【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1態様によれば、弾性材料で形成された複数個の変形可能な異なる要素を備えると共に、伸長長さLを有し、また要素の少なくとも1個はL未満の長さL’を有する係留部品が提供される。
【0023】
従って、より短い弾性要素を実際に選択して他のより長い弾性要素よりも大きな剛性をもたらし、これによりスムーズかつ複合的な応力・歪み応答の一環として、硬いバイパスループに特徴的な突然の衝撃負荷を発生させることなく、保護を提供することが可能になる。この点は、付加的かつ安全用の連結索又はバイパス索が部品の係留長さよりも大きな従来技術に対して根本的な方向転換をなすものである。
【0024】
このように、本発明によれば、緊張係留部品が提供される。この緊張係留部品においては、力が作用したときに係留部品を伸長させるために変形する要素が配置される。これは、部品が、例えば潮流及び/又は波動に晒される物体に連結されるからである。係留部品は、それぞれが固有の弾性的な(即ち可逆的な)応力・歪み応答を示す複数個の異なる弾性要素を備えるため、部品における全体的な応答は、複数個の弾性要素における応答を組み合わせた複合的な弾性応答である。更に、要素間における少なくとも長さの違い、そして長さ以外の他の違いにより、全体的な応力・歪み応答は線形ではない。この非線形的な応答の結果、係留部品は、伸長するときにスムーズかつなだらかに係合することができる。
【0025】
特に、小さな範囲における環境下又は高度に変わりやすい環境下において、通常の波又は潮流では、低傾斜(理想としては平坦)の負荷応答を示しつつ、より激しい環境では、高傾斜に対してスムーズにかみ合い、保護的な応答を示す弾性の係留部品を使用することが望ましい。理想として、このかみ合ったより高い傾斜の応答は、伸長に応じて傾斜が連続的に増加するのに伴い、非線形である。本発明により、単一の変形要素、又は組成及び構成を同一とした複数個の要素に比べて、より複合的な非線形的応力・歪みプロファイルを達成することができる。有利には、互いに異なる要素は、部品における複合的かつ非線形的な応答の全体を、係留システムを使用する地点において予想される環境負荷に適合させるよう選択可能である。
【0026】
部品の伸長長さLは、作用力に応答して伸長する初期的長さと定義される。この長さLは、非伸長状態で測定され、かつ部品が示す応力・歪み応答曲線におけるゼロ歪み地点に対応するものである。言うまでもなく、部品は、例えば弾性要素が硬い合繊ケーブル又は金属ケーブルなどの非変形的な要素によって端部コネクタに連結されることにより、長さLよりも大きい物理長を有し得る。このような取り付け手段は、部品の非線形的な弾性応答に寄与するものではなく、伸長長さLを測定するときに考慮されることもない。
【0027】
好適には、複数個の変形可能な異なる要素、又は少なくとも長さL’を有する1個の弾性要素及び長さLを有する1個以上の弾性要素は、係留部品において互いに並列に連結される。このことは、各要素が、生じた引張り応力に応答するよう互いに並列に配置され、従って弾性定数は、各要素が直列に連結された場合のように単に合算されるのではなく、反比例関係に従って合算されることを意味する。従って、その結果としての複合的な応力・歪み応答は、互いに異なる要素の加重寄与によるものである。更に、互いに並列な配置とすることにより、非線形的かつ全体的な弾性応答をもたらす複数個の異なる弾性要素を設けつつ、部品の長さを最小化することができる。一連の実施形態によれば、並列な配置においては、複数個の弾性要素を互いに隣接して延在するよう設けることができ、その際に互いに接触させることが可能であるが、好適にはほぼ非接触とする。このような配置により、部品の設計及び組み立てを簡単にすることができる。他の一連の実施形態によれば、並列な配置においては、互いに取り付けられ、より合わせられ、巻き付けられ、包まれ及び/又は編まれた複数個の弾性要素を設けることができる。このような配置により、絡みの恐れを低減できるが、組み立て及び設計がより複雑になる。言うまでもなく、同一部品に上述の配置を組み合わせることもでき、その際に一部の要素は互いに巻き付け、他の一部の要素は互いに接触しないよう配置する。
【0028】
本明細書の用語「複合的」とは、応力・歪み曲線が、組み合わせた又は累積した又は混在した、可逆的かつ非線形的な応力・歪み応答であることを意味する。係留部品は、複数個の変形可能な異なる要素を備え、これら要素による非線形的な応答は、複数個の異なる要素における応答を組み合わせたものである。好適には、部品は、複合的な非線形的応力・歪み応答を通常の作動範囲内で示すものとする。望ましくは、部品は、複数の非線形的な応力・歪み応答を作動範囲内で示すものとする。
【0029】
弾性材料及び/又は要素の構成に関して、ほぼ線形的な弾性応答をもたらすものを一部適用することができるが、各弾性要素が非線形的な弾性応答を示すのが好適である。このことにより、部品における全体的かつ複合的な弾性応答を、より容易に非線形的で高度なものに調整することが可能になる。更に、要素の組み合わせた又は複合的な応答がスムーズであると共に、係留システムに高衝撃負荷をもたらし得る、急な負荷段階又は急激な傾斜変化を含まないのが好適である。
【0030】
更に、弾性要素が線形又は非線形であるかに関わらず、受動的な弾性応答を示すのが好適である。本明細書の用語「受動的」とは、伸長要素における応力・歪み応答が、伸長要素が含む材料の機能及び/又はその設計、形状及び/又は構成に基づく固有の特性であることを意味する。従って、受動的な応答においては、付加的な入力、例えば空気、油圧又は印加電力又は電圧が不要であることは言うまでもない。
【0031】
複合的かつ非線形的な応答がもたらされるため、単一の係留部品を、複数の海況又は環境条件に対処すべく効果的に調整することができる。従来の部品に比べて、より複合的な応力・歪みプロファイルが達成可能である。例えば、複合的な応力・歪みプロファイルには非線形的な複数の地点を持たせることができるため、部品は、作用力の複数の閾値又はレベルにおいて、対抗力の急激な増加を示す。ほぼ線形的な応答は、複合的な応力・歪みプロファイルの少なくとも一部、例えば閾値間において示され得るものである。調整された非線形的かつ複合的な応力・歪み応答により、特定の伸長に応じて要素がもたらす所望の反力を有する状態で、係留システムにおける潜在的かつ広範な応答曲線を描くことが可能になる。これにより、係留システムへの作用力が低減される。
【0032】
