(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、バッテリと、モータとを備え、前記エンジンにより発電した電力を用いて前記モータを駆動して走行するハイブリッド自動車におけるエンジン制御装置であって、
加速時において前記エンジンの目標回転数を設定する演算手段であり、エンジン回転数がしきい回転数に達した場合に、前記エンジンの目標回転数を車速に比例して設定するとともに、比例係数をアクセル開度、車速、エンジン回転数、及び前記バッテリの充電率に基づいて設定する演算手段
を備え、前記演算手段は、加速開始時、所定のエンジン回転数に達した時点、所定のアクセル開度に達した時点のいずれかにおけるアクセル開度、車速、エンジン回転数、及び前記バッテリの充電率に基づいて前記比例係数を設定することを特徴とするエンジン制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2モータタイプのハイブリッド自動車では、加速時の車速変化とエンジン回転数変化との乖離が生じるため、運転者の感じる加速フィーリング(加速感)が損なわれ得る。すなわち、アクセル開度や車速、電池充電要求等から定められる要求出力をエンジン主体で出力するようにエンジン出力を定める場合、加速開始直後ではエンジン出力を高めるためにエンジン回転数が急上昇し、その後エンジン回転数が概ね一定となるようなプロファイルを示すことになり、このようなエンジン回転数の変化は車速と連動していないため、加速フィーリングに違和感が生じ得る。
【0007】
また、エンジン目標回転数を車速とシフトポジションに基づいて設定する場合、車速とエンジン回転数の関係は予め設定された傾き、切片でしか変更できず、当該関係は走行状態に影響されないため、走行状態によってはエンジントルクやモータトルクの制限上、アクセル開度に応じた加速特性が得られない場合が生じ得る。さらに、シフトポジションは運転者のシフト操作により定まるため、運転者がシフト操作をしない限り車速とエンジン回転数の関係は固定となるので、燃費が悪化する場合も生じ得る。
【0008】
本発明の目的は、ハイブリッド自動車において、エンジン回転数を適切に制御して加速時における加速フィーリング(加速感)を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エンジンと、バッテリと、モータとを備え、前記エンジンにより発電した電力を用いて前記モータを駆動して走行するハイブリッド自動車におけるエンジン制御装置であって、加速時において前記エンジンの目標回転数を設定する演算手段であり、エンジン回転数がしきい回転数に達した場合に、前記エンジンの目標回転数を車速に比例して設定するとともに、比例係数をアクセル開度、車速、エンジン回転数、及び前記バッテリの充電率に基づいて設定する演算手段を備え
、前記演算手段は、加速開始時、所定のエンジン回転数に達した時点、所定のアクセル開度に達した時点のいずれかにおけるアクセル開度、車速、エンジン回転数、及び前記バッテリの充電率に基づいて前記比例係数を設定することを特徴とする。
【0010】
本発明では、エンジン回転数がしきい回転数に達した場合に、従来のようにアクセル開度等から定められる要求出力をエンジン主体で出力するようにエンジン出力を定めるのではなく、車速に比例するようにエンジンの目標回転数を設定する。これにより、加速直後のエンジン回転数の急上昇が抑制され、車速の増大に見合うエンジン回転数の増大を実現して加速フィーリングを向上させる。また、車速に比例するようにエンジンの目標回転数を設定する際に、比例係数をアクセル開度、車速、エンジン回転数、及びバッテリの充電率に基づいて設定するため、実際の走行状況に合致した比例関係が実現する。
【0011】
なお、本発明では、比例係数をアクセル開度、車速、エンジン回転数、及びバッテリの充電率に基づいて設定するが、これ以外の物理量ないしパラメータをさらに用いて比例係数を設定する場合を排除するものではない。
【0012】
また、比例係数をアクセル開度、車速、エンジン回転数、及びバッテリの充電率に基づいて設定する場合、比例係数をaaa、アクセル開度をAcc、車速をV、エンジン回転数をNe、バッテリの充電率をSOCとすると、一般に、
aaa=f(V,Acc,Ne,SOC)
