【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 科学技術振興機構、研究成果最適展開支援事業 「プラズマ誘起電解法によるタンタルナノ粒子連続製造システム」 産業技術力強化法第19条の規定の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記距離調節手段は、前記逆円錐形状体の下端の前記開口部と前記容器に収容された液体の液面との距離が一定に保たれるように、前記容器に収容された液体の液面に対する前記逆円錐形状体の相対的な高さを調節する高さ調節手段を含む、請求項1または請求項2に記載の液体輸送装置。
前記逆円錐形状体の外周面には、前記逆円錐形状体の径の方向に沿って延びる突起が形成されており、前記突起は、前記容器に収容された液体の液面よりも上方に配置される、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の液体輸送装置。
前記逆円錐形状体は、下端の前記開口部から前記逆円錐形状体の内側に向かって略水平方向に延在する下側つば部を含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の液体輸送装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1に示すように、この発明の一つの実施形態として液体輸送装置1は、大きく分けて、液体輸送部100と液体循環部200とから構成されている。
【0022】
液体輸送部100は、主に、U字形容器110と、U字形容器110を加熱・保温するヒータと断熱材とを含む加熱保温部170と、U字形容器110内の液体300をU字形容器110の外に汲み上げて輸送するための回転円盤120と、回転円盤120を駆動させる回転円盤駆動モータ部130と、回転円盤120の昇降機構140と、回収壁150とから構成されている。
【0023】
液体循環部200は、主に、液体貯留槽210と、液体貯留槽210を加熱・保温する加熱保温部170と、液体300を液体貯留槽210内に供給するための供給部160と、後述する液体循環路201、ポンプ202、循環用モータ203等から構成されている。
【0024】
回転円盤120は、逆円錐形状に形成された逆円錐形状体121を有する。逆円錐形状体121は、上端と下端において開口している。下端の開口部122には、回転円盤120の内側に向かって略水平面内に延びる円形板状の下部つば部(図示しない)が形成されている。下端の開口部122はU字形容器110内の液体300に浸漬されている。上端の開口部123には、回転円盤120の外側に向かって略水平面内に延びる円形板状の上部つば部124が形成されている。回転円盤120の上部つば部124の周縁の外側には、回収壁150が形成されている。
【0025】
上部つば部124の下面には鉛直下向きに延びる支持部125が取り付けられ、支持部125の外周面には、ギア部126が形成されている。支持部125は、回転円盤120の逆円錐形状体121の周囲において周方向全体を覆うように、リング形状に形成されている。ギア部126のギアは回転円盤駆動モータ部130のギア131とかみ合う。回転円盤120、回転円盤駆動モータ部130、回収壁150は、上下方向に同時に移動可能であるように、回転円盤−液面間の距離調節手段の一例として昇降機構140によって下方から支持されている。
【0026】
液体300を収容するU字形容器110は例えば石英製で、略U字形状に形成されており、2つの端部のそれぞれに開口部が形成されている。一方の端部の開口部112は、回転円盤120の下方に配置されている。他方の端部の開口部113は、液体循環部200を構成する液体貯留槽210の近傍において液体貯留槽210の上方において開口されている。開口部113には、オーバーフロー開口部111が形成されている。オーバーフロー開口部111は、例えば、U字形容器110の開口部の端部に形成された切り欠きとして形成されている。オーバーフロー開口部111はまた、U字形容器110の壁面を貫通する孔として形成されていてもよい。オーバーフロー開口部111は、U字形容器110内に収容される液体300の液位が所定の高さとなる量を超える量の液体300を排出するためにU字形容器110に形成されたものである。
【0027】
