特許第6227539号(P6227539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227539
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ズームレンズシステムおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/16 20060101AFI20171030BHJP
   G02B 13/14 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G02B15/16
   G02B13/14
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-536608(P2014-536608)
(86)(22)【出願日】2013年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2013005594
(87)【国際公開番号】WO2014045596
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2016年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-206720(P2012-206720)
(32)【優先日】2012年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(73)【特許権者】
【識別番号】512244772
【氏名又は名称】シーア テクノロジース リミティッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Theia Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】大江 和広
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン ジェフリー アライン
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−007824(JP,A)
【文献】 特開2011−130014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側からの光を中間像として結像させる第1の光学系と、
前記中間像からの光を最終像として結像させる第2の光学系とから構成され、
前記第1の光学系は、変倍する際に移動しない固定レンズ群から構成され、
前記第2の光学系は、変倍する際に移動する変倍レンズ群を含み、
前記固定レンズ群は、最も前記物体側に配置され前記物体側に凸面を向けた第1の負メニスカスレンズを備えた負の屈折力の第1の固定レンズ群と、
前記第1の固定レンズ群の前記最終像側に配置された正の屈折力の第2の固定レンズ群と、
前記第1の固定レンズ群および前記第2の固定レンズ群の間に配置された絞りとを含み、
前記第2の固定レンズ群は、最も前記物体側に配置された第1の接合レンズを含み、
前記第1の接合レンズは、前記物体側から順に配置された両凸の正レンズおよび両凹の負レンズを含む、ズームレンズシステム。
【請求項2】
請求項において、
前記第1の接合レンズは、前記負レンズの前記最終像側に配置された両凸の正レンズを含む、ズームレンズシステム。
【請求項3】
物体側からの光を中間像として結像させる第1の光学系と、
前記中間像からの光を最終像として結像させる第2の光学系とから構成され、
前記第1の光学系は、変倍する際に移動しない固定レンズ群から構成され、
前記第2の光学系は、変倍する際に移動する変倍レンズ群を含み、
前記固定レンズ群は、最も前記物体側に配置され前記物体側に凸面を向けた第1の負メニスカスレンズを含み、
前記第2の光学系は、前記変倍レンズ群の前記物体側に配置された変倍する際に移動しない負の屈折力の第3の固定レンズ群を含む、ズームレンズシステム。
【請求項4】
請求項において、
前記中間像と前記第3の固定レンズ群の最も前記物体側のレンズ面との間の光軸上の距離は、前記中間像と前記固定レンズ群の最も前記最終像側のレンズ面との間の光軸上の距離よりも短い、ズームレンズシステム。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記第3の固定レンズ群は、最も前記最終像側に配置され前記最終像側に凸面を向けた第1の正メニスカスレンズを含み、
前記第1の負メニスカスレンズの屈折率n1と、前記第1の正メニスカスレンズの屈折率n3とが以下の条件を満たす、ズームレンズシステム。
n1≧1.65
n3≧1.90
0.82≦n1/n3<1.00
【請求項6】
請求項において、
前記第3の固定レンズ群は、最も前記最終像側に配置された第2の接合レンズを含み、
前記第2の接合レンズは、前記物体側から順に配置された前記最終像側に凸面を向けた第2の負メニスカスレンズおよび前記第1の正メニスカスレンズから構成され、
前記第2の負メニスカスレンズのアッベ数ν32と、前記第1の正メニスカスレンズのアッベ数ν33とが以下の条件を満たす、ズームレンズシステム。
45.0≦ν32≦55.0
15.0≦ν33≦25.0
【請求項7】
物体側からの光を中間像として結像させる第1の光学系と、
前記中間像からの光を最終像として結像させる第2の光学系とから構成され、
前記第1の光学系は、変倍する際に移動しない固定レンズ群から構成され、
