(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
線状部材を案内する案内部を有するニップルをニップルホルダに固定するとともに、ダイスホルダを固定すること、前記ニップルに案内された前記線状部材とともに樹脂が押し出されるダイス孔を有するダイスプレートを用意すること、フランジと前記フランジのフランジ面から突出する突出部とを有する治具であって、前記突出部の根元が前記ダイス孔と嵌合する形状であり、前記突出部の先端部が前記案内部と嵌合する形状である治具を用意すること、前記ダイスプレートのプレート面に前記フランジ面が突き当たるまで前記突出部を前記ダイス孔に差し込んで、前記突出部の前記根元と前記ダイス孔を嵌合させて、前記治具に前記ダイスプレートを取り付けること、前記突出部の前記先端部と前記ニップルの前記案内部を嵌合させて、前記ニップルと前記ダイスプレートとを位置決めすること、前記治具を取り付けた状態で前記ダイスプレートを前記ダイスホルダに固定すること、及び、前記ダイスプレートを固定した後、前記ダイスプレートから前記治具を取り外すことを行うケーブル製造方法が明らかとなる。
このようなケーブル製造方法によれば、ニップルとダイスプレートとの位置決めを直接的に行うことができる。
【0012】
前記突出部の前記先端部と前記ニップルの前記案内部を嵌合させる際に、前記ニップルホルダの位置を調整することが望ましい。これにより、ダイスプレートをダイスホルダに固定できる。
【0013】
前記突出部には、突き当て部が設けられており、前記突出部の前記先端部と前記ニップルの前記案内部を嵌合させる際に、前記突き当て部を前記ニップルに突き当てて、前記ニップルと前記ダイスプレートとを位置決めすることが望ましい。これにより、線状部材の供給方向におけるニップルとダイスプレートとの位置決めを行うことができる。
【0014】
前記案内部は、前記ニップルから突出した管状であり、前記突出部は、中空管状であり、前記突出部の前記先端部と前記ニップルの前記案内部を嵌合させる際に、前記突出部の前記先端部に前記案内部を挿入させることが望ましい。これにより、案内部の損傷を抑制できる。
【0015】
前記案内部は、光ファイバを案内することが望ましい。これにより、機械的強度の弱い案内部の損傷を抑制できる。
【0016】
前記突出部は、棒状であり、前記突出部の前記先端部と前記ニップルの前記案内部を嵌合させる際に、前記突出部の先端部を、前記線状部材を案内する前記案内部の中に挿入させることが望ましい。これにより、ダイス孔の内径と案内部の外形との差が小さくても、突出部をダイス孔及び案内部と嵌合させることができる。
【0017】
前記ダイスプレートは、固定用のネジの径よりも大きな貫通穴を有することが望ましい。これにより、ある程度の位置の裕度ができるため、ダイスプレートがダイスホルダに対して若干ずれていても、ダイスプレートをダイスホルダに固定できる。
【0018】
線状部材を案内する案内部を有するニップルをニップルホルダに固定するとともに、ダイスホルダを固定すること、前記ニップルに案内された前記線状部材とともに樹脂が押し出されるダイス孔を有するダイスプレートを用意すること、フランジと前記フランジのフランジ面から突出する突出部とを有する治具であって、前記突出部の根元が前記ダイス孔と嵌合する形状であり、前記突出部の先端部が前記案内部と嵌合する形状である治具を用意すること、前記ダイスプレートのプレート面に前記フランジ面が突き当たるまで前記突出部を前記ダイス孔に差し込んで、前記突出部の前記根元と前記ダイス孔を嵌合させて、前記治具に前記ダイスプレートを取り付けること、前記突出部の前記先端部と前記ニップルの前記案内部を嵌合させて、前記ニップルと前記ダイスプレートとを位置決めすること、及び、前記治具を取り付けた状態で前記ダイスプレートを前記ダイスホルダに固定すること、を行う位置決め方法が明らかとなる。
このような位置決め方法によれば、ニップルとダイスプレートとの位置決めを直接的に行うことができる。
【0019】