係留部品は、互いに異なる弾性要素を組み合わせることにより、広範な作動条件に亘って力を吸収する能力を向上させることができる。少なくとも係留システムにおける一部の弾性要素は、設備の運動に順応するために伸びたときに、例えば300%までの伸長をもたらすことが可能である。各要素を緊張させる構成とし、かつ変形可能とすることにより、係留部品に必要な材料を大幅に低減すると共に、寸法を縮小化することができる。このことは、種々の環境負荷に対してより良好に応答可能としつつ、範囲、水平方向へのスペース領域及び海底における占有面積が縮小可能であることを意味する。従って、係留システムは、コストの低減化及び浮遊設備の配置密度を含めて利点をもたらすものである。
【0033】
更に、出願人が見出したところによれば、係留部品におけるコストの低減化だけでなく寸法の縮小化及び/又は軽量化を図るためにも、係留部品における弾性材料の量を最小化することが有利である。係留部品の寸法及び重量は、運搬及び取り付けにおける重要な要因になり得る。材料の引張り強度が大きいほど、所望の力を発揮するために必要な直径が縮小する。弾性要素の少なくとも1個が、部品の伸長長さLよりも小さい長さL’を有するものとすることにより、弾性材料を低減することができる。例えば長さL’を有するより短い要素をより大きな伸長でのみ対抗力を発揮する設計とすることによって、係留部品における複合応答に支障があってはならない。例えば、係留部品の伸長長さと同一の長さLを有する少なくとも1個の要素は、張力が作用した直後に伸長し、初期応答を示すものとしつつ、L未満の長さL’を有する他の要素は、所定の張力が作用するまでは応答しないよう配置することができる。これら要素は、鋼製ケーブル、例えば個別的にはLよりも長い非弾性要素と組み合わせることが可能である。
【0034】
それぞれの変形可能な異なる要素は、生じた歪みに応答して伸長又は圧縮することができる。言うまでもなく、伸長可能かつ設備を特定の運動領域内で移動させる係留部品では、全体的な応答が伸長的でなければならない。好適には、長さLを有する少なくとも1個の要素は、伸長要素とする。しかしながら、複合的かつ非線形的な弾性応答は、伸長及び/又は圧縮の寄与によるものであることは言うまでもない。
【0035】
部品は、生じた引張り応力に対して伸長応答を示すよう配置された少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個以上の弾性要素を備えるのが好適である。
【0036】
代替的又は付加的には、部品は、生じた引張り応力に対して圧縮応答を示すよう配置された少なくとも1個、2個又は3個以上の弾性要素を備えるのが好適である。
【0037】
一連の好適な実施形態において、係留部品は、該係留部品の伸長長さに等しい長さLを有する少なくとも1個の伸長弾性要素と、L未満の長さL’を有する変形可能な弾性要素とを備える。長さL’を有するこの変形可能な要素は、弾性材料で形成された伸長要素又は圧縮要素とすることができる。好適には、部品が非伸長長さLにある場合、要素は何れも予伸長されていない。
【0038】
長さL’を有する弾性要素が伸長応答を示す実施形態において、弾性要素は、単に係留部品に連結することにより、係留部品が特定の閾値を超えて伸びたときに伸長することができる。長さL’を有する弾性要素が圧縮応答を示す実施形態において、要素は、係留部品に連結することにより、不動部分及び部品における特定の閾値を超えた伸長に応答して移動する部分間で圧縮することができる。このことが可能なのは、係留部品の一端が基本的には例えば海底のアンカーに(直接的又は間接的)連結され、従って不動とされるのに対して、他端が水面又は水面近傍において移動する設備に(直接的又は間接的)に連結されるからである。係留部品を係留システムにいかに連結できるかについての更なる詳細は、以下に記載する。
【0039】
長さL’を有する弾性要素と、初期的な伸長長さLを含む長さとした他の任意の要素とは、作動連結することにより、部品における非線形的な弾性応答を適切かつ任意にもたらし得るものである。好適には、各弾性要素は、係留部品に連結することにより、部品が初期的な伸長長さから特定の伸長に達したときに、伸長又は圧縮弾性応答をもたらす。好適には、部品がその初期的な伸長長さLから伸びた直後に伸長応答を示す、少なくとも1個の要素を設ける。他の伸長要素を配置して、部品が伸長したときに複合応答をもたらすことも可能である。
【0040】
係留部品の弾性要素における異なる長さと、好適には(例えば任意の端部コネクタを含めた後の)初期的な伸長長さLとほぼ同一である、部品全体の長さとは、水深、係留システム統合、部品運搬、取り付け及び/コストの複数の要因に応じて選択することができる。部品の所望の長さを選択した後、この長さを、平均的な波高及び部品を使用する地点において予想される波高変動と比較することができる。その後、部品に必要であり、かつ海洋環境に基づいて決定する伸長範囲及び応力・歪み応答によって、弾性要素を選択する。
【0041】
係留部品に必要な伸長範囲の決定に際して、実際の波浪状態による係留物体の軌道運動を、部品の長さと比較することができる。好適には、部品は、予想される運動の変化に順応するよう伸長しつつ、その弾性応答に安全率を持たせて設計される。この安全率は、例えば要素の材料に応じて部品毎に異ならせることができるが、部品の最大伸長に関連付けることができるものである。この最大伸長を超える伸びでは、部品の使用期間に対して許容できないレベルの疲労を被ることが予想される。
【0042】
複数の実施形態において、複合的で可逆的かつ非線形的な応力・歪み応答は、部品の伸長長さから10〜20%までの伸長に対して、復元力の初期的な増加を含む。付加的又は代替的には、この場合の応答は、好適には、少なくとも部品における通常の作動範囲の一部において基本的に一定の復元力を示すものであり、通常の作動範囲とは、基本的に20%〜200%までの伸長、又は特定の状況下では200%以上の伸長に対応する。この通常の作動範囲は、例えば通常の波高及び/又は潮流を考慮した一般的な条件下において、連結された設備に関して予想される水平方向への運動領域に対応し得るものである。少なくとも複数の実施形態において、要素は、(i)20〜30%,(ii)30〜40%,(iii)40〜50%,(iv)50〜60%,(v)60〜70%,(vi)70〜80%,(vii)80〜90%,(viii)90〜100%,(ix)100〜110%,(x)110〜120%,(xi)120〜130%,(xii)130〜140%,(xiii)140〜150%,(xiv)150〜160%,(xv)160〜170%,(xvi)170〜180%,(xvii)180〜190%及び(xviii)190〜200%の1つ以上の範囲の伸長に対して基本的に一定の復元力を含む応答を示すよう配置される。従って有利には、部品は、通常の条件化における設備を拘束するほぼ一定の係留力を発揮するよう調整することができる。