U字形容器110と液体貯留槽210の周囲は、必要に応じて加熱保温部170によって覆われている。
図1には、U字形容器110と液体貯留槽210の底面に配置される加熱保温部170のみを図示する。加熱保温部170は、図示しないが、U字形容器110と液体貯留槽210の底部だけでなく、U字形容器110と液体貯留槽210の外周面上の全体に配置されている。なお、液体輸送装置1で汲み上げて輸送する液体を加熱する必要がない場合には、加熱保温部170を備える必要はない。
【0028】
液体貯留槽210の上方には、供給部160が配置されている。供給部160は、液体貯留槽210内に液体300を供給するためのものである。
【0029】
液体貯留槽210の内部には、液体300を循環させるための液体循環路201が設置されている。液体循環路201は、液体貯留槽210下部の液体吸入口206から液体を吸入し、U字形容器110の開口部113へと供給する流路を形成している。液体循環路201において液体吸入口206とU字形容器110の開口部113との間には、液体300を循環させるためのポンプ202と、ポンプ202を駆動させるための循環用モータ203と、必要に応じてバイパス204とが配置されている。U字形容器110には、オーバーフローが望ましくない箇所から生じた場合に液体を貯留槽へと導くための整流板205が配置されていることが好ましい。
【0030】
図2に示すように、回転円盤駆動モータ部130は、昇降機構140(
図1)のスライドレール141によって支持されている。回転円盤駆動モータ部130は、スライドレール141に沿って昇降可能であるように構成されている。回転円盤120の下端の開口部122がU字形容器110内の液体300に浸漬されるように、回転円盤駆動モータ部130がスライドレール141に沿って昇降されて回転円盤120の位置が調節される。
【0031】
スライドレール141を含む昇降機構140は、回転円盤120の高さ調節手段の一例である。回転円盤駆動モータ部130を昇降させる機構としては、他の公知のものを用いることができる。支持部125の内周面の下部と支持部125の下面は、それぞれ、ベアリング143を介してスライドレール141に取り付けられている。
【0032】
図3に示すように、回転円盤120の逆円錐形状体121の外周面には、突起127が形成されている。突起127は、例えば、平板状に形成されており、逆円錐形状体121の径に沿った方向に延びるつばを有し、かつ、外周端部から略鉛直方向に、逆円錐形状体の外周面に接するまで延びる壁面を有する。逆円錐形状体121の外周面に形成される突起127は、逆円錐形状体121の外周面の周方向の全体に渡って延びる1つの突起として形成されているのが好ましいが、平板状でなくてもよく、例えば、階段状に形成されていてもよい。また、突起127は、例えば複数の平板リング状の突起が異なる高さに配置されていてもよい。突起127は、液体300の液面よりも上方に配置されている(
図2)。突起127の外径Dは、U字形容器110の回転円盤120が配置されている側の開口部112の内径よりも小さい。
【0033】
また、
図4に示すように、回転円盤120aには、突起127の代わりに突起127aが形成されていてもよい。突起127aは、逆円錐形状体121の径に沿った方向に延びる、薄い平板状のつばを周方向全体にわたって有している。突起127aの上面と逆円錐形状体との間には空間が形成されており、突起127aの上面には水平部が形成されている。突起127aも、液体300の液面よりも上方に配置されており、突起127aの外径Dは、U字形容器110の回転円盤120が配置されている側の開口部112の内径よりも小さい。
【0034】
このように、回転円盤の逆円錐形状体121の外周面に形成される突起は、逆円錐形状体121の径に沿った方向において、逆円錐形状体121の周方向全体において突出していれば、突起127,127a以外の形状であっても構わない。
【0035】
以上のように構成される液体輸送装置1で液体300を汲み上げて輸送する方法について、以下に説明する。
【0036】
液体輸送装置1の使用者は、まず、必要があれば、U字形容器110と液体貯留槽210を加熱する加熱保温部170を制御して、U字形容器110内と液体貯留槽210内の液体300を所定の温度に調節する。なお、U字形容器110内の液体300と液体貯留槽210内の液体300の温度が異なっていてもよい。
