特許第6227575号(P6227575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田鉄工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000002
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000003
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000004
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000005
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000006
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000007
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000008
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000009
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000010
  • 特許6227575-車載用バッテリフレーム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227575
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】車載用バッテリフレーム
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20171030BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B62D21/00 A
   B60K1/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-29466(P2015-29466)
(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公開番号】特開2016-150682(P2016-150682A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴森 理生
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−214534(JP,A)
【文献】 特開2013−014312(JP,A)
【文献】 特開2014−104976(JP,A)
【文献】 特開2011−152841(JP,A)
【文献】 特開2013−199196(JP,A)
【文献】 特表2014−522774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリに対して車両前方側及び車両後方側となる位置に夫々配置され、前記車両の車幅方向に伸びる一対の第1フレーム部材と、
前記バッテリに対して車幅方向外側となる位置に夫々配置され、前記一対の第1フレーム部材の端部を連結する一対の第2フレーム部材と、を有する枠体として構成され、前記バッテリが当該枠体の内側に位置するように前記車体に支持される車載用バッテリフレームであって、
前記第1フレーム部材は、
前記第2フレーム部材以上の長さで形成され、
前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の外側方向に位置するように、所定の第1角度で曲げた第1曲げ部を、車幅方向両端部に有する
ことを特徴とする車載用バッテリフレーム。
【請求項2】
前記第1フレーム部材は、
所定の第2角度で曲げた第2曲げ部を、前記第1曲げ部よりも車幅方向外側に有し、
前記第2曲げ部は、
前記第1曲げ部と前記第2曲げ部の間における前記第1フレーム部材の伸びる向きに対して、前記車幅方向外側へ向かうほど、前記枠体の内側となる向きに、前記第1フレーム部材を曲げて構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の車載用バッテリフレーム。
【請求項3】
前記第1フレーム部材及び前記第2フレーム部材は、鋼管によって構成され、
前記車載用バッテリフレームは、前記第1フレーム部材の端部と前記第2フレーム部材の端部同士を接合することによって構成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車載用バッテリフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリに対して用いられる車載用バッテリフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮の点から、ガソリン車の燃費向上を図るため電池を搭載したハイブリッド車の採用が進んでおり、更に電気自動車の開発が強力に推進されている。電気自動車やハイブリッド車は、バッテリを駆動用電源としてモータによって駆動される為、周知の通り、ガソリンや軽油を燃料とするエンジンによって駆動される一般の自動車に比べ、車体全体の容量や重量に対してバッテリが大きな割合を占める。
【0003】
電気自動車やハイブリッド車における駆動用電源としてのバッテリを、車両に搭載する為の発明として、様々な発明がなされており、例えば、特許文献1記載の発明が知られている。特許文献1記載の発明においては、水密構造に構成された車載用バッテリトレイの内部に、駆動用電源であるバッテリを収納し、当該車載用バッテリの下部を、バッテリフレームとしての外枠フレームで支持することで、車体構造に固定されている。当該外枠フレームは、アルミニウム合金の中空押出形材からなる4つのフレームユニットの端部同士を、アルミニウム合金によってL字状に形成された角部材を介して接合すること構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−133044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の発明の場合、フレームユニットや角部材を、アルミニウム合金製の鋼板をプレス加工して形成しており、車載バッテリの支持構造としての構造が複雑となり、金型費や溶接費の増大を招いてしまう。又、アルミニウム合金は、軽量であるが、材料単価が高い。従って、当該特許文献1記載の発明の場合、車載バッテリの支持構造に関するコストが増大してしまっていた。