【0043】
上述したように、所定の長さを有する係留部品は、係留地点に応じて必要な伸長範囲を実現するため、互いに異なる弾性要素を適切に選択することによって設計することができる。この伸長範囲は、予想される平均的な波高に対する部品の長さ比から決定することができる。この範囲は、一般的にそれほど小さくならないよう選択されるため部品の弾性材料が浪費されるが、範囲を限定して経時的な疲労を回避し、特定の安全率を含めてもよい。少なくとも複数の実施形態において、部品は、約50〜100%の伸長という通常の作動範囲に亘って基本的に一定の復元力を発揮することができるが、これは部品の設計によって決まるものであり、単なる例示にすぎない。
【0044】
理想として、所定の係留システムにおける部品の伸長弾性応答は、通常の作動範囲に亘ってほぼ一定の復元力を発揮するよう選択する。従って、部品の長さLは、所望の最大伸長が、エラストマにおいて疲労が最小である通常の作動伸長(例えばゴムであればLの100〜150%)内に収まるよう選択する。付加的な要素については、この通常の作動範囲を超えたときにスムーズにかみ合うよう設計することにより、更なる伸長をもたらすものの、負荷が大幅に増加するため、より過酷な環境条件下で係留されている設備が保護されることになる。多くの係留において、通常の作動伸長とは、潮流負荷及び波の軌道運動(即ち波長)の組み合わせで規定される。
【0045】
好適には、長さL’を有する1個以上の要素は、部品が初期的な伸長長さから特定の伸びに達したときにのみ、付加的な応答(伸長又は圧縮)を示すものである。従って、これら要素は、係留されている設備が通常とは異なる条件、例えば大きな高潮及び/又は潮流に晒されているときに、設備を拘束するよう設計することができる。好適な実施形態において、複合応答は、100%、120%、140%、160%、180%、200%、220%、240%又は250%を超える伸長に対して、復元力の急激な増加を含む。これらの値も単なる例示にすぎず、係留地点及び部品に関して選択した設計に依存する。好適には、この部分の応答は、長さL’を有する1個以上の要素が示すものである。
【0046】
一連の実施形態において、長さL’を有する要素は、部品において1個以上の非弾性的で付加的な伸長要素によって作動連結される。一連の実施形態において、長さL’を有する要素は、1個以上の非弾性的で付加的な伸長要素によって作動連結される。これら非弾性要素は、鋼製ケーブルなどの、より安価な又はより大きな引張り強度を有する材料で構成することができる。これら付加的な伸長要素は、全体的かつ複合的な応答に何らかの形で寄与するものであるが、比較的小さく、好適には一定又は線形の弾性的な復元力を発揮するよう設計可能であり、その復元力が、調整された非線形的な応答に大きな影響を及ぼすことはない。従って、好適には、複合的かつ非線形的な応答の大部分を調整するのは弾性要素である。
【0047】
一連の好適な実施形態において、長さL’を有する弾性要素は、1個以上の非弾性的で付加的な伸長要素に直列に作動連結される。これら弾性的で付加的な要素は、係留部品の伸長長さLに一致させるために、弾性要素の長さL’に合わせた初期的な伸長長さを有することができる。即ち、1個以上の非弾性要素は、総伸長長さL〜L’を有することができる。1個以上の非弾性要素は、L〜L’の距離に広がることができるものとし、好適には、長さL’を有する弾性要素を係留部品の端部に連結する。
【0048】
好適には、付加的な伸長要素は、引張り応力に対して弾性的な応答を示すものである。複数の実施形態において、付加的な弾性要素は、合成材料又は金属材料より成る緩んだケーブルを含み、所望の伸長長さL〜L’よりも大きな物理長を持たせることにより、伸長を可能にするものである。従って、連結ケーブルが引張られて張力が作用したときにのみ、長さL’を有する短い弾性要素に歪みが生じ始める。好適には、ケーブルは、細く及び/又は比較的軽量な金属で構成する。このことは、材料コスト及び重量の軽減に寄与し得るものである。他の実施形態において、付加的な伸長要素は、金属ばねなどの非弾性ばねを含むことができる。好適には、ばねは、長さL’の弾性要素よりも小さな弾性係数を有する。従って、非弾性ばねは力が部品に作用してから伸長し、弾性要素は、より大きな伸長時にのみ歪みを生じる。好適には、非弾性的な伸長要素は、丈夫で大きな最大引張り強度を有するものとすることにより、引張られたときに破断することなく、弾性要素に力を伝達することが可能である。
【0049】
好適には、L未満の長さL’を有する1個以上の弾性要素は、係留部品において作動連結されていることにより、係留部品の伸長が少なくとも50%,100%,200%,250%又は300%以上のときにのみ歪みを生じる。上述したように、このことは少なくとも一連の実施形態において、弾性要素を、より小さな弾性係数(又はより大きな引張り強度)を有する伸長要素、例えば金属ばねに直列に連結することにより達成される。長さL’の弾性要素は、正の(引張り)歪み又は負の(圧縮)歪みを生じるよう配置することができる。例えば後者の場合、圧縮要素に直列に連結される非弾性要素により、圧縮要素を不動部材に対して押圧する可動部材が引張られる。何れの場合にせよ、係留部品における所定の歪み閾値に達したときに、非弾性要素がより短い弾性要素に歪みを伝達するよう配置されるため、これらより短い弾性要素が複合的かつ非線形的な応答をもたらし始め得る。これにより、応答を極度の伸長に対処するよう調整し、従って係留が例えば暴風雨や異常な波に反応することが可能になる。
【0050】
このように、本発明によれば、調整された複合的かつ非線形的な応答は、好適には並列に連結される、複数個の異なる弾性要素を選択しながらも、1個以上のより短い弾性要素を、所定の伸長閾値に達したときにより短い弾性要素に歪みを伝達する非弾性要素に対して直列に配置し、これにより部品における弾性材料の量が低減した状態で達成できることは言うまでもない。より短い要素は、より大きな応答をもたらすよう、より厚くすることができるにも関わらず、材料の量はより低減することが可能である。従って、弾性材料との関連において、部品の重量及びコストが低減可能である。
【0051】
