特許第6227487号(P6227487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227487
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】防災設備
(51)【国際特許分類】
   G08B 29/12 20060101AFI20171030BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20171030BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20171030BHJP
   H04R 27/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G08B29/12
   G08B17/00 F
   G08B27/00 B
   H04R27/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-117381(P2014-117381)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-230652(P2015-230652A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】神崎 雅章
(72)【発明者】
【氏名】小座間 正人
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−251677(JP,A)
【文献】 特開平8−161673(JP,A)
【文献】 特開2010−141505(JP,A)
【文献】 特開2008−91990(JP,A)
【文献】 特開平9−91578(JP,A)
【文献】 特開2002−133546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B29/12
G08B17/00
G08B27/00
H04R27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災報知設備の火災受信機に複数の信号線により接続した第1伝送アダプタと非常放送装置に複数の信号線により接続した第2伝送アダプタを伝送路により接続し、前記複数の信号線の各々により火災受信機から送信した連動信号を前記第1伝送アダプタ、前記伝送路及び前記第2伝送アダプタを経由して前記非常放送装置に伝送して放送を行わせ、
前記火災受信機は、所定の周期ごとに、前記第1伝送アダプタに伝送試験移報信号を送信すると共に、前記第1伝送アダプタから伝送障害信号を受信した場合に伝送障害警報を出力させ、
前記第1伝送アダプタは、前記火災受信機から前記伝送試験移報信号を受信した場合に、所定の伝送試験信号を前記伝送路により前記第2伝送アダプタへ送信して伝送試験を行い、伝送障害を検出した場合に前記火災受信機に前記伝送障害信号を送信して伝送障害警報を出力させることを特徴とする防災設備。
【請求項2】
請求項1記載の防災設備に於いて、前記火災受信機は、所定の周期ごとに、所定の自動試験を行い、前記自動試験に連動して前記伝送試験移報信号を前記第1伝送アダプタに送信することを特徴とする防災設備。
【請求項3】
請求項1記載の防災設備に於いて、
前記火災受信機は、警戒区域の火災を検知して発報した火災感知器からの発報信号を受信した場合に、火災警報を出力すると共に発報区域を示す発報区域識別信号を送信し、前記発報信号を受信した後に火災確認を検出した場合に、火災確認信号を送信し、
前記非常放送装置は、前記第1伝送アダプタ及び第2伝送アダプタを経由して、前記火災受信機からの前記発報区域識別信号を受信した場合に、前記発報区域を含む所定の警戒区域に設置したスピーカから所定の感知器発報放送を出力させ、前記火災受信機から前記火災確認信号を受信した場合に、前記スピーカから所定の火災放送を出力させることを特徴とする防災設備。
【請求項4】
請求項1記載の防災設備に於いて、前記第1伝送アダプタを前記火災受信機の筐体内又はその近傍に設置し、前記第2伝送アダプタを前記非常放送装置の筐体内又はその近傍に設置したことを特徴とする防災設備。
【請求項5】
請求項1記載の防災設備に於いて、
前記第1伝送アダプタは、前記伝送試験移報信号を受信した場合に、所定の伝送試験信号を前記伝送路により前記第2伝送アダプタへ送信し、
前記第2伝送アダプタは、前記第1伝送アダプタから送信した前記伝送試験信号を受信した場合に伝送試験応答信号を前記第1伝送アダプタに送信し、
前記第1伝送アダプタは、前記伝送試験信号を送信してから所定時間を経過しても前記第2伝送アダプタから前記伝送試験応答信号を受信しない場合に、伝送障害を検出して前記火災受信機に前記伝送障害信号を送信することを特徴とする防災設備。
【請求項6】
請求項1記載の防災設備に於いて、
前記第1伝送アダプタは、前記伝送試験移報信号を受信した場合に、所定の伝送試験信号を前記伝送路により所定回数だけ前記第2伝送アダプタへ送信し、
前記第2伝送アダプタは、前記第1伝送アダプタから送信した前記伝送試験信号を複数回受信してエラーレートを求めて前記第1伝送アダプタに送信し、
前記第1伝送アダプタは、前記第2伝送アダプタから受信したエラーレートが所定閾値を超えた場合に、伝送障害を検出して前記火災受信機に前記伝送障害信号を送信することを特徴とする防災設備。
【請求項7】
請求項1記載の防災設備に於いて、
前記火災受信機は、前記第1伝送アダプタに前記伝送試験信号を送信している間、前記連動信号の前記第1伝送アダプタに対する送信を停止することを特徴とする防災設備。
【請求項8】
請求項1記載の防災設備に於いて、
前記火災受信機は、
前記連動信号の各々をリレーの作動による常開リレー接点の閉成により送信する複数の移報部と、
連動停止操作を受付けた場合に前記複数の移報部に設けた各リレーのコモン側を共通に接続したコモンラインの接続を切離すことにより、火災受信機からの連動信号の送信による前記非常放送装置との連動を停止する連動停止スイッチと、
リレーの作動による常開リレー接点の閉成により前記伝送試験移報信号を前記第1伝送アダプタ送信すると共に、前記コモンラインに前記連動停止スイッチと直列に設けた常閉リレー接点の開成により前記複数の移報部に設けた各リレーの作動を禁止して連動信号の送信による前記非常放送装置との連動を停止する伝送試験移報部と、
を設けたことを特徴とする防災設備。
【請求項9】
火災報知設備の火災受信機に設けた伝送部と非常放送装置に設けた伝送部との間を伝送路により接続し、前記火災受信機から送信した連動信号を前記伝送路により前記非常放送装置に伝送して放送を行わせ、
前記火災受信機は、所定の周期ごとに、所定の自動試験を行い、前記自動試験に連動して所定の伝送試験信号を前記伝送路により前記非常放送装置に送信して伝送試験を行い、当該伝送試験により伝送障害を検出した場合に、伝送障害警報を出力ることを特徴とする防災設備。
【請求項10】
請求項9記載の防災設備に於いて、
前記火災受信機は、前記伝送試験を行った場合に、所定の伝送試験信号を前記伝送路により前記非常放送装置へ送信し、
前記非常放送装置は、前記火災受信機から送信した前記伝送試験信号を受信した場合に伝送試験応答信号を前記火災受信機に送信し、
前記火災受信機は、前記伝送試験信号を送信してから所定時間を経過しても前記非常放送装置から前記伝送試験応答信号を受信しない場合に、伝送障害を検出して伝送障害警報を出力することを特徴とする防災設備。
【請求項11】
請求項9記載の防災設備に於いて、
前記火災受信機は、前記伝送試験を行った場合に、所定の伝送試験信号を前記伝送路により所定回数だけ前記非常放送装置に繰り返し送信し、
前記非常放送装置は、前記火災受信機から送信した前記伝送試験信号を複数回受信してエラーレートを求めて前記火災受信機に送信し、
前記火災受信機は、前記非常放送装置から受信したエラーレートが所定閾値を超えた場合に、伝送障害を検出して伝送障害警報を出力することを特徴とする防災設備。
【請求項12】
請求項9記載の防災設備に於いて、
前記火災受信機は、火災が発生した場合には、伝送試験を中止して、連動信号の送信を開始することを特徴とする防災設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知設備による火災検知に連動して非常用放送設備から自動的に放送する防災設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非常用放送設備は、火災報知設備と連動し、火災が発生した場合に、火災の発生を知らせ、避難誘導放送を行う。
【0003】
