(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電子部品は、コアの内部にコイルの少なくとも一部が埋め込まれたインダクタンス素子であって、当該インダクタンス素子が備えるコアは、周波数100kHzのときの透磁率が20以上であって、周波数100kHz、最大磁束密度100mTの条件で測定されたコアロスが800kW/m3以下である、請求項1に記載の電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、電子部品が、
図1および2に示されるインダクタンス素子である場合を具体例として説明する。
【0016】
1.インダクタンス素子
図1は、本発明の一実施形態に係るインダクタンス素子1の全体構成を一部透視して示す斜視図である。
図1では、インダクタンス素子1の下面(実装面)が上向きの姿勢で示されている。
図2は、
図1に示すインダクタンス素子1を実装基板10上に実装した状態を示す部分正面図である。
【0017】
図1に示すインダクタンス素子1は、圧粉コア3と、圧粉コア3の内部に埋め込まれたコイルとしての空芯コイル2と、溶接によって空芯コイル2に電気的に接続される一対の端子部4とを備えて構成される。
【0018】
空芯コイル2は、絶縁被膜された導線を螺旋状に巻回して形成されたものである。空芯コイル2は、巻回部2aと巻回部2aから引き出された引出端部2b、2bとを有して構成される。空芯コイル2の巻き数は必要なインダクタンスに応じて適宜設定される。
【0019】
図1に示すように、圧粉コア3において、実装基板に対する実装面3aに、端子部4の一部を収納するための収納凹部30が形成されている。収納凹部30は、実装面3aの両側に形成されており、圧粉コア3の側面3b、3cに向けて解放されて形成されている。
圧粉コア3の側面3b、3cから突出する端子部4の一部が実装面3aに向けて折り曲げられて、収納凹部30の内部に収納される。
【0020】
端子部4は、薄板状のCu基材で形成されている。端子部4は圧粉コア3の内部に埋設されて空芯コイル2の引出端部2b、2bに電気的に接続される接続端部40と、圧粉コア3の外面に露出し、前記圧粉コア3の側面3b、3cから実装面3aにかけて順に折り曲げ形成される第1曲折部42a及び第2曲折部42bとを有して構成される。接続端部40は、空芯コイル2に溶接される溶接部である。第1曲折部42aと第2曲折部42bは、実装基板10に対して半田接合される半田接合部である。半田接合部は、端子部4のうちの圧粉コア3から露出している部分であって、少なくとも圧粉コア3の外側に向けられる表面を意味している。
【0021】
端子部4の接続端部40と空芯コイル2の引出端部2bとは、抵抗溶接によって接合されている。
【0022】
図2に示すように、インダクタンス素子1は、実装基板10上に実装される。
実装基板10の表面には外部回路と導通する導体パターンが形成され、この導体パターンの一部によって、インダクタンス素子1を実装するための一対のランド部11が形成されている。
【0023】
図2に示すように、インダクタンス素子1においては、実装面3aが実装基板10側に向けられて、圧粉コア3から外部に露出している第1曲折部42aと第2曲折部42bが実装基板10のランド部11との間で半田層12にて接合される。
【0024】
ハンダ付け工程は、ランド部11にペースト状の半田が印刷工程で塗布された後に、ランド部11に第2の曲折部41aが対面するようにしてインダクタンス素子1が実装され、加熱工程で半田が溶融する。
図2に示すように、第2曲折部42bは実装基板10のランド部11に対向し、第1曲折部42aはインダクタンス素子1の側面3b、3cに露出しているため、フィレット状の半田層12は、ランド部11に固着するとともに、半田接合部である第2曲折部42bと第1曲折部42aの双方の表面に十分に広がって固着される。
【0025】
図1および2に示されるようなインダクタンス素子1は、2つの端子部4において実装基板10に実装されている。このため、インダクタンス素子1の熱膨張率と実装基板10の熱膨張率との相違が大きい場合には、インダクタンス素子1および実装基板10を備える製品の製造過程や使用過程で加熱・冷却されると、この熱膨張率の相違に基づいてインダクタンス素子1に力学的負荷が与えられる。インダクタンス素子1の機械強度が低い場合には、この負荷によってインダクタンス素子1が破損する場合もある。特にインダクタンス素子10の成形体部分(圧粉コア3)が、面積が最小の断面である最小断面に沿って切断して得られる最小断面積が、例えば10mm
