(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭素数9〜24の高級アルカンと炭素数6〜20の高級アルコールの混合物を主成分とし、前記混合物は、示差走査型熱量計(DSC)により測定されたDSC曲線において、実質的に単一の融解ピークを有していることを特徴とする蓄熱材組成物。
前記炭素数18の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数12の高級アルコールのモル分率が65〜89モル%であることを特徴とする請求項2に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数16の高級アルカンと炭素数10の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数10の高級アルコールのモル分率が85〜94モル%であることを特徴とする請求項6に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数16の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数12の高級アルコールのモル分率が21〜60モル%であることを特徴とする請求項10に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数15の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数12の高級アルコールのモル分率が10〜30モル%であることを特徴とする請求項12に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数14の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物中に占める前記炭素数12の高級アルコールのモル分率が10〜30モル%であることを特徴とする請求項14に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数14の高級アルカンと炭素数10の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数10の高級アルコールのモル分率が50〜80モル%であることを特徴とする請求項16に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数18の高級アルカンと炭素数14の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数14の高級アルコールのモル分率が10〜40モル%であることを特徴とする請求項18に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数20の高級アルカンと炭素数14の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数14の高級アルコールのモル分率が40〜70モル%であることを特徴とする請求項20に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数22の高級アルカンと炭素数14の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数14の高級アルコールのモル分率が73〜95モル%であることを特徴とする請求項22に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数20の高級アルカンと炭素数16の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数16の高級アルコールのモル分率が10〜29モル%であることを特徴とする請求項24に記載の蓄熱材組成物。
前記炭素数22の高級アルカンと炭素数16の高級アルコールの混合物中に占める、前記炭素数16の高級アルコールのモル分率が40〜60モル%であることを特徴とする請求項26に記載の蓄熱材組成物。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これら従来の蓄熱材組成物によれば、上述した0℃を超える温度領域、すなわち、水の融解温度近く〜常温近くの任意の管理温度を設定し、その管理温度の維持を行うには充分ではなかった。例えば、特許文献1の蓄熱材に関する技術では、アルコールを温度の制御に用いているが、アルコールのみのように単一の物質を蓄熱材組成物として温度の制御に用いると、任意の管理温度を設定するには問題があった。すなわち、蓄熱材は、蓄熱材組成物が固体から液体に融解する融解温度近くに温度が維持されることを利用するが、単一の物質を蓄熱材組成物として用いた場合はその物質固有の融解温度に依存した融解温度以外に管理温度を設定することができず、設定できる管理温度に制限があった。さらに、本発明者らの研究によれば、上述の管理温度の制御に利用できる融解温度を有する高級アルコールを用いた蓄熱材組成物は、融解温度や凝固温度が一定にならないことが明らかとなった。例えば、示差走査熱量計(DSC)による凝固温度及び融解温度の測定を行った場合、組成成分としては同じ高級アルコールであっても、その製造ロットによって融解温度は異なる値を示す場合があり、融解温度や凝固温度の指標となるDSC曲線の融解ピーク又は凝固ピークが複数存在することがあった。この原因の1つとしては、高級アルコールは複数の結晶構造をとることが可能で、不純物や環境変化等の影響によって複数の結晶構造の存在割合が大きく変化するため、DSC曲線の融解挙動や凝固挙動が不安定になると推測される。そのため、この技術では任意の管理温度を設定するには限界があり、さらに管理温度の制御に利用できる融解温度を有する高級アルコールを用いたとしても、安定した融解温度や凝固温度が得られず、医薬品や検体等の保管等に求められる狭い範囲での温度管理には不向きであるという課題があった。
【0009】
特許文献2の技術では、複数の無機材料を添加して混合することにより蓄熱材組成物の融解温度を調整しようとしている。しかし、この技術では単一の物質を蓄熱材組成物に用いた場合に対して融解潜熱量が減少するので、融解温度近くに温度を維持する性能が充分に得られない。さらに、この種の複数材料を混合して得られた蓄熱材組成物は、ヒートサイクル試験等の熱履歴により性能劣化する等の課題があった。
【0010】
特許文献3の技術では、高級脂肪酸及び高級アルコールを用いることで、高い融点と高い潜熱量を有する蓄熱材組成物が得られている。本発明者らは、蓄熱材組成物を構成する高級脂肪酸及び高級アルコールの組成比を調整することにより、上述した水の融解温度〜体温前後の管理温度の制御に利用できる融解温度を得ようとした。しかしながら、高級脂肪酸及び高級アルコールのような物質の融解挙動や凝固挙動は同じ成分であっても製造ロットによって大きく異なっており、これらの物質を混合して得られた蓄熱材組成物のDSC測定による融解及び凝固ピークも各成分の製造ロットによって異なっていた。そのため、この蓄熱材組成物は、融解及び凝固の挙動にばらつきが生じ、安定的に一定の融解温度が得られなかった。したがって、蓄熱材組成物の融解温度を所望の値に設定し、この融解温度を利用する安定した温度管理を行うことは困難であった。
【0011】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、任意の管理温度の制御に利用できる融解温度を有すると共に、融解挙動や融解温度のばらつきがなく、一定の融解温度を有する蓄熱材組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的としては、安定した温度管理を可能とし、目的の管理温度において充分な潜熱量を有する蓄熱材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の蓄熱材組成物は、炭素数9〜24の高級アルカンと炭素数6〜20の高級アルコールの混合物を主成分とし、混合物は、示差走査型熱量計(DSC)により測定されたDSC曲線において、実質的に単一の融解ピークを有している。
【0014】
炭素数9〜24の高級アルカンと炭素数6〜20の高級アルコールを各々選定し、所定の範囲で混合することにより、高級アルコール、高級アルカン各々単独において存在する融解/凝固の挙動のバラツキを大幅に低減することが可能となる。これにより、安定的に一定の融解温度を有する蓄熱材組成物を得ることができる。また、高級アルカンと高級アルコールを所定量混合することにより、高級アルカンおよび高級アルコールが有する高い潜熱量を保持しながら、融解温度を調整することが可能である。このため、医薬品、検体又は食品等の物品の管理に適切な水の融解温度近くから常温および体温近くの管理温度に融解温度を適宜調整することができる。なお、本発明における示差走査型熱量計(DSC)により測定されたDSC曲線とは、蓄熱材組成物についてDSC測定を行った際に得られるチャート又はスペクトルのことをいう。また、本発明において、融解ピークとは、DSC曲線で得られた融解挙動における融解ピークのピークトップのことをいう。また、単一の融解ピークとは、メインの融解ピークのピーク面積が少なくとも90%以上であることをいう。
【0015】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数18の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が20〜22℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0016】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数18の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数12の高級アルコールのモル分率が65〜89モル%である。これにより、炭素数18の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数12の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0017】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数16の高級アルカンと炭素数10の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が4〜6℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0018】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数16の高級アルカンと炭素数10の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数10の高級アルコールのモル分率が85〜94モル%である。これにより、炭素数16の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数10の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0019】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数16の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が15〜18℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0020】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数16の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数12の高級アルコールのモル分率が21〜60モル%である。これにより、炭素数16の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数12の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0021】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数15の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が9〜11℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0022】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数15の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数12の高級アルコールのモル分率が10〜30モル%である。これにより、炭素数15の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数12の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0023】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数14の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が6〜8℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0024】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数14の高級アルカンと炭素数12の高級アルコールの混合物中に占める炭素数12の高級アルコールのモル分率が10〜30モル%である。