火災報知設備に設けた火災受信機は、警戒区域の火災を検知して発報した火災感知器からの発報信号を受信した場合に火災警報を出力すると共に、発報区域を示す発報区域識別信号としての階別信号を非常放送装置に送信し、これを受信した非常放送装置は火災発生階及び直上階に設置しているスピーカから感知器発報放送として「ただいま○○階の火災報知器が作動しました。 確認しておりますので、次の放送にご注意ください。」を出力する。
【0004】
この感知器発報に対し所定の時間が経過した場合、または防災センターの係員等が現場に出向いて火災を確認した場合には、例えば発信機の押し釦操作等の火災確認操作に基づき火災受信機から火災確認信号を非常放送装置へ送信し、それまでの感知器発報放送から火災放送に切替え、「火事です。火事です。○○階の火災が発生しました。落ち着いて避難してください。」を出力する。また火災放送から所定の設定時間が経過すると、非常放送装置は全館一斉放送に切替える。
【0005】
一方、現場に出向いて非火災を確認した場合には、非常放送装置に設けた非火災放送スイッチの操作により、それまでの発報放送から非火災放送に切替え、「さきほどの火災感知器の作動は、確認の結果、異常がありませんでした。ご安心下さい。」を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−233984号公報
【特許文献2】特開平6−314385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の火災報知設備と非常放送設備との間は、火災受信機と非常放送装置の間で送受信する信号数に応じた多数の信号線で接続している。火災感知器と非常放送装置を接続する信号線の数は、設置対象とする建物が例えば30階(地下階を含む)であった場合、火災受信機から非常放送装置に信号を送る30本の階別信号線と一対の火災確認信号線、非常放送装置から火災受信機に信号を送る鳴動停止信号線、及び階別信号線と鳴動停止信号線に共通するコモン線の合計34本を必要とし、また消防法令に基づき耐熱配線を使用する。
【0008】
このため火災受信機と非常放送装置との間を多数の耐熱配線で接続する必要があり、これに応じた配線収納スペースを必要とし、配線の引き回しも大変になるという問題がある。
【0009】
この問題を解決するためには、火災受信機と非常放送装置との間をLANケーブル等の伝送路により接続して配線数を低減する所謂伝送化が考えられる。
【0010】
しかしながら、火災受信機と非常放送装置との間を伝送化した場合、従来の信号数に対応した配線接続に比べ、伝送系統に設けている機器の障害や伝送エラー等により信号伝送の信頼性が低くなる恐れがある。
【0011】
このように伝送系統に障害や伝送エラーが発生していたとしても、火災が発生して火災受信機から階別信号や火災信号を伝送して発報放送や火災放送を行うことは、実際にはほとんど起こることがなく、伝送系統の障害や伝送エラーに気づくには時間がかかる場合があり、実際に火災が発生した場合に、火災報知に連動して非常放送が自動的に起動できない事態が起きることが懸念される。
【0012】
本発明は、火災報知設備と非常放送設備との間を伝送化した場合の信号伝送の信頼性を確保して信頼性を向上する防災設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(伝送アダプタによる伝送化)
本発明は、防災設備に於いて、火災報知設備の火災受信機に複数の信号線により接続した第1伝送アダプタと非常放送装置に複数の信号線により接続した第2伝送アダプタを伝送路により接続し、複数の信号線の各々により火災受信機から送信した連動信号を第1伝送アダプタ、伝送路及び第2伝送アダプタを経由して非常放送装置に伝送して放送を行わせ、
火災受信機は、所定の周期ごとに、第1伝送アダプタに伝送試験移報信号を送信すると共に、第1伝送アダプタから伝送障害信号を受信した場合に伝送障害警報を出力させ、
第1伝送アダプタは、火災受信機から伝送試験移報信号を受信した場合に、所定の伝送試験信号を伝送路により第2伝送アダプタへ送信して伝送試験を行い、伝送障害を検出した場合に火災受信機に伝送障害信号を送信して伝送障害警報を出力させることを特徴とする。
【0014】
(自動試験に連動した伝送試験)
火災受信機は、所定の周期ごとに所定の自動試験を行い、自動試験に連動して伝送試験移報信号を第1伝送アダプタに送信する。
【0015】
(火災受信機及び非常放送装置の詳細)
火災受信機は、警戒区域の火災を検知して発報した火災感知器からの発報信号を受信した場合に火災警報を出力すると共に発報区域を示す発報区域識別信号を送信し、発報信号を受信した後に火災確認を検出した場合に火災確認信号を送信し、
非常放送装置は、第1伝送アダプタ及び第2伝送アダプタを経由して、火災受信機からの発報区域識別信号を受信した場合に発報区域を含む所定の警戒区域に設置したスピーカから所定の感知器発報放送を出力させ、火災受信機から火災確認信号を受信した場合にスピーカから所定の火災放送を出力させる。
【0016】
(伝送アダプタの配置場所)
第1伝送アダプタを火災受信機の筐体内又はその近傍に設置し、第2伝送アダプタを非常放送装置の筐体内又はその近傍に設置する。
【0017】
(伝送試験1:試験送信と応答受信)
第1伝送アダプタは伝送試験移報信号を受信した場合に、所定の伝送試験信号を伝送路により第2伝送アダプタへ送信し、
第2伝送アダプタは第1伝送アダプタから送信した伝送試験信号を受信した場合に伝送試験応答信号を第1伝送アダプタに送信し、
第1伝送アダプタは、伝送試験信号を送信してから所定時間を経過しても第2伝送アダプタから伝送試験応答信号を受信しない場合に、伝送障害を検出して火災受信機に伝送障害信号を送信する。
【0018】
(伝送試験2:エラーレート)
第1伝送アダプタは伝送試験移報信号を受信した場合に、所定の伝送試験信号を伝送路により所定回数だけ第2伝送アダプタへ繰り返し送信し、
第2伝送アダプタは第1伝送アダプタから送信した伝送試験信号を複数回受信してエラーレートを求めて第1伝送アダプタに送信し、
第1伝送アダプタは、第2伝送アダプタから受信したエラーレートが所定閾値を超えた場合に、伝送障害を検出して火災受信機に伝送障害信号を送信する。
【0019】
(伝送試験中の移報停止)
火災受信機は、伝送試験を行っている間、連動信号の第1伝送アダプタに対する送信を停止する。
【0020】
(伝送試験中の移報停止詳細)
火災受信機は、
連動信号の各々をリレーの作動による常開リレー接点の閉成により送信する複数の移報部と、
連動停止操作を受付けた場合に複数の移報部に設けた各リレーのコモン側を共通に接続したコモンラインの接続を切離すことにより、火災受信機からの連動信号の送信による非常放送装置との連動を停止する連動停止スイッチと、
リレーの作動による常開リレー接点の閉成により伝送試験移報信号を第1伝送アダプタ送信すると共に、コモンラインに連動停止スイッチと直列に設けた常閉リレー接点の開成により複数の移報部に設けた各リレーの作動を禁止して連動信号の送信による非常放送装置との連動を停止する伝送試験移報部と、
を設ける。
【0021】
(一体伝送化)
本発明の別の形態にあっては、防災設備に於いて、
火災報知設備の火災受信機に設けた伝送部と非常放送装置に設けた伝送部との間を伝送路により接続し、火災受信機から連動信号を伝送路により非常放送装置に伝送して放送を行わせ、
火災受信機は、所定の周期ごとに、所定の自動試験を行い、自動試験に連動して所定の伝送試験信号を伝送路により非常放送装置に送信して伝送試験を行い、当該伝送試験に基づき伝送障害を検出した場合に、伝送障害警報を出力る。
【0023】
(伝送試験1:試験送信と応答受信)
火災受信機は自動試験を行った場合に、所定の伝送試験信号を非常放送装置へ送信し、
非常放送装置は火災受信機から送信した伝送試験信号を受信した場合に伝送試験応答信号を火災受信機に送信し、
火災受信機は伝送試験信号を送信してから所定時間を経過しても非常放送装置から伝送試験応答信号を受信しない場合に伝送障害を検出して伝送障害警報を出力する。
【0024】
(伝送試験2:エラーレート)
火災受信機は自動試験を行った場合に、所定の伝送試験信号を所定回数だけ非常放送装置に繰り返し送信し、
非常放送装置は火災受信機から送信した伝送試験信号を複数回受信してエラーレートを求めて火災受信機に送信し、
火災受信機は、非常放送装置から受信したエラーレートが所定閾値を超えた場合に、伝送障害を検出して伝送障害警報を出力する。
【0025】
(火災発生による伝送試験中の解除)
また、火災受信機は、火災が発生した場合には、伝送試験を中止して、連動信号の送信を開始する。
【発明の効果】
【0026】
(伝送アダプタによる伝送化の基本的な効果)