【0006】
又、駆動用電源としてのバッテリを車両に搭載する場合、車両の衝突に伴い入力される衝突荷重から、バッテリを保護する必要がある。特に、車両法規上、車両に対する側面衝突によって入力される衝突荷重に対するバッテリの保護に対して、十分に考慮する必要がある。従って、車両に対する駆動用バッテリの搭載に際して、車載用バッテリフレームを用いる場合、側面衝突に伴う衝突荷重によって、車載用バッテリフレームの車幅方向への変形量を抑制する必要がある。
【0007】
そして、衝突荷重の入力に伴う車載用バッテリフレームの変形は、衝突荷重の大きさや入力方向に応じて、様々な変形量及び方向で発生する。側面衝突が発生した場合、車載用バッテリフレームは、衝突荷重に伴って、車両の前後方向に広がるように変形する傾向にある。ここで、車載用バッテリの周辺には、電装部品などの周辺部品が配置されている為、側面衝突に伴う車載用バッテリフレームの変形によって周辺部品との接触が生じ、周辺部品の故障を発生させる虞があった。
【0008】
本発明は、車両に搭載されるバッテリに対して用いられる車載用バッテリフレームに関し、側面衝突に伴う衝突荷重からバッテリを保護すると共に、バッテリの周辺部品に対する影響を抑制し得る車載用バッテリフレームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る車載用バッテリフレームは、車両に搭載されたバッテリに対して車両前方側及び車両後方側となる位置に夫々配置され、前記車両の車幅方向に伸びる一対の第1フレーム部材と、前記バッテリに対して車幅方向外側となる位置に夫々配置され、前記一対の第1フレーム部材の端部を連結する一対の第2フレーム部材と、を有する枠体として構成され、前記バッテリが当該枠体の内側に位置するように前記車体に支持される車載用バッテリフレームであって、前記第1フレーム部材は、前記第2フレーム部材以上の長さで形成され、前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の外側方向に位置するように、所定の第1角度で曲げた第1曲げ部を、車幅方向両端部に有することを特徴とする。
【0010】
当該車載用バッテリフレームは、一対の第1フレーム部材と、一対の第2フレーム部材とを有する枠体として構成され、前記バッテリが当該枠体の内側に位置するように前記車体に支持される。従って、当該車載用バッテリフレームは、車両の側面衝突に伴う衝突荷重を受ける為、車載用バッテリフレームの内側に位置するバッテリを保護することができる。そして、当該車載用バッテリフレームにおいて、第1フレーム部材は、バッテリに対して車両前方側及び車両後方側となる位置に夫々配置され、前記第2フレーム部材以上の長さで形成されて前記車両の車幅方向に延びている。フレーム部材における車幅方向両端部は、第1曲げ部によって所定の第1角度で曲げられることで、前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の外側方向に位置する。当該車載用バッテリフレームによれば、第1フレーム部材に第1曲げ部を形成することによって、側面衝突に伴う衝突荷重が入力された場合に、第1フレーム部材の車幅方向中央部分に関する枠体外側方向(車両前側又は後側)への変形量を抑制し得る。これにより、当該車載用バッテリフレームは、バッテリ及び車載用バッテリフレームの周辺部品との接触を抑制し、周辺部品の損傷を防止し得る。又、当該車載用バッテリフレームによれば、各第1フレーム部材に対して第1曲げ部を形成するだけで、側面衝突に対するバッテリの保護と周辺部品の損傷防止を実現し得る為、コストの増大を招くことなく、好適に実現し得る。
【0011】
又、本発明の他の側面に係る車載用バッテリフレームは、請求項1記載の車載用バッテリフレームであって、前記第1フレーム部材は、所定の第2角度で曲げた第2曲げ部を、前記第1曲げ部よりも車幅方向外側に有し、前記第2曲げ部は、前記第1曲げ部と前記第2曲げ部の間における前記第1フレーム部材の伸びる向きに対して、前記車幅方向外側へ向かうほど、前記枠体の内側となる向きに、前記第1フレーム部材を曲げて構成されていることを特徴とする。
【0012】
当該車載用バッテリフレームにおいて、前記第1フレーム部材は、前記車幅方向両端部であって、前記第1曲げ部よりも前記車幅方向外側に、第2曲げ部を有している。従って、第1フレーム部材における車幅方向両端部は、第1曲げ部によって所定の第1角度で曲げられることで、前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の外側方向に位置するように伸びた後、第2曲げ部によって所定の第2角度で曲げられ、前記第1曲げ部と前記第2曲げ部の間における前記第1フレーム部材の伸びる向きに対して、前記車幅方向外側へ向かうほど、前記枠体の内側となる向きに伸びている。当該車載用バッテリフレームによれば、第1フレーム部材に第1曲げ部及び第2曲げ部を形成することによって、側面衝突に伴う衝突荷重が入力された場合に、第1フレーム部材の車幅方向中央部分に関する枠体外側方向(車両前側又は後側)への変形量を、より一層抑制し得る。これにより、当該車載用バッテリフレームは、バッテリ及び車載用バッテリフレームの周辺部品との接触を抑制し、周辺部品の損傷を防止し得る。又、当該車載用バッテリフレームは、第1フレーム部材の第1曲げ部及び第2曲げ部によって、衝突荷重による変形量を抑制している為、車載用バッテリフレームの搭載スペースへの影響を小さくすることができる。更に、当該車載用バッテリフレームによれば、各第1フレーム部材に対して第1曲げ部及び第2曲げ部を形成するだけで、側面衝突に対するバッテリの保護と周辺部品の損傷防止を、より効果的に実現し得る為、コストの増大を招くことなく実現し得る。
【0013】
そして、本発明の他の側面に係る車載用バッテリフレームは、請求項1又は請求項2記載の車載用バッテリフレームであって、前記第1フレーム部材及び前記第2フレーム部材は、鋼管によって構成され、前記車載用バッテリフレームは、前記第1フレーム部材の端部と前記第2フレーム部材の端部同士を接合することによって構成されていることを特徴とする。
【0014】
