特許第6227477号(P6227477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227477
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】管路止水装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   F24F13/02 A
   F24F13/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-102628(P2014-102628)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-218952(P2015-218952A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】森井 俊明
(72)【発明者】
【氏名】板垣 暢
(72)【発明者】
【氏名】仲保 京一
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−032126(JP,A)
【文献】 特開2006−183995(JP,A)
【文献】 特開2012−229594(JP,A)
【文献】 特開2013−053802(JP,A)
【文献】 特開2013−087509(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2042658(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0314254(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定構造物に設けられた空調ダクトに設置し、津波が襲来した時に当該空調ダクトを閉塞する管路止水装置であって、
前記空調ダクトの内部に配置する観音開き式の上下2枚の扉体と、
前記上下2枚の扉体を、常時は前記空調ダクトの内部を開放した状態に保持する保持装置と、
前記上下2枚の扉体の開閉動作を連動して行わせるチェーン或いはベルトと、
前記空調ダクト内への浸水を感知し、浸水を感知した時には、前記上下2枚の扉体の前記開放した状態の保持を解除させる浸水検知装置と、
を備え、
前記上下2枚の扉体は、前記空調ダクトの内部を閉塞したときに、空調ダクト内への浸水による水圧が作用する方向に水平移動が可能なように構成したことを特徴とする管路止水装置。
【請求項2】
前記浸水検知装置は、前記空調ダクト内への浸水により浮力を受けたフロートがこの浮力を前記保持装置に伝達して開放状態の保持を解除する構成であることを特徴とする請求項1に記載の管路止水装置。
【請求項3】
前記浸水検知装置は、前記空調ダクト内への浸水により電極間に水が浸入して電気容量または磁界が変化したことを検知し、或いは、前記空調ダクト内への浸水面に照射する超音波の反射により浸水の有無を検知し、前記保持装置に電気信号を送って開放状態の保持を解除する構成であることを特徴とする請求項1に記載の管路止水装置。
【請求項4】
前記保持装置により開放状態に保持した前記上下2枚の扉体の前記保持を解除した後の前記上下2枚の扉体の駆動は、上段扉体或いは下段扉体の水平軸に設けたカウンタウエイトによって行うことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の管路止水装置。
【請求項5】
前記上段扉体或いは下段扉体の可動部にダンパーを付加したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の管路止水装置。
【請求項6】
前記上下2枚の扉体の開閉動作を連動して行わせるチェーン或いはベルトをモータにより駆動する構成となすとともに、前記保持装置として、前記モータの回転を抑制するブレーキを採用し、
前記浸水検知装置を用いた前記空調ダクト内への浸水の検知により、前記ブレーキを解除して前記モータを駆動することで前記空調ダクトの内部を閉塞することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の管路止水装置。
【請求項7】
