(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベルト本体の少なくとも一部分を形成するための架橋剤として硫黄が配合された未加硫ゴム組成物の表面に、ジエン系ゴムからなるゴム材料で形成された透明乃至半透明のシート材の表面にマークがプリントされたマークプリントシートを、前記マークのプリントされた側が前記未加硫ゴム組成物に接触するように配置してベルト形成用成形体を成形するベルト形成用成形体成形工程と、
前記ベルト形成用成形体成形工程で成形したベルト形成用成形体を加熱及び加圧することにより、前記未加硫ゴム組成物を硫黄により加硫させてベルト本体を形成し、また、それと共に前記マークプリントシートの前記シート材をも硫黄により加硫させて前記ベルト本体と一体化させる加硫工程と、
を備えた伝動ベルトの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1及び2は、実施形態に係るVリブドベルトB(伝動ベルト)を示す。実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置等に用いられるものである。実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト周長が700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmである。
【0011】
実施形態に係るVリブドベルトBは、Vリブドベルト本体10が、ベルト外周側の背面ゴム層11と中間の接着ゴム層12とベルト内周側の圧縮ゴム層13との三重層に構成されている。接着ゴム層12には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。
【0012】
背面ゴム層11は、断面横長矩形の帯状に構成されており、厚さが例えば0.4〜0.8mmである。背面ゴム層11は、ゴム成分に架橋剤としての硫黄を含む種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されることにより硫黄により加硫されたゴム組成物で形成されている。
【0013】
背面ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分としては、ジエン系ゴムが挙げられ、具体的には、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDMなど)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等が挙げられる。これらのうちエチレン−α−オレフィンエラストマーが好ましく、中でもEPDMが好ましい。ゴム成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種がブレンドされて構成されていてもよい。
【0014】
配合剤としては、補強剤、充填剤、老化防止剤、軟化剤、架橋剤としての硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤等が挙げられる。
【0015】
補強剤としては、例えば、カーボンブラックやシリカが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラックが挙げられる。補強剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。補強剤の配合量は、耐摩耗性及び耐屈曲性のバランスが良好となるという観点から、好ましくはゴム成分100質量部に対して30〜80質量部であり、より好ましくは45〜75質量部である。
【0016】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、ベントナイトを含む層状珪酸塩などの無機充填剤等が挙げられる。充填剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。充填剤の配合量は、好ましくはゴム成分100質量部に対して10〜70質量部であり、より好ましくは20〜60質量部である。
【0017】
老化防止剤としては、アミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、フェノール系、亜リン酸エステル系のものが挙げられる。老化防止剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。老化防止剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0〜8質量部である。
【0018】
軟化剤としては、例えば、パラフィン系オイルなどの鉱物油系軟化剤、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落下生油、木ろう、ロジン、パインオイルなどの植物油系軟化剤、石油系軟化剤が挙げられる。軟化剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。軟化剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して例えば2〜30質量部である。
