぎ口17が形成されている。
【0046】
外側容器部12は、底壁部18と、底壁部18と一体的に形成された周壁部19とを備えている。周壁部19の上端部は内側容器部11のスカート部16の下端部と一体的に接合されて接合部20を構成する。外側容器部12の周壁部19には、注ぎ口17と対向する位置に、例えば使用者がピッチャー10を把持するための取手部21が設けられている。
【0047】
次に注出装置30について説明する。注出装置30は、本体部31と機械部32とを備えている。本体部31及び機械部32の外装自体はABS樹脂等の合成樹脂によって成型されている。本実施形態では、本体部31と機械部32を別体で構成しているが、本体部31と共通の外装に機械部32の機能を組み込んで一体に構成してもよい。
【0048】
まず、
図2、
図4、
図5を参照しながら、注出装置30の本体部31について説明する。本体部31は、下端開口部33から上端開口部34にかけて上広がりの略円錐形状の周壁部35と、周壁部35の内部の中腹に形成され、下端開口部33と上端開口部34を区画する区画部36と、周壁部35の上端から外周全体に亘って外側下方に延出したスカート部37を備えている。周壁部35の外周壁は、ピッチャー10の内側容器部11の注ぎ口17を含む開口部14の形状と略相似形状をなし、ピッチャー10に対して開口部14の上方から所定深さに圧入可能となっている。周壁部35の下方の外周壁には周方向にパッキン38が設けられ、周壁部35をピッチャー10の内側容器部11に圧入した際に、パッキン38によって内側容器部11と周壁部35の隙間がシールされ、ピッチャー10本体を傾けてもピッチャー10のビールが内側容器部11と周壁部35の隙間から外部に漏洩することが防止される。周壁部35の外周とスカート部37の内周の境界部39は、注出装置30をピッチャー10に取り付けたときに、周壁部35の外周とスカート部37の内周の隙間に進入したピッチャー10の開口部14の周縁部を周方向に部分的に覆うように構成されている。
【0049】
さらに、本体部31は、注出装置30をピッチャー10に取り付けたときに、内側容器部11のビールを注出するための通流経路40を備えている。
通流経路40は、注出装置30をピッチャー10に取り付けたときにピッチャー10の注ぎ口17と対応する位置であって、周壁部35の内部の所定位置に備えられ、ピッチャー10に収容されたビールを取り込む第一取込口41及び第二取込口42と、第一取込口41及び第二取込口42から取り込まれたビールをジョッキ等に注出する注出口43を連通する経路である。
【0050】
通流経路40は、ビール用通流管44と、ビールと泡の兼用通流管45と、ビール用通流管44と兼用通流管45との合流部46とを備えている。本体部31の内部では、ビール用通流管44は、
図6に示されるような、ピッチャー10がビールを注出するために傾けられた姿勢(以下、「注出姿勢」という。)であるときに、兼用通流管45よりも相対的に下方となる位置に配設されている。
【0051】
ビール用通流管44は、区画部36の下面のうち、注ぎ口17に対応する位置に形成された第一取込口41と、周壁部35の上面のうち、注ぎ口17に対応する位置に形成された注出口43を連通する。兼用通流管45は、区画部36の下面のうち、注ぎ口17に対応する位置であって、ピッチャー10が注出姿勢であるときに第一取込口41より上方となる位置に形成された第二取込口42と、ビール用通流管44の下流側であって、注出口43から斜め下方に分岐形成された合流部46とを連通する。従って、兼用通流管45は、一端が傾斜姿勢の合流部46に接続され、途中で湾曲して鉛直姿勢となり第二取込口42に接続される。
【0052】
ビール用通流管44及び兼用通流管45は、内部を通流するビールの圧力に耐えられ、少なくともビール用通流管44は外部からの負荷で変形可能な、適度な弾性を有する可撓性のチューブで構成されている。当該チューブを構成する材質は、内部を通流するビールの品質に影響を及ぼさない適当な材質が選択される。ビール用通流管44の流路断面積は、兼用通流管45の流路断面積よりも大きく設定されている。なお、ビール用通流管44と兼用通流管45の一本あたりの流路断面積は同じとし、ビール用通流管44の数を兼用通流管45より多くすることで、ビール用通流管44の流路断面積が、兼用通流管45の流路断面積よりも大きくなるように構成してもよい。
【0053】
区画部36には、通流経路40が配設された位置と対向する側の所定位置に、空気孔47が形成されている。空気孔47は、ピッチャー10のビールの液面上の内部空間と、本体部31の外部空間とを連通し、ビールの注出時のピッチャー10の内部空間の気圧と、ピッチャー10の外部空間の気圧差をなくす。これにより円滑なビールの注出が可能となっている。
【0054】
さらに、本体部31は、通流経路40を通流するビールの流量変更機構50を備えている。流量変更機構50は、操作部51と、操作部51に連動する可動部52を備えている。操作部51は、周壁部35とスカート部37の境界部39上の、本体部31の注出口43と対向する位置であって、ピッチャー10の取手部21の上方である位置に固定された支軸53と、支軸53周りに揺動可能に軸支された操作レバー54によって構成される。
【0055】
操作レバー54は、支軸53から本体部31の外側下方に向かって、使用者がピッチャー10の取手部21を把持した際に例えば親指によって押下容易な位置に向かって延出形成された押下部55と、支軸53から本体部31の内側下方に向けて延出形成された作用部56によって構成されている。
【0056】
可動部52は、区画部36の上面に載置される可動バー57を備えて構成されている。可動バー57は、区画部36の上面の所定位置に突出形成された一対のガイド部58に沿って所定方向に摺動可能に配置されている。
【0057】
可動バー57の一端には、本体部31の周壁部35の内周壁であって、ビール用通流管44に対応する位置に配置された受圧部59と協働して、当該ビール用通流管44を押圧して閉塞する押圧部60が配置されている。可動バー57の他端には、作用部56が当接する当接部61が配置されている。当接部61の作用部56が当接する部分の裏側には、区画部36の上面の所定位置に突出形成された受圧部62の間に圧縮バネ63が配設されている。従って、可動バー57は圧縮バネ63の弾性力によって作用部56側へと常時付勢されている。この、可動バー57が操作レバー54側にあるときの位置を「初期位置」という。
【0058】