前記チェーンは、テンショナー或いはターンバックルにより張力の調整が可能なようになされていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の管路止水装置。
【請求項8】
前記ベルトは、テンショナーにより張力の調整が可能なようになされていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の管路止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば津波が襲来した時に、固定構造物に設けられた空調ダクトを閉塞して、部屋の内部に海水が浸入することを防止する管路止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定構造物(以下、建物という。)に設けられた各部屋の空調を行うため、外気導入口から取り込んだ外気を、導入ダクトを介して各部屋に供給する一方、各部屋内の排気は排気ダクトを介して排気口から排出する空調装置が開示されている(特許文献1参照。)。
【0003】
前記空調装置を備えた建物が鉄筋コンクリート造り等の頑丈な場合、津波の襲来時に当該建物が津波によって流されなくても、建物に設けられた外気導入口や排気口から導入ダクトや排気ダクトを介して各部屋に海水が浸入し、被害が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−19966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、津波が襲来した時に、建物が頑丈で津波によって流されなくても、導入ダクトや排気ダクトを介して部屋に海水が浸入して被害が大きくなるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するために、津波が襲来した時に、導入ダクトや排気ダクト等の空調ダクトを閉塞して、部屋に海水が浸入しないようにすることを目的としてなされたものである。
【0007】
本発明は、
建物に設けられた空調ダクトに設置し、津波が襲来した時に当該空調ダクトを閉塞する管路止水装置であって、
前記空調ダクトの内部に配置する観音開き式の上下2枚の扉体と、
前記上下2枚の扉体を、常時は前記空調ダクトの内部を開放した状態に保持する保持装置と、
前記上下2枚の扉体の開閉動作を連動して行わせるチェーン或いはベルトと、
前記空調ダクト内への浸水を感知し、浸水を感知した時には、前記上下2枚の扉体の前記開放した状態の保持を解除させる浸水検知装置と、
を備え、
前記上下2枚の扉体は、前記空調ダクトの内部を閉塞したときに、空調ダクト内への浸水による水圧が作用する方向に水平移動が可能なように構成したことを最も主要な特徴としている。
【0008】
上記本発明では、津波の襲来により空調ダクトの内部に海水が浸入した時には、当該海水の浸入を浸水検知装置が感知して保持装置による上下2枚の扉体の保持を解除する。保持を解除された上下2枚の扉体は連動して閉じて空調ダクトの内部を閉塞する。閉塞した上下2枚の扉体は、水圧により水圧が作用する方向に水平移動し、水密ゴムに押し当てられる。
【0009】
本発明において、上下2枚の扉体が閉じる動作は、上段扉体の重量、上段扉体或いは下段扉体の回転軸に設けたカウンタウエイト、モータ、或いはこれらの併用により行われる。
【0010】
本発明において、上段扉体或いは下段扉体の可動部にダンパーを付加した場合は、扉体が閉じる際の衝撃を抑制することができる。
【0011】
本発明において、上下2枚の扉体の開閉動作を連動して行わせるチェーン或いはベルトをモータにより駆動する構成となす場合は、前記保持装置として、モータの回転を抑制するブレーキを採用することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、津波の襲来時に空調ダクト内に浸入してきた海水の検知により保持を解除された上下2枚の扉体が連動して閉じて空調ダクトの内部を閉塞した後、水圧の作用方向に水平移動して水密ゴムに押し当てられる。従って、空調ダクトの内部を閉塞した際の水密性が向上して建物の部屋への海水の浸入を確実に防止することができ、重要機器室の浸水対策設備としての役割を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の管路止水装置の設置位置の一例を説明する図である。
