特許第6227457号(P6227457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227457フルオレン化合物、遷移金属化合物、オレフィン重合用触媒、およびオレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227457
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】フルオレン化合物、遷移金属化合物、オレフィン重合用触媒、およびオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20171030BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20171030BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20171030BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20171030BHJP
   C07F 17/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C07D471/04 112Z
   C08F4/6592
   C08F210/16
   C07F7/00 ZCSP
   C07F17/00
【請求項の数】9
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2014-68587(P2014-68587)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189713(P2015-189713A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】船谷 宗人
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/126608(WO,A1)
【文献】 特開2004−175759(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081794(WO,A1)
【文献】 特開平05−025473(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/050816(WO,A1)
【文献】 特開平08−176222(JP,A)
【文献】 特開平06−172443(JP,A)
【文献】 Hamann, Lawrence G et al.,Nonsteroidal progesterone receptor antagonists based on a conformationally-restricted subseries of 6-aryl-1,2-dihydro-2,2,4-trimethylquinolines,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,1998年,vol.8 no.19,pp.2731-2736
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]で表されることを特徴とするフルオレン化合物。
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
R1からR16までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
下記一般式[I']で表されることを特徴とするフルオレン化合物。
【化2】
(式中、R0は金属含有基であり、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
R0とR2とは、互いに結合して環を形成してもよく、R2からR16までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項3】
下記一般式[II]で表されることを特徴とする遷移金属化合物。
【化3】
(式中、R17、R18、R19、R20、R21およびR22は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、R17からR22までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。
Mは第4族遷移金属原子であり、Yは炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、jは1〜4の整数である。
Zは、請求項1に記載のフルオレン化合物から一般式[I]におけるR1およびR2を除いた構造を有する、2価の遊離原子価を持つフルオレニリデン基である。)
【請求項4】
前記一般式[II]において、R19、R20、R21およびR22が水素原子であることを特徴とする請求項3に記載の遷移金属化合物。
【請求項5】
前記一般式[I]において、R3、R9、R10およびR16が水素原子であることを特徴とする請求項3または4に記載の遷移金属化合物。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒。
【請求項7】
(B-1)有機金属化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)請求項3に記載の遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)をさらに含有する請求項6に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項8】
請求項6または7に記載のオレフィン重合用触媒の存在下で、エチレンおよび炭素数が3〜30のα-オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合する工程を含み、前記オレフィンの少なくとも1種がエチレンまたはプロピレンであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
ポリエンの存在下で前記のオレフィンを重合する工程を実施することを特徴とする、請求項8に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のフルオレン化合物、該フルオレン化合物を部分構造として含有する遷移金属化合物、該遷移金属化合物を含有するオレフィン重合用触媒、および該オレフィン重合用触媒を用いるオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[メタロセン化合物]
オレフィン重合用触媒としてシクロペンタジエニル配位子または置換シクロペンタジエニル配位子を有する遷移金属化合物、所謂メタロセン化合物を使用するオレフィン重合体の製造方法が広く知られている。ジルコノセンジメチルとメチルアルミノキサン(MAO)との組合せによる触媒がエチレンの重合に高活性を示すことがW. Kaminskyらによって報告されて以来[非特許文献1]、触媒の性能向上と特異な重合体の製造等を目的として様々な改良が試みられてきた。このうちα-オレフィンを立体規則的に重合する方法については、W.Kaminskyらによってアイソタクチック重合が報告されて以来(非特許文献2参照)、多くの研究がなされている。
【0003】
メタロセン化合物を用いたα-オレフィンの重合では、メタロセン化合物の配位子のシクロペンタジエニル環に置換基を導入したり、2個のシクロペンタジエニル環を架橋させたりすることにより、得られるα-オレフィン重合体の立体規則性や分子量が大きく変化することが知られている。
【0004】
[フルオレン環を有するメタロセン化合物]
例えば、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環とが架橋された配位子を有するメタロセン化合物をプロピレン重合用触媒に用いた場合について、以下の報告がされている。
【0005】
立体規則性の観点からみると、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドではシンジオタクチックポリプロピレン(非特許文献3参照)が、シクロペンタジエニル環の3位にメチル基を導入したジメチルメチレン(3-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドではヘミアイソタクチックポリプロピレン(特許文献1参照)が、シクロペンタジエニル環の3位にtert-ブチル基を導入したジメチルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドではアイソタクチックポリプロピレン(特許文献2参照)が、それぞれ得られる。
【0006】
また、ジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドよりも、フルオレニル環の3,6位にtert-ブチル基を導入したジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドの方が、アイソタクチック立体規則性が向上したポリプロピレン(特許文献3参照)が得られる。
【0007】
また、分子量の観点からみると、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドよりも、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環との架橋部をジフェニルメチレンに変えたジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドの方が、高分子量のシンジオタクチックポリプロピレン(特許文献4参照)を、ジメチルメチレン(3-(2-アダマンチル)-シクロペン
タジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドよりも、架橋部をジフェニルメチレンに変えたジフェニルメチレン(3-(2-アダマンチル)-シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドの方が、高分子量のアイソタクチック-ヘミアイソタクチックポリプロピレン(非特許文献4参照)を、ジメチルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドよりも、シクロペンタジエニル環の5位(架橋部のα位)にメチル基を導入したジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドの方が、高分子量のアイソタクチックポリプロピレン(特許文献5参照)を、それぞれ得ることができる。
【0008】
さらに、シクロペンタジエニル環の隣り合う2つの位置に置換基を導入したジメチルメチレン(3-tert-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドや、ジフェニルメチレン(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドでは、それぞれジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドに比べて、低分子量のポリプロピレンが得られる(特許文献5〜6参照)。
【0009】
このように、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環が架橋された配位子を有するメタロセン化合物については多くの報告例がある。一方、フルオレン環の2、3-位、6、7-位が1,2-ジヒドロピリジン環構造を形成しているメタロセン化合物の合成・重合の報告例は一切無い。また、2、3-位のみに1,2-ジヒドロピリジン環を持つフルオレン誘導体は知られている(非特許文献5)が、2、3-位、6、7-位に1,2-ジヒドロピリジン環を持つフルオレン誘導体についても合成の報告例も無い。従ってそのようなメタロセン化合物がどのような性能を有するのかは知られていなかった。
【0010】
一方、中心金属に着目すると、ハフニウム化合物が同構造のジルコニウム化合物に比して高分子量のオレフィン重合体を生成することは広く知られている。特公平6-811号公報等には、メタロセン化合物としてハフノセンジクロリドを用いることにより、ジルコノセンジクロリドに比して生成するポリエチレンの分子量が向上することが開示されている。同じく特許第2882257号公報には、[イソプロピリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ハフニウムジクロリドを用いることにより、[イソプロピリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリドに比して生成するエチレン/1-ヘキセン共重合体の分子量が向上することが開示されている。しかしながら、これらいずれの場合においても生成するオレフィン重合体の分子量は十分ではなく、産業上有用な程の高温で所望の分子量のオレフィン重合体を製造することは困難であった。W. Kaminskyらは更に改良を加え、架橋シクロペンタジエニル-フルオレニルメタロセン化合物の架橋部分およびフルオレニル基部分に置換基を導入することにより、生成するポリプロピレンの分子量向上を図った[J. Organomet. Chem., 684, 200 (2003)]。この試みはある一定の成果を上げたものの、重合温度上昇に伴う生成ポリプロピレンの分子量低下の傾向は著しく、目的とする高温重合で所望の分子量のポリプロピレンを得るには至っていない。
【0011】
一般的には、高い温度で重合すると、得られる重合体の分子量は低下する傾向がある一方で、生成したオレフィン重合体を含む重合溶液の粘度が低下し撹拌等の操作が容易になり、かつ反応熱の除熱コストが低減されるなどの利点があり、経済性は向上する。さらに、重合後に残存する溶媒やモノマーを除去する際にも、より少ない加熱で効率的に除去することが可能となる。したがって、より高分子量の重合体を得ることができる、より高活性な重合触媒、重合方法の開発が切望されている。
【0012】
また、残存モノマーの除去という観点からは、高温で重合を行うことの他にも、重合後に高沸点モノマーの残量を減らすことも有効である。特に、環状オレフィンや、環状骨格を有するポリエン等のモノマーは比較的沸点が高いことから、これらを効率的に重合することのできる触媒、重合方法の開発もまた重要となっている。
【0013】
一方で、2、7-位に窒素含有基を有するフルオレン化合物は近年有機電界発光素子などでも使用されている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平03-193796号公報
【特許文献2】特開平06-122718号公報
【特許文献3】国際公開第2001/027124号
【特許文献4】特開平02-274703号公報
【特許文献5】特表2001-526730号公報
【特許文献6】特開平10-226694号公報
【特許文献7】特開平05-25473号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 19, 390 (1980)
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 24, 507 (1985)
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc., 110, 6255 (1988)
【非特許文献4】Organometallics, 21, 934 (2002)