前記第2の光学系は、変倍する際に移動する変倍レンズ群を含み、
前記固定レンズ群は、最も前記物体側に配置され前記物体側に凸面を向けた第1の負メニスカスレンズを含み、
前記変倍レンズ群は、広角端から望遠端に変倍する際に前記最終像側から前記物体側へ移動する正の屈折力の第1の移動レンズ群と、
前記第1の移動レンズ群の前記最終像側に配置され広角端から望遠端に変倍する際に前記最終像側から前記物体側へ移動する正の屈折力の第2の移動レンズ群とを含み、
前記第1の移動レンズ群は、最も前記最終像側に配置された第1の正レンズから構成され、
前記第2の移動レンズ群は、前記物体側から順に配置された第2の正レンズ、第1の負レンズおよび第3の正レンズから構成され、
前記第1の正レンズの部分分散比Pgf41と、前記第2の正レンズの部分分散比Pgf51と、前記第1の負レンズの部分分散比Pgf52と、前記第3の正レンズの部分分散比Pgf53とが以下の条件を満たす、ズームレンズシステム。
0.53≦Pgf41≦0.55
0.53≦Pgf53≦0.55
0.55≦Pgf51≦0.58
0.58≦Pgf52≦0.66
【請求項8】
請求項1ないしのいずれかに記載のズームレンズシステムと、
前記ズームレンズシステムの前記最終像が結像される位置に配置された撮像デバイスとを有する、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズシステムおよびそれを用いた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国特許公開2003−232993号公報(文献1)には、レンズ枚数が少なくても良好な結像性能を維持できる中間結像を持つ屈折光学系を提供することが記載されている。そのため、この文献1には、物体の中間像を形成する結像レンズ群と、中間像の形成位置の近傍に配置されたフィールドレンズ群と、中間像を再結像するリレーレンズ群とを備えた屈折光学系であって、結像レンズ群の焦点距離f1と屈折光学系の焦点距離fとは、条件式「1<|f1/f|<3」を満足することが記載されている。
【発明の概要】
【0003】
広角端において全画角が110度を超えるような広角のズームレンズシステムにおいて、鮮明な像が得られるコンパクトなズームレンズシステムが要望されている。
【0004】
本発明の態様の1つは、物体側からの光を中間像として結像させる第1の光学系と、中間像からの光を最終像として結像させる第2の光学系とから構成され、第1の光学系は、変倍する際に移動しない固定レンズ群から構成され、第2の光学系は、変倍する際に移動する変倍レンズ群を含み、固定レンズ群は、最も物体側に配置され物体側に凸面を向けた第1の負メニスカスレンズを含むズームレンズシステムである。
【0005】
このズームレンズシステムにおいて、第1の光学系は、最も物体側に第1の負メニスカスレンズが凸面を物体側に向けて配置された広角のレンズ群である。このレンズ群は、第1の負メニスカスレンズを通過した光束を、光軸を挟んで反対側に導いて中間像として倒立像を形成し、第2の光学系により最終結像させている。さらに、このズームレンズシステムにおいては、変倍に際して、第2の光学系に含まれる変倍レンズ群が動き、第1の光学系を構成する広角の固定レンズ群は動かない。中間像を結像させる第1の光学系を固定できるので、中間像の結像位置も固定できる。このため、ズーミングに伴い中間像の結像位置が変動することはなく、広角端から望遠端に至る各ズームポジションにおいて、中間像面がレンズ表面やレンズ内に位置することを抑制できる。したがって、レンズ表面の傷やゴミなどの異物が最終像へ写り込むことを抑制できる。
【0006】
さらに、第1の光学系を固定することにより中間像の結像位置を固定できるので、第1の光学系のバックフォーカスが短くなるように設計できる。このため、広角化を図りやすく、第1の光学系の全長を短縮できるので、ズームレンズシステムの全長も短縮化しやすい。さらに、変倍に際して第1の光学系が固定されているため、ズーミングのための駆動機構を第2の光学系の近傍に集約できるので、ズーミング機構を簡素化できる。したがって、鮮明な最終像を結像できるコンパクトな広角ズームレンズシステムを提供できる。
【0007】
固定レンズ群は、第1の負メニスカスレンズを備えた負の屈折力の第1の固定レンズ群と、第1の固定レンズ群の最終像側に配置された正の屈折力の第2の固定レンズ群と、第1の固定レンズ群および第2の固定レンズ群の間に配置された絞りとを含む。ズームレンズシステムの入射瞳を絞りの物体側に位置させやすく、第1の固定レンズ群に近付けやすい。このため、第1の負メニスカスレンズのレンズ口径を大型化させることなく広角化を図りやすい。
【0008】
第2の固定レンズ群は、最も物体側に配置された第1の接合レンズを含み、第1の接合レンズは、物体側から順に配置された両凸の正レンズおよび両凹の負レンズを含む。入射瞳の最終像側に第1の接合レンズを配置することにより、色収差を効果的に補正できる。第1の接合レンズは、負レンズの最終像側に配置された両凸の正レンズを含むことがさらに望ましい。
【0009】
第2の光学系は、変倍レンズ群の物体側に配置され変倍する際に移動しない負の屈折力の第3の固定レンズ群を含むことが望ましい。第1の光学系を固定することにより中間像の結像位置を固定でき、さらに、中間像と変倍レンズ群との間に第3の固定レンズ群を配置することにより、中間像を固定レンズ群および第3の固定レンズ群により挟むことができる。したがって、ズーミングの際に中間像面がレンズ表面やレンズ内に位置することをいっそう効果的に抑制できる。