図2】本発明の管路止水装置に水圧が作用した時の扉体の動きを説明する図で、(a)は上段扉体、(b)は下段扉体である。
図3】上下2枚の扉体の開閉動作を連動して行わせるチェーン機構と、上下2枚の扉体を開放状態に保持する保持装置の設置例を示した図で、(a)は上下2枚の扉体の開放状態を示した図、(b)は閉じた状態を示した図である。
図4】本発明の管路止水装置における扉体の駆動態様の他の例を示した図で、(a)は下段扉体の水平軸に設けたカウンタウエイトにより駆動を補助する場合、(b)はモータにより駆動する場合を示した図である。
図5】上下2枚の扉体を開放状態に保持する保持装置を空調ダクトの外部に設置した場合の説明図で、(a)は下段扉体を駆動するカウンタウエイトを保持する場合、(b)は上段扉体を駆動するカウンタウエイトを保持する場合である。
図6】上下2枚の扉体の開閉動作を連動して行わせるチェーンの張力調整機構の一例を示した図で、(a)はターンバックルにより張力を調整する場合、(b)はテンショナーにより張力を調整する場合である。
図7】上下2枚の扉体が閉じる際の衝撃を抑制する機構の一例を示した図で、(a)は扉体が開いた状態の場合、(b)は扉体が閉じた状態の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、津波の襲来による海水の浸入により空調ダクトを閉塞して、建物内の部屋に海水が浸入することを防止することを目的としている。そして、その目的を、空調ダクト内への海水の浸入を検知してその保持を解除した上下2枚の扉体を連動して閉じて空調ダクトの内部を閉塞した後、閉塞した扉体を水圧が作用する方向に水平移動させて水密ゴムに押し当てることで実現した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図7を用いて詳細に説明する。
図1図3は本発明の管路止水装置の第1の例を説明する図であり、図1は設置位置を、図2は水圧作用時の扉体の動きを、図3は上下2枚の扉体の開閉動作を連動して行わせるチェーン機構と、上下2枚の扉体を開放状態に保持する保持装置の設置例を示す。
【0016】
本発明の管路止水装置1は、津波の襲来時に、建物2が津波によって流されなくても、建物2に設置された外気導入口から空調ダクト3を介して、例えば重要機器室4に海水が浸入することを防止するために、空調ダクト3に取付けるものである。
【0017】
本発明の管路止水装置1は、重要機器室4に海水が浸入しないように空調ダクト3に取付けるものであれば、その設置位置は限定されない。例えば、図1の紙面左側に示した例では、重要機器室4と隣接する一般室5内の重要機器室4側の壁面近傍位置に設置している。また、図1の紙面右側に示した例では、重要機器室4の内部に突出した端部位置に設置している。
【0018】
6は空調ダクト3の内部の高さ方向の上部側に配置される上段扉体であり、上端部の両側に突出状に設けた水平軸6aを支点として、水平状態から垂下状態への回動が自在に行えるように、空調ダクト3の内部に支持されている。
【0019】
7は空調ダクト3の内部の高さ方向の下部側に配置される下段扉体であり、下端部の両側に突出状に設けた水平軸7aを支点として、水平状態から鉛直方向に起立する状態への回動が自在に行えるように、空調ダクト3の内部に支持されている。
【0020】
すなわち、これら上段扉体6と下段扉体7は、空調ダクト3の内部が開放された、それぞれが水平の状態から(図2(a)(b)の紙面左側の実線の状態。)、上段扉体6が垂下状態、下段扉体7が鉛直方向に起立する状態となって空調ダクト3の内部を閉塞する(観音開き式)ようになっている(図2(a)(b)の紙面左側の想像線の状態)。
【0021】
そして、前記上段扉体6と下段扉体7は、空調ダクト3の内部を閉塞したときに、空調ダクト3の内部に浸水した海水の水圧が作用する方向に水平移動するように構成している(図2(a)(b)の紙面右側参照)。
【0022】
例えば上段扉体6は、開放状態における下側に、上段扉体6に対して接離移動が自在なようにスキンプレート8を配置している。このような構成により、上段扉体6が閉じて垂下状態となった場合には、空調ダクト3の内部に浸水した海水の水圧によりスキンプレート8が水圧の作用する方向に水平移動する。
【0023】