2以下と小さくなってくると、力学的負荷の影響は顕著となってくる。しかしながら、本発明の一実施形態に係る電子部品は、後述する抗折強度P1が20N/mm
2以上であるため、上記の熱履歴に起因する破損が生じにくい。
【0026】
2.成形体部分
本発明の一実施形態に係るインダクタンス素子1は、磁性を有する粉粒体を含む成形体からなる部分(成形体部分)を備える。
図1に示されるインダクタンス素子1では、圧粉コア3が成形体部分に相当する。
【0027】
成形体部分(圧粉コア3)に含有される磁性を有する粉粒体の組成は限定されない。かかる粉粒体の具体例として、軟磁性材料を含有する軟磁性粉末が挙げられる。軟磁性粉末の具体例として、Fe基非晶質合金粉末、Fe−Ni系合金粉、Fe−Si系合金粉末、純鉄粉末(高純度鉄粉)等の軟磁性合金粉末や、フェライト等の酸化物軟磁性粉末などが挙げられる。Fe基非晶質合金の一種であるFe−P−C−B−Si系の非晶質合金は、その組成がFe
100-a-b-c-x-y-z-tNi
aSn
bCr
cP
xC
yB
zSi
tで示され、0at%≦a≦10at%、0at%≦b≦3at%、0at%≦c≦6at%、3.0at%≦x≦10.8at%、2.0at%≦y≦9.8at%、0at%≦z≦8.0at%、0at%≦t≦5.0at%であることが好ましい。
【0028】
磁性を有する粉粒体は、磁性材料のみから構成されていてもよいし、磁性材料と当該材料以外の材料との混合体であってもよい。そのような場合の具体例として、合金系の磁性材料からなる粉体を、樹脂系材料を用いて造粒した造粒粉が挙げられる。
【0029】
磁性を有する粉粒体の粒径は限定されない。基本的には粒径が小さいほど成形性が高くなる傾向があるが、粒径が過度小さくなると、凝集の問題が顕在化しやすくなったり、酸化など化学的安定性に関する問題が顕在化しやすくなったりする。したがって、磁性を有する粉粒体は平均粒径が3μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上60μm以下であることがより好ましく、8μm以上30μm以下であることが特に好ましい。本明細書において、粉粒体「平均粒径」とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて求めた粉粒体の粒度分布における積算値50%に対応する粒径(メジアン径D50)を意味する。
【0030】
成形体部分(圧粉コア3)を形成するための製造方法は限定されない。成形体部分(圧粉コア3)を与える原材料(本明細書において、ことわりのない「原材料」は、成形体部分(圧粉コア3)を与える原材料を意味する。)が、バインダー成分を含有し、このバインダー成分やバインダー成分に由来する成分(本明細書において、これらを「バインダー系成分」と総称する場合もある。)によって、近接する磁性を有する粉粒体同士を結着させてもよい。
【0031】
バインダー成分の具体例として、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、アクリル樹脂等の液状または粉末状の樹脂、ゴム等の有機系材料;水ガラス(Na
2O−SiO
2)、酸化物ガラス粉末(Na
2O−B
2O
3−SiO
2、PbO−B
2O
3−SiO
2、PbO−BaO−SiO
2、Na
2O−B
2O
3−ZnO、CaO−BaO−SiO
2、Al
2O
3−B
2O
3−SiO
2、B
2O
3−SiO
2)、ゾルゲル法により生成するガラス状物質(SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2等を主成分とするもの)等の無機系材料などを挙げることができる。バインダー成分は有機系材料と無機系材料との混合体であってもよい。
【0032】
原材料がバインダー成分を含有する場合において、その含有量は限定されない。成形体部分(圧粉コア3)が所望の特性を有するように適宜設定すればよい。
【0033】
原材料は、磁性を有する粉粒体の流動性を調整することなどを目的として、潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等を含有してもよい。原材料が潤滑剤を含有する場合において、その含有量は限定されない。成形体部分(圧粉コア3)が所望の特性を有するように適宜設定すればよい。
