(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、回転軸方向に分割され、相対回転可能な第1ロータ要素及び第2ロータ要素を含み、第1ロータ要素と第2ロータ要素の位相関係を変化させることでステータに作用するロータの界磁磁束を変化させる可変界磁型の回転電機も提案されている。
【0006】
このような可変界磁型の回転電機においても、第1ロータ要素及び第2ロータ要素の回転角度や角速度を取得してそれぞれの回転駆動を制御する必要があるが、上記従来技術のように位相差検出器とレゾルバ等の位置センサを設ける構成では、部品点数増加による回転電機の大型化やコスト増大を招く問題がある。
【0007】
本発明の目的は、位相差検出器あるいはレゾルバ等の位置センサ(角度センサ)の数を削減し、もって小型化及びコスト低減を図ることが可能な可変界磁型の回転電機及びその制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転電機の制御装置であって、ステータと、前記ステータと対向配置され、かつ、回転軸方向に互いに対向配置された第1ロータ要素及び第2ロータ要素を含み、前記第2ロータ要素は前記第1ロータ要素に対して相対回転可能なロータとを備える回転電機を制御する制御装置であって、 前記第2ロータ要素の角度を検出する角度センサで得られた前記第2ロータ要素の角度から前記第2ロータ要素の角速度を取得し、前記角度及び前記角速度を用いて前記第1ロータ要素の角度を演算する角度演算手段を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記第1ロータ要素と前記第2ロータ要素は、一体的に回転するロック状態と、相対回転可能なロック解除状態を有し、前記角度演算手段は、前記ロック解除状態において、前記ロック解除状態直前の前記第2ロータ要素の角度θ2、前記角速度ω2、及びロック解除状態からの経過時間tを用いて、
前記第1ロータ要素の角度=θ2+ω2・t
により演算することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の実施形態では、さらに、前記第1ロータ要素と前記第2ロータ要素の目標位相角度を演算する目標位相角度演算手段と、前記角度センサからの前記第2ロータ要素の角度と、前記角度演算手段からの前記第1ロータ要素の角度と、前記目標位相角度演算手段からの目標位相角度に基づき、前記第2ロータ要素を前記第1ロータ要素に対して相対的に回転させる駆動信号を生成する生成手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、回転電機であって、ステータと、前記ステータと対向配置され、かつ、回転軸方向に互いに対向配置された第1ロータ要素及び第2ロータ要素を含み、前記第2ロータ要素は前記第1ロータ要素に対して相対回転可能なロータと、前記第2ロータ要素の角度を検出する角度センサとを備え、前記第1ロータ要素は、前記第2ロータ要素よりも相対的に慣性モーメントが大きく、前記第1ロータ要素の角度を検出する角度センサは備えておらず、前記第1ロータ要素の角度は、前記角度センサで検出される前記第2ロータ要素の角度から演算されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、回転電機制御システムであって、ステータと、前記ステータと対向配置され、かつ、回転軸方向に互いに対向配置された第1ロータ要素及び第2ロータ要素を含み、前記第2ロータ要素は前記第1ロータ要素に対して相対回転可能なロータと、前記第2ロータ要素の角度を検出する角度センサを備える回転電機と、前記角度センサで得られた前記第2ロータ要素の角度から前記第2ロータ要素の角速度を取得し、前記角度及び前記角速度を用いて前記第1ロータ要素の角度を演算し、前記第1ロータ要素の角度と、前記第2ロータ要素の角度に基づき前記第1ロータ要素及び前記第2ロータ要素の位相角度を制御する制御装置を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の回転電機制御システムは、エンジンと回転電機で走行するハイブリッド自動車等の車両に搭載され得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位相差検出器あるいはレゾルバ等の角度センサの数を削減し、回転電機の小型化及びコスト低減を図ることができる。本発明によれば、第1ロータ要素に角度センサを設ける必要はなく、第2ロータ要素に設けられた角度センサで得られた第2ロータ要素の角度から第1ロータ要素の角度を高精度に取得でき、取得した角度を用いて第1ロータ要素及び第2ロータ要素を制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0017】