使用者が操作レバー54を操作する、つまり、ピッチャー10の取手部21を把持した手の親指で押下部55を押すと、操作レバー54が支軸53回りに回転するのにともなって、作用部56が支軸53回りに回転して周壁部35から離間する方向へと移動し、当接部61を介して可動バー57を初期位置から圧縮バネ63の弾性力に対向する方向へと摺動させ、押圧部60が本体部31側の受圧部59と協働してビール用通流管44を構成するチューブを変形させて、ビール用通流管44が閉塞する。可動バー57が圧縮バネ63の弾性力に抗してビール用通流管44側に移動させられた状態であるときの位置を「押圧位置」という。
【0059】
このようにビール用通流管44が閉塞されたとき、ピッチャー10のビールは兼用通流管45のみから注出可能となっている。このようにして、流量変更機構50は、複数の通流管のうち少なくとも一つの通流管を閉塞することで、注出口43から注出されるビールの注出量を定量から少量に変更する。
【0060】
使用者が操作レバー54を離すと、つまり、押下部55の押し下げをやめると、圧縮バネ63の弾性力及びチューブ自体の弾性力によって可動バー57は押圧位置から移動して初期位置に戻され、通流経路40のビール用通流管44の閉塞が解除され、注出口43から注出されるビールの注出量は少量から定量へと変更される。即ち本実施形態では、流量変更機構50が通流経路40を通流するビールの通流状態を少なくとも第一注出状態または第二注出状態に変更する通流状態変更機構を構成し、ビール用通流管44が閉塞されていない状態が前記第一注出状態を構成し、ビール用通流管44が閉塞されている状態が第二注出状態を構成する。
【0061】
可動バー57は、さらに押圧部60と当接部61の間に、上方に向けて延出形成された連動部64を備えている。連動部64は、可動バー57の摺動に伴って移動し、後述する超音波発生器72の起動スイッチ75のオン/オフをする。
【0062】
さらに、本体部31は、可動バー57の一部と圧縮バネ63を含む部分を覆う保護蓋86を備えている。保護蓋86には、可動バー57の連動部64が進入可能なスリット87が形成されている。
【0063】
次に、
図2、
図3、
図5を参照しながら、注出装置30の機械部32について説明する。
機械部32は、本体部31の上方から周壁部35と区画部36に区画される空間に収容される筐体部70を備え、筐体部70の上部は、注出装置30の上端開口部34の天蓋を構成するように外方周囲に向けて延出形成されている。
【0064】
筐体部70には、加振機構71が収容されている。加振機構71は、通流経路40を通流するビールに対して振動を付与する超音波発生器72と、超音波発生器72の駆動回路が実装された基板73と、超音波発生器72の基板73に供給される電力源である二本の単三型の乾電池を収容する電池ボックス74と、超音波発生器72の動作のオン/オフのための起動スイッチ75とが電気的に接続されて構成されている。なお、電力源は、上述の乾電池に限らず、超音波発生器72を駆動するために必要な電力が得られるものであればよい。
【0065】
超音波発生器72は、基板73に実装された駆動回路によって駆動される圧電素子を備えた超音波発生手段であって、所定の振動周波数及び振動振幅の超音波を発生させるように構成されている。振動周波数は20〜40kHz程度に設定することが好ましい。超音波発生器72は、筐体部70の側方に斜め下方に向け周囲がガイドされるとともに、内部に配置された圧縮バネ76で外方へ付勢された状態で、その振動面77が外部に露出するように構成され、機械部32を本体部31に収容したときに、振動面77が通流経路40のうち合流部46に当接するように配設されている。従って、超音波発生器72が発生する超音波によって合流部46を振動させて、ビールは合流部46を通過する際に発泡が励起され、クリーミーな泡となって注出口43から注出される。
【0066】
筐体部70は、その下面に着脱自在な蓋体78を備え、当該蓋体78を開けた状態で加振機構71が内部に収容される。加振機構71は、図示しない螺子等で適宜筐体部70内に固定される。筐体部70の蓋体78の適当な位置には、保護蓋86のスリット87に対応した位置に、上述した可動バー57の連動部64が進入可能なスリット79が形成され、当該スリット79内の所定位置に起動スイッチ75が配設される。可動バー57の摺動に伴って連動部64が起動スイッチ75を押圧すると、電池ボックス74に収容された乾電池からの電力が基板73に供給され、駆動回路が超音波発生器72を起動する。起動スイッチ75は押圧されている間、オン状態を維持する。連動部64が起動スイッチ75から離間すると、基板73への電力の供給が停止し、超音波発生器72は停止する。
【0067】
基板73の駆動回路は、一定の振動周波数及び振動振幅で超音波を発生させるように超音波発生器72を駆動してもよいし、一回のオン状態を維持する中で、超音波発生器72により発生される振動の振動周波数及び振動振幅が変更される構成であってもよい。泡の注出の時期に応じて泡のキメの細かさを変えることができる。さらに、機械部32は、超音波発生器72のオン/オフのみではなく、超音波発生器72により発生される振動の振動周波数や振動振幅を可変に設定可能な調整部を備えてもよい。当該調整部によって振動周波数及び振動振幅を変更することで注出される泡の状態を自在に調整することができる。発生する泡の状態はビールの温度等の状態や種類、銘柄によっても異なるため、ピッチャー10に収容されるビール毎に最適な設定を複数個メモリできるようにしてもよい。
【0068】
超音波発生器72の設置位置は、通流経路40を通流するビールに超音波による振動を付与できる箇所であれば、任意に選択可能である。例えば、振動面77は、合流部46ではなく、兼用通流管45を構成するチューブに接触して、当該チューブを振動させて、当該チューブ内を通流するビールを発泡させる構成であってもよい。また、超音波発生器72の振動面77は、通流経路40の合流部46に常時接触している構成の他、振動時のみ合流部46に接触する構成であってもよく、さらに、通流経路40に埋設したり、通流経路40内壁に露出させビールに直接振動を付与したりする構成であってもよい。また、超音波発生器72は、一つに限らず複数個備えてもよい。さらに、基板73に実装された駆動回路に、遅延手段を備え、起動スイッチ75の投入後の所定時間後に超音波発生器72を起動したり、タイマーで所定時間だけ起動したり、またそれらを組み合わせてもよい。
【0069】
以上のように構成された注出装置30を用いたビールの注出について説明する。