これにより、炭素数14の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数12の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0025】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数14の高級アルカンと炭素数10の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が0〜3℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0026】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数14の高級アルカンと炭素数10の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数10の高級アルコールのモル分率が50〜80モル%である。これにより、炭素数14の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数10の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0027】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数18の高級アルカンと炭素数14の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が26〜28℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0028】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数18の高級アルカンと炭素数14の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数14の高級アルコールのモル分率が10〜40モル%である。これにより、炭素数18の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数14の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0029】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数20の高級アルカンと炭素数14の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が30〜33℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0030】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数20の高級アルカンと炭素数14の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数14の高級アルコールのモル分率が40〜70モル%である。これにより、炭素数20の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数14の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0031】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数22の高級アルカンと炭素数14の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が34〜37℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0032】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数22の高級アルカンと炭素数14の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数14の高級アルコールのモル分率が73〜95モル%である。これにより、炭素数22の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数14の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0033】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数20の高級アルカンと炭素数16の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が34〜38℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0034】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数20の高級アルカンと炭素数16の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数16の高級アルコールのモル分率が10〜29モル%である。これにより、炭素数20の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数16の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0035】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数22の高級アルカンと炭素数16の高級アルコールの混合物を主成分とする。これにより、融解温度が41〜44℃の蓄熱材組成物を得ることのできる好適な高級アルカンと高級アルコールの組み合わせが選択される。
【0036】
また、本発明の蓄熱材組成物は、炭素数22の高級アルカンと炭素数16の高級アルコールの混合物中に占める、炭素数16の高級アルコールのモル分率が40〜60モル%である。これにより、炭素数22の高級アルカン由来の融解ピーク温度と、炭素数16の高級アルコール由来の融解ピーク温度とを略一致又は近接させることができ、融解ピーク温度が略定温であり、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られる。
【0037】
また、本発明の蓄熱材組成物は、さらに、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する。これにより、高級アルカン及び高級アルコールの混合物がゲル化して固形状態とすることができ、取り扱いが容易となると共に、引火性又は着火性を低減させることができる。
【0038】
また、本発明の蓄熱材は、上述のいずれかに記載の蓄熱材組成物からなる。これにより、安定した融解温度を備え、高い潜熱量を有する蓄熱材が得られる。
【0039】
また、本発明の輸送容器は、断熱性の箱体と、その内側に配置される上述の蓄熱材を含む。上述した蓄熱材組成物を含む蓄熱材により、安定した温度管理を可能とする輸送容器が得られる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の蓄熱材組成物は、炭素数9〜24の高級アルカンと炭素数6〜20の高級アルコールを各々選定し、所定の範囲で混合することにより、高級アルコール、高級アルカン各々単独において存在する融解挙動及び凝固挙動のバラツキを大幅に低減することができると共に、略単一の融解ピーク又は/及び凝固ピークを有し、一定の融解温度を有する蓄熱材組成物を得ることができる。さらに、高級アルカンおよび高級アルコールが有する高い潜熱量を保持しながら、水の融解温度近くから常温および体温近くの温度に融解温度を調整することが可能である。よって、医薬品、検体又は食品等の温度に敏感な物品の温度管理に好適な蓄熱材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】実施例1における試料1−1の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図2】実施例1における試料1−2の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図3】実施例1における試料1−3の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図4】実施例1における試料1−4の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図5】実施例1における試料1−5の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図6】実施例1における試料1−6の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図7】実施例1における試料1−7の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図8】実施例1における試料1−8の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図9】実施例1における試料1−9の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図10】実施例1における試料1−10の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図11】実施例2における試料1−11の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図12】実施例2における試料1−12の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図13】実施例2における試料1−13の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図14】実施例2における試料1−14の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図15】ラウリルアルコール(a)の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図16】ラウリルアルコール(c)の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図17】ラウリルアルコール(d)の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図18】オクタデカン(b)の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図19】オクタデカン(e)の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図20】実施例3における試料1−15の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図21】比較例1における試料1−16の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図22】比較例1における試料1−17の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図23】ラウリル酸の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図24】実施例4における試料2−1の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図25】実施例4における試料2−2の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図26】実施例4における試料2−3の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図27】実施例4における試料2−4の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図28】実施例4における試料2−5の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図29】実施例4における試料2−6の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図30】実施例4における試料2−7の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図31】実施例4における試料2−8の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図32】実施例4における試料2−9の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図33】実施例5における試料2−10の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図34】実施例5における試料2−11の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図35】実施例5における試料2−12の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図36】1−デカノール(f)の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図37】1−デカノール(h)の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図38】ヘキサデカン(g)の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図39】ヘキサデカン(i)の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図40】実施例6における試料2−13の示差走査熱量測定結果のグラフである。