【非特許文献5】Bioorg. Med. Chem. Lett., 8, 2731-2736 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、オレフィン重合用触媒として用いられる遷移金属化合物の中間体などとして有用な新規なフルオレン化合物、並びにオレフィン重合用触媒成分として当該フルオレン環を部分構造として有する遷移金属化合物、当該遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒、およびオレフィン重合体の製造方法を提供することを目的としている。本発明は、さらには、高分子量のオレフィン重合体を効率よく製造することができ、原料モノマーにポリエンを併用する場合には、高いポリエンモノマーの転化率でポリエン含有率の高いオレフィン重合体を効率よく製造することができる、オレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体の製造方法、該オレフィン重合用触媒に用いられる遷移金属化合物、ならびに該遷移金属化合物の中間体として有用な新規なフルオレン化合物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、以下の構成を有する遷移金属化合物を含有するオレフィン重合用触媒を用いることにより、上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0018】
[1]
下記一般式[I]で表されることを特徴とするフルオレン化合物。
【0019】
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
R1からR16までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。)
【0020】
[2]
下記一般式[I']で表されることを特徴とするフルオレン化合物。
【0021】
【化2】
(式中、R0は金属含有基であり、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
R0とR2とは、互いに結合して環を形成してもよく、R2からR16までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。)
【0022】
[3]
下記一般式[II]で表されることを特徴とする遷移金属化合物。
【0023】
【化3】
(式中、R17、R18、R19、R20、R21およびR22は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、R17からR22までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0024】
Mは第4族遷移金属原子であり、Yは炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、jは1〜4の整数である。
【0025】
Zは、上記[1]に記載のフルオレン化合物から一般式[I]におけるR1およびR2を除いた構造を有する、2価の遊離原子価を持つフルオレニリデン基である。)
【0026】
[4]
前記一般式[II]において、R19、R20、R21およびR22が水素原子であることを特徴とする上記[3]に記載の遷移金属化合物。
【0027】
[5]
前記一般式[I]において、R3、R9、R10およびR16が水素原子であることを特徴とする上記[3]または[4]に記載の遷移金属化合物。
【0028】
[6]
上記[3]〜[5]のいずれか1つに記載の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒。
【0029】
[7]
(B-1)有機金属化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)上記[3]に記載の遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)をさらに含有する上記[6]に記載のオレフィン重合用触媒。
【0030】
[8]
上記[6]または[7]に記載のオレフィン重合用触媒の存在下で、エチレンおよび炭素数が3〜30のα-オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合する工程を含み、前記オレフィンの少なくとも1種がエチレンまたはプロピレンであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【0031】
[9]
ポリエンの存在下で前記のオレフィンを重合する工程を実施することを特徴とする、上記[8]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るオレフィン重合用触媒を用いることにより、高分子量のオレフィン重合体を効率よく製造することができ、また、原料モノマーにポリエンを併用する場合、高いポリエンモノマーの転化率でポリエン含有率の高いオレフィン重合体を効率よく製造することができる。
【0033】
また、本発明に係るフルオレン化合物および遷移金属化合物を用いることにより、上述のように有用なオレフィン重合用触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
〔フルオレン化合物[I]および[I']〕
本発明に係るフルオレン化合物[I]は、下記一般式[I]で表される。
【0035】
【化4】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
R1からR16までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。)
【0036】
R1からR16における炭化水素基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基、飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、その下限値は、直鎖状炭化水素基であれば1、分岐状炭化水素基であれば3、環状飽和炭化水素基であれば3、環状不飽和炭化水素基であれば3、飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基であれば4である。
【0037】
直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基等の直鎖状アルキル基;アリル基等の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0038】
分岐状炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
【0039】
環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基等の多環式基が挙げられる。
【0040】
環状不飽和炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等のアリール基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;5-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エニル基等の多環の不飽和脂環式基が挙げられる。
【0041】
飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基としては、例えば、ベンジル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基が有する1または2以上の水素原子をアリール基に置換してなる基が挙げられる。
【0042】
R1からR16におけるヘテロ原子含有炭化水素基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フリル基、メトキシフェニル基などの酸素原子含有炭化水素基;N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N-フェニルアミノ基等のアミノ基、ピリル基、ジメチルアミノフェニル基などの窒素原子含有炭化水素基;チエニル基、メチルチオフェニル基などの硫黄原子含有炭化水素基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロメチル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基などのハロゲン含有炭化水素基が挙げられる。ヘテロ原子含有炭化水素基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜15である。ただし、ヘテロ原子含有炭化水素基からはケイ素含有基を除く。
【0043】
R1からR16におけるケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の式-SiR3(式中、複数あるRはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基または炭素数6〜15のアリール基である。)で表される基が挙げられる。
また、本発明に係るフルオレン化合物[I']は、下記一般式[I']で表される。
【0044】
【化5】
(式中、R0は金属含有基であり、R2〜R16は、それぞれ前記一般式[I]における同一記号と同義である。
R0とR2とは、互いに結合して環を形成してもよく、R2からR16までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。)
【0045】
金属含有基としては、フルオレン化合物[I']から一般式[I']におけるR0およびR2を除いて誘導されるフルオレニリデン基と共に、該フルオレニリデン基を配位子の一つとするメタロセン化合物を形成する置換基が好ましい。金属含有基に含まれる金属としては、例えばクロム、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウム、モリブデン、タングステン、亜鉛、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ランタノイド類やチタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの第4属遷移金属、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属を有する基が挙げられる。金属含有基はこれらの金属の他、シクロペンタジエニル基、インデニル基、アズレニル基や、これらに上述の炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ケイ素含有基などが置換した基等を含んでいても良い。また金属に配位する配位子として、一酸化炭素や、トリフェニルホスフィンなどの有機リン配位子、塩素などのハロゲン配位子、ジメチルアミド基などの有機アミン配位子等を含んでいても良い。
【0046】
フルオレン化合物[I']としては、具体的には下式で表される化合物(5)を例示することができる。ここでLは金属含有基であり、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、塩化マグネシウム(MgCl)、臭化マグネシウム(MgBr)、塩化亜鉛(ZnCl)、三塩化ジルコニウム、三塩化ハフニウム、三塩化チタン、シクロペンタジエニルジクロロジルコニウム、シクロペンタジエニルジクロロハフニウム、シクロペンタジエニルジクロロチタン、シクロペンタジエニル鉄等が挙げられ、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウムを含有する置換基である。
【0047】
【化6】
(R3からR16までの置換基のうち、隣接した2つの置換基(例:R3とR4、R4とR5、R5とR6、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16)が互いに結合して環を形成していてもよい。前記環は、分子中に2箇所以上形成されていてもよい。)
【0048】
本明細書において、2つの置換基が互いに結合して形成された環(付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環、ヘテロ環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環;ベンゼン環;水素化ベンゼン環;シクロペンテン環;フラン環、チオフェン環等のヘテロ環およびこれに対応する水素化ヘテロ環が挙げられ、シクロヘキサン環、ベンゼン環および水素化ベンゼン環が好ましい。
【0049】
またフルオレン化合物[I']は、金属を含む環状構造を有していてもよい。金属を含む環状構造を有するフルオレン化合物[I']としては、下記で表される化合物(10a)が挙げられる。
【0050】
【化7】
(Aは窒素原子またはリン原子であり、R17、R18およびR23は、それぞれ独立に、水素原子ならびに上述した炭化水素基、ケイ素含有基、ヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる置換基であり、Y、M、Qおよびjは、それぞれ後述する一般式[II]における同一記号と同義である。)
【0051】
また化合物(10a)としては、例えば、下式で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化8】
式[I]および[I']において、R3、R7、R9、R10、R12およびR16は水素原子であることが好ましい。R4、R5、R6、R8、R11、R13、R14およびR15としては炭化水素基およびヘテロ原子含有炭化水素基が好ましく、炭化水素基がより好ましく、隣接する炭化水素基同士が互いに結合せず環を形成していないことがさらに好ましい。
【0053】
〈好ましいフルオレン化合物[I]および[I']の例示〉
本発明に係る好ましいフルオレン化合物[I]および[I']としては、例えば、
2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,10-ジメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,10-ジメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,10-ジメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,10-ジメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,10-ジメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,2,4,7,9,10-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,2,4,7,9,10-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,2,4,7,9,10-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,2,4,7,9,10-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,2,4,7,9,10-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-2,2,9,9-テトラメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,12-ジ-n-オクチル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,12-ジ-n-オクチル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,12-ジ-n-オクチル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,12-ジ-n-オクチル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,12-ジ-n-オクチル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,12-ジフェニル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,12-ジフェニル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,12-ジフェニル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,12-ジフェニル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,12-ジフェニル-1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