フランジと、前記フランジのフランジ面から突出する突出部と、を有し、前記突出部の先端部は、ニップルの線状部材を案内する案内部と嵌合する形状であり、前記突出部の根元は、前記線状部材とともに樹脂が押し出されるダイス孔と嵌合する形状であり、ダイス孔を有するダイスプレートのプレート面に前記フランジ面が突き当たるまで前記突出部を前記ダイス孔に差し込んで、前記突出部の前記根元と前記ダイス孔を嵌合させるとともに、前記突出部の前記先端部と前記ニップルの前記案内部を嵌合させることによって、前記ニップルと前記ダイス孔とを位置決めすることを特徴とする治具が明らかとなる。
このような治具によれば、ニップルとダイスプレートとの位置決めを直接的に行うことができる。
【0020】
===第1実施形態===
<光ケーブル1の製造方法>
図1は、本実施形態の光ケーブル1の外観説明図である。光ケーブル1は、ケーブル本体2と、支持線4と、首部6とを有する。ケーブル本体2は、線状部材である光ファイバ2A(
図2参照)、テンションメンバ2B及び引き裂き紐2Cを樹脂(外被)により被覆した部材である。支持線4は、線状部材である鋼線4Aを樹脂(外被)で被覆した部材である。首部6は、ケーブル本体2と支持線4とを樹脂で接続する部位である。首部6が形成される位置での光ケーブル1の断面は、だるま型形状になっている。
【0021】
首部6は、光ケーブル1の長手方向の全ての領域に形成されているのではなく、間欠的に形成されている。言い換えると、ケーブル本体2と支持線4との間に、首部6の無い窓7が空いており、窓付きケーブルになっている。また、首部6と首部6との間では、ケーブル本体2が支持線4よりも長くなっており、たるみ付きケーブルになっている。
【0022】
図2は、光ケーブル1の製造装置の説明図である。図に示すように、押出機10に線状部材(光ファイバ2A、テンションメンバ2B、引き裂き紐2C、鋼線4A)が供給され、押出機10が押出成形によって線状部材の周囲に樹脂を被覆して、光ケーブル1が製造される。
【0023】
図3Aは、押出機10の断面図である。
図3Bは、光ケーブル製造時の押出機10の説明図である。
図4は、押出機10のヘッド部近傍の断面図である。押出機10のヘッド部は、ニップル50によって導かれた線状部材に樹脂を押出成形によって被覆する部位である。
【0024】
以下の説明では、図に示すように方向を定義する。すなわち、線状部材(特に光ファイバ2A)の供給方向と平行な方向を「前後方向」とし、線状部材の供給方向の下流側を「前」とし、上流側を「後」とする。また、押出機10から見て、樹脂を供給する加熱シリンダの側を「上」とし、逆側を「下」とする。なお、不図示であるが、前後方向及び上下方向に垂直な方向(紙面に垂直な方向)を「左右方向」とし、前側から見て右側を「右」とし、逆側を「左」とする。
【0025】
押出機10は、本体部11と、ダイスホルダ20と、ダイスプレート30と、ニップルホルダ40と、ニップル50とを有する。
本体部11は、ダイスホルダ20及びニップルホルダ40を固定するベースである。ダイスホルダ20は、本体部11の前側から取り付けられる。ニップルホルダ40は、本体部11の後側から取り付けられる。なお、ニップルホルダ40は、本体部11に対して前後方向に位置調整可能に固定される。
【0026】
本体部11には、樹脂供給口11Aと、樹脂供給路11Bとが形成されており、加熱シリンダの樹脂が樹脂供給口11Aから樹脂供給路11Bへ供給される。樹脂供給路11Bは、本体部11の内面とニップルホルダ40の外面との間の隙間や、ダイスホルダ20の内面とニップル50の外面との間の隙間によっても形成され、この樹脂供給路11Bから供給された樹脂が、ニップル50に案内された線状部材とともに、ダイスプレート30のダイス孔32(
図5A参照)から押し出されることになる。
【0027】
本体部11の内部には中空部が形成されている。この中空部の内側に、ニップルホルダ40が後から差し込まれて配置される。
中空部の後側の内面は円筒面になっている。この円筒面によって、ニップルホルダ40を上下方向及び左右方向に位置決めしつつ、前後方向に位置調整可能にニップルホルダ40を保持する。
中空部の前側の内面はテーパ面になっている。本体部11にニップルホルダ40を固定すると、このテーパ面と、本体部11の円筒面から突出したニップルホルダ40の先端部41の外面との間に隙間が形成され、この隙間が樹脂供給路11Bとなる。
【0028】
ダイスホルダ20は、円筒形状の部材であり、本体部11の前側に固定される。ダイスホルダ20は、本体部11の前側から取り付けられている。作業者は、押出機10の前側からダイスホルダ20を外せば、押出機10の前側からニップル50をニップルホルダ40から外すことが可能である。