と記述し得る。ここで、fは特定の関数である。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、前記演算手段は、エンジン回転数が前記しきい回転数に達するまでは、アクセル開度から設定される要求駆動力に応じた目標回転数を設定し、エンジン回転数が前記しきい回転数に達した場合に前記エンジンの目標回転数を車速に比例して設定し、車速に比例して設定した目標回転数がアクセル開度から設定される要求駆動力に応じた目標回転数に達した場合に再びアクセル開度から設定される要求駆動力に応じた目標回転数を設定する。
【0014】
また、本発明の他の実施形態では、前記演算手段は、前記しきい回転数をNep、前記比例係数をaaa、車速をVとしたときに、エンジン回転数が不連続にならないよう、
bbb=Nep−aaa*V
により切片bbbを設定し、前記比例係数aaa及び前記切片bbbで定まる比例関係で前記車速に比例して前記目標回転数を設定する。
【0015】
また、本発明は、エンジンと、バッテリと、モータとを備え、前記エンジンにより発電した電力を用いて前記モータを駆動して走行するハイブリッド自動車であって、アクセル開度を検出する手段と、車速を検出する手段と、前記エンジンの回転数を検出する手段と、前記バッテリの充電率を検出する手段と、加速時において前記エンジンの目標回転数を設定する演算手段であり、エンジン回転数がしきい回転数に達した場合に、前記エンジンの目標回転数を車速に比例して設定するとともに、比例係数をアクセル開度、車速、エンジン回転数、及び前記バッテリの充電率に基づいて設定する演算手段を備え
、前記演算手段は、加速開始時、所定のエンジン回転数に達した時点、所定のアクセル開度に達した時点のいずれかにおけるアクセル開度、車速、エンジン回転数、及び前記バッテリの充電率に基づいて前記比例係数を設定することを特徴とする。
【0016】
本発明のエンジン制御装置及びハイブリッド自動車は、以下の実施形態を参照することでより明確に理解される。但し、以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加速時におけるエンジン回転数を適切に制御することで、加速フィーリングを向上させることができる。特に、本発明によれば、加速時のエンジン回転数の急上昇やエンジン回転数の不連続な減少等を抑制し、車速の増大に比例したエンジン回転数が得られるとともに、比例関係における比例係数が車両の走行状態に合った係数であるため、良好な加速フィーリングが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、2モータタイプのハイブリッド自動車の構成を示す。ハイブリッド自動車には、エンジン100、発電機MG1及びモータMG2、電池(バッテリ)500が搭載される。エンジン100,発電機MG1,モータMG2及びタイヤ(駆動輪)400は、動力分配機構700を介して連結される。
【0021】
動力分配機構700は、公知の遊星歯車機構により構成される。サンギヤには発電機MG1が連結され、リングギヤにモータMG2が連結され、サンギヤとリングギヤに噛み合っているピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持するキャリヤにエンジン100が連結される。また、リングギヤには出力軸を介してデファレンシャルが連結され、デファレンシャルから左右のタイヤ400に動力が伝達される。
【0022】
発電機MG1及びモータMG2は、それぞれインバータに接続され、インバータは電池500に電気的に接続されて電力送受が行われる。電池500とインバータとの間にコンバータが設けられていてもよい。発電機MG1は、エンジン100の動力により発電するとともに、発電した電力をモータMG2及びインバータを介して電池500に供給する。モータMG2は、電池500からの電力と発電機MG1からの電力を用いて走行用駆動力を発生してタイヤ400を駆動する。発電機MG1は、エンジン100のモータリング(クランキング)のためにモータとして機能させることも可能である。また、モータMG2は、ハイブリッド自動車が惰性走行あるいは減速している場合に、エンジン100に対する燃料の供給及び点火を停止させ、モータMG2を出力軸から伝達されるトルクで駆動させて発電機として機能させることもできる。