【0034】
成形体部分の製造方法は限定されない。成形処理として、
図1および2に示されるインダクタンス素子1が備える圧粉コア3のように圧粉成形を行ってもよいし、原材料に含まれるバインダーを硬化させる処理を行ってもよい。成形処理により得た製造物(成形製造物)をそのまま成形体部分としてもよいし、成形処理により磁性を有する粉粒体内部に生じた応力を緩和することなどを目的とする熱処理を成形製造物に施して、成形体部分を得てもよい。
【0035】
3.機械特性
本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)は、次の機械特性を備える。
【0036】
(1)抗折強度P1
本明細書において、抗折強度P1(単位:N/mm
2)とは、1.3mmの開口幅を有するスリット上に載置された電子部品(インダクタンス素子1)に、R0.5mmのブレード状圧子を、最小断面に沿って最小断面の短軸方向に平行な方向に圧接して、圧子の負荷(単位:N)の圧子の変位量(単位:μm)依存性を示す負荷−変位曲線を測定したときに、この負荷−変位曲線における負荷の最大値(単位:N)を、最小断面積(単位:mm
2)で除した値を意味する。抗折強度P1は、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)の力に対する許容性の程度を示している。
【0037】
図4は、実施例4において製造されたインダクタンス素子を試験例1に基づいて試験を行うことにより得られた負荷−変位曲線に、負荷の最大値(0.0734kN)を示したものである。実施例4において製造したインダクタンス素子の最小断面積は2.4mm
2であるから、実施例4における抗折強度P1は30.4N/mm
2と算出される。
【0038】
本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)は、上記の抗折強度P1が20N/mm
2以上45N/mm
2以下である。本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)の抗折強度P1が20N/mm
2以上であることにより、磁性体の粉粒体を含む成形体の機械強度の過度の低下が生じにくくなる。それゆえ、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)は欠け、破損、破断などの問題が生じにくい。また、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)の抗折強度P1が45N/mm
2以下であることにより、原材料を成形した際に生じた磁歪の影響が緩和されやすくなる。それゆえ、電子部品(インダクタンス素子1)の磁気特性を向上させる観点から、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)が備える成形体部分(圧粉コア3)は磁気特性が低下しにくい。電子部品(インダクタンス素子1)の機械特性および成形体部分(圧粉コア3)の磁気特性を高度に両立させる観点から、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)の抗折強度P1は、25N/mm
2以上40N/mm
2以下であることが好ましい。
【0039】
(2)弾性係数P2
本明細書において、弾性係数P2(単位:N/mm
2)とは、上記の負荷−変位曲線において、抗折強度P1の10%の値を与える圧子の変位量の最小値d0(単位:mm)、抗折強度P1の値の70%の値を与える圧子の変位量の最小値d1(単位:mm)および最小断面の短軸長t(単位:mm)を用いて、下記式(1)で表される値を意味する。
P2=0.6×P1/{(d1−d0)/t} (1)
【0040】
弾性係数P2は、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)の、破壊に至る前の状態における、力に対する応答性の程度を示している。この応答性の程度を適切に表現できるように、弾性係数P2の算出にあたり、上記の負荷−変位曲線における抗折強度P1の10%から70%の範囲の結果を用いることとしている。
【0041】
図4に示される負荷−変位曲線から算出される抗折強度P1は30.4N/mm
2であるから、実施例4において製造したインダクタンス素子について、抗折強度P1の10%の値は3.04N/mm