1,12-ジ-n-オクチル-1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジメチル-1,12-ジ-n-オクチル-1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジエチル-1,12-ジ-n-オクチル-1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジオクチル-1,12-ジ-n-オクチル-1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン、12,12-ジフェニル-1,12-ジ-n-オクチル-1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,5-g']ジキノリン、
[(tert-ブチルアミノ)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)ジメチルシラン)]チタンジクロライド、[(tert-ブチルアミノ)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)ジメチルシラン)]ジルコニウムジクロライド、[(tert-ブチルアミノ)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)ジメチルシラン)]ハフニウムジクロライド
が挙げられる。
【0054】
ただし、フルオレン化合物[I]および[I']は、上記例示の化合物に何ら限定されるものではない。
本発明に係るフルオレン化合物[I]および[I']は、後述する遷移金属化合物[II]の中間体として用いられる。また、本発明に係るフルオレン化合物[I]および[I']は、有機電界発光素子の分野においても有用である。
【0055】
〔遷移金属化合物[II]〕
本発明に係る遷移金属化合物[II]は、下記一般式[II]で表される。
【0056】
【化9】
(式中、R17、R18、R19、R20、R21およびR22は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、R17からR22までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。
Mは第4族遷移金属原子であり、Yは炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、jは1〜4の整数である。
Zは、本発明に係るフルオレン化合物[I]から一般式[I]におけるR1およびR2を除いた構造を有する、2価の遊離原子価を持つフルオレニリデン基である。)
【0057】
すなわち、本発明に係る遷移金属化合物[II]は、下記一般式[IIa]で表される。
【0058】
【化10】
【0059】
〈R3からR22
R3からR22としての炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基の詳細(具体例、好ましい態様等)は、それぞれ、上述したR1からR16としての炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有炭化水素基の詳細と同様である。また、R3からR22までの置換基のうち、隣接した2つの置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。前記環は、分子中に2箇所以上形成されていてもよい。
【0060】
R3、R7、R9、R10、R12およびR16は水素原子であることが好ましく、さらにR19、R20、R21およびR22が水素原子であることがより好ましい。
またR4、R5、R6、R8、R11、R13、R14およびR15は炭化水素基であることが好ましく、この炭化水素基としては直鎖状アルキル基がさらに好ましく、隣接する炭化水素基同士が互いに結合せず環を形成していないことがさらに好ましく、R17およびR18は環状不飽和炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基であることが好ましい。
【0061】
〈Y〉
Yは炭素原子、ケイ素原子およびゲルマニウム原子から選ばれ、好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、特に好ましくは炭素原子である。
【0062】
〈M、Q、j〉
Mは、第4族遷移金属であり、好ましくはTi、ZrまたはHfであり、より好ましくはZrまたはHfであり、特に好ましくはHfである。
【0063】
Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれる。
Qにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0064】
Qにおける炭化水素基としては、R1からR22における炭化水素基と同様の基が挙げられ、好ましくは直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基等のアルキル基である。
Qにおけるアニオン配位子としては、例えば、メトキシ基、tert-ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ等のアリールオキシ基;アセテート基、ベンゾエート基等のカルボキシレート基;メシレート基、トシレート基等のスルホネート基;ジメチルアミド基、ジイソプロピルアミド基、メチルアニリド基、ジフェニルアミド基等のアミド基が挙げられる。
【0065】
Qにおける孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテルが挙げられる。
Qは、少なくとも1つがハロゲン原子またはアルキル基であることが好ましい。
jは1〜4の整数であり、好ましくは2である。
【0066】
以上、遷移金属化合物[II]の構成、すなわちR3〜R22、Y、M、Qおよびjについて、好ましい態様を説明した。本発明では、それぞれの好ましい態様の任意の組合せも好ましい態様であり、R3、R7、R9、R10、R12およびR16が水素原子であり、Yが炭素原子であり、MがZrまたはHfである組み合わせはより好ましく、R3、R7、R9、R10、R12、R16、R19、R20、R21およびR22が水素原子であり、Yが炭素原子であり、MがZrまたはHfである組み合わせはさらに好ましい。
【0067】
上述の遷移金属化合物[II]を含むオレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合では、特にエチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合においての成分として用いると、高い分子量の重合体を与え、エチレンやα-オレフィンと環状オレフィン(環状骨格を有するポリエンを含む)との共重合において、環状オレフィンを取り込み易い。
【0068】
触媒の構造がその触媒性能に与える影響については、これまでに多くの研究がなされている(例えば、Coord. Chem. Rev., 25, 18-35, (2006))。特に最近では、第一原理計算による触媒の構造と性能についての検証が盛んに行われている。例えばOrganometallics, 30, 1350-1358, (2011)では、得られる重合体の分子量やコモノマーの取り込み易さが、重合の素反応における遷移状態の活性化エネルギーと相関することが示されている。すなわち、得られる重合体の分子量は、主鎖生長反応(モノマーの挿入反応)および停止反応(β-水素移動反応)の活性化エネルギーの差と相関がある。この差が大きいほど、主鎖生長反応が停止反応よりも起こり易い、すなわち重合体の分子量が高くなるといえる。本発明の遷移金属化合物と既知の遷移金属化合物において、下式で表される触媒活性種(重合体主鎖のモデルとしてイソブチル基を採用)を仮定し、これらにエチレンを挿入する場合の活性化エネルギー(GEins)と、エチレンにβ-水素移動反応を起こす場合の活性化エネルギー(GEH)との差(GEH-GEins)、ハフニウム原子にβ-水素移動反応を起こす際の活性化エネルギー(GMH)を密度汎関数法によって計算した結果を下表に示す。
【0069】
また同様に、コモノマーの取り込み易さは、エチレンおよびコモノマーの挿入反応の活性化エネルギーの差と相関がある。すなわち、この差が小さければ、よりコモノマーを取り込み易いことになる。図のような触媒活性種に、エチレンを挿入する際の活性化エネルギー(GEins)とノルボルネンを挿入する際の活性化エネルギー(GNins)との差(GNins-GEins)を密度汎関数法によって計算した結果を下表に示す。
【0070】
これらの理論計算からも、エチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合において高い分子量の重合体を与える上で、あるいはエチレンやα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合において、環状オレフィンを容易に取り込む上で、本発明のフルオレン化合物および遷移金属化合物が有用であることが支持される。
【0071】
【化11】
【0072】
【表1】
【0073】
〈好ましい遷移金属化合物[II]の例示〉
本発明に係る好ましい遷移金属化合物[II]としては、例えば、
[(シクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メチルフェニル))(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メチルフェニル))(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メチルフェニル))(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メチルフェニル))(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メチルフェニル))(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メトキシフェニル))(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メトキシフェニル))(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メトキシフェニル))(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メトキシフェニル))(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-メトキシフェニル))(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-フルオロフェニル))(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-フルオロフェニル))(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-フルオロフェニル))(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-フルオロフェニル))(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジ(p-フルオロフェニル))(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[(シクロペンタジエニル)(ビス(p-ジメチルアミノフェニル))(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ビス(p-ジメチルアミノフェニル))(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ビス(p-ジメチルアミノフェニル))(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ビス(p-ジメチルアミノフェニル))(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ビス(p-ジメチルアミノフェニル))(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[(シクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[(シクロペンタジエニル)(1,2-エチリデン)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(1,2-エチリデン)(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(1,2-エチリデン)(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(1,2-エチリデン)(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(1,2-エチリデン)(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[(シクロペンタジエニル)(ジメチルシリル)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジメチルシリル)(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジメチルシリル)(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジメチルシリル)(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(シクロペンタジエニル)(ジメチルシリル)(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(イソプロピリデン)(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[(4-t-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(ジフェニルメチレン)(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[1-(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)(5-(tert-ブチル)-1,1,3-トリメチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン))]ハフニウムジクロライド、[1-(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)(5-(tert-ブチル)-1,1,3-トリメチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン))]ハフニウムジクロライド、[1-(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)(5-(tert-ブチル)-1,1,3-トリメチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン))]ハフニウムジクロライド、[1-(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)(5-(tert-ブチル)-1,1,3-トリメチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン))]ハフニウムジクロライド、[1-(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)(5-(tert-ブチル)-1,1,3-トリメチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン))]ハフニウムジクロライド、