当該車載用バッテリフレームによれば、前記第1フレーム部材及び前記第2フレーム部材は、鋼管によって構成され、前記車載用バッテリフレームは、前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材の端部同士を接合することによって構成されている為、側面衝突に対するバッテリの保護と周辺部品の損傷防止を両立可能な車載用バッテリフレームを、シンプルかつ安価に製造し得る。
【発明の効果】
【0015】
この車載用バッテリフレームは、一対の第1フレーム部材と、一対の第2フレーム部材を有する枠体として構成され、前記バッテリが当該枠体の内側に位置するように前記車体に支持される。第1フレーム部材の車幅方向両端部は、第1曲げ部によって所定の第1角度で曲げられることで、前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の外側方向に位置する。第1フレーム部材に第1曲げ部を形成することによって、側面衝突に伴う衝突荷重が入力された場合に、衝突荷重からバッテリを保護しつつ、第1フレーム部材の枠体外側方向(車両前側又は後側)への変形量を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る車載用バッテリフレームの外観斜視図である。
図2】第1実施形態に係る車載用バッテリフレームの平面図である。
図3】第1実施形態に係る第1曲げ部の詳細を示す平面図である。
図4】第1実施形態に係る車載用バッテリフレームと従来例を示す説明図である。
図5】第1実施形態に係る車載量バッテリフレームと従来例について、側面衝突時における変形量の比較に関する説明図である。
図6】第2実施形態に係る車載用バッテリフレームの外観斜視図である。
図7】第2実施形態に係る車載用バッテリフレームの平面図である。
図8】第2実施形態に係る第1曲げ部及び第2曲げ部の詳細を示す平面図である。
図9】第2実施形態に係る車載用バッテリフレームと、従来例及び第1実施形態を示す説明図である。
図10】第2実施形態に係る車載用バッテリフレームと、従来例及び第1実施形態について、側面衝突時における変形量の比較に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車載用バッテリフレームを、車載用バッテリフレーム1に適用した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
(第1実施形態に係る車載用バッテリフレームの概略構成)
先ず、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1の概略構成について、図1図3を参照しつつ詳細に説明する。当該車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10Fと、バックフレーム部材10Bと、一対のサイドフレーム部材20によって枠体状に構成されており、電動機(モータ)を駆動源として走行可能な車両(例えば、ハイブリッド車や電気自動車)に配設されている。
【0019】
そして、当該車両において、バッテリBが後部座席の下方に配設されており、当該バッテリBには、当該車両の駆動源である電動機へ供給する電力が蓄電されている。当該車載用バッテリフレーム1は、車両の後部座席の下方において、平面視でバッテリBを囲むように配設される(図1図2参照)。
【0020】
又、車両の後部座席の下方には、周辺部品PがバッテリBの周囲に配設されている。当該周辺部品Pは、バッテリBから電動機へ電力供給する為の電装部品等を含んでいる。そして、当該車載用バッテリフレーム1は、上述したように、フロントフレーム部材10Fと、バックフレーム部材10Bと、一対のサイドフレーム部材20によって枠体状に構成されているが、車両の構造及び周辺部品Pの配置の関係上、平面視で台形状を為す。
【0021】
図1図3に示すように、フロントフレーム部材10Fは、車載用バッテリフレーム1を構成するフレーム部材の一つであり、バッテリBに対して車両前方側に配置される。当該フロントフレーム部材10Fは、断面長方形状を為す角型鋼管により構成されており、本発明に係る第1フレーム部材の一例である。図2に示すように、フロントフレーム部材10Fは、バックフレーム部材10B及びサイドフレーム部材20よりも長く形成されており、長手方向両端部に、第1曲げ部11を夫々有している。第1曲げ部11の詳細については後述する。尚、本発明における長手方向両端部とは、第1フレーム部材(フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B)の全長の約1/3よりも車幅方向の両外側となる部分のことである。
【0022】
バックフレーム部材10Bは、車載用バッテリフレーム1を構成するフレーム部材の一つであり、バッテリBに対して車両後方側に配置されている。当該バックフレーム部材10Bは、フロントフレーム部材10Fと同様に、断面長方形状を為す角型鋼管により構成されており、本発明に係る第1フレーム部材の一例である。そして、バックフレーム部材10Bは、サイドフレーム部材20よりも長く、且つ、フロントフレーム部材10Fよりもやや短く形成されており、フロントフレーム部材10Fと同様に、長手方向両端部に、第1曲げ部11を夫々有している。
【0023】
サイドフレーム部材20は、車載用バッテリフレーム1を構成するフレーム部材の一つであり、バッテリBに対して車両の右側及び左側(即ち、車幅方向外側)に夫々配置されている。各サイドフレーム部材20は、断面長方形状を為す角型鋼管により構成されており、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの端部を連結している。各サイドフレーム部材20は、断面長方形状を為す角型鋼管によって、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bよりも短く形成されている。
【0024】
当該車載用バッテリフレーム1においては、フロントフレーム部材10Fの各端面は、夫々、サイドフレーム部材20の一側面(枠体の内側となる側面)に接触させた状態で溶接することによって接合される。同様に、バックフレーム部材10Bの各端面は、サイドフレーム部材20の一側面(枠体の内側となる側面)に接触させた状態で溶接することによって接合される。これにより、各サイドフレーム部材20は、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの端部を連結する。そして、バッテリBを囲む平面視台形状の枠体としての車載用バッテリフレーム1が形成される。