L未満の長さL’を有する複数個の弾性要素は、異なる長さ及び/若しくは厚さ、並びに/又は材料で互いに並列に配置することができる。少なくとも複数の実施形態においては、個々の要素に同一の材料を使用することが好適な場合がある。このような実施形態における弾性要素は、長さ及び/又は厚さに関して異ならせることができる。
【0052】
一連の好適な実施形態において、係留部品は、弾性材料を含む複数個の変形可能な要素を備え、少なくとも1個の伸長要素は、(i)4〜6 m,(ii)6〜8m,(iii)8〜10m,(iv)10〜12m,(v)12〜14m,(vi)14〜16m,(vii)16〜18 m,(viii)18〜20m又は(ix)20m超の何れかより選択した長さLを有し、少なくとも1個の要素は、(i)1〜2m,(ii)2〜4 m,(iii)4〜6 m,(iv)6〜8m,(v)8〜10m,(vi)10〜12m又は(vii)12〜14mの何れかより選択されているL未満の長さL’を有する。この場合に要素における長さL及びL’の選択は、係留地点及び波高に大きく依存するものである。好適には、伸長長さLは、極めて一般的な波浪状態においては、波高と同等又はより大きくすることにより、この海況下で100%以下の伸長をもたらすものとしつつ、より激しい海況下ではより大きな伸長を、またより穏やかな海況下ではより小さな伸長をもたらすものとする。少なくとも複数の実施形態において、部品は、それぞれ異なるL未満の長さL’を有する複数個の弾性材料を備える。これら要素は、伸長長さLに相当する長さ範囲を含むことができる。好適には、弾性材料は、互いに並列に連結する。従って、この場合に複合応答は、長さをそれぞれ異ならせた要素による応答の組み合わせとして調整することができる。言うまでもなく、係留部品は、このような弾性要素を組み合わせることにより、既存の製品に比べて大幅に短縮することが可能である。
【0053】
他の実施形態において、代替的又は付加的には、L未満の長さL’を有する少なくとも1個の要素における断面積(厚さ)は、他の1個以上の要素と異ならせることができるため、この場合に複合応答は、厚さをそれぞれ異ならせた要素による応答の組み合わせである。互いに異なる弾性要素の厚さ又は直径は、好適には、(i)0.05〜0.1m,(ii)0.1〜0.2m,(iii)0.2〜0.3m,(iv)0.3〜0.4m,(v)0.4〜0.5m,(vi)0.5〜0.6m,(vii)0.6〜0.7m,(viii)0.7〜0.8m,(ix)0.8〜0.9m及び(x)0.9〜1.0mの範囲の1つ以上から選択される。
【0054】
言うまでもなく、各要素に選択する厚さ及び/又は材料は、規模に大きく依存するものである。例えば、大規模な波力エネルギ変換設備用の係留部品であれば、力は1〜10MNの範囲内であることが多く、通常の作動では、例えば100%の伸長で約3MNの力が予想される。部品における全体的な材料厚さは、選択した材料及び求められる伸長に依存する。伸長が約100%の弾性要素は、一般的に1.2MPaの引張り強度をもたらすことができるため、約3MNの力に関しては、3MN/1.2MPa=2.5m
2の総断面積が利用可能である。それぞれ例えば0.75mの直径を有する6個の同一要素間で力を共有するのではなく、これら要素は、部品における全体の複合的な応力・歪み応答を調整するため、例えば異なる厚さ及び/又は材料を有することができる。
【0055】
出願人が見出したところによれば、特に長さL’のより短い弾性要素における弾性材料の量は、例えば他の弾性要素に比べてより大きな引張り強度を有するより硬いエラストマを使用することにより更に低減することができる。従って、付加的又は代替的には、L未満の長さL’を有する1個以上の変形可能な要素は、長さL(又はL’よりも大きいがLよりは小さい長さ)を有する要素における弾性材料に比べて、より大きな弾性係数を有する弾性材料を含むのが好適である。従って、これらより短い要素は、より軟らかくかつ長い弾性要素が完全に伸びた後のより大きな伸長においてのみ、複合的な応力・歪み応答に寄与するよう設計することができる。最短の各要素は、例えば高潮によって生じた極端な変位に対する保護をもたらすことができる。
【0056】
L未満の長さL’を有する1個以上の変形可能な要素は、少なくとも1MPa,2MPa,3MPa,4MPa,5MPa又は6MPa以上の弾性係数を有する弾性材料を含む。好適には、L未満の長さL’を有すると共に、少なくとも6MPaの弾性係数を有する弾性材料を含む少なくとも1個の変形可能な要素を設けるものとする。例えば、熱可塑性材料を最短の要素に使用すれば、ゴムをベースとした材料に比べて20〜30倍大きい引張り強度を付与することができるため、要素の直径をより縮小することが可能である。更に、このような大きな引張り強度を有する材料は、短い衝撃時間/距離に亘ってではなく、波高との関連における変形可能な長さの大部分に亘って上記の引張り強度を付与できることが重要である。このような高強度の要素を含めることにより、係留部品をより効果的に構成し、従って高負荷を吸収すると共に、巨大な波又は極端な漂流から保護することが可能になる。少なくとも複数の実施形態において、長さLを有する1個以上の要素も、6Mpaまでの弾性係数を有する弾性材料を含むことができる。このようにして弾性要素の強度を高めれば、部品の重量及び体積を低減することができるが、より小さな伸長における「緩やか」な応答を複合的な応力・歪み曲線に含めることがより困難になる可能性がある。重量の低減化も、より高強度な材料のコストとのバランスを保たなければならない場合がある。
【0057】
伸長/圧縮要素用の弾性材料には、特定の係留部品にとって所望の伸長量をもたらす弾性係数を有する材料を選択することができる。この弾性材料は、熱可塑性又は熱硬化性とすることができる。適切な弾性材料には、ポリウレタン又はSBRなどの、天然ゴム及び合成ゴムと、ネオプレン(登録商標)又はバイトン(登録商標)などの、より大きな引張り強度を有する材料とが含まれる。これら材料は、海洋での使用に適しており、20年以上という極めて長い寿命を有するものである。好適には、少なくとも幾つかの要素、特に長さLを有する要素は、少なくとも75%,100%,150%,200%又は250%以上の伸長が可能な材料で形成される。
【0058】
比較的大きな弾性係数を付与しつつ、引張り又は圧縮で作動するかを問わず、部品における短くかつ硬い要素を形成するために使用できる材料としては、種々の弾性材料が入手可能である。しかしながら、出願人が見出したところによれば、高強度を有し、かつ材料の量が少ない弾性要素の特に有利な形態とは、部品に生じている引張り応力に応答して(負の)歪みを生じるよう配置される圧縮要素である。好適には、L未満の長さL’を有するこのような圧縮弾性要素は、少なくとも10MPa,15MPa,20MPa,25MPa又は30MPa以上の弾性係数を有する。これら要素は、部品における極めて大きな伸長に対して、大きな対抗力をもたらすよう使用することができる。