【
図41】本発明の実施形態に係る定温輸送容器を概略的に示す分解斜視図である。
【
図42】(a)
図41に示す定温輸送容器の内部を概略的に示す斜視図、及び、(b)
図42(a)のA−A線断面を模式的に表わす断面図である。
【
図43】実施例17と実施例18における環境温度−20℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【
図44】実施例17と比較例4における環境温度−20℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【
図45】実施例17と比較例2における環境温度−20℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【
図46】比較例2と比較例3における環境温度−20℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【
図47】実施例17と実施例18における環境温度35℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【
図48】実施例17と比較例4における環境温度35℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【
図49】実施例17と比較例2における環境温度35℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【
図50】比較例2と比較例3における環境温度35℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【
図51】実施例19と比較例5における環境温度−20℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【
図52】実施例19と比較例5における環境温度35℃条件下での輸送容器内部の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について具体例を示して説明する。
【0043】
本実施形態の蓄熱材組成物は、相状態が、凝固状態(固体)から溶融状態(液体)に相転移する際に熱エネルギーを吸収すること、又は溶融状態(液体)から凝固状態(固体)に相転移する際に熱エネルギーを放出することによって、潜熱型の蓄熱材に利用できるものである。
【0044】
蓄熱材組成物の融解温度とは固体が融解して液体化する温度のことをいい、凝固温度とは液体が凝固して固体化する温度のことをいう。また、その蓄熱材組成物からなる蓄熱材の融解温度とは、その主な部分の相状態が凝固状態(固体)から溶融状態(液体)に変化する温度のことをいい、蓄熱材の凝固温度とは、その主な部分の相状態が溶融状態(液体)から凝固状態(固体)に変化する際の温度のことをいう。主な部分とは、目安としては50重量%を超える割合を占める部分を示す。例えば、蓄熱材の80重量%が固体で20重量%が液体の状態の場合、この蓄熱材の相状態は固体(凝固状態)とする。ここで相状態とは、一般的な固体、液体又は気体の状態を表す。本発明では、主に、固体と液体の相状態を利用する。
【0045】
蓄熱材組成物の融解温度又は凝固温度は、例えば、蓄熱材組成物について示差走査熱量計(DSC)を用いた測定を行い、温度上昇又は温度低下に伴う組成物の熱量値の変化を測定した結果、熱量測定値のピークが現れる温度を、それぞれ融解温度又は凝固温度とすることが好ましい。具体的には、DSCにより測定されたDSC曲線の融解挙動又は凝固挙動におけるピークの温度をそれぞれ融解温度又は凝固温度とし、複数のピークが存在する場合には、最大のピーク面積を有するピークの温度を融解温度又は凝固温度として選択することが好ましい。ここで、本発明における示差走査型熱量計(DSC)により測定されたDSC曲線とは、蓄熱材組成物について、例えば、2℃/minの昇温速度でDSC測定を行った際に得られるチャート又はスペクトルのことをいう。また、本発明において得られる蓄熱材組成物は、実質的に単一の融解ピークを有するが、ここで単一の融解ピークとは、メインの融解ピークのピーク面積が少なくとも90%以上であることをいい、好ましくは95%以上であることをいう。いいかえると、単一の融解ピークとは、メインの融解ピーク以外の融解ピーク面積が10%未満、好ましくは5%未満であることをいうが、メインの融解ピーク以外には融解ピークが認められず、ダブルピークやサイドピーク、ショルダーピークも認められないことが最も好ましい。
【0046】
本実施形態の蓄熱材組成物は、高級アルカン及び高級アルコールを含有する。高級アルカン及び高級アルコールとは、目安としてそれぞれ炭素数が6以上のアルカン及びアルコールである。高級アルカンと高級アルコールを混合する効果としては、高級アルカンと高級アルコールを各々選定し、所定の範囲で混合することにより、高級アルカン及び高級アルコールが有する高い潜熱量を保持しながら、融解温度や凝固温度を調整可能なこと、数種類の結晶構造が共存し、その存在割合が異なることに起因すると推定される高級アルコール、高級アルカンの融解/凝固挙動(DSCのスペクトル)の製造ロット間のバラツキの抑制が可能なこと、また、略単一の融解ピーク温度又は/及び凝固ピーク温度を有する蓄熱材組成物を得ることができること、等が挙げられる。
【0047】
本実施形態の蓄熱材組成物に含まれる高級アルカンには、直鎖構造、分岐構造のアルカンのいずれもが含まれる。このなかでも、融解温度又は凝固温度の調整を行う観点から炭素数9〜24の高級アルカンが望ましい。さらに、管理温度として水の融解温度近くから常温近くの温度領域で温度管理対象物品を保温・保冷するという本発明の目的及びその融解温度等の物理的性質から、融解温度が0℃以上である炭素数14以上のアルカンが好ましい。その具体例としては、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−エイコサン、n−ヘンイコサン、n−ドコサン、n−トリコサン又はn−テトラコサンなどが挙げられる。これらは単独または2種類以上を混合して使用することが可能であり、温度管理対象物品の管理温度と融解温度の関係から任意に選定される。
【0048】
本実施形態の蓄熱材組成物に含まれる高級アルコールは、主に1価アルコールが用いられる。また、この高級アルコールは、直鎖アルコール、分岐アルコール、一級アルコール、2級アルコール、3級アルコールのいずれもが含まれる。このなかでも、融解温度又は凝固温度の調整を行う観点から炭素数6〜20の高級アルコールが望ましい。さらに、管理温度として水の融解温度近くから常温近くの温度領域で温度管理対象物品を保温・保冷するという本発明の目的及びその融解温度等の物理的性質から、融解温度が0℃以上である炭素数10以上の1価アルコールが好ましく、その具体例としては、1−デカノール、2−デカノール、ウンデカノール、ラウリルアルコール、トリデカノール、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、ノナデカノール又はアラキルアルコール等が挙げられる。これらは単独または2種類以上を混合して使用することが可能であり、温度管理対象物品の管理温度と融解温度の関係から任意に選定される。
【0049】
本実施形態の蓄熱材組成物の構成における高級アルコール及び高級アルカンについて、上述のどのアルコール及びアルカンを用いるかの選択、相互の組み合わせ及びそれぞれの含有量の比(配合量)は、温度管理対象物品の管理温度により任意に選定される。選定の方法としては、示差走査熱量測定による高級アルカン由来の融解温度と高級アルコール由来の融解温度が一致または近接すること、その融解温度が温度管理対象物品の管理温度に近接すること等があげられる。なお、示差走査熱量測定による高級アルカン由来の凝固温度と高級アルコール由来の凝固温度が一致または近接し、凝固温度が温度管理対象物品の管理温度に近接することも重要であるが、凝固温度は融解温度に比べ蓄熱材組成物の置かれる環境(環境温度変化、含水量、容器状態、ごみ、埃等の不純物を含めた結晶核剤の有無、振動/衝撃の有無、等)による影響を受けやすいこと、蓄熱材、蓄熱材を含む輸送容器の使用において、溶融状態(液体)から凝固状態(固体)に相転移する場合でも、示差走査熱量測定の融解温度が経験上指標となりうることが確認されていること、等より、本発明では融解温度を指標として高級アルコールと高級アルカンの組合せおよび配合量を選定することが好ましい。
【0050】
高級アルコール及び高級アルカンの具体的な配合例として、例えば以下に示すものがあげられるが、必ずしもこの限りではない。
(1)炭素数18の高級アルカンであるn−オクタデカンと炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコールを、モル分率でn−オクタデカン5〜35%、ラウリルアルコール95〜65%となるよう配合することで、融解温度を18〜22℃の範囲に調節する。具体的には、モル分率でn−オクタデカン11〜35%、ラウリルアルコール89〜65%となるように配合することで、n−オクタデカン由来の融解ピーク温度とラウリルアルコール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を20〜22℃に設定することができる。望ましくは、n−オクタデカン15〜30%、ラウリルアルコール85〜70%となるように配合することで、n−オクタデカン由来の融解ピーク温度とラウリルアルコール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により得られた蓄熱材組成物により形成した蓄熱材は、管理温度20±5℃に対応可能であり、さらには20±2.5℃にも対応可能である。
【0051】
(2)炭素数16の高級アルカンであるn−ヘキサデカンと炭素数10の高級アルコールである1−デカノールを、モル分率でn−ヘキサデカン5〜15%、1−デカノール95〜85%となるよう配合することで、融解温度を3〜7℃の範囲に調節する。具体的には、モル分率でn−ヘキサデカン6〜15%、1−デカノール94〜85%となるように配合することで、n−ヘキサデカン由来の融解ピーク温度と1−デカノール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を4〜6℃に設定することができる。望ましくは、n−ヘキサデカン6〜10%、1−デカノール94〜90%となるように配合することで、n−ヘキサデカン由来の融解ピーク温度と1−デカノール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により、管理温度5±3℃に対応可能である。
【0052】
(3)炭素数16の高級アルカンであるn−ヘキサデカンと炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコールを、モル分率でn−ヘキサデカン35〜79%、ラウリルアルコール65〜21%となるよう配合することで、融解温度を14〜18℃の範囲に調節する。又は、モル分率でn−ヘキサデカン35〜70%、ラウリルアルコール65〜30%となるよう配合することで、融解温度を15〜18℃の範囲に調節する。具体的には、モル分率でn−ヘキサデカン40〜79%、ラウリルアルコール60〜21%となるように配合することで、n−ヘキサデカン由来の融解ピーク温度とラウリルアルコール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を15〜18℃に設定することができる。望ましくは、n−ヘキサデカン40〜60%、ラウリルアルコール60〜40%となるように配合することで、融解ピーク温度を16〜17℃に設定しつつn−ヘキサデカン由来の融解ピーク温度とラウリルアルコール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により、管理温度15±5℃に対応可能である。
【0053】
(4)炭素数15の高級アルカンであるn−ペンタデカンと炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコールを、モル分率でn−ペンタデカン70〜90%、ラウリルアルコール30〜10%となるよう配合することで、n−ペンタデカン由来の融解ピーク温度とラウリルアルコール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を8〜12℃に設定することができる。望ましくは、n−ペンタデカン82〜90%、ラウリルアルコール18〜10%となるように配合することで、n−ペンタデカン由来の融解ピークとラウリルアルコール由来の融解ピーク温度を略一致させ、融解ピーク温度を10〜11℃に設定することができる。この配合により、管理温度10±5℃に対応可能である。
【0054】
(5)炭素数14の高級アルカンであるn−テトラデカンと炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコールを、モル分率でn−テトラデカン70〜90%、ラウリルアルコール30〜10%となるよう配合することで、融解温度を6〜8℃の範囲に調節する。具体的には、モル分率でn−テトラデカン83〜90%、ラウリルアルコール17〜10%となるように配合することで、n−テトラデカン由来の融解ピーク温度とラウリルアルコール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を6〜7℃に設定することができる。望ましくは、n−テトラデカン82〜90%、ラウリルアルコール18〜10%となるように配合することで、n−テトラデカン由来の融解ピーク温度とラウリルアルコール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により、管理温度5±3℃に対応可能である。
【0055】
