特許第6227556号(P6227556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227556
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】塗抹標本自動作製装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20171030BHJP
   G02B 21/34 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G01N1/28 V
   G02B21/34
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-550417(P2014-550417)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-505052(P2015-505052A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】US2012071489
(87)【国際公開番号】WO2013101777
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】61/581,032
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショフナー,ジョン・スコット
(72)【発明者】
【氏名】チャッコ,コーシー・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ソロモン,ロエル
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−152282(JP,A)
【文献】 特開2000−074803(JP,A)
【文献】 特表平11−506826(JP,A)
【文献】 特開昭52−077791(JP,A)
【文献】 特開2003−279453(JP,A)
【文献】 特開平02−091541(JP,A)
【文献】 米国特許第03871895(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
G01N 33/48−33/98
G01N 35/00−37/00
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド自動作製装置で使用する塗抹サブシステムであって、
繰出しリール、
巻き取りリール、
そこに形成された複数のカットアウトを有する塗抹テープであって、最初は前記繰出しリール内に巻き取られ、前記塗抹テープを前記繰出しリールから前記巻き取りリールへ引き込むことができるように、前記巻き取りリールに結合されている前記塗抹テープ、および
前記塗抹テープが前記巻き取りリールへ引き込まれるに伴い、前記塗抹テープから伸びて塗抹面を露出するブレードを形成するために、前記複数の塗抹テープのカットアウトのそれぞれを曲げるように構成されているテープ偏向部品
を含む塗抹カートリッジ、ならびに
露出された前記塗抹面に亘ってスライドを動かすように構成されているスライド輸送面
を含み、
前記スライド上の1滴の標本が露出された前記塗抹面と接触するよう前記スライド輸送面が前記スライドを露出された前記塗抹面と接触させる場合に、前記ブレードの露出された前記塗抹面が前記スライドと鋭角を形成する、
塗抹サブシステム。
【請求項2】
前記ブレードの露出された前記塗抹面と前記スライドとの間に形成された前記鋭角が調節可能である、請求項1に記載の塗抹サブシステム。
【請求項3】
前記繰出しリールに対して前記テープ偏向部品の位置が調節可能である、請求項1または2に記載の塗抹サブシステム。
【請求項4】
前記巻き取りリールに対して前記テープ偏向部品の位置が調節可能である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗抹サブシステム。
【請求項5】
前記テープ偏向部品の位置がモータによって調節可能である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗抹サブシステム。
【請求項6】
前記テープ偏向部品に対して前記繰出しリールの位置が調節可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗抹サブシステム。
【請求項7】
前記テープ偏向部品に対して前記巻き取りリールの位置が調節可能である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗抹サブシステム。
【請求項8】