ビールは、例えば従業員によって、ビールディスペンサーから泡立ちが極力抑えられるように、ピッチャー10に注出される。ピッチャー10に所定量のビールが収容されると、注出装置30がピッチャー10に取り付けられ、その状態で顧客に提供される。そして、ピッチャーの提供を受けた顧客が、個別のジョッキ等にビールを注出し分けることになる。
【0070】
顧客つまり使用者は、取手部21を持ってピッチャー10を持ち上げ、その姿勢(以下、「定常姿勢」という。)から徐々にピッチャー10を傾けた注出姿勢としながらジョッキ等へ注出し始める。この段階ではジョッキ等内の泡立ちが極力抑えられるよう緩やかに注ぐ。使用者は、ジョッキ等の7割程度までビールが注がれると、ピッチャー10の取手部21を把持した手の親指で操作レバー54の押下部55を押下げ操作する。
【0071】
すると、
図6に示すように、可動バー57の先端の押圧部60が受圧部59と協働してビール用通流管44を閉塞し、兼用通流管45のみが通流した状態となる。これに連動して、可動バー57の連動部64が起動スイッチ75をオンして、駆動回路が超音波発生器72を起動し、兼用通流管45の下流の合流部46を振動させる。ビールは合流部46を通過する際に振動が付与されて発泡が励起され、クリーミーな泡となって注出口42からジョッキ等に注出される。ジョッキ等に所望の量の泡が注出されると、使用者は、ピッチャー10を注出姿勢から定常姿勢に戻しながら、親指を押下部55から離す。以上のように、ピッチャー10からジョッキ等に注がれたビールに対して、熟練を要することなくクリーミーな泡を適量に付加することができる。
【0072】
次に、本発明に係る注出装置の第二の実施形態について説明する。以下の説明では、第一の実施形態と異なる部分について詳述し、同様の構成については同じ符号を付して説明を簡略ないし省略する。
図7に示すように、注出装置30の本体部31は、内側容器部11のビールを注出するための通流経路80を備えている。通流経路80は、注出装置30をピッチャー10に取り付けたときにピッチャー10の注ぎ口17と対応する位置であって、周壁部35の内部の所定位置に備えられ、ピッチャー10に収容されたビールを取り込む取込口81と、取込口81から取り込まれたビールをジョッキ等に注出する注出口82を連通する経路である。
【0073】
通流経路80は取込口81と注出口82を連通する可撓性のチューブ83で構成されている。当該通流経路80は、使用者が流量変更機構50の操作レバー54を操作する、つまり、ピッチャー10の取手部21を把持した手の親指で押下部55を押すと、操作レバー54が支軸53回りに回転するのにともなって、作用部56が支軸53回りに回転して周壁部35から離間する方向へと移動し、当接部61を介して可動バー57を摺動させ、押圧部60が本体部31側の受圧部59と協働して通流経路80を構成するチューブ83を変形させて、流路断面積を小さくすることで、注出口83から注出されるビールの注出量を定量から少量に変更する。
【0074】
使用者が操作レバー54を離すと、つまり、押下部55の押し下げをやめると、圧縮バネ63の弾性力及びチューブ自体の弾性力によって可動バー57は押圧位置から移動して初期位置に戻され、通流経路80の変形が解除され、注出口83から注出されるビールの注出量は少量から定量へと変更される。即ち本実施形態では、流量変更機構50が通流経路80を通流するビールの通流状態を少なくとも第一注出状態または第二注出状態に変更する通流状態変更機構を構成し、通流経路80が変形されていない状態が前記第一注出状態を構成し、通流経路80が変形されている状態が第二注出状態を構成する。
【0075】
超音波発生器72の振動面77は、通流経路80のうち一端部が注出口82を構成する配管部84に当接するように配設されている。操作レバー54の操作によって、チューブ83が流路断面積が小さくなるように変形されるのに連動して、可動バー57の連動部64が起動スイッチ75をオンして、駆動回路が超音波発生器72を起動し、配管部84を振動させる。ビールは配管部84を通過する際に振動が付与されて発泡が励起され、クリーミーな泡となって注出口82からジョッキ等に注出される。ジョッキ等に所望の量の泡が注出されると、使用者は、ピッチャー10を注出姿勢から定常姿勢に戻しながら、親指を押下部55から離す。以上のように、ピッチャー10からジョッキ等に注がれたビールに対して、熟練を要することなくクリーミーな泡を適量に付加することができる。なお、振動面77は、配管部84に接触する構成に限らず、チューブ83に接触して、チューブ83を振動させ、チューブ83内を通流するビールに振動を付与して発泡させる構成であってもよい。
【0076】
次に本発明に係る注出装置の第三の実施形態について説明する。以下の説明では、第一の実施形態と異なる部分について詳述し、同様の構成については同じ符号を付して説明を簡略ないし省略する。
【0077】
図8には、ピッチャー10と、ピッチャー10の開口部全体を蓋うように取り付けられた注出装置301が示されている。注出装置301は、本体部311と機械部321とで構成されている。
【0078】
図8、
図9を参照しながら、注出装置301の本体部311について説明する。
本体部311は、下端開口部33から上端開口部34にかけて上広がりの略円錐形状の周壁部35と、周壁部35の内部の中腹に形成され、下端開口部33と上端開口部34を区画する区画部36と、開口部14の上端から全周に亘ってまたは周方向に部分的に外側下方に延出したスカート部371を備えている。周壁部35の外周壁は、ピッチャー10の内側容器部11の注ぎ口17を含む開口部14の形状と略相似形状をなし、ピッチャー10に対して開口部14の上方から所定深さに挿入可能となっている。
周壁部35の外周とスカート部371の内周の境界部39には、全周に亘ってパッキン381が設けられ、注出装置301をピッチャー10に取り付けた際にパッキン381によって内側容器部11と境界部39の隙間がシールされ、ピッチャー10本体を傾けてもピッチャー10のビールが内側容器部11と境界部39の隙間から外部に漏洩することが防止される。
【0079】
さらに、本体部311は、注出装置301をピッチャー10に取り付けたときに、内側容器部11のビールを注出するための通流経路401を備えている。
通流経路401は、第一取込口41及び第二取込口42と、第一取込口41及び第二取込口42から取り込まれたビールを注出する注出口43を連通する経路である。
通流経路401は、ビール用通流管441と、ビールと泡の兼用通流管451と、ビール用通流管441と兼用通流管451との合流部461を備えている。本体部311の内部では、ビール用通流管441は、
図13に示されるような、注出姿勢であるときに、兼用通流管451よりも相対的に下方となる位置に配設されている。