【0029】
ダイスホルダ20の内側には、円錐台状の中空部が形成されており、ダイスホルダ20の内面はテーパ面になっている。このテーパ面とニップル50の外面との間の隙間が樹脂供給路11Bとなる。
【0030】
ダイスホルダ20の前面には、ダイスプレート30が固定される。このため、ダイスホルダ20の前面には、ダイスプレート30を固定する固定ネジ21のネジ穴が形成されている。
【0031】
ダイスプレート30は、ダイス孔32を有する円盤状の部材である。
図5A及び
図5Bは、ダイスプレート30の説明図である。
図5Aは、ダイスプレート30を後側から見た図である。
図5Bは、ダイスプレート30の断面図である。
【0032】
ダイス孔32は、ニップル50に案内された線状部材とともに樹脂を押し出す孔(貫通孔)である。このため、ダイス孔32の形状は、光ケーブル1の断面形状を決定づける。ダイス孔32は、本体形成孔34と、支持線形成孔36と、首部形成孔38とから構成されている。本体形成孔34は、光ケーブル1のケーブル本体2を構成する線状部材(光ファイバ2A、テンションメンバ2B及び引き裂き紐2C)とともに樹脂を押し出す孔であり、光ケーブル1のケーブル本体2を形成する。支持線形成孔36は、光ケーブル1の支持線4を構成する鋼線4Aとともに樹脂を押し出す孔であり、光ケーブル1の支持線4を形成する。首部形成孔38は、光ケーブル1の首部6を形成する樹脂を押し出す孔である。なお、首部形成孔38には線状部材は通過しない。
【0033】
ダイスプレート30には、ダイスホルダ20に固定する固定ネジ21用の貫通孔30Aが形成されている。この貫通孔30Aの径は、固定ネジ21のネジ穴の径(ネジの径)よりも大きく、固定ネジ21のヘッドの径よりは小さく形成されている。これにより、固定ネジ21と貫通孔30Aとの間に隙間ができ、ある程度の位置の裕度ができるため、後述するようにニップル50に対してダイスプレート30を位置決めした状態で、ダイスプレート30をダイスホルダ20に固定ネジ21で固定することが可能になる。
【0034】
ダイスプレート30の前側にはシャッター(不図示)が配置される。シャッターは、首部形成孔38で形成される光ケーブル1の首部6(首部形成孔38で形成される首部6)を構成する樹脂を間欠的に堰き止める。これにより、光ケーブル1のケーブル本体2と支持線4との間に首部6の無い窓7が形成され(
図1参照)、窓付きケーブルが製造される。なお、鋼線4Aに張力をかけながら光ケーブル1を押出成形することによって、たるみ付きケーブルが製造される。
【0035】
ニップルホルダ40は、ニップル50を固定しつつ、本体部11に固定される部材である。ニップルホルダ40の先端部41(前側の部位)の外面はテーパ面になっている。このテーパ面と本体部11の内面との間の隙間が樹脂供給路11Bとなる。
【0036】
ニップルホルダ40の先端部41は中空状になっており、この先端部41に前側からニップル50が嵌め込まれて固定される。ここでは、ニップル50の固定方法は、ねじ込み式である。但し、ニップルホルダ40の側面にネジ孔を構成し、側面からネジでニップル50を固定しても良い。
【0037】
ニップルホルダ40の後側には、前後方向に垂直な面を持つ固定部42が形成されている。この固定部42において、ニップルホルダ40が本体部11に対して前後方向に位置調整可能に固定されている。
【0038】
ニップル50は、ダイス孔32へ線状部材を案内する部品である。
図6は、ニップル50の斜視図である。
図7A〜
図7Cは、ニップル50の説明図である。
【0039】
ニップル50は、ニップル本体51と、ニップルベース52と、案内部53とを有する。また、ニップル50には、線状部材を通過させる孔が前後方向に沿って形成されている。
ニップル本体51は、円錐台状の部位であり、内部に線状部材を通過させる孔が形成されている。ニップル本体51の外面はテーパ面になっている。このテーパ面とダイスホルダ20の内面との間の隙間が樹脂供給路11Bとなる。ニップル本体51の前面は、後述する治具との突き当て面になる。
