特許第6227544号(P6227544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227544
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】エチレン共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/02 20060101AFI20171030BHJP
   C08F 4/68 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C08F210/02
   C08F4/68
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-542981(P2014-542981)
(86)(22)【出願日】2012年11月23日
(65)【公表番号】特表2015-501862(P2015-501862A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】IB2012056679
(87)【国際公開番号】WO2013076699
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】MI2011A002155
(32)【優先日】2011年11月25日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508128303
【氏名又は名称】ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ヴァリエーリ
(72)【発明者】
【氏名】コスタンティーノ ペレッタ
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−221514(JP,A)
【文献】 特開平09−241325(JP,A)
【文献】 特開平02−077410(JP,A)
【文献】 特開2005−154617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンの弾性重合体の製造方法であって、
‐バナジウムを含有する化合物群から選択した少なくとも1つの触媒の油性懸濁液、
‐有機溶媒の不存在下の、アルミニウムを含有する化合物群から選択した少なくとも1つの共触媒、
‐有機溶媒の不存在下の、下記一般式(2)を有する化合物群から選択した少なくとも1つの活性化剤、
一般式(II):
【化1】
ここで式中、
‐Rは、任意で置換されていてもよい直鎖状または分枝鎖状のC〜C20のアルキル基;任意で置換されていてもよいC〜C20のアリール基;または任意で置換されていてもよいC〜C20のシクロアルキル基を表し、ただし、―C(O)OR基は、炭酸誘導体、ケト基、またはニトリル基と置換可能であり、
‐R、R、およびRは、同一であっても異なっていてもよく、(a)R;(b)塩素、臭素、フッ素、ヨウ素から選択されるハロゲン;(c)水素;(d)任意で置換されていてもよい直鎖状または分枝鎖状のC〜C20のアルキル基、(e)任意で置換されていてもよいC〜C20のシクロアルキル基;(f)任意で置換されていてもよいC〜C20のアリール基;(g)任意で置換されていてもよいC〜C20アルキルオキシル基;(h)任意で置換されていてもよいC〜C20のアリールオキシル基;(i)式中RはC〜C20の炭化水素基である―C(O)OR基から選択し、ただし
(i)R、 R、およびRのうち少なくとも1つは、ハロゲン群(b)より選択し、
(ii)前記式(II)を有する活性化剤において、以下のすべての条件が満足されていない:RはC〜Cのアルキル基であり、RはC〜Cのアルキル基またはC〜Cのアルコキシル基であり、Rは塩素、臭素、または水素であり、Rは塩素または臭素である、
を含む触媒系の存在下で、
エチレン、少なくとも1種の炭素原子数3〜12のα‐オレフィン、可能であれば少なくとも1種の炭素原子数4〜20の非共役ジエン、を含むモノマーの混合物を、懸濁液中で重合する方法であり、
前記方法が、
プロピレン、1‐ブテン、イソブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、スチレン、α‐メチルスチレン、またはそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の炭素原子数3〜12のα‐オレフィンと、プロパン、ブタン、ペンタン、またはそれらの異性体、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種の不活性希釈剤と、を含む反応媒体中で実施される、方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記炭素原子数3〜12のα‐オレフィンは、プロピレン、1‐ブテン、イソブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、スチレン、α‐メチルスチレン、またはそれらの混合物から選択したものであることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエチレンの弾性重合体を製造する方法であって、