【0025】
ここで、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1においては、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bは、車幅方向両端部に夫々第1曲げ部11を有している。フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの各第1曲げ部11は、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの端部から、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの全長の約1/4となる部分に夫々形成されている。
【0026】
フロントフレーム部材10Fにおける第1曲げ部11は、フロントフレーム部材10Fにおける車幅方向中央部分に対して、第1曲げ部11よりも車幅方向外側部分を車両前方側へ変位させることで形成され、所定の第1角度αとなるように曲げられる。第1角度αは、フロントフレーム部材10Fにおける車幅方向中央部分と、第1曲げ部11よりも車幅方向外側部分が為す所定角度(例えば、175°〜179°)である。これにより、当該フロントフレーム部材10Fの端部は、前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の外側方向(車両前方側)に位置するように伸びる(図3参照)。
【0027】
そして、バックフレーム部材10Bにおける第1曲げ部11は、バックフレーム部材10Bにおける車幅方向中央部分に対して、第1曲げ部11よりも車幅方向外側部分を車両後方側へ変位させることで形成され、所定の第1角度αとなるように曲げられる。第1角度αは、バックフレーム部材10Bにおける車幅方向中央部分と、第1曲げ部11よりも車幅方向外側部分が為す所定角度(例えば、175°〜179°)である。図3に示すように、当該バックフレーム部材10Bの端部は、前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の外側方向(車両後方側)に位置するように伸びる。
【0028】
尚、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10Bの第1曲げ部11による第1角度αは、車両の側面衝突に伴う衝突荷重Fが作用した場合のサイドフレーム部材20の変位量によって定められる。そして、フロントフレーム部材10Fにおける第1角度αは、バックフレーム部材10Bにおける第1角度αと同じ値としてもよく、異なる値としてもよい。
【0029】
このように構成された第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B及び一対のサイドフレーム部材20によって構成される枠体状に形成され、バッテリBを囲むように配設される。従って、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1は、車両の側面衝突によって衝突荷重Fが入力された場合、当該衝突荷重Fによって変形することで、車載用バッテリフレーム1の内側に位置するバッテリBを保護することができる。
【0030】
(第1実施形態に係る車載用バッテリフレームと、従来例の比較)
次に、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1と、従来例について、車両の側面衝突に伴う衝突荷重による変形量を、図4図5を参照しつつ比較する。
尚、以下の説明においては、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1を、第1例1Aとし、従来の車載用バッテリフレームを、従来例1Pとして説明する。
【0031】
先ず、従来例1Pに相当する車載用バッテリフレームの構成について説明する。従来例1Pを構成する車載用バッテリフレームは、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1と同様に、角型鋼管からなるフロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B及び一対のサイドフレーム部材20により、平面視台形状の枠体として構成される。
【0032】
第1例1A(第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1)と、従来例1Pとの相違点は、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bにおける第1曲げ部11の有無にある。即ち、従来例1Pを構成するフロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bは、第1曲げ部11を有しておらず、直線状に伸びる角型鋼管によって構成される。
【0033】
尚、従来例1Pにおいて、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bは、第1例1Aにおけるフロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの車幅方向中央部分と同じ位置になるように配設される。従来例1Pにおいて、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bは、直線状に形成されている為、従来例1Pにおける各サイドフレーム部材20の側面に対し、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの端部が接合される位置は、上述した第1例1Aにおける各サイドフレーム部材20に対するフロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの接合位置よりも、枠体の内側方向に位置する(図4参照)。
【0034】
続いて、このように構成された車載用バッテリフレーム1(従来例1P及び第1例1A)に対して車両の側面衝突に伴って衝突荷重Fが作用した場合の各フレーム部材の変形態様について説明する。尚、以下の説明においては、車両の左側面に対する側面衝突によって、車両の左側から衝突荷重Fが入力された場合を例として挙げて説明する。
【0035】