ニップルベース52は、ニップル本体51の後側に形成された円柱状の部位であり、内部に線状部材を通過させる孔が形成されている。ニップルベース52がニップルホルダ40の先端部41に嵌め込まれることによって、ニップル50がニップルホルダ40に対して固定される。
【0040】
案内部53は、線状部材をダイス孔32へ案内する部位である。ここでは、案内部53は、ニップル本体51から前側に突出している。案内部53がニップル本体51から突出することにより、線状部材をダイス孔32の近傍まで案内できる。
案内部53は、本体案内部54と鋼線案内部56から構成されている。本実施形態では、本体案内部54及び鋼線案内部56は、いずれもニップル本体51から前側に突出した管状の部位であり、上下方向に並んで配置されている。本体案内部54は、光ケーブル1のケーブル本体2を構成する線状部材(光ファイバ2A、テンションメンバ2B及び引き裂き紐2C)を案内する部位である。本体案内部54には、中央にファイバ案内孔54Aが形成されており、ファイバ案内孔54Aを挟むように、一対のテンションメンバ案内孔54Bと、一対の紐案内孔54Cが形成されている。鋼線案内部56は、光ケーブル1の支持線4を構成する鋼線4Aを案内する部位である。鋼線案内部56には、鋼線案内孔56Aが形成されている。
光ケーブル1のケーブル本体2は、支持線4よりも、成形精度が要求される。このため、ケーブル本体2を構成する線状部材(光ファイバ2A、テンションメンバ2B及び引き裂き紐2C)を精度良くダイス孔32へ案内できるように、本体案内部54は、鋼線案内部56よりも前側(ダイス孔32側)に突出しつつ、本体案内部54の先端部が先細形状で薄肉になっている。この結果、本体案内部54の機械的強度は、鋼線案内部56よりも弱い。
【0041】
押出機10の後側から供給された光ファイバ2A、テンションメンバ2B及び引き裂き紐2Cは、ニップルホルダ40を通過し、ニップル50の本体案内部54によってダイス孔32の本体形成孔34へ案内される。また、押出機10の後側から供給された鋼線4Aは、ニップルホルダ40を通過し、ニップル50の鋼線案内部56によってダイス孔32の支持線形成孔36へ案内される。案内部53を通過した線状部材(光ファイバ2A、テンションメンバ2B、引き裂き紐2C、鋼線4A)は、周囲を樹脂で被覆されてダイス孔32から排出される。ダイス孔32から線状部材とともに樹脂が押し出され、これにより光ケーブル1が成形される。
【0042】
仮にニップル50とダイスプレート30との位置関係が上下方向及び左右方向(前後方向と垂直な方向)にずれてしまうと、光ケーブル1の外被(樹脂)の厚さに異常が生じる。このため、光ケーブル1の製造前には、ニップル50とダイスプレート30(特にニップル50の案内部53とダイスプレート30のダイス孔32)とを位置決めした上で、押出機10を組み立てる必要がある。本実施形態では、以下に説明するように、治具70を用いてニップル50とダイスプレート30との位置決めを直接的に行っている。
【0043】
<押出機10の組み立て方法>
図8は、ニップル50とダイスプレート30との位置決めに用いられる治具70の斜視図である。
図9A及び
図9Bは、治具70の説明図である。
図9Aは、治具70の断面図である。
図9Bは、治具70を後側から見た図である。図中には、治具70を使用するときの押出機10の方向に合わせて、各方向が記載されている。
【0044】
治具70は、フランジ71と、突出部72と、把持部78とを有する。
フランジ71は、鍔状の部位であり、フランジ面71Aを有する。フランジ71の突出部72側(後側)のフランジ面71Aは、ダイスプレート30の前面と突き当たる突き当て面になっている。
突出部72は、フランジ71のフランジ面71Aから突出した部位であり、ニップル50とダイスプレート30(特にニップル50の案内部53とダイスプレート30のダイス孔32)とを位置決めする部位である。突出部72は、第1突出部72Aと、第2突出部72Bとを有する。第1突出部72A及び第2突出部72Bは、いずれもフランジ面71Aから後側に突出した部位であり、上下方向に並んで配置されている。
【0045】
第1突出部72Aは、ニップル50の本体案内部54とダイスプレート30の本体形成孔34とを位置決めする部位である。第1突出部72Aの根元721Aの外形は、ダイスプレート30の本体形成孔34と嵌合する形状になっている。また、第1突出部72Aの先端部722Aはニップル50の本体案内部54を挿入できるように中空管状になっており、先端部722Aの内面は、ニップル50の本体案内部54と嵌合する形状になっている。