【0037】
次に、回転円盤駆動モータ部130が駆動され、回転円盤120が回転すると、液体300は、回転円盤120の下端から、逆円錐形状体121の斜面上面を伝って、斜面を上昇する。回転円盤120は、例えば、300〜2000rpmで回転される。液体300は逆円錐形状体121斜面の下面を伝っても上昇しようとするが、逆円錐形状体121の斜面の下面には突起127が形成されているので、液体300は突起127の高さに達すると水平方向へと輸送される。これにより、液体300が上部つば部124の下面を伝って装置内等へと漏れ出ることを防ぎ、液体300をU字形容器110内へと戻すことができる。
【0038】
逆円錐形状体121の斜面上面を上端まで上昇した液体300は、続いて、上部つば部124の上面を中心から外側に向かって移動する。上部つば部124の周縁部まで移動した液体300は、遠心力によって、上部つば部124の周縁部から、外方向へ飛散する。飛散した液体300は、回収壁150に衝突し、あるいは、回収壁150に衝突せずにそのまま、例えば回収容器内に輸送される。
【0039】
U字形容器110内には、液体300が連続的に供給されるのが好ましい。液体300は、供給部160から液体貯留槽210内に供給される。液体貯留槽210内の液体300は、循環用モータ203により循環ポンプ202が駆動されることによって、液体吸入口206から吸い上げられ、液体循環路201を通って、U字形容器110の開口部113からU字形容器110内に供給される。液体貯留槽210内の液体300が少なくなれば、使用者は、供給部160から液体貯留槽210内に液体300を供給する。
【0040】
U字形容器110内に供給された液体300は、U字形容器110内部を通ってU字形容器110の反対側の端部、すなわち、回転円盤120が配置されている側の開口部112に向かって移動する。U字形容器110内の液位がオーバーフロー開口部111の高さになると、オーバーフロー開口部111から液体300が溢れて、液体貯留槽210内に流れ落ちる。万一、オーバーフロー開口部111以外の箇所から液体が溢れた場合には、整流板205を通って液体貯留槽210内に戻ることになる。
【0041】
上記では、U字形容器110に供給された液体300の液位を一定に保ち、さらに回転円盤120の高さを調節することで、回転円盤120の下端の開口部122と液面との距離を一定に保つ方法について具体的な例を示した。一方で、液位を一定に保つ手段を有さずに、回転円盤120の下端の開口部122と液面との距離を一定に保つ方法もあり得る。すなわち、回転円盤120の稼働により液体300が輸送されることによる液位の低下速度に合わせて、回転円盤120を降下させていく方法である。この方法では、液位を一定に保つための装置構成が不要になるが、回転円盤120による液体300の輸送速度を連続して正確に測定し、それに合わせて回転円盤120を降下させる仕組みが必要となる。
【0042】
このように、U字形容器110の開口部113のオーバーフロー開口部111から液体300が溢れるように液体300を供給し続けることによって、U字形容器110内の液体300の液面の高さを一定に保つことができる。このようにして液体300の液面の高さを保つ場合には、回転円盤120の高さを一定に保つことが好ましい。
【0043】
以上のように、液体輸送装置1は、液体300を収容するU字形容器110と、上端の開口部123と下端の開口部122とを有する中空の逆円錐形状体121と、略鉛直方向に沿って延びる軸を中心に逆円錐形状体121を回転させる回転円盤駆動モータ部130とを備える。逆円錐形状体121の下端の開口部122は、U字形容器110に収容された液体300に浸漬されている。
【0044】
また、液体輸送装置1においては、逆円錐形状体121の下端の開口部122と容器に収容された液体300の液面との距離調節手段の一例の液位調節手段として、U字形容器110の開口部113の一部にオーバーフロー開口部111が形成されている。オーバーフロー開口部111は、U字形容器110内に収容される液体300の液位が所定の高さとなる量を超える量の液体300を排出するためにU字形容器110に形成された、液体300の排出口である。U字形容器110にオーバーフロー開口部111を形成し、U字形容器110内の液位を一定にすることによって、逆円錐形状体121の下端の開口部122とU字形容器110に収容された液体300の液面との距離が一定に保たれる。