車両左側から衝突荷重Fが入力された場合、車両左側のサイドフレーム部材20は、衝突荷重Fに伴って撓み、車載用バッテリフレーム1に係る枠体の内側方向へ変位する。車両左側のサイドフレーム部材20が枠体の内側方向に変位することによって、当該車載用バッテリフレーム1のフロントフレーム部材10Fは、両側のサイドフレーム部材20の間で、衝突荷重Fによって圧縮される。これにより、車載用バッテリフレーム1のフロントフレーム部材10Fは、衝突荷重Fによって変形し、車幅方向中央部分が車両前方側へ変位する。
【0036】
同様に、車両左側のサイドフレーム部材20が枠体の内側方向に変位することで、当該車載用バッテリフレーム1のバックフレーム部材10Bは、両側のサイドフレーム部材20の間で、衝突荷重Fによって圧縮される。これにより、車載用バッテリフレーム1のバックフレーム部材10Bは、衝突荷重Fによって変形し、車幅方向中央部分が車両後方側へ変位する。
【0037】
続いて、車両左側からの側面衝突によって、所定の大きさの衝突荷重Fが作用した場合の従来例1Pにおける各フレーム部材の変形量と、第1例1A(第1実施形態)における各フレーム部材の変形量との比較について、図5を参照しつつ説明する。尚、以下の説明においては、従来例1Pに係る各フレーム部材の変形量を100%として、第1例1Aにおける各フレーム部材の変形量との比較を行う。
【0038】
図5に示すように、第1例1Aにおける車載用バッテリフレーム1に対して、車両左側から所定の大きさの衝突荷重Fが入力された場合、第1例1Aにおけるサイドフレーム部材20の変形量は、従来例1Pを100%とした場合に107%を示し、従来例1Pと比較して7%増大している。この点、第1例1Aにおけるサイドフレーム部材20の変形量の増大が7%程度であれば、車載用バッテリフレーム1内側に位置するバッテリBに、当該サイドフレーム部材20が接触することはなく、車載用バッテリフレーム1によってバッテリBを保護し得る。
【0039】
そして、車載用バッテリフレーム1に対して、車両左側から所定の大きさの衝突荷重Fが入力された場合、第1例1Aにおけるフロントフレーム部材10Fの変形量は、従来例1Pを100%とした場合に50%を示し、従来例1Pと比較して50%低減される。この点、第1例1Aにおけるフロントフレーム部材10Fの変形量が50%に低減される為、第1例1A(第1実施形態)に係る車載用バッテリフレーム1によれば、側面衝突によって、フロントフレーム部材10Fが車両前方側に向かって変形し周辺部品Pと接触する可能性を低減することができ、もって、周辺部品Pの破損を防止することができる。
【0040】
一方、車両左側から所定の大きさの衝突荷重Fが入力された場合、第1例1Aにおけるバックフレーム部材10Bの変形量は、従来例1Pを100%とした場合に約55.5%を示し、従来例1Pと比較して約44.5%低減される。つまり、第1例1Aにおけるバックフレーム部材10Bの変形量が約55.5%に低減される為、第1例1A(第1実施形態)に係る車載用バッテリフレーム1によれば、側面衝突によって、バックフレーム部材10Bが車両後方側に向かって変形し周辺部品Pと接触する可能性を低減することができ、もって、周辺部品Pの破損を防止することができる。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10Fと、バックフレーム部材10Bと、一対のサイドフレーム部材20とを有する平面視台形状を為す枠体として構成され、バッテリBが当該枠体の内側に位置するように配設される(図2参照)。従って、当該車載用バッテリフレーム1によれば、図5に示すように、当該車載用バッテリフレーム1が、車両の側面衝突に伴う衝突荷重Fを受けることで、枠体内部に配置されたバッテリBを、衝突荷重Fから保護することができる。
【0042】
そして、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1において、フロントフレーム部材10Fは、第1曲げ部11を有しており、当該フロントフレーム部材10Fの車幅方向両端部は、第1曲げ部11によって第1角度αで曲げられることで、車幅方向外側へ向かう程、車両前方側に位置する。又、バックフレーム部材10Bも、第1曲げ部11を有しており、当該バックフレーム部材10Bの車幅方向両端部は、第1曲げ部11によって第1角度αで曲げられることで、車幅方向外側へ向かう程、車両後方側に位置する。
【0043】
図5に示すように、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1によれば、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの車幅方向両端部に、第1曲げ部11を形成することによって、車両の側面衝突に係る衝突荷重Fが入力された場合のフロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの変形量を、従来例1Pの約50%に抑制することができる。これにより、当該車載用バッテリフレーム1は、バッテリB及び周辺部品Pに対する車載用バッテリフレーム1の接触を抑制し、周辺部品Pの損傷を防止し得る。又、当該車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bに、第1曲げ部11を夫々形成するだけで、周辺部品Pの損傷防止性能を高めることができ、コストの増大を招くことなく、より高性能な車載用バッテリフレーム1を提供し得る。
【0044】
図1に示すように、第1実施形態において、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B及び一対のサイドフレーム部材20は、角型鋼管によって構成され、車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの端面を、サイドフレーム部材20の側面に突き合せて溶接接合することによって構成されている為、側面衝突に対するバッテリBの保護と、周辺部品Pの損傷防止とを両立可能な車載用バッテリフレーム1を、シンプルな構成で安価に製造し得る。
【0045】
(第2実施形態)
次に、側面衝突に伴うフロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの変形量をより効果的に抑制する為になされた上述した第1実施形態と異なる実施形態(第2実施形態)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0046】
(第2実施形態に係る車載用バッテリフレームの概略構成)