【0059】
出願人が見出したところによれば、材料及びコストの節減に関する上述した利益は、L未満の長さL’を有する1個以上の圧縮弾性要素を、係留部品に含めることによって実現される。これら圧縮要素は、伸長要素に比べてより高強度を有し、従ってより少ない量の材料を使用しつつ、例えば極めて大きな潮流又は波に対して、より大きな復元力を発揮することが可能である。係留部品においては、伸長及び圧縮要素の両方を組み合わせることが有益であり得る。なぜなら、このことにより、互いに異なる要素を最小の個数としつつ、部品における複合的な応力・歪み応答が容易に調整できるからである。伸長要素は、200%、250%以上の伸長をもたらすと共に、例えば10m/s以上の大きな伸長率で海況の変化に迅速に応答できるのに対して、圧縮要素は、伸長要素がその伸長限界に達し、大きな歪みが生じた場合に、極めて大きな変位に対する大きな対抗力を付加的に発揮することができる。即ち、伸長要素は、力がより小さい場合に係留部品の主伸長をもたらすことができるのに対して、圧縮要素は、大きな伸長が生じた場合に最大の力を発揮することができる。その結果による複合的な応力・歪み応答は、使用する材料に関わらず達成可能である。
【0060】
圧縮要素は、圧縮ばねなどの、適切かつ任意の形状とすることができる。しかしながら、構造的な安定性及び製造上の容易さにより、圧縮要素は、弾性材料で形成された円筒かつ波形状又はベローズ状部材を含むのが好適である。従って、一連の好適な実施形態において、L未満の長さL’の弾性要素は、弾性材料で形成された円筒かつ波形状又はベローズ状部材を含む圧縮要素の形状とする。
【0061】
圧縮部材は中実の円筒状とすることができるが、好適には、側壁に波形状部分又はベローズを有する中空の円筒又は管状とし、これにより運動範囲を伸長可能とする。このような中空構造により、変形長さの大部分に亘って、大きな引張り強度を有する材料による調整された応力・歪み応答がもたらされ、従って部品が、その長さに対する波高の大きな変動に応答することが可能になる。円筒状部材は、軸線方向への(即ち、圧縮力が円筒状部材の長手方向軸線に沿って作用する)圧縮に従って作動することにより、非線形的な応答を示すことができる。波形状部分/ベローズ及び弾性要素自体は、圧縮量の増加に伴って、減衰手段を圧縮するために必要な力がより急激に増加するよう軸線方向に圧縮可能である。従って、このような圧縮要素は、係留部品における複合的かつ非線形的な応力・歪み応答に関連して、大きな変位に対する対抗力を発揮する上で特に適している。
【0062】
圧縮要素のベローズ構造と、圧縮要素が弾性材料で形成されるという事実とにより、係留対抗力を、作用力及び作用力の変化率の何れに対しても非線形的に増加させることが可能になる。係留対抗力は通常の波では極めて小さく、波に応答した係留物体の運動が、係留部品の圧縮要素によって大きな影響を受けることはない。しかしながら、作用力(又は作用力の変化率)が、例えば波が極めて大きい場合に、閾値を超えると、係留対抗力が大幅に増加し得るため、通常の運動領域を超えた、係留物体の極めて大きな運動が回避される。このように、圧縮要素は、過酷な条件化における係留部品の破断を防止することができる。
【0063】
言うまでもなく、弾性材料で形成された円筒かつ波形状又はベローズ状部材を含む圧縮要素を係留部品に含めることにより、弾性材料で形成された他の要素が設けられているかに関わらず、部品が過酷な環境下で応答することを有利に可能にする場合がある。従って、この特徴は、それ自体で新規性及び進歩性を有するものと見なされるため、本発明の第2態様によれば、少なくとも1個の伸長要素及び少なくとも1個の圧縮要素を備えると共に、これら要素の何れもが引張り応力に応答して歪みを生じるよう配置される係留部品が提供される。好適には、少なくとも1個の伸長要素及び少なくとも1個の圧縮要素は、互いに並列に連結される。付加的又は代替的には、少なくとも1個の伸長要素及び/又は少なくとも1個の圧縮要素は、弾性材料で形成するのが好適である。
【0064】
言うまでもなく、本発明のこの態様に係る係留部品は、生じている引張り応力に応答して伸びる伸長要素のみを備える標準的な係留部品の構造に対して、大幅な逸脱を呈するものである。出願人の認識によれば、伸長及び圧縮要素の両方を、係留部品において好適には並列に組み合わせ、その際に両方の要素が引張り応力に応答、即ち部品の伸長に反応することは、これまで提案されたことはない。上述したように、要素の1個、例えば圧縮要素が特定の歪み閾値を超えた場合にのみ作動するよう配置できることは言うまでもない。伸長及び圧縮要素の両方が、複合的かつ伸長的な応力・歪み応答に寄与することの利点は、応答を、係留地点における海洋条件により良好に適合できることにある。伸長要素は、部品のより小さな歪みで主伸長をもたらすことができるのに対して、圧縮要素は、より大きな歪みでより大きな対抗力をもたらすことができる(又は逆も然り)。
【0065】
好適には、圧縮要素は、弾性材料で形成された円筒かつ波形状又はベローズ状部材を含む。上述したように、このような要素は、必要な弾性材料の量を最小化しつつ、極めて大きな弾性係数を付与し得ることが判明している。
【0066】
1個以上の伸長要素は、合成及び/又は金属繊維を含む適切かつ任意の材料で形成することができる。弾性ばねを使用することができる。しかしながら、一連の好適な実施形態の少なくとも1つにおいて、少なくとも1個の伸長要素は、部品に例えば200%以上の、高度な伸長性を付与するために弾性材料を含む。弾性材料を含む複数個の異なる伸長要素を設けることが可能である。このように、相容れない場合を除き、上述した好適な特徴の何れもは、単独で又は組み合わせて本発明の第2態様に含めることができる。従って、一連の好適な実施形態によれば、部品は、弾性材料で形成された少なくとも1個以上の伸長要素に並列に配置され、かつ弾性材料で形成された円筒かつ波形状又はベローズ状部材を含む少なくとも1個の圧縮要素を備える。この圧縮要素は、部品の伸長長さLに比べてより小さい長さL’を有することができる。このような組み合わせは、材料の量を低減しつつ、高度に調整可能な複合的かつ非線形的な応力・歪み応答の利点をもたらすことが判明している。
【0067】