【0045】
また、液体輸送装置1においては、距離調節手段の一例の液位調節手段は、U字形容器110の開口部113を通ってU字形容器110内から排出される液体300を貯留する液体貯留槽210と、少なくとも液体貯留槽210内の液体300をU字形容器110に戻す液体循環部200とを含む。
【0046】
また、液体輸送装置1は、逆円錐形状体121の下端の開口部122とU字形容器110に収容された液体300の液面との距離が一定に保たれるように、U字形容器110に収容された液体300の液面に対する逆円錐形状体121の相対的な高さを調節する距離調節手段の一例としてスライドレール141を含む昇降機構140を備える。
【0047】
また、液体輸送装置1は、U字形容器110に収容される液体300を加熱する加熱保温部170を備える。このようにすることにより、室温よりも高温である液体を、液体輸送装置1によって汲み上げて輸送する間、液体の温度を制御することが可能になる。
【0048】
このようにすることにより、逆円錐形状体の回転によって液体に生じる遠心力を利用して、簡単な構成で、一定の速度で液体を汲み上げて輸送することが可能な液体輸送装置1を提供することができる。
【0049】
なお、液体300としては、液体輸送装置1を用いて輸送することが可能なものであれば、種類、組成や融点などは制限されない。輸送される液体によって、必要に応じて、液体輸送装置1を構成する部材の材質を選択すればよい。
【0050】
また、液体300の源が液体貯留槽210に固体の状態で供給され、液体貯留槽210内で液体状態にされ、U字形容器110内の液体300の減少量に応じてU字形容器110内に液体300が追加供給されてもよい。液体貯留槽210からU字形容器110への液体300の供給は、上述のように、連続的であってもよいし、断続的であってもよい。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態の液体輸送装置は、液体として溶融塩を輸送するための装置として用いられる。この実施形態では、溶融塩輸送装置を備える金属微粒子製造装置について説明する。第1実施形態と同じ参照符号で示される部材は、第1実施形態と同様に構成されている。
【0052】
図5に示すように、第2実施形態の金属微粒子製造装置は、液体の一例として溶融塩2300を電解浴とし、プラズマ誘起電解法により金属微粒子を製造するための装置である。
【0053】
金属微粒子電解生成部2100は、不活性ガスが充填されており、溶融塩輸送部21と電解部22から構成され、溶融塩2300中に形成された金属微粒子2301を溶融塩とともに溶融塩輸送部21によって装置の外部に回収する。不活性ガスは例えばアルゴンである。
【0054】
溶融塩輸送部21は、溶融塩2300を収容するU字形容器110とU字形容器110を加熱・保温するヒータと断熱材とを含む加熱保温部170と、U字形容器110内の溶融塩2300をU字形容器110の外に汲み上げて輸送するための回転円盤120と、回転円盤120を駆動させる回転円盤駆動モータ部130(
図2参照)と、回転円盤120の昇降機構140(
図2参照)と、回収壁部2177とから構成されている。
【0055】
電解部22は、溶融塩を収容するU字形容器110の内部に設置された陽極2110と、溶融塩浴面上方に設置される陰極2120と、陽極2110と陰極2120との間に電圧を印加する電源部2130から構成される。
【0056】
陰極2120の先端部は、回転円盤120すなわち逆円錐形状に形成された逆円錐形状体121(
図2参照)の下端の開口部122(
図2参照)の上方に設置され、溶融塩2300に接触しないよう浴面上部に設置される。
【0057】
溶融塩調製部の構造は、第1実施形態の液体循環部200(
図1参照)と同様であるが、貯留槽やポンプ等の構造材には、高温の溶融塩共存下において安定的に使用できるよう、高純度アルミナのようなセラミクスや、ステンレスやNi、インコネルのようなNi基合金を選択するのが好ましい。また調製部内部は溶融塩中への水分の混入や上記構造材の変質を防ぐためArや窒素などの不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。
【0058】