前記炭素原子数4〜20の非共役ジエンは、
1,4‐ヘキサジエン、1,6‐オクタジエン、またはそれらの混合物から選択される直鎖状非共役ジエン;
5‐メチルヘキサ‐1,4‐ジエン、7‐メチルオクタ‐1,6‐ジエン、7‐メチルオクタ‐1,7‐ジエン、またはそれらの混合物から選択される分枝鎖状非共役ジエン;
1,4‐シクロヘキサジエン、1,5‐シクロオクタジエン、またはそれらの混合物から選択される単環脂環式の非共役ジエン;
テトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン(ENB)、5‐ビニリデン‐2‐ノルボルネン(VNB)、5‐イソプロピリデン‐2‐ノルボルネン、またはそれらの混合物から選択される多環脂環式縮合または架橋環式の非共役ジエン;または
それらの混合物、から選択したものであることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記弾性重合体は、
(a)40重量%〜80重量%のエチレン、
(b)20重量%〜60重量%の少なくとも1種のα‐オレフィン、
(c)0重量%〜15重量%の少なくとも1種の非共役ジエン、を含み、
(a)+(b)+(c)の和が100に等しいことを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記油性分は、パラフィン系オイル、ナフテンオイル、ポリブテン系オイル、ポリプロピレン系オイル、またはそれらの混合物から選択したものであることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記触媒は、前記油性懸濁液の全重量に対し、3重量%〜20重量%の範囲の量で前記油性懸濁液中に存在することを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記触媒は、
四塩化バナジウム(VCl)、三塩化バナジウム(VCl)、またはそれらの混合物から選択されるハロゲン化バナジウム等の酸化状態+3〜+5にあるバナジウム化合物;
三塩化バナジル(VOCl)、バナジルトリエトキシル[VO(OEt)]、バナジルジクロロブトキシル[VOCl(OBu)]、またはそれらの混合物から選択される、式VOCl(OR)3−x(式中、Rは直鎖状または分枝鎖状C〜C20のアルキル基を表し、Xは、0〜3の範囲の整数を表す)を有するバナジルアルコキシハロゲン化物またはバナジルアルコシキド;
バナジウムトリアセチルアセトネート[V(acac)]、バナジルアセチルアセトネート[VO(acac)]、バナジルジクロロアセチルアセトネート[VClO(acac)]、またはそれらの混合物から選択されるバナジウムアセチルアセトネートおよびバナジルアセチルアセトネート;
VCl・2THF(式中、THFはテトラヒドロフラン)であるハロゲン化バナジウムとルイス塩基との複合体;または
それらの混合物、から選択したものであることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項7に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記触媒は、バナジウムトリアセチルアセトネート[V(acac)]、バナジルアセチルアセトネート[VO(acac)]から選択したものであることを特徴する、方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記共触媒は、一般式(I):
[化2]
(R3−nAlY (I)
を有するアルミニウムを含有する化合物から選択され、
ここで式中、
‐Rは、直鎖状または分枝鎖状のC〜C20のアルキル基を表し、
‐Yは、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素から選択されるハロゲン原子;または直鎖状または分枝鎖状のC〜C20のアルコキシアルキル基を表し、
‐nは、0〜2の範囲の整数を表す、
ことを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項9に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記共触媒は、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)であることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記共触媒中に存在するアルミニウムの、前記触媒に存在するバナジウムに対するモル比は、1〜200の範囲であることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記活性化剤は、エチルトリクロロアセテート(ETA)、ジクロロフェニル酢酸エチル(DCPAE)であることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