2(負荷は0.0074kN)であり、抗折強度P1の70%の値は21.3N/mm
2(負荷は0.0517kN)である。
図5に示されるように、これらの抗折強度を与える変位量の最小値d0、d1は、それぞれ、0.0095mm、0.0185mmとなる。これらの値と上記式(1)とから、実施例4において製造されたインダクタンス素子における弾性係数P2は2.2kN/mm
2と算出される。
【0042】
本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)は、上記の弾性係数P2が1kN/mm
2以上3.5kN/mm
2以下である。詳細な理由は不明であるが、当該弾性係数P2が3.5kN/mm
2以下であることにより、成形体部分(圧粉コア3)の磁気特性を高めることが可能となり、その磁気特性に基づく電子部品(インダクタンス素子1)の部品特性を向上させることが可能となる。本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)の弾性係数P2が3.5kN/mm
2以下である場合には、電子部品(インダクタンス素子1)の成形体部分(圧粉コア3)に含有される磁性を有する粉粒体が応力を緩和しやすい状態となっている可能性がある。電子部品(インダクタンス素子1)が備える成形体部分(圧粉コア3)の磁気特性をより安定的に向上させる観点から、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)の弾性係数P2は3.3kN/mm
2以下であることが好ましく、3.0kN/mm
2以下であることがより好ましい。本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)の弾性係数P2が1kN/mm
2以上であることにより、電子部品(インダクタンス素子1)の形状安定性を確保することが容易となる。
【0043】
上記の抗折強度P1および弾性係数P2の少なくとも一方に支配的な影響を与える部品要素(以下、「支配的部品要素」ともいう。)は、電子部品(インダクタンス素子1)を構成する要素のうち、電子部品(インダクタンス素子1)が備える成形体部分(圧粉コア3)であってもよい。本発明の一実施形態に係る電子部品が、インダクタンス素子1のように磁性体の粉粒体を含む成形体と金属系材料(コイル2、端子部4)とからなる場合には、成形体部分(圧粉コア3)が上記の支配的部品要素となる。
【0044】
4.磁気特性
本発明の一実施形態に係る電子部品がインダクタンス素子(具体例がインダクタンス素子1である。)である場合には、インダクタンス素子が備えるコア(具体例が圧粉コア3である。)は、周波数100kHzのときの透磁率が20以上であって、周波数100kHz、最大磁束密度100mTの条件で測定されたコアロスが800kW/m
3以下であることが好ましい。このような磁気特性を有していることにより、本発明の一実施形態に係る電子部品はインダクタンス素子として有効に機能することが可能となる。本発明の一実施形態に係る電子部品がインダクタンス素子としてより有効に機能することを可能とする観点から、インダクタンス素子が備えるコアは、周波数100kHzのときの透磁率は20以上であることが好ましく、25以上であることが特に好ましい。同様の観点から、インダクタンス素子が備えるコアは、周波数100kHz、最大磁束密度100mTの条件で測定されたコアロスは700kW/m
3以下であることが好ましく、600kW/m
3以下であることが特に好ましい。
【0045】
5.形状、構造
本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)は、面積が最小の断面である最小断面に沿って切断して得られる最小断面積が10mm
2以下であってもよい。電子部品の最小断面積が10mm
2以下である場合には、最小断面における成形体からなる部分の厚さが、薄い部分では100μmオーダーとなることがある。このようなときには、磁性を有する粉粒体同士を結合しているバインダー成分の絶対的な量が少なくなってくる等の影響で、電子部品の機械強度が低下しやすい。しかしながら、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)は、上記のような機械特性を有するため、電子部品の強度の低下を抑制しつつ、電子部品(インダクタンス素子1)が備える成形体部分(圧粉コア3)の磁気特性に基づく部品特性を高めることが可能となる。本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)が上記のような機械特性を有する場合には、最小断面積は7mm