本発明の防災設備は、火災報知設備の火災受信機に複数の信号線により接続した第1伝送アダプタと非常放送装置に複数の信号線により接続した第2伝送アダプタを伝送路により接続し、複数の信号線の各々により火災受信機から送信した連動信号を第1伝送アダプタ及び第2伝送アダプタを経由して放送を行わせ、火災受信機は、所定の周期ごとに、例えば所定の周期で行う所定の自動試験に連動して、第1伝送アダプタに伝送試験移報信号を送信すると共に第1伝送アダプタから伝送障害信号を受信した場合に伝送障害警報を出力させ、第1伝送アダプタは、火災受信機から伝送試験移報信号を受信した場合に、所定の伝送試験信号を伝送路により第2伝送アダプタへ送信して伝送試験を行い、当該伝送試験に基づき伝送障害を検出した場合に火災受信機に伝送障害信号を送信して伝送障害警報を出力させるようにしたため、定期的に行う例えば火災受信機の自動試験に連動して第1伝送アダプタと第2伝送アダプタを伝送路で接続した伝送系統の伝送試験を自動的に行い、伝送障害を検出した場合は伝送障害警報の出力により伝送系統の障害を知って適切に対処することができ、火災受信機と非常放送装置との間を伝送化して配線数を低減した場合にも、伝送化により信号伝送の信頼性を確保可能とし、火災が発生した場合に自動的に発報放送や火災放送といった非常放送を確実に行って防災設備の信頼性を向上可能とする。
【0027】
(伝送アダプタの配置場所による効果)
また、第1伝送アダプタを火災受信機の筐体内又はその近傍に設置し、第2伝送アダプタを非常放送装置の筐体内又はその近傍に設置するようにしたため、火災受信機と非常放送装置との間を実質的に伝送路1本のケーブルで接続可能とし、ケーブル収納スペースを大幅に低減し、ケーブル引き回しによる敷設作業も容易とする。
【0028】
(伝送試験による効果)
また、第1伝送アダプタは伝送試験移報信号を受信した場合に、所定の伝送試験信号を伝送路により第2伝送アダプタへ送信し、第2伝送アダプタは第1伝送アダプタから送信した伝送試験信号を受信した場合に伝送試験応答信号を第1伝送アダプタに送信し、第1伝送アダプタは、伝送試験信号を送信してから所定時間を経過しても第2伝送アダプタから伝送試験応答信号を受信しない場合に、伝送障害を検出して火災受信機に伝送障害信号を送信するようにしたため、実際に第1伝送アダプタと第2伝送アダプタとの間で試験的に信号伝送を行うことで、伝送系統が正常に動作するか否かを検証し、伝送障害があればこれを確実に検出して警報可能とする。
【0029】
また、第1伝送アダプタは伝送試験移報信号を受信した場合に、所定の伝送試験信号を伝送路により所定回数だけ第2伝送アダプタへ繰り返し送信し、第2伝送アダプタは第1伝送アダプタから送信した伝送試験信号を複数回受信してエラーレートを求めて第1伝送アダプタに送信し、第1伝送アダプタは、第2伝送アダプタから受信したエラーレートが所定閾値を超えた場合に、伝送障害を検出して火災受信機に伝送障害信号を送信するようにしたため、伝送系統の伝送品質をエラーレートにより評価し、エラーレートの増加に対し適切に対処することで、常に高い伝送品質を維持可能とする。
【0030】
(伝送試験中の移報停止による効果)
また、火災受信機は、伝送試験を行っている間、連動信号の第1伝送アダプタに対する送信を停止するようにしたため、伝送試験に伴い誤って連動信号などが伝送されて誤放送を行ってしまうことを確実に防止可能とする。
【0031】
また、火災受信機は、連動信号の各々をリレーの作動による常開リレー接点の閉成により送信する複数の移報部と、連動停止操作を受付けた場合に記複数の移報部に設けた各リレーのコモン側を共通に接続したコモンラインの接続を切離すことにより、連動信号の送信による非常放送装置との連動を停止する連動停止スイッチと、リレーの作動による常開リレー接点の閉成により伝送試験信号を第1伝送アダプタ送信すると共に、コモンラインに連動停止スイッチと直列に設けた常閉リレー接点の開成により複数の移報部に設けた各リレーの作動を禁止して連動信号の送信による非常放送装置との連動を停止する伝送試験移報部とを設けるようにしたため、リレーの作動によるリレー接点の閉成で無電圧接点信号を出力する移報部の共通コモンラインに設けた連動停止スイッチと同じ連動停止機能を、伝送試験移報部のリレーの作動による開くリレー接点を利用して行うことで、移報部の回路構成の変更を最小限に抑えることを可能とする。
【0032】
(一体伝送化による基本的な効果)
本発明の別の形態にあっては、防災設備に於いて、火災報知設備の火災受信機に設けた伝送部と非常放送装置に設けた伝送部との間を伝送路により接続し、火災受信機から連動信号を伝送路により非常放送装置に伝送して放送を行わせ、火災受信機は、所定の周期ごとに、例えば所定の周期ごとに行う自動試験に連動して、所定の伝送試験信号を伝送路により非常放送装置に送信して伝送試験を行い、当該伝送試験に基づき伝送障害を検出した場合に火災受信機に伝送障害信号を送信して伝送障害警報を出力させるようにしたため、火災受信機及び非常放送装置に伝送部を一体化して伝送路で接続することで配線数を低減した場合にも、定期的に行う火災受信機の自動試験に連動して伝送系統の伝送試験を自動的に行い、伝送障害を検出した場合は伝送障害警報の出力により伝送系統の障害を知って適切に対処することができ、伝送化による信号伝送の信頼性を確保可能とし、火災が発生した場合に自動的に発報放送や火災放送といった非常放送を確実に行って防災設備の信頼性を向上可能とする。
【0033】
この場合の伝送試験による効果及び伝送試験中の移報停止による効果は、前述した伝送アダプタによる伝送化の場合と基本的に同様となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】火災報知設備と非常放送設備を伝送アダプタにより伝送化した防災設備の概要を示した説明図
図2図1の伝送アダプタ間の接続構成を示した説明図
図3】火災報知設備側の火災受信機と第1伝送アダプタの機能構成を示したブロック図
図4図3の火災受信機に設けた階別移報部の構成を示した回路ブロック図
図5図3の火災受信機に設けた伝送試験移報部の構成を示した回路ブロック図
図6】非常放送設備側の第2伝送アダプタと非常放送装置の機能構成を示したブロック図
図7】火災受信機から非常放送装置までの伝送系統を階別信号の伝送を例にとって示した説明図
図8】火災受信機と非常放送装置に伝送部を設けて伝送化した防災設備の機能構成を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0035】
[防災設備の概要]
図1は火災報知設備と非常放送設備を伝送アダプタにより伝送化した防災設備の概要を示した説明図である。
(火災報知設備の概要)
図1に示すように、火災報知設備10は火災受信機14を備え、火災受信機14から警戒区域毎に感知器回線L1〜Lnを引き出し、コモン線Cとの間に、感知器回線L1に代表して示すように、火災感知器16を接続している。
【0036】
火災感知器16は煙感知器又は熱感知器等であり、火災に伴う煙や熱等の物理現象の変化を検出して発報し、発報信号を火災受信機14に送信する。火災受信機14は火災感知器16からの発報信号を受信すると火災警報を出力する。
【0037】
また、感知器回線L1とコモン線Cの間には必要に応じて発信機18を接続しており、発信機18には更に火災受信機14から応答信号線Aを接続している。また発信機18は電話ジャックを設けていることから、火災受信機14から電話線Tを接続している。
【0038】
発信機18は火災発見者等の押し釦操作によるスイッチ作動で発信信号を火災受信機14に送信し、この発信信号を受信した火災受信機14は火災確認を検出して火災警報を出力すると共に応答信号線Aに応答信号を送信して発信機18に設けた応答表示灯を点灯して火災受信を行ったことを知らせる。
【0039】
火災受信機14の火災警報動作は、火災感知器16からの発報信号を受信した場合は、火災代表灯を点灯又は点滅して火災警報音を出力すると共に火災発報のあった感知器回線に対応した地区表示灯を点灯又は点滅して火災発生区域を示す。この火災警報に対し防災センターの係員等は火災発報のあった現場に出向き、火災を確認した場合には、防災センターに連絡することで火災受信機14に設けた火災確認スイッチを操作させるか、或いは火災現場の近くに設置している発信機18を操作して発信信号を送信することで、火災受信機14で火災確認を検出し、地区音響警報の出力制御等を行う。
【0040】
また、火災受信機14は火災確認を検出すると、非常放送設備12を含む外部装置に連動信号を出力する移報動作を行う。火災受信機14が非常放送設備12に出力する連動信号としては、火災感知器16が発報した感知器回線L1〜Lnに対応した発報区域を示す発報区域識別信号、例えば非常放送設備12の設置が義務付けられた地上11階以上の建物であれば火災発報階を示す階別信号及び発報後に火災の確認を検出した場合の火災確認信号がある。なお、以下の説明では、発報区域識別信号を、階別信号として説明する。
【0041】
また、火災受信機14は火災受信に基づく地区ベルを鳴動中に非常放送設備12から鳴動停止信号を受信すると地区ベル鳴動を停止する。
【0042】
また、火災受信機14は所定の周期、例えば1週間(7日間)に1回の周期で所定の自動試験を行っており、この自動試験により障害を検出した場合は障害警報を出力する。