また、第1突出部72Aの先端部722Aの縁723Aは、後述するように、ニップル本体51の前面に突き当たり、これにより、ニップル50とダイスプレート30との前後方向に位置決めが行われる。つまり、第1突出部72Aの先端部722Aの縁723Aは、ニップル50への突き当て部になっている。第1突出部72Aの長さは、ニップル50とダイスプレート30との前後方向の間隔に応じた長さになっている。
【0046】
第2突出部72Bは、ニップル50の鋼線案内部56とダイスプレート30の支持線形成孔36とを位置決めする部位である。第2突出部72Bの根元721Bの外形は、ダイスプレート30の支持線形成孔36と嵌合する形状になっている。また、第2突出部72Bの先端部722Bの外形は、棒状になっており、ニップル50の鋼線案内部56の孔(鋼線4Aが案内される孔)と嵌合する形状になっている。
【0047】
把持部78は、作業者が把持する部位である。フランジ71から前側(作業者側)に突出した円柱形状をしている。
【0048】
治具70を用いてニップル50とダイスプレート30とを位置決めする方法については、次に押出機10の組み立て方法の説明の中で明らかになる。
【0049】
図10は、押出機10の組み立てのフロー図である。
図11A〜
図11Eは、組み立て中の押出機10の様子の説明図である。
【0050】
まず、作業者は、ニップルホルダ40にニップル50を固定し(S101)、押出機10の本体部11にニップルホルダ40を仮固定する(S102)。この後、ニップルホルダ40は、本体部11に対して前後方向の位置を変えることがある。
図11Aは、この段階での押出機10の様子を示している。
【0051】
次に、作業者は、押出機10の本体部11にダイスホルダ20を固定する(S103)。
図11Bは、この段階での押出機10の様子を示している。
【0052】
次に、作業者は、前述のダイスプレート30(
図5A及び
図5B参照)と治具70(
図8、
図9A及び
図9B参照)とを用意し、ダイスプレート30のプレート面に治具70のフランジ面71Aが突き当たるまで治具70の突出部72をダイスプレート30のダイス孔32に差し込んで、突出部72の根元721をダイス孔32に嵌合させて、ダイスプレート30に治具70を取り付ける(S104)。このとき、作業者は、治具70の第1突出部72Aをダイスプレート30の本体形成孔34に差し込んで、第1突出部72Aの根元721Aと本体形成孔34を嵌合させるとともに、治具70の第2突出部72Bをダイスプレート30の支持線形成孔36に差し込んで、第2突出部72Bの根元721Bと支持線形成孔36を嵌合させる。
図11Cは、この段階での押出機10の様子を示している。
【0053】
次に、作業者は、治具70の突出部72の先端部722とニップル50の案内部53を嵌合させる(S105)。このとき、作業者は、治具70の第1突出部72Aの先端部722A(中空管状)の中にニップル50の本体案内部54を差し込んで、第1突出部72Aの先端部722Aと本体案内部54を嵌合させるとともに、治具70の第2突出部72Bの先端部722B(棒状)をニップル50のニップル50の鋼線案内部56の孔(鋼線4Aが案内される孔)の中に差し込んで、第2突出部72Bの先端部722Bと鋼線案内部56を嵌合させる。
図11Dは、この段階での押出機10の様子を示している。
【0054】
このとき、治具70は、次のような状態になっている。
・治具70のフランジ面71Aは、ダイスプレート30のプレート面に突き当たっている。
・治具70の突出部72の根元721は、ダイスプレート30のダイス孔32と嵌合している。
・治具70の突出部72の先端部722は、ニップル50の案内部53と嵌合している。
【0055】
このように、治具70の突出部72がダイスプレート30のダイス孔32とニップル50の案内部53とに嵌合することによって、ダイスプレート30(特にダイス孔32)が、ニップル50(特に案内部53)に対して、上下方向及び左右方向(
図11Dの紙面に垂直方向)に直接的に位置決めされる。
【0056】