(6)炭素数14の高級アルカンであるn−テトラデカンと炭素数10の高級アルコールである1−デカノールを、モル分率でn−テトラデカン15〜55%、1−デカノール85〜45%となるように配合することで、融解温度を0〜4℃の範囲に調節する。例として、モル分率でn−テトラデカン20〜50%、1−デカノール80〜50%となるように配合することで、n−テトラデカン由来の融解ピークと1−デカノール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を0〜3℃に設定することができる。望ましくは、n−テトラデカン20〜40%、1−デカノール80〜60%となるように配合することで、n−テトラデカン由来の融解ピークと1−デカノール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により、管理温度3±3℃に対応可能である。
【0056】
(7)炭素数18の高級アルカンであるn−オクタデカンと炭素数14の高級アルコールであるミリスチルアルコールを、モル分率でn−オクタデカン55〜90%、ミリスチルアルコール45〜10%となるように配合することで、融解温度を25〜29℃の範囲に調節する。具体的には、モル分率でn−オクタデカン60〜90%、ミリスチルアルコール40〜10%となるように配合することで、n−オクタデカン由来の融解ピーク温度とミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を26〜28℃に設定することができる。望ましくは、n−オクタデカン65〜85%、ミリスチルアルコール35〜15%となるように配合することで、n−オクタデカン由来の融解ピーク温度とミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により、管理温度27±5℃に対応可能である。
【0057】
(8)炭素数20の高級アルカンであるn−エイコサンと炭素数14の高級アルコールであるミリスチルアルコールを、モル分率でn−エイコサン20〜60%、ミリスチルアルコール80〜40%となるように配合することで、融解温度を30〜34℃の範囲に調節する。具体的には、モル分率でn−エイコサン30〜60%、ミリスチルアルコール70〜40%となるように配合することで、n−エイコサン由来の融解ピーク温度とミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を30〜33℃に設定することができる。望ましくは、n−エイコサン30〜50%、ミリスチルアルコール70〜50%となるように配合することで、n−エイコサン由来の融解ピーク温度とミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により、管理温度30±5℃に対応可能である。
【0058】
(9)炭素数22の高級アルカンであるn−ドコサンと炭素数14の高級アルコールであるミリスチルアルコールを、モル分率でn−ドコサン5〜47%、ミリスチルアルコール95〜53%となるように配合することで、融解温度を34〜41℃の範囲に調節する。具体的には、モル分率でn−ドコサン5〜28%、ミリスチルアルコール95〜72%となるように配合することで、n−ドコサン由来の融解ピーク温度とミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を34〜37℃に設定することができる。望ましくは、n−ドコサン9〜27%、ミリスチルアルコール91〜73%となるように配合することで、n−ドコサン由来の融解ピーク温度とミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により、管理温度35±5℃に対応可能である。
【0059】
(10)炭素数20の高級アルカンであるn−エイコサンと炭素数16の高級アルコールであるセチルアルコールを、モル分率でn−エイコサン60〜90%、セチルアルコール40〜10%となるように配合することで、融解温度を34〜40℃の範囲に調節する。具体的には、モル分率でn−エイコサン70〜90%、セチルアルコール30〜10%となるように配合することで、n−エイコサン由来の融解ピーク温度とセチルアルコール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を34〜38℃に設定することができる。望ましくは、n−エイコサン80〜90%、セチルアルコール20〜10%となるように配合することで、n−エイコサン由来の融解ピーク温度とセチルアルコール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により、管理温度34±5℃に対応可能である。
【0060】
(11)炭素数22の高級アルカンであるn−ドコサンと炭素数16の高級アルコールであるセチルアルコールを、モル分率でn−ドコサン40〜70%、セチルアルコール60〜30%となるように配合することで、融解温度を39〜44℃の範囲に調節する。具体的には、モル分率でn−ドコサン40〜60%、セチルアルコール60〜40%となるように配合することで、n−ドコサン由来の融解ピーク温度とセチルアルコール由来の融解ピーク温度を近接又は一致させ、かつ融解ピーク温度を41〜44℃に設定することができる。望ましくは、n−ドコサン50〜70%、セチルアルコール50〜30%となるように配合することで、n−ドコサン由来の融解ピーク温度とセチルアルコール由来の融解ピーク温度を略一致させることができる。この配合により、管理温度41±5℃に対応可能である。
【0061】
また、これらの蓄熱材組成物は主にプラスチック製の容器、袋等に充填されて蓄熱材を形成する。この蓄熱材は、輸送容器内に配置されて使用されるが、輸送又は運搬時に蓄熱材組成物が充填された容器等が破損した場合には、容器等から蓄熱材組成物が漏れ出し、高価な温度管理対象物品を汚染して使用を不可能にすると共に、輸送容器からの流出による環境への悪影響が懸念される。そこで、輸送時に蓄熱材組成物が充填された容器等が破損した場合でも蓄熱材組成物の流出を最小限に防ぐため、蓄熱材組成物は固体状(ゲル状を含む)を呈することが好ましい。特に、本発明の蓄熱材組成物はアルカンを含有し水分の含有量が少ないため、疎水性又は両親媒性のゲル化剤を選択するのが好ましい。ゲル化剤としては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、ゲル状シリカ、2−エチルヘキサン酸アルミニウムとラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸又はリノレン酸などの高級脂肪酸の混合物、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等が挙げられ、この中でも両親媒性でゲルの安定性に優れており、環境適合性の高いヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。ゲル化剤として一般的に知られる化合物は、そのほとんどが水のゲル化には有効であるが水を含まない蓄熱材組成物のゲル化には不適であるという課題があるところ、ヒドロキシプロピルセルロースをゲル化剤に用いることで、水分を含まない蓄熱材組成物について、高い融解潜熱量を維持すると共に融解/凝固挙動にも影響することなく有効にゲル化することができた。生成されたゲルは蓄熱材が設置されると想定する環境温度下でのヒートサイクル試験後も固相−液相の分離がなく、漏洩時の環境負荷、回収時の作業負荷を低減することが可能となる。
【0062】
ゲル化剤は使用する種類によって最適配合量が異なるが、ヒドロキシプロピルセルロースの場合、蓄熱材組成物100重量%に対し、2.0〜10.0重量%を添加することが望ましく、3.0〜7.0重量部が更に望ましい。蓄熱材組成物にヒドロキシプロピルセルロースを2.0〜10.0重量%添加することにより、流動性を抑えた透明なゲルが得られる。
【0063】
本実施形態の蓄熱材組成物には、上記の成分のほか、結晶核剤、香料、着色剤、抗菌剤、高分子ポリマー、その他有機/無機化合物を必要に応じて配合することが出来る。
【0064】
本実施形態の蓄熱材組成物は、容器又は袋に充填されることで蓄熱材を形成することができる。容器又は袋は、主に合成樹脂で形成されたものが適切である。蓄熱材組成物を充填する容器又は袋の素材としては特に限定されず、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロンまたはポリエステルなどが挙げられ、これらの素材のうち1種類を単独で使用してもよく、耐熱性やバリアー性を高めるため、これらの素材のうち2種類以上を組み合わせて多層構造としたものを使用することもできる。また、この容器又は袋の形状としては、特に限定されないが、熱交換率を高める観点から、表面積を大きく確保できる形状が好ましい。これらの容器又は袋に対して、蓄熱材組成物を予め凝固又は融解させた状態で充填し、蓄熱材として使用することができる。
【0065】
図41〜42に示すように、本実施形態の蓄熱材10は、本実施形態の輸送容器1内に収納又は配置して使用することができる。輸送容器1は、例えば箱体41とその箱体の開口部410に嵌合する蓋42とを用いることで、断熱性を有するよう構成される。輸送容器1の素材としては、断熱性を有するものであれば特に限定されず、発泡プラスチックや真空断熱材が好適に用いられる。発泡プラスチックとしては、具体的には、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンを発泡させたものが用いられる。また、真空断熱材としては、例えば、芯材にシリカ粉やグラスウール、ガラス繊維等を用いたものが用いられる。さらに輸送容器は、発泡プラスチックと真空断熱材との組合せにより構成されていてもよい。その場合には、発泡プラスチックからなる箱体および蓋の外面または内面を真空断熱材で覆う、箱体及び蓋を構成する壁の内部に真空断熱材を埋設させる、等の手段により、断熱性能の高い輸送容器が得られる。
【0066】
図41〜42に示すように、本実施形態の輸送容器1には、内部に収納又は配置した蓄熱材10を固定すると共に温度管理対象物品を収容する空間5を確保するために、スペーサー6を備えることもできる。スペーサー6の素材としては、特に限定されないが、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂又はABS樹脂並びにこれらの樹脂を発泡させた発泡プラスチックが用いられる。本発明の1つの実施形態としては、輸送容器1の内部に一対のスペーサー6を対向させて配置させている。スペーサー6を備えることで蓄熱材10の配置位置が定まるため、パッキングを容易に行うことが出来る。
【0067】
本発明の輸送容器は、外気温度に左右されず、温度管理の必要な物品を、長時間にわたって所定の温度に維持して保管、輸送できる輸送容器に好適に使用される。例えば、温度管理の必要な医薬品や医療機器、検体、臓器、化学物質、食品等の各種物品に好適に使用できる。
【実施例1】
【0068】
[1.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:ラウリルアルコール(C12)及びオクタデカン(C18)]
ラウリルアルコール(花王株式会社製、製品名:カルコール2098)とn−オクタデカン(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS8)を、それぞれ40℃の湯浴中で融解させた。融解したラウリルアルコールとオクタデカンを、表1の各試料Noに示すモル分率で配合し、40℃の湯浴中で撹拌して試料1−1〜1−10を得た。なお、表中のラウリルアルコール(a)の(a)とは、同一の製造ロットを意味しており、本実施例1においては、全て同じ製造ロット(a)のラウリルアルコールを使用した。同様に、オクタデカンについても本実施例1においては、全て同じ製造ロット(b)のオクタデカンを使用した。
【0069】
得られた試料1−1〜1−10について、示差走査熱量計(セイコーインスツルメント社製:SII EXSTAR6000 DSC)を用い、2℃/minの昇温速度でDSC測定を行った。得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料のラウリルアルコール由来の融解ピーク温度及びオクタデカン由来の融解ピーク温度を求めた。なお、本実施例で使用したラウリルアルコールの融点は23.5〜26.5℃(
図15〜
図17参照)、オクタデカンの融点は28〜30℃とされている(
図18及び
図19参照)。同様に得られたチャートのピーク面積より各試料の融解潜熱量を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
試料1−1〜1−10のDSCスペクトルをそれぞれ
図1〜10に示す。図の縦軸はDSCの測定による熱流を示し、横軸は温度を示している。
図1〜6及び表1に示すように、試料1−1〜1−6では、配合成分のラウリルアルコールとオクタデカンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が21℃近傍で安定していることがわかった。これにより、ラウリルアルコールとオクタデカンとからなる組成物について、ラウリルアルコールのモル分率を65〜89モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のオクタデカンのモル分率を35〜11モル%となるように配合する)ことで、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度とオクタデカン由来の融解ピーク温度とを近接又は略一致させ、かつ融解温度を20〜22℃に設定することができることが示された。
図1及び
図6に示す試料1−1及び試料1−6は、融解ピークの高温側にややショルダーが出ているものの、特に、