エンジン100と発電機MG1は動力分配機構700を介して接続されているから、発電機MG1を発電機として機能させる場合、発電機MG1の回転数に応じてエンジン100の回転数を変化させることができる。エンジン100が動力を出力して走行している場合、リングギヤには走行抵抗等の負のトルクが作用し、キャリヤにはエンジン100が出力した正のトルクが作用する。このときサンギヤに負のトルクを作用させると、リングギヤにはエンジントルクを増幅した正のトルクが作用する。サンギヤに作用させる負のトルクは、サンギヤに連結されている発電機MG1を発電機として機能させることにより生じる。発電機MG1の回転数を低下させればエンジン100の回転数が低下し、発電機MG1の回転数を増大させればエンジン100の回転数も増大する。発電機MG1及びモータMG2は、ECU、特に車両制御ECU600によりインバータを介して駆動制御される。ECUは、車両制御ECU600に加え、MG制御ECU602と、エンジンECU604と、電池監視ECU606を備える。勿論、これらのECUは必ずしも別個のものである必要はなく、少なくともいずれか複数もしくは全てが単一のECUで構成されていてもよい。
【0023】
演算手段としての車両制御ECU600は、CPU及びメモリを備えるマイクロコンピュータで構成され、各種検出信号を入力して発電機MG1及びモータMG2を制御する。
すなわち、車両制御ECU600は、アクセル開度センサからのアクセル信号(アクセル開度)、エンジン回転数センサからのエンジン回転数、モータMG2からのモータ回転数、電池監視ECU606からの電池500の充電率SOCを入力し、発電機/モータ指令トルクを演算してMG制御ECU602に出力する。MG制御ECU602は、供給された指令トルクで発電機MG1、モータMG2を駆動すべくそれぞれのインバータに駆動信号(スイッチング信号)を出力する。インバータの状態や発電機MG1、モータMG2の状態はMG制御ECU602で監視される。また、車両制御ECU600は、アクセル信号、モータ回転数、SOC、エンジン回転数に基づいてエンジン100の目標回転数を演算し、エンジンECU604に出力する。エンジンECU604は、供給された目標回転数でエンジン100を駆動すべく制御する。ここで、車両制御ECU600は、車速に比例するモータ回転数から車速を算出してエンジン100の目標回転数を演算する。また、電池500の充電率(SOC)は、電流センサ等により検出された電池500の充放電電流の積算値に基づいて電池監視ECU606で算出される。
【0024】
加速時において、アクセル開度等から定められる要求出力をエンジン100主体で出力するようにエンジン100の出力を定めると、加速開始直後ではエンジン100の出力を高めるためにエンジン回転数が急上昇し、加速フィーリングが損なわれてしまう。そこで、本実施形態における車両制御ECU600は、基本原理として、加速時において車速に比例したエンジン回転数に制御するとともに、このときの比例係数をハイブリッド自動車の走行状態に応じた比例係数に設定する。
【0025】
図2は、車両制御ECU600におけるエンジン100の目標回転数の演算処理フローチャートを示す。この処理フローチャートは、所定の制御周期(例えば数msec毎)で繰り返し実行される。
【0026】
まず、図における各種表記について説明する。
Acc:アクセル開度
V:車速
τdrv:運転者が要求する車両の駆動力(要求駆動トルク)
Netag_bs:目標エンジン回転数(基準目標エンジン回転数)
Peg_bs:目標エンジン出力(基準目標エンジン出力)
Ne:現在のエンジン回転数
flag_a:エンジン回転数制御用フラグ
Nep:エンジン回転数制御変更用のしきい回転数
Netag:最終的な目標エンジン回転数
Peg:最終的な目標エンジン出力
【0027】
図2において、車両制御ECU600は、アクセル開度検出センサで検出されたアクセル開度Acc、及び車速Vを取得する(S101)。車速Vは、既述したようにモータ回転数から算出する。そして、アクセル開度Acc及び車速Vに基づいて、運転者が要求する車両の駆動力を算出する(S102)。車両制御ECU600は、予めメモリに記憶された、アクセル開度Accと車速Vと要求駆動トルクτdrvとの対応関係を規定するマップを参照し、取得したアクセル開度Acc及び車速Vに対応する要求駆動トルクτdrvを取得する。