<回転電機の基本構成>
図1及び
図2に、本実施形態における回転電機の基本構成を示す。
図1は、回転電機の回転軸方向と直交する方向から見た断面図を示し、
図2は
図1のA−A断面に相当する図を示す。
【0018】
回転電機は、ケーシングに固定されたステータ24と、径方向においてステータ24と所定のギャップを空けて対向し、ステータ24に対して相対回転可能なロータ28を備える。
図1の例では、ロータ28がステータ24の内周側の位置でステータ24と対向配置される。
【0019】
ステータ24は、ステータコア36と、ステータコア36にその周方向に沿って配設された複数相であるU相、V相、W相の3相のステータコイル38u,38v,38wを含む。3相のステータコイル38u,38v,38wに3相の交流電流が流れることで、ステータ周方向に回転する回転磁界が生じる。
【0020】
ロータ28は、回転軸方向に隣接した状態でステータ24と径方向に対向配置された主ロータ(第1ロータ要素)40と副ロータ(第2ロータ要素)42を含む。主ロータ40と副ロータ42は、回転軸方向にギャップを空けて対向配置される。
図1では、主ロータ40が副ロータ42よりも回転軸方向一方側(図の左側)に配置され、主ロータ40がステータコア36の回転軸方向一方側と径方向に対向し、副ロータ42がステータコア36の回転軸方向他方側(図の右側)と径方向に対向する。
【0021】
主ロータ40は、複数の電磁鋼板が回転軸方向に積層された主ロータコア46と、主ロータコア46にその周方向に沿って互いに等間隔で配設された複数の主永久磁石48n,48sを含む。
図2では、主ロータ40の主永久磁石48n,48sを透視して示している。
図2では、主永久磁石48n,48sは、主ロータコア46の周方向の複数位置に2つを1組としてV字型に埋設されるが、これに限定されない。主永久磁石48nは外周側がN極であり、主永久磁石48sは外周側がS極である。主永久磁石48n,48sが周方向に交互に配置されることで、主永久磁石48n,48sの極性が周方向に交互に異なる。
【0022】
副ロータ42は、複数の電磁鋼板が回転軸方向に積層された副ロータコア54と、副ロータコア54にその周方向に沿って互いに等間隔で配設された複数の副永久磁石56n,56sを含む。副永久磁石56n,56sは、副ロータコア54の周方向の複数位置に2つを1組としてV字型に埋設されるが、これに限定されない。副永久磁石56nは外周側がN極であり、副永久磁石56sは外周側がS極である。副永久磁石56n,56sが周方向に交互に配置されることで、副永久磁石56n,56sの極性が周方向に交互に異なる。副永久磁石56n,56sの周方向間隔は、主永久磁石48n,48sの周方向間隔に等しい。
【0023】
主ロータシャフト26には、拘束板61,62が溶接等により固定される。拘束板61,62は、回転軸方向に互いに間隔をおいて配置され、拘束板62が拘束板61より回転軸方向一方側に配置され、主ロータ40が回転軸方向に拘束板61,62の間に挟持される。主ロータ40は、主ロータシャフト26とキー溝やスプライン等により係合し、主ロータシャフト26及び拘束板61,62と一体回転する。
【0024】
副ロータシャフト52には、拘束板63,64が溶接等により固定される。拘束板63,64は、回転軸方向に互いに間隔をおいて配置され、拘束板63が拘束板64より回転軸方向一方側に配置され、副ロータ42が回転軸方向において拘束板63,64の間に挟持される。副ロータ42は、副ロータシャフト52とキー溝やスプライン等により係合し、副ロータシャフト52及び拘束板63,64と一体回転する。副ロータシャフト52は、ベアリング50により主ロータシャフト26に対して相対回転可能に支持され、副ロータ42が主ロータ40に対して相対回転可能である。
【0025】
本実施形態の回転電機では、主ロータ40と副ロータ42の位相関係が変化することで、ステータ24に作用するロータ28の界磁磁束が変化する。主ロータ40と副ロータ42で同一極性の主永久磁石48nと副永久磁石56n(あるいは主永久磁石48sと副永久磁石56s)が周方向の同位相に配置される同極対向状態の場合、界磁磁束は最大となる。他方、副ロータ42が主ロータ40に対して相対回転し、主永久磁石48nと副永久磁石56n(あるいは主永久磁石48sと副永久磁石56s)が180度ずれる逆極対向状態の場合、界磁磁束は最小あるいはゼロとなる。