【0010】
中間像と第3の固定レンズ群の最も物体側のレンズ面との間の光軸上の距離は、中間像と固定レンズ群の最も最終像側のレンズ面との間の光軸上の距離よりも短いことが望ましい。ズームレンズシステムであって、中間像を物体側および最終像側から挟むそれぞれのレンズ群を固定することにより、中間像と第3の固定レンズ群の最も物体側のレンズ面との間の距離を、中間像と固定レンズ群の最も最終像側のレンズ面との間の距離よりも短くなる関係を維持できる。この関係により、第3の固定レンズ群のフロントフォーカスを固定レンズ群のバックフォーカスよりも短くできるので、第3の固定レンズ群のレンズ口径を小型化しやすい。
【0011】
第3の固定レンズ群は、最も最終像側に配置され最終像側に凸面を向けた第1の正メニスカスレンズを含み、第1の負メニスカスレンズの屈折率n1と、第1の正メニスカスレンズの屈折率n3とが以下の条件(1.1)〜(1.3)を満たすことが望ましい。
n1≧1.65 ・・・(1.1)
n3≧1.90 ・・・(1.2)
0.82≦n1/n3<1.00 ・・・(1.3)
【0012】
このズームレンズシステムにおいては、条件(1.1)〜(1.3)の条件を成立させることにより、広角化を図るために高屈折率の第1の負メニスカスレンズが発生させた強い負の歪曲収差を、高屈折率の第1の正メニスカスレンズが発生させた逆向きの強い正の歪曲収差により相殺できる。したがって、このズームレンズシステムにより歪曲収差が良好に補正された最終像を結像させやすい。
【0013】
典型的には、このズームレンズシステムにより、負の歪曲収差DistLfと、正の歪曲収差DistLbとが以下の条件(1.4)および(1.5)を満たすように設計できる。
DistLf≧−10 ・・(1.4)
0.98≦|DistLf|/|DistLb|≦1.02・・(1.5)
【0014】
第3の固定レンズ群は、最も最終像側に配置された第2の接合レンズを含み、第2の接合レンズは、物体側から順に配置された最終像側に凸面を向けた第2の負メニスカスレンズおよび第1の正メニスカスレンズから構成され、第2の負メニスカスレンズのアッベ数ν32と、第1の正メニスカスレンズのアッベ数ν33とが以下の条件(A)および(B)を満たすことが望ましい。
45.0≦ν32≦55.0 ・・・(A)
15.0≦ν33≦25.0 ・・・(B)
【0015】
このズームレンズシステムにおいては、第2の負メニスカスレンズに弱い分散力(低分散)を与えるために条件(A)を設定し、第1の正メニスカスレンズに強い分散力(高分散)を与えるために条件(B)を設定している。このため、低分散の第2の負メニスカスレンズと高分散の第1の正メニスカスレンズとを組み合わせることにより、可視領域から近赤外領域にわたって色収差を良好に補正できる。
【0016】
変倍レンズ群は、広角端から望遠端に変倍する際に最終像側から物体側へ移動する正の屈折力の第1の移動レンズ群と、第1の移動レンズ群の最終像側に配置され広角端から望遠端に変倍する際に最終像側から物体側へ移動する正の屈折力の第2の移動レンズ群とを含み、第1の移動レンズ群は、最も最終像側に配置された第1の正レンズから構成され、第2の移動レンズ群は、物体側から順に配置された第2の正レンズ、第1の負レンズおよび第3の正レンズから構成され、第1の正レンズの部分分散比Pgf41と、第2の正レンズの部分分散比Pgf51と、第1の負レンズの部分分散比Pgf52と、第3の正レンズの部分分散比Pgf53とが以下の条件(2.1)〜(2.4)を満たすことが望ましい。
0.53≦Pgf41≦0.55 ・・・(2.1)
0.53≦Pgf53≦0.55 ・・・(2.2)
0.55≦Pgf51≦0.58 ・・・(2.3)
0.58≦Pgf52≦0.66 ・・・(2.4)
【0017】
条件(2.1)および(2.2)は、第1の移動レンズ群の最も物体側の第1の正レンズの部分分散比Pgf41と、第2の移動レンズ群の最も最終像側の第3の正レンズの部分分散比Pgf53とをほぼ等しいバランスで低く設定することを示す。さらに、条件(2.3)は、第2の正レンズの部分分散比Pgf51を条件(2.1)および(2.2)よりもやや高く設定し、条件(2.4)は、第1の負レンズの部分分散比Pgf52を変倍レンズ群の中で最も高く設定することを示す。上記の条件(2.1)〜(2.4)を満たすことにより、ズーミングに伴う色収差変動を抑制しやすく、諸収差が良好に補正された最終像を結像させやすい。さらに、第1の正レンズと、条件(2.1)を満たす正の屈折力のレンズとを貼り合わせることにより、ズームレンズシステムの色収差をいっそう良好に補正することができる。
【0018】
本発明の異なる態様の1つは、上記ズームレンズシステムと、ズームレンズシステムの最終像が結像される位置に配置された撮像デバイスとを有する撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係るズームレンズシステムおよびそれを用いた撮像装置の概略構成を示す図であり、(a)は広角端におけるレンズ配置を示し、(b)は望遠端におけるレンズ配置を示す。
図2】第1の実施形態に係るズームレンズシステムのレンズデータを示す図。
図3】第1の実施形態に係るズームレンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)はズームデータを示し、(c)は非球面データを示す。