【0043】
また、火災受信機14は自動試験を行った場合に、後の説明で明らかにする第1伝送アダプタ30に伝送試験移報信号を送信して伝送試験を行わせ、この伝送試験の結果として伝送障害信号を第1伝送アダプタ30から受信した場合は、伝送障害警報を出力させる。また、火災受信機14は伝送試験を行っている間、階別信号、火災確認信号及び非火災確認を含む移報信号の送信を停止する連動停止動作を行う。
【0044】
(非常放送設備の概要)
図1に示すように、非常放送設備12は非常放送装置20を備え、外部機器として例えば一般業務放送に使用する卓上マイク装置22、バックグランドミュージック(BGM)、チャイム等の一般業務放送の音源となる音声ファイル、ラジオチューナ、CDプレーヤ等を含む音源装置24、緊急地震速報装置26などを必要に応じて接続している。
【0045】
また、非常放送装置20からはスピーカ回線SLを引き出しており、スピーカ回線SLは例えば建物の階別等の放送区域毎に分けて複数回線を引き出し、各回線に複数のスピーカ28を接続している。スピーカ28は居室、非居室、廊下、階段といった設置場所に応じて消防法令で決められた出力音圧のものを設置している。また、1つのスピーカ回線SLは、ノーマル放送線N、非常放送線R及びコモン線Cの3本の信号線を使用している。ノーマル放送線Rにはスピーカ分岐側に音量調整用のアッテネータ(減衰器)を設ける場合がある。
【0046】
非常放送装置20は、火災報知設備10の火災受信機14からの連動信号として発報階を示す階別信号を受信した場合に、火災発生階及び直上階のスピーカ回線を選択してスピーカから所定の発報放送を出力させる。なお、火災発生階が1階の場合は地下階を含む。
【0047】
また、非常放送装置20は、発報放送を行った後に火災受信機14から火災確認信号を受信した場合、火災発生階及び直上階のスピーカから所定の火災放送を出力させる。更に、火災放送から予め設定した一定時間を経過した場合に、全階のスピーカから火災放送を出力させる一斉放送に切替える。
【0048】
一方、非常放送装置20は、非火災を現場確認して非火災放送スイッチを操作した場合に、火災発生階及び直上階のスピーカから所定の非火災放送を出力させる。また、非常放送装置20は係員が操作パネルに設けたマイクをピックアップして非常放送を行う場合にマイクスイッチがオンして火災受信機14に鳴動停止信号を送信し、マイクスイッチがオンしている間、地区ベル等の地区音響鳴動を停止させる。
【0049】
(火災報知設備と非常放送設備との間の信号伝送)
図1に示すように、本実施形態にあっては、火災報知設備10の火災受信機14と非常放送設備12の非常放送装置20との間を従来のように多数の耐熱配線で接続せず、第1伝送アダプタ30、伝送路34及び第2伝送アダプタ32を間に設けて接続することで、火災報知設備10と非常放送設備12との間を実質的に1本の伝送路34で接続して伝送化している。
【0050】
火災受信機14側に設けた第1伝送アダプタ30は、火災受信機14の筐体内または筐体裏側の空きスペース等に配置し、火災受信機14との間を、発報階毎の階別信号、火災確認信号及び鳴動停止信号の信号数に対応した複数の耐熱信号線により接続しており、火災受信機14から連動信号として階別信号又は火災確認信号を受信した場合に、ヘッダ部とデータ部からなる階別情報と発報情報を含むパケット形式の階別伝送信号又は火災確認情報を含むパケット形式の火災確認伝送信号に変換してLANケーブル等を用いた所定芯線数の伝送路34により送信する。
【0051】
また第1伝送アダプタ30は伝送路34を介して第2伝送アダプタ32から受信したパケット形式の鳴動停止伝送信号を鳴動停止信号に変換して、対応する信号線により出力する。
【0052】
この火災受信機14と第1伝送アダプタ30との間の信号線接続は、従来の火災受信機14と非常放送装置20との接続における火災受信機14側の接続と同じであり、火災受信機14側の移報出力を行う端子台の構造はそのまま利用可能である。
【0053】
また、第1伝送アダプタ30は、火災受信機14との間を、更に、伝送試験移報信号と伝送障害信号の信号線数に対応した耐熱信号線により接続しており、火災受信機14から伝送試験移報信号を受信した場合に第2伝送アダプタ32との間で所定の伝送試験を行い、この伝送試験の結果として伝送障害を検出した場合は、火災受信機14に伝送障害信号を送信して伝送障害警報を出力させる。
【0054】
非常放送装置20側に設けた第2伝送アダプタ32は、非常放送装置20の筐体内または筐体裏側の空きスペース等に配置し、非常放送装置20と間を、発報階毎の階別信号、火災確認信号、及び鳴動停止信号の信号数に対応した複数の耐熱信号線により接続している。
【0055】
第2伝送アダプタ32は、伝送路34を介して第1伝送アダプタ30から受信したパケット形式の階別伝送信号又は火災確認伝送信号を、階別信号又は火災確認信号に変換し、対応する信号線により送信する。
【0056】
また、第2伝送アダプタは、マイクスイッチのオンに対応して非常放送装置20から受信した鳴動停止信号を、鳴動停止情報を含む所定形式のパケット信号に変換して伝送路34により送信する。
【0057】
この第2伝送アダプタ32と非常放送装置20との間の信号線接続は、従来の火災受信機14と非常放送装置20との接続における非常放送装置20側の接続と同じであり、火災受信機14から移報出力を受ける端子台の構造をそのまま利用可能である。
【0058】
また、第2伝送アダプタ32は、伝送路34を介して第1伝送アダプタ30から伝送試験情報を含むパケット形式の伝送試験信号を受信した場合に、所定の試験動作を行って試験に伴うパケット形式の試験応答信号を第1伝送アダプタ30に送信する。
【0059】
[伝送アダプタの通信接続]
図2図1の伝送アダプタ間の接続構成を示した説明図である。図2に示すように、火災受信機側に配置する第1伝送アダプタ30は、アダプタ筐体の図示の右側に配線コネクタ35を設け、図示の左側に伝送コネクタ36を設けている。
【0060】
配線コネクタ35は火災受信機14からの耐熱配線を接続したプラグ35aと第1伝送アダプタ30側に装着したソケット35bで構成している。伝送コネクタ36は伝送路34を構成するLANケーブルの一端に接続したプラグ36aと第1伝送アダプタ30側に装着したソケット36bで構成している。
【0061】
また、非常放送装置側に配置する第2伝送アダプタ32は、アダプタ筐体の図示の右側に伝送コネクタ38を設け、図示の左側に配線コネクタ40を設けている。伝送コネクタ38は伝送路34を構成するLANケーブルの他端に接続したプラグ38aと第2伝送アダプタ32側に装着したソケット38bで構成している。配線コネクタ40は非常放送装置20への耐熱配線を接続したプラグ40aと第2伝送アダプタ32側に装着したソケット40bで構成している。
【0062】
このように配線コネクタ35、伝送コネクタ36,38及び配線コネクタ40を使用することで、火災受信機14と非常放送装置20との間に配置する第1伝送アダプタ30、伝送路34及び第2伝送アダプタ32の接続作業を、簡単且つ容易に行うことを可能としている。
【0063】
また、配線コネクタ35,40については、例えば30階建のビルの場合には、階別信号線EL1ELn、火災確認信号線EF+,EF−、鳴動停止信号線EB、伝送試験移報線ET1、伝送障害通知線ET2及びコモン線Cの合計36本の信号線を接続することになるが、一つのコネクタに収容仕切れない場合には、例えば15ピンのコネクタを3個準備し、信号線を3つに分けてコネクタ接続する。この場合、3つに分けたコネクタ毎にコモン線Cを必要とするため、信号線数は追加する2本のコモン線を合わせて38本となる。勿論、コネクタの分割とその接続線数は必要に応じて適宜に決めることを可能とすする。また、コネクタを使用せずに端子台に配線を接続するようにしても良い。
【0064】
[火災受信機側の機能構成]
図3は火災報知設備側の火災受信機と第1伝送アダプタの機能構成を示したブロック図、図4図3の火災受信機に設けた階別移報部の構成を示した回路ブロック図、図5は火災受信機に設けた伝送試験移報部の構成を示した回路ブロック図である。
【0065】
図3に示すように、火災受信機14は受信制御部42を備え、受信制御部42は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0066】
受信制御部42に対しては発報受信部44、表示部45、操作部46、警報部47、階別移報部48、火災移報部50、鳴動停止受信部52、伝送試験移報部54、伝送障害受信部55及び連動停止スイッチ56を設けている。なお、連動停止スイッチ56は操作部46に設けるスイッチの1つであるが、説明の都合上、取り出して示している。
【0067】