プラズマ誘起電解において使用する溶融塩2300としては、一般に溶融塩電解において使用する浴が使用できる。例えば、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩などを、単独で又は2種以上組み合わせて得られる溶融塩を、電解浴の溶媒として使用するのが好ましい。
【0059】
アルカリ金属のハロゲン化物としては、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、LiBr、NaBr、KBr、RbBr、CsBr、LiI、NaI、KI、RbI、CsI等が使用でき、アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、MgF
2、CaF
2、SrF
2、BaF
2、MgCl
2、CaCl
2、SrCl
2、BaCl
2、MgBr
2、CaBr
2、SrBr
2、BaBr
2、MgI
2、CaI
2、SrI
2、BaI
2等が使用できる。上記化合物は単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの化合物の組み合わせ、組み合わせる化合物の数、混合比等も限定されず、所望する金属微粒子の成分、種類等に応じて適宜選択することができる。
【0060】
このような溶融塩中に、金属微粒子の原料となる金属化合物等を原料として溶解させることで、金属イオンM
n+を供給し、プラズマ誘起電解を行うことにより、溶融塩2300中にMの金属微粒子を形成することができる。
【0061】
陽極2110としては、一般に溶融塩電解において陽極として使用する電極が使用でき、特に限定されるものではない。例えば、ガラス状炭素やグラファイト、導電性ダイヤモンド等の炭素材料を電極として使用できる。陽極2110に金属微粒子の原料となる金属を含有または接触させている場合には、この金属Mの陽極溶解反応が進行して溶融塩中に金属イオンM
n+が供給されるので好ましい。この場合、溶融塩2300への金属化合物等の原料の添加は任意となる。
【0062】
回転円盤120は、第1実施形態と同様に構成されている。回転円盤120の逆円錐形状体121は、少なくとも表面が電気絶縁体であり、一例として高純度アルミナによって形成されている。
【0063】
回転円盤120の上部つば部124の周縁の外側は回収壁部2177によって覆われている。壁部2177は、上部つば部124の周縁の外側を覆う。壁部2177の内壁2179の下部には後述する回収溝2183が形成され、回収溝2183内には開口が形成されている。壁部2177の内部には、この回収溝2183内の開口によって壁部2177の外部と連通する金属微粒子回収路2181が形成されている。金属微粒子回収路2181の他方の端部に形成されている開口は、壁部2177の開口よりも低い位置に配置される金属微粒子回収容器(図示しない)内に開かれている。
【0064】
金属微粒子製造装置の電解生成部2100における溶融塩輸送部21のその他の構成と効果は、第1実施形態の液体輸送装置1と同様である。
【0065】
以上のように構成される金属微粒子製造装置でプラズマ誘起電解法を用いて溶融塩中に製造した金属微粒子を輸送する方法について、以下に説明する。
【0066】
金属微粒子製造装置の使用者は、まず、U字形容器110を加熱・保温する加熱保温部170と、溶融塩を貯留するための液体貯留槽210(
図1)を加熱する電気炉(図示せず)とを制御して、U字形容器110内と溶融塩貯留槽210内の溶融塩2300を所定の温度に調節する。さらに金属微粒子電解生成部2100をアルゴンガスで充填する。
【0067】
次に、金属微粒子の原料となる金属化合物等を溶解させる、または、金属微粒子の原料となる金属を含有または接触させた陽極2110を設置する。
【0068】
電源部2130によって陽極2110と陰極2120との間に適当な電圧が印加されると、アルゴンガスが電離することによって、陰極2120と溶融塩2300の液面との間で放電が発生する。溶融塩中の金属イオンM
n+は、陰極放電電子によって還元され、溶融塩浴表面近傍においてMの金属微粒子が形成される。逆円錐形状体121は、少なくとも表面が絶縁体で形成されているので、逆円錐形状体121の近傍で安全かつ安定的に陰極放電を行うことができる。
【0069】