【0028】
次に、車両制御ECU600は、要求駆動トルクτdrvに基づいて基準となる目標エンジン回転数Netag_bs及び目標エンジン出力Peg_bsを算出する(S103)。すなわち、要求駆動トルクτdrvと、そのときの車速Vに基づいて、運転者が要求する出力を算出し、予めメモリに記憶されているエンジン運転点設定用マップを参照し、このマップ上において運転者要求出力を満たし、かつ最適燃費線Cf等の動作ライン上を動作するエンジン回転数を算出する。エンジン運転点設定マップは公知であり、
図3に例示するように、エンジン回転数NeとエンジントルクTeと等出力線Peと最適燃費線Cfで示される動作ラインとの関係を予め定めたものである。
図3において、運転者要求出力に対応する出力線Pe=一定の曲線と、最適燃費線Cfとの交点として、エンジン回転数が設定される。エンジン回転数Netag_bsを算出した後、車両制御ECU600は、ハイブリッド自動車が加速中であるか否かを判定する(S104)。
【0029】
ハイブリッド自動車が加速中でない場合(S104でNO)、S103で算出されたエンジン回転数Netag_bsを最終的な目標エンジン回転数Netagとして確定し(S114)、エンジン回転数制御用フラグflag_aを0にリセットする(S115)。エンジン100は、この目標エンジン回転数Netagとなるように制御される。
【0030】
ハイブリッド自動車が加速中である場合(S104でYES)、車両制御ECU600は、現在のエンジン回転数Ne及び電池500の充電率(SOC)を取得する(S105)。なお、電池500の充電率(SOC)は、電池監視ECU606で検出されるが、車両制御ECU600が検出してもよい。
【0031】
次に、エンジン回転数制御用フラグflag_aの値をチェックする(S106)。フラグflag_aは初期値が0にセットされている。チェックの結果、flag_a=0の場合には、しきい回転数Nepと関数パラメータを算出する(S112)。具体的には、しきい回転数Nep、関数パラメータとしての比例係数aaa及び切片bbbを次のように設定する。
Nep=func1(V,Acc,Ne,SOC)
aaa=func2(V,Acc,Ne,SOC)
bbb=Nep−aaa*V
【0032】
ここで、func1(V,Acc,Ne,SOC)は、例えば加速開始時の車速V、アクセル開度Acc、エンジン回転数Ne及び充電率SOCの関数であることを示す。func2(V,Acc,Ne,SOC)についても同様である。比例係数aaaが加速開始時の車速V、アクセル開度Acc、エンジン回転数Ne及び電池500の充電率(SOC)に基づき設定される点に留意されたい。これは、例えば加速開始時のアクセル開度や車速V,エンジン回転数Ne等に基づいて運転者が感じる加速フィーリングに合致する比例係数を算出するためである。しきい回転数Nepについては、車速V等の関数として適応的に設定する代わりに所定値としてもよい。また、車両制御ECU600は、メモリに記憶された関数func2を用いて比例係数aaaを算出する代わりに、比例係数aaa、アクセル開度Acc、車速V、エンジン回転数Ne、充電率SOCの対応関係を予め規定したマップを参照して比例係数aaaを算出してもよい。
【0033】
しきい回転数Nep、比例係数aaa及び切片bbbを車速V,アクセル開度Acc、エンジン回転数Ne及び充電率SOCに基づいて設定した後、目標エンジン回転数としきい回転数Nepとを大小比較する(S113)。なお、エンジン回転数は目標エンジン回転数となるように制御されるため、この判定処理は、現在のエンジン回転数としきい回転数Nepとを大小比較することに等しい。
【0034】
Netag<Nepの場合(S113でYES)、加速中であっても未だしきい回転数Nepに達していないことを意味するから、S103で算出されたエンジン回転数Netag_bsを最終的な目標エンジン回転数Netagとして確定し続け(S114)、エンジン回転数制御用フラグflag_aを0にリセットする(S115)。従って、この場合もエンジン回転数は目標エンジン回転数Netag、つまり運転者の要求駆動力に基づいて設定された目標エンジン回転数となるように制御され、エンジン回転数が増大していく。