【0019】
架橋剤は硫黄であり、その配合量は、好ましくはゴム成分100質量部に対して0.5〜4.0質量部であり、より好ましくは1.0〜2.0質量部である。なお、架橋剤として有機過酸化物が併用されていてもよい。
【0020】
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系(例えばTETなど)、ジチオカルバメート系(例えばEZなど)、スルフェンアミド系(例えばMSAなど)のもの等が挙げられる。加硫促進剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して例えば2〜10質量部である。
【0021】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化マグネシウムや酸化亜鉛(亜鉛華)などの金属酸化物、金属炭酸塩、ステアリン酸などの脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進助剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。加硫促進助剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜8質量部である。
【0022】
背面ゴム層11を形成するゴム組成物には、ナイロン短繊維等の短繊維が配合されていてもよい。
【0023】
接着ゴム層12は、断面横長矩形の帯状に構成されており、厚さが例えば1.0〜2.5mmである。圧縮ゴム層13は、複数のVリブ15がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ15は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共にベルト幅方向に並設されている。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、及び基端間の幅が1.0〜3.6mmである。リブ数は、例えば3〜6個である(
図1では6個)。接着ゴム層12及び圧縮ゴム層13も、背面ゴム層11と同様、ゴム成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されることにより架橋剤により架橋されたゴム組成物で形成されている。
【0024】
接着ゴム層12及び圧縮ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDMなど)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。接着ゴム層12及び圧縮ゴム層13のゴム成分は背面ゴム層11のゴム成分と同一であることが好ましい。配合剤としては、背面ゴム層11と同様、例えば、補強剤、充填剤、老化防止剤、軟化剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等が挙げられる。但し、接着ゴム層12及び圧縮ゴム層13を形成するゴム組成物に含まれる架橋剤は、硫黄であってもよく、また、有機過酸化物であってもよく、さらに、それらの併用であってもよい。
【0025】
接着ゴム層12を形成するゴム組成物には、ナイロン短繊維等の短繊維が配合されていてもよい。圧縮ゴム層13を形成するゴム組成物には、ナイロン短繊維等の短繊維16が配合されていることが好ましい。圧縮ゴム層13に含まれる短繊維16は、ベルト幅方向に配向するように配設されていることが好ましく、また、プーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層13のVリブ15の表面から突出するように配設されていることが好ましい。短繊維16には、例えばレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液(以下「RFL水溶液」という。)に浸漬した後に加熱する接着処理が施されていていることが好ましい。短繊維16の配合量は、ゴム成分100質量部に対して例えば2〜70質量部である。
【0026】
背面ゴム層11、接着ゴム層12、及び圧縮ゴム層13は、それぞれ別々の配合のゴム組成物で形成されていてもよく、また、同じ配合のゴム組成物で形成されていてもよい。
【0027】
心線14は、ポリエステル繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維等の撚り糸で構成されている。心線14は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理及び/又はゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理が施されている。
【0028】