先ず、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1の概略構成について、図6図8を参照しつつ詳細に説明する。尚、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10Bの構成を除き、上述した第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1と同様の基本的構成を有している。従って、以下の説明においては、第1実施形態と同様の構成についての説明を省略し、相違する構成について詳細に説明する。
【0047】
図6図8に示すように、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1は、第1実施形態と同様に、フロントフレーム部材10Fと、バックフレーム部材10Bと、一対のサイドフレーム部材20によって枠体状に構成されており、電動機(モータ)を駆動源として走行可能な車両(例えば、ハイブリッド車や電気自動車)に配設されている。そして、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1において、一対のサイドフレーム部材20は、断面長方形状を為す角型鋼管によって、第1実施形態に係るサイドフレーム部材20と同様に構成されている。
【0048】
ここで、第2実施形態に係るフロントフレーム部材10Fは、第1実施形態と同様に、断面長方形状を為す角型鋼管によって構成され、バッテリBに対して車両前方側に配置される。そして、第2実施形態に係るフロントフレーム部材10Fは、第1実施形態と同様の位置に、第1角度αで曲げた第1曲げ部11を有している。第2実施形態に係るフロントフレーム部材10Fの第1角度αも、第1実施形態と同様に、車両の側面衝突に伴う衝突荷重Fが作用した場合のサイドフレーム部材20の変位量によって定められ、例えば、175°〜179°といった値をとる。
【0049】
第2実施形態に係るフロントフレーム部材10Fは、第1実施形態と異なり、当該第1曲げ部11よりも車幅方向外側に、第2曲げ部12を夫々有している。第2実施形態に係るフロントフレーム部材10Fにおいて、第2曲げ部12は、フロントフレーム部材10Fの端部から、フロントフレーム部材10Fの全長の約1/12となる部分に夫々形成されている。
【0050】
第2実施形態に係るフロントフレーム部材10Fにおいて、第2曲げ部12は、当該フロントフレーム部材10Fにおける第1曲げ部11と第2曲げ部12の間となる部分に対して、第2曲げ部12よりも車幅方向外側部分を車両後方側へ変位させることで形成され、所定の第2角度βとなるように曲げられる。第2角度βは、第1曲げ部11と第2曲げ部12の間となる部分と、第2曲げ部12よりも車幅方向外側部分が為す角度である。第2角度βの大きさは、第1曲げ部11における第1角度αと同程度(例えば、175°〜179°)であり、同一の値が望ましい。これにより、当該フロントフレーム部材10Fの端部は、前記第1曲げ部11と前記第2曲げ部12の間における前記フロントフレーム部材10Fの伸びる向きに対して、第2曲げ部12よりも前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の内側(車両後方側)方向に伸びている(図8参照)。
【0051】
そして、第2実施形態に係るバックフレーム部材10Bは、断面長方形状を為す角型鋼管によって構成され、バッテリBに対して車両後方側に配置される。そして、第2実施形態に係るバックフレーム部材10Bは、第1実施形態と同様の位置に、第1角度αで曲げた第1曲げ部11を有している。第2実施形態に係るバックフレーム部材10Bの第1角度αも、第1実施形態と同様に、車両の側面衝突に伴う衝突荷重Fが作用した場合のサイドフレーム部材20の変位量によって定められ、例えば、175°〜179°といった値をとる。
【0052】
第2実施形態に係るバックフレーム部材10Bは、フロントフレーム部材10Fと同様に、当該第1曲げ部11よりも車幅方向外側に、第2曲げ部12を夫々有している。第2実施形態に係るバックフレーム部材10Bにおいて、各第2曲げ部12は、バックフレーム部材10Bの端部から、バックフレーム部材10Bの全長の約1/12となる部分に夫々形成されている。
【0053】
そして、第2実施形態に係るバックフレーム部材10Bにおいて、第2曲げ部12は、当該バックフレーム部材10Bにおける第1曲げ部11と第2曲げ部12の間となる部分に対して、第2曲げ部12よりも車幅方向外側部分を車両前方側へ変位させることで形成され、所定の第2角度βとなるように曲げられる。第2角度βは、第1曲げ部11と第2曲げ部12の間となる部分と、第2曲げ部12よりも車幅方向外側部分が為す角度を示している。第2角度βの大きさは、第1曲げ部11における第1角度αと同程度(例えば、175°〜179°)であり、同一の値が望ましい。図8に示すように、当該バックフレーム部材10Bの端部は、前記第1曲げ部11と前記第2曲げ部12の間における前記バックフレーム部材10Bの伸びる向きに対して、第2曲げ部12よりも前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の内側(車両前方側)となる方向に伸びている。
【0054】
図6図8に示すように、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B及び一対のサイドフレーム部材20によって構成される枠体状に形成され、バッテリBを囲むように配設される。従って、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1は、第1実施形態と同様に、車両の側面衝突によって衝突荷重Fが入力された場合、当該衝突荷重Fによって変形することで、車載用バッテリフレーム1の内側に位置するバッテリBを保護することができる。
【0055】
(第2実施形態に係る車載用バッテリフレームと、従来例及び第1実施形態との比較)
続いて、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1と、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1及び従来例について、車両の側面衝突に伴う衝突荷重Fによる変形量を、図9図10を参照しつつ比較する。