図2〜5に示す試料1−2〜1−5では、形成された融解ピークは1本であり、融解温度がより安定していることがわかった。これにより、ラウリルアルコールとオクタデカンとからなる組成物について、ラウリルアルコールのモル分率を70〜85モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のオクタデカンのモル分率を30〜15モル%となるように配合する)ことで、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度とオクタデカン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を略定温に設定することができることが示された。さらに、
図3及び
図4に示す試料1−3及び1−4は、ラウリルアルコールのモル分率が75〜80モル%であるところ、融解ピークだけでなく凝固ピークも1本となっており、相転移や温度変化に対する性質がきわめて安定していることが示された。これに対して、
図7〜10に示す試料1−7〜1−10では融解ピーク及び凝固ピークのいずれについても、ラウリルアルコール及びオクタデカンに由来するそれぞれのピークが存在して複数のピークがみられ、相転移温度の幅が広く、温度変化に対する性質が不安定であることが示された。これらの結果より、所定の配合でラウリルアルコールとオクタデカンとを混合することにより、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度およびオクタデカン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が20〜22℃と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例2】
【0072】
[2.組成物原料の製造ロットによる融解/凝固挙動に対する影響の検討:ラウリルアルコール(C12)及びオクタデカン(C18)]
実施例1で用いたラウリルアルコール(a)の製造ロットと異なる製造ロットのラウリルアルコール(c)及び(d)(いずれも、花王株式会社製、製品名:カルコール2098)と、実施例1で用いたn−オクタデカン(b)及びこれと異なる製造ロットのn−オクタデカン(e)(いずれも、JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS8)を準備した。表2に示すようにこれら原料を組み合わせて所定の配合で混合させた以外は、実施例1と同様にして試料1−11〜1−14を得た。得られた試料について、実施例1と同様にDSC測定を行った。また、組成物原料の製造ロット間の融解/凝固挙動の差を調べるため、ラウリルアルコール(a)、(c)及び(d)、並びに、オクタデカン(b)及び(e)といった原料のみのDSC測定を同条件で行った。
【0073】
【表2】
【0074】
試料1−11〜1−14のDSCスペクトルをそれぞれ
図11〜14に示す。また、組成物原料のラウリルアルコール(a)、(c)及び(d)、並びに、オクタデカン(b)及び(e)のDSCスペクトルをそれぞれ
図15〜19に示す。図の縦軸はDSCの測定による熱流を示し、横軸は温度を示している。
図15〜17より、製造ロットの異なるラウリルアルコール(a)、(c)及び(d)は、DSC曲線の形状が大きく異なり、融解/凝固の挙動が異なることが確認された。他方、
図18及び
図19より、製造ロットの異なるオクタデカン(b)及び(e)においても、DSC曲線の形状が大きく異なり、融解/凝固の挙動が異なることが確認された。さらに、これらの組成物原料単体のDSCスペクトルによれば、融解/凝固のピークにおいて、ダブルピークやサイドピーク、ショルダーピークといった不安定な挙動をも高い割合で有していることが確認された。このように、組成物原料は製造ロット間における融解/凝固の挙動が大きく異なるだけでなく、融解/凝固のピークも複数本になる等、温度変化に対する性質が不安定であることがわかった。
【0075】
一方、製造ロットが異なるラウリルアルコールとオクタデカンとを組み合せて、同じ配合量で混合して得られた試料1−11〜1−14(
図11〜14)及び試料1−2(
図2)のDSCスペクトルを比較したところ、DSC曲線の形状は組成物原料の製造ロットに影響されることなく略同じであり、融解/凝固の挙動は略一致することが確認された。さらに、所定の割合で組成物原料を混合することにより、組成物原料単体にみられたダブルピークやサイドピーク、ショルダーピークといった不安定な挙動までが解消し、融解/凝固ピークが略1本となった。これらの結果より、所定の配合でラウリルアルコールとオクタデカンとを混合することにより、原料組成物の製造ロットが異なっても、一定の融解/凝固の挙動が得られ、相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例3】
【0076】
[3.蓄熱組成物のゲル化による融解/凝固挙動に対する影響の検討:ラウリルアルコール(C12)及びオクタデカン(C18)]
40℃の湯浴中で融解させたラウリルアルコール(c)7.74gと40℃の湯浴中で融解させたオクタデカン(b)1.86gとを40℃の湯浴中で撹拌混合して、ラウリルアルコールのモル分率が85.0%、オクタデカンのモル分率が15.0%の混合液を得た。得られた混合液中に、ゲル化剤であるヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、製品名:NISSOH HPC−H)を0.4g添加し、40℃の湯浴中で10分程度撹拌してよく分散させた。その後、室温で12時間放置して高粘度で透明な試料1−15を得た。得られた試料1−15について、実施例1及び2と同様にDSC測定を行った。
【0077】
試料1−15のDSCスペクトルを
図20に示す。図の縦軸はDSCの測定による熱流を示し、横軸は温度を示している。
図20のDSCスペクトルと、
図11のラウリルアルコール(c)及びオクタデカン(b)の配合割合は略同じであるがゲル化剤を含まない試料1−11のDSCスペクトルを比較したところ、DSC曲線の形状はヒドロキシプロピルセルロース添加による高粘度化(ゲル化)の有無によらず略同じであり、融解/凝固の挙動は略一致することが確認された。この結果より、所定の配合でラウリルアルコールとオクタデカンとを混合して得られた蓄熱材組成物にゲル化剤のような成分を添加し、取り扱いやすさを向上させた場合においても、蓄熱材組成物の融解/凝固の挙動に影響を与えることなく、相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を保持することが示された。
【0078】
[4.蓄熱組成物の作成及びDSC測定:ラウリルアルコール(C12)及びラウリル酸]
40℃の湯浴中で融解させたラウリルアルコール(a)7.57gと60℃の湯浴中で融解させたラウリル酸(花王株式会社製、製品名:ルナックL−98)2.03gを40℃の湯浴中で撹拌混合して、ラウリルアルコールのモル分率が80.0%、ラウリル酸のモル分率が20.0%の混合液を得た。実施例3と同様に、得られた混合液中にゲル化剤であるヒドロキシプロピルセルロースを0.4g添加し、40℃の湯浴中で10分程度撹拌してよく分散させた。その後、室温で12時間放置し、高粘度で透明な試料1−16を得た。また、使用したラウリルアルコールをラウリルアルコール(c)とした以外は、上述と同様にして試料1−17を得た。得られた試料1−16〜1−17について、実施例1及び2と同様にDSC測定を行った。また、組成物原料のDSCスペクトルとして、使用したラウリル酸単体のDSC測定を同条件で行った。
【0079】
試料1−16〜1−17のDSCスペクトルをそれぞれ
図21〜22に示す。また、組成物原料のラウリル酸のDSCスペクトルを
図23に示す。図の縦軸はDSCの測定による熱流を示し、横軸は温度を示している。
図21〜
図23のDSCスペクトルより、ラウリルアルコールとラウリル酸を混合することにより得られた混合物の融解温度を20℃付近には調整できたものの、製造ロットの異なるラウリルアルコール(a)及び(c)による影響が顕著にみられ、試料1−16と試料1−17のDSC曲線の形状は大きく異なり、融解/凝固挙動が試料毎に異なることが確認された。また、ラウリルアルコールとオクタデカンでの組み合わせでは組成物原料に由来するダブルピークやサイドピーク、ショルダーピークといった不安定な挙動の解消が確認されたが、ラウリルアルコールとラウリル酸の組み合わせでは、これらの不安定な挙動は解消されないことが確認された。
【実施例4】
【0080】
[5.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:1−デカノール(C10)及びヘキサデカン(C16)]
1−デカノール(花王株式会社製、製品名:カルコール1098)とn−ヘキサデカン(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS6)を、それぞれ23℃の雰囲気下にて融解させた。融解した1−デカノールとヘキサデカンを、表3の各試料Noに示すモル分率で配合し、23度の雰囲気下で撹拌して試料2−1〜2−9を得た。なお、表中の1−デカノール(f)の(f)とは、同一の製造ロットを意味しており、本実施例4においては、全て同じ製造ロット(f)の1−デカノールを使用した。同様に、ヘキサデカンについても本実施例4においては、全て同じ製造ロット(g)のヘキサデカンを使用した。
【0081】
得られた試料2−1〜2−9について、実施例1と同様にDSC測定を行った。得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料の1−デカノール由来の融解ピーク温度及びヘキサデカン由来の融解ピーク温度を求めた。なお、本実施例で使用した1−デカノールの融点は約5〜7℃であり(
図36〜
図37参照)、ヘキサデカンの融点は約18℃とされている(
図38〜
図39参照)。同様に得られたチャートのピーク面積より各試料の融解潜熱量を求めた。得られた結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
試料2−1〜2−9のDSCスペクトルをそれぞれ
図24〜32に示す。図の縦軸はDSCの測定による熱流を示し、横軸は温度を示している。
図24〜26及び表3に示すように、試料2−1〜2−3では、配合成分の1−デカノールとヘキサデカンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が5℃近傍で安定していることがわかった。これにより、1−デカノールとヘキサデカンとからなる組成物について、1−デカノールのモル分率を85〜94モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のヘキサデカンのモル分率を15〜6モル%となるように配合する)ことで、1−デカノール由来の融解ピーク温度とヘキサデカン由来の融解ピーク温度とを近接又は略一致させ、かつ融解温度を4〜6℃の狭い範囲に設定することができることが示された。
図26に示す試料2−3は、融解ピークの低温側にややショルダーが出ているものの、特に、
図24及び
図25に示す試料2−1及び2−2では、形成された融解ピークは1本であり、融解温度がより安定していることがわかった。これにより、1−デカノールとヘキサデカンとからなる組成物について、1−デカノールのモル分率を90〜94モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のヘキサデカンのモル分率を10〜6モル%となるように配合する)ことで、1−デカノール由来の融解ピーク温度とヘキサデカン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を略定温に設定することができることが示された。さらに、これらの
図24及び
図25に示す試料2−1及び2−2は、融解ピークだけでなく凝固ピークも1本となっており、相転移や温度変化に対する性質がきわめて安定していることが示された。これに対して、
図27〜32に示す試料2−4〜2−9では融解ピーク及び凝固ピークのいずれについても、1−デカノール及びヘキサデカンに由来するそれぞれのピークが存在して複数のピークがみられ、相転移温度の幅が広く、温度変化に対する性質が不安定であることが示された。これらの結果より、所定の配合で1−デカノールとヘキサデカンとを混合することにより、1−デカノール由来の融解ピーク温度およびヘキサデカン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が4〜6℃と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例5】
【0084】
[6.組成物原料の製造ロットによる融解/凝固挙動に対する影響の検討:1−デカノール(C10)及びヘキサデカン(C16)]
実施例4で用いた1−デカノール(f)及びこれと異なる製造ロットの1−デカノール(h)(花王株式会社製、製品名:カルコール1098)と、実施例4で用いたn−ヘキサデカン(g)及びこれと異なる製造ロットのn−ヘキサデカン(i)(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS6)を準備した。以下表4に示すようにこれら原料を組み合わせて所定の配合で混合させた以外は、実施例4と同様にして試料2−10〜2−12を得た。得られた試料について、実施例4と同様にDSC測定を行った。また、組成物原料の製造ロット間の融解/凝固挙動の差を調べるため、1−デカノール(f)及び(h)、並びに、ヘキサデカン(g)及び(i)といった原料のみのDSC測定を同条件で行った。
【0085】
【表4】
【0086】
試料2−10〜2−12のDSCスペクトルをそれぞれ
図33〜35に示す。また、組成物原料の1−デカノール(f)及び(h)、並びに、ヘキサデカン(g)及び(i)のDSCスペクトルをそれぞれ
図36〜39に示す。図の縦軸はDSCの測定による熱流を示し、横軸は温度を示している。
図36〜39より、1−デカノール及びヘキサデカンは、それぞれ製造ロットによりDSC曲線の形状が異なり、融解/凝固の挙動が異なることが確認された。さらに、これらの組成物原料単体のDSCスペクトルによれば、融解/凝固のピークにおいて、ダブルピークやサイドピーク、ショルダーピークといった不安定な挙動をも高い割合で有していることが確認された。このように、組成物原料は製造ロット間における融解/凝固の挙動が大きく異なるだけでなく、融解/凝固のピークも複数本になる等、温度変化に対する性質が不安定であることがわかった。