2以下であってもよいし、5mm
2以下であってもよいし、2.5mm
2以下であってもよい。
【0046】
本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)は、外装コーティングを備えてもよい。外装コーティングを備える場合には、その組成や構造を変化させることにより、上記の抗折強度P1および弾性係数P2を制御することができる場合もある。例えば、外装コーティングの付着量を増やすことによって、上記の抗折強度P1および弾性係数P2を向上させることができる場合もある。本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)が外装コーティングを備える場合には、当該電子部品(インダクタンス素子1)の抗折強度P1は、外装コーティング層が設けられていない場合との対比で2倍以上であることが好ましい。
【0047】
本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)が外装コーティングを備える場合において、外装コーティングの種類は限定されない。例えば、成形体からなる表面に硬化性材料を塗布し、塗布した材料を硬化させることによって得ることができる。この塗布された硬化性材料は、少なくとも一部が成形体の内部に浸透してもよく、この場合には、外装コーティングは含浸コーティングとしての側面を有する。
【0048】
6.機械特性の制御方法
上記の本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)の機械特性、すなわち、抗折強度P1および弾性係数P2の制御方法は限定されない。インダクタンス素子1のように、支配的部品要素が成形体部分(圧粉コア3)を含む場合には、成形体部分(圧粉コア3)の製造過程を変化させることにより電子部品(インダクタンス素子1)の機械特性の制御をすることができる。
【0049】
以下、成形体部分(圧粉コア3)が、磁性を有する粉粒体とバインダーとを含む原材料を加圧成形する工程により製造される場合を具体例として、電子部品(インダクタンス素子1)の機械特性を、製造過程を通じて制御する方法について説明する。
【0050】
上記の制御方法の一つとして、前述のように、外装コーティングを用いる方法が挙げられる。外装コーティングの強度を高める(具体的には、外装コーティングの付着量を増加させることにより実現される場合がある。)ことにより、抗折強度P1を高めることが可能となる。ただし、外装コーティングの強度を過度に高めると、弾性係数P2も高くなりすぎて、成形体部分(圧粉コア3)の磁気特性を高めることが困難となってしまう場合もある。
【0051】
上記の制御方法の別の一つとして、成形体部分(圧粉コア3)を構成する成形体の原材料に含有されるバインダーの種類や含有量を変化させる方法が挙げられる。これらを変化させることにより、原材料から得られた成形体のバインダー系成分の含有量や性質に影響を与えて、電子部品(インダクタンス素子1)の機械特性の変化をもたらすことが可能である。原材料を加圧成形した後、応力緩和の目的などにより熱処理を行って成形体部分(圧粉コア3)を得る場合には、バインダー系成分の熱物性(熱可塑性材料か熱硬化性材料化)、熱処理温度とバインダーの分解温度の関係などによって、バインダー系成分の含有量や性質を変化させることができる場合もある。
【0052】
上記の制御方法のさらに別の一つとして、製造条件を変化させて、電子部品(インダクタンス素子1)の機械特性の変化させる方法が挙げられる。具体的には、加圧成形条件(加圧力、加圧時間等)、熱処理をさらに行う場合には加熱条件(加熱温度、加熱時間等)などが変更可能な条件として挙げられる。
【0053】
電子部品(インダクタンス素子1)の機械特性を制御するにあたり、上記の3つの方法は単独で用いてもよいし、複数の方法(上記の3つ以外の方法も含む。)を組み合わせてもよい。
【0054】
7.電子機器
上記のように、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)は、その最少断面積が10mm