本実施形態では、治具70には2つの突出部72(第1突出部72A及び第2突出部72B)があり、それぞれの突出部72がダイスプレート30のダイス孔32とニップル50の案内部53とに嵌合している。これにより、ダイスプレート30は、ニップル50に対して、前後方向を軸とする回転方向にも位置決めされる。
【0057】
本実施形態では、第1突出部72Aが中空管状であり、ニップル50の本体案内部54を第1突出部72Aの中に差し込むことによって、第1突出部72Aの先端部722Aと本体案内部54を嵌合させている。これは、光ファイバ2Aを案内する本体案内部54が薄肉の管状の部材であり、機械的強度が弱いためである。仮に第1突出部72Aを第2突出部72Bのように棒状に構成し、棒状の第1突出部72Aを本体案内部54のファイバ案内孔54Aの中に差し込むことにすると、本体案内部54が損傷するおそれがある。これに対し、本実施形態では、ニップル50の本体案内部54を第1突出部72Aの中に差し込むため、本体案内部54の損傷を抑制できる。
【0058】
その一方、第1突出部72Aを中空管状にして、ニップル50の本体案内部54を第1突出部72Aの中に差し込むためには、ダイスプレート30の本体形成孔34の内径が、本体案内部54の外形に対して、第1突出部72Aの肉厚を確保できる程度に大きい必要がある。このため、ダイス孔32の内径と案内部53の外形との差が小さい場合には、第2突出部72Bのように突出部72を棒状にして、突出部72をダイス孔32及び案内部53に嵌合させると良い。
【0059】
更に、作業者は、治具70の第1突出部72Aの縁723Aを、ニップル本体51の前面に突き当てる。これにより、ダイスプレート30は、ニップル50に対して、前後方向に位置決めされる。そして、作業者は、第1突出部72Aの縁723Aがニップル本体51に突き当たった状態で、ダイスプレート30の後面がダイスホルダ20に合うように、押出機10の後側でニップルホルダ40の前後方向の位置を調整し、押出機10の本体部11にニップルホルダ40を固定する。
【0060】
ところで、S105の処理の際に、作業者がダイスプレート30の貫通孔30Aを前から見てダイスホルダ20のネジ穴の全体が貫通孔30Aに入っていないことがある。このような場合、ダイスプレート30がダイスホルダ20に対して許容範囲以上にずれているため、次のS106の処理において、ダイスプレート30をダイスホルダ20に固定することができない。そこで、S105の処理の際には、作業者は、ニップルホルダ40の位置調整をするだけでなく、ダイスプレート30の貫通孔30Aを前から見てダイスホルダ20のネジ穴の全体が貫通孔30Aに入るように、ダイスホルダ20を本体部11に対して上下方向及び左右方向に位置調整することがある。
【0061】
次に、作業者は、治具70を取り付けた状態で、ダイスプレート30をダイスホルダ20に固定する(S106)。治具70を取り付けたままなので、ダイスプレート30とニップル50の位置がずれずに、ダイスプレート30を固定することが可能である。
【0062】
ダイスプレート30の貫通孔30Aの径が、固定ネジ21のネジ穴の径(ネジの径)よりも大きく形成されているため、仮にダイスプレート30の中心位置がダイスホルダ20の中心位置に対して若干ずれていても、ダイスプレート30をダイスホルダ20に固定ネジ21で固定することが可能になる。なお、ダイスプレート30のダイス孔32とニップル50の案内部53との位置が精度良く位置決めされていれば、ダイスプレート30の中心位置がダイスホルダ20の中心位置に対してずれていることは許容される(なお、S105でダイスホルダ20の位置調整も行われるため、ダイスプレート30とダイスホルダ20とのずれ量は許容範囲内になっている)。
【0063】
最後に、作業者は、ニップル50及びダイスプレート30から治具70を取り外す(S107)。
図11Eは、この段階での押出機10の様子を示している。
【0064】
このように組み立てた押出機10で光ケーブル1を製造すれば、ニップル50とダイスプレート30(特にニップル50の案内部53とダイスプレート30のダイス孔32)とが高精度に位置決めされているため、光ケーブル1の外被(樹脂)の厚さに異常が生じにくくなる。
【0065】
===第2実施形態===