【0087】
他方、製造ロットが異なる1−デカノールとヘキサデカンとを組み合せて、同じ配合量で混合して得られた試料2−10〜2−12(
図33〜35)及び試料2−2(
図25)のDSCスペクトルを比較したところ、DSC曲線の形状は組成物原料の製造ロットに影響されることなく略同じであり、融解/凝固の挙動は略一致することが確認された。さらに、所定の割合で組成物原料を混合することにより、組成物原料単体にみられたダブルピークやサイドピーク、ショルダーピークといった不安定な挙動までが解消し、融解/凝固ピークが略1本となった。これらの結果より、所定の配合で1−デカノールとヘキサデカンとを混合することにより、原料組成物の製造ロットが異なっても、一定の融解/凝固の挙動が得られ、相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例6】
【0088】
[7.蓄熱組成物のゲル化による融解/凝固挙動に対する影響の検討:1−デカノール(C10)及びヘキサデカン(C16)]
23℃の雰囲気下で1−デカノール(f)8.64gとヘキサデカン(g)1.36gとを撹拌混合して、1−デカノールのモル分率が90.0%、ヘキサデカンのモル分率が10.0%の混合液を得た。得られた混合液中に、ゲル化剤であるヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、製品名:NISSOH HPC−H)を0.4g添加し、23℃の雰囲気下で10分程度撹拌してよく分散させた。その後、室温で12時間放置して高粘度で透明な試料2−13を得た。得られた試料2−13について、上記実施例と同様にDSC測定を行った。
【0089】
試料2−13のDSCスペクトルを
図40に示す。図の縦軸はDSCの測定による熱流を示し、横軸は温度を示している。
図40のDSCスペクトルと、
図25の1−デカノール(f)及びヘキサデカン(g)の配合割合は略同じであるがゲル化剤を含まない試料2−2のDSCスペクトルを比較したところ、DSC曲線の形状はヒドロキシプロピルセルロース添加による高粘度化(ゲル化)の有無によらず略同じであり、融解/凝固の挙動は略一致することが確認された。この結果より、所定の配合で1−デカノールとヘキサデカンとを混合して得られた蓄熱材組成物にゲル化剤のような成分を添加し、取り扱いやすさを向上させた場合においても、蓄熱材組成物の融解/凝固の挙動に影響を与えることなく、相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を保持することが示された。
【実施例7】
【0090】
[8.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:ラウリルアルコール(C12)及びヘキサデカン(C16)]
ラウリルアルコール(花王株式会社製、製品名:カルコール2098)とヘキサデカン(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS6)を、それぞれ40℃の湯浴中で融解させた。融解したラウリルアルコールとヘキサデカンを、表5の各試料Noに示すモル分率で配合し、40℃の湯浴中で撹拌して試料3−1〜3−7を得た。なお、本実施例においては、全て同じ製造ロットのラウリルアルコールを使用した。同様に、ヘキサデカンについても本実施例においては、全て同じ製造ロットのヘキサデカンを使用した。得られた試料について、上述の実施例と同様の機器及び測定条件でDSC測定を行い、得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料のラウリルアルコール由来の融解ピーク温度及びヘキサデカン由来の融解ピーク温度及び融解潜熱量を求めた。得られた結果を表5に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
表5に示すように、試料3−1〜3−4では、配合成分のラウリルアルコールとヘキサデカンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が16℃近傍で安定していることがわかった。これにより、ラウリルアルコールとヘキサデカンとからなる組成物について、ラウリルアルコールのモル分率を21〜60モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のヘキサデカンのモル分率を79〜40モル%となるように配合する)ことで、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度とヘキサデカン由来の融解ピーク温度とを近接又は略一致させ、かつ融解温度を15〜18℃に設定することができることが示された。試料3−1は、融解ピークの低温側にややショルダーが出ているものの、特に、試料3−2〜3−4では、形成された融解ピークは1本であり、融解温度がより安定していることがわかった。これにより、ラウリルアルコールとヘキサデカンとからなる組成物について、ラウリルアルコールのモル分率を40〜60モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のヘキサデカンのモル分率を60〜40モル%となるように配合する)ことで、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度とヘキサデカン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を略定温(16℃〜17℃)に設定することができることが示された。これらの結果より、所定の配合でラウリルアルコールとヘキサデカンとを混合することにより、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度およびヘキサデカン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が16℃近傍と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例8】
【0093】
[9.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:ラウリルアルコール(C12)及びペンタデカン(C15)]
40℃の湯浴中で融解させたラウリルアルコール(花王株式会社製、製品名:カルコール2098)と23℃の雰囲気下で溶解させたペンタデカン(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS5)を準備した。溶解したラウリルアルコールとペンタデカンを、表6の各試料Noに示すモル分率で配合し、40℃の湯浴中で撹拌して試料4−1〜4−9を得た。なお、本実施例においては、全て同じ製造ロットのラウリルアルコールを使用した。同様に、ペンタデカンについても本実施例においては、全て同じ製造ロットのヘキサデカンを使用した。得られた試料について、上述の実施例と同様の機器及び測定条件でDSC測定を行い、得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料のラウリルアルコール由来の融解ピーク温度及びペンタデカン由来の融解ピーク温度及び融解潜熱量を求めた。得られた結果を表6に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
表6に示すように、試料4−1〜4−3では、配合成分のラウリルアルコールとペンタデカンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が10℃近傍で安定していることがわかった。これにより、ラウリルアルコールとペンタデカンとからなる組成物について、ラウリルアルコールのモル分率を10〜30モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のペンタデカンのモル分率を90〜70モル%となるように配合する)ことで、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度とペンタデカン由来の融解ピーク温度とを近接又は略一致させ、かつ融解温度を9〜11℃に設定することができることが示された。試料4−3は、融解ピークの高温側にややショルダーが出ているものの、特に、試料4−1及び4−2では、形成された融解ピークは1本であり、融解温度がより安定していることがわかった。これにより、ラウリルアルコールとペンタデカンとからなる組成物について、ラウリルアルコールのモル分率を10〜18モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のペンタデカンのモル分率を90〜82モル%となるように配合する)ことで、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度とペンタデカン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を略定温(10℃〜11℃)に設定することができることが示された。これらの結果より、所定の配合でラウリルアルコールとペンタデカンとを混合することにより、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度およびペンタデカン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が10℃近傍と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例9】
【0096】
[10.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:ラウリルアルコール(C12)及びテトラデカン(C14)]
40℃の湯浴中で融解させたラウリルアルコール(花王株式会社製、製品名:カルコール2098)と23℃の雰囲気下で溶解させたテトラデカン(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS4)を準備した。溶解したラウリルアルコールとテトラデカンを、表7の各試料Noに示すモル分率で配合し、40℃の湯浴中で撹拌して試料5−1〜5−9を得た。なお、本実施例においては、全て同じ製造ロットのラウリルアルコールを使用した。同様に、テトラデカンについても本実施例においては、全て同じ製造ロットのテトラデカンを使用した。得られた試料について、上述の実施例と同様の機器及び測定条件でDSC測定を行い、得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料のラウリルアルコール由来の融解ピーク温度及びテトラデカン由来の融解ピーク温度及び融解潜熱量を求めた。得られた結果を表7に示す。
【0097】
【表7】
【0098】
表7に示すように、試料5−1〜5−3では、配合成分のラウリルアルコールとテトラデカンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が7℃近傍で安定していることがわかった。これにより、ラウリルアルコールとテトラデカンとからなる組成物について、ラウリルアルコールのモル分率を10〜30モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のテトラデカンのモル分率を90〜70モル%となるように配合する)ことで、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度とテトラデカン由来の融解ピーク温度とを近接又は略一致させ、かつ融解温度を6〜8℃に設定することができることが示された。試料5−3は、融解ピークの高温側にややショルダーが出ているものの、特に、試料5−1及び5−2では、形成された融解ピークは1本であり、融解温度がより安定していることがわかった。これにより、ラウリルアルコールとテトラデカンとからなる組成物について、ラウリルアルコールのモル分率を10〜17.5モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のテトラデカンのモル分率を90〜82.5モル%となるように配合する)ことで、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度とテトラデカン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を略定温(6℃〜7℃)に設定することができることが示された。これらの結果より、所定の配合でラウリルアルコールとテトラデカンとを混合することにより、ラウリルアルコール由来の融解ピーク温度およびテトラデカン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が7℃近傍と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例10】
【0099】
[11.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:1−デカノール(C10)及びテトラデカン(C14)]
1−デカノール(花王株式会社製、製品名:カルコール1098)とテトラデカン(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS4)とを23℃の雰囲気下で溶解させた。溶解した1−デカノールとテトラデカンを、表8の各試料Noに示すモル分率で配合し、23℃の雰囲気下で撹拌して試料6−1〜6−7を得た。なお、本実施例においては、全て同じ製造ロットの1−デカノールを使用した。同様に、テトラデカンについても本実施例においては、全て同じ製造ロットのテトラデカンを使用した。得られた試料について、上述の実施例と同様の機器及び測定条件でDSC測定を行い、得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料の1−デカノール由来の融解ピーク温度及びテトラデカン由来の融解ピーク温度及び融解潜熱量を求めた。得られた結果を表8に示す。