前記触媒中に存在する前記活性化剤の、前記触媒中に存在する前記バナジウムに対するモル比が、0.5〜10の範囲であることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、
水素、または一般式(III):
[化3]
M(R (III)
を有する化合物から選択した少なくとも1つの分子量調整剤の存在下で実施され、
ここで式中、
‐Mは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、水銀から選択される元素周期表の第2族元素または第12族元素から選択される金属を表し
‐Rは、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、t‐ブチル、n‐ヘキシル、n‐オクチルから選択される直鎖状または分枝鎖状のC〜C12のアルキル基を表し、
‐nは、金属Mの原子価数を表す、
ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、0℃〜100℃の範囲の温度において実施することを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、0バール〜50バールの範囲の圧力において実施することを特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のエチレンの弾性重合体の製造方法であって、10分〜4時間の範囲の時間において実施することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンの弾性重合体の製造方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、バナジウムを含有する化合物群から選択した少なくとも1つの触媒の油性懸濁液、アルミニウムを含有する化合物群から選択した少なくとも1つの共触媒それ自体、塩素を含有する化合物群から選択した少なくとも1つの活性化剤それ自体、を含む触媒系の存在下において、エチレンの弾性重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本技術分野において、エチレンの弾性共重合体を製造する種々の方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、炭素原子数3〜10のα‐オレフィン、好ましくはプロピレン、および所望により非共役ジエンを用いたエチレンの重合方法が記載されている。この方法は、液体モノマーの懸濁液中、バナジウムを含む触媒および基本的にアルミニウムの有機化合物からなる共触媒の存在下、および所望によりハロゲン化活性化剤の存在下で行われる。上記の、反応環境中に不溶の、バナジウムを含む触媒は、エチレンまたはα‐オレフィンの雰囲気中で、
(a)酸化状態3〜5のバナジウムの化合物、
(b)一般式RAlX(式中、RはC〜C20アルキル基であり、Xはハロゲンであり、m+n=3であり、nは0〜2の整数である)を有する化合物から選択された化合物の、基本的に炭化水素溶液を混合することにより得られる沈殿物であることを特徴とする。
【0005】
上記方法で製造されたエチレンの弾性重合体は、形態が改良されていることが特徴である、と記載されている。さらに上記方法は、反応器の汚れが実質的に無い、または少なくとも大幅に減少しているのが特徴である、とも記載されている。
【0006】
特許文献2には、長鎖分岐を有するオレフィン重合体、特にエチレン‐プロピレン‐ジエン(EPDM)ポリマーの製造方法が記載されている。この方法は、
‐バナジウムを含有し、但しバナジウムに直接結合するハロゲンを有しない化合物を含んで成る触媒、
‐ハロゲン対アルミニウムモル比が約1〜約2の範囲であるアルミニウムを含有する有機化合物から選ばれる共触媒、および
‐式(I):
【化1】

[式中、
‐Rは、置換されていてもよいC〜C10のアルキル基、置換されていてもよいC〜C20のアリール基、および置換されていてもよいC〜C20のシクロアルキル基を含んで成る群から選ばれ、但し、−C(O)OR部分は、炭酸誘導体、ケト基、または二トリル基によって置き換えられてもよく、
‐R、 RおよびRは、同じあっても異なっていてもよく、そして各々が以下の群: (a) R、(b)ハロゲン、および(c)水素、置換されていてもよいC〜C10のアルキル基、置換されていてもよいC〜C20アリール基、置換されていてもよいC〜C10アルコキシル基、置換されていてもよいC〜C20 アリールオキシ基、または−C(O)OR(ここでRはC〜C20の炭化水素基である)の中の1種から選ばれ、但し、
(i)R、R及びRの少なくとも1種は群(b)から選ばれ、
(ii)式(I)を有する活性化剤において以下の全てを満足することはない:RがC〜Cのアルキル基であり、RがC〜Cのアルキル基又はC〜Cのアルコキシル基であり、Rが塩素、臭素又は水素であり、そしてR が塩素または臭素である]
を有する活性化剤を含んで成る触媒系の存在下でオレフィンモノマーを重合させる段階を含んで成る。
【0007】