従って、本発明の更なる態様によれば、弾性材料で形成され、かつ互いに並列に配置されて引張り応力に応答する複数個の変形可能な異なる要素を備え、これら弾性要素の少なくとも1個は、係留部品の非伸長状態における長さLに対応する長さLを有する伸長要素とし、弾性要素の少なくとも他の1個は、L未満の長さL’を有する圧縮要素とする係留部品が提供される。好適には、圧縮要素は、弾性材料で形成された円筒かつ波形状又はベローズ状部材を含む。上述した好適な実施形態の何れもは、単独で又は組み合わせて本発明のこの更なる態様に適用することができる。
【0068】
好適にはより低強度で大きな伸長を有する伸長弾性要素を、好適にはより高強度を有する圧縮弾性要素と組み合わせることにより、大きな伸長性(基本的には100%超)を示しつつ、数MNの力にも耐え得る複合的かつ非線形的な応力・歪み応答が達成される。このような伸長/圧縮要素が混在した係留部品は、高度にカスタマイズできる複合的な応力・歪み応答を示しつつ、例えば伸長要素のみを備える係留部品に比べて、使用されている材料の量/重量も限定する。
【0069】
以下、上述した本発明の各態様における実施形態に適用可能とした、円筒状の圧縮弾性要素における複数の好適な特徴を記載する。
【0070】
本発明の用語「円筒」及び「円筒状」とは、軸線方向に沿って移動するときに一定かつ平均的な断面外周を有する部材だけでなく、円錐状円筒及び円錐台など、軸線方向に沿って移動するときに断面が変化する部材も含む。一連の実施形態において、圧縮部材は、側壁外周にベローズを有する中空円錐台状とする(即ち、ベローズの平均的な断面外周は、部材が軸線方向に沿って移動するときに増大する)。代替的には、圧縮部材は、側壁外周にベローズを有する中空管状としてもよい(即ち、ベローズの平均的な断面外周は、軸線方向に沿って部材が移動するときに大幅に増大することはない)。上述の用語は、非円形断面、例えば楕円形断面又は(四角形、矩形、六角形、八角形などの)多角形断面のような形状も含む。更に、非中空のシリンダを含む。
【0071】
ベローズかつ円筒状部材の負荷応答は、波形状部分(回旋状部分の直径)の設計によって制御することができる。円筒状部材の応答は、山の直径及び谷の直径を変えて山の直径に対する谷の直径比を異ならせることにより、ベローズ又は回旋状部分の個数を異ならせることにより、ピッチを異ならせることにより、又はベローズにおける最小外径のフィレット半径及びベローズにおける最大外径のフィレット半径を異ならせることにより変えることができる。中空円筒状部材の応答は、壁厚を異ならせることによっても変えることができる。円筒状部材は、外周の全長に亘って波形部分、ベローズ又は回旋状部分を有するか、又はスムーズな領域によって中断されている波形状部分、ベローズ又は回旋状部分を有することができる。
【0072】
一連の実施形態において、係留部品は、弾性材料で形成され、かつ(i)0.5m未満,(ii)0.5〜1m,(iii)1〜2m,(iv)2〜3m,(v)3〜4m,(vi)4〜5m又は(vii)5m超の何れかより選択されたL未満の長さL’を有する円筒かつ波形状又はベローズ状部材を備える。弾性材料で形成されたこの少なくとも1個の円筒かつ波形状又はベローズ状部材の直径は、好適には、(i)0.1m未満,(ii)0.1〜0.2m,(iii)0.2〜0.4m,(iv)0.4〜0.6m,(v)0.6〜0.8m,(vi)0.8〜1.0m,(vii)1.0〜1.2m,(viii)1.2〜1.4m,(ix)1.4〜1.6m,(x)1.6〜1.8 m,(xi)1.8〜2.0m又は(xii)2.0m超の何れかより選択される。好適には、この少なくとも1個の円筒かつ波形状又はベローズ状部材は、1個以上の弾性要素、好適には伸長要素に並列に連結される。伸長要素は、伸長長さLまで達する異なる長さ範囲、例えば2〜20mの長さ範囲を有することができる。これら伸長要素は、異なる厚さ範囲、例えば0.1〜1.0mの厚さ範囲を有することができるが、好適には、少なくとも1個の円筒かつ波形状又はベローズ状部材に比べてより薄い。従って、この場合に複合応答は、長さをそれぞれ異ならせた要素による応答の組み合わせとして調整することができる。言うまでもなく、係留部品は、円筒かつ波形状又はベローズ状部材を含む少なくとも1個の弾性圧縮要素を、1個以上の弾性伸長要素と組み合わせることにより、既存の製品に比べて大幅に短縮することが可能である。
【0073】
波形かつ円筒状部材に使用する弾性材料の選択は重要であり得る。弾性材料は、熱可塑性又は熱硬化性とすることができるが、製造を容易にし、かつ製造コストを低減するため、好適には熱可塑性とする。熱可塑性材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、連続的な熱可塑性相に加硫エラストマ相を分布させた熱可塑性加硫物(TPV)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマ(TPO)、スチレン熱可塑性エラストマ(TPS)、熱可塑性ポリアミドブロック共重合体(TPA)又はコポリエーテルエステル又はコポリエステルエステルなどのコポリマとすることができる。TPVにおいては、架橋ゴムにおける多数かつ好適な特徴が、熱可塑性エラストマにおける加工性などの特徴と結び付けられる。
【0074】
波形かつ円筒状部材には、熱硬化性及び弾性材料、例えば天然ゴムなどの架橋ゴム、スチレンブタジエンゴム、ネオプレンCR、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマ)、HNBR(水素添加ニトリルブタジエンゴム)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、ACM、AEM、EVA、CM、CSM、COも使用することができる。
【0075】
波形かつ円筒状部材に好適な熱可塑性材料は、デラウェア州ウィルミントン市所在のE.I.du Pont de Nemours and Companyが市販するハイトレル(登録商標)である。ハイトレル(登録商標)とは、ゴムの柔軟性、合成樹脂の強度及び熱可塑性樹脂の加工性が結び付けられた熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマである。ハイトレル(登録商標)は、広い温度範囲に亘って、耐化学性を含む極めて優れた環境安定性、海水親和性、老化及び圧縮永久歪みに対する抵抗性を有するものである。更に、ゴムに比べてより容易かつより高い費用効率で加工することができ、しかもゴム及び熱硬化性エラストマと異なり再利用可能である。また、射出成形、押出成形、ブロー成形、回転成形及び溶融鋳造を含む種々の熱可塑性加工技術によって、容易に圧縮要素に形成することができる。特に、波形管押出成形により、回旋状部分を有する中空管が容易かつ高い費用効率で製造可能である。加工温度は、177〜260℃とする。