また、下段扉体7は、水平軸7aの軸受部9が、下段扉体7が開放状態の場合に下方に延びる長孔9aに形成している。このような構成により、下段扉体7が鉛直方向に起立する状態となった場合には、空調ダクト3の内部に浸水した海水の水圧により下段扉体7が水圧の作用する方向に水平移動する。
【0024】
10は、上段扉体6が垂下状態、下段扉体7が鉛直方向に起立する状態となって空調ダクト3の内部を閉塞する際に、スキンプレート8と、下段扉体7の背面側が当接する位置の空調ダクト3内の、前記上段扉体6と下段扉体7の下流側に配置された戸当りである。
【0025】
この戸当たり10は、中央部の高さ方向上下に通気用の開口10a,10bを有し、スキンプレート8と、下段扉体7の背面側が当接する側に水密ゴム11を設置している。
【0026】
12は、上段扉体6及び下段扉体7の開閉動作を連動して行わせる例えばチェーンである。このチェーン12は、上段扉体6及び下段扉体7の水平軸6a,7aと同じ軸芯位置、及び下段扉体7の水平軸7aの上流側及び下流側に各1個、計4個のスプロケット13a〜13dに係合させることで、上段扉体6及び下段扉体7の開放状態(図3(a))から閉塞状態(図3(b))への動作を連動して行えるようにしている。なお、これら上段扉体6と下段扉体7の開閉動作を連動して行わせる機構は、空調ダクト3の外部に設けられている。
【0027】
この上段扉体6及び下段扉体7が開放状態から閉じる場合の連動は、上段扉体6が水平軸6aを支点として上段扉体6の重量によって回転する際に、水平軸6aと同じ軸芯位置に設置したスプロケット13aが回転することでチェーン12を介して行われる。
【0028】
上段扉体6及び下段扉体7が開放状態から閉じる場合の連動手段は、上段扉体6の重量によって上段扉体6が水平軸6aを支点として回転するものに限らない。
【0029】
例えば、図4(a)に示すように、開放位置の下段扉体7の水平軸7aにトルクアーム14を鉛直方向に起立する状態となるように取付け、このトルクアーム14にカウンタウエイト15を設置したものでも良い。この場合、上段扉体6の回転によるスプロケット13aの回転をカウンタウエイト15が補助して、空調ダクト3の閉塞がより速やかに行えるようになる。
【0030】
また、図4(b)に示すように、下段扉体7の水平軸7aの下流側に設置したスプロケット13dをモータ16によって正逆回転するようにしたものでも良い。
【0031】
17は、上段扉体6及び下段扉体7を、常時は空調ダクト3の内部を開放した状態に保持する保持装置である。
【0032】
この保持装置17は、上段扉体6及び下段扉体7を空調ダクト3の内部を開放した状態に保持できるものであれば、機械的に保持するもの、磁力により保持するもの等、その構成は限定されない。但し、メンテナンス性を考慮した場合、空調ダクト3の外側に設置することが望ましい。
【0033】
空調ダクト3の外側に設置する保持装置17で、下段扉体7を保持する場合は、例えば図5(a)に示すように、下段扉体7を駆動するウエイトを兼ねさせた前記トルクアーム14を保持するようにすれば良い。
【0034】
また、上段扉体6を保持する場合は、例えば図5(b)に示すように、開放位置の上段扉体6の水平軸6aに、上段扉体6と平行状態となるように、上段扉体6を駆動するウエイトを兼ねさせたトルクアーム18を設置し、このトルクアーム18を保持するようにすれば良い。
【0035】
また、上段扉体6及び下段扉体7が開放状態から閉じる場合の連動を前記モータ16により行う場合は、このモータ16の回転を抑制するブレーキを、保持装置17としてもよい。
【0036】
19は、前記空調ダクト3の内部の、前記扉体6,7による閉塞位置よりも上流側に設置されて空調ダクト3の内部への浸水を感知する浸水検知装置であり、浸水を感知した時には、前記上段扉体6と下段扉体7の開放した状態の保持を解除する(図1参照)。
【0037】
前記浸水検知装置19としては、フロート式、電気式(例えば電気容量式)、電磁式、超音波式などを採用すればよい。
【0038】
このうち、フロート式の浸水検知装置19は、浸水により受けた浮力を前記保持装置17に伝達し、機械的に保持装置17による保持を解除するように構成したものである。このフロート式の浸水検知装置19は、機械的に保持する保持装置17の場合に採用する。
【0039】
また、電気容量式の浸水検知装置19は、電極間に水が浸入したことによる電気容量の変化を検知した時に、前記保持装置17に電気信号を送って電気的に保持装置17による保持を解除するように構成したものである。