発報受信部44は、感知器回線L1〜Lnに対応して設け、火災感知器16からの発報信号を受信して出力し、また、図1に示した発信機18からの発信信号を受信して出力する。ここで、図1に示した同じ感知回線L1に接続している火災感知器16から発報信号とは発信機18からの発信信号の区別は、それぞれの抵抗値を変えることで、発報信号の信号電流と発信信号の信号電流を異ならせており、発報受信部44に設けた受信側抵抗に流れる信号電流による受信電圧の相違から、発報信号か発信信号かを受信制御部42で区別して検出することを可能としている。
【0068】
表示部45には、火災代表灯、地区表示灯等の火災監視に必要な各種の表示灯やディスプレイ等の表示器を設けており、更に、伝送化に伴い伝送障害表示灯を設けている。
【0069】
操作部46には、主音響停止スイッチ、地区音響停止スイッチ等の火災監視に必要な各種のスイッチを設けており、この中に外部に取り出して示している連動停止スイッチ56も含まれる。
【0070】
警報部47はスピーカを備え、主音響による火災警報や各種の障害検出に基づく障害警報等を出力すると共に、スイッチ操作に伴う操作音や各種のガイダンスの音声出力を行う。
【0071】
階別移報部48は、感知器回線L1〜Lnに対応して設け、発報信号を受信した感知器回線に対応した階別移報部48から階別信号を送信する。火災移報部50は火災が確認された場合に火災確認信号を送信する。
【0072】
ここで、階別移報部48は、図4に示すように、受信制御部42により作動するリレー100を備え、リレー100の常開リレー接点102に第1伝送アダプタ30側の信号線を接続しており、階別信号を所謂無電圧接点信号として出力する。この点は火災移報部50も同様であり、火災確認信号を無電圧接点信号として送信する。
【0073】
再び図3を参照するに、階別移報部48及び火災移報部50の各々に設けたリレーのコモン側はコモンライン58に共通接続しており、このコモンライン58には連動停止スイッチ56を設けている。
【0074】
連動停止スイッチ56は定常監視状態で図示のように閉じており、点検等の際に、連動停止スイッチ56を連動停止位置に操作すると開放して階別移報部48及び火災移報部50の各々に設けたリレーのコモン側をコモンライン58から切り離し、リレーを非作動として階別信号及び火災確認信号の送信を停止し、非常放送装置20との連動を停止する。
【0075】
鳴動停止受信部52は鳴動停止信号線EBとコモン線Cにより第1伝送アダプタ30に接続しており、第1伝送アダプタ30からの鳴動停止信号を受信して受信制御部42に出力して地区ベル鳴動を停止させる。
【0076】
伝送試験移報部54は、受信制御部42で定期的な自動試験を行った場合に指示を受けて動作し、第1伝送アダプタ30に伝送試験移報信号を送信する。また、伝送信号移報部54は伝送試験移報信号を送信している間、階別移報部48及び火災移報部50による階別信号及び火災確認信号の送信(連動出力)を停止する動作を行い、点検中の非常放送装置による誤放送を防止可能とする。
【0077】
ここで、伝送試験移報部54は、図5に示すように、受信制御部42により作動するリレー116を備え、リレー116の常開リレー接点118に第1伝送アダプタ30側の信号線を接続しており、伝送試験移報信号を所謂無電圧接点信号として出力する。また伝送試験移報部54のリレー116は、図5に示すように、常閉リレー接点120を備えており、常閉リレー接点120をコモンライン58に設けた連動停止スイッチ56と直列に接続している。
【0078】
このため伝送試験移報部54のリレー116が作動して常開リレー接点118の閉成により伝送試験移報信号を送信すると共に、常閉リレー接点120が開成し、連動停止スイッチ56を連動停止位置に操作して開いた場合と同様に、常閉リレー接点120の開成により、階別移報部48及び火災移報部50による階別信号及び火災確認信号の送信(連動出力)を停止する動作を行い、伝送試験中の非常放送装置による誤放送を防止可能とする。
【0079】
伝送障害受信部55は、第1伝送アダプタ30に対する伝送試験移報信号の送信による伝送試験の結果から伝送障害が検出された場合に送信される伝送障害信号を受信して受信制御部42に出力する。
【0080】
ここで、第1伝送アダプタ30との配線接続を見ると、階別移報部48の出力は階別信号線EL1ELnにより第1伝送アダプタ30に接続し、火災移報部50の出力は一対の火災確認信号線EF+,EF−により第1伝送アダプタ30に接続し、鳴動停止受信部52の出力は鳴動停止信号線EBにより第1伝送アダプタ30に接続し、伝送試験移報部54の出力は伝送試験移報線ET1により第1伝送アダプタ30に接続し、更に、伝送障害受信部55は伝送障害通知線ET2により第1伝送アダプタ30の出力を入力接続している。
【0081】
受信制御部42は、感知器回線L1〜Lnに対応した発報受信部44の何れかによる発報信号の受信出力から火災発報を検出した場合、表示部45及び警報部47に指示して代表火災表示や火災地区表示を行うと共に火災警報音を出力させる制御を行う。
【0082】
また、受信制御部42は、火災発報を検出した場合、火災発報を検出した感知器回線、例えば感知器回線L1に対応した階別移報部48に設けたリレーを作動し、そのリレー接点を閉じて階別信号線EL1に階別信号を送信する制御を行う。
【0083】
また、受信制御部42は、火災発報を検出した後に、発信信号の受信又は火災確認スイッチの操作等から火災確認を検出した場合、火災移報部50に設けたリレーを作動し、そのリレー接点を閉じて火災確認信号線EF+,EF−に火災確認信号を送信する制御を行う。
【0084】
また、受信制御部42は地区ベル鳴動中に、鳴動停止受信部52による鳴動停止信号の受信を検出している間、地区ベル鳴動を停止する制御を行う。
【0085】
また、受信制御部42は、所定の周期、例えば1週間(7日間)に1回の周期で自動試験を行っている、受信制御部42による自動試験は、感知器回線L1〜Lnに対応して設けた発報受信部44に異常を確認したり、予備電源電圧が正常かを確認する等の所定の試験動作を自動的に行っており、異常を検知した場合は、表示部45に設けた障害代表灯を点灯すると共に障害内容を示す表示灯を点灯し、更に、警報部47から障害警報音を間欠的に出力させる制御を行う。
【0086】
また、受信制御部42は、定期的に行う自動試験に連動して伝送試験移報部54のリレー116を作動して常開リレー接点118を閉じることで、伝送試験移報信号を第1伝送アダプタ30に送信すると共に、常閉リレー接点120を開いて階別移報部48及び火災移報部50による階別信号及び火災確認信号の送信(連動出力)を停止する制御を行う。
【0087】
このように伝送試験の間、第1伝送アダプタ30に対する階別信号及び火災確認信号の送信を停止することで、伝送試験に伴う階別信号及び火災確認信号の誤送信による誤放送を防止可能とする。
【0088】
また、受信制御部42は、伝送試験を行っている間に、伝送障害受信部55による伝送障害信号の受信を検出した場合、表示部45に設けた障害代表灯を点灯すると共に伝送障害表示灯を点灯し、更に、警報部47から障害警報音を間欠的に出力させる制御を行う。なお、伝送障害の警報出力は、表示や警報音以外に、音声メッセージを出力したり、表示部45のディスプレイに文字表示しても良い。
【0089】
また、受信制御部42は、所定時間に亘る伝送試験の終了を検出すると、伝送障害受信部55のリレー116を復旧し、常開リレー接点118を開いて伝送試験移報信号の送信を停止すると共に、常閉リレー接点120を閉じて階別移報部48及び火災移報部50による階別信号及び火災確認信号の送信停止を解除する制御を行う。
【0090】
なお、受信制御部42は、伝送試験移報信号の送信中、即ち伝送試験中に発報受信部44による発報受信を検出した場合、強制的に伝送試験移報部54のリレー116を復旧し、階別移報部48、火災移報部50よる移報送信を可能とする。
【0091】
[第1伝送アダプタの機能構成]
図3に示すように、第1伝送アダプタ30は、制御部60を備え、制御部60は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0092】
(連動信号の伝送)
制御部60に対しては階別受信部62、火災受信部64、鳴動停止移報部65、伝送試験受信部66、伝送障害通知部68及び伝送部70を設けている。
【0093】
階別受信部62は火災受信機14からの階別信号線EL1ELnに対応して設け、階別信号線EL1ELnを介して火災受信機14に設けた階別移報部48のリレー接点間に所定の電圧を印加しており、階別移報部48のリレーの作動でリレー接点が閉じると信号電流が流れ(これは無電圧接点信号の送信に相当する)、これによる信号線間の受信電圧を制御部60に出力して階別信号の受信を検出させる。
【0094】
火災受信部64及び伝送試験受信部66も階別受信部62と同様であり、火災確認信号線EF+,EF−及び伝送試験移報線ET1とコモン線Cを介して火災受信機14に設けた火災移報部50及び伝送試験移報部54のぞれぞれのリレー接点間に所定の電圧を印加しており、リレーの作動でリレー接点が閉じると信号電流が流れ、これによる信号線間の受信電圧を制御部60に出力して火災確認信号及び伝送試験移報信号の受信を検出させる。