【0076】
一連の実施形態によれば、波形かつ円筒状部材は、コポリエーテルエステル又はコポリエステルエステルなどの、コポリエステル熱可塑性エラストマ(TPC)を含む、ポリマ又はポリマブレンドより成るものであり、コポリエーテル又はコポリエステルエステルは、エステル結合によって頭尾結合された多数の再硬化性の長鎖エステル単位及び短鎖エステル単位を有する。上述の長鎖エステル単位は、化学式(A)で表される:
【化1】
(A)
また、上述の短鎖エステル単位は、化学式(B)で表される:
【化2】
(B)
ここに、
Gは、末端のヒドロキシル基を、好適には約400〜約6000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから除去した後に残存する2価の基であり、
Rは、カルボキシル基を、約300未満の分子量を有するジカルボン酸から除去した後に残存する2価の基であり、
Dは、ヒドロキシル基を、好適には約250未満の分子量を有するジオールから除去した後に残存する2価の基であり、更に、
上述のコポリエーテルエステルは、好適には、約15〜約99重量%の短鎖エステル単位と、約1〜約85重量%の長鎖エステル単位とを含む。
【0077】
コポリエーテルエステルにおけるポリマ鎖単位に適用される本明細書の用語「長鎖エステル単位」とは、ジカルボン酸を有する長鎖グリコール反応生成物を指す。適切な長鎖グリコールは、末端(又は可及的に末端)のヒドロキシル基を有し、かつ約400〜約6000、好適には約600〜約3000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールである。好適なポリ(アルキレンオキシド)グリコールには、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、これらアルキレンオキシドのコポリマグリコール及びブロックコポリマ、例えばエチレンオキシドでキャップされたポリ(プロピレンオキシド)グリコールが含まれる。これらグリコールの2個以上による混合物を使用することができる。
【0078】
コポリエーテルエステル鎖におけるポリマ鎖単位に適用される本明細書の用語「短鎖エステル単位」とは、低分子量の化合物又はポリマ鎖単位を指す。これらは、低分子量のジオール又はジカルボン酸を有するジオールの混合物を反応させることで作成され、これにより上述の化学式(B)で表されるエステル単位を形成する。コポリエーテルエステルを調製するために適切な短鎖エステル単位を形成する低分子量のジオールには、非環式化合物、脂環式化合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物が含まれる。好適な化合物は、約2〜15個の炭素原子を有するジオール、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、テトラメチレン、1,4‐ペンタメチレン、2,2‐ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレン及びデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,5ジヒドロキシナフタレンである。特に好適なジオールは、2〜8個の炭素原子を含む脂肪族ジオールであり、更に好適なジオールは、1,4‐ブタンジオールである。
【0079】
好適には、波形かつ円筒状部材の弾性材料は、5〜100Mpa、好適には約30Mpaの(降伏)引張り強度を有する。(例えばISO527-1/-2)に従って測定した引張り弾性係数は20,000Mpaまでとすることができるが、好適には25Mpa〜1200Mpa、最適には100〜600Mpaとする。
【0080】
以下、係留部品の基本的な特徴の幾つかを記載する。これら特徴は、上述した本発明の全ての態様に適用可能である。
【0081】
変形可能な要素に複数個の伸長及び/又は圧縮要素が含まれるかに関わらず、弾性要素は、少なくとも係留部品の端部において共に連結するのが好適である。このことにより、部品に生じた引張り応力が、互いに異なる要素間で確実に共有され得る。好適には、取り付け手段は、部品の端部に設けるものとする。このような取り付け手段は、係留部品を係留システムにおける他の部品、例えば連結索及びアンカーに連結するために設計かつ最適化することができる。一連の実施形態において、複数個の弾性要素は、取り付け手段間に、好適には並列な配置で連結される。この場合に並列な配置とは、各要素が、生じた伸長応力に応答するよう互いに並列に配置されることを意味する。各要素は、物理的に互いに並列に配置することができるが、上述したように、互いにより合わせ、巻き付け又は編まれた状態としてもよい。やはり上述したように、他の非弾性的な各要素は弾性要素に直列に連結でき、従って弾性要素が取り付け手段に連結可能である。好適には、取り付け手段は、非弾性的であると共に、引張り応力を係留部品の各要素に伝達するために機能する。
【0082】
係留部品の端部に設けられた取り付け手段は、伸長及び/又は圧縮要素に対して分離した端部コネクタ状とすることができる。このことにより、部品製造業者は、端部コネクタを、部品における引張り応答をもたらす各要素とは独立して設計することが可能になる。代替的には、取り付け手段は、1個以上の伸長及び/又は圧縮要素によって、一体的に設けてもよい。一連の好適な実施形態において、係留部品は、一体的に形成された端部コネクタを含み、かつ長さLを有する1個以上の伸長弾性要素を備える。例えば、端部コネクタは、鋳造によって弾性要素に成形することができる。1個以上のこのような端部コネクタは、取り付け手段を構成し得るものであるため、分離した端部コネクタ及び各要素への連結部を設ける必要がない。端部コネクタは、弾性材料の増厚部によって形成することができるため、主要素に比べて硬さがより大きい。
【0083】
好適な実施形態において、非伸長状態の係留部品は比較的短い。例えば、40mに伸長可能な15mの部品により、係留システムの占有面積が150mから40mに縮小可能である。部品の伸長は、波の大きさ及び/又は潮流などの作動条件に左右される。本発明の実施形態に係る係留部品によって連結される設備の軌道運動は、従来の例えばカテナリ係留システムよりも抑制され得るため、部品自体に亘る応力がほぼ一定であることが保障され得る。少なくとも一連の実施形態において、係留部品は、好適には、(i)5〜10m,(ii)10〜15m,(iii)15〜20m,(iv)20〜25m又は(v)25〜30mの伸長長さLを有する。この長さは、非伸長状態で測定した場合の係留部品の長さである。一連の実施形態における係留部品の好適な長さは、12m〜16mである。