前記鋭角が、約60度未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗抹サブシステム。
【請求項9】
前記鋭角が、約45度未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗抹サブシステム。
【請求項10】
前記鋭角が、約30度未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗抹サブシステム。
【請求項11】
前記鋭角が、約15度未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗抹サブシステム。
【請求項12】
前記テープ偏向部品が、ロールバーを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗抹サブシステム。
【請求項13】
前記塗抹テープが、前記繰出しリールと前記巻き取りリールとの間の前記ロールバーの周りに巻き付けられる、請求項12に記載の塗抹サブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年12月28日出願の米国特許仮出願第61/581,032号の出願日の優先権を主張する。この出願の開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は、塗抹標本自動作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に、顕微鏡スライド上に標本(例えば、血液検体)を準備し、塗抹処理するために使用される塗抹標本自動作製装置を提供する。一実施形態では、スライド自動作製装置で使われる塗抹サブシステムが提供される。塗抹サブシステムは、通常、繰出しリール、テープ偏向部品(deflection component)、巻き取りリール、および塗抹面形成用塗抹テープを有する塗抹カートリッジを含む。塗抹テープは、最初は繰出しリール内に巻き取られ、塗抹テープを繰出しリールから巻き取りリール中へ引き込むことができるように巻き取りリールに結合されている。塗抹テープは、そこに形成された複数のパーフォレーションを含むことができる。次に、塗抹テープは、テープ偏向部品により曲げられ、それぞれの複数のパーフォレーションが塗抹テープから伸びるブレードを形成し、塗抹テープが巻き取りリール中に引き込まれるに伴い、塗抹面が露出される。別の実施形態では、塗抹テープエッジを使って塗抹を形成できる。例えば、塗抹テープは、塗抹テープエッジが第1と第2とのテープ偏向部品の間で塗抹面を形成するように操作できる。塗抹テープエッジとスライドとの間の角度は、機械的な機構または第1のおよび/または第2のテープ偏向部品により調節できる。また、スライド輸送面が、塗抹面に亘って顕微鏡スライドを動かすように設けられている。
追加の実施形態および詳細は、下記で提供される。
【発明の概要】
【0003】
一部の実施形態では、本開示は、スライド自動作製装置で使われる塗抹サブシステムを提供し、塗抹サブシステムは、繰出しリール、巻き取りリール、そこに形成された複数のパーフォレーションを有する塗抹テープであって、最初は繰出しリール内に巻き取られ、塗抹テープを繰出しリールから巻き取りリールへ引き込むことができるように巻き取りリールに結合されている塗抹テープ、塗抹テープが巻き取りリール中に引き込まれるに伴い、それぞれの複数の塗抹テープのパーフォレーションを曲げて、塗抹テープから伸びるブレードを形成し、塗抹面を露出するように構成されたテープ偏向部品、および露出塗抹面に亘ってスライドを動かすように構成されたスライド輸送面を含む。
【0004】
一部の実施形態では、スライド輸送面がスライドを露出塗抹面と接触させる際に、ブレードは、スライドと鋭角を形成する。一部の実施形態では、塗抹サブシステムは、ブレードとスライドとの間で形成される鋭角を調節する角度制御機構をさらに含む。一部の実施形態では、角度制御機構は、繰出しリールに対してテープ偏向部品の位置を調節するように構成されている。一部の実施形態では、角度制御機構は、巻き取りリールに対してテープ偏向部品の位置を調節するように構成されている。一部の実施形態では、角度制御機構は、テープ偏向部品を動かすように構成されたステップモーターを含む。一部の実施形態では、角度制御機構は、テープ偏向部品に対して繰出しリールの位置を調節するように構成されている。一部の実施形態では、角度制御機構は、テープ偏向部品に対して巻き取りリールの位置を調節するように構成されている。一部の実施形態では、鋭角は、約60度未満である。一部の実施形態では、鋭角は、約45度未満である。一部の実施形態では、鋭角は、約30度未満である。一部の実施形態では、鋭角は、約15度未満である。
【0005】