実施形態に係るVリブドベルトBでは、Vリブドベルト本体10を構成する背面ゴム層11の表面にマーク17が密着して設けられている。マーク17には、例えば、メーカー名、品番、ロット番号等の情報が含まれる。マーク17は、背面ゴム層11上で視認識別可能な色の顔料を添加したクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等で形成されている。マーク17の厚さは例えば5〜20μmである。
【0029】
また、実施形態に係るVリブドベルトBでは、背面ゴム層11の表面のマーク17を含む一定長の部分を被覆するようにシート材18が設けられており、従って、マーク17は背面ゴム層11とシート材18との間に狭持されるように埋設されている。ベルト背面を平プーリに巻き掛けるレイアウトで使用した場合における異音の発生を抑制する観点からは、シート材18は、背面ゴム層11に内側に埋まり、それによって背面ゴム層11のシート材18で被覆されていない部分と面一状に設けられていることが好ましい。つまり、背面ゴム層11とシート材18とのベルト背面(表面)における境界には段差が形成されていないことが好ましい。ここで、「段差が形成されていない」とは、それらの境界に平プーリとの接触により異音を発生しない程度に実質的に段差を有さないことを意味し、その表面における境界の高低差が15μm以下であることをいう。シート材18の厚さは例えば20〜80μmである。
【0030】
シート材18は、ジエン系ゴムからなるゴム材料で形成されている。シート材18を形成するゴム材料は、ジエン系ゴムのみで構成されていてもよく、また、ジエン系ゴムをゴム成分として配合剤が配合されたゴム組成物で構成されていてもよい。ジエン系ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらのうちポリブタジエンゴムが好ましく、1,2−ポリブタジエンゴムがより好ましく、シンジオタクチックの1,2−ポリブタジエンゴムがさらに好ましい。
【0031】
シート材18は、Vリブドベルト本体10を構成する背面ゴム層11を形成するゴム組成物と共に硫黄により加硫されて背面ゴム層11と一体化している。つまり、シート材18を形成するゴム材料に含まれるジエン系ゴムと背面ゴム層11を形成するゴム組成物に含まれるゴム成分とが硫黄により架橋されている。これらの架橋構造は、IR法による残存二重結合の定量によって確認することができる。
【0032】
シート材18は、透明乃至半透明である。ここで、「透明乃至半透明」とは、背面ゴム層11上のマーク17が外部から視認可能な程度の透過率を有することを意味し、具体的には、JIS K7361−1に基づいて測定される全光線透過率が、好ましくは40%以上であり、より好ましくは60%以上である。
【0033】
ここで、特許文献2に記載されているように、ベルト本体のベルト背面上に熱可塑性樹脂フィルムを積層して溶融付着させた場合、ベルト背面を平プーリに巻き掛けるレイアウトで使用したとき、熱可塑性樹脂フィルムが摩擦熱により溶融して平プーリに粘着するという問題がある。しかしながら、以上の構成の実施形態に係るVリブドベルトBによれば、マーク17がVリブドベルト本体10を構成する背面ゴム層11と透明乃至半透明のシート材18との間に設けられているので、擦り減りや消失を抑制することができる。加えて、シート材18がジエン系ゴムからなるゴム材料で形成され、それによって背面ゴム層11を形成するゴム組成物と共に硫黄により加硫されてVリブドベルト本体10と一体化して耐熱性が高められているので、ベルト背面を平プーリに巻き掛けるレイアウトで使用されるような場合に、平プーリ(外部物品)との接触による摩擦により粘着性が発生するのを防止することができる。
【0034】
図3は、実施形態に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置20のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置20は、VリブドベルトBが4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
【0035】
この補機駆動ベルト伝動装置20は、最上位置のパワーステアリングプーリ21と、そのパワーステアリングプーリ21のやや右斜め下方に配置されたACジェネレータプーリ22と、パワーステアリングプーリ21の左斜め下方で且つACジェネレータプーリ22の左斜め上方に配置された平プーリのテンショナプーリ23と、ACジェネレータプーリ22の左斜め下方で且つテンショナプーリ23の直下方に配置された平プーリのウォーターポンププーリ24と、テンショナプーリ23及びウォーターポンププーリ24の左斜め下方に配置されたクランクシャフトプーリ25と、ウォーターポンププーリ24及びクランクシャフトプーリ25の左斜め下方に配置されたエアコンプーリ26とを備える。これらのうち、平プーリであるテンショナプーリ23及びウォーターポンププーリ24以外は全てリブプーリである。これらのリブプーリ及び平プーリは、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂成形品で構成されており、また、プーリ径がφ50〜150mmである。
【0036】