[1-(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)5-(tert-ブチル)-1-イソプロピル-3-メチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ハフニウムジクロライド、[1-(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)5-(tert-ブチル)-1-イソプロピル-3-メチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ハフニウムジクロライド、[1-(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)5-(tert-ブチル)-1-イソプロピル-3-メチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ハフニウムジクロライド、[1-(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)5-(tert-ブチル)-1-イソプロピル-3-メチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ハフニウムジクロライド、[1-(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)5-(tert-ブチル)-1-イソプロピル-3-メチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ハフニウムジクロライド、[8-(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)2-(tert-ブチル)-8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン)]ハフニウムジクロライド、
[2-(tert-ブチル)-8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[2-(tert-ブチル)-8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[2-(tert-ブチル)-8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[2-(tert-ブチル)-8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、
[1-(8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン)アダマンタン-8-イル)(1,2,2,4,7,9,9,10-オクタメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[1-(8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン)アダマンタン-8-イル)(1,10-ジエチル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[1-(8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン)アダマンタン-8-イル)(1,10-ジ-iso-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[1-(8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン)アダマンタン-8-イル)(1,10-ジ-n-プロピル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライド、[1-(8-メチル-3b,4,5,6,7,7a,8,8a-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン)アダマンタン-8-イル)(1,10-フェニル-2,2,4,7,9,9-ヘキサメチル2,9,10,12-テトラヒドロ-1H-シクロペンタ[1,2-g:5,4-g']ジキノリン-12-イル)]ハフニウムジクロライドが挙げられる。
【0074】
遷移金属化合物[II]としては、上記例示の化合物のチタン誘導体(ハフニウムをチタンに置換したもの)、ジルコニウム誘導体(ハフニウムをジルコニウムに置換したもの)も挙げられる。ただし、遷移金属化合物[II]は、上記例示の化合物に何ら限定されるものではない。
【0075】
〔フルオレン化合物[I]および[I']の製造方法〕
本発明に係るフルオレン化合物[I]および[I']は公知の方法を利用することによって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。以下では、まず、本発明に係るフルオレン化合物[I]の製造方法の一例を説明する。
【0076】
【化12】
フルオレン化合物[I]は、例えば、上記反応[A]に示すように2,7-ジアミノフルオレン誘導体と、カルボニル化合物との反応により、合成することができる。カルボニル化合物としては公知のカルボニル化合物、または公知のα,β-不飽和カルボニル化合物を用いることができる(例えば、J. Org. Chem. 2006, 71, 1668-1676)。反応[A]において、2,7-ジアミノフルオレン誘導体とカルボニル化合物との反応は、2回以上に分けても良い。反応[A]では必要に応じて触媒を共存させてもよい。触媒としては、公知の酸、塩基、またはハロゲン化合物等が挙げられる。また反応を促進するために、反応系にマイクロ波を照射してもよい。フルオレン化合物[I]は、他の化合物との混合物として得られた場合には、従来公知の方法を利用して分離すればよい。
【0077】
公知の酸としては、塩酸、塩化水素、硫酸、硝酸、燐酸、ポリリン酸、五酸化リン、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、フッ化水素酸、パラトルエンスルホン酸、過塩素酸、メタ過ヨウ素酸、オルト過ヨウ素酸等が挙げられる。さらに、フッ化ホウ素に代表される金属フッ化物、塩化アルミニウム、塩化第二スズ、塩化第二鉄、塩化亜鉛、塩化第二銅、塩化水銀、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、臭化アルミニウム、臭化第二鉄、塩化ベリリウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、塩化イットリビウム、塩化スカンジウム等の塩化物、ならびにこれらの塩化物に含まれる金属のトリフルオロメタンスルホン酸塩、ヘテロポリ酸、アルミナ、ゼオライト等の固体酸などが挙げられる。
【0078】
公知の塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化バリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、水素化カリウム、水素化ナトリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩;ジエチルアミン、アンモニア、ピロリジン、ピペリジン、アニリン、メチルアニリン、トリエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムアミド等の含窒素塩基;ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等の有機アルカリ金属化合物;メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド等のグリニヤール試薬が挙げられる。
【0079】
また、公知のハロゲン化合物としては、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素等が挙げられる。これらのうちから1種または2種以上を同時に用いてもよい。
反応[A]では必要に応じて溶媒を用いてもよい。用いる溶媒に特に制限はないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル;トリエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、アニリン、ピリジン、アセトニトリル等のアミン、ニトリルまたは含窒素化合物;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、メトキシエタノール等のアルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等のアミド;ジメチルスルホキシド;二硫化炭素等の含硫黄化合物;アセトンやメチルエチルケトン等のケトン、特に基質として用いるアルデヒド、ケトンそのもの;などの有機溶媒;水、イオン性液体などの非有機溶媒;またはこれらのうち2種以上を混合して得られる溶媒が挙げられ、これらの中から反応を阻害しない溶媒を選択することができる。
【0080】
反応[A]で得られたフルオレン化合物のN原子に結合するR4またはR15が水素原子である場合には、これらの水素原子を、必要に応じて置換基に変換してもよい。置換基の導入には公知の反応を用いることができ、例えば下記反応[B]で示される反応を用いることができる。
【0081】
【化13】
ここでXはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはトリフレート基等の脱離基であり、R4およびR15は、それぞれ独立に前記炭化水素基、前記ケイ素含有基および前記ヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる基である。
【0082】
反応[B]では反応を促進するために塩基を用いてもよい。塩基としては公知のものを用いることができ、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化バリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、水素化カリウム、水素化ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩;ジエチルアミン、アンモニア、ピロリジン、ピペリジン、アニリン、メチルアニリン、トリエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムアミド等の含窒素塩基;ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等の有機アルカリ金属化合物;メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド等のグリニヤール試薬が挙げられる。
【0083】
反応[B]では必要に応じて溶媒を用いてもよい。用いる溶媒に特に制限はないが、反応[A]と同様の溶媒が挙げられる。
反応[B]においてさらに効率よく反応を行うために触媒を用いてもよい。触媒としては、H-N結合を有する化合物とR-Xで表される化合物とを反応させてR-N結合を形成する反濃の触媒として公知の触媒を用いることができ、特にパラジウムやニッケルに代表される遷移金属触媒が効果的である。これらの触媒を用いる場合は、金属塩と配位子とを併用することもでき、また遷移金属原子に予め配位子が配位したものを用いてもよい。金属塩としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム、塩化ニッケル等が挙げられる。これらの金属塩と反応して触媒活性を向上させる配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン・テトラフルオロボレート、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン・テトラフルオロボレート、トリ(o-トリル)ホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンや、ジアルキルビアリールホスフィン類(Buckwald配位子)などのホスフィン類が挙げられる。
【0084】
反応[A]および[B]の反応温度は、特に制限はないが、好ましくは-100〜300℃、より好ましくは-40〜150℃である。
次に、本発明に係るフルオレン化合物[I']の製造方法の一例を説明する。
フルオレン化合物[I']が下記式:
【0085】
【化14】
(R3〜R16は、それぞれ前記一般式[I']における同一記号と同義であり、Lは、後述する(〔遷移金属化合物[II]の製造方法〕に記載する)式[D]および[E]における同一記号と同義である。)
で表される化合物である場合には、この化合物(5)はフルオレン化合物[I]であって一般式[I]においてR1およびR2が水素原子である化合物を原料として、後述する、前駆体化合物(1)からジアルカリ金属塩を合成する方法と同様の方法を利用して製造することができる。すなわち、フルオレン化合物[I]と、アルカリ金属、水素化アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、有機アルカリ金属および有機アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分とを有機溶媒中で接触させることで、両者の反応を行い、化合物(5)が製造される。
また、フルオレン化合物[I']が下記式:
【0086】
【化15】
(R3〜R16は、それぞれ前記一般式[I']における同一記号と同義であり、Aは窒素原子またはリン原子であり、R17、R18およびR23は、それぞれ独立に、水素原子ならびに上述した炭化水素基、ケイ素含有基、ヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる置換基であり、Y、M、Qおよびjは、それぞれ前記一般式[II]における同一記号と同義である。)
で表される化合物(10a)である場合には、この化合物(10a)を製造する過程では、まず、上述のフルオレン化合物[I]を用いて、例えば以下に示す反応[C]で表されるような経路を経てその前駆体である化合物(10)が製造される(例えばJ. AM. CHEM. SOC., 126, 16716-16717,(2004))。
【0087】
【化16】
ここでXは後述する[E]における同一記号と同義である。
【0088】
反応条件としては、後述する(〔遷移金属化合物[II]の製造方法〕に記載する)方法で採用されるものと同様の条件を採用してもよい。
化合物(10)は後述する(〔遷移金属化合物[II]の製造方法〕に記載する)方法でジアルカリ金属塩とすることができ、さらに金属含有基を有するフルオレン化合物とすることができる。すなわち、化合物(10)と、アルカリ金属、水素化アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、有機アルカリ金属および有機アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分とを有機溶媒中で接触させることで、両者の反応を行い、化合物(10)のジアルカリ金属塩が製造され、さらにこのジアルカリ金属塩と、下記一般式[III]:
MQj+2 …[III]
(式中、M、Qおよびjは、それぞれ前記式(10a)における同一記号と同義である。)
で表される化合物[III]とを、有機溶媒中で反応させることで、金属含有基を有するフルオレン化合物である化合物(10a)が製造される。
【0089】
〔遷移金属化合物[II]の製造方法〕
本発明に係る遷移金属化合物[II]は公知の方法を利用することによって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。以下では、本発明で用いられる遷移金属化合物[II]の製造方法の例を説明する。まず、遷移金属化合物[II]の前駆体となる中間体(1)の製造方法を示し、次いでジアルカリ金属塩の製造方法、遷移金属化合物[II]の製造方法の順に説明する。