上記方法においては、触媒、共触媒、および活性化剤の有機溶媒中溶液が用いられる。特に、アルミニウム有機化合物(共触媒)[塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)又はエチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)]のシクロヘキサン溶液、および触媒(バナジウムトリアセチルアセトネート[V(acac)]と活性化剤[トリクロロ酢酸エチル(ETA)またはジクロロフェニル酢酸エチル(DCPAE)]のトルエン溶液を利用することが記載されている。
【0008】
上記方法により、特にエチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)を共触媒として用いた場合に、高い程度(degree)の分岐を有する長鎖を備えるオレフィン性ポリマー、特にエチレン‐プロピレン‐ジエン(EPDM)ポリマーを得ることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,919,877号明細書
【特許文献2】欧州特許第967231号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記方法にはさまざまな欠点がある。
【0011】
例えば、予備重合済触媒の触媒活性は低く、いずれの場合でも、さらなる製造工程が必要となってしまい、製造時間が長引き、その結果製造コストが高くついてしまう。
【0012】
さらに、特に懸濁液中で重合(「スラリー重合」)を行う場合、ゲルが形成されてしまい、結果的に多くの用途に利用できない弾性重合体が製造されることとなってしまう。
【0013】
さらにまた、触媒、共触媒、および活性化剤の有機溶媒中溶液を利用すると、他の欠点も伴うことになる。例えば、多くの場合、共触媒[例えば塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)]は、湿気の存在下で容易に分解し、また容易に発火してしまうため、用いる有機溶媒として無水である特定のものを選択しなくてはならない。ゆえにこれらの有機溶剤は、得られたポリマーから単離し、工程の最後に回収しなくてはならない。さらに、汚染排出物用に想定された低水準を維持するため、その有機溶媒を回収するにあたっては、複雑かつコストのかかる技術が度々必要となる。それでいてその回収は常に所望の結果をもたらすとは限らない。
【0014】
そこで出願人は、上記欠点を克服可能な、懸濁液中のエチレンの弾性重合体の製造方法を見つけるため検討を重ねた。特に、触媒、共触媒、および活性化剤の有機溶媒中溶液を用いることなく実施でき、かつゲルの形成を抑制可能な、懸濁液中におけるエチレンの弾性重合体の製造方法を見つけるため、検討を重ねた。
【0015】
そして出願人は、懸濁液中のエチレンの弾性重合体の製造は、バナジウムを含有する化合物群から選択した少なくとも1つの触媒の油性懸濁液、アルミニウムを含有する化合物群から選択した少なくとも1つの共触媒それ自体、塩素を含有する化合物群から選択した少なくとも1つの活性化剤それ自体、を含む触媒系を用いて有利に行えることを発見した。上記の触媒系を用いることで、ゲルの含有量が少ない弾性重合体を得ることが可能となる。上記エチレンの弾性重合体は、押出最終製品および/または発泡最終製品の製造において有利に用いることができる。さらに、有機溶媒が存在しない触媒系を用いることにより以下の効果を得ることができる。
‐環境および操作者の健康状態、両方にとっての毒性の問題を回避できる。
‐最終工程としての、得られた弾性重合体から上記溶媒を単離する工程、およびその結果発生する回収工程を行うことを回避できる。回収工程は製造時間を長引かせ、その結果製造コスト高を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0016】
よって本発明の目的は、エチレンの弾性重合体の製造方法に関する。該方法は、
‐バナジウムを含有する化合物群から選択した少なくとも1つの触媒の油性懸濁液、
‐アルミニウムを含有する化合物群から選択した少なくとも1つの共触媒それ自体、
‐塩素を含有する化合物群から選択した少なくとも1つの活性化剤それ自体、
を含む触媒系の存在下で、
エチレン、少なくとも1種の炭素原子数3〜12のα‐オレフィン、可能であれば少なくとも1種の炭素原子数4〜20の非共役ジエン、を含むモノマーの混合物を、懸濁液中で重合するステップを含む。
【0017】
本明細書と添付の特許請求の範囲においては、別途特定されない限り、数値範囲の定義は常に極値を含む。
【0018】
本明細書と添付の特許請求の範囲においては、「それ自体(as such)」という用語は、化合物が有機溶媒の不在下で用いられる、ということを意味する。
【0019】
本発明の好適な実施形態によれば、炭素原子数3〜12の上記α‐オレフィンは、例えば、プロピレン、1‐ブテン、イソブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、スチレン、α‐メチルスチレン、またはそれらの混合物から選択することができる。プロピレンが好ましい。