【0095】
鳴動停止移報部65は、火災受信機14に設けた階別移報部48と同様であり、非常放送装置20側の第2伝送アダプタ32から送信された鳴動停止伝送信号の伝送部70による受信を検出した場合の制御部60の出力により、リレーを作動してリレー接点を閉じることで無電圧接点信号としての鳴動停止信号を火災受信機14に出力する。
【0096】
伝送障害通知部68は、図4に示したと同様に、リレーとその常開リレー接点を備えており、制御部60によりリレーを作動して常開リレー接点を閉じることで無電圧接点信号として伝送障害通知線ET2とコモン線C間に信号電流を流して伝送障害信号を出力する。
【0097】
伝送部70は、制御部60の指示に基づきヘッダ部とデータ部でなるパケット形式の伝送信号を生成し、伝送路34を構成するLANケーブルを介して第2伝送アダプタ32に送信し、また伝送路34を介して第2伝送アダプタ32からパケット形式の伝送信号を受信する。
【0098】
ここで、伝送部70はLANのプロトコルとして知られた物理的な規格であるイーサネット(登録商標)とTCP/IPプロトコル(IP層とTCP層の規格)の組合せによる伝送制御を行う。
【0099】
イーサネット(登録商標)としては例えば1000BASE−Tを使用する。1000BASE−TではLANケーブルとして耐熱仕様のカテゴリー5E(エンハンスドカテゴリー5)以上を使用する。カテゴリー5EのLANケーブルは4対の撚り線(ツイスト線)を1本にまとめた8芯のケーブルであり、1000BASE−Tでは8芯4対を全て使用して1000Mbpsの伝送速度を100メートル以内の伝送距離で実現可能とする。
【0100】
このため図2に示した伝送路34として、両端に伝送コネクタ36,38のプラグ36a,38aを接続したカテゴリー5E対応のLANケーブルを使用すればよく、火災受信機14と非常放送装置20は同じ防災センターの室内に隣接又は近接して設置していることから、火災受信機14側に設けた第1伝送アダプタ30を非常放送装置20側に設けた第2伝送アダプタ32に接続するLANケーブルは例えば数メートル程度で済み、伝送距離が長くなる問題はない。
【0101】
制御部60は、階別受信部62の何れかによる階別信号の受信、又は火災受信部64による火災確認信号の受信を検出した場合、受信した階別信号又は火災確認信号を、階別情報及び発報情報を含むパケット形式の階別伝送信号又は火災確認情報を含むパケット形式の火災確認伝送信号に変換し、伝送部70に指示して所定のプロトコルに従って信号伝送する制御を行う。
【0102】
(伝送試験)
第1伝送アダプタ30の制御部60は、伝送試験受信部66による伝送試験移報信号の受信を検出した場合、所定の伝送試験を行う。
【0103】
制御部60は例えば第1伝送試験として、伝送試験情報を含むパケット形式の伝送試験信号を生成し、伝送部70に指示して伝送試験信号を伝送路34を介して第2伝送アダプタ32に送信し、伝送試験信号の送信から試験応答に十分な所定時間内に第2伝送アダプタ32が送信した伝送試験応答信号の受信を検出した場合に伝送系統の正常を検出する制御を行う。
【0104】
これに対し制御部60は、伝送試験信号の送信から試験応答に十分な所定時間内に第2伝送アダプタ32からの伝送試験応答信号の受信を検出しない場合は伝送系統の異常を検出し、伝送障害通知部68のリレーを作動して伝送障害信号を火災受信機14に送信して伝送障害警報を出力させる制御を行う。
【0105】
また、制御部60は第2伝送試験としてエラーレートを測定する制御を行う。エラーレートを測定するため制御部60は、エラーレート測定指示情報を含むパケット形式の伝送試験信号を生成し、伝送部70に指示して伝送試験信号を例えば100回に亘り第2伝送アダプタ32に繰り返し送信し、第2伝送アダプタ32からエラー回数を示すエラーレートを含むパケット形式のエラーレート通知信号を受信した場合、受信したエラーレートが所定の閾値以上の場合に伝送系統の異常を検出し、伝送障害通知部68のリレーを作動して伝送障害信号を火災受信機14に送信して伝送障害警報を出力させる制御を行う。
【0106】
この制御部60による第1伝送試験と第2伝送試験は、両方を行ってもよいし、何れか一方を行うようにしても良い。また、これ以外にS/N比や受信電圧を検出して評価する適宜の伝送試験を行うようにしても良い。
【0107】
[第2伝送アダプタの機能構成]
図6は非常放送設備側の第2伝送アダプタと非常放送装置の機能構成を示したブロック図である。
【0108】
図6に示すように、第2伝送アダプタ32は、制御部72を備え、制御部72は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。制御部72に対しては、伝送部74、階別移報部76、火災移報部78及び鳴動停止受信部80を設けている。
【0109】
伝送部74は、第1伝送アダプタ30の伝送部70と同様であり、例えばイーサネット(登録商標)とTCP/IPプロトコルの組合せによる伝送制御を行う。
【0110】
階別移報部76は、図3に示した火災受信機14の階別移報部48に対応して設け、同様に、制御部72によりリレーを作動してリレー接点を閉じ、非常放送装置20側に階別信号を無電圧接点信号として送信する。この点は火災移報部78も同様であり、火災確認信号を無電圧接点信号として送信する。
【0111】
鳴動停止受信部80は図3の火災受信機14に設けた鳴動停止受信部52と同様であり、非常放送装置20からの鳴動停止信号を受信して出力する。
【0112】
また非常放送装置20との間は、階別移報部76の出力側を階別信号線EL1ELnにより非常放送装置20に接続し、火災移報部78の出力側を一対の火災確認信号線EF+,EF−により非常放送装置20に接続し、鳴動停止受信部80の入力側を鳴動停止信号線EBにより非常放送装置20に接続し、更に、階別移報部76及び鳴動停止受信部80のコモン側は共通接続した後にコモン線Cにより非常放送装置20に接続している。
【0113】
制御部72は、伝送部74による階別伝送信号の受信を検出した場合、階別伝送信号の階別信号への変換に相当する動作として、対応する階の階別移報部76のリレーを作動し、そのリレー接点を閉じて階別信号を非常放送装置20に送信する制御を行う。この点は、伝送部74により火災確認伝送信号の受信を検出した場合も同様あり、火災移報部78のリレー作動によりリレー接点を閉じて、火災確認信号を非常放送装置20に送信する制御を行う。
【0114】
また、制御部72は、鳴動停止受信部80による連動停止信号の受信を検出した場合、鳴動停止情報を含むパケット形式の鳴動停止伝送信号に変換し、伝送部74に指示して祖送信する制御を行う。
【0115】
また、制御部72は、第1伝送試験として、第1伝送アダプタ30から伝送試験情報を含むパケット形式の伝送試験信号を受信した場合、試験応答情報を含むパケット形式の伝送試験応答信号を生成して第1伝送アダプタ30に送信する制御を行う。
【0116】
また、制御部72は、第2伝送試験として、エラーレート測定指示情報を含むパケット形式の伝送試験信号を例えば第1伝送アダプタ30から連続して例えば100回に亘り受信した場合、そのエラー回数を示すエラーレートを検出し、エラーレートを含むパケット形式のエラーレート通知信号を生成して第1伝送アダプタ30に送信する制御を行う。
【0117】
[非常放送装置の機能構成]
図6に示すように、非常放送装置20は制御部82を備え、制御部82は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0118】
制御部82に対しては、階別受信部84、火災受信部86、マイクスイッチ88、操作表示部90、放送音源部92、マイク94、放送入力選択部96及び放送出力選択部98を設けている。
【0119】
階別受信部84は、図3に示した第1伝送アダプタ30の階別受信部62と同様であり、第2伝送アダプタ32からの階別信号線EL1ELnに対応して設け、階別信号線EL1ELnを介して第2伝送アダプタ32に設けた階別移報部76のリレー接点間に所定の電圧を印加しており、階別移報部76のリレーの作動でリレー接点が閉じると信号電流が流れ、これによる信号線間の受信電圧を制御部82に出力して階別信号の受信を検出させる。
【0120】
火災受信部86も階別受信部84と同様であり、火災確認信号線EF+,EF−を介して第2伝送アダプタ32に設けた火災移報部78のリレー接点間に所定の電圧を印加しており、リレーの作動でリレー接点が閉じると信号電流が流れ、これによる信号線間の電受信圧を制御部82に出力して火災確認信号の受信を検出させる。
マイクスイッチ88は、係員が避難誘導等の非常放送を行うために操作パネルに設けたマイク94をピックアップしているあいだオンし、第2伝送アダプタ32側に鳴動停止信号を無電圧接点信号として移報送信する。