尚、以下の説明においては、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1を、第2例1Bとして説明する。そして、第1実施形態と同様に、第1実施形態に係る車載用バッテリフレーム1を、第1例1Aとし、従来の車載用バッテリフレームを、従来例1Pとして説明する。
【0056】
図9に示すように、第2例1B(第2実施形態)において、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bは、その車幅方向中央部分が従来例1P及び第1例1Aに係るフロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの車幅中央部分と同じ位置になるように配設される。そして、第2例1Bにおけるフロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの端部は、第1例1Aにおけるフロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bと同じ位置関係で、各サイドフレーム部材20に接合されている。
【0057】
続いて、このように構成された車載用バッテリフレーム1(従来例1P、第1例1A及び第2例1B)に対して、車両左側からの側面衝突によって衝突荷重Fが作用した場合の各フレーム部材の変形量との比較について、図10を参照しつつ説明する。尚、以下の説明においては、第1実施形態と同様に、従来例1Pに係る各フレーム部材の変形量を100%として、第1例1A及び第2例1Bにおける各フレーム部材の変形量の比較を行う。
【0058】
図10に示すように、第2例1Bに係る車載用バッテリフレーム1に対して、車両左側から衝突荷重Fが入力された場合、サイドフレーム部材20は、衝突荷重Fによって枠体内側へ向かって変位する。この場合、第2例1Bに係るサイドフレーム部材20の変形量は、従来例1Pを100%とした場合に108%を示し、従来例1Pと比較して8%増大している。第1例1Aにおけるサイドフレーム部材20の変形量は107%である為、第2例1Bにおけるサイドフレーム部材20の変形量は、第1例1Aと大きな差はない。
【0059】
第2例1Bにおけるサイドフレーム部材20の変形量の増大が8%程度であれば、第1例1Aと同様に、車載用バッテリフレーム1内側に位置するバッテリBに、当該サイドフレーム部材20が接触することはなく、車載用バッテリフレーム1によってバッテリBを保護し得る。
【0060】
車載用バッテリフレーム1に対して、車両左側から衝突荷重Fが入力された場合、当該車載用バッテリフレーム1のフロントフレーム部材10Fは、両側のサイドフレーム部材20の間で、衝突荷重Fによって圧縮される。第2例1Bにおけるフロントフレーム部材10Fには、第1曲げ部11及び第2曲げ部12が形成されているので、衝突荷重Fは、フロントフレーム部材10Fを車両前方側へ変形させるよりも、第1曲げ部11及び第2曲げ部12における曲げを促進するように作用し、車両前方側への変形量を抑制する。
【0061】
図10に示す解析結果からもわかるように、第2例1Bに係るフロントフレーム部材10Fの変形量は、従来例1Pを100%とした場合に37.5%を示し、従来例1Pと比較して62.5%低減される。第1例1Aにおけるフロントフレーム部材10Fの変形量は50%である為、第2例1Bにおけるフロントフレーム部材10Fの変形量は、第1例1Aと比較しても低減されている。
【0062】
即ち、車載用バッテリフレーム1を構成するフロントフレーム部材10Fに対して、第1曲げ部11及び第2曲げ部12を形成することによって、側面衝突による衝突荷重Fが作用した場合のフロントフレーム部材10Fの変形量を低減し得る。これにより、第2例1B(第2実施形態)に係る車載用バッテリフレーム1によれば、側面衝突によってフロントフレーム部材10Fが車両前方側に向かって変形し、周辺部品Pと接触する可能性を低減することができ、もって、周辺部品Pの破損を防止することができる。
【0063】
一方、車両左側から衝突荷重Fが入力された場合、当該車載用バッテリフレーム1のバックフレーム部材10Bは、両側のサイドフレーム部材20の間で、衝突荷重Fによって圧縮される。第2例1Bにおけるバックフレーム部材10Bにおいても、第1曲げ部11及び第2曲げ部12が形成されているので、衝突荷重Fは、バックフレーム部材10Bを車両後方側へ変形させるよりも、第1曲げ部11及び第2曲げ部12における曲げを促進するように作用し、車両後方側への変形量を抑制する。
【0064】
第2例1Bにおけるバックフレーム部材10Bの変形量は、従来例1Pを100%とした場合に約42.7%を示し、従来例1Pと比較して約57.3%低減される(図10参照)。そして、第1例1Aにおけるバックフレーム部材10Bの変形量は約55.5%である為、第2例1Bにおけるバックフレーム部材10Bの変形量は、第1例1Aと比較しても低減されている。
【0065】
上述したフロントフレーム部材10Fと同様に、車載用バッテリフレーム1を構成するバックフレーム部材10Bに対して、第1曲げ部11及び第2曲げ部12を形成することによって、側面衝突による衝突荷重Fが作用した場合のバックフレーム部材10Bの変形量を低減し得る。これにより、第2例1B(第2実施形態)に係る車載用バッテリフレーム1によれば、側面衝突によってバックフレーム部材10Bが車両後方側に向かって変形し、周辺部品Pと接触する可能性を低減することができ、もって、周辺部品Pの破損を防止することができる。
【0066】
以上説明したように、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1は、第1実施形態と同様に、フロントフレーム部材10Fと、バックフレーム部材10Bと、一対のサイドフレーム部材20とを有する平面視台形状を為す枠体として構成され、バッテリBが当該枠体の内側に位置するように配設される(図7参照)。従って、当該車載用バッテリフレーム1によれば、図10に示すように、当該車載用バッテリフレーム1が、車両の側面衝突に伴う衝突荷重Fを受けることで、枠体内部に配置されたバッテリBを、衝突荷重Fから保護することができる。
【0067】
第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1において、フロントフレーム部材10Fは、第1実施形態と同様に、第1曲げ部11を有しており、第1曲げ部11によって第1角度αで曲げられることで、車幅方向外側へ向かう程、車両前方側に位置する。又、バックフレーム部材10Bも、第1実施形態と同様に、第1曲げ部11を有しており、第1曲げ部11によって第1角度αで曲げられることで、車幅方向外側へ向かう程、車両後方側に位置する。