【0080】
ビール用通流管441は、区画部36の下面のうち、注ぎ口17に対応する位置に形成された第一取込口41と、周壁部35の上面のうち、注ぎ口17に対応する位置に形成された注出口43を連通する。兼用通流管451は、区画部36の下面のうち、注ぎ口17に対応する位置であって、ピッチャー10が注出姿勢であるときに第一取込口41より上方となる位置に形成された第二取込口42と、ビール用通流管441の下流側であって、注出口43から斜め下方に分岐形成された合流部461とを連通する。従って、兼用通流管451は、一端が傾斜姿勢の合流部461に接続され、途中で屈曲して鉛直姿勢となり第二取込口42に接続される。
【0081】
ビール用通流管441の流路断面積は、兼用通流管451の流路断面積よりも大きく設定されている。なお、ビール用通流管441と兼用通流管451の一本あたりの流路断面積は同じとし、ビール用通流管441の数を兼用通流管451より多くすることで、ビール用通流管441の流路断面積が、兼用通流管451の流路断面積よりも大きくなるように構成してもよい。ビール用通流管441及び兼用通流管451は、内部を通流するビールの圧力に耐えることができる配管で構成されている。当該配管を構成する材質は、内部を通流するビールの品質に影響を及ぼさない適当な材質が選択され、例えばPPやPOM等の樹脂が好ましく例示される。
【0082】
さらに、本体部311は、通流経路401を通流するビールの流量変更機構501を備えている。流量変更機構501は、操作部51と、操作部51に連動する可動部521と、ビール用通流管441に配設された流量変更弁48とを備えて構成されている。
【0083】
可動部521は、区画部36の上面に載置される可動バー571を備えて構成されている。可動バー571は、区画部36の上面の所定位置に突出形成された一対のガイド部58に沿って所定方向に摺動可能に配置されている。
【0084】
可動バー571は、前方部571aと、後方部571bと、それらを接続する中間部571cを備えた平面視クランク形の部材で構成されている。前方部571aには、後述するピニオンギア484と協働して、後述する弁体482を回動させるためのラックギア601が配設されている。後方部571bには、作用部56が当接する当接部611が配設されている。中間部571cの左方には、区画部36の上面の所定位置に突出形成された受圧部62の間に圧縮バネ63が配設されている。従って、可動バー571は圧縮バネ63の弾性力によって作用部56側へと常時付勢されている。
【0085】
図11(a),(b)に示すように、可動部521には、可動バー571を、圧縮バネ63の弾性力に抗してビール用通流管441側の所定位置に維持する位置保持機構90が備えられている。位置保持機構90は、後方部571bに配設された平面視ハート形の案内溝91と、鉤状の先端92aが案内溝91内を摺動可能に配置され、鉤状の後端92bが受圧部62の側部に回動可能に保持されたピン92を備えて構成されている。
【0086】
案内溝91の底面の深さは、
図11(a)に示されたピン92の先端92aの配置箇所から平面視で反時計方向に浅くなるように傾斜し、段差部91aで深くなり、該深くなった箇所から平面視で反時計方向に沿って浅くなるように傾斜し、段差部91bで再度深くなるように形成されている。また、案内溝91内には、平面視ハート形の島状に形成されたピン受け部91cが配設されており、ピン受け部91cに対向する案内溝91の内壁凸部91dは、ピン受け部91cに対して図中下方に少しずれて配設されている。
【0087】
操作部51の操作レバー54を操作すると、可動バー571が圧縮バネ63の弾性力に抗して左方に移動するのに伴って、ピン92の先端92aは、段差部91bによって時計方向の移動が規制されているため、案内溝91内を反時計方向に摺動する。
ピン92aの先端92aが段差部91bを通過した後に、操作レバー54の操作をやめると、可動バー571は、圧縮バネ63の弾性力によって右方への移動しようとするので、先端92aはピン受け部91cに嵌合する。これにより、可動バー571は、圧縮バネ63の弾性力に抗してビール用通流管441側に移動させられた所定位置で保持される。この状態であるときの位置を「可動位置」と称する。
【0088】
再度、操作部51の操作レバー54を操作すると、可動バー571が圧縮バネ63の弾性力に抗して左方に移動するのに伴って、ピン92の先端92aは、ピン受け部91cから離脱させられ、内壁凸部91dに沿って案内溝91内の上方に案内される。このようにして、位置保持機構90による可動バー571の保持が解除される。
その後操作レバー54の操作をやめると、その後圧縮バネ63の弾性力によって可動バー571が初期位置の方向へ移動するのに伴って案内溝91内を反時計方向に摺動する。ピン92の先端92aは段差部91bを通過し、
図11(a)に示す位置に戻り、従って可動バー571も初期位置に戻る。
なお、可動バー571の一部と、圧縮バネ63と、位置保持機構90とを含む部分は、着脱可能な保護蓋861によって覆われている。
【0089】
流量変更弁48は、ビール用通流管441の途中に配設された筒状の弁保持部481と、弁保持部481の内部に回動可能に保持された弁体482とを備えて構成されている。
弁体482にはビール用通流管441に連通可能な通流路483が貫通形成され、さらに軸心方向の一端面にはピニオンギア484が一体的に備えられている。ラックギア601の前後移動によってピニオンギア484及び弁体482が回転し、流量変更弁48は、
図13に示すように、通流路483がビール用通流管441に連通するように開いたり、
図14に示すように、通流路483がビール用通流管441に連通しないように閉じたりする。
【0090】
以上の構成により、使用者が操作レバー54を操作すると、可動バー571がビール用通流管441側へと移動し、ラックギア601がピニオンギア484を介して弁体482を回動させて流量変更弁48が閉じ、ビール用通流管441が閉塞する。このとき、位置保持機構90によって、ピン92の先端92aは、ピン受け部91cに嵌合して、可動バー571は可動位置に保持される。従って、使用者は操作レバー54の操作をし続ける必要はない。
【0091】
ビール用通流管441が閉塞されたときには、ピッチャー10のビールは兼用通流管451のみから注出可能となっている。このようにして、流量変更機構501は、複数の通流管のうち少なくとも一つの通流管を閉塞することで、注出口43から注出されるビールの注出量を定量から少量に変更する。