前述の第1実施形態では、ニップル50の案内部53がニップル本体51から前側に突出していた。但し、案内部53は、ニップル本体51から突出している必要はなく、ニップル本体51に形成された孔(線状部材を前後方向に案内する孔)であっても良い。
【0066】
図12A〜
図12Dは、第2実施形態の説明図である。
図12Aは、ダイスプレート30の概略図である。
図12Bは、ニップル50の概略断面図である。
図12Cは、治具70の概略図である。
図12Dは、治具70を用いてダイスプレート30をニップル50に対して位置決めしたときの様子の概略図である。
【0067】
図12Aに示すように、ダイスプレート30には、ダイス孔32が形成されている。一方、
図12Bに示すように、ニップル50の案内部53は、ニップル本体51から突出しておらず、ニップル本体51に形成された孔によって構成されている。
図12Cに示すように、治具70の突出部72の根元721は、ダイス孔32に嵌合する形状をしている。また、治具70の突出部72の先端部722は、ニップル50の案内部53を構成する孔に嵌合する形状をしている。
【0068】
図12Dに示すように、第2実施形態においても、作業者は、ダイスプレート30のプレート面に治具70のフランジ面71Aが突き当たるまで治具70の突出部72をダイスプレート30のダイス孔32に差し込んで、突出部72の根元721をダイス孔32に嵌合させて、ダイスプレート30に治具70を取り付ける。そして、更に作業者は、治具70の突出部72の先端部722をニップル50の案内部53を構成する孔に挿入させて、治具70の突出部72の先端部722とニップル50の案内部53を嵌合させる。これにより、第2実施形態においても、ダイスプレート30(特にダイス孔32)が、ニップル50(特に案内部53)に対して、上下方向及び左右方向に位置決めされるとともに、前後方向を軸とする回転方向にも位置決めされる。
【0069】
<改良例>
前述の第2実施形態のように、治具70の突出部72の先端部722をニップル50の案内部53を構成する孔に挿入させただけでは、ダイスプレート30とニップル50との前後方向の位置決めが行われていない。このため、次のように治具70の突出部72に突き当て部723を設けると良い。
【0070】
図13A及び
図13Bは、第2実施形態の改良例の説明図である。この改良例では、
図13Aに示すように、改良例の治具70の突出部72には、突き当て部723が設けられている。作業者は、治具70の突き当て部723をニップル50の前面に突き当てて、ダイスプレート30とニップル50との位置決めを行う。これにより、ダイスプレート30とニップル50との前後方向の位置決めが可能になる。
【0071】
===第3実施形態===
図14A〜
図14Dは、第3実施形態の説明図である。
図14Aは、ダイスプレート30の概略図である。
図14Bは、ニップル50の概略断面図である。
図14Cは、治具70の概略図である。
図14Dは、治具70を用いてダイスプレート30をニップル50に対して位置決めしたときの様子の概略図である。
【0072】
第3実施形態では、ダイスプレート30のダイス孔32が円形状であり、断面が丸型の光ケーブル1が製造されることになる。第3実施形態では、ダイス孔32が円形状であるため、治具70の突出部72の断面が円形状になる。この結果、第3実施形態では、治具70の突出部72とダイス孔32を嵌合させても、ダイスプレート30が治具70に対して回転してしまう。このため、第3実施形態では、前述の実施形態とは異なり、ダイスプレート30(特にダイス孔32)とニップル50(特に案内部53)との前後方向を軸とする回転方向の位置決めができない。
【0073】
但し、第3実施形態においても、ダイスプレート30(特にダイス孔32)とニップル50(特に案内部53)との上下方向及び左右方向の位置決めは可能である。また、光ケーブル1の断面形状は丸型なので、前後方向を軸とする回転方向へのダイスプレート30の位置ずれは許容されるので、特に問題は生じない。
【0074】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0075】
<ケーブルについて>
前述の実施形態では、光ケーブル1の外被を構成する樹脂の押出機10について説明したが、押出機10で製造するケーブルは、光ケーブル1に限られるものではない。例えば、送電用又は通信用の電線ケーブルを製造する押出機であっても良い。