一部の実施形態では、本開示は、スライド自動作製装置で使われる塗抹サブシステムを提供し、塗抹サブシステムは、繰出しリール、第1および第2のテープ偏向部品、巻き取りリール、塗抹テープ(塗抹テープは、最初は繰出しリール内に巻き取られ、塗抹テープを繰出しリールから巻き取りリールに引き込むことができるように巻き取りリールに結合されており、塗抹テープは、繰出しリールと巻き取りリールとの間の第1および第2のテープ偏向部品の周辺に配置されて第1と第2のテープ偏向部品の間で塗抹テープエッジが塗抹面を形成する)、および塗抹面に亘ってスライドを動かすように構成されたスライド輸送面を含む。一部の実施形態では、第1のおよび第2のテープ偏向部品が塗抹テープを曲げ、それにより、スライド輸送面がスライドを塗抹面と接触させる際に、塗抹テープとスライドとの間に鋭角が形成される。一部の実施形態では、塗抹サブシステムは、角度制御機構をさらに含み、第1と第2のテープ偏向部品との間の塗抹テープの曲げを調節する。一部の実施形態では、角度制御機構は、第1または第2のテープ偏向部品の片方の位置を調節するように構成されている。一部の実施形態では、角度制御機構は、第1および第2のテープ偏向部品の両方の位置を調節するように構成されている。一部の実施形態では、第1および第2のテープ偏向部品は、相互に平行である。一部の実施形態では、スライド輸送面の動きは、塗抹テープに対し直角である。一部の実施形態では、鋭角は、約60度未満である。一部の実施形態では、鋭角は、約45度未満である。一部の実施形態では、鋭角は、約30度未満である。一部の実施形態では、鋭角は、約15度未満である。一部の実施形態では、第1のテープ偏向部品は、ロールバーを含み、塗抹テープは、繰出しリールと巻き取りリールとの間のロールバーの周りに巻き付く。一部の実施形態では、第2のテープ偏向部品は、ロールバーを含み、塗抹テープは、繰出しリールと巻き取りリールとの間のロールバーの周りに巻き付く。
【0006】
本明細書に組み込まれる添付図は、明細書の一部を構成する。本記載説明とあわせて、図は、提示されたシステムと方法の原理を説明し、当業者にその作製および使用を可能とさせるために、さらに役立つ。図では、類似の参照番号は、同じまたは機能的に類似の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】スライド自動作製装置の斜視図である。
図2】スライド自動作製装置で使用する塗抹サブシステムの図である。
図3図2の塗抹サブシステムの斜視図である。
図4】提示された一実施形態による塗抹カートリッジの斜視図である。
図5】繰出しリール、テープ偏向部品、巻き取りリール、および塗抹テープの模式図である。
図6】提示された一実施形態を示す模式図である。
図7】提示された別の実施形態による塗抹カートリッジの側面図である。
図8】提示された別の実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、顕微鏡スライド上に標本(例えば、血液検体)を準備し、塗抹処理し、画像処理するために使われるスライド自動作製システムに関する。特定の一実施形態では、スライド自動作製システムで使われる低コスト塗抹サブシステムが提供される。このような塗抹サブシステムは、オープンリール方式を採用して、塗抹テープ(またはリボン)により単一の使用塗抹面を与える。さらに具体的には、最初、繰出しリール内に巻き取られている塗抹テープは、繰出しリールから巻き戻され、巻き取り(または廃棄)リールに引き込まれるに伴い、一連のスライドの塗抹処理のための複数の塗抹エッジ(または表面)を与えるように構成されている。オープンリール機構は、テープを割り出し送り移動(または前進)させ、次のスライドに対し、引き続き清浄な塗抹面を提供する。従って、塗抹サブシステムは、連続的に提供される清浄な単回使用塗抹面により、相互汚染、および起こる可能性のある操作者のバイオハザードを防ぐ。種々の実施形態が以下に記載される。
【0009】
例えば、一実施形態では、塗抹サブシステムは、通常、繰出しリール、テープ偏向部品、巻き取りリール、および割り出し送り塗抹テープを有する塗抹カートリッジを含む。塗抹テープは、最初、繰出しリール内に巻き取られている。塗抹テープは、塗抹テープを繰出しリールから巻き取りリールに引き込むことができるように、巻き取りリールに結合される(または少なくとも部分的に巻き取られている)。一実施形態では、塗抹テープは、そこに形成された複数のパーフォレーションを含むことができる。その後、塗抹テープは、テープ偏向部品の周りに巻き取られ(または他の方法で配置されるか、または張り巡ら張り巡らされて)、塗抹テープが巻き取りリールに引き込まれるに伴い、それぞれの複数のパーフォレーションは、塗抹テープから伸びて、塗抹面を露出するブレードを形成する。別の実施形態では、塗抹テープエッジを使って、塗抹を形成できる。例えば、塗抹テープを操作して、塗抹テープエッジは、第1と第2のテープ偏向部品との間に塗抹面を形成できる。テープエッジとスライドとの間の角度は、機械的な機構または第1および第2のテープ偏向部品により調節できる。一部の実施形態では、第1および/または第2のテープ偏向部品は、ロールバーを含んでもよく、塗抹テープは、ロールバーの周りに巻き付けられてもよい(または他の方法で、配置、取り付け、または巻き付け、もしくは張り巡らされてもよい)。また、スライド輸送面も、顕微鏡スライドを、塗抹面に亘って動かすように提供されている。