使用者が操作レバー54を再度操作すると、位置保持機構90によるピン92の移動の規制が解除され、圧縮バネ63の弾性力によって可動バー57が初期位置に戻るのにともなって、ラックギア601がピニオンギア484を介して弁体482を回動させ、流量変更弁48が開き、通流経路40のビール用通流管44は閉塞が解除され、注出口43から注出されるビールの注出量は少量から定量へと変更される。即ち本実施形態では、流量変更機構501が通流経路401を通流するビールの通流状態を少なくとも第一注出状態または第二注出状態に変更する通流状態変更機構を構成し、ビール用通流管441が流量変更弁48によって閉塞されていない状態が前記第一注出状態を構成し、ビール用通流管441が流量変更弁48によって閉塞されている状態が第二注出状態を構成する。
【0092】
可動バー57は、作用部56の上方に、前方に向けて延出形成された連動部641を備えている。連動部641は、可動バー57の摺動に伴って前後移動し、後述する超音波発生器72の起動スイッチ751のオン/オフをする。なお、起動スイッチ571も、位置保持機構90によって、操作レバー54を安定して操作し続けなくても、オン状態が維持される。
【0093】
次に、
図9、
図12を参照しながら、注出装置301の機械部321について説明する。
機械部321は、本体部311の上方から周壁部35と区画部36に区画される空間に収容される筐体部701を備えている。筐体部701には、ピッチャー10の周壁部35に跨るように一対の脱落防止レバー372が配設されている。
【0094】
筐体部701の天面には取手702が備えられ、取手702には、取手702内部に配設された圧縮バネ703によって互いに離間するように付勢される一対のボタン部材704が配設されている。ボタン部材704には、筐体部701の天面内部に沿って、径方向に延出した延出部705が一体形成され、延出部705の先端に、脱落防止レバー372の上端が接続されている。脱落防止レバー372は、パッキン381の部分を中心として回動可能に配置されており、周壁部35の上端から外側下方に延出し、その下端にピッチャー10の外周の被係止部、例えば接合部20に係止するための爪部372aを備えている。
【0095】
注出装置301をピッチャー10に取り付ける際には、ピッチャー10に対して注出装置301を下方に挿入する。爪部372aは、先端の傾斜面がピッチャー10の接合部20に当接して摺動しながら、押し広げられる。
落防止レバー372は、パッキン381の部分を中心に回動し、これによって延出部705は、圧縮バネ703の弾性力に抗して径方向内側に移動させられる。
開口部14の上端が注出装置301のパッキン381に接触した位置まで挿入され、爪部372aが接合部20に係止可能な位置になると、圧縮バネ703の弾性力によって、延出部705は径方向外側に移動させられ、落防止レバー372はパッキン381の部分を中心に回動して、爪部372aが接合部20に係止される。
このように、落防止レバー372の爪部372aが、ピッチャー10の接合部20に係止されるので、注出装置301はピッチャー10に確実に固定され、ビールを注ぐ際にピッチャー10から注出装置301が不意に脱落するような虞が排除される。
【0096】
両ボタン部材704を圧縮バネ703の弾性力に抗して押圧すると、両延出部705は径方向内側に移動し、両脱落防止レバー372はパッキン381の部分を中心に回動して、爪部372aが接合部20から離間するように開いて係止が解除される。その状態で、注出装置301をピッチャー10から引き上げることで、注出装置301をピッチャー10から取り外すことができる。
【0097】
筐体部701には、加振機構71を構成する超音波発生器72と、超音波発生器72の駆動回路が実装された基板73と、超音波発生器72の基板73に供給される電力源である3本の単三型の乾電池を収容する電池ボックス74と、超音波発生器72の動作のオン/オフのための起動スイッチ751と、超音波発生器72が駆動状態であることを報知するために点灯し、前記乾電池の電圧が所定の閾値電圧以下になると乾電池の交換を促すために点滅するように制御されるLED85が電気的に接続されて収容されている。
なお、筐体部70は、電池ボックス74の蓋部にパッキンを備え、前記蓋部を前記パッキンに押圧した状態で、固定する締め付け機構を備えており、IP04程度の防水性能を備えている。
【0098】
起動スイッチ751は、操作レバー54の連動部641と対向する位置に配設されている。操作レバー54の操作により連動部641が起動スイッチ751を押圧すると、電池ボックス74に収容された乾電池からの電力が基板73に供給され、駆動回路が超音波発生器72を起動する。起動スイッチ751は押圧されている間、オン状態を維持する。作用部56が起動スイッチ751から離間すると、基板73への電力の供給が停止し、超音波発生器72は停止する。
【0099】
超音波発生器72は、その振動面77が通流経路401のうち合流部461に当接するように配設されている。従って、超音波発生器72が発生する超音波によって合流部461が振動し、ビールは合流部461を通過する際に発泡が励起され、クリーミーな泡となって注出口43から注出される。
【0100】
以上の構成により、可搬容器からジョッキ等に注がれた発泡性飲料に対して、熟練を要することなくクリーミーな泡を適量に付加することができる注出装置を提供することができるようになった。
【0101】
なお、上述した第三の実施形態では、通流経路401は、ビール用通流管441と、ビールと泡の兼用通流管451と、ビール用通流管441と兼用通流管451との合流部461を備えて構成されているが、通流経路401は、兼用通流管451、合流部461、及び第二取込口42を備えない構成であってもよい。
この場合、ビール用通流管441に備えられる流量変更弁48は、可動バー571が可動位置にあるときでも、ビール用通流管441を完全に閉塞してしまわないように閉じることで、注出口43から注出される発泡性飲料の流量を定量から少量にするように構成される。
【0102】
上述した第三の実施形態が備える位置保持機構90は、第一及び第二の実施形態に適用することもできる。位置保持機構90によって可動バー57を押圧位置に保持することができるので、操作レバー54の操作をやめても、可動バー57はチューブを閉塞し続けるように構成する。従って、使用者は泡の注出時に操作レバー54を操作し続けておく必要がなくなる。
【0103】
また、第三の実施形態が備える起動スイッチ751と連動部641は、第一及び第二の実施形態に適用することもできる。さらに、第三の実施形態が備える落防止レバー372は第一及び第二の実施形態に適用することもできる。