【0084】
本発明は、上述した係留部品を備える係留システムにも関するものである。一連の好適な実施形態において、部品は、水中に沈められると共に、浮体及び海底間に直接的又は間接的に連結される。例えば、部品は、浮遊養魚場、浮遊プラットフォーム又は浮遊ウィンドファーム及び海底間に連結することができる。係留システムは、1個以上の係留部品を備えることができ、また組み合わせを異ならせた係留部品が使用可能である。係留システムは、深海環境、潮流環境又は潮汐ダム環境用のものとすることができる。
【0085】
他の一連の実施形態において、部品は、2個以上の浮体間に連結される。この場合の連結は、直接的又は間接的とすることができる。このため、複数の実施形態における部品は、第1浮体及び第2浮体間に連結することができ、任意にはこれら浮体がアレイの一部を形成するものである。このような実施形態における係留部品は、より大きな慣性を有し得る一方の浮体に対して反応することにより、他方の浮体の運動に応答することができる。
【0086】
好適な実施形態において、係留部品に可能とされる伸長(即ち、対応できる伸び)は、所望の性能を達成するために必要な部品の長さが最小限となるようにする。好適には、部品は、300%まで伸長可能とする。係留システムの少なくとも複数の実施形態において、部品は、(より大きな係留システムの一部である場合に)海面近傍に配置することにより、係留システムの残部に生じる応力を最小化する。このことは、波動運動又は潮汐運動により、(係留システム全体ではなく)係留部品にのみ伸長が生じることを保障するものである。係留システムの少なくとも複数の実施形態において、部品は、浮遊部材及び従来の係留索、例えば合繊ロープ(例えばダイニーマ(登録商標))及び/又は鋼製チェーン間に連結される。この場合の連結は、直接的又は間接的とすることができる。1個以上の係留部品を、直列又は並列に連結することができる。
【0087】
一連の好適な実施形態において、係留システムは、浮遊プラットフォームを備え、また係留部品は、このプラットフォーム及び海底間に連結する。少なくとも複数の実施形態において、係留部品は、浮遊プラットフォーム及び海底に連結されている係留索間に連結するのが好適である。係留索は、合繊ロープ又は鋼製チェーンを含むことができる。部品は、従来の合繊ロープなどの係留索でプラットフォームに連結することもできる。この浮遊プラットフォームは、潮力又は波力エネルギ変換設備の一部を構成することができる。
【0088】
本発明の更なる態様によれば、深海係留システム用の係留部品の製造方法が提供される。該方法は、
係留すべき物体及び該物体を係留すべき地点を特定するステップと、
物体に作用すると予想される上記地点での環境負荷を決定するステップと、
係留部品に作用する係留力を望ましい程度に緩和しつつ、予想される環境負荷に応答するために、係留部品に求められる応力・歪み応答を決定するステップと、
係留部品を、弾性材料で形成された複数個の変形可能な異なる要素で形成し、その際に、係留部品は伸長長さLを有し、また少なくとも1個の要素はL未満の長さL’を有することにより、係留部品に求められる応答が、複合的で可逆的かつ非線形的な応力・歪み応答、即ち複数個の弾性要素を組み合わせた応答を示すと共に、係留部品に作用する係留力が所望の程度に緩和されるステップとを含む。
【0089】
本発明の他の更なる態様によれば、深海係留システム用の係留部品の製造方法が提供される。該方法は、
係留すべき物体及び該物体を係留すべき地点を特定するステップと、
物体に作用すると予想される上記地点での環境負荷を決定するステップと、
係留部品に作用する係留力を望ましい程度に緩和しつつ、予想される環境負荷に応答するために、係留部品に求められる応力・歪み応答を決定するステップと、
係留部品を、少なくとも1個の伸長要素及び少なくとも1個の圧縮要素で形成し、その際に、伸長要素及び圧縮要素が引張り応力に応答して歪みを生じるように配置することにより、係留部品に求められる応答が、複合的で可逆的かつ非線形的な応力・歪み応答、即ちそれぞれの弾性要素を組み合わせた応答を示すと共に、係留部品に作用する係留力が所望の程度に緩和されるステップとを含む。
【0090】
本発明の他の更なる態様によれば、深海係留システム用の係留部品の製造方法が提供される。該方法は、
係留すべき物体及び該物体を係留すべき地点を特定するステップと、
物体に作用すると予想される上記地点での環境負荷を決定するステップと、
係留部品に作用する係留力を望ましい程度に緩和しつつ、予想される環境負荷に応答するために、係留部品に求められる応力・歪み応答を決定するステップと、
係留部品を、弾性材料で形成され、かつ互いに並列に配置されて引張り応力に応答する複数個の変形可能な異なる要素で形成し、その際に、弾性要素の少なくとも1個は、係留部品の非伸長状態における長さLに対応する長さLを有する伸長要素とし、弾性要素の少なくとも他の1個は、L未満の長さL’を有する圧縮要素とすることにより、係留部品に求められる応答が、複合的で可逆的かつ非線形的な応力・歪み応答、即ちそれぞれの弾性要素を組み合わせた応答を示すと共に、係留部品に作用する係留力が所望の程度に緩和されるステップとを含む。
【0091】
以上、本発明における種々の態様を、波動運動及び/又は潮汐運動に晒される浮体の動きを制御する係留部品及びシステムとの関連で記載してきたが、上述の係留部品及びシステムは、海洋での係留に限定されることなく使用可能である。特に、少なくとも1個の伸長弾性要素と、少なくとも1個の圧縮弾性要素とを備え、これら伸長弾性要素及び圧縮弾性要素が何れも、引張り応力に応答して歪みを生じるように配置される部品は、非海洋環境下での連結物体に使用することができる。上述した特徴は何れも、非海洋環境下であっても潜在的には同様に適用することができる。
【0092】
従って、本発明は、少なくとも1個の伸長弾性要素と、少なくとも1個の圧縮弾性要素とを備え、伸長弾性要素及び前記圧縮弾性要素が何れも、引張り応力に応答して歪みを生じるように配置される係留手段にも関するものである。
【0093】
明瞭性の見地から、個別の実施形態として上述した本発明の好適かつ特定の特徴は、1つの実施形態に組み合わせることも可能であることは言うまでもない。逆に、簡潔さの見地から、1つの実施形態として記載した本発明の好適かつ種々の実施形態は、個別、又は適切かつ任意の下位の組み合わせとすることも可能である。