【0010】
以下の図の詳細説明は、1つまたは複数の代表的実施形態を例示する添付図を参照する。他の実施形態も可能である。本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書記載の実施形態に対する修正を行うことができる。従って、以下の詳細説明は、限定を意味するものではない。
【0011】
図1は、スライド自動作製装置100の斜視図である。この装置は、標本(例えば、血液検体)をスライド380(例えば、ガラス、プラスチック、石英、または他の顕微鏡スライド)上に沈着させ、最適観察の標本を塗抹処理し、および/またはスライドの画像処理の前に標本を染色して乾燥するために使用される。示した実施形態では、スライド作製装置100は、塗抹カートリッジ115、標本吸引サブシステム120、スライドプリンタおよびバーコードサブシステム125、ならびにスライド移動サブシステム130を含む。操作中、スライド移動サブシステム130は、スライド380を1つまたは複数のスライドホルダー135から抜き取り、スライド380を標本吸引サブシステム120に送り出す。標本吸引サブシステム120では、1滴の標本(例えば、血液)が吸引プローブ221を介してスライド380上に塗抹処理される。吸引サブシステム120は、1つまたは複数のチューブラック投入装置140から標本(そして必要に応じ試薬)を取り出すことができる。
【0012】
スライド380が塗抹カートリッジ115を通して処理されると、標本がスライド380全体に塗抹処理され、塗抹処理されたスライドは、スライド380を収容する1つまたは複数の空の位置があるスライドキャリア(またはカートリッジ)355に送られる(スライド380を収容する1つまたは複数の空の位置を有する複数のスライドキャリア355は、待機エリア145中で維持管理される)。次に、典型的な例では、複数の塗抹処理されたスライド380を保持するスライドキャリア355は、染色サブシステム170および/または乾燥サブシステム165などの追加のサブシステムによりさらに処理される。染色サブシステムでは、スライド380は、種々の試薬および/または洗浄浴による処理を受ける。最終的に、スライド380は、画像処理サブシステム175により処理され、ここで、標本は、訓練を受けた専門家、および/またはコンピュータ自動化画像処理分析システムにより観察用の画像処理がなされる。
【0013】
図2は、図1の塗抹サブシステム110の斜視図である。さらに具体的には、図2は、標本吸引サブシステム120の追加の詳細を示し、これは、吸引シャトル(またはプローブ)221、吸引ポイント222、洗浄ブロック223、および再懸濁ユニット224を含む。操作中、スライド380は、スライドホルダー135(または外部作製スライド投入マウント231)から引き出される。プリンタおよびバーコードサブシステム125内で、ラベル(またはバーコードなどの他の表示)をスライド380に付着できる。次に、スライド380は、スライド輸送面216上を、吸引サブシステム120から塗抹カートリッジ115に送られる。塗抹処理後、スライド380は、スライドキャリア(またはカートリッジ)355に送られ、垂直割送り装置217中のラックにより割り出し送りされ得る。スライド380は、スライドキャリア355上にマウントされると、乾燥ファン218をスライド380にあてる。
【0014】
図3は、図1の塗抹サブシステム110の別の斜視図である。さらに具体的には、図3の矢印は、スライドホルダー135から、標本吸引サブシステム120を通って、塗抹カートリッジ115に運ばれ、スライドキャリア355に積み重ねられる間の、スライド380のプロセスフローを示す。スライドキャリア355のさらなる詳細は、米国特許仮出願第61/581,037号に開示されている。この特許の全開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0015】