【0104】
本発明による注出装置30は、上述の二重構造のピッチャー10に限らず、その他の例えば断熱空間を備えないピッチャーにも取り付け可能に構成することもできる。また、注出装置30は、ピッチャー10の開口部全体を覆うものに限らない。例えば、一部開口部が露出するような構成でもかまわない。
【0105】
上述した第一から第三の実施形態では、可搬容器が、ピッチャー10である場合について説明したが、可搬容器は、缶、ビン、樹脂製の容器であってもよい。
以下に、可搬容器が缶である場合を例に、本発明に係る注出装置の第四の実施形態について説明する。
【0106】
図15(a)、(b)、(c)及び
図16に示すように、注出装置100は、背面の開口104から缶101を収納できる収納部111と、収納部111に収納された缶101からビールないし泡をその前面上方に配設された第一注出口121または第二注出口122を介して注出するための配管部120とが配設された下筐体部102と、天面に備えた操作レバー164の操作に基づいて、配管部120を制御してビールないし泡の注出が可能な制御部150が配設された上筐体部103とを備えている。下筐体部102の下部には、下筐体部102より大きく構成された円板状の土台部112が備えられ、土台部112の前方には、第一注出口121または第二注出口122からこぼれたビールないし泡を受ける受け部113が配設されている。
【0107】
上筐体部103は側面に一対の係合部107を備え、下筐体部102の周囲に配設された被係合部108と係合可能となっている。係合部107と被係合部108の係合/解除をすることで、上筐体部103は下筐体部102に対して着脱可能に構成されている。
【0108】
土台部112の中央には、缶101の底面の凹みに嵌合可能な凸部を有する載置部114が配設されている。載置部114の底面には、深さが周方向に沿って徐々に深くなる傾斜面115が配設されている。
【0109】
土台部112の内部であって、載置部114の下方には、ハンドル116aを備えた下部摺動部材116が配設されている。下部摺動部材116は、ハンドル116aを缶101の垂直方向の軸心周りに操作することで、土台部112内で前記軸心周りに摺動する。下部摺動部材116には、載置部114の傾斜面115に当接可能な突出部117が配設されている。突出部117は、傾斜面115の最深部の深さと同程度の長さを有する。突出部117は、下部摺動部材116の摺動に伴って傾斜面115に沿って摺動し、傾斜面115が浅くなるのに伴って、傾斜面115の最深部と最浅部との差の分だけ、載置部114を押し上げる。
【0110】
下筐体部102の内部上方には、缶101の天面を覆蓋可能なパッキン118が配設されている。パッキン118には缶の天面周囲の巻締部105に対応する位置に、巻締部105を収容可能な凹部119が形成されている。
載置部114からパッキン118までの距離は、缶101の高さに傾斜面115の最深部と最浅部との差を加えた距離より僅かに短い距離であって、載置部114が最低位置にあるときに、缶101をスムーズに載置できる距離に設定されている。また、缶101の巻締部105から凹部119までの距離は、傾斜面115の最深部と最浅部との差の距離よりも短い距離に設定され、載置部114を上方に押し上げたときに、巻締部105が凹部119に押し当てられるように構成されている。これにより、載置部114が最低位置にある状態で、缶101を載置部114に載置して、下部摺動部材116の前記ハンドルを操作することによって載置部114を押し上げると、缶101の巻締部105は、パッキン118の凹部119に押し当てられ、強固にシールされる。
【0111】
なお、載置部114からパッキン118までの距離は、缶101が、500ml缶、350ml缶、330ml缶のいずれも載置できるように、500ml缶の高さを基準に設定されている。従って、350ml缶や330ml缶を用いる場合は、夫々500ml缶との高さの差を補うためのスペーサ部材を載置部114の上に載置し、前記スペーサ部材の上に350ml缶や330ml缶を載置することとなる。なお、開口104も500ml缶を出し入れ可能な大きさに設定されている。
【0112】
パッキン118の天面には、缶101のタブを操作することで形成される飲み口106に挿通可能な配管123が垂設されている。配管123は、下端部の取込口123aが缶101の底面に十分到達する長さに設定され、上端部がパッキン118を貫通して配管部120に接続されている。さらに、パッキン118には、配管部120側から缶101側へガスを流入する、または缶101側から配管部120側へガスを流出するためのガス流路124が配設されている。なお。上筐体部103、下筐体部102、土台部112及び載置部114等の外装部品はABS樹脂等の合成樹脂によって成型されている。
【0113】
図17及び
図18に示すように、配管部120は、取込口123aから取り込んだビールがバッファされるマニホールド125を備え、第一注出口121にいたる第一注出配管126及び第二注出口122にいたる第二注出配管127が夫々マニホールド125に連通されている。従って、取込口123aからマニホールド125と第一注出配管126を介して第一注出口121にいたる経路が第一通流経路128を構成し、取込口123aからマニホールド125と第二注出配管127を介して第二注出口122にいたる経路が第二通流経路129を構成する。第一注出配管126の流路断面積は、第二注出配管127の流路断面積より大きく設定されている。なお、配管部120を構成する材質、内部を通流するビールの品質に影響を及ぼさない適当な材質が選択され、例えばPP、POM及びABS樹脂等の樹脂が好ましく例示される。
【0114】
さらに、配管部120は、ガス流路124に連通するチャンバ130を備えている。チャンバ130は、外部空間と連通する放出口131に連通されている。従って、缶101からガス流路124、チャンバ130及び放出口131を介した外部空間までの経路が放出経路を構成する。
【0115】
図16に戻り、上筐体部103は、配管部120の第二通流経路129を振動させる加振機構140と、チャンバ130にガスを供給するガス供給機構Aと、これらの制御部150を備えている。
【0116】
加振機構140は、第二通流経路129を通流するビールに対して振動を付与する超音波発生器141を備えている。ガス供給機構Aは、ポンプ170と、ポンプ170を駆動するモータ171を備えている。
【0117】