【0035】
他方、Netag<Nepでない場合(S113でNO)、つまり目標エンジン回転数(=現在のエンジン回転数)がしきい回転数Nep以上となった場合には、次に、NetagとS103で算出された現在のNetag_bsと大小比較する(S107)。
【0036】
Netag<Netag_bsの場合(S107でYES)、つまり、Nep≦Netag<Netag_bsの場合、目標エンジン回転数Netagを算出する(S108)。具体的には、S112で算出された比例係数aaa及び切片bbbを用いて、
Netag=aaa*V+bbb
により目標エンジン回転数Netagを算出する。上式から分かるように、しきい回転数Nepを超えた場合に、比例係数aaaで定まる比例関係で車速Vに応じて目標エンジン回転数Netagを設定する。ここで、比例関係の切片bbbは、S112において、bbb=Nep−aaa*Vとして算出されているため、しきい回転数Nepの前後において目標エンジン回転数Nepが連続する、つまり目標エンジン回転数をそのまま保持しつつ、従来の目標エンジン回転数から、Netag=aaa*V+bbbで算出される目標エンジン回転数に移行できる。目標エンジン回転数Netagは車速Vに比例して設定されることから、加速フィーリングに合致したエンジン回転数が得られることになる。目標エンジン回転数Netagを算出した後、最終的な目標エンジン出力Pegを目標エンジン回転数Netagとこれに対応するエンジントルクに基づいて、Peg=Netag*エンジントルクにより算出する(S109)。なお、エンジン回転数Netagに対応するエンジントルクは、
図3のエンジン運転点設定マップを用いて設定できる。そして、最終的な目標エンジン出力Pegと、S103で算出された基準目標エンジン出力Peg_bsとの間に乖離があれば(通常、Peg<Peg_bsとなり、出力が不足する)、その差分(不足分)を電池500からの電力で補うべく、電池500の出力増分をPeg_bs−Pegで算出する(S110)。最終的な目標エンジン回転数Netagを算出した後、エンジン回転数制御用フラグflag_aを1にセットする(S111)。エンジン回転数は、目標エンジン回転数Netag、つまり車速Vに比例するエンジン回転数となるように制御される。
【0037】
また、S107でNetag<Netag_bsの場合(S107でNO)、つまり、Netag_bs≦Netagの場合、再び従来と同様の制御とすべく、最終的な目標エンジン回転数としてNetag=Netag_bsとし(S116)、エンジン回転数制御用フラグflag_aを2にセットする(S117)。これ以後は、S106にてflag_aの値をチェックすると、flag_a=2の場合にはflag_aの値が0、1以外となるため、S116に従ってS103で算出された目標エンジン回転数Netag_bsがそのまま最終的な目標エンジン回転数Netagとなる。
【0038】
要約すると、本実施形態では、目標エンジン回転数Netag(あるいは現在のエンジン回転数Ne)としきい回転数Nepとの大小関係に応じて以下のように目標エンジン回転数を適応的に算出する。
【0039】
(1)Netag<Nepの場合
従来と同様に運転者の要求駆動力τdrvと車速Vに基づいた目標エンジン回転数を算出してエンジン回転数を制御する。
flag_a=0
【0040】
(2)Nep≦Netag<Netag_bsの場合
本実施形態特有の目標エンジン回転数であり、Netag=aaa*V+bbbにより目標エンジン回転数を算出してエンジン回転数を制御する。
flag_a=1
【0041】
(3)Netag_bs<Netagの場合
従来と同様に運転者の要求駆動力τdrvと車速Vに基づいた目標エンジン回転数を算出してエンジン回転数を制御する。
flag_a=2
【0042】
車速Vとシフトポジションから目標エンジン回転数を算出する場合のように、事前に設定された車速Vとエンジン回転数との関係から一義的に設定するのではなく、走行状態に応じて適応的に設定するため、アクセル開度Accに応じた加速特性が得られ、加速フィーリングを向上させることができる。また、シフトポジションから目標エンジン回転数を算出する場合には変速時に目標エンジン回転数が不連続的に変化するためいわゆる駆動力抜けが生じ得るが、本実施形態では目標エンジン回転数の算出ロジックを変更する場合(具体的には、上記の(1)から(2)に算出ロジックを変更する場合)においても、比例関係の切片bbbをS112で示すように算出しているため、変更前後で目標エンジン回転数が不連続的に変化することがなく、駆動力抜けもない。