【0040】
また、電磁式の浸水検知装置19は、電極間に水が浸入したことによる磁界の変化を検知した時に、前記保持装置17に電気信号を送って電気的に保持装置17による保持を解除するように構成したものである。
【0041】
また、超音波式の浸水検知装置19は、水面で反射する超音波を照射して浸水の有無を検知し、浸水を検知した時に、前記保持装置17に電気信号を送って電気的に保持装置17による保持を解除するように構成したものである。
【0042】
これら電気式、電磁式、及び超音波式の浸水検知装置19は、磁力により保持する保持装置17の場合に採用する。なお、磁力により保持する保持装置17には、磁力によって回転するモータの回転を抑制するブレーキも含む。
【0043】
上段扉体6及び下段扉体7の開閉動作の連動をチェーン12により行う場合、図6(a)に示すように、チェーン12の途中にターンバックル20を介在させれば、チェーン12の張力を調整することができる。また、ターンバックル20に代えて、図6(b)に示すように、チェーン12の途中にテンショナー21を配置して張力を調整しても良い。
【0044】
また、例えば図7に示すように、下段扉体7の水平軸7aに取付けたトルクアーム14に、基端側を回転自在に支持したダンパー22の先端部を回転自在に取り付ければ、扉体6,7が閉じる際の衝撃を抑制することができる。
【0045】
本発明の管路止水装置1は上記した構成であり、平常時は、図2(a)(b)の紙面左側に示すように、導入ダクト3を流れる新鮮な空気は重要機器室4に導入される。上記構成の場合、仮に建物2が振動した時にも、保持装置17の作用によって扉体6,7が閉じて導入ダクト3の内部を閉塞することがない。
【0046】
一方、非常時、海水が導入ダクト3の内部に浸入してきた時には、当該海水の浸入を図1に示した浸水検知装置19で検知し、保持装置17に上段扉体6の保持を解除する信号を送る。上段扉体6の保持が解除されると、上段扉体6と下段扉体7が連動して閉じ、図2(a)(b)の紙面右側に示すように、導入ダクト3の内部を閉塞する。
【0047】
導入ダクト3の内部を閉塞した上段扉体6に設置したスキンプレート8と下段扉体7は、空調ダクト3の内部に侵入した海水による水圧が作用し、水密ゴム11に押付けられる。
【0048】
上記本発明の管路止水装置1では、既設の空調ダクト3の一部を置き換えるだけで浸水対策を行うことができるので、浸水の回避が絶対に必要な重要箇所に対象を絞った効果的な対策を行うことができる。
【0049】
また、本発明の管路止水装置1は、小型化及び軽量化が可能であるため、利用範囲が広くなる。
【0050】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0051】
例えば上記実施例では、導入ダクトに本発明の管路止水装置1を取付けたものについて説明しているが、排気ダクトに取付けても良い。
【0052】
また、図7の実施例では、下段扉体7にダンパー22を付加した例について説明したが、上段扉体6にダンパー22を付加しても良い。また、上段扉体6及び下段扉体7の開閉動作の連動をチェーン12により行うものを示したが、ベルトを用いて連動させても良い。この場合は、張力の調整はテンショナーによって行う。また、上段扉体6及び下段扉体7が閉じる際の衝撃抑制をダンパー22に代えてエアーシリンダで行うものでも良い。
【0053】
また、浸水検知装置19としては、下段扉体7自体に容積を与えて、下段扉体7が浸水による浮力によって浮上することで浸水を検知するものでもよい。この場合、下段扉体7の水平軸7aと同軸のトルクアーム14に下段扉体7の浮上を伝達し、そのモーメントによって保持装置17による保持を解除する。
【符号の説明】
【0054】
1 管路止水装置
2 建物
3 導入ダクト
4 重要機器室
6 上段扉体
6a 水平軸
7 下段扉体
7a 水平軸
8 スキンプレート
9 軸受部
9a 長孔
10 戸当り
10a 開口
11 水密ゴム
12 チェーン
15 カウンタウエイト
16 モータ
17 保持装置
19 浸水検知装置
20 ターンバックル
21 テンショナー
22 ダンパー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7