【0026】
図3に、主ロータ40及び副ロータ42のみを取り出した斜視図を示す。
図3(a)は、主ロータ40と副ロータ42が同極対向状態であり、位相角をγとすると、γ=0度(deg)の状態である。このとき、ステータ24に作用するロータ28の界磁磁束は最大となる。
図3(b)は、主ロータ40と副ロータ42が逆極対向状態であり、γ=180度(deg)の状態である。このとき、ステータ24に作用するロータ28の界磁磁束は最小となる。このように、本実施形態の回転電機は、主ロータ40と副ロータ42の位相関係を変化させる、つまり主ロータ40と副ロータ42を相対回転させて位相角γを変化させることでステータ24に作用するロータ28の界磁磁束を変化させる可変界磁型の回転電機として機能する。
【0027】
なお、
図3ではγ=0度とγ=180度の場合を示しているが、副ロータ42は主ロータ40に対して0度と180度の間の任意の位相角をとり得る。
【0028】
主ロータ40及び副ロータ42を含む回転電機を回転駆動するためには、主ロータ40及び副ロータ42の角度を取得する必要がある。例えば、エンジン及び回転電機を備えるハイブリッド自動車では、主ロータ40及び副ロータ42の角度と、要求トルクと、出力軸の回転数に基づいて主ロータ40及び副ロータ42の位相角γを算出して主ロータ40及び副ロータ42を制御するので、その前提として主ロータ40及び副ロータ42の角度を取得する必要がある。
【0029】
主ロータ40及び副ロータ42の角度は、それぞれに設けられたレゾルバ等の位置センサ(角度センサ)で検出することができるが、2つの角度センサを設けたのではその分だけ回転電機が大型化するだけでなく、コストも増大する。角度センサと主ロータ40及び副ロータ42の位相差を検出する位相差検出器を設ける構成でも同様である。
【0030】
そこで、本実施形態では、副ロータ42のみに角度センサを設け、主ロータ40には角度センサあるいは位相差検出器を設けることなく、副ロータ42に設けられた角度センサで取得した副ロータ42の角度から主ロータ40の角度も取得する。
【0031】
以下、本実施形態における可変界磁型の回転電機について説明する。
【0032】
<第1実施形態>
図4に、本実施形態の回転電機の構成を示す。
図1のA−A断面に相当する図である。
【0033】
回転電機は、ケーシング50に固定されたステータ24と、径方向においてステータ24と所定のギャップを空けて対向し、ステータ24に対して相対回転可能なロータ28を備える。
【0034】
ロータ28は、回転軸方向に隣接した状態でステータ24と径方向に対向配置された主ロータ40と副ロータ42を含む。主ロータ40と副ロータ42は、回転軸方向にギャップを空けて対向配置される。主ロータ40は、主ロータシャフト26とキー溝等により係合し、副ロータ42は副ロータシャフト52とキー溝等により係合する。副ロータシャフト52は、ベアリング50により主ロータシャフト26に対して相対回転可能に支持されることで、副ロータ42は主ロータ40に対して相対回転可能である。
【0035】
また、副ロータ42近傍には、副ロータ42に対向するようにレゾルバ等の角度センサ72がケーシングに固定される。
図4において、角度センサ72は、副ロータ42についてのみ設けられ、主ロータ40については設けられていない点に留意されたい。また、主ロータ40と副ロータ42の位相差を検出する位相差検出器も設けられていない点に留意されたい。
【0036】
主ロータ40の角度は、副ロータ42に設けられた角度センサ72により検出された副ロータ42の回転角度から、以下のようにして算出する。
【0037】
すなわち、主ロータ40と副ロータ42が何らかのロック機構でロックされ、相対回転せずに一体回転している場合、主ロータ40と副ロータ42は回転角度が同一であるため、主ロータ40の角度=副ロータ42の角度として算出できる。
【0038】
また、主ロータ40と副ロータ42のロック状態が解除され、主ロータ40と副ロータ42が相対回転可能な状態では、主ロータ40の慣性モーメントが副ロータ42に比べて十分大きいとすると、主ロータ40に外部からトルクが印加されない限り、主ロータ40はほぼ一定の角速度で回転するものと推定できるから、ロック状態が解除される直前の主ロータ40の角度及び角速度(これは、それぞれ副ロータ42の角度及び角速度に等しい)を初期値として、ロック解除からの経過時間における積算値で算出することができる。すなわち、ロック状態が解除される直前の副ロータ42の角度及び角速度をθ2及びω2とし、経過時間をtとすると、主ロータ40の角度θ1は、