【0020】
本発明の好適な実施形態によれば、炭素原子数4〜20の非共役ジエンは、例えば、1,4‐ヘキサジエン、1,6‐オクタジエン、またはそれらの混合物等の直鎖状非共役ジエン;例えば、5‐メチルヘキサ‐1,4‐ジエン、7‐メチルオクタ‐1,6‐ジエン、7‐メチルオクタ‐1,7‐ジエン、またはそれらの混合物等の分枝鎖状非共役ジエン;例えば、1,4‐シクロヘキサジエン、1,5‐シクロオクタジエン、またはそれらの混合物等の単環脂環式の非共役ジエン;例えば、テトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン(ENB)、5‐ビニリデン‐2‐ノルボルネン(VNB)、5‐イソプロピリデン‐2‐ノルボルネン、またはそれらの混合物等の多環脂環式縮合または架橋環式の非共役ジエン;またはそれらの混合物から、例えば選択することができる。5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましい。
本発明の好適な実施形態によれば、前記エチレンの弾性重合体は、
(a)40重量%〜80重量%、好ましくは48重量%〜77重量%のエチレン、
(b)20量%〜60重量%、好ましくは25重量%〜52重量%の少なくとも1種のα‐オレフィン、
(c)0量%〜15重量%、好ましくは0重量%〜12重量%、の少なくとも1種の非共役ジエン、を含み、
(a)+(b)+(c)の和が100と等しい。
【0021】
本発明の好適な実施形態によれば、前記油成分は、パラフィン系オイル、ナフテンオイル、ポリブテン系オイル、ポリプロピレン系オイル、またはそれらの混合物から選択することができる。パラフィン系オイルが好ましい。
【0022】
本発明の好適な実施形態によれば、前記触媒を、前記油性懸濁液の全重量に対し、3重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜15重量%、の範囲の量で前記油性懸濁液中に存在させることができる。
【0023】
本発明の好適な実施形態によれば、前記触媒は酸化状態+3〜+5にあるバナジウム化合物から選択することができる。該バナジウム化合物としては、例えば、四塩化バナジウム(VCl)、三塩化バナジウム(VCl)、またはそれらの混合物等の、ハロゲン化バナジウム;例えば、三塩化バナジル(VOCl)、バナジルトリエトキシル[VO(OEt)]、バナジルジクロロブトキシル[VOCl(OBu)]、またはそれらの混合物等の、式VOCl(OR)3−x(式中、Rは直鎖状または分枝鎖状のC〜C20のアルキル基を表し、Xは、0〜3の範囲の整数を表す)を有する、バナジルアルコキシハロゲン化物またはバナジルアルコシキド;例えば、バナジウムトリアセチルアセトネート[V(acac)]、バナジルアセチルアセトネート[VO(acac)]、バナジルジクロロアセチルアセトネート[VClO(acac)]、またはそれらの混合物等の、バナジウムアセチルアセトネートまたはバナジルアセチルアセトネート;例えば、VCl・2THF(式中、THFはテトラヒドロフラン)等の、ハロゲン化バナジウムとルイス塩基との複合体;またはそれらの混合物、が挙げられる。バナジウムトリアセチルアセトネート[V(acac)]、バナジルアセチルアセトネート[VO(acac)]が好ましい。
【0024】
本発明の好適な実施形態によれば、前記共触媒は、一般式(I)を有する、アルミニウムを含有する化合物から選択することができる。
(R3−nAlY (I)
式中、
‐Rは、直鎖状または分枝鎖状のC〜C20のアルキル基を表し、
‐Yは、例えば、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲン原子(塩素が好ましい);または直鎖状または分枝鎖状のC〜C20のアルコキシアルキル基を表し、
‐nは、0〜2の範囲の整数を表す。
【0025】
本発明の目的のために有利に用いられる、一般式(I)を有するアルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム(TEA),トリイソブチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリドデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、二塩化エチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)、メチルジエトキシアルミニウム、またはそれらの混合物、が挙げられる。塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)が好ましい。
【0026】
本発明の好適な実施形態によれば、共触媒中に存在するアルミニウムの、触媒中に存在するバナジウムに対するモル比は、1〜200、好ましくは2〜150の範囲とすることができる。
【0027】
本発明の好適な実施形態によれば、前記活性化剤は、一般式(II)を有する、塩素を含有する化合物から選択することができる。
【化2】

式中、