【0090】
〈前駆体の合成〉
【0091】
【化17】
【0092】
【化18】
上記式[D]中、R3〜R22はそれぞれ一般式[II]中の同一記号と同義であり、Yは炭素原子である。上記式[E]中、R3〜R22はそれぞれ一般式[II]中の同一記号と同義であり、Yはケイ素原子、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンの原子、メトキシ基、エトキシ基、イソポロポキシ基などのアルコキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのアミノ基、またはトリフレート基である。
【0093】
上記式[D]および[E]において、Lはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアルカリ土類金属塩である。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては例えば、マグネシウム、カルシウムが挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、例えば、塩化マグネシウム(MgCl)、臭化マグネシウム(MgBr)、ヨウ化マグネシウム(MgI)、ブチルマグネシウム(BuMg)、塩化カルシウム(CaCl)が挙げられる。
【0094】
上記式(1)で表される前駆体化合物(1)において、シクロペンタジエニル環における二重結合の位置が異なる異性体の存在を考えることができ、上記式[D]および[E]には、それらのうちの一種のみ例示してあるが、前駆体化合物(1)はシクロペンタジエニル環における二重結合の位置が異なる他の異性体であってもよく、またはそれらの混合物を次工程に使用してもよい。また前駆体化合物(1)は、上記式(1)で表される化合物とシクロペンタジエニル環における二重結合の位置が異なる他の異性体が構成しうるすべての光学異性体を包含し、これらの混合物であっても良い。
【0095】
式[D]において、シクロペンタジエン化合物(2)及びカルボニル化合物(3)からフルベン化合物(4)を合成する方法としては公知の方法を用いることができる。この反応においては、塩基を併用してもよく、塩基としては上述の反応[B]に用い得る塩基が挙げられる。塩基は2種以上を併用してもよい。塩基を併用する場合は、シクロペンタジエン化合物(2)を、塩基と予め反応させた後にカルボニル化合物(3)と反応させてもよく、シクロペンタジエン化合物(2)とカルボニル化合物(3)と塩基とを同時に反応させてもよく、任意の順で塩基を反応させることができる。また反応を促進させるため、アミン化合物、アミド化合物、イミド化合物等のルイス塩基やルイス酸を用いることもできる。ルイス塩基としては、N,N'-テトラメチルエチレンジアミン、1-メチルイミダゾール、N,N'-ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられ、ルイス酸としては、三フッ化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化亜鉛等が挙げられる。
【0096】
式[D]および[E]において、化合物(5)は上述の方法で製造することができ、化合物(11)は、後述する、前駆体化合物(1)からジアルカリ金属塩を合成する方法と同様の方法を利用して製造することができる。すなわち、下記一般式:
【0097】
【化19】
(R19〜R22は、それぞれ一般式[II]における同一記号と同義である。)
で表される化合物(該化合物は、二重結合の位置が違うすべての異性体を包含し、これらの混合物であっても良い。)と、アルカリ金属、水素化アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、有機アルカリ金属および有機アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分とを有機溶媒中で接触させることで、両者の反応を行い、化合物(11)が製造される。
【0098】
上記の式[D]または[E]で表される反応で用いることのできる有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;およびこれらのうち2種以上を混合して得られる溶媒が挙げられる。
反応温度は、好ましくは-100〜150℃、より好ましくは-40〜120℃である。
【0099】
〈ジアルカリ金属塩の合成〉
前駆体化合物(1)と、アルカリ金属、水素化アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、有機アルカリ金属および有機アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分とを有機溶媒中で接触させることで、両者の反応を行い、ジアルカリ金属塩を得る。
【0100】
上記反応で用いることのできるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ;水素化アルカリ金属としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどが挙げられ;アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-tert-ブトキシドなどが挙げられ;有機アルカリ金属としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウムなどが挙げられ;有機アルカリ土類金属としては、メチルマグネシウムハライド、ブチルマグネシウムハライド、フェニルマグネシウムハライドなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0101】
上記反応で用いられる有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;およびこれらのうち2種以上を混合して得られる溶媒が挙げられる。
【0102】
前駆体化合物(1)と上記金属成分との反応は、好ましくはモル量比(前駆体化合物(1):上記金属成分)=1:1〜1:20、より好ましくは1:1.5〜1:4、特に好ましくは1:1.8〜1:2.5で行う。反応温度は、好ましくは-100〜200℃、より好ましくは-80〜120℃である。
【0103】
上記反応を促進させるため、テトラメチルエチレンジアミン等に代表されるルイス塩基や、国際公開第2009/072505号に記載されているようにα-メチルスチレン等を使用することもできる。
【0104】
〈遷移金属化合物[II]の合成〉
上記反応で得られたジアルカリ金属塩と、下記一般式[III]で表される化合物[III]とを、有機溶媒中で反応させることで、遷移金属化合物[II]を合成する。
MQj+2 …[III]
式[III]中、Mは第4族遷移金属であり、複数あるQはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数である。MおよびQとして列挙される原子または基等は、一般式[II]におけるMおよびQとして列挙される原子または基とそれぞれ同様である。
【0105】
化合物[III]としては、例えば、三価または四価のチタニウムフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物;四価のジルコニウムフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物;四価のハフニウムフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物;ならびにこれらとテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンまたは1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類との錯体が挙げられる。
【0106】
上記反応で用いられる有機溶媒としては、〈ジアルカリ金属塩の合成〉の欄に記載された有機溶媒が挙げられる。ジアルカリ金属塩と化合物[III]との反応は、好ましくはモル量比10:1〜1:10、より好ましくは2:1〜1:2、特に好ましくは1.2:1〜1:1.2で行う。反応温度は、好ましくは-80〜200℃、より好ましくは-75〜120℃である。
【0107】
〈遷移金属化合物[II]のその他の製造方法〉
遷移金属化合物[II]のその他の製造方法として、前駆体化合物(1)を、有機金属試薬、例えばテトラベンジルチタン、テトラベンジルジルコニウム、テトラベンジルハフニウム、テトラキス(トリメチルシリルメチレン)チタン、テトラキス(トリメチルシリルメチレン)ジルコニウム、テトラキス(トリメチルシリルメチレン)ハフニウム、ジベンジルジクロロチタン、ジベンジルジクロロジルコニウムもしくはジベンジルジクロロハフニウム、またはチタン、ジルコニウムもしくはハフニウムのアミド塩と直接反応させて遷移金属化合物[II]を得る製造方法が挙げられる。
【0108】
これらの製造方法で得られた遷移金属化合物[II]に対しては、抽出、再結晶、昇華等の方法により、単離・精製を行うことができる。このような方法で得られる遷移金属化合物[II]は、プロトン核磁気共鳴スペクトル、13C-核磁気共鳴スペクトル、質量分析、X線単結晶構造解析および元素分析等の分析手法を用いることによって同定される。
【0109】
〔オレフィン重合用触媒〕
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、一般式[II]で表される遷移金属化合物[II](以下「遷移金属化合物(A)」とも記載する。)を含有する。
【0110】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、さらに、(B)(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下「化合物(B)」ともいう。)を含有することが好ましい。本発明に係るオレフィン重合用触媒は、必要に応じて、(C)担体をさらに含有してもよい。本発明に係るオレフィン重合用触媒は、必要に応じて、(D)有機化合物成分をさらに含有してもよい。
以下、遷移金属化合物(A)以外の各成分について具体的に説明する。
【0111】
〈化合物(B)〉
《有機金属化合物(B-1)》
有機金属化合物(B-1)としては、例えば、下記一般式(B-1a)で表される有機アルミニウム化合物(B-1a)、下記一般式(B-1b)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物(B-1b)、下記一般式(B-1c)で表される第2族または第12族金属のジアルキル化合物(B-1c)等の、第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が挙げられる。
【0112】
(B-1a):RamAl(ORb)nHpXq
式(B-1a)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であり、かつm+n+p+q=3である。有機アルミニウム化合物(B-1a)としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、トリシクロアルキルアルミニウムが挙げられる。
【0113】
(B-1b):M2AlRa4
式(B-1b)中、M2はLi、NaまたはKであり、Raは炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基である。錯アルキル化物(B-1b)としては、例えば、LiAl(C2H54、LiAl(C7H154が挙げられる。
【0114】
(B-1c):RaRbM3
式(B-1c)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基であり、M3はMg、ZnまたはCdである。化合物(B-1c)としては、例えば、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジn-ブチルマグネシウム、エチルn-ブチルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジn-ブチル亜鉛、ジフェニル亜鉛が挙げられる。 有機金属化合物(B-1)のなかでは、有機アルミニウム化合物(B-1a)が好ましい。 有機金属化合物(B-1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の化合物うち、入手が容易かつ安価である点で、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドは特に好ましい。
【0115】
《有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)》
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、例えば、従来公知のアルミノキサンであってもよく、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼンに対して不溶性または難溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、具体的には、一般式:
【0116】
【化20】
または一般式:
【0117】
【化21】
(式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す)
で表わされる化合物を挙げることができ、特にRがメチル基及び/またはイソブチル基であるメチルアルミノキサンであってnが3以上、好ましくは5以上のものが利用される。これらアルミノキサン類に若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0118】
従来公知のアルミノキサンは、例えば、下記(1)〜(4)の方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば、塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物等の炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
【0119】
(2)ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の媒体中で、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
【0120】
(3)デカン、ベンゼン、トルエン等の媒体中で、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド等の有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0121】
(4)トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウムと、3級アルコール、ケトン、およびカルボン酸等の炭素-酸素結合を持つ有機化合物とを反応させて生成する化合物を、熱分解反応等の非加水分解的転化をする方法。
【0122】
なお、上記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また、回収された上記アルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0123】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、有機アルミニウム化合物(B-1a)として例示したものと同一の有機アルミニウム化合物が挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
【0124】
その他、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、例えば、修飾メチルアルミノキサンが挙げられる。修飾メチルアルミノキサンとは、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムとを用いて調製されるアルミノキサンである。このような化合物は、一般にMMAOと呼ばれている。MMAOは、米国特許第4