【0100】
【表8】
【0101】
表8に示すように、試料6−1〜6−4では、配合成分の1−デカノールとテトラデカンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が0〜3℃近傍で安定していることがわかった。これにより、1−デカノールとテトラデカンとからなる組成物について、1−デカノールのモル分率を50〜80モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のテトラデカンのモル分率を50〜20モル%となるように配合する)ことで、1−デカノール由来の融解ピーク温度とテトラデカン由来の融解ピーク温度とを近接又は略一致させ、かつ融解温度を0〜3℃に設定することができることが示された。試料6−4は、融解ピークの高温側にややショルダーが出ているものの、特に、試料6−1〜6−3では、形成された融解ピークは1本であり、融解温度がより安定していることがわかった。これにより、1−デカノールとテトラデカンとからなる組成物について、1−デカノールのモル分率を60〜80モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のテトラデカンのモル分率を40〜20モル%となるように配合する)ことで、1−デカノール由来の融解ピーク温度とテトラデカン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を略定温(0〜2℃近傍)に設定することができることが示された。これらの結果より、所定の配合で1−デカノールとテトラデカンとを混合することにより、1−デカノール由来の融解ピーク温度およびテトラデカン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が1℃近傍と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例11】
【0102】
[12.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:ミリスチルアルコール(C14)及びオクタデカン(C18)]
ミリスチルアルコール(花王株式会社製、製品名:カルコール4098)とn−オクタデカン(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS8)を、それぞれ50℃の湯浴中で融解させた。融解したミリスチルアルコールとオクタデカンを、表9の各試料Noに示すモル分率で配合し、50℃の湯浴中で撹拌して試料7−1〜7−9を得た。なお、本実施例においては、全て同じ製造ロットのミリスチルアルコールを使用した。同様に、n−オクタデカンについても本実施例においては、全て同じ製造ロットのn−オクタデカンを使用した。得られた試料について、上述の実施例と同様の機器及び測定条件でDSC測定を行い、得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料のミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度及びオクタデカン由来の融解ピーク温度及び融解潜熱量を求めた。得られた結果を表9に示す。
【0103】
【表9】
【0104】
表9に示すように、試料7−1〜7−4では、配合成分のミリスチルアルコールとオクタデカンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が27℃近傍で安定していることがわかった。これにより、ミリスチルアルコールとオクタデカンとからなる組成物について、ミリスチルアルコールのモル分率を10〜40モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のオクタデカンのモル分率を90〜60モル%となるように配合する)ことで、ミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度とオクタデカン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を26〜28℃に設定することができることが示された。これらの結果より、所定の配合でミリスチルアルコールとオクタデカンとを混合することにより、ミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度およびオクタデカン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が27℃近傍と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例12】
【0105】
[13.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:ミリスチルアルコール(C14)及びエイコサン(C20)]
ミリスチルアルコール(花王株式会社製、製品名:カルコール4098)とn−エイコサン(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS20)を、それぞれ50℃の湯浴中で融解させた。融解したミリスチルアルコールとエイコサンを、表10の各試料Noに示すモル分率で配合し、50℃の湯浴中で撹拌して試料8−1〜8−9を得た。なお、本実施例においては、全て同じ製造ロットのミリスチルアルコールを使用した。同様に、n−エイコサンについても本実施例においては、全て同じ製造ロットのn−エイコサンを使用した。得られた試料について、上述の実施例と同様の機器及び測定条件でDSC測定を行い、得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料のミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度及びエイコサン由来の融解ピーク温度及び融解潜熱量を求めた。得られた結果を表10に示す。
【0106】
【表10】
【0107】
表10に示すように、試料8−1〜8−4では、配合成分のミリスチルアルコールとエイコサンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が31.5℃近傍で安定していることがわかった。これにより、ミリスチルアルコールとエイコサンとからなる組成物について、ミリスチルアルコールのモル分率を40〜70モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のエイコサンのモル分率を60〜30モル%となるように配合する)ことで、ミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度とエイコサン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を30〜33℃に設定することができることが示された。これらの結果より、所定の配合でミリスチルアルコールとエイコサンとを混合することにより、ミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度およびエイコサン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が31.5℃近傍と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例13】
【0108】
[14.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:ミリスチルアルコール(C14)及びドコサン(C22)]
ミリスチルアルコール(花王株式会社製、製品名:カルコール4098)とn−ドコサン(和光純薬社製、ドコサン)を、それぞれ60℃の湯浴中で融解させた。融解したミリスチルアルコールとドコサンを、表11の各試料Noに示すモル分率で配合し、60℃の湯浴中で撹拌して試料9−1〜9−9を得た。なお、本実施例においては、全て同じ製造ロットのミリスチルアルコールを使用した。同様に、n−ドコサンについても本実施例においては、全て同じ製造ロットのn−ドコサンを使用した。得られた試料について、上述の実施例と同様の機器及び測定条件でDSC測定を行い、得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料のミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度及びドコサン由来の融解ピーク温度及び融解潜熱量を求めた。得られた結果を表11に示す。
【0109】
【表11】
【0110】
表11に示すように、試料9−1〜9−5では、配合成分のミリスチルアルコールとドコサンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が35℃近傍で安定していることがわかった。これにより、ミリスチルアルコールとドコサンとからなる組成物について、ミリスチルアルコールのモル分率を72〜95モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のドコサンのモル分率を28〜5モル%となるように配合する)ことで、ミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度とドコサン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を34〜37℃に設定することができることが示された。これらの結果より、所定の配合でミリスチルアルコールとドコサンとを混合することにより、ミリスチルアルコール由来の融解ピーク温度およびドコサン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が35℃近傍と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例14】
【0111】
[15.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:セチルアルコール(C16)及びエイコサン(C20)]
セチルアルコール(花王株式会社製、製品名:カルコール6098)とn−エイコサン(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、TSパラフィンTS20)を、それぞれ50℃の湯浴中で融解させた。融解したセチルアルコールとエイコサンを、表12の各試料Noに示すモル分率で配合し、50℃の湯浴中で撹拌して試料10−1〜10−9を得た。なお、本実施例においては、全て同じ製造ロットのセチルアルコールを使用した。同様に、n−エイコサンについても本実施例においては、全て同じ製造ロットのn−エイコサンを使用した。得られた試料について、上述の実施例と同様の機器及び測定条件でDSC測定を行い、得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料のセチルアルコール由来の融解ピーク温度及びエイコサン由来の融解ピーク温度及び融解潜熱量を求めた。得られた結果を表12に示す。
【0112】
【表12】
【0113】
表12に示すように、試料10−1〜10−3では、配合成分のセチルアルコールとエイコサンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が34℃近傍で安定していることがわかった。これにより、セチルアルコールとエイコサンとからなる組成物について、セチルアルコールのモル分率を10〜30モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のエイコサンのモル分率を90〜70モル%となるように配合する)ことで、セチルアルコール由来の融解ピーク温度とエイコサン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を34〜38℃に設定することができることが示された。これらの結果より、所定の配合でセチルアルコールとエイコサンとを混合することにより、セチルアルコール由来の融解ピーク温度およびエイコサン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が34℃近傍と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例15】
【0114】
[16.蓄熱材組成物の作成及びDSC測定:セチルアルコール(C16)及びドコサン(C22)]
セチルアルコール(花王株式会社製、製品名:カルコール6098)とn−ドコサン(和光純薬社製、ドコサン)を、それぞれ60℃の湯浴中で融解させた。融解したセチルアルコールとドコサンを、表13の各試料Noに示すモル分率で配合し、60℃の湯浴中で撹拌して試料11−1〜11−5を得た。なお、本実施例においては、全て同じ製造ロットのセチルアルコールを使用した。同様に、n−ドコサンについても本実施例においては、全て同じ製造ロットのn−ドコサンを使用した。得られた試料について、上述の実施例と同様の機器及び測定条件でDSC測定を行い、得られたチャートの融解挙動を解析すると共に、各試料のセチルアルコール由来の融解ピーク温度及びドコサン由来の融解ピーク温度及び融解潜熱量を求めた。得られた結果を表13に示す。
【0115】
【表13】
【0116】
表13に示すように、試料11−1〜11−3では、配合成分のセチルアルコールとドコサンとが相互作用し、各成分の融解ピークとは異なる位置(温度)に新たな融解ピークが形成されること、形成された融解ピークは略1本であり、融解温度が41℃近傍で安定していることがわかった。これにより、セチルアルコールとドコサンとからなる組成物について、セチルアルコールのモル分率を40〜60モル%となるように配合する(すなわち、もう一方のドコサンのモル分率を60〜40モル%となるように配合する)ことで、セチルアルコール由来の融解ピーク温度とドコサン由来の融解ピーク温度とを略一致させ、かつ融解温度を41〜44℃に設定することができることが示された。これらの結果より、所定の配合でセチルアルコールとドコサンとを混合することにより、セチルアルコール由来の融解ピーク温度およびドコサン由来の融解ピーク温度が略一致または近接して、融解温度が41℃近傍と相転移温度の幅が狭く、安定した融解温度を示す蓄熱材組成物が得られることが示された。