制御部150は、超音波発生器141の駆動回路と、モータ171の駆動回路が実装された基板と、前記基板に供給される電力源である二本の単三型の乾電池を収容する電池ボックスと、超音波発生器141のオン/オフのための起動スイッチ173、モータ171のオン/オフのための起動スイッチ172が電気的に接続されて構成されている。なお、電力源は、上述の乾電池に限らず、超音波発生器141やモータ171を駆動するために必要な電力が得られるものであればよい。
【0118】
超音波発生器141は、前記基板に実装された駆動回路によって駆動される圧電素子を備えた超音波発生手段であって、所定の振動周波数及び振動振幅の超音波を発生させるように構成されている。振動周波数は20〜40kHz程度に設定することが好ましい。超音波発生器141は、上筐体部103内で下方に向け周囲がガイドされるとともに、内部に配置された圧縮バネ144(
図19参照)で下方へ付勢された状態で、その振動面145が外部に露出するように構成され、振動面145が第二通流経路129に当接するように配設されている。従って、超音波発生器141が発生する超音波によって第二通流経路129を振動させて、ビールは第二通流経路129を通過する際に発泡が励起され、クリーミーな泡となって第二注出口122から注出される。
【0119】
操作レバー164を傾けると起動スイッチ173がオンされ、前記乾電池からの電力が前記基板に供給され、駆動回路が超音波発生器141を起動する。起動スイッチ173は操作レバー164を傾けている間、オン状態を維持する。操作レバー164を元に戻すと起動スイッチ173がオフされ、前記基板への電力の供給が停止し、超音波発生器141は停止する。
【0120】
上述のように、加振機構140は、操作レバー164の操作に連動し、第一弁体152が閉じて、第二弁体152が開いているとき、即ち第一通流経路128が閉塞し、第二通流経路129が連通しているときに起動する。第一通流経路128及び第二通流経路129を通流するビールのうち、第二通流経路129を通流するビールのみが発泡する。
【0121】
駆動回路は、一定の振動周波数及び振動振幅で超音波を発生させるように超音波発生器141を駆動してもよいし、一回のオン状態を維持する中で、超音波発生器141により発生される振動の振動周波数及び振動振幅が変更される構成であってもよい。泡の注出の時期に応じて泡のキメの細かさを変えることができる。さらに、駆動回路に、超音波発生器141のオン/オフのみではなく、超音波発生器141により発生される振動の振動周波数や振動振幅を可変に設定可能な調整部を備えてもよい。当該調整部によって振動周波数及び振動振幅を変更することで注出される泡の状態を自在に調整することができる。発生する泡の状態はビールの温度等の状態や種類、銘柄によっても異なるため、銘柄等毎に最適な設定を複数個メモリできるようにしてもよい。
【0122】
超音波発生器141の設置位置は、第二通流経路129を通流するビールに超音波による振動を付与できる箇所であれば、任意に選択可能である。例えば、超音波発生器141は、第二通流経路129に常時接触している構成の他、振動時のみ第二通流経路129に接触する構成であってもよく、さらに、第二通流経路129に埋設したり、第二通流経路129内壁に露出させビールに直接振動を付与したりする構成であってもよい。また、超音波発生器141は、一つに限らず複数個備えてもよい。さらに、前記基板に実装された駆動回路に、遅延手段を備え、起動スイッチ173の投入後の所定時間後に超音波発生器141を起動したり、タイマーで所定時間だけ起動したり、またそれらを組み合わせてもよい。
【0123】
ポンプ170は、前記基板に実装された駆動回路によって駆動されるモータ171によって駆動し、外気をチャンバ130に供給するように構成されている。供給するガスの圧力は缶101内部のビールの液面を押圧することで、ビールを第一注出口121または第二注出口122から注出できる所定の圧力に設定される。
【0124】
操作レバー164を傾けると起動スイッチ172がオンされ、前記乾電池からの電力が前記基板に供給され、駆動回路がモータ171を起動する。起動スイッチ172は操作レバー164を傾けている間、オン状態を維持する。操作レバー164を元に戻すと起動スイッチ172がオフされ、前記基板への電力の供給が停止し、モータ171は停止する。
【0125】
ポンプ170によってガスをチャンバ130に供給すると、当該ガスは、ガス流路124を介してパッキン118と缶101の天面とで区画された空間、さらに飲み口106を介して、缶101の内面とビールの液面とで区画された空間に供給される。
【0126】
ポンプ170によって供給されたガスにより缶101の内圧は高められ、つまりビールの液面が下方に押圧され、ビールは取込口123a及び配管123を介してマニホールド125へと押出される。そして、第一通流経路128または第二通流経路129を介して第一注出口121または第二注出口122から注出される。
【0127】
図17及び
図18に示すように、制御部150は、配管部120の第一注出配管126を閉塞可能な第一弁体151と、第二注出配管127を閉塞可能な第二弁体152と、放出口131を閉塞可能な第三弁体153とを備えている。
【0128】
各弁体151、152、153は同様の構成であるため、第一弁体151についてのみその構成を詳述し、他は省略する。
第一弁体151は、弁支持部151a内で上下に摺動可能に収容される弁本体部151bと、弁本体部151bの上端に接続される弁頭部151cと、弁本体部151bの下部を覆う弁脚部151dを備えている。
弁支持部151aと、弁頭部151cの間には、第一弁体151を上方に付勢する圧縮コイルバネ151eが配設されている。
弁脚部151dは、上端が弁支持部151a側に固定され、下端が弁本体部151bの上下動に伴って上下移動可能なジャバラ部材で構成されている。
弁頭部151cを圧縮コイルバネ151eの弾性力に抗して下方に押圧すると、前記弾性力によって弁本体部151bが弁支持部151a内で下方に移動し、弁脚部151dは、その下面で、マニホールド125から第一注出配管126にいたる通流口126aを閉塞する。
【0129】
さらに、制御部150は、操作レバー164の操作に基づいて各弁体151、152、153の開閉を制御するカム機構160を備えている。
図19及び
図20に示すように、カム機構160は、操作レバー164が取り付けられた軸部165と軸部165を枢支する支持体166と、軸部165に取り付けられた第一カム161、第二カム162、第三カム163とを備えている。
第一カム161、第二カム162、第三カム163は、操作レバー164を傾ける操作による軸部165の回動に伴って回動して、その周面で第一弁体151、第二弁体152、第三弁体153を下方に押圧可能な板カムで構成されている。