【0068】
更に、第2実施形態に係るフロントフレーム部材10Fは、第1曲げ部11よりも車幅方向外側に、第2曲げ部12を夫々有しており、第2曲げ部12によって第2角度βで曲げられることで、前記第1曲げ部11と前記第2曲げ部12の間における前記フロントフレーム部材10Fの伸びる向きに対して、第2曲げ部12よりも前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の内側方向(車両後方側)に位置する。又、バックフレーム部材10Bも、第1曲げ部11よりも車幅方向外側に、第2曲げ部12を夫々有しており、第2曲げ部12によって第2角度βで曲げられることで、前記第1曲げ部11と前記第2曲げ部12の間における前記バックフレーム部材10Bの伸びる向きに対して、第2曲げ部12よりも前記車幅方向外側へ向かう程、前記枠体の内側方向(車両前方側)に位置する。
【0069】
図10に示すように、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1によれば、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの車幅方向両端部に、第1曲げ部11及び第2曲げ部12を形成することによって、車両の側面衝突に係る衝突荷重Fが入力された場合のフロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの変形量を、従来例1Pの約40%程度に抑制することができる。これにより、当該車載用バッテリフレーム1は、バッテリB及び周辺部品Pに対する車載用バッテリフレーム1の接触を抑制し、周辺部品Pの損傷を防止し得る。又、当該車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bに、第1曲げ部11に加えて、第2曲げ部12を夫々形成するだけで、周辺部品Pの損傷防止性能を更に高めることができ、コストの増大を招くことなく、より高性能な車載用バッテリフレーム1を提供し得る。
【0070】
図6に示すように、第2実施形態においても、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B及び一対のサイドフレーム部材20は、角型鋼管によって構成され、車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの端面を、サイドフレーム部材20の側面に突き合せて溶接接合することによって構成されている。従って、第2実施形態に係る車載用バッテリフレーム1によれば、側面衝突に対するバッテリBの保護と、周辺部品Pの損傷防止との両立を、更に高度に実現可能な車載用バッテリフレーム1を、シンプルな構成で且つ安価に製造し得る。
【0071】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した実施形態においては、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B及びサイドフレーム部材20を、角型鋼管により構成していたが、この態様に限定されるものではない。フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B及びサイドフレーム部材20を、他の断面形状を有する鋼管(例えば、丸型鋼管)によって構成することも可能であり、リップ溝形鋼やチャンネル鋼等の鋼材によって構成することも可能である。
【0072】
又、上述した実施形態においては、車載用バッテリフレーム1は、周辺部品P等との関係上、平面視、台形状となるように構成されていたが、この態様に限定されるものではない。車載用バッテリフレーム1は、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B及び一対のサイドフレーム部材20により枠体として構成されていればよく、平面視で長方形状を為すように接合されていてもよい。
【0073】
そして、上述した実施形態においては、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10Bは、サイドフレーム部材20よりも十分に長く形成されていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10Bが、サイドフレーム部材20と同じ若しくはやや長く形成されていてもよい。又、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B、サイドフレーム部材20の長さが何れも同程度である場合には、本発明は、サイドフレーム部材20をやや長く形成しても効果を発揮し得る。
【0074】
又、フロントフレーム部材10Fの第1曲げ部11における第1角度αは、バックフレーム部材10Bの第1曲げ部11における第1角度αと同じであってもよいし、相違する構成であってもよい。そして、或る第1フレーム部材(フロントフレーム部材10F又はバックフレーム部材10B)において、第1曲げ部11の第1角度αは、第2曲げ部12の第2角度βと同じ角度であってもよいし、第1角度αと第2角度βが相違していてもよい。
【0075】
そして、上述した実施形態においては、車載用バッテリフレーム1を構成する際に、フロントフレーム部材10F及びバックフレーム部材10Bの端面を、各サイドフレーム部材20の側面に接触させた状態で溶接することによって接合したが、この態様に限定されるものではない。フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B、サイドフレーム部材20の各端部を斜めに切り落とした端面同士を接触させて溶接することも可能である。又、各フレーム部材の接合方法も、溶接に限定されるものではなく、フロントフレーム部材10F、バックフレーム部材10B、サイドフレーム部材20を、所定以上の強度で接合することができれば、種々の態様を採用し得る。
【符号の説明】
【0076】
1 車載用バッテリフレーム
10F フロントフレーム部材
10B バックフレーム部材
11 第1曲げ部
12 第2曲げ部
20 サイドフレーム部材
B バッテリ
P 周辺部品
F 衝突荷重
α 第1角度
β 第2角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10