960878号明細書および米国特許第5041584号明細書で挙げられている方法で調製することができる。また、東ソー・ファインケム社等からもトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとを用いて調製された、Rがイソブチル基であるアルミノキサンが、MMAOやTMAOといった名称で商業生産されている。
【0125】
このようなMMAOは、各種溶媒への溶解性および保存安定性が改良されたアルミノキサンであり、具体的には上記のようなベンゼンに対して不溶性または難溶性のものとは違い、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解するという特徴を持つ。
【0126】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、例えば、ホウ素原子を含む有機アルミニウムオキシ化合物や、国際公開第2005/066191号、国際公開第2007/131010号に例示されているようなハロゲンを含むアルミノキサン、国際公開第2003/082879号に例示されているようなイオン性アルミノキサンを挙げることもできる。化合物(B-2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
《遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)》
遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下「イオン性化合物(B-3)」ともいう。)としては、例えば、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、米国特許第5321106号明細書等に記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
イオン性化合物(B-3)としては、下記一般式(B-3a)で表される化合物が好ましい。
【0128】
【化22】
式(B-3a)中、Re+としては、例えば、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンが挙げられる。Rf〜Riはそれぞれ独立に有機基であり、好ましくはアリール基である。
【0129】
カルベニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオン等の三置換カルベニウムカチオンが挙げられる。
【0130】
アンモニウムカチオンとしては、例えば、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0131】
ホスホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0132】
Re+としては、例えば、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0133】
上記一般式(B-3a)で表される化合物としては、カルベニウム塩、アンモニウム塩、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0134】
カルベニウム塩としては、例えば、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0135】
アンモニウム塩としては、例えば、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
トリアルキル置換アンモニウム塩としては、例えば、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムが挙げられる。
【0136】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩としては、例えば、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0137】
ジアルキルアンモニウム塩としては、例えば、ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートが挙げられる。
【0138】
イオン性化合物(B-2)としては、その他、本出願人によって開示(例:特開2004-51676号公報)されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
イオン性化合物(B-2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
上記のうち、入手が容易かつ安価である点で、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは特に好ましい。
【0140】
〈担体(C)〉
担体(C)としては、例えば、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体が挙げられる。遷移金属化合物(A)は、担体(C)に担持された形態で用いることが好ましい。
【0141】
《無機化合物》
担体(C)における無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0142】
多孔質酸化物としては、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の酸化物、またはこれらを含む複合物もしくは混合物を使用することができ、例えば、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3、SiO2-TiO2-MgOを使用することができる。これらの中でも、SiO2および/またはAl2O3を主成分として含有する多孔質酸化物が好ましい。
【0143】
多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なる。本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が好ましくは1〜300μm、より好ましくは3〜100μmであり;比表面積が好ましくは50〜1300m2/g、より好ましくは200〜1200m2/gであり;細孔容積が好ましくは0.3〜3.0cm3/g、より好ましくは0.5〜2.0cm3/gである。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で乾燥および/または焼成して使用される。粒子形状については特に制限はないが、特に好ましくは球状である。
【0144】
無機塩化物としては、例えば、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0145】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有されるイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物としては、粘土、粘土鉱物、または六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物を例示することができる。
【0146】
粘土、粘土鉱物としては、例えば、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、ペクトライト、テニオライトが挙げられる。
【0147】
イオン交換性層状化合物としては、例えば、α-Zr(HAsO42・H2O、α-Zr(HPO42、α-Zr(KPO42・3H2O、α-Ti(HPO42、α-Ti(HAsO42・H2O、α-Sn(HPO42・H2O、γ-Zr(HPO42、γ-Ti(HPO42、γ-Ti(NH4PO42・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩が挙げられる。
【0148】
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、何れも使用できる。化学処理としては、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
【0149】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質(「ゲスト化合物」ともいう。)を導入することをインターカレーションという。
【0150】
ゲスト化合物としては、例えば、TiCl4、ZrCl4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al13O4(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH36]+等の金属水酸化物イオンが挙げられる。これらの化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)などを加水分解して得た重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。
【0151】
ピラーとしては、例えば、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物が挙げられる。
担体(C)の中でも、SiO2および/またはAl2O3を主成分として含有する多孔質酸化物が好ましい。また、粘土または粘土鉱物も好ましく、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成ウンモである。
【0152】
《有機化合物》
担体(C)における有機化合物としては、例えば、粒径が5〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体が挙げられる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2〜14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体、ビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0153】
〈有機化合物成分(D)〉
本発明において、有機化合物成分(D)は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。有機化合物(D)としては、例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、アミド、ポリエーテルおよびスルホン酸塩等が挙げられる。
【0154】
〈各成分の使用法および添加順序〉
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法では、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。以下では、遷移金属化合物(A)、化合物(B)、担体(C)および有機化合物成分(D)を、それぞれ「成分(A)〜(D)」ともいう。
(1)成分(A)を単独で重合器に添加する方法。
(2)成分(A)および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)成分(A)を成分(C)に担持した触媒成分と、成分(B)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)成分(B)を成分(C)に担持した触媒成分と、成分(A)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)成分(A)と成分(B)とを成分(C)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0155】
上記(1)〜(5)の各方法においては、必要に応じて成分(D)を任意の順序で添加しても良い。また、各触媒成分の少なくとも2種は予め接触されていてもよい。成分(B)が担持されている上記(4)、(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない成分(B)を、任意の順序で添加してもよい。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。また、成分(C)に成分(A)が担持された固体触媒成分、成分(C)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。また必要に応じて成分(D)が担持されていても良い。
【0156】
〔オレフィン重合体の製造方法〕
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、上述のオレフィン重合用触媒の存在下で、エチレンおよび炭素数3〜30のα-オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合する工程を有する。前記オレフィンの少なくとも1種はエチレンまたはプロピレンである。ここで「重合」という用語は、単独重合および共重合を総称する意味で用いられている。また「オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合する」は、上記(1)〜(5)の各方法のように、任意の方法でオレフィン重合用触媒の各成分を重合器に添加してオレフィンを重合する態様を包含している。
【0157】
本発明では、重合は、溶液重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれによっても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。不活性炭化水素媒体は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、重合に供給されうる液化オレフィン自身を溶媒として用いる、いわゆるバルク重合法を実施してもよい。
【0158】
オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うに際して、オレフィン重合用触媒を構成しうる各成分の使用量は以下のとおりである。また、オレフィン重合用触媒において、各成分の含有量を以下のとおりに調節することができる。
【0159】
成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-10〜10-2モル、好ましくは10-8〜10-3モルとなるような量で用いられる。有機金属化合物(B-1)(以下「成分(B-1)」ともいう。)は、成分(B-1)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1)/M〕が通常1〜50,000、好ましくは10〜20,000、特に好ましくは15〜10,000となるような量で用いることができる。有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)(以下「成分(B-2)」ともいう。)は、成分(B-2)中のアルミニウム原子と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔Al/M〕が通常10〜5,000、好ましくは20〜2,000となるような量で用いることができる。イオン性化合物(B-3)(以下「成分(B-3)」ともいう。)は、成分(B-3)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が通常1〜1000、好ましくは1〜200、特に好ましくは1〜20となるような量で用いることができる。
【0160】
成分(C)を用いる場合は、成分(A)と成分(C)との重量比〔(A)/(C)〕が好ましくは0.0001〜1、より好ましくは0.0005〜0.5、さらに好ましくは0.001〜0.1となるような量で用いることができる。
【0161】
成分(D)を用いる場合は、成分(B)が成分(B-1)の場合には、モル比〔(D)/(B-1)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(B)が成分(B-2)の場合には、モル比〔(D)/(B-2)〕が通常0.005〜2、好ましくは0.01〜1となるような量で、成分(B)が成分(B-3)の場合は、モル比(D)/(B-3)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で用いることができる。