【0130】
第一カム161は、操作レバー164を一方に傾けたときには、第一弁体151の下方への押圧を解除し、操作レバー164を傾けないときまたは他方に傾けたときには、第一弁体151を下方に押圧するように偏心した形状をしている。第一カム161の周面には、操作レバー164を傾けないときに上方となる位置に規制部161bが延出形成されている。規制部161bは、操作レバー164を前記一方に傾けたときに、支持体166に設けられたストッパに当接して、操作レバー164のそれ以上の回動を規制する。または、第一カム161の側方に設けられたトーションバネ161cによって、第一カム161に対して、操作レバー164を前記一方に傾けたときに、その弾性力によって操作レバー164を前記他方側へ付勢することで、操作レバー164の必要以上の回動を規制するように構成してもよい。また、これらを組み合わせてもよい。
【0131】
第一カム161の周面には外方に延出した延出部161aが形成され、操作レバー164を傾けないときまたは前記一方に傾けたときには、延出部161aがポンプ170の起動スイッチ172から離間しているが、操作レバー164を前記他方に傾けたときには、延出部161aがポンプ170の起動スイッチ172に当接してオンするように構成されている。
さらに、第一カム161側にのみ、起動スイッチ172の側方に、加振機構140の起動スイッチ173が配設され、延出部161aによって、起動スイッチ172のオン/オフと同時にオン/オフがなされるように構成されている。
【0132】
第二カム162は、基本的に第一カム161と同じ形状をしているが、操作レバー164に対して180度回転対称となるように配置されている。
第二カム162の周面には、操作レバー164を傾けないときに上方となる位置に規制部162bが延出形成されている。規制部162bは、操作レバー164を前記他方に傾けたときに、支持体166に設けられたストッパに当接して、操作レバー164のそれ以上の回動を規制する。または、第二カム162の側方に設けられたトーションバネ162cによって、第二カム162に対して、操作レバー164を前記他方に傾けたときに、その弾性力によって操作レバー164を前記一方側へ付勢することで、操作レバー164の必要以上の回動を規制するように構成してもよい。また、これらを組み合わせてもよい。
【0133】
第二カム162の周面には外方に延出した延出部162aが形成され、操作レバー164を傾けないときまたは操作レバー164を前記一方に傾けたときには、第二弁体152を下方に押圧し、前記他方に傾けたときには、第二弁体152の下方への押圧を解除するようになっている。
操作レバー164を前記一方に傾けたときには、突出部162aがポンプ170の起動スイッチ172に当接してオンし、操作レバー164を傾けないときまたは前記他方に傾けたときには、突出部162aがポンプ170の起動スイッチ172から離間するように構成されている。
【0134】
第三カム163は、操作レバー164を前記一方及び前記他方に傾けたときには、第三弁体153を下方に押圧し、操作レバー164を傾けないときには第三弁体153を下方に押圧しないように偏心した形状をしている。
【0135】
従って、配管部120及びカム機構160が、操作レバー164を前記一方に傾けたときに第一通流経路128を介してビールを注出する第一注出状態と、操作レバー164を前記他方に傾けたときに第二通流経路129を介して泡を注出する第二注出状態とを選択可能な通流状態変更機構を構成する。なお、前記通流状態変更機構は、操作レバーを前記他方に傾けたときに第一通流経路128を介してビールを注出する第一注出状態と、操作レバー164を前記一方に傾けたときに第二通流経路129を介して泡を注出する第二注出状態とを選択可能に構成してもよい。
【0136】
さらに、通流状態変更機構は、第一通流経路128及び第二通流経路129のいずれも選択していないときに、つまり操作レバー164を傾けないときに、放出口131を開放し、缶101の内部に供給されたガスを抜き、高められた内圧を大気圧に戻す。このように缶101の内部の加圧状態を解除することで、不意にビールないし泡が第一注出口121や第二注出口122から注出される虞が防止される。
【0137】
以上のように構成された注出装置100を用いたビールの注出について説明する。
まず、使用者は、ビールの缶101の飲み口106を開け、注出装置100の収容部111内に垂設されている配管123の取込口123aを飲み口106に挿通させながら、缶101を収納部111内の載置部114に載置する。そして、土台部112のハンドル116aを摺動させて、載置部112を押し上げ、缶101の巻締部105が、パッキン118の凹部119に嵌合されたことを確認する。
【0138】
次に、ジョッキ等を傾けた状態で第一注出口121及び第二注出口122の近傍にあてがいながら、操作レバー164を前記一方に傾ける。すると、ポンプ170が駆動し、ポンプ170によって供給されたガスにより缶101の内圧は高められ、ビールの液面が下方に押圧され、ビールは取込口123a及び配管123を介してマニホールド125へと押出され、第一通流経路128を介して第一注出口121から注出される。この段階ではジョッキ等内の泡立ちが極力抑えられるよう緩やかに注ぐ。使用者は、ジョッキ等の7割程度までビールが注がれると、操作レバー164を傾けない状態に戻す。
【0139】
次に操作レバー164を前記他方に傾ける。すると、再度ポンプ170が駆動し、ポンプ170によって供給されたガスにより缶101の内圧は高められ、ビールの液面が下方に押圧され、ビールは取込口123a及び配管123を介してマニホールド125へと押出され、第二通流経路129を介して第二注出口122から注出される。このとき、駆動回路は加振機構140を起動し、第二通流経路129を振動させので、ビールは第二通流経路129を通過する際に振動が付与されて発泡が励起され、第二注出口122から注出されるビールはクリーミーな泡となってジョッキ等に注出される。ジョッキ等に所望の量の泡が注出されると、使用者は、操作レバー164を傾けない状態に戻す。以上のように、ジョッキ等に注がれたビールに対して、熟練を要することなくクリーミーな泡を適量に付加することができる。
【0140】
発泡性飲料としてビールを例に説明したが、これに限定されるものではなく、発泡酒、シードル、いわゆる低アルコール飲料などであってもよい。また、飲料は、アルコールを含有する飲料に限らず、アルコールを含有しない飲料でもよい。