2以下となるような小型であっても、その製造過程において、電子部品(インダクタンス素子1)の落下、他の部材との衝突などに起因する外力が付与された場合に、成形体部分(圧粉コア3)の欠け、破損、破断などの不具合が生じにくい。また、電子部品(インダクタンス素子1)を基板(具体例としてガラスエポキシ基板が挙げられる。)に実装する際に、電子部品と基板との熱膨張率の差に起因して外力が付与されても、成形体部分(圧粉コア3)の欠け、破損、破断などの不具合が生じにくい。したがって、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)が実装された電子機器は小型化が容易であり、電子部品(インダクタンス素子1)に由来する初期不良が生じにくい。また、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)が実装された電子機器は、携帯機器など取扱い中に落下など外力が付与されやすいものであっても、電子機器に実装される電子部品(インダクタンス素子1)の破損・脱落などに起因する動作不良が生じにくい。すなわち、本発明の一実施形態に係る電子部品(インダクタンス素子1)が実装された電子機器は、取扱い性に優れる。
【0055】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)Fe基非晶質合金粉末の作製
水アトマイズ法を用いて、組成がFe
74.43at%Cr
1.96at%P
9.04at%C
2.16at%B
7.54at%Si
4.87at%になるように秤量して得られた非晶質軟磁性粉末を軟磁性粉末として作製した。得られた軟磁性粉末の粒度分布は、日機装社製「マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300EX」を用いて体積分布で測定した。その結果、体積分布において50%となる粒径である平均粒径(D50)は10.6μmであった。
【0057】
(2)造粒粉の作製
上記の軟磁性粉末を98.3質量部、アクリル系樹脂とフェノール系樹脂を混合したものからなる絶縁性結着材を1.4質量部、およびステアリン酸亜鉛からなる潤滑剤を、0.3質量部を溶媒としてのキシレンに混合してスラリーを得た。
【0058】
得られたスラリーを乾燥後に粉砕し、目開き300μmのふるいおよび850μmのふるいを用いて、300μm以下の微細な粉末および850μm以上の粗大な粉末を除去して、造粒粉を得た。
【0059】
(3)圧縮成形
キャビティ形状が2.5mm×2mm×1.2mmの金型の内部に、外径1.9mm、内径1.4mm、厚さ1.0mmのエッジワイズコイル(コイル素材:Cu,コイル巻回数:3)を設置した。次に、上記の方法により得られた造粒粉を金型に充填し、金型温度23℃、面圧2GPaの条件で加圧成形した。その結果、2.5mm×2mm×1.2mmであって、最小断面(2mm×1.2mm)における成形体部分の最小厚さが0.1mmとなるコイル内包成形体を得た。
【0060】
(4)熱処理
得られたコイル内包成形体を、窒素気流雰囲気の炉内に載置し、炉内温度を、室温(23℃)から昇温速度40℃/分で372℃まで加熱し、この温度にて1時間保持し、その後、炉内で室温まで冷却する熱処理を行った。
【0061】
(5)外装コーティング
シリコーン系樹脂を含有する塗工用組成物中に、熱処理後のコイル内包成形体に300秒間浸漬させ、その後、塗工用組成物内から取り出して155℃で60分間加熱した。こうして、塗工用組成物を用いた含浸皮膜形成処理を行い、成形体部分とコイルとを備えたコイル内包成形体、およびこの成形体の面に設けられた外装コーティング(付着量:570g/m
2(0.57mg/mm
2))とを備える、インモールド型のインダクタンス素子を得た。
【0062】
(実施例2)
実施例1により得たインダクタンス素子に対して、塗工用組成物を用いた含浸皮膜形成処理を再度行って、総付着量が1kg/m
2(1mg/mm
2)の外装コーティングを備えるインダクタンス素子を得た。
【0063】
(実施例3)
実施例1における(1)Fe基非晶質合金粉末の作製から(4)熱処理までの作業と同じ作業を実施して、熱処理後のコイル内包成形体を得た。シリコーン系樹脂を含有する塗工用組成物中に熱処理後のコイル内包成形体を120秒間浸漬させ、その後取出し155℃で60分間加熱した。こうして塗工用組成物を用いて含浸皮膜形成を行い成形体部分とコイルとを備えたコイル内包成形体および成形体の面の設けられた外装コーティング(付着量:400g/m