図4】第1の実施形態に係るズームレンズシステムの収差図であり、(a)は広角端における収差図を示し、(b)は望遠端における収差図を示す。
図5】第1の実施形態に係るズームレンズシステムの第1の光学系の収差図。
図6】第2の実施形態に係るズームレンズシステムおよびそれを用いた撮像装置の概略構成を示す図であり、(a)は広角端におけるレンズ配置を示し、(b)は望遠端におけるレンズ配置を示す。
図7】第2の実施形態に係るズームレンズシステムのレンズデータを示す図。
図8】第2の実施形態に係るズームレンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)はズームデータを示し、(c)は非球面データを示す。
図9】第2の実施形態に係るズームレンズシステムの収差図であり、(a)は広角端における収差図を示し、(b)は望遠端における収差図を示す。
図10】第2の実施形態に係るズームレンズシステムの第1の光学系の収差図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の第1の実施形態に係るズームレンズシステム10およびそれを用いた撮像装置1の概略構成を示しており、図1(a)は広角端(WIDE)におけるレンズ配置を示し、図1(b)は望遠端(TELE)におけるレンズ配置を示している。撮像装置(カメラ)1は、ズームレンズシステム10と、ズームレンズシステム10の最終像52が結像される位置に配置され、最終像52を電気信号(画像データ)に変換するCCDやCMOSなどの撮像デバイス(撮像素子、イメージセンサー)50とを有する。
【0021】
ズームレンズシステム10は、物体側10aから順に、物体側10aからの光を中間像51として結像させる第1の光学系(1次結像レンズ群)11と、中間像51からの光を最終像52として結像させる第2の光学系(2次結像レンズ群、リレーレンズ群)12とから構成されている。1次結像レンズ群11は、ズームレンズシステム10が変倍する際に移動しない固定広角レンズ群(固定レンズ群)11aである。本例の固定広角レンズ群11aは、物体側10aから順に、負の屈折力の第1の固定レンズ群G1と、絞り(開口絞り)Stと、正の屈折力の第2の固定レンズ群G2とから構成されている。
【0022】
リレーレンズ群12は、物体側10aから順に、変倍する際に移動しない負の屈折力の第3の固定レンズ群G3と、変倍する際に移動する変倍レンズ群12aとから構成されている。変倍レンズ群12aは、変倍する際に移動する正の屈折力の第1の移動レンズ群G4と、変倍する際に移動する正の屈折力の第2の移動レンズ群G5とから構成されている。リレーレンズ群12の最終像側(像側)10bには、カバーガラスCGを挟んで撮像デバイス50が配置されている。撮像デバイス50は、画像データをパーソナルコンピュータなどのホスト装置に提供したり、コンピュータネットワークなどを介して外部の情報処理装置に伝送したりできる。
【0023】
このズームレンズシステム10は、1次結像レンズ群11およびリレーレンズ群12から構成される再結像型レンズシステム(2段光学系)であり、全体が13枚のガラス製のレンズL11、L12、L21〜L25、L31、L32、L41、およびL51〜L53により構成されている。
【0024】
このズームレンズシステム10は、1次結像レンズ群11とリレーレンズ群12との間に中間像51を結像させ、リレーレンズ群12の最終像側10bに最終像52を結像させる。すなわち、このズームレンズシステム10においては、1次結像レンズ群11が、光軸100を含む第1の面100xに対して一方の領域(上側半分の領域、第1の領域)100aから入射する光束を第1の固定レンズ群G1で光軸100に沿った方向に集め、第2の固定レンズ群G2で収束させて第1の領域100aとは反対側、すなわち光軸100を含む第1の面100xに対して他方の領域(下側半分の領域、第2の領域)100bに倒立した中間像(倒立像)51として結像させる。さらに、リレーレンズ群12が、中間像51から出射する光束を第3の固定レンズ群G3で発散させた後、第1および第2の移動レンズ群G4、G5で変倍させながら収束させて第1の領域100aに中間像51の上下左右が反転した最終像(正立像)52として結像させることができる。
【0025】
最も物体側10aの第1の固定レンズ群G1は、全体が負の屈折力を備えたレンズ群であり、物体側10aから順に配置された、物体側10aに凸面S1を向けた第1の負メニスカスレンズL11と、物体側10aに凸の負メニスカスレンズL12とから構成されている。第1の負メニスカスレンズL11は、ズームレンズシステム10の中で最も大きな有効径(口径)のレンズであるが、その有効径は16.50mmと非常にコンパクトである。負メニスカスレンズL12の両面、すなわち物体側10aの凸面S3および最終像側10bの凹面S4のそれぞれは非球面である。
【0026】
第1の固定レンズ群G1の最終像側10bに絞りStを挟んで配置された第2の固定レンズ群G2は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、物体側10aから順に配置された、3枚貼合の第1の接合レンズ(バルサムレンズ)LB1と、両凸の正レンズL24と、物体側10aに凸の正メニスカスレンズL25とから構成されている。第1の接合レンズLB1は、物体側10aから順に配置された、両凸の正レンズL21と、両凹の負レンズL22と、両凸の正レンズL23とから構成されている。正レンズL24の両面、すなわち物体側10aの凸面S9および最終像側10bの凸面S10のそれぞれは非球面である。正メニスカスレンズL25の最終像側10bの凹面S12と中間像51との間の光軸100上の距離dmia(d12a)は、3.34mmである。