【0121】
操作表示部90には非常放送スイッチ、回線選択スイッチ、非火災放送スイッチ、鳴動停止スイッチ等の操作部に加え、これに対応した表示部を設けている。放送音源部92には発報放送、火災放送、非火災放送、地震や盗難等の緊急放送、訓練放送等の放送メッセージ情報を記憶しており、制御部82から指示を受けた放送メッセージ情報を読み出しアナログ放送信号に変換して出力する。
【0122】
マイク94は非常放送装置20の操作パネルに設けており、必要に応じて防災センターの係員が避難誘導などを指示する放送入力を行うことを可能とする。
【0123】
放送入力選択部96は放送音源部92、マイク94、外部に設けた卓上マイク装置22、音源装置24及び緊急地震速報装置26を入力接続し、制御部82の指示により特定の放送入力を選択して放送出力選択部98に出力する。
【0124】
放送出力選択部98は放送入力選択部96から入力した放送信号を、制御部82の指示によりスピーカ回線SL1〜SLnの中から選択した回線に出力してスピーカから放送出力させる。また、放送出力選択部98にはパワーアンプを設けており、必要とするスピーカの音圧出力を可能とする。パワーアンプはスピーカ回線単位に設けても良いし、所定数のスピーカ回線をグループ化し、グループ単位に設けても良い。
【0125】
制御部82は、階別信号線EL1ELnに対応して設けた階別受信部84の何れかによる階別信号の受信を検出した場合、放送音源部92に指示して発報放送メッセージ情報を再生出力させ、放送入力選択部96に指示して放送音源部92からの放送入力を選択させ、更に、放送出力選択部98に指示して火災発生階と直上階のスピーカ回線、例えばスピーカ回線SL1,SL2を選択して発報放送信号を出力させ、スピーカ回線SL1,SL2に接続しているスピーカから発報放送を出力させる制御を行う。
【0126】
また、制御部82は、発報放送後に、火災受信部86による火災確認信号の受信を検出した場合、放送音源部92に指示して火災放送メッセージ情報を再生出力させ、放送入力選択部96及び放送出力選択部98を介して火災発生階と直上階の例えばスピーカ回線SL1,SL2に接続しているスピーカから火災放送を出力させる制御を行う。
【0127】
更に、制御部82は、火災放送から予め設定した一定時間の経過を検出した場合、放送出力選択部98に指示し、全てのスピーカ回線SL1〜SLnを選択することで一斉放送に切替える制御を行う。
【0128】
一方、制御部82は、発報放送後に、非火災の現場確認に基づく非火災放送スイッチの操作による非火災放送の受付けを検出した場合、放送音源部92に指示して非火災放送メッセージ情報を再生出力させ、放送入力選択部96及び放送出力選択部98を介して火災発生階と直上階の例えばスピーカ回線SL1,SL2に接続しているスピーカから非火災放送を放送出力させる制御を行う。
【0129】
また、制御部82は、緊急地震速報装置26による緊急地震速報受信を検出した場合、緊急地震放送を一斉放送する制御を行う。更に、制御部82は、日常的な業務放送としてチャイム、BGM、呼出しといった一般業務放送の制御を行う。
【0130】
[火災受信機から非常放送装置への伝送系統]
図7は火災受信機から非常放送装置までの伝送系統を1つの階別信号の伝送を例にとって示した説明図である。
【0131】
図7において、火災受信機14で火災感知器の発報受信が検出されると階別移報部48に設けたリレー100を作動してリレー接点102を閉じる。リレー接点102には第1伝送アダプタ30の階別受信部62より所定電圧+Vcが階別信号線ELとコモン線Cを介して印加されており、リレー接点102が閉じると信号電流が流れ、階別受信部62に設けた電圧検出部104が受信電圧の低下を検出して制御部60に出力する。制御部60は受信電圧の低下から階別信号の受信を検出し、伝送部70に指示して階別情報を含むパケット形式の階別伝送信号を生成して送信させる。
【0132】
第2伝送アダプタ32の制御部72は、伝送部74による階別伝送信号の受信を検出すると、階別移報部76に設けたリレー106を作動してリレー接点108を閉じる。リレー接点108には、非常放送装置20の階別受信部84より所定電圧+Vcが階別信号線ELとコモン線Cを介して印加されており、リレー接点108が閉じると信号電流が流れ、階別受信部84に設けた電圧検出部110が受信電圧の低下を検出(受信電流の増加検出でも良い)して制御部82に出力する。制御部82は受信電圧の低下から階別信号の受信を検出し、火災発生階および直上階のスピーカから発報放送を出力させる制御を行う。
【0133】
火災受信機14から非常放送装置20への信号伝送は、他の階別信号及び火災確認信号についても、同様となる。
【0134】
このように火災受信機14から非常放送装置20へ送信する多数の信号を、信号数に応じた数の信号配線によらず、第1伝送アダプタ30と第2伝送アダプタ32とを接続する例えば耐熱カテゴリー5EのLANケーブル1本の伝送路34により伝送することを可能とし、火災受信機14と非常放送装置20との間の配線収納スペースを低減し、配線の引き回しも簡単にすることを可能とする。
【0135】
[伝送部を一体化した防災設備]
図8は火災受信機と非常放送装置に伝送部を一体に設けて伝送化した防災設備の機能構成を示した説明図であり、火災受信機と非常放送装置に伝送部を一体に設けることで、図1に示した伝送アダプタを用いた伝送化に比べ、更に、火災報知設備と非常放送設備との間の伝送接続を簡単にすることができる。
【0136】
(火災受信機の機能構成)
図8に示すように、火災受信機14は受信制御部42を備え、受信制御部42は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0137】
受信制御部42に対しては発報受信部44、表示部45、操作部46、警報部47を設けており、これらは図3の実施形態と同じになる。また、受信制御部42に対しては伝送部112を設けており、伝送部112はLANケーブル等の伝送路34を介して非常放送装置20に接続している。
【0138】
伝送部112は、LANのプロトコルとして知られた物理的な規格であるイーサネット(登録商標)とTCP/IPプロトコル(IP層とTCP層の規格)の組合せによる伝送制御を行う。伝送路34としては、1000BASE−Tに対応した耐熱仕様のカテゴリー5E(エンハンスドカテゴリー5)以上のLANケーブルを使用する。
【0139】
受信制御部42は、感知器回線L1〜Lnに対応した発報受信部44の何れかによる発報信号の受信出力から火災発報を検出した場合、表示部45及び警報部47に指示して代表火災表示や火災地区表示を行うと共に火災警報音を出力させる制御を行う。
【0140】
また、受信制御部42は、火災発報を検出した場合、火災発報を検出した感知器回線に対応した階別情報及び発報情報を含むパケット形式の階別伝送信号(発報区域識別伝送信号)を生成し、伝送部112に指示して非常放送装置20に送信する制御を行う。
【0141】
また、受信制御部42は、火災発報を検出した後に、発信信号の受信又は火災確認スイッチの操作等から火災確認を検出した場合、火災確認情報を含むパケット形式の火災確認伝送信号を生成し、伝送部112に指示して非常放送装置20に送信する制御を行う。
【0142】
また、受信制御部42は、火災検知に基づく地区ベル鳴動中に、伝送部112を介して非常放送装置20からの鳴動停止伝送信号の受信を検出している間、地区ベル鳴動を停止させる制御を行う。
【0143】
また、受信制御部42は、所定の周期毎に、例えば1週間(7日間)に1回の周期で、感知器回線L1〜Lnに対応して設けた発報受信部44の異常を確認したり、予備電源電圧が正常かを確認する等の所定の自動試験を行っており、異常を検知した場合は、表示部45に設けた障害代表灯を点灯すると共に障害内容を示す表示灯を点灯し、更に、警報部47から障害警報音を間欠的に出力させる制御を行う。
【0144】
また、受信制御部42は、定期的に行う自動試験に連動して所定の伝送試験制御を行う。この受信制御部42による伝送試験中は、階別伝送信号、火災確認信号及び非火災確認伝送信号の送信を停止する制御を行い、伝送試験に伴う階別信号、火災確認伝送信号及び非火災確認伝送信号の誤送信による誤放送を防止可能とする。
【0145】
また、受信制御部42は、伝送試験に基づき伝送障害を検出した場合、表示部45に設けた障害代表灯を点灯すると共に伝送障害表示灯を点灯し、更に、警報部47から障害警報音を間欠的に出力させる制御を行う。なお、伝送障害の警報出力は、表示や警報音以外に、音声メッセージを出力したり、表示部45のディスプレイに文字表示しても良い。
【0146】
また、受信制御部42は、伝送試験の開始から所定時間を経過すると伝送試験を終了する制御を行う。なお、受信制御部42は、伝送試験中に発報受信部44による発報受信を検出した場合、強制的に伝送試験を終了し、階別伝送信号及び火災確認伝送信号の送信並びに鳴動停止伝送信号の受信を可能とする。