この補機駆動ベルト伝動装置20において、VリブドベルトBは、Vリブ15側が接触するようにパワーステアリングプーリ21に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ23に巻き掛けられた後、Vリブ15側が接触するようにクランクシャフトプーリ25及びエアコンプーリ26に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ24に巻き掛けられ、そして、Vリブ15側が接触するようにACジェネレータプーリ22に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ21へと戻るように設けられている。
【0037】
この補機駆動ベルト伝動装置20では、実施形態に係るVリブドベルトBのベルト背面が平プーリであるテンショナプーリ23及びウォーターポンププーリ24に巻き掛けられて用いられるが、マーク17がVリブドベルト本体10を構成する背面ゴム層11と透明乃至半透明のシート材18との間に設けられているので、テンショナプーリ23及びウォーターポンププーリ24との摩擦によるマーク17の擦り減りや消失を抑制することができ、加えて、シート材18が、ジエン系ゴムからなるゴム材料で形成され、それによって背面ゴム層11を形成するゴム組成物と共に硫黄により加硫されてVリブドベルト本体10と一体化して耐熱性が高められているので、テンショナプーリ23及びウォーターポンププーリ24(外部物品)との接触による摩擦により粘着性が発生するのを防止することができる。
【0038】
次に、実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法の一例について
図4〜9に基づいて説明する。
【0039】
実施形態に係るVリブドベルトBの製造において、まず、ゴム成分に架橋剤としての硫黄を含む各種配合剤を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して背面ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’(未加硫ゴム組成物)を作製する。この背面ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’は架橋剤として硫黄を含んだものとなる。同様に、接着ゴム層12用及び圧縮ゴム層13用の未架橋ゴムシート12’,13’も作製する。また、心線14となる撚り糸14’をRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理を行い、必要に応じて、撚り糸14’をゴム糊に浸漬して加熱乾燥する接着処理を行う。さらに、ジエン系ゴムからなるゴム材料で形成された透明乃至半透明のシート材18の表面にマーク17が反転してプリントされたマークプリントシート19を準備する。マークプリントシート19のシート材18を形成するゴム材料には、架橋剤として硫黄が配合されていなくてもよく、また逆に、架橋剤として硫黄が配合されていてもよい。マークプリントシート19の厚さは例えば25〜100μmである。
【0040】
次いで、
図4に示すように、背面ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’の外側となる表面にマークプリントシート19を、マーク17のプリントされた側が未架橋ゴムシート11’に接触するように配置して貼設する。なお、背面ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’にマークプリントシート19を貼設するのに代えて、後述の円筒型31(成形型)の外周面に、マークプリントシート19を、マーク17のプリントされていない側が円筒型31に接触するように配置して貼設し、その上に背面ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を設けてもよい。
【0041】
次いで、
図5に示すように、円筒型31の外周面に、背面ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を、マークプリントシート19を貼設した側が円筒型31に接触するように巻き付け、その上から接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’を巻き付けて積層し、その上から心線14用の撚り糸14’を円筒型31に対して螺旋状に巻き付け、さらにその上から接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’及び圧縮ゴム層13用の未架橋ゴムシート13’を順に巻き付けて積層することによりベルト形成用成形体B’を成形する(ベルト形成用成形体成形工程)。
【0042】
次いで、