回転円盤駆動モータ部130が駆動され、回転円盤120が回転すると、生成した金属微粒子2301を含む溶融塩2300は、回転円盤120の下端から、逆円錐形状体121の斜面を伝って、斜面を上昇する。回転円盤120は、例えば、100〜1000rpmで回転させる。金属微粒子2301を含む溶融塩2300は、遠心力によって、逆円錐形状体121の内面を、下端から上端まで上昇する。このようにして、放電直下で形成した金属微粒子は放電直下から外部へと速やかに輸送される。この際、回転円盤120の浸漬深さや回転数に応じて任意の一定速度で溶融塩を輸送できるので、金属微粒子の成長を制御するのに効果的である。また、逆円錐形状体121の斜面の外面には突起127が形成されているので、金属微粒子2301を含む溶融塩2300は逆円錐形状体121の外では、下端から突起127の高さまで上昇するに留まる。この突起127の働きによって、金属微粒子が形成されていない領域の溶融塩を輸送することがなくなり、溶融塩の消費量が低減される。
【0070】
逆円錐形状体121の上端まで上昇した金属微粒子2301を含む溶融塩2300は、続いて、上部つば部124の上面を、
図4に二点鎖線の矢印で示すように、中心から外側に向かって移動する。上部つば部124の周縁部まで移動した金属微粒子2301を含む溶融塩2300は、遠心力によって、上部つば部124の周縁部から、上部つば部124の外方向に飛散する。飛散した金属微粒子2301を含む溶融塩2300は、壁部2177に衝突し、あるいは、壁部2177に衝突せずにそのまま、回収溝2183内に落下する。
【0071】
回収溝2183内に落下した金属微粒子2301を含む溶融塩2300は、金属微粒子回収路2181内を移動し、金属微粒子回収容器(図示せず)内に集められる。
【0072】
以上のように、溶融塩輸送装置を備える金属微粒子製造装置は、溶融塩2300を収容するU字形容器110と、上端の開口部122と下端の開口部122とを有する中空の逆円錐形状体121と、略鉛直方向に沿って延びる軸を中心に逆円錐形状体121を回転させる回転円盤駆動モータ部130とを備える。U字形容器110に収容されるのは、溶融塩2300である。逆円錐形状体121の下端の開口部122は、U字形容器110に収容された溶融塩2300に浸漬されている。
【0073】
また、金属微粒子製造装置においては、距離調節手段の一例の液位調節手段の一例として、U字形容器110にオーバーフロー開口部111が形成されている。オーバーフロー開口部111は、第1実施形態と同様に、U字形容器110内に収容される溶融塩2300の液位が所定の高さとなる量を超える量の溶融塩2300を排出するためにU字形容器110に形成された、溶融塩2300の排出口である。U字形容器110にオーバーフロー開口部111を形成し、U字形容器110内の液位を一定にすることによって、逆円錐形状体121の下端の開口部122とU字形容器110に収容された溶融塩2300の液面との距離が一定に保たれる。
【0074】
また、上述の液位調節手段は、U字形容器110のオーバーフロー開口部111を通ってU字形容器110内から排出される溶融塩2300を貯留する溶融塩貯留槽210と、溶融塩貯留槽2210内の溶融塩2300をU字形容器110に戻す液体循環手段とを含む。液体循環手段は、第1実施形態と同様である。
【0075】
また、溶融塩輸送装置を備える金属微粒子製造装置は、U字形容器110に収容される溶融塩2300を加熱する加熱保温部170と電気炉(図示せず)を備える。このようにすることにより、金属微粒子を生成し回収するまでの間、室温よりも融点の高い溶融塩を液体状態に保つことが可能になる。
【実施例】
【0076】
(実施例1)
本発明の液体輸送装置によって、一定の速度で液体を汲み上げて輸送することができることを以下のようにして確認した。液体としては、水を用いた。
【0077】
図1のように構成される液体輸送装置1を用いて、以下の実験を行った。
【0078】
U字形容器110のオーバーフロー開口部111が形成されている側の開口部から、一定速度(1.7L/min)で水を供給し、オーバーフロー開口部111から水をオーバーフローさせることで、液面位置が保たれるようにした。一方、回転円盤120は、回転円盤駆動モータ部130に直結した駆動ギア部131により、回転円盤120の支持部125の外周部に設けた回転ギア部126を介して回転させるように構成し、昇降機構140を備えた台座に固定し、回転円盤120の回転数と、回転円盤120の下面と液面との距離とを、独立して制御できるように設置した。