‐Rは、任意で置換されていてもよい直鎖状または分枝鎖状のC〜C20のアルキル基;任意で置換されていてもよいC〜C20のアリール基;または任意で置換されていてもよいC〜C20のシクロアルキル基を表し、ただし、―C(O)OR基は、炭酸誘導体、ケト基、またはニトリル基と置換可能であり、
‐R、R、およびRは、同一であっても異なっていてもよく、(a)R;(b)塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲン(塩素が好ましい);(c)水素;(d)任意で置換されていてもよい直鎖状または分枝鎖状のC〜C20のアルキル基、(e)任意で置換されていてもよいC〜C20のシクロアルキル基;(f)任意で置換されていてもよいC〜C20のアリール基;(g)任意で置換されていてもよいC〜C20アルキルオキシル基;(h)任意で置換されていてもよいC〜C20のアリールオキシル基;(i)―C(O)OR基(式中RはC〜C20の炭化水素基である)から選択し、ただし
(i)R、 R、およびRのうち少なくとも1つは、ハロゲン群(b)より選択し、
(ii)前記式(II)を有する活性化剤において、以下のすべての条件が満足されていない:RはC〜Cのアルキル基であり、RはC〜Cのアルキル基またはC〜Cのアルコキシル基であり、Rは塩素、臭素、または水素であり、Rは塩素または臭素である。
【0028】
本発明の目的のために有利に用いられる、一般式(II)を有する、塩素を含有する化合物の具体例としては、トリクロロ酢酸エチル(ETA)、ジクロロフェニル酢酸エチル(DCPAE)、モノクロロフェニル酢酸エチル(MCPAE)、ジエチルジクロロマロネート、またはそれらの混合物、が挙げられる。トリクロロ酢酸エチル(ETA)、ジクロロフェニル酢酸エチル(DCPAE)が好ましい。
【0029】
本発明の好適な実施形態によれば、触媒中に存在する活性化剤の、触媒中に存在するバナジウムに対するモル比は、0.5〜10、好ましくは1〜8の範囲とすることができる。
【0030】
弾性重合体の分子量を調整するために、本方法は、分子量調整剤の存在下で行ってもよい。
【0031】
本発明の好適な実施形態によれば、本方法は、例えば、水素、好ましくは気体水素;または一般式(III)を有する化合物から選択される、少なくとも1つの分子量調整剤の存在下で実施してもよい。
M(R (III)
式中、
‐Mは、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、水銀等の元素周期表の第2族元素または第12族元素から選択される金属を表し(亜鉛が好ましい)、
‐Rは、例えば、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、t‐ブチル、n‐ヘキシル、n‐オクチル等の直鎖状または分枝鎖状のC〜C12のアルキル基を表し(エチルが好ましい)、
‐nは、金属Mの原子価数を表す。
【0032】
好適な分子量調整剤は、気体水素、ジエチル亜鉛である。
【0033】
該分子量調整剤は、本分野で周知の分量と作業条件下で用いることができる。
【0034】
なお、本発明と添付の特許請求の範囲においては、「元素周期表」という用語は、以下のインターネットサイトに示される2011年1月21日版の「国際純正応用化学連合(IUPAC)の元素周期表」を意味することを指摘しておく。
www.iupac.org/reports/periodic_table
【0035】
本発明の好適な実施形態によれば、本方法は、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜50℃、の範囲の温度において実施してもよい。
【0036】
本発明の好適な実施形態によれば、本方法は、0バール〜50バール、好ましくは5バール〜30バール、の範囲の圧力において実施してもよい。
【0037】
本発明の好適な実施形態によれば、本方法を、10分〜4時間、好ましくは20分〜2時間、の範囲の時間において実施してもよい。
【0038】
上記懸濁液中で行う方法は、懸濁化剤として作用する不活性希釈剤を反応媒体として用いて行ってもよい。該不活性希釈剤中においては、エチレンの弾性重合体は実質的に不溶である。
【0039】
本発明の好適な実施形態によれば、上記方法は、上記に示された炭素原子数3〜12のα‐オレフィンから選択した、少なくとも1種のα‐オレフィン(プロピレンが好ましい)と、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、またはそれらの異性体、またはそれらの混合物等の少なくとも1種の不活性希釈剤(プロパンが好ましい)と、を一般的に含む反応媒体中で実施してもよい。
【0040】
重合中に上記反応媒体に存在する弾性重合体の量(すなわち固体の全容量)は、反応媒体の全重量に対し、好ましくは、0重量%〜35重量%、より好ましくは、10重量%〜25重量%、の範囲である。
【0041】