【0027】
第2の固定レンズ群G2の最終像側10bに中間像51を挟んで配置された第3の固定レンズ群G3は、全体が負の屈折力を備えたレンズ群であり、物体側10aから順に配置された、両凹の負レンズL31と、最終像側10bに凸面S16を向けた第1の正メニスカスレンズL32とから構成されている。中間像51と負レンズL31の物体側10aの凹面S13との間の光軸100上の距離dmib(d12b)は、2.10mmである。
【0028】
第3の固定レンズ群G3の最終像側10bに配置された第1の移動レンズ群G4は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、両凸の正レンズ(第1の正レンズ)L41から構成されている。
【0029】
最も最終像側10bに配置された第2の移動レンズ群G5は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、物体側10aから順に配置された、物体側10aに凸の正メニスカスレンズ(第2の正レンズ)L51と、両凹の負レンズ(第1の負レンズ)L52と、両凸の正レンズ(第3の正レンズ)L53とから構成されている。正レンズL53の両面、すなわち物体側10aの凸面S23および最終像側10bの凸面S24のそれぞれは非球面である。
【0030】
このズームレンズシステム10は、物体側10aから順に、屈折力が負−正−負−正−正の5つのレンズ群G1〜G5にグループ化された13枚のレンズL11〜L53により構成された、変倍可能なレンズシステムである。このズームレンズシステム10においては、広角端から望遠端に変倍する際に、固定レンズ群G1〜G3は動かず、すなわち入射光束の結像倍率は変更させず、移動レンズ群G4およびG5のそれぞれが最終像側10bから物体側10aへ光軸100に沿って単調に動くことにより、中間像51の結像倍率を変更させている。第1の移動レンズ群G4の移動距離(本例では8.84mm)は、第2の移動レンズ群G5の移動距離(本例では7.41mm)よりも僅かに長い。焦点調整(フォーカシング)は、第1の固定レンズ群G1、第2の固定レンズ群G2の正メニスカスレンズL25およびズームレンズシステム10の全体のいずれかにより行うことができる。
【0031】
このズームレンズシステム10においては、最も物体側10aに配置された第1の負メニスカスレンズL11の凸面S1を介して広範囲(広角度)から取り込んだ光束を、1次結像レンズ群11により光軸100を挟んで反対側(第2の領域100b)に導いて一旦倒立像51として中間結像(1次結像)させてから、リレーレンズ群12により光軸100を挟んで元の側(第1の領域100a)に導いて正立像52として最終結像(2次結像)させている。すなわち、最終像52は、軸外から入射した光(軸外光線)が光軸100を2回横切る(交差する、跨ぐ)ことにより、光軸100に対して入射した側の領域(第1の領域100a)に結像される。このため、広角の軸外光線を第1の領域100aのみで屈折させて最終結像させる必要がないので、諸収差の発生を抑制しながら広角化を図りやすい。したがって、設計の自由度も向上させやすい。
【0032】
このズームレンズシステム10においては、変倍に際して中間像51よりも最終像側10bのリレーレンズ群12に含まれる移動レンズ群G4およびG5が動き、中間像51を結像させる1次結像レンズ群11は動かず固定されている。このため、中間像51の結像位置を動かさずに固定できる。したがって、ズーミングに伴い中間像51の結像位置が変動することはなく、広角端から望遠端に至る各ズームポジションにおいて、中間像面がレンズ表面やレンズ内に位置することを抑制できる。このため、レンズ表面の傷やゴミなどの異物が最終像52へ写り込むことを抑制できる。さらに、このズームレンズシステム10においては、中間像51に最も近く、中間像51を光軸100方向の両側から挟む第2および第3の固定レンズ群G2、G3が固定されているので、撮像装置1に実装する際に中間像51の近傍の密封性を確保しやすく、中間像51の近傍への異物の混入を抑制できる。
【0033】
さらに、1次結像レンズ群11を固定することにより中間像51の結像位置を固定できるので、1次結像レンズ群11のバックフォーカスを極めて短くすることができる。このため、広角化を図りやすく、第1の光学系の全長を短縮できるので、ズームレンズシステムの全長も短縮化しやすい。さらに、変倍に際して1次結像レンズ群11が固定されているため、ズーミングのための駆動機構を第1および第2の移動レンズ群G4、G5の近傍に集約できるので、ズーミングのための駆動機構やカムの形状なども簡素化できる。このため、ズームレンズシステム10の全長を短縮化しやすく、物体側10aのレンズサイズを小型化しやすい。したがって、コンパクトな構成で広い視野角を確保でき、明るく鮮明な最終像52を結像可能なズームレンズシステム10を提供できる。
【0034】