θ1=θ2+∫ω2dt ・・・(1)
により算出される。なお、ω2は、θ2を時間微分して得られる。積分区間は0〜tである。勿論、ω2が一定であれば、
θ1=θ2+ω2t ・・・(2)
である。経過時間tが短いほど、主ロータ40の角度θ1の算出精度は向上する。
【0039】
このように、主ロータ40に角度センサを設けることなく、副ロータ42に設けた角度センサ72で検出された副ロータ40の角度に基づいて主ロータ40の角度を算出することができるので、その分だけ回転電機を小型化でき、コストを低減することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、主ロータ40の慣性モーメントが副ロータ42に比べて十分大きいものと仮定したが、このような条件は、主ロータ40の主ロータシャフト26が慣性質量の大きい負荷、例えばエンジン出力軸に直結している場合等において成立し得る。
【0041】
次に、このような場合について説明する。
【0042】
<第2実施形態>
図5に、本実施形態の可変界磁型の回転電機を搭載したハイブリッド自動車の構成を示す。回転電機(図ではモータジェネレータMGと記す)200及び回転電機300が搭載される。回転電機200は、エンジン100のクランク軸に連結され、回転電機300はタイヤ(駆動輪)400に連結される。回転電機200及び回転電機300は、それぞれ図示しないバッテリに電気的に接続され、電力送受が行われる。回転電機200は、エンジン100の動力により発電するとともに、発電された電力の一部を回転電機300に供給する。回転電機300は、バッテリからの電力を用いて走行用駆動力を発生してタイヤ400を駆動する。エンジン100、回転電機200、回転電機300及びタイヤ400は、動力分配機構により接続され、車両の走行状態に応じてアクセル操作量に対する走行用駆動力の出力特性を変更して、回転電機300のみで駆動力を発生するモードと、回転電機300とエンジン100の両方で駆動力を発生するモードを選択的に切り替える。
【0043】
回転電機200及び回転電機300のうち、少なくとも回転電機200は
図4に示す構成であり、ケーシングに固定されたステータ24と、径方向においてステータ24と所定のギャップを空けて対向し、ステータ24に対して相対回転可能なロータを備える。ロータは、回転軸方向に隣接した状態でステータ24と径方向に対向配置された主ロータ40と副ロータ42を含む。主ロータ40と副ロータ42は、回転軸方向にギャップを空けて対向配置される。主ロータ40は、主ロータシャフトとキー溝等により係合し、副ロータ42は副ロータシャフトとキー溝等により係合する。副ロータシャフトは、ベアリング50により主ロータシャフトに対して相対回転可能に支持されることで、副ロータ42は主ロータ40に対して相対回転可能である。主ロータシャフトは、エンジン100に連結され、エンジン100からの動力が伝達される。
【0044】
また、副ロータ42近傍には、副ロータ42に対向するようにレゾルバ等の角度センサ72がケーシングに固定される。
【0045】
さらに、主ロータ40と副ロータ42の間に、ロック機構74がケーシングに固定される。ロック機構74は、主ロータ40と副ロータ42を係合し、主ロータ40と副ロータ42を一体回転させる。ロック機構74は、ロック状態とロック解除状態のいずれかの状態をとり得、ロック状態では主ロータ40と副ロータ42がロック時の位相角γを維持したまま一体回転し、ロック解除状態では副ロータ42は主ロータ40に対して相対回転可能となる。ロック機構74は、例えばディテント機構とし、主ロータシャフト26の軸方向側面に設けられた凹部と副ロータシャフト52の軸方向側面の凹部とにボールを係合させるように、このボールにバネで弾性力を付与して、主ロータ40と副ロータ42をロックしその位相角を維持する。ディテント機構は、ロータ間の磁石トルクではロックが解除されず、ステータ磁界によるロータ位相角を変更するための駆動力でロックが解除されるように所定の固定力を発生させる。
【0046】
電子制御装置(ECU)500は、マイクロコンピュータで構成され、各種検出信号を入力して、回転電機200及び回転電機300を制御する。
【0047】
図6に、ECU500の機能ブロック図を示す。回転電機200を制御する機能ブロック図である。
【0048】