【実施例16】
【0117】
[17.蓄熱材の作成]
(蓄熱材1)
40℃の湯浴中で融解させたラウリルアルコール(a)(花王株式会社製、製品名:カルコール2098)812gと40℃の湯浴中で融解させたオクタデカン(b)(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、製品名:TSパラフィンTS8)196gとを40℃の湯浴中で撹拌混合して、ラウリルアルコールのモル分率が約85.0%、オクタデカンのモル分率が約15.0%の混合液を得た。得られた混合液中に、ゲル化剤であるヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、製品名:NISSOH HPC−H)を42g添加し、40℃の湯浴中で10分程度撹拌してよく分散させて蓄熱材組成物を得た。この蓄熱材組成物を、塩化ビニル製のブロー容器(巾180mm×長さ280mm×厚み32mm)に1000g充填し、表14に示す蓄熱材1を得た。得られた蓄熱材1について、−20℃と60℃のヒートサイクルを100回繰り返す試験を行ったところ、固液分離がみられず物性が安定しており、融解潜熱量の減少もみられないこと(212mJ/mg→217mJ/mg)が確認された。
【0118】
(蓄熱材2)
ラウリルアルコール(a)の代わりにラウリルアルコール(c)を使用した以外は、上述と同様にして、表14に示す蓄熱材2を得た。得られた蓄熱材2について、−20℃と60℃のヒートサイクルを100回繰り返す試験を行ったところ、固液分離がみられず物性が安定しており、融解潜熱量の減少もみられないこと(215mJ/mg→222mJ/mg)が確認された。
【0119】
(蓄熱材3)
23℃雰囲気下で1‐デカノール(f)(花王株式会社製、製品名:カルコール1098)870gとヘキサデカン(j)(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、製品名:TSパラフィンTS6)138gとを撹拌混合して、1−デカノールのモル分率が約90モル%、ヘキサデカンのモル分率が約10モル%の混合液を得た。得られた混合液中にヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、製品名:NISSOH HPC−H)を42g添加し、10分程度撹枠し、よく分散させて蓄熱材組成物を得た。この蓄熱材組成物を、上記と同じブロー容器に1000g充填し、表14に示す蓄熱材3を得た。得られた蓄熱材3について、−20℃と60℃のヒートサイクルを100回繰り返す試験を行ったところ、固液分離がみられず物性が安定しており、融解潜熱量の減少も殆どみられないこと(200mJ/mg→198mJ/mg)が確認された。
【0120】
(蓄熱材4、5)
表14に示すように、ラウリルアルコール(a)又はラウリルアルコール(c)(いずれも花王株式会社製、製品名:カルコール2098、(a)及び(c)は製造ロットが異なる)のみからなる蓄熱材4、5を作成した。ラウリルアルコールを1008gとり、40℃の湯浴中で融解させた。この溶液にヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、製品名:NISSOH HPC−H)を42g添加し、40℃の湯浴中で10分程度撹枠し、よく分散させて蓄熱材組成物を得た。この蓄熱材組成物を塩化ビニル製のブロー容器(巾180mm×長さ280mm×厚み32mm)に1000g充填し、表14に示す蓄熱材4及び蓄熱材5を得た。
【0121】
(蓄熱材6、7)
表14に示すように、融点又は凝固点が20℃近傍にある市販の蓄熱材組成物(ポリエチレングリコールを主成分とするもの)を、塩化ビニル製のブロー容器(巾180mm×長さ280mm×厚み32mm)に1000g充填し、比較例としての蓄熱材6を得た。同様に、融点又は凝固点が5℃近傍にある市販の蓄熱材組成物(ポリエチレングリコールを主成分とするもの)を用いて、蓄熱材7を得た。
【0122】
【表14】
【0123】
以下実施例において、蓄熱材1〜6を断熱容器の中に収容して輸送容器を作製し、その性能試験を行った。
【実施例17】
【0124】
[18.輸送容器の作製および性能試験:蓄熱材1]
実施例16で作成した蓄熱材1を用いて、
図41〜42に示す輸送容器を作製した。輸送容器の箱体としては、発泡ポリスチレンで形成された断熱容器41(玉井化成株式会社製品、AC−525、外寸:巾620mm×奥行420mm×高さ470mm、内寸:巾500mm×奥行300mm×高さ350mm、断熱厚60mm、内容積約52.5L)を用いた。まず、12個の蓄熱材1を25℃の恒温槽中に24時間静置させ、融解状態とした。次に、
図41〜42に示すように、この断熱容器41内部に、温度管理対象物品を収容する空間5の周囲を囲むように、蓄熱材1を底面部411側に4つ、各側面部412に2つずつ、開口部410側に4つ、の計12個配置させた。断熱容器41の中心部に温度データロガー(株式会社ティアンドディ製 製品名:RTR−51)を取り付けた後、蓋を閉めて輸送容器とした。得られた輸送容器を−20℃に設定したビルトインチャンバー内に入れ、5分間隔で容器内中心部の温度推移を測定した。
図43〜45に、蓄熱材1を収容した輸送容器を−20℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。縦軸は容器内の温度(℃)を示し、横軸はビルトインチャンバーに輸送容器を入れた後の経過時間(hr)を示している。
【0125】
また、パッキング前の蓄熱材1を15℃の恒温槽中に24時間静置させた以外は、上述と同様にして、輸送容器を作製した。この輸送容器を35℃に設定したビルトインチャンバー内に入れ、5分間隔で容器内中心部の温度推移を測定した。
図47〜
図49に、蓄熱材1を収容した輸送容器を35℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。縦軸は容器内の温度(℃)を示し、横軸はビルトインチャンバーに輸送容器を入れた後の経過時間(hr)を示している。
【実施例18】
【0126】
[19.輸送容器の作製および性能試験:蓄熱材2]
蓄熱材1の代わりに蓄熱材2を使用した以外は実施例17と同様にして、輸送容器をそれぞれ作製し、容器内中心部の温度推移をそれぞれ測定した。
図43に、蓄熱材2を収容した輸送容器を−20℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。また、
図47に、蓄熱材2を収容した輸送容器を35℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。
【実施例19】
【0127】
[20.輸送容器の作製および性能試験:蓄熱材3]
蓄熱材1の代わりに蓄熱材3を使用した以外は実施例17と同様にして、輸送容器をそれぞれ作製し、容器内中心部の温度推移をそれぞれ測定した。
図51に、蓄熱材3を収容した輸送容器を−20℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。また、
図52に、蓄熱材3を収容した輸送容器を35℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。
【0128】
[21.輸送容器の作製および性能試験:蓄熱材4]
蓄熱材1の代わりに蓄熱材4を使用した以外は実施例17と同様にして、輸送容器をそれぞれ作製し、容器内中心部の温度推移をそれぞれ測定した。
図45及び46に、蓄熱材4を収容した輸送容器を−20℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。また、
図49及び50に、蓄熱材4を収容した輸送容器を35℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。
【0129】
[22.輸送容器の作製および性能試験:蓄熱材5]
蓄熱材1の代わりに蓄熱材5を使用した以外は実施例17と同様にして、輸送容器をそれぞれ作製し、容器内中心部の温度推移をそれぞれ測定した。
図46に、蓄熱材5を収容した輸送容器を−20℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。また、
図50に、蓄熱材5を収容した輸送容器を35℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。
【0130】
[23.輸送容器の作製および性能試験:蓄熱材6]
蓄熱材1の代わりに蓄熱材6を使用した以外は実施例17と同様にして、輸送容器をそれぞれ作製し、容器内中心部の温度推移をそれぞれ測定した。
図44に、蓄熱材6を収容した輸送容器を−20℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。また、
図48に、蓄熱材6を収容した輸送容器を35℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。
【0131】
[24.輸送容器の作製および性能試験:蓄熱材7]
蓄熱材1の代わりに蓄熱材7を使用し、パッキング前の蓄熱材7を15℃の恒温槽中に24時間静置させた以外は実施例17と同様にして、輸送容器を作製した。この輸送容器を−20℃に設定したビルトインチャンバー内に入れ、5分間隔で容器内中心部の温度推移を測定した。また、パッキング前の蓄熱材7を−2℃の恒温槽中に24時間静置させた以外は上記と同様にして、輸送容器を作製した。この輸送容器を35℃に設定したビルトインチャンバー内に入れ、5分間隔で容器内中心部の温度推移を測定した。
図51に、蓄熱材7を収容した輸送容器を−20℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。また、
図52に、蓄熱材7を収容した輸送容器を35℃環境下においた際の輸送容器内の温度変化の推移のグラフを示す。
【0132】
実施例17〜19及び比較例2〜5の測定結果より、表15に蓄熱材1〜6をそれぞれ収容した輸送容器を−20℃環境下においた際の、輸送容器内の所定の温度範囲維持時間(20℃±5℃又は20℃±2.5℃の温度範囲を保持する時間)を示す。また、表16には、蓄熱材1〜6をそれぞれ収容した輸送容器を35℃環境下においた際の、輸送容器内の所定の温度範囲維持時間(20℃±5℃又は20℃±2.5℃の温度範囲を保持する時間)を示す。他方、表17に蓄熱材3又は7をそれぞれ収容した輸送容器を−20℃環境下においた際の、輸送容器内の所定の温度範囲維持時間(5±3℃又は4±2℃の温度範囲を保持する時間)を示す。また、表18には、蓄熱材3又は7をそれぞれ収容した輸送容器を35℃環境下においた際の、輸送容器内の所定の温度範囲維持時間(5±3℃又は4±2℃の温度範囲を保持する時間)を示す。
【0137】
表15〜16並びに
図43〜44及び
図47〜48を参照すると、蓄熱材1及び蓄熱材2を用いた実施例17、18の輸送容器は、蓄熱材6を使用した比較例4の輸送容器に比べ、管理温度(20±2.5℃、20±5℃)での温度範囲維持時間が著しく優れていることが示された。よって、本発明の蓄熱材組成物により形成された蓄熱材及び輸送容器は、従来使用されているPEG系の蓄熱材よりも温度範囲維持時間が長く、長時間安定して狭い温度範囲に対象物を保持できることが示された。また、表15〜16並びに
図43、
図45〜47及び
図49〜50を参照し、蓄熱材1及び蓄熱材2を使用した実施例17、18の輸送容器と、蓄熱材4及び蓄熱材5を使用した比較例2、3の輸送容器とを比較したところ、−20℃雰囲気下における管理温度(20±2.5℃、20±5℃)及び35℃雰囲気下における20℃±5℃の管理温度では、両者の温度保持時間は略同等であった。しかしながら、35℃雰囲気下における20℃±2.5℃の管理温度の温度保持時間は、蓄熱材1及び蓄熱材2を使用した輸送容器に対し、蓄熱材4及び蓄熱材5を使用した輸送容器の方が著しく短いことがわかった。このことより、本発明の蓄熱材組成物により形成された蓄熱材及び輸送容器は20℃近傍の厳密な温度管理下での輸送に特に適していることが示された。また、
図43と
図47のグラフより、製造ロットの異なるラウリルアルコールをそれぞれオクタデカンと混合させて得られた蓄熱材組成物を用いた実施例17、18では、ほぼ等しい温度経時変化を示し、両者の効果のバラツキはほとんどみられないのに対して、
図46のグラフによれば、製造ロットの異なるラウリルアルコールを単体使用した比較例2、3では、温度経時変化の挙動が異なっており、製造ロット間での温度変化のバラツキが大きいことがわかった。このことより、本発明の蓄熱材組成物により形成された蓄熱材及び輸送容器は原料単体の製造ロット間での温度変化に対する挙動の違いによる影響をうけず、安定した効果を有することが確認された。
【0138】
更に、表17〜18及び
図51〜52より、蓄熱材3を使用した実施例19の輸送容器は、蓄熱材7を使用した比較例5の輸送容器に比べ、管理温度(5±3℃、4±2℃)での温度範囲維持時間が著しく優れていることが示された。よって、本発明の蓄熱材組成物により形成された蓄熱材及び輸送容器は、従来使用されているPEG系の蓄熱材よりも温度範囲維持時間が長く、長時間安定して狭い温度範囲に対象物を保持できることが示され、5℃近傍での厳密な温度管理下での輸送に特に適していることが示された。
【0139】
以上述べた実施形態の各構成要素は各実施形態における組み合わせに限るものではなく、構成要素毎に適宜組み合わせて実施できるものである。
【0140】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。