このズームレンズシステム10においては、第1の固定レンズ群G1と第2の固定レンズ群G2との間に絞りStを配置させている。このため、ズームレンズシステム10の入射瞳EPを絞りStの物体側10aに位置させることができ、入射瞳EPを第1の固定レンズ群G1に近付けやすい。したがって、このズームレンズシステム10においては、1次結像レンズ群11が内部に入射瞳EPを有するので、入射瞳EPよりも物体側10aの第1の固定レンズ群G1を負の屈折力を備えたレンズのみで構成できる。このため、第1の負メニスカスレンズL11および負メニスカスレンズL12のレンズ口径を大型化させることなく、効果的に画角を広げて広角化を図ることができる。さらに、入射瞳EPの最終像側10bに第1の接合レンズLB1を配置することにより、分散の異なる第1の負メニスカスレンズL11および負メニスカスレンズL12が発生させた色収差を効果的に補正できる。なお、入射瞳EPの位置は、最も物体側10aに配置された第1の負メニスカスレンズL11の物体側10aの凸面S1からの距離を表し、本例では5.46mmである。
【0035】
このズームレンズシステム10においては、1次結像レンズ群11の最も最終像側10bに、ズームレンズシステム10の中で最も高い屈折率(本例では1.96)の正メニスカスレンズL25を配置させている。このため、正メニスカスレンズL25の強い屈折力により、入射光束の主光線を光軸100に向けて(内向きに)屈折させやすい。したがって、1次結像レンズ群11のバックフォーカス、すなわち正メニスカスレンズL25の凹面S12と中間像51との間の距離d12aを短くできる。このため、ズームレンズシステム10の全長を短縮化しやすい。さらに、高屈折率の正メニスカスレンズL25により軸外光線を光軸100に向けて集めやすいので、中間像51の像高が大型化することを抑制できる。このため、リレーレンズ群12の最も物体側10aに配置され、中間像51から発散する光束を最初に受ける負レンズL31のサイズを小型化しやすい。
【0036】
このズームレンズシステム10においては、1次結像レンズ群11によりコンパクトな中間像51を結像させることができるので、負レンズL31を中間像51に近付けやすい。このため、中間像51と負レンズL31の凹面S13との間の距離d12b(本例では2.10mm)が、正メニスカスレンズL25の凹面S12と中間像51との間の距離d12a(本例では3.34mm)よりも短くなるように配置できる。したがって、第3の固定レンズ群G3のフロントフォーカスを第2の固定レンズ群G2のバックフォーカスよりも短くできるので、第3の固定レンズ群G3のレンズ口径を小型化しやすく、ズームレンズシステム10の全長も短縮化しやすい。
【0037】
このズームレンズシステム10においては、物体側10aからの入射光を取り込む第1の固定レンズ群G1の第1の負メニスカスレンズL11の凸面S1と、中間像51からの出射光を取り込む第3の固定レンズ群G3の第1の正メニスカスレンズL32の凸面S16とが逆向きになるように配置し、さらに、第1の負メニスカスレンズL11の屈折率n1と、第1の正メニスカスレンズL32の屈折率n3とが以下の条件(1.1)〜(1.3)を満たすように設計されている。
n1≧1.65 ・・・(1.1)
n3≧1.90 ・・・(1.2)
0.82≦n1/n3<1.00 ・・・(1.3)
【0038】
このズームレンズシステム10においては、条件(1.1)〜(1.3)を成立させることにより、広角化を図るために高屈折率の第1の負メニスカスレンズL11が発生させた強い樽型の歪曲(負の歪曲)に対して、高屈折率の第1の正メニスカスレンズL32が逆向きの強い糸巻き型の歪曲(正の歪曲)を発生させることにより、正負の歪曲を打ち消してキャンセルできる。したがって、歪曲収差が良好に補正された最終像52を結像させやすい。
【0039】
条件(1.1)の上限は、2.25であることが好ましく、2.10であることがさらに好ましく、2.00であることがいっそう好ましい。条件(1.1)の下限は、1.75であることが好ましく、1.85であることがさらに好ましい。条件(1.2)の上限は、2.25であることが好ましく、2.10であることがさらに好ましく、2.00であることがいっそう好ましい。条件(1.2)の下限は、1.92であることが好ましく、1.94であることがさらに好ましい。
【0040】
条件(1.1)の上限を超えると、負の歪曲が大きくなり補正が困難となり、条件(1.1)の下限を超えると、広角化が困難となる。条件(1.2)の上限を超えると、正の歪曲が大きくなり補正が困難となり、条件(1.2)の下限を超えると、正の歪曲が小さくなり補正が困難となる。条件(1.3)の範囲を超えると、屈折率のバランスが崩れ歪曲収差を相殺することが困難となる。
【0041】
このズームレンズシステム10においては、1次結像レンズ群11に両面非球面の負メニスカスレンズL12と、両面非球面の正レンズL24とを配置することにより、1次結像レンズ群11で発生する負の歪曲収差DistLfが増大することを抑制できる。したがって、負の歪曲収差DistLfをリレーレンズ群12で発生する正の歪曲収差DistLbにより打ち消しやすい。このズームレンズシステム10においては、負の歪曲収差DistLfと、正の歪曲収差DistLbとが以下の条件(1.4)および(1.5)を満たすように設計されている。
DistLf≧−10 ・・(1.4)
0.98≦|DistLf|/|DistLb|≦1.02・・(1.5)
【0042】
このズームレンズシステム10においては、正レンズL41の部分分散比Pgf41と、正メニスカスレンズL51の部分分散比Pgf51と、負レンズL52の部分分散比Pgf52と、正レンズL53の部分分散比Pgf53とが以下の条件(2.1)〜(2.4)を満たすように設計されている。
0.53≦Pgf41≦0.55 ・・・(2.1)
0.53≦Pgf53≦0.55 ・・・(2.2)
0.55≦Pgf51≦0.58 ・・・(2.3)