ECU500は、機能ブロックとして、目標ロータ位相角度演算部502と、ロータ位相角度制御部504と、ロータ間位相角ロック解除判断部506と、角度積算部508と、モータトルク制御部510と、加算部512を備える。
【0049】
目標ロータ位相角度演算部502は、エンジン100の始動あるいは停止を指令するエンジン始動/停止指令装置56からの指令信号が供給され、回転電機200の目標ロータ位相角度を演算する。すなわち、目標ロータ位相角度演算部502は、回転電機200の主ロータ40と副ロータ42の間の目標位相角γを演算する。例えば、目標ロータ位相角度演算部502は、エンジン始動時に主ロータ40と副ロータ42を同極対向状態として磁束を最大にすべく、目標位相角γ=0度に設定する。また、エンジン停止時に主ロータ40と副ロータ42を逆極対向状態として磁束を最小にすべく、目標位相角γ=180度に設定する(
図3を参照)。なお、エンジン始動/停止指令装置56は、アクセル開度や車速、バッテリの充電状態(SOC)等に基づいてエンジン100を始動させるか停止させるかを決定し、指令信号を出力する。目標ロータ位相角度演算部502は、演算して得られた目標ロータ位相角度をロータ位相角度制御部504に出力する。
【0050】
ロータ位相角度制御部504は、目標ロータ位相角度、主ロータ40の角度、及び副ロータ42の角度に基づき、現在の主ロータ40及び副ロータ42の位相角度から目標ロータ位相角度に移行するために必要な電流値を演算し、ロータ位相角度構成用電流指令として加算部512に出力する。すなわち、ロータ位相角度制御部504は、主ロータ40及び副ロータ42に対し、互いに逆方向に回転させる方向にトルクを発生させ、ロータ28全体に対しては回転に寄与しないトルクを発生させるようにステータ電流値を演算する。例えば、このようなトルクを発生させる位置に磁束を発生させるようにステータ磁界を生成すべく、ステータ電流をベクトル制御により演算する。このとき、副ロータ42の角度は、副ロータ42に設けられた角度センサ72から供給されるが、主ロータ40の角度は、後述する方法で角度積算部508から供給される。
【0051】
ロータ間位相角ロック解除判断部506は、エンジン始動/停止指令装置56からの指令信号と、ロータ位相角度制御部504からの信号に基づき、ロータ間位相角をロック状態とするか、あるいはロック解除状態とするかを判断してロックオンオフ指令をロック機構74及び角度積算部508に出力する。例えば、エンジンが停止状態から始動状態に移行する場合、位相角γ=0度に設定するためにロック解除状態とし、位相角γ=0度に達した場合にその位相角を維持すべくロック状態とする。また、エンジンが始動状態から停止状態に移行する場合、位相角γ=180に設定するためにロック解除状態とし、位相角γ=180度に達した場合にその位相角を維持すべくロック状態とする。
【0052】
角度積算部508は、ロックオンオフ指令に基づいて、角度センサ72から供給された副ロータ42の角度を積算し、あるいは副ロータ42の角度をそのまま主ロータ40の角度としてロータ位相角度制御部504に出力する。具体的には、角度積算部508は、ロックオン指令が供給され、ロック機構74が主ロータ40と副ロータ42をロック状態としている場合には、角度センサ72から供給された副ロータ42の角度をそのまま主ロータ40の角度として出力する。他方、角度積算部508は、ロックオフ指令が供給され、ロック機構74が主ロータ40と副ロータ42をロック解除状態としている場合には、角度センサ72から供給された副ロータ42の角度を、上記の(1)式あるいは(2)式を用いて経過時間tで積算して主ロータ40の角度を算出して出力する。
【0053】
モータトルク制御部510は、モータ指令トルクと、角度積算部508で算出された主ロータ40の角度に基づいて、モータトルク用電流指令値を演算し、加算部512に出力する。
【0054】
加算部512は、モータトルク制御部510からのモータトルク用電流指令値に、ロータ位相角度制御部504からのロータ位相角度構成用電流指令値を重畳し、最終的なモータ電流指令値としてステータ24の3相のステータコイル38u,38v,38wに供給する。上記のように、ロータ位相角度構成用電流指令値は、主ロータ40及び副ロータ42に対して互いに逆方向に回転させる方向にトルクを発生させ、ロータ28全体に対しては回転に寄与しないトルクを発生させる電流指令であるから、モータトルク用電流指令値にロータ位相角度構成用電流指令値を重畳しても、モータトルクに影響しない場合が多い。
【0055】