【0162】
本発明の製造方法において、オレフィンの重合温度は、通常-50〜+250℃、好ましくは0〜200℃であり;重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる二段以上に分けて行うこともできる。得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素等を存在させるか、重合温度を変化させるか、または成分(B)の使用量により調節することができる。
【0163】
本発明の製造方法は、工業的製法において有利な高温条件下であっても、高い触媒活性を維持しつつ、高分子量を有するオレフィン重合体を製造することが可能である。このような高温条件下では、重合温度は、通常40℃以上、好ましくは40〜250℃、より好ましくは45〜220℃、特に好ましくは50〜200℃(換言すれば、特に好ましくは工業化可能な温度である。)である。
【0164】
特に水素は、触媒の重合活性を向上させる効果や、重合体の分子量を増加または低下させる効果が得られることがあり、好ましい添加物であるといえる。系内に水素を添加する場合、その量はオレフィン1モルあたり0.00001〜100NL程度が適当である。系内の水素濃度は、水素の供給量を調整する以外にも、水素を生成または消費する反応を系内で行う方法や、膜を利用して水素を分離する方法、水素を含む一部のガスを系外に放出することによっても調整することができる。
【0165】
本発明の製造方法で得られたオレフィン重合体に対しては、上記方法で合成した後に、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行ってよい。
【0166】
〈オレフィン〉
本発明の製造方法において、重合反応に供給されるオレフィンは、エチレンおよび炭素数3〜30のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンであり、少なくともエチレンおよび/またはプロピレンを含む。
【0167】
α-オレフィンとしては、炭素数3〜20のα-オレフィンがより好ましく、炭素数3〜10のα-オレフィンが特に好ましい。α-オレフィンとしては、直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられる。直鎖状または分岐状のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-イコセンが挙げられる。
【0168】
また、環状オレフィン、極性基を有するモノマー、末端水酸基化ビニル化合物、および芳香族ビニル化合物から選ばれる少なくとも1種を反応系に共存させて重合を進めることもできる。また、ポリエンを併用することも可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ビニルシクロヘキサン等のその他の成分を共重合してもよい。
【0169】
環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。
【0170】
極性基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物等のα,β-不飽和カルボン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル等のα,β-不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和グリシジルが挙げられる。
【0171】
末端水酸基化ビニル化合物としては、例えば、水酸化-1-ブテン、水酸化-1-ペンテン、水酸化-1-ヘキセン、水酸化-1-オクテン、水酸化-1-デセン、水酸化-1-ウンデセン、水酸化-1-ドデセン、水酸化-1-テトラデセン、水酸化-1-ヘキサデセン、水酸化-1-オクタデセン、水酸化-1-エイコセン等の直鎖状の末端水酸基化ビニル化合物;水酸化-3-メチル-1-ブテン、水酸化-3-メチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ペンテン、水酸化-3-エチル-1-ペンテン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ヘキセン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ヘキセン、水酸化-4-エチル-1-ヘキセン、水酸化-3-エチル-1-ヘキセン等の分岐状の末端水酸基化ビニル化合物が挙げられる。
【0172】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のモノもしくはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン等の官能基含有スチレン誘導体;3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレンが挙げられる。
【0173】
ポリエンは、好ましくはジエンおよびトリエンから選ばれる。重合反応に供給される全オレフィンに対して、ポリエンを0.0001〜50モル%の範囲内で用いることも好ましい態様であり、0.0001〜10モル%の範囲内で用いることがより好ましい態様である。
【0174】
ジエンとしては、例えば、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン等のα,ω-非共役ジエン;5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等の非共役ジエン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α,ω-非共役ジエンや、ノルボルネン骨格を有するジエンが好ましい。
【0175】
トリエンとしては、例えば、6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、6,9-ジメチル-1,5,8-デカトリエン、6,8,9-トリメチル-1,5,8-デカトリエン、6-エチル-10-メチル-1,5,9-ウンデカトリエン、4-エチリデン-1,6,-オクタジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)、7-メチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、7-エチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-6-プロピル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-1,7-ノナジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカンジエン等の非共役トリエン;1,3,5-ヘキサトリエン等の共役トリエンが挙げられる。これらの中でも、末端に二重結合を有する非共役トリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)が好ましい。
【0176】
ジエンおよびトリエンはそれぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ジエンとトリエンとを組み合わせて用いてもよい。ポリエンの中でも、特にα,ω-非共役ジエンや、ノルボルネン骨格を有するポリエンが好ましい。
【0177】
本発明のオレフィン重合体の製造方法においては、供給されるオレフィンの少なくとも1種が、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンであることがより好ましく、エチレン、プロピレンであることがさらに好ましく、さらにポリエンを共存させて重合することも好ましく、エチレン単独重合、エチレン/プロピレン共重合、エチレン/1-ブテン共重合、エチレン/1-ヘキセン共重合、エチレン/1-オクテン共重合、エチレン/プロピレン/5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合、プロピレン単独重合、プロピレン/1-ブテン共重合、1-ブテン単独重合が特に好ましい。
【0178】
本発明の製造方法により製造されるエチレン/α-オレフィン共重合体は、(i)エチレンから誘導される構造単位(エチレン単位)と、(ii)炭素数3から30のα-オレフィンから誘導される構造単位(α-オレフィン単位)とを、モル比[(i)/(ii)]で表して通常99/1〜1/99の範囲で含有するが、特に制限はない。
【0179】
また本発明の製造方法により製造されるエチレン/α-オレフィン/ポリエン共重合体中のポリエンに由来する構造単位の割合は、特に制限はないが、全構造単位中、通常0.1〜50mol%、好ましくは0.2〜15mol%、さらに好ましくは0.3〜12mol%の割合の範囲にある。
【0180】
本発明の製造方法により製造されるオレフィン重合体のGPCのよって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に制限はないが、通常10000〜5000000、好ましくは50000〜2000000の範囲にある。重量平均分子量が当該範囲内にあると、成形加工性に優れる点で好ましい。
【0181】
本発明のオレフィン重合体の製造方法によって得られるオレフィン重合体のGPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.0から5.0、好ましくは1.2から4.5、さらに好ましくは1.5から4.1であるが、特に制限はない。
【実施例】
【0182】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
〔各種物性の測定法〕
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
ウォーターズ社製Alliance GPC2000を用い、濃度0.15(w/v)%の試料溶液500μlを流量1.0ml/分で移動させることにより、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定を行った。標準ポリスチレンは東ソー社製を用い、ポリスチレン換算での分子量を算出した。
・分離カラム:TSKgel GMH6-HTおよびTSKgel GMH6-HTL(各内径7.5mm、長さ300mmのカラムを2本ずつ用いた。)
・カラム温度:140℃
・移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025wt% ジブチルヒドロキシトルエン含有)
・検出器:示差屈折計
【0183】
共重合体のエチレン含量、ENB含量
共重合体のエチレン含量、ENB含量は、1H-NMRスペクトルより算出した。1H-NMRスペクトルは、重水素化o-ジクロロベンゼン0.6ml中、サンプル20mgを溶解し、日本電子製ECX400P 型核磁気共鳴装置を用い、120℃、45度パルスを用いて、繰返し時間7秒、積算回数512回で測定した。ケミカルシフトの基準値は、共重合体の主鎖メチレンシグナルを1.20ppmとした。5.55-5.35ppmのピークを2置換内部オレフィン(2H)、5.35-4.80ppmのピークをENB由来ビニリデン基(1H)、4.80-4.55ppmのピークをビニリデン基(1H)、0.91-0.10ppmをプロピレン由来のメチル基、3.50-0.91ppmのピークをそれ以外のプロトンに由来するピークとし、それぞれの面積比から含有量を算出した。
【0184】
化合物および触媒の構造・純度の同定
実施例等で得られた化合物および触媒の構造・純度は、核磁気共鳴(NMR、日本電子社製GSH-270)、電解脱離質量分析(FD-MS、日本電子社製SX-102A)、単結晶X線構造解析(ブルカー・エイエックスエス株式会社製D8 VENTURE、Cu線源)等を用いて決定した。重トルエンを溶媒として用いた核磁気共鳴においては、あらかじめ重トルエンのみで測定したスペクトルを減算し、重トルエン中に残留していた1H由来のシグナルを消去してから帰属を行った。また単結晶X線構造解析結果については、水素原子を除いたORTEP図(50%probability)を記載した。
【0185】
特に断りのない限り、全ての実施例および比較例は乾燥窒素雰囲気下、乾燥溶媒を用いて行った。
図において、シクロペンタジエン環の二重結合位置に関して複数の異性体を持つ場合も、そのうち一つの異性体のみを表記する。
【0186】
〔フルオレン化合物の合成〕
[実施例1A]
フルオレン化合物Aの合成
【0187】
【化23】
窒素雰囲気下、100ml 3つ口フラスコに2,7-ジアミノフルオレン5.00g(25.5mmol)、ヨウ素0.660g(2.60mmol)、脱水アセトン37.19gを装入した。還流下で17時間反応させた後、減圧下で濃縮した。トルエンを加え、再度濃縮した。アミノ化シリカゲルを用いたクロマトグラフィーにより精製し、アセトンとヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより、上記式[1A]で表される化合物(以下「フルオレン化合物A」という。)を得た。収量2.98g、収率32%であった。
1H-NMRおよび単結晶X線構造解析により同定を行った。
1H-NMR (CD3CN) δ: 7.35 (2H, s), 6.58 (2H, s), 5.34 (2H, s), 4.47 (2H, br s), 3.63 (2H, s), 2.04 (6H, d, J = 1.6 Hz), 1.23 (12H, s).
【0188】
[実施例1B]
フルオレン化合物Bの合成
【0189】
【化24】
窒素雰囲気下、50ml ギルダールフラスコに実施例1Aで製造されたフルオレン化合物A 1.01g(2.83mmol)、炭酸カリウム0.931g(6.74mmol)、脱水アセトニトリル20.40g、ヨウ化メチル2.40g(16.9mmol)を装入した。これらを、60℃で18時間反応させた後、減圧下で濃縮した。トルエンを加え、水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。アミノ化シリカゲルを用いたクロマトグラフィーにより精製し、ヘキサンで洗浄することにより、上記式[1B]で表される化合物(以下「フルオレン化合物B」という。)を得た。収量0.315g、収率29%であった。
1H-NMRおよびFD-MSにより同定を行った。
1H-NMR (Toluene-d8) δ: 7.54 (2H, s), 6.68 (2H, s), 5.15 (2H, d, J = 1.3 Hz), 3.73 (2H, s), 2.60 (6H, s), 1.97 (6H, d, J = 1.3 Hz), 1.17 (12H, s).
FD-MS m/z=384.3
【0190】
[実施例1C]
フルオレン化合物Cの合成
【0191】
【化25】
窒素雰囲気下、50ml ギルダールフラスコに実施例1Aで製造されたフルオレン化合物A 1.51g(4.22mmol)、炭酸カリウム1.46g(10.6mmol)、脱水アセトニトリル20.00g、ヨウ化エチル6.59g(42.2mmol)を装入した。これらを、70℃で23時間反応させた後、トルエンを加え、水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、アミノ化シリカゲルを用いたクロマトグラフィーにより精製し、メタノールで洗浄することにより、上記式[1C]で表される化合物(以下「フルオレン化合物C」という。)を得た。収量1.47g、収率84%であった。
1H-NMRおよびFD-MSにより同定を行った。
1H-NMR (Toluene-d8) δ: 7.54 (2H, s), 6.71 (2H, s), 5.08 (2H, d, J = 1.3 Hz), 3.73 (2H, s), 3.13 (4H, q, J = 7.0 Hz), 1.96 (6H, d, J = 1.3 Hz), 1.18 (12H, s), 1.08 (7H, t, J = 7.0 Hz).