【0043】
次に、本実施形態におけるエンジン回転数制御をより具体的に説明する。
【0044】
図4は、本実施形態における加速度、エンジン回転数、エンジン駆動力の時間変化を示す。
図4(a)は、加速度の時間変化を示す。あるタイミングまでは加速度=0であり、あるタイミング(図における「加速開始」)から運転者がアクセルペダルを踏み込んで加速度が徐々に増大し、その後、加速度が徐々に減少するプロファイルである。
【0045】
図4(b)は、エンジン回転数の時間変化を示す。
図4(b)には、本実施形態におけるエンジン回転数、すなわちNetag=aaa*V+bbbにより算出されるエンジン回転数とともに、基準エンジン回転数Netag_bs並びに特開2006−321458号公報に記載された従来の算出方法によるエンジン回転数も比較のために併せて示す。加速していない場合、本実施形態でも目標エンジン回転数はNetag_bsであり(S114参照)、これに一致するようにエンジン回転数も制御される。また、加速後であっても、エンジン回転数がしきい回転数Nepに達するまでは目標エンジン回転数はNetag_bsのままである(S113でYESと判定されることに対応)。従って、運転者の要求駆動力に応じてエンジン回転数が比較的急峻に増大していく。但し、エンジン回転数がしきい回転数Nepに達すると、Netag_bsに代えて、Netag=aaa*V+bbbにより算出される目標エンジン回転数となるようにエンジン回転数が制御される(S108〜S111参照)。車速Vに比例し、かつ、その比例係数aaaは車速V、アクセル開度Acc及び電池500の充電率SOCに応じて設定されるため、走行状態に応じ、かつ車速Vに応じたエンジン回転数となるため、良好な加速フィーリングが得られる。Netag_bsに基づくエンジン回転数制御では、車速Vに比してエンジン回転数が過剰に増大する、いわゆるエンジン回転数の吹き上がりが生じ得るところ、本実施形態ではこのような吹き上がりが効果的に抑制される。また、シフトポジションに応じてエンジン回転数を制御する特開2006−321458号公報の従来技術では、車速Vが変化していないにもかかわらず変速時にエンジン回転数が不連続的に減少してしまうところ、本実施形態ではこのようなエンジン回転数の減少あるいは停滞が効果的に抑制される。
【0046】
Netag=aaa*V+bbbで算出されるエンジン回転数がNetag_bsに達すると、再びNetag_bsに基づきエンジン回転数が制御される(S116参照)。エンジン回転数がNepに達し、エンジン回転数の制御ロジックがNetag_bsに基づく制御からNetag=aaa*V+bbbに基づく制御に切り替わるタイミング(図中Aで示すポイント)において、エンジン回転数は不連続的に変化せず滑らかに変化する。
【0047】
図4(c)は、エンジン駆動力の時間変化を示す。
図4(b)と同様に、制御ロジックが切り替わるポイントAにおいて駆動力抜けは生じておらず、かつ、従来技術のように変速時の駆動力抜け(図中Bで示すポイント)も生じていない。本実施形態において、Netag=aaa*V+bbbにより目標エンジン回転数を算出し、これに基づいてエンジン回転数を制御する利点は明らかである。
【0048】
なお、本実施形態において、
図4(c)に示されるように、車速Vに比例させてエンジン回転数を増大させて加速フィーリングを向上させる結果、エンジン駆動力が要求駆動力よりも小さくなり得るが、上記のS110で示すように不足分を電池500からの電力で補うため、要求駆動力を維持できる。すなわち、