0.58≦Pgf52≦0.66 ・・・(2.4)
【0043】
このズームレンズシステム10においては、条件(2.1)および(2.2)に示すように、正レンズL41の部分分散比Pgf41と、正レンズL53の部分分散比Pgf53とをほぼ等しいバランスで低く設定し、さらに、条件(2.3)に示すように、正メニスカスレンズL51の部分分散比Pgf51を条件(2.1)および(2.2)よりもやや高く設定し、条件(2.4)に示すように、負レンズL52の部分分散比Pgf52を変倍レンズ群12aの中で最も高く設定している。上記の条件(2.1)〜(2.4)を満たすことにより、ズーミングに伴う色収差変動を抑制しやすく、諸収差が良好に補正された最終像52を結像させやすい。さらに、移動レンズ群G4の最も最終像側10bに配置された最終レンズである正レンズL53の両面S23およびS24を非球面とすることにより、球面収差および像面湾曲を良好に補正できるとともに、レンズ枚数の増大を抑制でき、光学全長が長大化することを抑制できる。
【0044】
条件(2.1)および(2.2)の上限は、0.54であることが好ましい。条件(2.3)の上限は、0.57であることが好ましく、条件(2.3)の下限は、0.56であることが好ましい。条件(2.4)の上限は、0.64であることが好ましく、条件(2.4)の下限は、0.60であることが好ましい。
【0045】
図2に、ズームレンズシステム10の各レンズのレンズデータを示している。図3に、ズームレンズシステム10の諸数値を示している。レンズデータにおいて、Riは物体側10aから順に並んだ各レンズ(各レンズ面)の曲率半径(mm)、diは物体側10aから順に並んだ各レンズ面の間の距離(mm)、Diは物体側10aから順に並んだ各レンズ面の有効径(mm)、ndは物体側10aから順に並んだ各レンズの屈折率(d線)、νdは物体側10aから順に並んだ各レンズのアッベ数(d線)を示している。図2において、Flatは平面を示している。また、図3(a)において、入射瞳位置は第1の負メニスカスレンズL11の凸面S1からの距離を示し、出射瞳位置は撮像デバイス50の像面からの距離を示している。以降の実施形態においても同様である。
【0046】
図3(b)に示すように、このズームレンズシステム10においては、第3の固定レンズ群G3と第1の移動レンズ群G4との間の空気間隔(距離)d16と、第1の移動レンズ群G4と第2の移動レンズ群G5との間の空気間隔d18と、第2の移動レンズ群G5とカバーガラスCGとの間の空気間隔d24とが変化する。
【0047】
また、負メニスカスレンズL12の両面S3およびS4と、正レンズL24の両面S9およびS10と、正レンズL53の両面S23およびS24とは、非球面である。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、図3(c)の係数K、C1、C2、C3、C4、C5およびC6を用いて次式で表わされる。なお、「En」は、「10のn乗」を意味する。
X=(1/R)Y2/[1+{1−(1+K)(1/R)2Y2}1/2]
+C1Y4+C2Y6+C3Y8+C4Y10+C5Y12+C6Y14
【0048】
本例のズームレンズシステム10の上述した条件(1.1)〜(1.3)および(2.1)〜(2.4)を与える各式の値は、以下のようになる。
条件(1.1) n1=1.88
条件(1.2) n3=1.96
条件(1.3) n1/n3=0.96
条件(2.1) Pgf41=0.53
条件(2.2) Pgf53=0.54
条件(2.3) Pgf51=0.57
条件(2.4) Pgf52=0.63
したがって、本例の投射用レンズシステム10は、条件(1.1)〜(1.3)および(2.1)〜(2.4)を満たしている。
【0049】
図4に、ズームレンズシステム10の収差図を示しており、図4(a)は広角端における収差図を示し、図4(b)は望遠端における収差図を示している。図5に、ズームレンズシステム10の1次結像レンズ群11の収差図を示している。図4および図5に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、鮮明な画像を撮影できる。なお、球面収差は、波長656nm(点線)と、波長587nm(実線)と、波長546nm(一点鎖線)と、波長486nm(二点鎖線)と、波長435nm(一点長鎖線)とを示している。また、非点収差は、タンジェンシャル光線(T)およびサジタル光線(S)の収差をそれぞれ示している。また、収差図において縦軸は像高(IMG HT)を示している。以降の実施形態においても同様である。
【0050】
したがって、本例のズームレンズシステム10は、広角端において全画角が126度と広角で、F値が2.0と明るく鮮明な画像を撮影できる、性能およびコストのバランスが取れたズームレンズシステム10の一例である。
【0051】
図6に、本発明の第2の実施形態に係るズームレンズシステム20およびそれを用いた撮像装置1の概略構成を示しており、図6(a)は広角端(WIDE)におけるレンズ配置を示し、図6(b)は望遠端(TELE)におけるレンズ配置を示している。
【0052】
このズームレンズシステム20も、物体側20aから順に、物体側20aからの光を中間像51として結像させる1次結像レンズ群21と、中間像51からの光を最終像52として結像させるリレーレンズ群22とから構成されている。本例の1次結像レンズ群21も、ズームレンズシステム20が変倍する際に移動しない固定広角レンズ群21aである。この固定広角レンズ群21aも、物体側20aから順に、変倍する際に移動しない負の屈折力の第1の固定レンズ群G1と、絞りStと、変倍する際に移動しない正の屈折力の第2の固定レンズ群G2とから構成されている。