図6に示すように、ベルト形成用成形体B’にゴムスリーブ32を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉すると共に、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填し、その状態を所定時間だけ保持する。このとき、未架橋ゴムシート11’,12’,13’が架橋されて円筒状のVリブドベルト本体10の前駆構造が形成されると共に、そのVリブドベルト本体10の前駆構造に撚り糸14’が接着されて複合化する。また、マークプリントシート19のマーク17が、Vリブドベルト本体10の前駆構造における未架橋ゴムシート11’が架橋して形成された部分に密着すると共に、シート材18もが、そこに含まれていた架橋剤の硫黄及び/又は未架橋ゴムシート11’に含まれていた架橋剤の硫黄により加硫されてVリブドベルト本体10の前駆構造と一体化し、
図7に示すように全体として円筒状のベルトスラブSが成型される(加硫工程)。このベルトスラブSでは、シート材18は、Vリブドベルト本体10の前駆構造に埋まり、それによってVリブドベルト本体10の前駆構造の外周面と面一状に設けられる。ベルトスラブSの成型温度は例えば100〜180℃、成型圧力は例えば0.5〜2.0MPa、成型時間は例えば10〜60分である。
【0043】
次いで、加硫缶内から蒸気を排出して密閉を解き、円筒型31上に成型されたベルトスラブSを取り出す。
【0044】
続いて、
図8に示すように、ベルトスラブSを一対のスラブ懸架軸33間に掛け渡すと共に、ベルトスラブSの外周面に対し、周方向に延びるVリブ形状溝が外周面の軸方向に連設された研削砥石34を回転させながら当接させ、また、ベルトスラブSも一対のスラブ懸架軸33間で回転させることにより、その外周面を全周に渡って研削する。このとき、
図9に示すように、ベルトスラブSの外周面にはVリブ15が形成され、また、そのVリブ15の表面から短繊維16が突出した形態が得られる。
【0045】
そして、研削によりVリブ15を形成したベルトスラブSを所定幅に幅切りして表裏を裏返すことにより実施形態に係るVリブドベルトBが得られる。
【0046】
なお、実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法はこれに限定されず、例えば、可撓性を有する円筒状の内型の外周上にベルト形成用成形体を成形した後、それを内壁にVリブ形成溝が形成された剛性を有する円筒状の外型内に配置して密封し、そして、内型内を高圧にして膨張させることにより、ベルト形成用成形体を高温にした外型の内壁に圧接させる方法を採用してもよい。
【0047】
以上の実施形態では、伝動ベルトとしてVリブドベルトBを例としたが、特にこれに限定されるものではなく、その他のVベルト、平ベルト、歯付ベルトであってもよい。
【実施例】
【0048】
(Vリブドベルト)
<実施例1>
上記実施形態の製造方法と同一の方法によりVリブドベルトを作製し、それを実施例1とした。具体的には、背面ゴム層、接着ゴム層、及び圧縮ゴム層のいずれを形成するゴム組成物も、ゴム成分にはEPDM及び架橋剤には硫黄を用いた。また、圧縮ゴム層を形成するゴム組成物にはナイロン短繊維を含有させた。心線には、RFL水溶液及びゴム糊による接着処理を施したPET繊維製の撚り糸を用いた。マークプリントシートには、シンジオタクチックの1,2−ポリブタジエンゴムの厚さ50μmのシート材(JIS K7361−1に基づいて測定される全光線透過率:82%)に、顔料を添加したCSMによりマークを反転してプリントしたものを用いた。作製したVリブドベルトは、ベルト長さが1200mm及びベルト厚さが4.3mmであり、リブ数が3個のベルト幅が10.68mmのものである。
【0049】
実施例1のVリブドベルトでは、シート材がVリブドベルト本体に埋まり、そのためVリブドベルト本体とシート材とのベルト背面における境界に段差が形成されていなかった。ベルト背面におけるそれらの境界の高低差は8μmであった。
【0050】
<比較例1>
マークプリントシートの代わりに、厚さ50μmのアセテート樹脂フィルムにマークを反転してプリントしたマーク転写シートを用いたことを除いて実施例1と同一の方法によりVリブドベルトを作製し、それを比較例1とした。
【0051】
比較例1のVリブドベルトでは、ベルトスラブの成型後にアセテート樹脂フィルムを剥がし、それによってベルト背面のアセテート樹脂フィルムを剥がした跡には深さ50μm程度の凹部が形成され、そのためVリブドベルト本体とアセテート樹脂フィルムが設けられていた部分とのベルト背面における境界に段差が形成されていた。ベルト背面におけるそれらの境界の高低差は45μmであった。
【0052】
<比較例2>
マークプリントシートの代わりに、ゴム糊を含浸させた綿の不織布シートの表側になる面にマークを反転させずにプリントしたものを用いたことを除いて実施例1と同一の方法によりVリブドベルトを作製し、それを比較例2とした。
【0053】
比較例2のVリブドベルトでは、マークをプリントした不織布シートがVリブドベルト本体に埋まり、そのためVリブドベルト本体と不織布シートとのベルト背面における境界に段差が形成されていなかった。ベルト背面におけるそれらの境界の高低差は10μmであった。
【0054】
<比較例3>
マークプリントシートの代わりに、エチレン酢酸ビニル共重合体の熱可塑性樹脂フィルムにマークを反転してプリントしたものを用いたことを除いて実施例1と同一の方法によりVリブドベルトを作製し、それを比較例3とした。