図1に示すハイブリッド自動車におけるモータトルクは、エンジン発電分のモータトルクと電池500の出力分のモータトルクの和であり、エンジン回転数を低めに制御する結果、エンジン発電分のモータトルクが不足する場合に、電池500の出力分のモータトルクで補うといえる。電池500の充電率SOCが相対的に低い場合には電池500の出力分で補うことが困難となるため、比例係数aaaを充電率SOCに基づいて設定する。充電率SOCが相対的に低い場合に、比例係数aaaを相対的に大きく設定してエンジン出力を迅速に増加させればよい。充電率SOCをしきい値と大小比較し、充電率SOCがしきい値以下であって著しく低い場合に、本実施形態における制御を中止してもよい。通常、電池500は過充電や過放電により劣化することを防止すべく、その使用状況や温度等に応じて上限値と下限値の間の中間域において充放電制御される。従って、しきい値は上限値と下限値の間のいずれかに設定されるが、上限値及び下限値は温度条件や劣化度に応じて変動し得るものであるから、同様にしきい値も固定ではなく温度条件や劣化度に応じて変動し得る。しきい回転数Nepについても同様である。
【0049】
また、本実施形態において、比例係数aaaは
aaa=func2(V,Acc,Ne,SOC)
により算出しているが、必ずしも一つの関数で比例係数を算出する必要はなく、複数の関数で算出してもよい。例えば、
aaa1=func21(V,Acc,Ne,SOC)
aaa2=func22(V,Acc,Ne,SOC)
のように、互いに異なる関数func21,func22により互いに異なる2つの比例係数aaa1,aaa2を算出し、これらの比例係数を用いて
Netag=aaa1*V+bbb1
Netag=aaa2*V+bbb2
により目標エンジン回転数を算出してもよい。ここで、bbb1,bbb2は互いに異なる切片であり、それぞれ変更前後で滑らかに変化するように設定される。しきい回転数としてNep1及びNep2(但し、Nep1<Nep2)を設定し、Nep1に達した場合に比例係数aaa1及び切片bbb1を用いて目標エンジン回転数を算出し、Nep2に達した場合に比例係数aaa2及び切片bbb2を用いて目標エンジン回転数を算出すればよい。
【0050】
図5は、比例係数aaa1及び切片bbb1と、比例係数aaa2及び切片bbb2を用いた場合の加速度及びエンジン回転数の時間変化を示す。
図5(a)は、加速度の時間変化を示し、
図4(a)と同一のプロファイルである。
図5(b)は、エンジン回転数の時間変化を示す。しきい回転数Nep1に達するまではNetag_bsに基づいて制御し、しきい回転数Nep1に達すると
Netag=aaa1*V+bbb1
によりエンジン回転数を制御する。さらに、しきい回転数Nep2に達すると、
Netag=aaa2*V+bbb2
によりエンジン回転数を制御する。ここで、
aaa1>aaa2
である。NetagがNetag_bsに達すると、これ以後は再びNetag_bsに基づいて制御する。
【0051】
aaa1及びaaa2は、ともに充電率SOCを考慮して算出されるが、この例でも充電率SOCが相対的に低い場合に、エンジン100の出力を早く増大させて電池500を充電すべく、aaa1あるいはaaa2が相対的に大きくなるように算出するのも好適である。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、種々の変形が可能である。
【0053】
例えば、本実施形態では、比例係数aaaを加速開始時の車速V、アクセル開度Acc、電池500の充電率SOCに基づいて算出しているが、加速開始時に限定されず、所定のエンジン回転数に到った時点での車速V、アクセル開度Acc、電池500の充電率(SOC)に基づいて算出してもよく、あるいは所定のアクセル開度に到った時点での車速V、アクセル開度Acc、電池500の充電率(SOC)に基づいて算出してもよい。
【0054】
また、本実施形態では、エンジン100の動力により発電機MG1で発電し、発電した電力をモータMG2及び電池500に供給してモータMG2で走行用駆動力を発生して駆動輪を駆動する場合について説明したが、エンジン100の発生するトルクを直接駆動力に用いる場合にも適用し得る。
【0055】
さらに、本実施形態では、
図1に示すように、モータ回転数を車両制御ECU600に供給し、モータ回転数から車速を算出しているが、モータ回転数に代えて、より直接的に車輪速を検出して車両制御ECU600に供給してもよい。
【0056】
図6は、この場合の構成ブロック図を示す。
図1と異なる点は、モータ回転数に代えて車輪速センサで車輪速を検出し、車両制御ECU600に供給する点である。車両制御ECU600は、アクセル開度や車輪速等に基づいてエンジン100の目標回転数を算出してエンジンECU604に出力する。