図4(a)は、提示された一実施形態による塗抹カートリッジ115の斜視図で、図4(b)は、底側面図である。図からわかるように、塗抹面481は、塗抹テープ482から伸びるブレード(またはタブ、または突起部)487により与えられる。例えば、ロールバー(またはローラー)484などのテープ偏向部品の周りで、塗抹テープが繰出しリール483から巻き取りリール485中に引き込まれるに伴い、ブレード487は、塗抹テープ482から伸びる。実際には、塗抹テープ482は割り出し送出され、制御されたテープの動きを与えることができる。モーター(ステップモーターなどの)を巻き取りリール485に結合して、塗抹テープ482に動きを与えることができる。一部の実施形態では、例えば、モーターまたはブレーキなどの調節機構を繰出しリール483に適用して、塗抹テープ482に適切な張力を与えることができる。また、調節機構は、繰出しリール483、テープ偏向部品、および/または巻き取りリール485の間の相対的位置決めの調節を行うことができる。
【0016】
図5(a)および5(b)は、塗抹テープがテープ偏向部品の周りに巻き付く(または他の方法で配置されるか、もしくは張られ)ときに、どのようにしてブレード(またはタブまたは突起部)487が塗抹テープ482から伸びるかを示す模式図である。さらに具体的には、テープ偏向部品の周りの塗抹テープの方向での変化がブレード487を塗抹テープ482から突出させ(または伸びさせ)、それにより、単回使用の塗抹面481を形成するように、塗抹テープ482内にパーフォレーション(またはカットアウト)588が形成される。次に、塗抹面481を使って、1滴の標本(例えば、血液)586を塗抹処理し、スライド輸送面が塗抹面481に亘ってスライドを動かすに伴い、これはスライド580上に配置される。スライド580が塗抹処理された後で、塗抹テープ482を巻き取りリール485中に引き込むことにより前進させる。塗抹テープ482がテープ偏向部品を越えて移動すると、ブレード487は伸びた位置から復帰する。その後、塗抹テープ482上の次のブレードを処理予定の次のスライドに使用する。
【0017】
一実施形態では、塗抹テープ482は、テープ用の「トラクターフィード」の複数の割り出し穴を含むが、この穴は、ブレード487の機能には直接影響しない。これらの割り出し穴は、丸くてもよいが、それらの形状を、スロットに変えて公差内に納めても、さらには、テープエッジ部のノッチにして、処理中に除去の必要がある材料の廃棄「スラグ」を防止してもよい。割り出しの主要態様は、正確なテープ位置の判定手段を与えることである。一実施形態では、ブレードを作るパーフォレーション(またはカットアウト)は、塗抹の幅を規定するフラット部分(すなわち、「臨界エッジ」内側)を形成する。一実施形態では、臨界エッジが22mm幅、および各コーナーR1.5の場合、塗抹の幅は、25mmである。一実施形態では、臨界エッジは、スムーズで、バリがない。一実施形態では、パーフォレーションは、それ自体、2.5mmカットアウトを形成し、ブレードプロファイルを生成する。このようなカットアウトは、テープの使用を最小限にするためには、可能な限り小さくてよく、パンチ工具の頑強さを最大にするためには、可能な限り大きくてよい。また、カットアウト幅の寸法は、ゼロでよい(すなわち、剪断)。テープ中のカットアウトは、打抜きで作ることができるが、「スチールルール」ダイを使った犠牲アンビルに対する平台キスカッティング;片面ロータリーダイを使ったアンビルに対するロータリーキスカッティング;アンビルに対するロータリーキスカッティングおよび片面ロータリーダイを使った一時的「ロータック」裏打ち;平台「マッチメタル」または「雄雌」ダイセット;および/またはロータリー「マッチメタル」または「雄雌」ダイセット、などのいくつかの変形方式が利用可能である。
【0018】
塗抹テープ482用の候補材料には、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS);ポリエチレン(PE;HDPE、MDPE、LDPE、LLDPE、としても知られる);ポリスチレン(PS);ポリプロピレン(PP);ポリウレタン(PU);ポリアミド(PA、ナイロンとしてよく知られる);ポリオキシメチレン(POM、アセタールまたはデルリン(R)の商品名でよく知られる);ポリカーボネート(PC);ポリテトラフルオルエチレン(PTFE、テフロン(登録商標)の商品名でよく知られる);ポリエチレンレフタラート(PET、ポリエステル、またはマイラー(R)もしくはメリネックス(R)の商品名でよく知られる);ポリ塩化ビニル(PVC、ビニルとしてよく知られる);ポリメチルメタクリル酸塩(PMMA、アクリル酸、またはパースペクス(R)もしくはプレキシガラス(R)の商品名でよく知られる)、などの多くの半硬質熱可塑性ポリマーが含まれる。
【0019】