【0055】
比較例3のVリブドベルトでは、マークをプリントした熱可塑性樹脂フィルムがVリブドベルト本体に埋まり、そのためVリブドベルト本体と熱可塑性樹脂フィルムとのベルト背面における境界に段差が形成されていなかった。ベルト背面におけるそれらの境界の高低差は10μmであった。
【0056】
(試験評価方法)
<異音試験>
図10は、異音試験用のベルト走行試験機40のプーリレイアウトを示す。
【0057】
異音試験用のベルト走行試験機40は、プーリ径がφ120mmの駆動プーリ41と、その右方に設けられたプーリ径がφ120mmの第1従動プーリ42と、駆動プーリ41の下方に設けられたプーリ径がφ120mmの第2従動プーリ43と、第1及び第2従動プーリ42,43間に設けられたプーリ径がφ70mmのアイドラプーリ44とで構成されている。駆動プーリ41並びに第1及び第2従動プーリ42,43はリブプーリであり、アイドラプーリ44は平プーリである。第1従動プーリ42は、巻き掛けたVリブドベルトBにデッドウエイトDWを負荷できるように左右方向に可動に設けられている。
【0058】
実施例1及び比較例1〜3のそれぞれのVリブドベルトBについて、上記異音試験用のベルト走行試験機40に、Vリブ側が駆動プーリ41並びに第1及び第2従動プーリ42,43に、また、ベルト外面側がアイドラプーリ44に、それぞれ接触するように巻き掛け、また、第1従動プーリ42に右方に荷重をかけてVリブドベルトBにVリブ1つ当たり196NのデッドウエイトDWを負荷した。そして、25±5℃の温度雰囲気下において、駆動プーリ41を600rpmの回転数で回転させ、アイドラプーリ44における異音の発生の有無を耳で確認した。
【0059】
<小プーリ屈曲試験>
図11は、小プーリ屈曲試験用のベルト走行試験機50のプーリレイアウトを示す。
【0060】
小プーリ屈曲試験用のベルト走行試験機50は、プーリ径がφ60mmの駆動プーリ51と、その上方に設けられたプーリ径がφ60mmの第1従動プーリ52と、駆動プーリ51と第1従動プーリ52との中間部の右方に設けられたプーリ径がφ60mmの第2従動プーリ53と、駆動プーリ51と第1従動プーリ52との中間部の右側に上下に間隔をおいて設けられた、各々、プーリ径がφ50mmの一対のアイドラプーリ54とで構成されている。駆動プーリ51並びに第1及び第2従動プーリ52,53はリブプーリであり、アイドラプーリ54は平プーリである。第1従動プーリ52は、巻き掛けたVリブドベルトBにデッドウエイトDWを負荷できるように上下方向に可動に設けられている。
【0061】
実施例1及び比較例1〜3のそれぞれのVリブドベルトBについて、上記小プーリ屈曲試験用のベルト走行試験機50に、Vリブ側が駆動プーリ51並びに第1及び第2従動プーリ52,53に、また、ベルト外面側がアイドラプーリ54に、それぞれ接触するように巻き掛け、また、第1従動プーリ52に上方に荷重をかけてVリブドベルトBにVリブ3つ当たり588NのデッドウエイトDWを負荷した。そして、20℃の温度雰囲気下において、駆動プーリ51を5100rpmの回転数で回転させて1500時間ベルト走行させた後、ベルト背面のマークの消失の有無を目視にて確認した。
【0062】
<小プーリ耐熱耐久性試験>
図12は、小プーリ耐熱耐久性試験用のベルト走行試験機60のプーリレイアウトを示す。
【0063】
小プーリ耐熱耐久性試験用のベルト走行試験機60は、第1及び第2従動プーリ62,63のプーリ径が50mmである点を除いて、小プーリ屈曲試験用のベルト走行試験機50と同じである。
【0064】
実施例1及び比較例1〜3のそれぞれのVリブドベルトBについて、上記小プーリ耐熱耐久性試験用のベルト走行試験機60に、Vリブ側が駆動プーリ61並びに第1及び第2従動プーリ62,63に、また、ベルト外面側がアイドラプーリ64に、それぞれ接触するように巻き掛け、また、第1従動プーリ62に上方に荷重をかけてVリブドベルトBにVリブ3つ当たり588NのデッドウエイトDWを負荷した。そして、120℃の温度雰囲気下において、駆動プーリ61を5100rpmの回転数で回転させて1500時間ベルト走行させた後、ベルト背面の状態を目視にて確認した。
【0065】
(試験評価結果)
表1は試験評価結果を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
異音試験の結果は、ベルト背面に段差を有さない実施例1、比較例2、及び比較例3では異音の発生は認められなかったのに対し、ベルト背面に段差を有する比較例1ではその段差に基づく異音の発生が認められた。
【0068】
小プーリ屈曲試験の結果は、1500時間の走行後の実施例1、比較例1、及び比較例3ではマークの消失は認められなかったのに対し、1500時間の走行後の比較例2ではマーク剥がれ乃至消失が認められた。
【0069】
小プーリ耐熱耐久性試験の結果は、50時間の走行後の実施例1、比較例1、及び比較例2では粘着性の発生は認められなかったのに対し、50時間の走行後の比較例3ではエチレン酢酸ビニル共重合体の熱可塑性樹脂フィルムが摩擦熱により溶融して粘着性の発生が認められた。