図7に、主ロータ40と副ロータ42の角速度の時間変化、及び主ロータ40と副ロータ42のトルク差の時間変化を示す。
【0056】
ロック状態では主ロータ40と副ロータ42は一体回転するので、主ロータ40と副ロータ42の角速度は同一であり、トルク差もゼロである。
【0057】
主ロータ40と副ロータ42の位相角γを所望の角度に設定するために目標ロータ位相角度が演算されると(例えば、現在の位相角γがγ=0度で同極対向状態であり、これをγ=180度の逆極対向状態に変更する場合)、ロック解除状態に移行し、副ロータ42の角速度が増大し、やがて減少する。副ロータ42の位相角γが所望の位相角度に達すると、再びロック状態となる。この間(ロック解除状態から再ロック状態まで)、主ロータ40はエンジン100に直結されておりその慣性モーメントは十分大きいためほぼ一定の角速度で回転し続ける。また、副ロータ42の角速度が増大している間は主ロータ40と副ロータ42のトルク差は正となり、逆に副ロータ42の角速度が減少している間は主ロータ40と副ロータ42のトルク差は負となる。再ロック状態以後は、再び主ロータ40と副ロータ42は一体回転するので、主ロータ40と副ロータ42の角速度は同一であり、トルク差もゼロとなる。
【0058】
時刻t1でロック解除、時刻t2で再ロック状態とすると、時間Δt=t2−t1が短ければ、この間の主ロータ40の角速度はほぼ一定とみなすことができる。角度積算部508は、時刻t1までは副ロータ42の角度をそのまま主ロータ40の角度として出力し、時間t1〜t2では時刻t1における副ロータ42の角度と角速度から(1)式あるいは(2)式を用いて主ロータ40の角度を算出し、時刻t2以後は再び副ロータ42の角度をそのまま主ロータ40の角度として出力する。
【0059】
このように、本実施形態では、エンジン100の出力軸と直結する主ロータ40は、直結していない副ロータ42よりも慣性モーメントが十分大きいことを利用して、ロック解除状態において主ロータ40がほぼ一定の角速度で回転するものとみなし、ロック解除直前の副ロータ42の角度及び角速度から積算演算により主ロータ40の角度を算出することができるので、主ロータ40にレゾルバ等の角度センサあるいは位相差検出器を設ける必要がなく、回転電機(MG)200を小型化できるとともに、コストを低減できる。回転電機(MG)300についても同様の構成により、小型化及びコスト低減が可能である。
【0060】
なお、本実施形態において、ロック解除状態において積算演算により得られた主ロータ40の角度に誤差が生じていても、その誤差が小さければロック機構74により主ロータ40と副ロータ42を再ロックする際にロック機構74で当該角度誤差を吸収し得るため問題とならない。例えば、ロック機構74をドグクラッチで構成し、テーパ面で主ロータ40と副ロータ42の結合時の角度誤差を吸収すればよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0062】
例えば、第2実施形態では、ECU500がロータ位相角度構成用電流指令値を生成し、これをモータトルク用電流指令値に重畳してモータ電流指令値を生成してステータ電流としているが、モータトルク用電流指令値とは別個に、アクチュエータ等で副ロータ42を主ロータ40に対して相対回転させて位相角γを所望の角度に設定してもよい。この場合、ロータ位相角度制御部504は、目標ロータ位相角度と、角度センサ72からの副ロータ42の角度、角度積算部508からの主ロータ40の角度に基づき、アクチュエータを駆動して副ロータ42を相対回転するための駆動信号を生成して(加算部512に出力することなく)アクチュエータに出力すればよい。本発明は、いずれの方式にも適用可能である。
【0063】
また、ロック機構74でロックできない位置(例えば、位相角γ=0度及びγ=180度でロックできるが、それ以外の角度でロックできない場合等)で、主ロータ40と副ロータ42の位相角γを固定的に利用する場合は、主ロータ40と副ロータ42の合成磁束を、逆起電力を利用した角度推定で推定した主ロータ40と副ロータ42の平均角度を算出し、角度センサ72で検出された副ロータ42の角度と、算出した平均角度から、主ロータ40の角度を推定することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、
図5における回転電機200を可変界磁型の回転電機としたが、回転電機300も同様に可変界磁型の回転電機とし、副ロータのみに角度センサを設ける構成としてもよい。