一部の実施形態では、塗抹テープは、親水性コーティングまたは疎水性コーティングを有するプラスチックフィルムを含んでもよい。一部の実施形態では、塗抹テープは、例えば、クエン酸またはイソプロピルアルコールなどの弱酸で処理して、ガラススライドなどの基材に対し、標本の良好な吸い上げ処理および塗抹処理が行えるプラスチックフィルムを含んでもよい。
【0020】
一部の実施形態では、塗抹テープ用材料は、靱性と安定性の理由で、ポリエステル(PET)であってよい。ポリエステルフィルムは、一連の特性、主に、光学的透明性および種々の基材に対する接着用処理の観点から利用可能である。表面仕上げの間接的影響は、ブレードの幅と直角の方向に血液滴の吸い上げ作用を促進する点で、重要である。
【0021】
個別ブレード487の長さ(すなわち、ブレードの後ろの「背骨」領域)、および塗抹テープ482材料の厚さは、ブレード487の剛性、ならびに塗抹テープがテープ偏向部品の周りで巻き付く(または周りで曲がる、または接触する)ときの角度位置に対する感受性を規定する。塗抹テープ材料の厚さは、175μm(0.007”)であってよいが、75〜250μmの範囲などの選択肢が利用できる。
【0022】
図6は、提示された一実施形態を説明する模式図である。さらに具体的には、図6は、最適塗抹標本を生成するために提供される主要角度および距離を示し、これらは、標本の粘度、標本のヘマトクリット値、標本の容量、などの因子により影響を受ける場合がある。また、塗抹処理は、許容可能な質の塗抹標本を生成するように塗抹サブシステムの調整が必要となる多くの異なるパラメータに感受性が高い場合がある。前記パラメータは、繰出しリール、テープ偏向部品、および/または巻き取りリールの間の相対的位置に基づいて調節可能である。また、調節が必要な場合があるパラメータには、テープ偏向部品とスライドとの間の距離;塗抹テープの割り出し角度;スライドの速度プロファイル;吸上位置および時間;スライドに対する塗抹テープの垂直性;スライドに対するブレード圧力;および/またはスライド上のブレードの芯合わせ、が含まれる。
【0023】
図6の単純化形状には、以下のように定義されたパラメータが示されている。
θ=塗抹ブレードとスライド間の接触角度
x=テープ偏向部品の前面と塗抹ブレードのスライドとの接触点との間の距離
β=ポイントPとブレードタンジェント接触点との間の割り出し角度
s=ポイントPとブレードタンジェント接触点との間の弧の長さ
h=テープ偏向部品中心とスライド表面の間の距離(例えば、8.5mm)
l=塗抹ブレード長さ(例えば、10mm)
r=テープ偏向部品半径(例えば、5mm)
【0024】
一実施形態では、スライドが所定の位置に無い場合は、ブレード487は、テープ偏向部品(例えば、ロールバー484)から完全なタンジェントで伸びると仮定できる。しかし、スライド580が挿入されると、テープ偏向部品とスライド580との間の距離は、hに制限され、タンジェントの位置Tの周りをブレード487に回転させることになる。位置関係の計算で、ブレード487に撓みはなく、ブレードは、タンジェントの位置の周りで完全に回転すると仮定する。この場合では、特定の接触角度、θ、が設定されると、以下の幾何学的配置が使用される。
lsin(θ)+rcos(θ)≧h、の場合:
β=sin−1((h−1sin(θ))/r)
s=rβ
x=r−rcos(θ)+lcos(θ)
【0025】
一実施形態では、塗抹テープ482は、塗抹テープおよび/またはブレードの相対的位置を特定するために、1つまたは複数の光学的識別名または表示(図示せず)を含む。一実施形態では、光学的識別名とポイントPとの間の塗抹テープに沿った距離は、16.9mmで、塗抹テープの割り出し穴の間の距離は、20.5mmである。従って、塗抹テープ割り出し距離iは、i=(s+16.9)mod 20.5となる。一実施形態では、ホームポジションと血液分注位置との間のスライドに沿ったポイントPの直下の距離は、73mmである。ブレードエッジが血液に接触する塗抹処理開始位置mは、従って、m=x+73である。
【0026】
塗抹テープが前進するときに、繰出しリールおよび巻き取りリールの直径を変更することを前提として、塗抹テープを特定の距離だけ割り出しするのに必要なステップ数を決めるために計算が必要である。この場合では、リールの大きさは、次の式に従う:
【数1】
式中、
R=テープを含むリールの半径
L=使用済テープの長さ(例えば、塗抹処理の数x20.5mm)
r2=廃棄リールの芯の半径(例えば、12.5mm)、である。
【0027】