2(0.4mg/mm
2))とを備える、インモールド型のインダクタンス素子を得た。
【0064】
(実施例4)
実施例1における(1)Fe基非晶質合金粉末の作製から(4)熱処理までの作業と同じ作業を実施して、熱処理後のコイル内包成形体を得た。シリコーン系樹脂を含有する塗工用組成物中に熱処理後のコイル内包成形体を180秒間浸漬させ、その後取出し155℃で60分間加熱した。こうして塗工用組成物を用いて含浸皮膜形成を行い成形体部分とコイルとを備えたコイル内包成形体および成形体の面の設けられた外装コーティング(付着量:500g/m
2(0.5mg/mm
2))とを備える、インモールド型のインダクタンス素子を得た。
【0065】
(比較例1)
実施例1と同様の方法により得た熱処理後のコイル内包成形体を、インダクタンス素子とした。なお、外装コーティング処理は行われていなかった。
【0066】
(比較例2)
2.5mm×2mm×1.2mmの大きさを有し、Fe−Si系合金を磁性材料として焼結したコアからなるインダクタンス素子とした。
【0067】
(比較例3)
2.5mm×2mm×1.2mmの大きさを有し、Fe−Si−B系のアモルファス合金を磁性材料として含む成形体部分を備えるように、熱硬化性樹脂でモールド成形を行ってインダクタンス素子とした。モールド成形では、約150〜200℃で熱硬化性樹脂を熱硬化させた。モールド成形後は、特段の熱処理を行わなかった。
【0068】
(試験例1)
万能試験機(インストロン社製)を用いて、
図3に示されるような測定系で、実施例および比較例に係るインダクタンス素子の負荷−変位曲線を測定した。測定系の詳細は次のとおりであった。
押し込み治具T:R0.5のブレード状圧子
インダクタンス素子が載置されたスリットS:開口幅1.3mm
圧接方向D:最小断面に沿って最小断面の短軸方向に平行な方向
得られた各負荷−変位曲線を
図6に示す。これらの曲線から、各例に係るインダクタンス素子の抗折強度P1および弾性係数P2を求めた。測定結果を表1に示す。実施例1から4に係るインダクタンス素子の抗折強度P1および弾性係数P2と外装コーティングの付着量との関係を
図7に示す。
【0069】
(試験例2)磁気特性の測定
実施例および比較例に係るインダクタンス素子について、インピーダンスアナライザー(HP社製「4192A」)を用いて周波数100kHzのときの透磁率を測定し、BHアナライザー(岩崎通信機社製「SY−8217」)を用いて周波数100kHz,最大磁束密度100mTの条件でコアロスを測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1および
図6に示されるように、抗折強度P1が20N/mm
2以上45N/mm
2以下であって、かつ、弾性係数P2が1kN/mm
2以上3.5kN/mm
2以下、より具体的には抗折強度P1が22.9N/mm
2以上42.7N/mm
2以下であって、かつ、弾性係数P2が1.6kN/mm
2以上2.5kN/mm
2以下である本発明に係る実施例1〜4のインダクタンス素子は成形体部分が優れた磁気特性を有する。これに対して、比較例1に係るインダクタンス素子は、抗折強度P1が低いため、成形体部分に欠け、破損、破断などの問題が生じるおそれがある。比較例2および3に係るインダクタンス素子は、成形体部分の磁気特性に劣り、電子部品としての品質を維持することが困難である。特に、比較例3に係るインダクタンス素子は、モールド成形により製造されているため、熱硬化性樹脂の硬化収縮に起因するひずみが、磁性を有する粉粒体に生じやすい。また、モールド成形後に熱処理されていないので、磁性を有する粉粒体に対して成形時に生じた応力が緩和されにくい。このため、比較例3に係るインダクタンス素子はコアロスが高くなった。
【0072】
また、
図7に示されるように、外装コーティング層の付着量を調整することで、抗折強度P1および弾性係数P2を調整できることが分かる。しかしながら、付着量が0.6mg/m
2を超えると、抗折強度P1および弾性係数P2はあまり増加しなくなり、特に抗折強度P1は40N/mm
2を超えてくることが分かる。したがって、外装コーティング層を0.6mg/m
2を超えて付着させるのは磁気特性の劣化を招くのみならず、製造工程におけるリードタイムが長くなってしまう場合がある。それゆえ、外装コーティング層を0.6mg/m
2以下に抑えた方がより好ましいことが分かる。