【0079】
回転円盤120の逆円錐形状体121の下端から上端まで上昇し、上部つば部124の外周方向に輸送された水については、回転円盤120の外側に設置された円筒状の回収壁150を利用して回収して、輸送速度を求めた。
【0080】
液体輸送装置1を用いて、回転円盤120の回転数、逆円錐形状体121の下端の水への浸漬深さ、逆円錐形状体121の斜面の水平からの傾斜角、逆円錐形状体121の下端の開口部122の径と、回転円盤120からの水の輸送速度との関係について検討した。
【0081】
図6は、回転円盤120の回転数を500rpm、逆円錐形状体121の斜面の水平からの傾斜角を50°、逆円錐形状体121の下端の開口部122の径を40mmとして、静止時の液面に対して逆円錐形状体121の下端をU字形容器110内の水300に1.5mm浸漬させた際の、水の積算輸送量の時間変化を示したものである。
【0082】
図6に示すように、水の積算輸送量は一定の割合で増加しており、液面位置を一定に保持し、さらに逆円錐形状体121の下端の位置を一定に保持することで、液体の輸送速度を安定的に保持し得ることができることを確認した。
【0083】
図7は、回転円盤120の浸漬深さ(ポンプ稼働時浴面基準)と水の輸送速度との関係を示す図である。逆円錐形状体121の斜面の水平からの傾斜角は50°、逆円錐形状体121の下端の開口部122の径は40mmとした。
【0084】
図7に示すように、逆円錐形状体121の下端の浸漬深さが増加することで、同一回転数での輸送速度が増加することが確認できた。浸漬深さが増加して、回転円盤120の回転を水に伝えるための接触面積が増大することで、輸送速度が増加する。また、回転円盤120の回転数が増加することで水の輸送速度も増加することを確認した。回転数が増加することで、水の回転方向の速度も増加して遠心力が増大するので、輸送速度が増加する。高回転数側では回転円盤120の回転が十分に水に伝わらないために、輸送速度の変化は緩やかになるものと考えられる。
【0085】
以上の結果から、回転円盤120の逆円錐形状体121の浸漬深さと回転数により、液体の輸送速度をコントロールできることを確認した。
【0086】
図8は、回転円盤120の逆円錐形状体121のU字形容器110内の水300への浸漬深さを2.5mmに固定した際の、逆円錐形状体121の斜面の水平からの傾斜角と、逆円錐形状体121の下端の開口部の径と、水の輸送速度との関係を示す図である。
【0087】
図8に示すように、斜面傾斜角が小さいほど、また逆円錐形状体121の下端の開口部122の径が大きいほど、同一回転数での輸送速度が増加することが確認できた。このことは、開口部122の径が大きいほど回転中心までの距離が大きくなり遠心力が増大し、また斜面傾斜角が小さいほど、遠心力の斜面上方への分力が増大するので輸送速度が増加することを意味する。
【0088】
以上の結果から、回転円盤120の斜面の傾斜角、回転円盤120の下端の開口部122の径と回転数により、液体の輸送速度をコントロールできることを確認した。
【0089】
(実施例2)
本発明の液体輸送装置によって、一定の速度で液体を汲み上げて輸送することができることを、液体として溶融塩を用いて以下のようにして確認した。液体輸送装置として
図1のように構成される液体輸送装置1を用いて、実施例1と同様に実験した。溶融塩としては、共融組成のLiCl―KClを用いて、浴温は450℃とした。
【0090】
図9は、回転円盤120の浸漬深さ(ポンプ停止時浴面基準)と溶融塩の輸送速度との関係を示す図である。逆円錐形状体121の斜面の水平からの傾斜角は50°、逆円錐形状体121の下端の開口部122の径は40mmとした。
【0091】
図9に示すように、逆円錐形状体121の下端の浸漬深さが増加することで、同一回転数での溶融塩の輸送速度が増加することが確認できた。また、回転円盤120の回転数が増加することで溶融塩の輸送速度も増加することを確認した。
【0092】
以上の結果から、実施例1の水の場合と同様に回転円盤120の逆円錐形状体121の浸漬深さと回転数により、溶融塩の輸送速度をコントロールできることを確認した。
【0093】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。