図7は、提示された別の実施形態による塗抹カートリッジ715の側面図である。図7に示されるように、繰出しリール783は、複数のテープ偏向部品(例えば、ロールバー784)に亘って動くように割り出しされ得る塗抹テープ782を提供する。塗抹テープ782は、巻き取り(または廃棄)リール785に結合されたステッパーモーター(図示せず)を使って前進させることができる。一部の実施形態では、調節可能ブレーキまたは例えば、モーター(図示せず)などの他の適切な部品を繰出しリール783に取り付け、適切な張力を塗抹テープ782に設定できる。塗抹テープ782は、脇部に穴を開ける、および/または銀色のペンキペンを塗布することができ、それにより、光学的センサーを使って、開口部または塗布表示が検出されると、塗抹テープの位置を設定できる。
【0028】
図8は、提示された別の実施形態の模式図である。図8に示すように、繰出しリール883は、パーフォレーション不含塗抹テープ882を供給する。このテープは、第1および第2のテープ偏向部品(例えば、2つのロールバー884)の回りに巻き付けられる(またはその周りで曲げられ、またはその周りもしくは上で張り巡らされ、または他の方法で周りに配置される)。第1および第2のテープ偏向部品は、塗抹テープ882を操作して(例えば、曲げる、動かす、張られ、および/または歪めて)、それにより、塗抹テープのエッジが、スライド880上に標本を塗抹処理するための塗抹面881を形成するように機能する。角度制御機構890は、塗抹面881の角度を適宜調節するように構成できる。塗抹テープエッジとスライド880の間の角度は、機械的な機構および/または第1および第2のテープ偏向部品によって調節できる。操作中、スライド輸送面は、塗抹面881に亘って(例えば、z軸に沿って)スライド880を垂直に動かす。
【0029】
追加の実施形態
別の実施形態では、スライド自動作製装置で標本を塗抹処理する方法が提供される。方法は、繰出しリール、テープ偏向部品(例えば、ロールバー)、巻き取りリール、および塗抹テープを含む塗抹カートリッジを有する塗抹サブシステムを提供することを含む。一実施形態では、塗抹テープは、そこに形成された複数のパーフォレーションを含むことができる。塗抹サブシステムは、最初は繰出しリール内に巻き取られている塗抹テープを、巻き取りリールに結合することにより、繰出しリールから巻き取りリールへ塗抹テープを引き込むことができるように構成できる。また、塗抹テープは、繰出しリールと巻き取りリールとの間で、テープ偏向部品の周りに巻き付けられるように構成でき、それにより、塗抹テープが巻き取りリールに引き込まれるに伴い、それぞれ複数のパーフォレーションが塗抹テープから伸びて、塗抹面を露出するブレードを形成する。その後、スライド輸送面がスライドを露出塗抹面と接触させる際に、塗抹面は、スライドと鋭角を形成できる。別の実施形態では、塗抹テープは、第1および第2のテープ偏向部品との間で曲げられ、それにより、塗抹テープの側面が塗抹面を形成する。方法は、露出塗抹面に亘ってスライドを動かすように構成されたスライド輸送面を供給することをさらに含んでもよい(それが、ブレードでも、曲げられた塗抹テープの側面であっても)。方法は、鋭角が約60度未満、約45度未満、約30度未満、および/または約15度未満であるように塗抹カートリッジを構成することをさらに含んでもよい。このような構成は、繰出しリール、第1および/または第2のテープ偏向部品、および/または巻き取りリールを互いに動かすことを含んでもよい。また、このような構成は、光学的入力サブシステム(または他の入力パラメータ)を使って標本をモニタリングし、標本の特性(例えば、ヘマトクリット値、粘度、または容量)に応じて、鋭角を調節することを含んでもよい。方法は、第1および/または第2のテープ偏向部品とスライドとの間の距離;塗抹テープの割り出し角度;スライド速度プロファイル;吸上位置および時間;スライドに対する塗抹テープの垂直性;および/またはスライド上のブレードの芯出しの調整をさらに含んでもよい。
【0030】
前出の本発明の説明は、例示し説明する目的のために提示されてきた。本発明を網羅的とする、または厳密に本開示形態に限定する意図はない。上記教示を考慮すると、他の修正および変更が可能であろう。実施形態は、本発明の原理と、その実際の適用に対し最良の説明を行い、それにより、他の当業者が、特定の意図された使用に適合するような種々の実施形態および種々の修正により、本発明を最良の形態で利用するのを可能とするように選択および記載された。等価な構造、構成要素、方法、および手段、などの他の代替の本発明の実施形態を含むと、特許請求の範囲が解釈されるべきであることが意図されている。
【0031】
発明の概要および要約の項を除いて、詳細説明の項は、請求項を解釈するために使用されることが意図されていることは理解されたい。発明の概要および要約の項は、全てではないが、本発明の発明者が意図する1つまたは複数の代表的実施形態を記述しているものであり、従って、本発明および添付請求項を何ら限定する意図はない。
図1
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図8