FD-MS m/z=412.3
【0192】
〔遷移金属化合物の合成〕
[実施例2A]
遷移金属化合物Aの合成
(1)配位子Aの合成
【0193】
【化26】
窒素雰囲気下、30mlシュレンク管にtert-ブチルメチルエーテル20ml、フルオレン化合物B 0.279g(0.726mmol)を装入した。この溶液にn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65M、0.45ml、0.74mmol)を氷水浴下、10分かけて滴下した。室温で20時間撹拌した。特開2004-168774を参考に合成した6,6-ジ(4-メチルフェニル)フルベン0.200g(0.775mmol)を加え、室温で22時間撹拌した。反応溶液に水100ml及びトルエン200mlを装入し、有機層を分離し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサンおよびメタノールで洗浄することにより上記式[2A-1]で表される化合物(以下「配位子A」という。)を粉末として得た。収量0.164g、収率35%であった。
FD-MSの測定結果により、目的物を同定した。
FD-MS:m/Z=642.4(M+)
【0194】
(2)遷移金属化合物Aの合成
【0195】
【化27】
窒素雰囲気下、30mlシュレンク管に配位子A 0.165g(0.257mmol)、α-メチルスチレン0.0608g(0.515mmol)、シクロペンチルメチルエーテル0.256gを装入した。1.60Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液0.33ml(0.53mmol)を6分間で滴下した。60℃に昇温後、4時間撹拌した。氷/アセトン浴で冷却後、系内を5min減圧し、窒素で常圧に戻した。四塩化ハフニウム0.0886g(0.277mmol)を加えた。室温で17時間反応させた。溶媒を留去し、得られた固体にトルエン20mlを加え、不溶物を濾過によって取り除いた。得られた溶液を濃縮し、ヘキサンを加えた。析出した固体を濾過によって取り出し、トルエンで洗浄し、上記式[2A-2]で表される目的物(以下「遷移金属化合物A」という。)を粉末として得た。収量0.130g、収率57%であった。
1H-NMR、FD-MSの測定結果により、目的物を同定した。
1H-NMR (Toluene-d8) δ: 7.80 (2H, s), 7.74-7.66 (4H, m), 7.02-6.97 (2H, m), 6.94-6.90 (2H, m), 6.22 (2H, t, J = 2.8 Hz), 5.85(2H, t, J = 2.8 Hz), 5.46 (2H, s), 5.20 (2H, d, J = 1.0 Hz), 2.17 (6H, s), 2.10 (6H, s), 1.98 (6H, d, J = 1.5 Hz), 1.11 (6H, s), 1.07 (6H, s).
FD-MS m/z=890.3(M+
【0196】
[実施例2B]
遷移金属化合物Bの合成
(1)配位子Bの合成
【0197】
【化28】
窒素雰囲気下、30mlシュレンク管にtert-ブチルメチルエーテル20ml、フルオレン化合物C 0.898g(2.18mmol)を装入した。この溶液にn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.64M、1.38ml、2.26mmol)を氷水浴下、10分かけて滴下した。室温で16時間撹拌した。特開2004-168774を参考に合成した6,6-ジ(4-メチルフェニル)フルベン0.615g(2.38mmol)を加え、室温で25時間撹拌した。反応溶液に水100ml及びトルエン250mlを装入し、有機層を分離し、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、メタノール洗浄することにより上記式[2B-1]で表される化合物(以下「配位子B」という。)を粉末として得た。収量1.00g、収率69%であった。
FD-MSの測定結果により、目的物を同定した。
FD-MS:m/Z=670.4(M+)
【0198】
(2)遷移金属化合物Bの合成
【0199】
【化29】
窒素雰囲気下、30mlシュレンク管に配位子B 0.500g(0.745mmol)、α-メチルスチレン0.176g(1.49mmol)、シクロペンチルメチルエーテル0.744gを装入した。1.64Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液0.920ml(1.51mmol)を10分間で滴下した。60℃に昇温後、4時間撹拌した。氷/アセトン浴で冷却後、系内を5min減圧し、窒素で常圧に戻した。四塩化ハフニウム0.236g(0.736mmol)を加えた。室温で17時間反応させた。溶媒を留去し、得られた固体をヘキサンで洗浄後、トルエン150mlで可溶分を抽出し、不溶物を濾過によって取り除いた。得られた溶液を濃縮し、析出した固体を濾過によって取り出した。トルエンで洗浄し、上記式[2B-2]で表される目的物(以下「遷移金属化合物B」という。)を粉末として得た。収量0.520g、収率74%であった。
1H-NMR、FD-MSの測定結果により、目的物を同定した。1H-NMRによると、前記粉末はトルエンを4.3wt%含んでいた。
1H-NMR (THF-d8) δ: 7.81-7.74 (4H, m), 7.64 (2H, s), 7.19-7.11 (4H, m), 6.21 (2H, t, J = 2.7 Hz), 5.68 (2H, t, J = 2.7 Hz), 5.34(2H, d, J = 1.3 Hz), 5.23 (2H, s), 2.93-2.70 (4H, m), 2.29 (6H, s), 2.06 (6H, d, J = 1.0 Hz), 1.30 (6H, s), 1.17 (6H, s), 0.69 (6H, t, J = 6.9 Hz).
FD-MS m/z=918.3(M+
【0200】
[実施例2C]
遷移金属化合物Cの合成
(1)6,6-ジ(4-フルオロフェニル)フルベンの合成
窒素雰囲気下、50ml三つ口フラスコにシクロペンタジエニルリチウム1.75g(純度96.5wt%, 23.4mmol)、シクロペンタジエニルメチルリチウム20mlを装入した。氷浴下で、4,4'-ジフルオロベンゾフェノン5.00g(22.9mmol)を加え、室温で20時間、80℃で25時間撹拌した。ジメチルイミダゾリジノン2.7mlを加え、3.5時間撹拌し、さらにクロペンタジエニルリチウム2.02g(純度96.5wt%, 27.1mmol)を加えて15時間撹拌した。反応溶液を0.5N塩酸120mlに注いだ。有機層を分離し、水層をヘキサン250mlで抽出し、先の有機層と合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル200g、ヘキサン)で精製し、エタノール溶媒中で晶析し、6,6-ジ(4-フルオロフェニル)フルベンを得た。収量1.57g、収率26%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.30-7.23 (4H, m), 7.10-7.02 (4H, m), 6.61-6.57 (2H, m), 6.24-6.20 (2H, m).
(2)配位子Cの合成
【0201】
【化30】
窒素雰囲気下、30mlシュレンク管にtert-ブチルメチルエーテル20ml、フルオレン化合物C 0.568g(1.38mmol)を装入した。この溶液にn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.60M、0.90ml、1.4mmol)を氷水浴下、10分かけて滴下した。室温で18時間撹拌した。(1)で合成した6,6-ジ(4-フルオロフェニル)フルベン0.373g(1.43mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応溶液に水100ml及びトルエン150mlを装入し、有機層を分離し、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、メタノール洗浄することにより上記式[2C-1]で表される化合物(以下「配位子C」という。)を粉末として得た。収量0.819g、収率88%であった。
FD-MSの測定結果により、目的物を同定した。
FD-MS:m/Z=678.4(M+)
【0202】
(3)遷移金属化合物Cの合成
【0203】
【化31】
窒素雰囲気下、30mlシュレンク管に配位子C 0.250g(0.354mmol)、α-メチルスチレン0.844g(0.714mmol)、シクロペンチルメチルエーテル0.353gを装入した。1.60Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液0.45ml(0.72mmol)を10分間で滴下した。40℃に昇温後、4時間撹拌した。氷/アセトン浴で冷却後、系内を5min減圧し、窒素で常圧に戻した。四塩化ハフニウム0.112g(0.351mmol)を加えた。室温で18時間反応させた。溶媒を留去し、得られた固体にトルエン40mlを加え、不溶物を濾過によって取り除いた。得られた溶液を濃縮し、析出した固体を濾過によって取り出した。トルエンで洗浄し、上記式[2C-2]で表される目的物(以下「遷移金属化合物C」という。)を粉末として得た。収量0.190g、収率59%であった。
1H-NMR、FD-MSの測定結果により、目的物を同定した。
1H-NMR (Toluene-d8) δ: 7.79 (2H, s), 7.54-7.49 (2H, m), 7.47-7.40 (2H, m), 6.85-6.74 (4H, m), 6.22 (2H, t, J = 2.6 Hz), 5.68 (2H, t, J = 2.6 Hz), 5.19 (2H, s), 5.13 (2H, d, J = 1.0 Hz), 2.75-2.57 (4H, m), 1.95 (6H, d, J = 1.3 Hz), 1.10 (12H, s), 0.72 (6H, t, J = 6.9 Hz).
FD-MS m/z=926.2(M+
【0204】
[比較例2A]
遷移金属化合物dの合成
特開2004-168774号公報を参照して、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド(以下「遷移金属化合物d」という。)を合成した。
【0205】
[実施例3A]
充分に窒素置換した内容積500mlのガス流通式ガラス製重合器に、n-デカン250ml、および5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)1.00mlを入れ、溶液の温度を100℃に調節後、エチレン及びプロピレンを常圧にてそれぞれ110リットル/時間、40リットル/時間で流通し、系を充分に飽和させた。次いで、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(1.00mol/l、0.20ml)を加えた。ここに遷移金属化合物Aのトルエン溶液(2mmol/l、3.00ml)とトリフェニルカルベニウム・テトラキス(ペンタフルオロ)ボレートのトルエン溶液(5mmol/l、2.40ml)を加え、系の温度を保ったまま重合を行った。重合の停止は少量のイソブチルアルコールを加え、エチレン/プロピレン混合ガスの供給を停止することにより行った。重合溶液を1mlの濃塩酸を加えたメタノールとアセトンとの混合溶媒(体積比7:8)1.5Lに入れて充分に撹拌し、濾過した。濾別されたポリマーを大量のメタノールにて洗浄した後、減圧下、120℃で10時間乾燥した。ポリマーの評価結果を表1に示す。
【0206】
[実施例2B、2C、比較例3A]
遷移金属化合物Aを、遷移金属化合物B、遷移金属化合物Cまたは遷移金属化合物dにそれぞれ変更したこと以外は実施例3Aと同様の操作を行い、ポリマーを得た。得られたポリマーの評価結果を表1に示す。
【0207】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明によれば、高分子量のオレフィン重合体を効率よく製造することができるので、本発明のフルオレン化合物、遷移金属化合物、オレフィン重合用触媒および製造方法は工業的に極めて価値がある。また、ポリエンを併用する場合、高いポリエンモノマーの転化率でポリエン含有率の高いオレフィン重合体を効率よく製造することができるので、本発明の製造方法等は工業的に極めて価値がある。