得られた弾性重合体は、本分野における周知技術を用いて回収することができる。該弾性重合体は、例えば「従来技術(Traditional Technology)」を用いて回収することができる。該技術は、1つ以上の押出機を用いて、水蒸気を用いる第1のストリッピング部(水蒸気ストリッピング)および乾燥による第2の水分除去部を提供する。これら技術は、例えば米国特許第3,337,422号明細書、米国特許第3,462,487号明細書、または米国特許第4,278,506号明細書に記載される。
【0042】
本発明とその実施形態の理解がより深まるよう、いくつかの例示的かつ限定されない例を挙げる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0043】
以下に挙げるキャラクタリゼーション技術と分析技術を用いた。
【0044】
弾性重合体の組成

弾性重合体の組成を、ASTM D‐3900規格に基づく方法を用いてフーリエ変換赤外(FTIR)分光法により測定した。この測定を行うために、150℃でプレスして弾性重合体フィルムを準備し相対スペクトルを記録した。
【0045】
プロピレン含有量(重量%)は、720cm−1及び1155cm−1における吸収ピークを積分することにより測定し、実験的に得た相関関係を用いて計算を行った。
【0046】
5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)の含有量(重量%)は、ASTM D‐6047規格に基づく方法を用いて、FTIR分光法により測定した。
【0047】
ポリマーの粘度
ムーニー粘度(ML1+4@125℃)は、ASTM D‐1646規格に従って測定した。
【0048】
実施例1〜4
2つのエチレン‐プロピレンポリマーと、2つのエチレン‐プロピレン‐5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン(ENB)ポリマーを用意して、以下に記載する動作を行った。
【0049】
回転翼、アンカースクレーパー(anchor scraper)、および下部排出口を備えた40L反応器内において、懸濁液中における重合反応を連続的に行った。
【0050】
上記反応器には
‐液体プロパン(不活性希釈剤)(ライオンデルバセル社製)、
‐液体プロピレン(モノマー)(ポリメリヨーロッパ社製)、気体エチレン(モノマー)(ポリメリヨーロッパ社製)、液体5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)(モノマー)(イネオス社製)、気体水素(分子量調整剤)(Sapio社製)
‐バナジウムアセチルアセトネート[V(acac)](Reactana社製)のパラフィン系オイル懸濁液(懸濁液の全重量に対し8重量%のバナジウムアセチルアセトネート)(触媒)、
‐塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)(それ自体、純度98.5%、モル比Al/Cl:1、アルベマール社製)(共触媒)
‐ジクロロフェニル酢酸エチル(DCPAE)(それ自体、純度97%、Chem Solutions社製)(活性化剤)
を供給した。
【0051】
用いた操作条件を表1に示す。すなわち反応器へ供給した化合物、温度、圧力、を表1に示す。
【0052】
化合物の反応器中の平均滞留時間は1.5時間であった。得られた弾性重合体の懸濁液を反応器の底部から排出し、連続して、120℃の水で満たした蒸留器(ストリッパー)へ入れた。蒸留器には同時に水蒸気も入れ、水素、プロパン、および未反応モノマー(プロピレンおよびエチレン)を蒸発させた。
【0053】
また、未反応の塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)およびジクロロフェニル酢酸エチル(DCPAE)は、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を用いて、上記蒸留器において中和、分解し、その結果、水酸化アルミニウム/酸化アルミニウム[Al(OH)/Al]、酢酸/無水酢酸[CHCOOH/(CHCO)O]、および塩化ナトリウム(NaCl)が形成された。
【0054】
蒸留器から放出される水分は微量の未反応バナジウムを含んでいるため、収集され水処理へ回される。
【0055】
得られた弾性重合体について、上記のキャラクタリゼーションを行い、得られた結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
(1): 液体プロピレン(モノマー)
(2): 液体プロパン(不活性希釈剤)
(3): 気体エチレン(モノマー)
(4): 液体5−エチリデン−2−ノルボルネン(モノマー)
(5): 気体水素(分子量調整剤)
(6): 気相パージ
(7): バナジウムアセチルアセトネート[V(acac)]のパラフィン系オイル懸濁液(懸濁液の全重量に対し8重量%のバナジウムアセチルアセトネート)(触媒)
(8): 塩化ジエチルアルミニウム(それ自体、純度98.5%)(共触媒)
(9): 共触媒中に存在するアルミニウムの、触媒中に存在するバナジウムに対するモル比
(10): ジクロロフェニル酢酸エチル(それ自体、純度97%)(活性化剤)
(11): 触媒中に存在する活性化剤の、触媒中に存在するバナジウムに対するモル比