【0053】
本例のリレーレンズ群22も、物体側20aから順に、変倍する際に移動しない負の屈折力の第3の固定レンズ群G3と、変倍する際に移動する変倍レンズ群22aとから構成されている。この変倍レンズ群22aも、変倍する際に移動する正の屈折力の第1の移動レンズ群G4と、変倍する際に移動する正の屈折力の第2の移動レンズ群G5とから構成されている。
【0054】
このズームレンズシステム20は、全体が14枚のガラス製のレンズL11、L12、L21〜L25、L31〜L33、L41、およびL51〜L53により構成されている。
【0055】
第3の固定レンズ群G3は、物体側20aから順に配置された、両凹の負レンズL31と、2枚貼合の第2の接合レンズ(バルサムレンズ)LB2とから構成されている。第2の接合レンズLB2は、物体側20aから順に配置された、最終像側20bに凸面S16を向けた第2の負メニスカスレンズL32と、最終像側20bに凸面S17を向けた第1の正メニスカスレンズL33とから構成されている。なお、その他のレンズ群G1、G2、G4およびG5の構成と、レンズ群G1、G2、G4およびG5に含まれる各レンズの形状とは、第1の実施形態と共通するため、共通の符号を付して個々のレンズの説明は省略する。
【0056】
このズームレンズシステム20においては、中間像51よりも最終像側20bに第2の接合レンズLB2を配置し、さらに、第2の負メニスカスレンズL32のアッベ数ν32と、第1の正メニスカスレンズL33のアッベ数ν33とが以下の条件(A)および(B)を満たすように設計されている。
45.0≦ν32≦55.0 ・・・(A)
15.0≦ν33≦25.0 ・・・(B)
【0057】
このズームレンズシステム20においては、第2の負メニスカスレンズL32に弱い分散力(低分散)を与えるために条件(A)を設定し、第1の正メニスカスレンズL33に強い分散力(高分散)を与えるために条件(B)を設定している。このため、低分散の第2の負メニスカスレンズL32と高分散の第1の正メニスカスレンズL33とを組み合わせることにより、可視領域から近赤外領域にわたって色収差を良好に補正できる。したがって、入射光が近赤外線を含む波長帯であって、中間像51よりも物体側20aに配置された第1の接合レンズLB1による色収差補正が不足する場合であっても、第2の接合レンズLB2により色収差補正能力を補強できる。条件(A)および(B)の範囲を超えると、軸上色収差が増大し収差補正が困難となる。
【0058】
図7に、ズームレンズシステム20の各レンズのレンズデータを示している。図8に、ズームレンズシステム20の諸数値を示している。図8(b)に示すように、このズームレンズシステム20においては、第3の固定レンズ群G3と第1の移動レンズ群G4との間の空気間隔d17と、第1の移動レンズ群G4と第2の移動レンズ群G5との間の空気間隔d19と、第2の移動レンズ群G5とカバーガラスCGとの間の空気間隔d25とが変化する。また、負メニスカスレンズL12の両面S3およびS4と、正レンズL24の両面S9およびS10と、正レンズL53の両面S24およびS25とは、非球面である。
【0059】
本例のズームレンズシステム20の上述した条件(1.1)〜(1.3)、(2.1)〜(2.4)、(A)および(B)を与える各式の値は、以下のようになる。なお、本例では、屈折率n3は第1の正メニスカスレンズL33の屈折率を示している。
条件(1.1) n1=1.88
条件(1.2) n3=1.95
条件(1.3) n1/n3=0.96
条件(2.1) Pgf41=0.53
条件(2.2) Pgf53=0.53
条件(2.3) Pgf51=0.55
条件(2.4) Pgf52=0.64
条件(A) ν32=46.6
条件(B) ν33=18.0
したがって、本例の投射用レンズシステム20は、条件(1.1)〜(1.3)、(2.1)〜(2.4)、(A)および(B)を満たしている。
【0060】
図9に、ズームレンズシステム20の収差図を示しており、図9(a)は広角端における収差図を示し、図9(b)は望遠端における収差図を示している。図10に、ズームレンズシステム20の1次結像レンズ群21の収差図を示している。図9および図10に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、鮮明な画像を撮影できる。なお、球面収差は、波長900nmを破線により示している。
【0061】
したがって、本例のズームレンズシステム20は、広角端において全画角が117度と広角で、F値が1.8と明るく、可視領域から近赤外領域にわたって鮮明な画像を撮影できる。このため、オートフォーカス機構などを持たず、昼夜兼用の監視目的、あるいは観察、防災、計測、記録などの多種多様な用途で採用される高感度なカメラ(撮像装置)に好適なズームレンズシステム20を提供できる。
【0062】
なお、本発明はこれらの実施形態に限定されず、請求の範囲に規定されたものを含む。すなわち、ズームレンズシステムの第1の光学系および/または第2の光学系は、少なくとも1つの反射面(ミラー)を有していてもよい。また、請求の範囲に規定された発明は、請求項ごとに相互に独立であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10