【0147】
(伝送試験)
受信制御部42は、第1伝送試験制御として、試験情報を含むパケット形式の伝送試験信号を生成し、伝送部112に指示して伝送試験信号を、伝送路34を介して非常放送装置20に送信し、伝送試験信号の送信から試験応答に十分な所定時間内に非常放送装置20が送信した試験応答情報を含むパケット形式の伝送試験応答信号の受信を検出した場合に伝送系統の正常を検出する制御を行う。
【0148】
これに対し受信制御部42は、伝送試験信号の送信から試験応答に十分な所定時間内に非常放送装置20からの伝送試験応答信号の受信を検出しない場合は伝送系統の異常を検出し、伝送障害警報を出力させる制御を行う。
【0149】
また、受信制御部42は、第2伝送試験としてエラーレートを測定する制御を行う。エラーレートを測定するため受信制御部42は、エラーレート測定指示情報を含むパケット形式の伝送試験信号を生成し、伝送部112に指示して伝送試験信号を例えば100回に亘り非常放送装置20に繰り返し送信し、非常放送装置20からエラー回数を示すエラーレートを含むパケット形式のエラーレート通知信号を受信した場合、受信したエラーレートが所定の閾値以上の場合に伝送系統の異常を検出し、伝送障害警報を出力させる制御を行う。
【0150】
この受信制御部42による第1伝送試験と第2伝送試験は、両方行ってもよいし、何れか一方を行うようにしても良い。また、これ以外にS/N比や受信電圧を検出して評価する適宜の伝送試験を行うようにしても良い。
【0151】
(非常放送装置の機能構成)
図8に示すように、非常放送装置20は制御部82を備え、制御部82は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0152】
制御部82に対しては、操作表示部90、放送音源部92、マイクスイッチ88を備えたマイク94、放送入力選択部96及び放送出力選択部98を設けており、これらは図6の実施形態と同じになる。
【0153】
また、制御部82に対しては伝送部114を設け、火災受信機14と伝送路34により接続している。伝送部114は、火災受信機14の伝送部112と同様に、LANのプロトコルとして知られた物理的な規格であるイーサネット(登録商標)とTCP/IPプロトコル(IP層とTCP層の規格)の組合せによる伝送制御を行う。
【0154】
制御部82は、伝送部114による階別信号線EL1ELnに対応した階別情報と発報情報を含むパケット形式の階別伝送信号の受信を検出した場合、放送音源部92に指示して発報放送メッセージ情報を再生出力させ、放送入力選択部96に指示して放送音源部92からの放送入力を選択させ、更に、放送出力選択部98に指示して火災発生階と直上階のスピーカ回線、例えばスピーカ回線SL1,SL2を選択して発報放送信号を出力させ、スピーカ回線SL1,SL2に接続しているスピーカから発報放送を出力させる制御を行う。
【0155】
また、制御部82は、発報放送後に、伝送部114による火災確認情報を含むパケット形式の火災確認伝送信号の受信を検出した場合、放送音源部92に指示して火災放送メッセージ情報を再生出力させ、放送入力選択部96及び放送出力選択部98を介して火災発生階と直上階の例えばスピーカ回線SL1,SL2に接続しているスピーカから火災放送を出力させる制御を行う。
【0156】
更に、制御部82は、火災放送から予め設定した一定時間の経過を検出した場合、放送出力選択部98に指示し、全てのスピーカ回線SL1〜SLnを選択することで一斉放送に切替える制御を行う。
【0157】
また、制御部82は、火災放送中に、非火災の現場確認に基づく非火災放送スイッチの操作による非火災放送の受付けを検出した場合、放送音源部92に指示して非火災放送メッセージ情報を再生出力させ、放送入力選択部96及び放送出力選択部98を介して火災発生階と直上階の例えばスピーカ回線SL1,SL2に接続しているスピーカから非火災放送を放送出力させる制御を行う。
【0158】
また、制御部82は、火災報知設備10の地区ベル鳴動中にマイク94をピックアップして非常放送を行う場合のマイクスイッチ88のオンを検出した場合、鳴動停止情報を含む所定のパケット形式の鳴動停止伝送信号を生成し、これを伝送部114に指示して送信させる制御を行う。
【0159】
また、制御部82は、緊急地震速報装置26による緊急地震速報受信を検出した場合、緊急地震放送を一斉放送する制御を行う。更に、制御部82は、日常的な業務放送としてチャイム、BGM、呼出しといった一般業務放送の制御を行う。
【0160】
また、制御部82は、第1伝送試験として、伝送部114による伝送試験情報を含むパケット形式の伝送試験信号を受信した場合、伝送試験応答情報を含むパケット形式の伝送試験応答信号を生成して火災受信機14に送信する制御を行う。
【0161】
また、制御部82は、第2伝送試験として、伝送部114によるエラーレート測定指示情報を含むパケット形式の伝送試験信号を例えば連続して例えば100回に亘り受信した場合、そのエラー回数を示すエラーレートを検出し、エラーレートを含むパケット形式のエラーレート通知信号を生成して火災受信機14に送信する制御を行う。
【0162】
[本発明の変形例]
(伝送試験のタイミング)
上記の実施形態は、受信機で所定周期ごとに行う自動試験に連動して伝送試験を行う場合を例にとっているが、自動試験とは連動せずに、自動試験とは異なる所定の周期ごとに伝送試験を行うようにしても良い。
【0163】
(伝送方式)
上記の実施形態は、第1伝送アダプタと第2伝送アダプタとの間をイーサネット(登録商標)とTCP/IPの組合せにより8芯の信号線を含むLANケーブルを伝送路としてパラレル伝送する場合を例にとっているが、一対の上り回線と一対の下り回線からなる4芯2組の信号線を含むLANケーブルを伝送路としてシリアル伝送とする様にしても良い。また第1伝送アダプタと第2伝送アダプタとの伝送は、必要に応じて適宜のプロトコルを適用することを可能とする。
【0164】
(信号移報)
上記の実施形態は、火災受信機から非常放送装置に連動信号を伝送する場合を例にとっているが、非常放送装置以外の外部装置に連動信号を伝送する場合にも、同様に、LANケーブル等の1本の伝送路で接続した第1伝送アダプタと第2伝送アダプタを介して連動信号を伝送するようにしても良い。
【0165】
(連動停止検出)
上記の実施形態は、火災受信機の移報部のコモン側を共通接続したコモンラインに連動停止スイッチを設け、このコモンラインに第1伝送アダプタに設けた連動停止検出部から断線監視電流を流して連動停止スイッチの開放による連動停止を検出するようにしているが、火災受信機の連動停止に伴い連動停止移報信号を専用の移報部から第1伝送アダプタに送信して伝送を停止するようにしても良い。
【0166】
(無線伝送)
上記の実施形態は、第1伝送アダプタと第2伝送アダプタとの間をLANケーブル等の伝送路で接続した有線伝送としているが、無線伝送としても良い。この無線伝送としては、例えば400MHz帯の特定小電力無線、5GHz帯や2.4GHz帯を使用した特定小電力無線、920MHz帯を使用した特定小電力無線、或いはイーサネット(登録商標)による無線ネットワークをベースにしたIEEE802.11に準拠したWiFi等の無線LANとすれば良い。
【0167】
この点は火災受信機と非常放送装置に伝送部を設けてLANケーブル等の伝送路で接続した有線伝送についても、同様に、無線伝送としても良い。
【0168】
(火災受信機)
上記の実施形態は、回線単位に火災を検知して警報するP型受信機を例にとるものであったが、火災感知器や発信機等にアドレスを設定して感知器単位及び発信機単位に火災を検知して警報するR型受信機についても同様に適用できる。
【0169】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0170】
10:火災報知設備
12:非常放送設備
14:火災受信機
16:火災感知器
18:発信機
20:非常放送装置
22:卓上マイク装置
24:音源装置
26:緊急地震速報装置
28:スピーカ
30:第1伝送アダプタ
32:第2伝送アダプタ
34:伝送路
35,40:配線コネクタ
36,38:伝送コネクタ
42:受信制御部
44:発報受信部
48,76:階別移報部
50,78:火災移報部
52,80:鳴動停止受信部
54:伝送試験移報部
55:伝送障害受信部
56:連動停止スイッチ
58:コモンライン
60,72,82:制御部
62,84:階別受信部
64,86:火災受信部
65:鳴動停止移報部
66:伝送試験受信部
68:伝送障害通知部
70,74,112,114:伝送部
88:マイクスイッチ
90:操作表示部
92:放送音源部
94:マイク
96:放送入力選択部
98:放送出力選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8